(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062606
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】空調用放射パネル
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
F24F5/00 101Z
F24F5/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170737
(22)【出願日】2020-10-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年度 空気調和・衛生工学会大会(オンライン)DVD-ROM(発行日:令和2年9月1日) 令和2年度 空気調和・衛生工学会大会(オンライン)(開催期間:令和2年9月9日~9月30日)http://www.shasej.org/taikai/2020online/taikai-menu.html(ウェブサイトの掲載日:令和2年9月9日)
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】弘本 真一
(72)【発明者】
【氏名】新田目 泰行
(72)【発明者】
【氏名】八木 崇
(72)【発明者】
【氏名】大西 直紀
(72)【発明者】
【氏名】益田 太平
(72)【発明者】
【氏名】上野 武司
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA06
3L054BB03
(57)【要約】
【課題】空調効率が高く、外観性も良好で、エネルギロスの軽減と省エネを図り、吊り下げ用資材を削減することもできる空調用放射パネルを提供する。
【解決手段】空調用放射パネル100は、平板部材11の下面に突設された複数列のリブ12と、隣り合うリブ12間の平板部材11にリブ12の長手方向12Lに沿って直列状に貫設された複数の開口部14と、平板部材11の上面に設けられた保持部と、平板部材11の側縁部11b,11c寄りの部分にリブ状に突設された係合部17,18と、を有するスパンドレル10と、保持部に保持された冷温水用配管15と、並列配置された複数のスパンドレル10の側縁部11b,11c同士を接続する嵌合構造と、スパンドレル10の上面側にその並列方向10Pに配置され、隣り合う係合部17,18を連接する連接部19aを有し、吊りボルトに係止可能なスパンドレル支持部材19と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間の天井部から垂下された吊り下げ手段を介して空調空間の天井部付近に宙吊り状態で設置する空調用放射パネルであって、
平板部材の下面に等間隔に突設された複数列のリブと、隣り合う前記リブ間の前記平板部材の平面部に前記リブの長手方向に沿って直列状に貫設された複数の開口部と、前記平板部材の上面に設けられた冷温水用配管の保持部と、前記平板部材の上面の側縁部寄りの部分にリブ状に突設された係合部と、を有するスパンドレルと、
前記保持部に保持された冷温水用配管と、
平面状を成すように並列配置された複数の前記スパンドレルの側縁部同士を接続するため隣り合う前記スパンドレルの側縁部の隣接部分に設けられた嵌合構造と、
前記スパンドレルの上面側に前記スパンドレルの並列方向に配置され、隣り合う前記係合部に係合して前記係合部同士を連接する連接部を有し、前記吊り下げ手段に係止可能なスパンドレル支持部材と、を備えた空調用放射パネル。
【請求項2】
前記開口部の前記リブと平行方向の最大長さが、隣り合う前記リブ間の前記平板部材の平面部の前記リブと直交方向の幅以下である請求項1記載の空調用放射パネル。
【請求項3】
前記開口部の平面視形状が、対向する一対の辺縁部が前記リブと平行をなす四辺形若しくは円形である請求項1または2記載の空調用放射パネル。
【請求項4】
前記配管保持部を、前記スパンドレルの前記リブの長手方向と直交する方向のサイズの中央部分で隣り合う前記リブ間の前記平板部材の中央平面部の上面に設け、前記中央平面部以外の前記平板部材のリブ間の平面部に前記開口部を設けた請求項1~3の何れかの項に記載の空調用放射パネル。
【請求項5】
前記配管保持部の真下の平面部の下面に凹部を設けた請求項1~4の何れかの項に記載の空調用放射パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放射により空調空間の冷暖房を行う空調用放射パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱放射を利用して空調空間の冷暖房を行う空調用放射パネルについては、従来、様々な形状、構造を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「放射パネル」がある。
【0003】
前記「放射パネル」は、熱媒を流通させるための熱媒流通管が配設されたパネル本体と、パネル本体の外面から対象空間に向けて延出する熱放射用のフィンと、を有することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された「放射パネル」は、建物の天井スラブから垂下された吊下部材及び横架材を介して天井面に設置される空調用資材であるが、天井面全体を覆うように複数設置されるものであり、平板状のパネル本体の外面から空調対象空間へ向けて複数の熱放射用のフィンが延出された構造であるので、放射パネルの上面側(天井面に対向する面側)は空調対象空間から遮断されている。このため、放射パネルの上面側からの熱放射が空調対象空間の空調に供されず、エネルギロスが生じ易い。
【0006】
また、特許文献1に記載された「放射パネル」は、平板状のパネル本体の下面のみに熱放射用のフィンが設けられているので、フィンの長手方向のサイズが大きくなると、剛性不足による撓みが発生し易い。さらに、複数の「放射パネル」を天井スラブから吊り下げて設置する場合には、フィンの長手方向に隣り合う「放射パネル」の間に、「放射パネル」及び吊下部材と別体をなす横架材をフィンの長手方向と直交する方向に配置する必要があるため、吊り下げ用資材の増大を招いている。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、空調効率が高く、外観性も良好で、エネルギロスの軽減と省エネを図ることができ、吊り下げ用資材を削減することもできる空調用放射パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調用放射パネルは、空調空間の天井部から垂下された吊り下げ手段を介して空調空間の天井部付近に宙吊り状態で設置する空調用放射パネルであって、
平板部材の下面に等間隔に突設された複数列のリブと、隣り合う前記リブ間の前記平板部材の平面部に前記リブの長手方向に沿って直列状に貫設された複数の開口部と、前記平板部材の上面に設けられた冷温水用配管の保持部と、前記平板部材の上面の側縁部寄りの部分にリブ状に突設された係合部と、を有するスパンドレルと、
前記保持部に保持された冷温水用配管と、
平面状を成すように並列配置された複数の前記スパンドレルの側縁部同士を接続するため隣り合う前記スパンドレルの側縁部の隣接部分に設けられた嵌合構造と、
前記スパンドレルの上面側に前記スパンドレルの並列方向に配置され、隣り合う前記係合部に係合して前記係合部同士を連接する連接部を有し、前記吊り下げ手段に係止可能なスパンドレル支持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、冷水(温水)により冷却(加温)されたスパンドレルから熱放射が行われ、スパンドレルに設けたリブがヒートシンクの役割を果たすので、放射パネルからの放熱が促進され、空調対象室内の空調効率が向上する。
【0010】
複数の開口部を有することにより、特に冷房の場合、開口部を通じて放射パネルの上面から下面への対流が発生するので、放射パネルから放出された冷気が室内空間に伝わり、冷房効果が促進され、空調効率が向上し、エネルギロスの軽減と省エネを図ることができる。リブ間に開口部を設けたことにより、隣り合うリブ間に流路が形成され、発生した対流がリブで整流されるので、リブからの放熱が促進され、空調空間へ確実に気流を供給することができる。
【0011】
平板部材の上面の側縁部寄りの部分にリブ状に突設された係合部を備えたことにより、スパンドレルの剛性が高まり、撓み難くなるので、天井部から吊り下げる際の吊り下げ用資材を削減することもできる。
【0012】
隣り合うスパンドレルの側縁部の隣接部分に嵌合構造を設けたことにより、スパンドレル同士を強固且つ密着状態で連結することができ、また、スパンドレルの側縁部の隣接部分に隙間が生じないので外観性も良好である。なお、前記嵌合構造については、例えば、凹凸嵌合構造や雌雄嵌合構造などを採用することができる。
【0013】
前記空調用放射パネルにおいては、前記開口部の前記リブと平行方向の最大長さが、隣り合う前記リブ間の前記平板部材の平面部の前記リブと直交方向の幅以下であることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、冷温水用配管からスパンドレルへの冷気(暖気)の伝導が均一化され、対流を許容しつつ、スパンドレル表面の温度ムラをなくすことができる。なお、開口部を長孔にすると開口率は多く確保でき、対流効果は促進されるが、熱橋となる部分が減り、開口部分は冷温水用配管からの熱が伝わり難くなるので、冷温水用配管内を流れる冷水(温水)からの熱伝導効率が悪くなり、パネル全体に熱が伝わらず、温度ムラが発生するが、開口部の形状がリブ方向に長い形状ではない形状であれば、開口率を確保して対流効果を維持しつつ、熱橋も複数確保できるため、パネル全体に冷水または温水の熱が行き渡り、パネル表面の温度ムラもなくなり、空調効率が向上する。
【0015】
前記空調用放射パネルにおいては、前記開口部の平面視形状が、対向する一対の辺縁部が前記リブと平行をなす四辺形若しくは円形であることが望ましい。
【0016】
このような構成とすれば、冷温水用配管からスパンドレルへの冷気(暖気)の伝導が均一化され、対流を許容しつつ、スパンドレル表面の温度ムラをなくすことができる。また、適切な開口率を確保して対流効果を維持しつつ、熱橋も複数確保できるため、パネル全体に冷水または温水の熱が行き渡り、パネル表面の温度ムラもなくなり、空調効率が向上する。
【0017】
前記空調用放射パネルにおいては、前記配管保持部を、前記スパンドレルの前記リブの長手方向と直交する方向のサイズの中央部分で隣り合う前記リブ間の前記平板部材の中央平面部の上面に設け、前記中央平面部以外の前記平板部材のリブ間の平面部に前記開口部を設けることが望ましい。
【0018】
このような構成とすれば、スパンドレル同士を連結した際にスパンドレル端部同士の連結部分と配管保持部の真下の平面部には開口部がなく、連結部分と保持部真下との間の領域の平面部に複数列の開口部が存在する状態となるので、例えば、6列のリブを有するスパンドレルを複数配置して形成した放射パネルの底面を室内側から仰ぎ見たとき(見上げたとき)、「2列開口部あり」、「1列開口部なし」、「2列開口部あり」、「1列開口部なし」、・・・・という規則的配置となるので、意匠が統一され、外観性が向上する。
【0019】
また、配管保持部の真下に開口部を設けず、配管保持部がある領域の両側に2列の開口部を設けた位置関係となるため、冷温水用配管内の冷水(温水)から伝わった熱が、開口部を通過する対流によって効率良く室内空間に放熱する効果が促進される。
【0020】
前記空調用放射パネルにおいては、前記配管保持部の真下の平面部の下面に凹部を設けることが望ましい。
【0021】
このような構成とすれば、室内側から見上げたとき、隣り合うスパンドレル同士の連結部分及び凹部の意匠性を統一することができる。スパンドレルの配管保持部の下面に凹部を設けたことにより、スパンドレルの平面部の肉厚が略均一化され、これにより冷温水用配管を通じた冷水(温水)からの熱伝導が均一に行われるようになり、パネル表面の温度均一化が促進される。なお、凹部を設けない場合は配管保持部の真下の平面部の肉厚が厚くなり、平面部全体の肉厚が不均一になり熱伝導も不均一となる。厚みが増えると、その分熱容量が増え、そこに熱が溜まるが、肉厚均一化により熱溜まりがなくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、空調効率が高く、外観性も良好で、エネルギロスの軽減と省エネを図ることができ、吊り下げ用資材を削減することもできる、空調用放射パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態である空調用放射パネルを平面側の斜め上方から見た一部省略斜視図である。
【
図2】
図1に示す空調用放射パネルを底面側の斜め下方から見た一部省略斜視図である。
【
図3】
図1に示す空調用パネルの一部省略平面図である。
【
図4】
図1に示す空調用パネルの一部省略底面図である。
【
図5】
図1中の矢線A方向から見た空調用パネルの右側面図である。
【
図6】
図3中のB-B線における一部省略断面図である。
【
図7】
図6中の矢線Cで示す部分のスパンドレル端面の一部省略拡大図である。
【
図8】
図1に示す空調用放射パネルの複数枚を吊りボルトを用いて宙吊り状態に配置して形成された空調用放射パネル構造体を示す一部省略斜視図である。
【
図9】
図8に示す空調用放射パネル構造体によって対流が発生する状態を模式的に示す一部省略垂直断面図である。
【
図10】
図1に示す空調用放射パネルの冷却能力並びに従来の空調用放射パネルの冷却能力と冷却温度差との関係を示すグラフである。
【
図11】
図8に示す空調用放射パネル構造体の分解工程を示す一部省略垂直断面図である。
【
図12】
図8に示す空調用放射パネル構造体の分解工程を示す一部省略垂直断面図である。
【
図13】本発明のその他の実施形態である空調用放射パネルを示す一部省略底面図である。
【
図14】本発明のその他の実施形態である空調用放射パネルを示す一部省略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図14に基づいて、本発明の実施形態である空調用放射パネル100,200,300並びに空調用放射パネル構造体500,600について説明する。
【0025】
初めに、
図1~
図8に基づいて空調用放射パネル100について説明する。
図1~
図5に示す空調用放射パネル100は、例えば、
図8に示す空調用放射パネル構造体500を構成する空調用部材として使用することができる。
図8に示すように、空調用放射パネル構造体500は、複数の空調用放射パネル100を略同一平面をなすように並列配置して互いに連結することによって形成されている。空調用放射パネル構造体500は、空調空間の天井部(図示せず)から垂下された複数の吊りボルト1を介して空調空間の天井部付近に宙吊り状態で設置して使用する。吊りボルト1は吊り下げ手段の一例を示すものであって、これに限定するものではない。空調用放射パネル構造体500の構造、機能などについては後述する。
【0026】
図1~
図6に示すように、空調用放射パネル100は、平面状を成すように並列配置された複数のスパンドレル10と、隣り合うスパンドレル10,10の隣接部分を接続する嵌合構造20(
図6参照)と、冷温水用配管15と、スパンドレル支持部材19と、を備えている。
【0027】
図6,
図7に示すように、スパンドレル10は、平板部材11の下面11dに等間隔に突設された複数列のリブ12と、隣り合うリブ12,12間の平板部材11の平面部13にリブ12の長手方向12Lに沿って直列状に貫設された複数の開口部14と、平板部材11の上面11aに設けられた冷温水用配管15の保持部16,16と、平板部材11の上面11aの側縁部11b,11c寄りの部分にリブ状に突設された係合部17,18と、を有する。係合部17,18の上端縁部分にはそれぞれU溝部17u,18uが設けられ、U溝部17u,18uの下方にはそれぞれC溝部17c,18cが設けられている。
【0028】
図3,
図4に示すように、複数の開口部14は、対向する一対の辺縁部がリブ12と平行をなす四辺形(正方形)をなし、開口部14のリブ12と平行方向(リブ12の長手方向12L)の最大長さ14aが、隣り合うリブ12,12間の平板部材11の平面部13の幅(リブ12と直交する方向の幅)13w以下に設定されている。複数の開口部14は全て同一形状であり、これらの開口部14は互いに等間隔をなし、リブ12の長手方向12Lに沿って直線状(一直線上)に並んでいる。
【0029】
図6,
図7に示すように、冷温水用配管15の保持部16,16は、スパンドレル10のリブ12の長手方向12Lと直交する方向のサイズの中央部分で隣り合うリブ12,12間の平板部材11の中央平面部13aの上面11aに設け、中央平面部13a以外の平面部材11のリブ12,12の平面部13にそれぞれ開口部14を設けている。また、冷温水用配管15の保持部16,16の真下の平面部(中央平面部13a)の下面11dに凹部23を設けている。なお、リブ12,12間であっても保持部16,16が存在する部分の平面部(中央平面部13a)には開口部14は設けられていない。
【0030】
図3に示すように、冷温水用配管15は、空調用放射パネル100を構成する複数のスパンドレル10の平板部材11の上面10a部分において左右側縁部分の間を蛇行するように配管されている。冷温水用配管15の端部15a,15bはそれぞれ空調用放射パネル100の上面部分の正面側並びに背面側に露出している。
図6に示すように、冷温水用配管15の保持部16,16は垂直断面が横転C字状をなし、保持部16,16の間に冷温水用配管15が着脱可能に挟持されている。なお、保持部16,16内周面の少なくとも一部に粗面若しくは凹凸面を設ければ、保持部16,16に保持された冷温水用配管15の離脱防止効果が高まる。
【0031】
図6に示すように、平面状を成すように並列配置された複数のスパンドレル10の側縁部11b,11c同士を着脱可能に接続するため、隣り合うスパンドレル10,10の側縁部11b,11cの隣接部分に嵌合構造20が設けられている。
【0032】
図6,
図7に示すように、スパンドレル10の一方の側縁部11bに沿って平板部材11の上面11aより上位側に段差状に変位するとともに係合部17から離れる方向に突出した突縁部21が形成され、突縁部21の先端縁部分に沿って増厚部21aが形成されている。また、スパンドレル10の他方の側縁部11cに沿って平板部材11の上面11aより上位側において側縁部11cと平行をなす挟持フィン22が形成され、挟持フィン22の先端縁部分に沿って側縁部11cに近づく方向に折曲した係止部22aが形成されている。
【0033】
図6に示すように、隣り合うスパンドレル10,10の側縁部11b,11cの隣接部分において、一方のスパンドレル10の側縁部11cと挟持フィン22の係止部22aとの間に、他方のスパンドレル10の側縁部11bの突縁部21の増厚部21aを差し込んで挟持することによって嵌合構造20が形成される。なお、隣り合うスパンドレル10,10の側縁部11b,11cの嵌合手段は、嵌合構造20に限定されないので、その他の嵌合構造、例えば、凹凸嵌合構造や雌雄嵌合構造などを採用することもできる。
【0034】
U溝部17u,18u及びC溝部17c,18cの長手方向は係合部17,18の長手方向と平行をなしている。U溝部17u,18uは何れも係合部17,18の起立方向の上方部分が開口しており、C溝部17c,18cは係合部17,18の起立方向と直交する方向の一方側が開口している。
【0035】
図6に示すように、スパンドレル10の上面10a側にスパンドレル10の並列方向10Pに沿ってスパンドレル支持部材19が配置され、隣り合う係合部17,18に係合して係合部17,18を連接する複数の連接部19aがスパンドレル支持部材19に垂下状に取り付けられている。連接部19aの下方部分には、隣り合うスパンドレル10,10の係合部17,18のU溝部17u,18uが挿通可能な複数の湾状切欠部19b,19bが開設されている。
【0036】
係合部17,18のU溝部17u,18uをそれぞれ連接部19aの湾状切欠部19b,19bに挿通することにより、係合部17,18は連接部19aに互いに一定間隔を保った状態で保持される。スパンドレル支持部材19は横断面がコ字形状をなしており、スパンドレル支持部材19の下面部19d(
図8参照)を貫通して係合部17,18のU溝部17u,18uに螺着された複数のネジ25(
図11参照)によって各スパンドレル10に固定されている。
【0037】
図1~
図3,
図5に示すように、空調用放射パネル100において、複数配置されたスパンドレル10のリブ12の長手方向12Lの両端部分には、それぞれスパンドレル10の係合部17,18の端面を覆う複数の起立部24aを有するカバー部材24が取り付けられている。カバー部材24は、その外面からカバー部材24を貫通して係合部17,18のC溝部17c,18cに螺着されたネジ(図示せず)によって固定されている。
【0038】
図1に示す空調用放射パネル100は、これのみを単体で使用することもできるが、
図8に示すように、複数の空調用放射パネル100を組み合わせて空調用放射パネル構造体500を形成することもできる。空調用放射パネル構造体500は、複数の空調用放射パネル100を略同一平面をなすように並列配置し、
図6に示すように、一方の空調用放射パネル100のスパンドレル10の側縁部11cと係止部22aとの間に、他方の空調用放射パネル100のスパンドレル10の側縁部11b側の突縁部21の増厚部21aを挟持させることで形成される嵌合構造20により隣り合う空調用放射パネル100同士を連係させ、連結部材26(
図8参照)で互いに連結することによって形成されている。
【0039】
連結部材26は、空調用放射パネル100,100のカバー部材24,24が隣り合う部分のカバー部材24,24上に重ねて配置され、連結部材26及びカバー部材24を貫通するように複数のネジ27(
図11参照)を螺着することによって隣り合う空調用放射パネル100,100の同士を連結している。また、連結部材26は、隣り合う空調用放射パネル100,100間の距離を一定に保つ機能も発揮している。空調用放射パネル100,100の冷温水用配管15,15はそれぞれの端部15a,15b同士を接続することにより一本化されている。
【0040】
空調空間の天井部または躯体(図示せず)から垂下された複数の吊りボルト1の下端部側を連接部材19の上面部19cの貫通孔19e(
図1参照)に挿通し、吊りボルト1の下端部分に螺着された複数のナット2,3(
図11参照)で上面部19cを上下から挟持することにより、空調用放射パネル構造体500を、空調空間の天井部付近に宙吊り状態で設置することができる。
【0041】
空調用放射パネル100を構成する冷温水用配管15に冷水(温水)を流通させると、冷水(温水)により冷却(加温)された冷温水用配管15からスパンドレル10に熱が伝わり、冷却(加温)されたスパンドレル10から熱放射が行われる。このとき、スパンドレル100に設けた複数のリブ12が放熱板の役割を果たすので、空調用放射パネル100からの放熱が促進され、空調対象室内の空調効率が向上する。
【0042】
空調用放射パネル100は複数の開口部14を有しているので、特に冷房の場合、
図9に示すように、開口部14を通じて空調用放射パネル100の上面から下面へ向かう矢線方向の対流が発生するので、空調用放射パネル100から放出された冷気が対流となって室内空間に伝わり、冷房効果が促進され、空調効率が向上し、開口部14が存在しない従来の空調用放射パネルにおいてパネル上面側へ散逸していた冷熱が室内空間の空調に供されるので、エネルギロスの軽減と省エネを図ることができる。
【0043】
リブ12,12の間に開口部14を設けたことにより、隣り合うリブ12,12間に流路が形成され、発生した対流がリブ12で整流されるので、リブ12からの放熱が促進され、空調空間へ確実に冷気流を供給することができる。
【0044】
平板部材11の上面11aの側縁部11b,11c寄りの部分にリブ状に突設された係合部17,18を備えたことにより、スパンドレル10の長手方向の剛性が高まり、複数のスパンドレル10をパネル状に連結した状態でも撓み難くなるので、天井部から吊り下げる際の吊り下げ用資材(例えば、吊りボルト1など)を削減することもできる。
【0045】
図6に示すように、隣り合うスパンドレル10,10の側縁部11b,11cの隣接部分に嵌合構造20を設けたことにより、スパンドレル10,10同士を強固且つ密着状態で連結することができる。また、スパンドレル10,10の側縁部11b,11cの隣接部分に隙間が生じないので外観性も良好である。さらに、複数の空調用放射パネル100を連結して吊り下げ保持した状態において室内空間側から見上げたとき、側縁部11b,11cの連結部分28の嵌合構造20と凹部23とが同一形状に見えるので、意匠性が統一される。なお、嵌合構造については、嵌合構造20のほかに、凹凸嵌合構造や雌雄嵌合構造などを採用することもできる。
【0046】
図4に示すように、空調用放射パネル100においては、開口部14のリブ12と平行方向(長手方向12L)の最大長さ14aが、隣り合うリブ12,12間の平板部材11の平面部13のリブ12と直交方向の幅13w以下である。従って、冷温水用配管15からスパンドレル10への冷気(暖気)の伝導が均一化され、対流を許容しつつ、スパンドレル10表面の温度ムラをなくすことができる。
【0047】
図4に示すように、空調用放射パネル100においては、開口部14の平面視形状が、対向する一対の辺縁部がリブ12と平行をなす四辺形であることにより、適切な開口率を確保して対流効果を維持しつつ、熱橋も複数確保できるため、空調用放射パネル100全体に冷水または温水の熱が行き渡り、均一な熱伝導が行われ、対流を許容しつつ、空調用放射パネル100表面の温度ムラもなくなり、空調効率が向上する。
【0048】
図6,
図7に示すように、空調用放射パネル100においては、配管保持部16,16を、スパンドレル10のリブ12の長手方向12Lと直交する方向のサイズの中央部分で隣り合うリブ12,12間の平板部材11の中央平面部13aの上面11aに設け、中央平面部13a以外の部分の平板部材11のリブ12,12間の平面部13に開口部14を設けている。
【0049】
このような構成とすれば、スパンドレル10,10同士を連結して空調用放射パネル100を形成した際に、
図6に示すように、スパンドレル10,10の側縁部11b,11c同士の連結部分と保持部16,16の真下の中央平面部13aには開口部14がなく、端部11b,11c同士の連結部分と保持部16,16真下の中央平面部13aとの間の領域の複数の平面部13に、それぞれ複数列の開口部14が存在する状態となる。
【0050】
従って、
図6に示すように、例えば、6列のリブ12を有するスパンドレル10を5個配置して形成した空調用放射パネル100の底面を室内側から仰ぎ見たとき(見上げたとき)、
図4に示すように、「2列開口部14あり」、「1列開口部14なし」、「2列開口部14あり」、「1列開口部14なし」、・・・・という規則的配置となるので、意匠が統一され、外観性が向上する。
【0051】
また、
図6に示すように、保持部16,16の真下に開口部14を設けず、保持部16,16がある領域の両側に2列の開口部14を設けた位置関係となるため、冷温水用配管15内の冷水(温水)から伝わった熱が、開口部14を通過する対流(
図9参照)によって効率良く室内空間に放熱する効果が促進される。
【0052】
さらに、
図6に示すように、冷温水用配管15の保持部16,16の真下の中央平面部13aの下面11dに凹部23を設けているので、室内側から見上げたとき、
図4に示すように、隣り合うスパンドレル10,10同士の連結部分28及び凹部23の意匠性を統一することができる。
【0053】
スパンドレル10の保持部16,16の下面11dに凹部23を設けたことにより、スパンドレル10の平面部13の肉厚と中央平面部13aの肉厚が略均一化され、これにより冷温水用配管15を通じた冷水(温水)からの熱伝導が均一に行われるようになり、空調用放射パネル100表面の温度均一化が促進される。
【0054】
一方、
図7に示すように、スパンドレル10の左右の側縁部11b,11cの長手方向12Lに沿って係合部17,18を設けたことにより、スパンドレル10の剛性が高まり、スパンドレル10の長手方向の剛性が高まり、撓み難くなるので、比較的大きな口径の開口部14を開設することができ、これにより、スパンドレル10全体の開口率を大きくとることができるので、対流の効果を増大させることができる。
【0055】
また、スパンドレル10の剛性が高まり、撓み難くなることにより、
図1,
図8に示すように、空調用放射パネル100や空調用放射パネル構造体500を複数の吊りボルト1で吊り下げ保持する場合、複数の連接部材19の貫通孔19e(
図1参照)のうち、空調用放射パネル100の四隅寄りの部分に位置する貫通孔19eにそれぞれ吊りボルト1の下端部分を挿通してナット2,3で螺着すれば安定保持することができるので、吊りボルト1の使用本数を減らすことも可能となる。
【0056】
次に、
図1に示す空調用放射パネル100の冷却能力並びに従来の空調用放射パネル(空調用放射パネル100の開口部14を無くしたもの)の冷却能力について試験を行ったので、その試験結果について、
図10に基づいて説明する。
【0057】
図10は、空調用放射パネルの冷却能力並びに従来の空調用放射パネルの冷却能力と冷却温度差との関係を示すグラフであり、横軸は冷却温度差(室平均グローブ温度-冷水平均温度)[℃]を示し、縦軸はパネル冷却能力[W/m
2]を示している。
【0058】
横軸に示す「冷却温度差」の算出する際の「冷水平均温度(℃)」は同じ広さの試験室内に配置された空調用放射パネル100並びに従来の空調用放射パネルにそれぞれ冷水を供給し、空調用放射パネルの冷温水用配管の入口水温と出口水温を測定してその平均値を算出したものであり、「室平均グローブ温度(℃)」は前記試験室内に設置されたグローブ温度計で測定した平均温度(室温)である。冷却温度差[℃]は、室平均グローブ温度から冷水平均温度を差し引いたものである。
【0059】
空調用放射パネルに対する冷水の供給量は「4L/min」、「2L/min」、「1L/min」並びに「0.5L/min」の4パターンに切り替えて試験を行った。
図10のグラフにおいて「●有孔・リブ付」は空調用放射パネル100に関する試験結果を示し、「〇無孔・リブ付」は開口部を設けていない従来の空調用放射パネルに関する試験結果を示している。
【0060】
図10のグラフをみると、
図1に示す空調用放射パネル100の冷却能力は従来の空調用放射パネル(空調用放射パネル100の開口部14を無くしたもの)の冷却能力より優れていることが分かる。例えば、冷却温度差8℃のとき、パネル冷却能力は、有孔・リブ付は約78w/m
2、無孔・リブ付は約67w/m
2であり、有孔・リブ付の方がパネル冷却能力は約16%向上し、冷却温度差9℃のとき、パネル冷却能力は、有孔・リブ付は約94w/m
2であり、無孔・リブ付は約80w/m
2であり、有孔・リブ付の方がパネル冷却能力が約15%向上し、冷却温度差10℃のとき、パネル冷却能力は、有孔・リブ付は約107w/m
2であり、無孔・リブ付は約92w/m
2であり、有孔・リブ付の方がパネル冷却能力が約16%向上している。
【0061】
次に、
図11,
図12に基づいて、三つ以上の空調用放射パネル100を連結して形成された空調用放射パネル構造体600を個々の空調用放射パネル100に分解する方法について説明する。
【0062】
図11(a)に示す空調用放射パネル構造体600において、二つの空調用放射パネル100の間に配置された空調用放射パネル100xにおいて、左右に隣り合う空調用放射パネル100,100との間にそれぞれ取り付けられた連結部材26,26に螺着された複数のネジ27を緩め、
図11(b)に示すように、連結部材26及び複数のネジ27を空調用放射パネル100x,100から離脱させるとともに、吊りボルト1,1に螺着されたナット2,2を緩め、連接部材19の上面部19cとナット2,2との間に隙間を形成する。この後、空調用放射パネル100xの左側の空調用放射パネル100を左側へ移動させて空調用放射パネル100の左側に位置する側縁部11b,11cを分離し、嵌合構造20を解体する。なお、
図6に示すように、嵌合構造20において隣り合う側縁部11b,11cの間にクリアランスSを設けているので、空調用放射パネル100xの水平方向の移動が可能である。
【0063】
次に、
図12(a)に示すように、空調用放射パネル100xの左側を支える吊りボルト1に螺着されたナット3を緩めてナット2との隙間を拡げることにより、空調用放射パネル100xの左側部分を下降させ、空調用放射パネル100x全体を左下がり状態に傾斜させる。この後、
図12(b)に示すように、空調用放射パネル100xの右側部分を支える吊りボルト1に螺着されたナット3を緩めてナット2との隙間を拡げて、空調用放射パネル100xの右側部分を下降させて空調用放射パネル100x全体を水平状態にすることにより、空調用放射パネル100xの右側に位置する側縁部11b,11cを分離し、嵌合構造20を解除する。
【0064】
この後は、空調用放射パネル100xを略水平状態に支えながら、吊りボルト1,1に螺着されたナット3,3を緩めて吊りボルト1,1から離脱させると、空調用放射パネル100xは下方側(室内側)に取り外すことができる。
【0065】
次に、
図13,
図14に基づいて、その他の実施形態である空調用放射パネル200,300について説明する。なお、
図13,
図14に示す空調用放射パネル200,300において
図4に示す空調用放射パネル100と共通する部分については
図4中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0066】
図13に示す空調用放射パネル200は、
図4に示す空調用放射パネル100に設けられた四辺形(正方形状)の開口部14に相当する位置に、平面視形状が円形をなす開口部34が設けられている。
【0067】
図14に示す空調用放射パネル300においては、
図4に示す空調用放射パネル100に設けられた四辺形(正方形状)の開口部14に相当する位置に、開口部44が設けられている。開口部44の平面視形状は、対向する一対の辺縁部がリブ12と平行をなす四辺形の一つである台形状をなしている。隣り合う開口部44,44は平面視状態における向きが互いに180度異なるように配列されている。
【0068】
図13,
図14に示す空調用放射パネル200,300は
図1~
図5に示す空調用放射パネル100と同様の使い方をすることができる。また、
図13に示す空調用放射パネル200においては、開口部34の平面視形状が円形であり、
図14に示す空調用放射パネル300においては、開口部44の平面視形状が台形状であることにより、適切な開口率を確保して対流効果を維持しつつ、熱橋も複数確保できるため、空調用放射パネル200,300全体に冷水または温水の熱が行き渡り、均一な熱伝導が行われ、対流を許容しつつ、空調用放射パネル200,200表面の温度ムラもなくなり、空調効率が向上する。
【0069】
なお、
図1~
図14に基づいて説明した空調用放射パネル100,200,300などは、本発明に係る空調用放射パネルを例示するものであり、本発明に係る空調用放射パネルは、前述した空調用放射パネル100,200,300などに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る空調用放射パネルは、各種建物の内部空間の冷暖房手段として様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 吊りボルト
2,3 ナット
10 スパンドレル
10P 並列方向
11 平板部材
11a 上面
11b,11c 側縁部
11d 下面
12 リブ
12L 長手方向
13 平面部
13a 中央平面部
13w 幅
14,34,44 開口部
14a 最大長さ
15 冷温水用配管
15a,15b 端部
16 保持部
17,18 係合部
17c,18c C溝部
17u,18u U溝部
19 連接部材
19a 連接部
19b 湾状切欠部
19c 上面部
19d 下面部
19e 貫通孔
20 嵌合構造
21 突縁部
21a 増厚部
22 挟持フィン
22a 係止部
23 凹部
24 カバー部材
24a 起立部
25,27 ネジ
26 連結部材
28 連結部分
100,100x、200,300 空調用放射パネル
500,600 空調用放射パネル構造体
S クリアランス