(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062629
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ケーブル巻き出し長を特定するためのシステム、プログラムおよびケーブルの巻き出し管理方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
B66C13/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170785
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 高文
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA01
3F204DB03
3F204DB06
3F204DC01
3F204DC06
(57)【要約】
【課題】計測する機構を後付けしてもケーブルの巻き出し長を容易に算出する手段を提供する。
【解決手段】ケーブル巻き出し長を特定するためのシステムは、荷の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーン12のケーブル123の全長を示すケーブル長データと、クレーン12のブーム121の長さを示すブーム長データと、ケーブル123の巻き上げ及び巻き出しを行うリール部1251の直径又は半径を示すリール径データと、ケーブル123の直径又は半径を示すケーブル径データと、リール部1251に巻き上げられているケーブル123の外形を表す外形データと、を含む基礎データを取得するデータ取得部1411を備える。そして、取得した基礎データに基づきリール部1251から巻き出されているケーブル123の長さを特定する特定部1413を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーンのケーブルの全長を示すケーブル長データと、前記クレーンのブームの長さを示すブーム長データと、前記ケーブルの巻き上げ及び巻き出しを行うリールの直径又は半径を示すリール径データと、前記ケーブルの直径又は半径を示すケーブル径データと、前記リールに巻き上げられている前記ケーブルの外形を表す外形データと、を含む基礎データを取得する取得手段と、
前記基礎データに基づき前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する特定手段と
を備えるケーブル巻き出し長を特定するためのシステム。
【請求項2】
前記特定手段は、前記外形データに基づき、前記ケーブルの前記リールに巻き上げられている部分の直径又は半径である巻き上げ径と、前記ケーブルの前記リールに巻き上げられている部分の端部の前記リールの回転軸方向における巻き出し位置とを特定し、特定した前記巻き上げ径と前記巻き出し位置とを用いて前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記取得手段は、前記クレーンのブームの仰俯角を示す仰俯角データを取得し、
前記特定手段は、特定した前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さと、前記仰俯角データが示す仰俯角とに基づき、前記クレーンにより吊られている荷の位置を特定する
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
レーザで対象物を走査して当該対象物の形状を表す形状データを生成する生成手段を備え、
前記取得手段は、前記生成手段が生成した形状データを取得する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
コンピュータに、
荷の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーンのケーブルの全長を示すケーブル長データと、前記クレーンのブームの長さを示すブーム長データと、前記ケーブルの巻き上げ及び巻き出しを行うリールの直径又は半径を示すリール径データと、前記ケーブルの直径又は半径を示すケーブル径データと、前記リールに巻き上げられている前記ケーブルの外形を表す外形データと、を含む基礎データを取得する処理と、
前記基礎データに基づき前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する特定手段と
を備えるケーブル巻き出し長を特定する処理と
を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
前記クレーンのブームの仰俯角を示す仰俯角データを取得する処理と、
特定した前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さと、前記仰俯角データが示す仰俯角とに基づき、前記クレーンにより吊られている荷の位置を特定する処理と
を実行させるための請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステムを用いた、ケーブルの巻き出し管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル巻き出し長を特定するためのシステム、プログラムおよびケーブルの巻き出し管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上工事ではガット船や起重機船等の作業船を用いて石材やコンクリートブロックを海中に投入することで構造物を構築することが行われる。作業船にはクレーンが設けられており、クレーンにより吊り下げられたケーブルの先端に設けられるグラブバケット等を用いることで材料の投入や海底地盤の掘削などを行っている。この場合、グラブバケットは水中に入ることがあるため、クラブバケットがどの程度の深度にあるかを目視で確認ができない。そのため、ケーブルの長さを何らかの手段を用いて計測することで、グラブバケットの位置を推定している。
【0003】
特許文献1には、ワイヤ(ケーブル)が巻き取られているワイヤドラムに設置した繰り出し量計測手段による計測結果により、吊り下げられた対象物までのワイヤの長さを算出し、対象物の位置を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ケーブルを巻いているドラムに回転数を計測する機器を取り付けることで、1回転当たりの巻き出し長を算出し、クレーンブームの起伏角度を考慮することで水中や地中のグラブバケットの深度を算出することができる。
【0006】
ドラムの回転数を計測する装置が製造時に取り付けられていない場合、計測する機構を後付けすることになるが、ドラムの側面の凹凸を複数のセンサで計測する必要がある等、計測の機構はドラムの構造に依存するため、設置は容易ではない。
【0007】
上述の背景に鑑み、本発明は、計測する機構を後付けしてもケーブルの巻き出し長を容易に特定する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、荷の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーンのケーブルの全長を示すケーブル長データと、クレーンのブームの長さを示すブーム長データと、前記ケーブルの巻き上げ及び巻き出しを行うリールの直径又は半径を示すリール径データと、前記ケーブルの直径又は半径を示すケーブル径データと、前記リールに巻き上げられている前記ケーブルの外形を表す外形データと、を含む基礎データを取得する取得手段と、前記基礎データに基づき前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する特定手段とを備えるケーブル巻き出し長を特定するためのシステムを第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様のシステムによれば、リールの回転の検出等を行うことなく、簡便な構成でケーブル巻き出し長を特定することができる。
【0010】
第1の態様のシステムにおいて、前記特定手段は、前記外形データに基づき、前記ケーブルの前記リールに巻き上げられている部分の直径又は半径である巻き上げ径と、前記ケーブルの前記リールに巻き上げられている部分の端部の前記リールの回転軸方向における巻き出し位置とを特定し、特定した前記巻き上げ径と前記巻き出し位置とを用いて前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様のシステムによれば、ケーブルの外形データに基づいてケーブル巻き出し長を特定することができ、巻き出し長の計測のための装置の設置を容易に行うことができる。
【0012】
第1又は第2の態様のシステムにおいて、前記取得手段は、前記クレーンのブームの仰俯角を示す仰俯角データを取得し、前記特定手段は、特定した前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さと、前記仰俯角データが示す仰俯角とに基づき、前記クレーンにより吊られている荷の位置を特定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様のシステムによれば、特定した巻き出されているケーブルの長さから、クレーンにより吊られている吊り荷(グラブバケット)の位置を特定することができる。
【0014】
第3のシステムにおいて、レーザで対象物を走査して当該対象物の形状を表す形状データを生成する生成手段を備え、前記取得手段は、前記生成手段が生成した形状データを取得する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様のシステムによれば、リールやケーブルに接触することなく、リールから巻き出されているケーブルの長さを特定することができる。
【0016】
また、本発明は、コンピュータに、荷の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーンのケーブルの全長を示すケーブル長データと、ブームの長さを示すブーム長データと、前記ケーブルの巻き上げ及び巻き出しを行うリールの直径又は半径を示すリール径データと、前記ケーブルの直径又は半径を示すケーブル径データと、前記リールに巻き上げられている前記ケーブルの外形を表す外形データと、を含む基礎データ取得する処理と、前記基礎データに基づき前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さを特定する特定手段とを備えるケーブル巻き出し長を特定する処理とを実行させるためのプログラムを第5の態様として提供する。
【0017】
第5の態様のプログラムによれば、リールの回転の検出等を行うことなく、容易にケーブル巻き出し長を特定することができる。
【0018】
第5の態様のプログラムにおいて、前記クレーンのブームの仰俯角を示す仰俯角データを取得する処理と、特定した前記リールから巻き出されている前記ケーブルの長さと、前記仰俯角データが示す仰俯角とに基づき、前記クレーンにより吊られている荷の位置を特定する処理とを実行させる、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様のプログラムによれば、ケーブルの外形データに基づいてケーブル巻き出し長を特定することができ、巻き出し長の計測のための装置の設置を容易に行うことができる。
【0020】
また、本発明は、第1乃至第4のいずれかの態様のシステムを用いた、ケーブルの巻き出し管理方法を第7の態様として提供する。
【0021】
第7の態様の管理方法によれば、ケーブルの巻き出し長を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係るケーブル巻き出し長を特定するためのシステムの全体構成を示した図。
【
図2】一実施形態に係るシステムに用いるレーザ計測器による動作を説明するための図であり、
図2(a)は、レーザによる横方向の走査を示した図、
図2(b)は、レーザによる縦方向の走査を示した図。
【
図3】一実施形態に係るシステムに用いる情報処理装置のハードウェア構成を示した図。
【
図4】一実施形態に係るシステムに用いる情報処理装置の機能的構成を示したブロック図。
【
図5】一実施形態に係るシステムにおけるドラムリールに巻き上げられたケーブルの長さの算出を説明するための図であり、
図5(a)は、ケーブルが巻かれたドラムリールの外観を示した斜視図、
図5(b)は、ケーブルが巻かれた状態とケーブル径との関係を示した図。
【
図6】一実施形態に係るシステムにおけるブームの仰俯角に基づいたグラブバケットの位置の算出を説明するための図であり、
図6(a)は、ブームの仰俯角が比較的大きい状態を示した図、
図6(b)は、ブームの仰俯角が比較的小さい状態を示した図。
【
図7】一実施形態に係るシステムに用いる情報処理装置における処理のフローを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係るケーブル巻き出し長を特定するためのシステム1を説明する。
図1は、システム1の全体構成を示した図である。
【0024】
システム1は、水面S上に浮かんで停止している起重機船11と、起重機船11に搭載されたクレーン12とを備えている。クレーン12は、ブーム121、滑車122、ケーブル123を備え、ケーブル123の一端側に取り付けられた吊り荷(吊り下げ対象物)であるグラブバケット124の吊り下げ及び吊り上げを行う。
【0025】
ブーム121は、クレーン本体から斜め上方へと延在して設けられ、クレーン本体に追従して旋回、傾斜の動作が可能である。滑車122は、ブーム121の先端側に設けられ、下端側にグラブバケット124が取り付けられた2本のケーブル123が掛けられている。2本のケーブル123の各々は、他端側がクレーン本体の上方部に固定された2台のドラムリール125に巻き取られている。
図1においては、ケーブル123に取り付けられたグラブバケット124が、水面S下の水中にまで吊り下げられた状態を示している。
【0026】
ブーム121には、傾斜計126が設けられており、ブーム121の水平方向に対する傾斜角(仰俯角)を計測可能である。傾斜計としては、導電性流体を利用した電解式傾斜センサや、傾斜による静電容量の変化を利用したMEMS式傾斜センサ等を用いることができる。
【0027】
また、クレーン12には、レーザ計測器13が設置されており、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の形状を計測する。レーザ計測器13は、2台のドラムリール125のうちの1台に巻き上げられているケーブル123の形状を計測すればよい。
なお、クレーン12に設けられているドラムリール125、レーザ計測器13の位置は、ブーム121の傾斜の動作によって変化しない。
【0028】
起重機船11内には、情報処理装置14が設置されている。情報処理装置14は、コンピュータと、コンピュータに接続された表示装置(液晶ディスプレイ等)及び入力装置(キーボード、マウス、音声入力等)を備える。情報処理装置14は、例えばクレーン12を操作するための操作室内や起重機船11の居住区内に配置され、表示装置は、コンピュータとは別にクレーン12を操作するための操作室内や起重機船11の居住区内に配置されるようにしてもよい。情報処理装置14のコンピュータと表示装置は有線または無線で情報を伝達する。情報処理装置14は、レーザ計測器13、傾斜計126からの計測データを取得することにより、ドラムリール125から巻き出されているケーブル123の長さを特定し、さらに、グラブバケット124の吊り下げられている高さ方向位置を特定し、ケーブルの巻き出し状態の管理を行う。
【0029】
図2は、レーザ計測器13によるドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の形状の計測を説明するための図である。レーザ計測器13は、ドラムリール125の正面方向に設けられる。レーザ計測器13は、計測対象物であるドラムリール125に対してレーザ光Cを照射し、計測対象物によって反射してレーザ計測器13側に戻ってくるレーザ光を受光することにより、計測対象物までの距離及び方向を計測する。
【0030】
レーザ計測器13は、レーザ光Cを、ドラムリール125を含む正面内に向けて縦方向、横方向の3次元的に複数の方向へと照射することにより、ドラムリール125を走査する。
図2(a)は、レーザ光Cによる横方向の走査を示した図、
図2(b)は、レーザ光Cによる縦方向の走査を示した図である。
【0031】
例えば、レーザ計測器13は、
図2(a)に示すように水平方向に扇状に広がる範囲に複数のレーザ光Cを照射する。そして、
図2(b)に示すように、水平方向に対して縦方向に順次角度をつけた複数の上下方向に、
図2(a)に示すような扇状に広がる複数のレーザ光Cを照射する。このようにして、レーザ光Cを照射した各部分までの距離を計測することができ、ドラムリール125と、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の3次元形状を取得することができる。
【0032】
図2において、ドラムリール125は、円柱形状のリール部1251とリール部1251の両端に設けられたリール部1251よりも直径の大きい円板上の側板1252とから構成されている。ケーブル123は、リール部1251の一端側から他端側へ順次巻かれ、複数の層をなすように巻かれている。
【0033】
図3は、情報処理装置14のハードウェア構成を示した図である。情報処理装置14は、プロセッサ141、メモリ142、及びインタフェース143を有する。これらの構成は、例えばバス型トポロジーで、互いに通信可能に接続されている。
【0034】
プロセッサ141は、メモリ142に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読み出して実行することにより情報処理装置14の各部を制御する。プロセッサ141は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0035】
メモリ142は、プロセッサ141に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ142は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ142は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0036】
インタフェース143は、有線又は無線により通信回線を介して、情報処理装置14を各種装置(レーザ計測器13、傾斜計126)と通信可能に接続する通信回路である。
【0037】
また、インタフェース143には、表示装置144、入力装置145が接続される。表示装置144は、液晶ディスプレイや携帯端末等であり、情報処理装置14の処理により算出された数値、画像等を表示する。入力装置145は、情報処理装置14の処理に必要な各種データのユーザによる入力に用いられる。
【0038】
図4は、情報処理装置14の機能的構成を示したブロック図である。情報処理装置14は、プロセッサ141がプログラムを実行することにより、データ取得部1411、形状データ生成部1412、特定部1413、入出力制御部1414、記憶部1415として機能する。
【0039】
データ取得部1411は、ケーブル123の巻き出し長を算出するため、あるいは、グラブバケット124の位置を特定するために必要なデータを取得する。具体的には、ケーブル123の全長を示すケーブル長データと、ブームの全長を示すブーム長データと、ドラムリール125のリール部1251の直径又は半径を示すリール径データと、ケーブル123の直径又は半径を示すケーブル径データと、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形を表す外形データと、を含む基礎データを取得する。
【0040】
また、データ取得部1411は、傾斜計126から、ブーム121の水平方向に対する傾斜角(仰俯角)を示す仰俯角データを取得する。さらに、データ取得部1411は、ブーム121の下端位置からドラムリール125までの距離を示すデータを取得する。
【0041】
ケーブル長データは、ドラムリール125の巻き上げられたケーブル123の長さを含む、ドラムリール125からグラブバケット124までに至るケーブル123の全長を示すデータである。ケーブル長データは、予め入力装置145からユーザによって入力され、入出力制御部1414を介して記憶部1415に記憶される。データ取得部1411は記憶部1415からケーブル長データを取得する。
【0042】
ブーム長データは、ブーム121の下端位置からブーム121の先端に位置する滑車122までの距離を示すデータであり、予め入力装置145からユーザによって入力され、入出力制御部1414を介して記憶部1415に記憶される。データ取得部1411は記憶部1415からブーム長データを取得する。
【0043】
リール径データは、ドラムリール125において、ケーブル123が巻かれているリール部1251の直径又は半径を示すデータであり、ケーブル長データやブーム長データと同様に、予め入力装置145からユーザによって入力され、入出力制御部1414を介して記憶部1415に記憶される。データ取得部1411は記憶部1415からリール径データを取得する。
【0044】
ケーブル径データは、ケーブル123の直径又は半径を示すデータであり、予め入力装置145からユーザによって入力され、入出力制御部1414を介して記憶部1415に記憶される。データ取得部1411は記憶部1415からケーブル径データを取得する。
外形データは、レーザ計測器13によって計測された、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の形状に基づいて形状データ生成部1412により生成される。
【0045】
ブーム121の下端位置からドラムリール125までの距離を示すデータは、予め入力装置145からユーザによって入力され、入出力制御部1414を介して記憶部1415に記憶される。データ取得部1411は記憶部1415からこのデータを取得する。
【0046】
形状データ生成部1412は、レーザ計測器13で取得された形状データを入力し、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の外形を表す外形データを生成する。データ取得部1411は、形状データ生成部1412から外形データを取得する。
【0047】
特定部1413は、データ取得部1411が取得したケーブル長データ、ブーム長データ、リール径データ、ケーブル径データ、及び、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形データに基づいて、ドラムリール125から巻き出されているケーブル123の長さを特定する。具体的には、リール径データと、ケーブル径データと、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形を表す外形データとから、ドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さを算出する。そして、ケーブル長データが示すケーブル123の全長から、算出したドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さを減ずることにより、ドラムリール125から巻き出されているケーブル123の長さを算出する。
【0048】
また、特定部1413は、データ取得部1411が取得した仰俯角データが示すブーム121の仰俯角、ブーム121の長さ、ブーム121の下端位置からドラムリール125までの距離に基づいて、ドラムリール125から滑車122までのケーブル123の長さを算出する。そして、特定した巻き出されているケーブル123の長さから、算出されたドラムリール125から滑車122までのケーブル123の長さを差し引くことにより、滑車122からグラブバケット124までのケーブル123の長さを算出し、吊り下げられているグラブバケット124の位置を特定する。
【0049】
入出力制御部1414は、記憶部1415に記憶するためのデータを入力する。具体的には、ユーザがキーボードや音声入力等の入力装置145により行う基礎データ等の入力を受け付ける制御を行う。また、入出力制御部1414は、特定部1413により算出された巻き出されているケーブル123の長さ、及び吊り下げられているグラブバケット124の高さ位置を、表示装置144に数値や画像により表示する制御を行う。
【0050】
記憶部1415は、入出力制御部1414によって入力が受け付けられた基礎データを記憶する。また、記憶部1415は、データ取得部1411により取得された仰俯角データを記憶する。また、記憶部1415は、特定部1413で算出された巻き出されているケーブル123の長さ、吊り下げられているグラブバケット124の位置を記憶する。
【0051】
図5は、ドラムリール125に巻き上げられたケーブル123の長さの算出を説明するための図である。
図5(a)は、ケーブル123が巻かれたドラムリール125の外観を示した斜視図である。ドラムリール125は、
図2に示したように、円柱形状のリール部1251とリール部1251の両端に設けられた円板上の側板1252とから構成されている。
【0052】
図5(a)は、ドラムリール125のリール部1251にケーブル123が多層に巻かれた状態を示している。ケーブル123の巻き上げ時は、ドラムリール125が回転することにより、リール部1251の一端側、すなわち一方の側板1252側から他端側、すなわち他方の側板側へと順次ケーブル123は巻かれていく。巻かれたケーブル123が他方の側板1252に達して1層目が巻き終わると、巻かれたケーブル123の1層目の上に2層目が巻かれる。2層目のケーブル123は、1層目が巻き終わった側の他方の側板1252から一方の側板1252へと順次巻かれていく。2層目が一方の側板1252に達すると、3層目が他方の側板1253側へと巻かれていく。
【0053】
以上のような巻き上げ動作が繰り返され、ドラムリール125にケーブル123が多層に巻き上げられる。ケーブル123の巻き出し時は、ドラムリール125が上述の巻き上げ時とは逆方向に回転する。ケーブル123は、上の層から順次いずれかの側板1252側へと向かって巻き出されていく。
【0054】
図5(b)は、レーザ計測器13による計測結果から生成された外形データによる、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の外形を示した図である。
図5(b)は、2枚の側板1252の中間位置まで3層目のケーブル123が巻かれた状態を示している。この状態において、ドラムリール125のリール部1251に巻き上げられているケーブル123の長さの算出について以下に説明する。これらの算出は、情報処理装置14の特定部1413により行われる。
【0055】
まず、
図5(b)に示すようにケーブル123のケーブル径データと外形データにより、ケーブル123の巻き出し位置Wを求める。巻き出し位置Wは、
図5(b)において、最も外側の層から上方へケーブルが繰り出されている部分のリール部1251の回転軸Q方向における位置である。位置Wは、リール部1251の端部、すなわち側板1252(
図5(b)では右側の側板1252)の内側面からの長さAを算出することにより特定される。
【0056】
そして、長さAをケーブル径(ケーブル123の直径)rで除することにより、最外周まで巻き上げられたケーブル123の列数aが算出される。
図5(b)においては、最外周まで巻き上げられたケーブル123の列は、列a1、列a2、列a3、列a4、列a5、列a6、列a7、列a8、列a9で示され、列数aは9列である。
【0057】
続いて、ケーブル径データより、ケーブル123が巻き上げられている部分の最外周の直径である巻き上げ径Kを算出する。そして、巻き上げ径Kからリール部1251の直径であるリール直径Rを減じて、2で除して、さらにケーブル径rで除することにより、層数kが算出される。
図5(b)においては、kは3層である。
図5(b)において、長さBで示される範囲に巻かれたケーブル123は、層数は(k-1)であり、
図5(b)においては、2層である。また、この範囲における列数をbとすると、bはBをケーブル径rで除することにより算出され、
図5(b)においては、長さBで示される範囲に巻かれたケーブル123の列は、列b1、列b2、列b3、列b4、列b5、列b6、列b7、列b8、列b9で示され、列数bは9列である。
【0058】
以上のことから、
図5(b)において、1層目に巻かれているケーブル123の長さは、
(R+r)×π×(a+b)
2層目に巻かれているケーブル123の長さは、
(R+3r)×π×(a+b)
3層目に巻かれているケーブル123の長さは、
(R+5r)×π×a
となり、ドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さは、これらの合計である
【0059】
一般式として表すと、ドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さL1は、最外周までの巻かれている層数をnとすると
【数1】
となる。
【0060】
ドラムリール125から巻き出されているケーブル123の長さは、ケーブル全長からドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さを減じた長さある。
すなわち、データ取得部1411で取得されたケーブル長、すなわちケーブル123の全長を示す長さをLとすると、ドラムリール125から巻き出されているケーブル123の長さL2は、
【数2】
として算出される。
【0061】
図6は、ブーム121の仰俯角に基づいたグラブバケット124の高さ位置の算出を説明するための図である。
図6において、グラブバケット124の高さを算出するために、例えば、ブーム121の下方端位置P(すなわち、ブーム121の傾斜動作の基準位置)に対応する基準水平位置hからの長さH1を算出する。
【0062】
ブーム121の水平方向に対する傾斜角(仰俯角)λは、情報処理装置14のデータ取得部1411により、傾斜計から仰俯角データとして取得することができる。
図6(a)は、ブームの仰俯角λが比較的大きい状態、
図6(b)は、仰俯角λが比較的小さい状態を示している。
【0063】
図6(a)(b)において、ドラムリール125から巻き出されたケーブル123の長さのうち、ドラムリール125から滑車122までの長さをMとし、滑車122から吊り下がった基準水平位置hまでの長さをH2とする。基準水平位置hからグラブバケット124までの長さは上述のようにH1とする。
【0064】
巻き出されたケーブル123の長さL2は、
L2=M+H1+H2
となり、
【数3】
である。L2は、上述のように算出されるので、MとH2が算出できれば、基準水平位置hからグラブバケット124までの長さH1が算出できる。
さらに、算出された長さH1から、基準水平位置hの水面Sからの高さを差し引くことで、水面Sからのグラブバケット124の位置を算出することができる。
【0065】
ブーム121の長さは既知であり、記憶部1415に記憶されている。この長さをTとすると、長さH2は、
H2=T×sinλ
として算出できる。
【0066】
ブーム121の下方端位置Pとドラムリール125の位置とを結ぶ直線とブーム121とがなす角をμとする。
図6(a)(b)に示すように、ブーム121の作動により、角度λ、角度μは変化するが、位置Pとドラムリール125の位置との関係は不変である。従って、位置Pからドラムリール125までの長さ、及び、角度λ+角度μは一定である。角度λは傾斜計126より得られるので、角度μは算出できる。
【0067】
以上のことから、位置P、ドラムリール125、滑車122を結ぶ三角形は、2辺とその2辺が挟む角が既知となる。従って、3辺のうち未知である辺の長さMを算出できる。
以上のようにして、
図6における長さH2、Mを算出することができ、ドラムリール125から巻き出されたケーブル123の長さL2も上記の(式2)により算出できる。従って、上記の(式3)に基づいて、グラブバケット124の基準水平位置hに対する長さH1を算出することができ、水面Sからのグラブバケット124の位置も算出することができる。
【0068】
図7は、情報処理装置14における処理の手順を示したフローチャートである。情報処理装置14のプロセッサ141は、メモリ142に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、
図7のフローチャートに従う処理を行う。
【0069】
情報処理装置が、
図7のフローチャートに従う処理を行う前提として、ユーザの操作によりクレーン12が作動してブーム121の仰俯角が変更可能な状態となっており、また、ユーザの操作により、ドラムリール125の回転制御を行い、ケーブル123の巻き出し、巻き上げが可能な状態となっているものとする。
【0070】
まず、情報処理装置14のデータ取得部1411は、ケーブル123の巻き出し長の算出、グラブバケットの高さの算出に必要な各種データを取得する(ステップS501)。取得するデータとしては、記憶部1415に予め記憶されているケーブル長データ、リール径データ、ケーブル径データ、ブームの長さを示すデータ、ブーム121の下端位置からドラムリール125までの距離を示すデータ、基準水平位置hの水面Sからの高さデータがある。
【0071】
続いて、形状データ生成部1412は、レーザ計測器13より計測データを取得し、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形を表す外形データを生成する(ステップS502)。続いて、データ取得部1411は、形状データ生成部1412で生成された、ケーブル123の外形を表す外形データを取得する(ステップS503)。
【0072】
続いて、データ取得部1411は、傾斜計126より、ブーム121の仰俯角を示す仰俯角データを取得する(ステップS504)。
続いて、特定部1413は、ケーブル123の外形あるいはブーム121の仰俯角に変化があったか否かを確認し、ドラムリール125あるいはブーム121が作動したか否かを判断する(ステップS505)。ドラムリール125あるいはブーム121が作動しなかったと判断した場合(ステップS505:No)、ステップS502に戻る。
【0073】
ドラムリール125あるいはブーム121が作動したと判断した場合(ステップS505:Yes)、特定部1413は、データ取得部1411が取得したケーブル長データ、リール径データ、ケーブル径データ、及び、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形を表す外形データに基づいて、ケーブル123の巻き上げ長(ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の長さ)を算出する(ステップS506)。上述のように、ドラムリール125に巻き上げられているケーブル123の外形より、巻き出し位置Wを求め、ケーブル123の巻かれている列数、層数を算出することにより、上述の式(1)に基づいて、ケーブル123の巻き上げ長L1を算出する。
【0074】
続いて、特定部1413は、ケーブル123の巻き出し長(ドラムリール125から繰り出されているケーブル123の長さ)を算出する(ステップS507)。算出したケーブル123の巻き上げ長L1から、上述の(式2)に基づいて、ケーブル123の巻き出し長L2を特定する。
【0075】
続いて、特定部1413は、グラブバケット124の水面Sに対する高さ位置を特定する(ステップS508)。データ取得部1411で取得したブーム121の仰俯角を示す仰俯角データ、ブームの長さを示すデータ、ブーム121の下端位置からドラムリール125までの距離を示すデータとから、
図6(b)に示した長さM、長さH2を算出する。そして、ステップS506で特定したケーブル123の巻き出し長L2とから、上述の(式3)に基づいて、長さH1を特定する。
そして、特定された長さH1から、基準水平位置hの水面Sからの高さを差し引くことで水面Sからのグラブバケット124の位置を算出することができる。
【0076】
続いて、入出力制御部1414は、特定したケーブル123の巻き出し長、グラブバケットの高さ方向位置を数値、画像を用いて表示装置144に表示する(ステップS509)。続いて、ステップS502に戻って処理を続ける。
【0077】
以上のようにして、情報処理装置14は、ドラムリール125の作動によりケーブル123の巻き出し長に変化があった場合に、その巻き出し長を特定することができる。また、ブーム121の作動によりブーム121の仰俯角に変化があった場合に、グラブバケット124の水面Sからの位置を特定することができる。従って、情報処理装置は、ケーブル123の巻き出し長、グラブバケット124の水面Sからの位置を管理することができる。
【0078】
[変形例]
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0079】
(1)上述の実施形態においては、ブーム121の仰俯角は、ブーム121に傾斜計126を設置することにより取得するものとしたが、ブーム121の作動に追従して移動しない位置にレーザ距離計、カメラ等を設置して、ブーム121の各箇所までの距離あるいはブーム121を撮像した画像に基づいてブーム121の仰俯角を取得してもよい。
【0080】
(2)上述の実施形態においては、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の外形をレーザ計測器13で走査することにより取得するものとしたが、撮像センサを備えたカメラを用いて2次元画像を撮像することにより外形データを取得してもよい。
【0081】
(3)上述の実施形態において、ドラムリール125に巻かれたケーブル123の長さを算出する際に、巻かれているケーブル123の列数をケーブル径に基づいて算出することとしたが、予めドラムリール125に巻くことができる最大列数を設定しておいてもよい。
図6(b)においては、巻くことができる最大列数がわかれば、巻き出し位置Wを求めることにより、3層に巻かれている列数と2層に巻かれている列数とを求めることができる。
【0082】
(4)上述の実施形態においては、グラブバケット124の位置の特定は、クレーン12のブーム121の下端に対応する基準水平位置hを基準に特定するものとしたが、位置の基準はこれに限定されず、ドラムリール125と位置Pの距離及び基準水平位置hに対しての垂直方向位置が変化しない位置、あるいは変化しても位置関係が特定できる位置であれば、どの位置でもよい。例えば、起重機船11の甲板面の高さを基準としてもよい。
【0083】
(5)上述の実施形態においては、レーザ計測器13はドラムリール125の正面方向に設けられるものとしたが、これに限定されず、レーザ計測器13をドラムリール125の正面に対して斜め方向に設けてもよい。すなわち、
図2(a)においては、レーザ計測器13はドラムリール125のリール部1251の長手方向に対して直交する方向を向くように設置されているが、リール部1251の長手方向に対して直交せず縦方向又は横方向に傾斜した方向を向くように設置してもよい。
【0084】
レーザ計測器13をこのように設置すると、設置される傾斜角度によっては、レーザ光Cが一方の側板1252に遮られることがあり、
図5(b)に示すようなケーブル123の巻き上げられた複数の列のうち、一部(側板1252に近い位置の列)の外形データが得られない場合がある。
【0085】
このような場合であっても、ドラムリール125に巻き上げることができる最大の列数(
図5(b)の場合は18列)が既知であれば、列数a、列数bの一方のみが算出できれば、他方も算出することができる。従って、ドラムリール125に巻かれているケーブル123の長さを算出することができる。
【符号の説明】
【0086】
1・・ケーブル巻き出し長を特定するためのシステム、11・・起重機船、12・・クレーン、13・・レーザ計測器、14・・情報処理装置、121・・ブーム、122・・滑車、123・・ケーブル、124・・グラブバケット、125・・ドラムリール、126・・傾斜計、141・・プロセッサ、142・・メモリ、143・・インタフェース、144・・表示装置、145・・入力装置、1251・・リール部、1252・・側板、1411・・データ取得部、1412・・形状データ生成部、1413・・特定部、1414・・入出力制御部、1415・・記憶部、S・・水面、C・・レーザ光。