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  • 特開-物品搬送用トレイおよびその製造方法 図1
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  • 特開-物品搬送用トレイおよびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062633
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】物品搬送用トレイおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/36 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
B65D1/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170799
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595155439
【氏名又は名称】伊藤忠プラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】大原 喜義
(72)【発明者】
【氏名】副島 隆弘
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA13
3E033BA15
3E033CA01
3E033DD01
3E033DD08
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】 重量物を搬送する物品搬送用トレイを、搬送するために必要な強度を有したうえでABS以外の材料で実現する。
【解決手段】 周側にフランジFを突設した物品Aを没入して収容するための凹部T1と、上記凹部T1の開口部6周縁に物品Aから突設されたフランジFをもって物品Aを懸架するためのフランジ受け部10を有する合成樹脂製の物品搬送用トレイTにおいて、トレイTを凹部T1中の底部2を凹設したトレイ底部1と凹部T1中の開口部6を貫設したトレイ胴部5に分割するとともに、これらを熱可塑性樹脂材料を用いてブロー成形により中空状に構成し、上記トレイ底部1とトレイ胴部5を接合する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側にフランジを突設した物品を搬送するための物品搬送用トレイにおいて、
上記物品を没入して収容するための凹部と、上記凹部の開口部周縁に上記フランジをもって上記物品を懸架するためのフランジ受け部を有し、
上記凹部は、互いに分割される上記凹部中の底部を凹設したトレイ底部および上記凹部中の開口部を貫設したトレイ胴部により設けられ、
上記トレイ底部および上記トレイ胴部はブロー成形により成形可能な合成樹脂材料により中空状に構成されるとともに接合されて一体化されてなることを特徴とする物品搬送用トレイ。
【請求項2】
上記合成樹脂材料として高密度ポリエチレンを用いた請求項1記載の物品搬送用トレイ。
【請求項3】
上記フランジ受け部は、成型されたエラストマーによりなり、上記トレイ胴部の開口部周縁に接合されてなる請求項1または請求項2記載の物品搬送用トレイ。
【請求項4】
上記凹部を少なくとも3カ所以上設けた請求項1から請求項3の何れかに記載の物品搬送用トレイ。
【請求項5】
周側にフランジを突設した物品を搬送するための物品搬送用トレイの製造方法において、
上記物品搬送用トレイは、上記物品を没入して収容するための凹部と、上記凹部の開口部周縁に上記フランジをもって上記物品を懸架するためのフランジ受け部を有し、上記凹部は、互いに分割される上記凹部中の底部を凹設したトレイ底部および上記凹部中の上記開口部を貫設したトレイ胴部により設けられ、
上記物品搬送用トレイを製造するにあたり、上記トレイ底部および上記トレイ胴部のそれぞれについて、熱可塑性樹脂材料を用いたブロー成形により合成樹脂を中空状に成形することにより得るとともに、当該ブロー成形を行うに際し、射出成形により得たエラストマー製のフランジ受け部を当該フランジ受け部が嵌入される切り欠きを彫り込んだ金型にセットしてインサート成形すること、その後、上記トレイ底部および上記トレイ胴部を接合することを特徴とする物品搬送用トレイの製造方法。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂材料として高密度ポリエチレンを用いた請求項5記載の物品搬送用トレイの製造方法。
【請求項7】
上記フランジ受け部を複数個同時に射出成形するにあたり、当該複数のフランジ受け部間に形成されるランナーを残すとともに、上記インサート成形する際において、ランナー溝も彫り込んだブロー用金型を使用する請求項5或いは請求項6記載の物品搬送用トレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はフランジを有した物品の搬送に際し梱包するための物品搬送用トレイおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複雑な形状を有し、かつ重量が嵩む物品、つまり重量物を搬送するに際して梱包するためには、搬送中に物品が遊動して破損しないように内壁が物品の形状に沿った形状に成形された搬送用トレイが必要となる。
【0003】
物品の形状に沿った内壁を形成するにはトレイを合成樹脂で成形することが一般的であり、成形方法としては真空成形が最適とされていた(特許文献1、2など)。
【0004】
従来において、真空成形が最適とされているのは、材料に強度が高いアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(Acrylonitrile butadiene styrene:「ABS」とも呼ぶ)を使用でき、重量物に耐えうる強度を有するトレイが実現できると考えられていたからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-88889
【特許文献2】特開平3-56262
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来技術においては、例えば、真空装置のチャンバー部材、モータの筐体部、配管の継手部材などのフランジを有した重量物を搬送するに際して梱包するために用いられる搬送用トレイとしては、トレイの強度を勘案し真空成形によるABS製のものが一般的であった。しかしながら、当該部材については、日光、紫外線で強度が劣化するなど耐光性において弱いという問題があった。また、当該部材については、強度が高いものの、柔軟性が低いことから、衝撃に対して脆く、耐衝撃性が低いという問題があり、上記用途のトレイを構成する素材について、より耐衝撃性が高い素材であることが望まれた。また、より上位の課題として、上記の用途の搬送用トレイについて、ABS製のものに限られることは、材料の選択肢が狭く、材料の調達面において障害事項となることから、ABS製以外の手段により実現すること自体が望まれていた。つまり、重量物を搬送するために十分な強度を有することと、比較的複雑な形状に成形可能であること、さらに耐光性或いは耐衝撃性に優れること、或いは材料の調達が容易であることを両立する物品搬送用トレイは実現されていなかった。
【0007】
本願発明は上記の従来技術の問題点に鑑みて創作されたものであり、十分な強度を有する物品搬送用トレイを真空成形によるABS製以外の手段で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明の物品搬送用トレイは、周側にフランジを突設した物品を搬送するための物品搬送用トレイにおいて、上記物品を没入して収容するための凹部と、上記凹部の開口部周縁に上記フランジをもって上記物品を懸架するためのフランジ受け部を有し、上記凹部は、互いに分割される上記凹部中の底部を凹設したトレイ底部および上記凹部中の開口部を貫設したトレイ胴部により設けられ、上記トレイ底部および上記トレイ胴部はブロー成形により成形可能な合成樹脂材料により中空状に構成されるとともに接合されて一体化されてなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、上記の物品搬送用トレイにおいて、トレイを構成する合成樹脂材料として高密度ポリエチレン( High Density Polyethylene: 「HD-PE」とも呼ぶ) を用いたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、上記の物品搬送用トレイにおいて、上記フランジ受け部は、成型されたエラストマーによりなり、トレイ胴部の開口部周縁に接合されてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、上記の物品搬送用トレイにおいて、上記凹部を少なくとも3カ所以上設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、上記の物品搬送用トレイを製造するにあたり、上記トレイ底部および上記トレイ胴部のそれぞれについて、熱可塑性樹脂材料を用いたブロー成形により合成樹脂を中空状に成形することにより得るとともに、当該ブロー成形を行うに際し、射出成形により得たエラストマー製のフランジ受け部を当該フランジ受け部が嵌入される切り欠きを彫り込んだ金型にセットしてインサート成形すること、その後、上記トレイ底部とトレイ胴部を接合することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、上記の物品搬送用トレイを製造するにあたり、その際に用いられる熱可塑性樹脂材料としてHD-PEを用いたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、上記の物品搬送用トレイを製造するにあたり、エラストマー製のフランジ受け部を複数個同時に射出成形する際、フランジ受け部間に形成されるランナーを残すとともに、インサート成形にあたりランナー溝も彫り込んだブロー用金型を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の物品搬送用トレイおよびその製造方法においては、重量物を搬送する物品搬送用トレイを、搬送するために必要な強度を有したうえでABS以外の材料で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の物品搬送用トレイの分解斜視図。
図2】本願発明の物品搬送用トレイの使用方法を示す斜視図。
図3】本願発明の物品搬送用トレイのトレイ胴部の開口部周縁付近の分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願発明の物品搬送用トレイの具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。本願発明の実施の形態である物品搬送用トレイTは、周側にフランジFを突設した物品Aを没入して収容するための凹部T1と、上記凹部T1の開口部6周縁に物品Aから突設されたフランジFをもって物品Aを懸架するためのフランジ受け部10を有する合成樹脂製のものである。ここでは、収容する物品Aとして周側にフランジFを突設した重量物である物品Aを想定し、上記物品Aを収容するための凹部T1を3カ所設けた物品搬送用トレイTを例にとっている。
【0018】
本実施形態においては上記の物品搬送用トレイTを凹部T1中の底部2を凹設したトレイ底部1と凹部T1中の開口部6を貫設したトレイ胴部5に互いに分割された構成とされる。言い換えると、物品搬送用トレイTに設けられる凹部T1は、トレイ底部1とトレイ胴部5の底部2と開口部6により設けられる。さらに、物品搬送用トレイTを構成するトレイ底部1とトレイ胴部5について、熱可塑性樹脂を用いてブロー成形により中空状に構成される合成樹脂により構成する。つまり、トレイ底部1とトレイ胴部5はブロー成形により成形可能な合成樹脂材料により中空状に構成されることになる。
【0019】
このブロー成形については、より詳細には、熱により柔らかくした状態の熱可塑性樹脂材料をパイプ状に押し出して、この樹脂が柔らかい状態で上記のパイプ状とされた樹脂内に圧縮エアーを吹き込むことにより、当該樹脂を金型に押し当てて冷却し、固化させることにより成形する合成樹脂材料の成型手法である。なお、上記の合成樹脂を得るための熱可塑性樹脂材料として、ここではHD-PEを使用しているが、ブロー成形により成形可能な樹脂材料であれば、これに限られないことはもちろんである。また、ブロー成形により成形可能な合成樹脂材料の他の例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)樹脂など、広く一般的に用いられる熱可塑性樹脂材料が挙げられる。
【0020】
上記のトレイ底部1とトレイ胴部5はそれぞれ中空状に構成されることにより、それぞれが6つの壁面に囲まれた筐体状に構成されるが、さらに凹設した底部2を構成する壁面、貫設した開口部6を構成する環状の壁面が存在するのでABSより強度が劣る熱可塑性樹脂を用いた場合でも十分な強度を得ることが可能となる。
【0021】
ここでは、上記のフランジ受け部10について、成型されたエラストマーによりなる別部材により構成し、トレイ胴部5の開口部6周縁に接合する。なお、このエラストマーは、弾性を有した高分子樹脂材料であり、特に加熱して射出成形することによって複雑な形状にも成型加工を行なえるエラストマー材料、例えば、熱可塑性エラストマーを用いると良い。また、フランジ受け部10は、その形状に成型加工であれば、エラストマーに限らず、トレイ底部1とトレイ胴部5を構成する合成樹脂、具体的にはHD-PEとは異なる材料により構成しても良い。図3に示されるとおり、上記フランジ受け部10は四角のブロック状の本体の上面に物品Aの周側から突設されたフランジFを受け止めるための凹陥部11を凹設した構成よりなり、トレイ胴部5の開口部6内周より突設された環状の段部7の上面の切り欠き8に下方が嵌入されるとともに接合される。
【0022】
また、図3に示されるとおり、ここでは上記フランジ受け部10を複数個同時に射出成形するにあたり、複数のフランジ受け部10間に形成されるランナー12を残し、フランジ受け部10を上記切り欠き8に嵌入する際に、当該ランナー12部分について、各切り欠き8間に設けられる環状の段部7の上面に凹設した溝9に同時に嵌入することにより、確実な固定を実現している。なお、ここでは、一対のフランジ受け部10間にランナー12を残した例について説明を行ったが、3つ以上のフランジ受け部10に対して、隣接するフランジ受け部10間のそれぞれにランナー12を残した構成とし、当該ランナー12を残した位置のそれぞれに対応して、上記段部7の上面に溝9を設けた構成を採っても良い。
【0023】
ここでは、トレイ胴部5のブロー成形に際し、エラストマー製のフランジ受け部10およびランナー12を金型の上記切り欠き8の箇所および溝9の箇所にセットしてインサート成形することにより接合手段としている。
【0024】
上記のトレイ底部1とトレイ胴部5は、底部2と開口部6の位置を合致させて重ね合わして接合することにより一体化されて物品搬送用トレイTが構成される。
【0025】
上記のトレイ底部1とトレイ胴部5との間の接合手段としては、ここではリベット(図示せず)を使用している。図中符号3はトレイ底部1の上方に設けられたリベットの貫通孔、図中符号4は貫通孔の下方に設けられた工具の挿入溝である。リベットについては、樹脂リベットと金属リベットの2種類が一般的であるが、何れを用いても良い。リベットによる接合の利点としては、コストが安く、丈夫であること、さらに見た目が綺麗に仕上がるといったことが挙げられる。なお、トレイ底部1とトレイ胴部5との間の接合手段としては、リベットによる接合に限られず、合成樹脂製のトレイ部材の公知の接合手段となるビス止め、熱溶着、或いは超音波溶着といった接合手段を選択することも可能である。
【0026】
続いて、以上説明を行った実施形態の物品搬送用トレイTにより得られる作用および効果について説明を行う。本実施形態の物品搬送用トレイTにおいては、成形方法として真空成形でなく、ブロー成形を用いている。一方、従来においては、ブロー成形は使用する樹脂材料として真空成形のようにABSを使えず、例えばHD-PEを使うことになることから、そのままでは十分な強度を得られないと考えられていた。
【0027】
上記に関し、本実施形態においては周側にフランジFを突設した物品Aを没入して収容するための凹部T1と、上記凹部T1の開口部6周縁に物品Aから突設されたフランジFをもって物品を懸架するためのフランジ受け部10を有する合成樹脂製の物品搬送用トレイTを一体に成形しないで、物品搬送用トレイTを凹部T1中の底部2を凹設したトレイ底部1と凹部中の開口部を貫設したトレイ胴部5に分割されてなる構成としている。そして、トレイ底部1とトレイ胴部5のそれぞれを熱可塑性樹脂材料を用いてブロー成形により中空状に構成し、成形されたトレイ底部1とトレイ胴部5を接合することにより一つの物品搬送用トレイTとしている。
【0028】
上記において、物品搬送用トレイTを構成する各トレイ底部1とトレイ胴部5はそれぞれ中空状に構成されるが、これはそれぞれが6面に囲まれた筐体状に構成されることを意味する。その結果、例えばABSより強度が劣るHD-PEなどの熱可塑性樹脂材料を用いた場合でも十分な強度を得ることが可能となる。つまり、重量物を搬送する物品搬送用トレイTを、搬送するために必要な強度を有したうえで真空成型によるABS製以外の比較的強度が劣るものも含んだ合成樹脂材料を成型することにより実現することができることになる。つまり、ブロー成形により成型することが可能な合成樹脂材料であれば、先に例示したように比較的一般的な多様な合成樹脂材料より選択することが可能となり、用いる合成樹脂材料の選択や調達が容易となる。また、例えば、ABS製よりも強度の点では劣るものの低コストで得られるなど、その他の特徴においてABS製より優れた合成樹脂材料を選択することも可能となる。
【0029】
また、物品搬送用トレイTは、合成樹脂により成型して得られることから、周側にフランジFを突設した物品Aのように比較的複雑な外形に沿った内壁を設けることができる。
【0030】
また、物品搬送用トレイTの特にトレイ底部1とトレイ胴部5を構成する合成樹脂材料としてHD-PEを用いることによりABSに比べて耐光性が高くなり、さらに剛性が高まるので、衝撃による割れの発生が少ないトレイが実現される。つまり、耐衝撃性の高いトレイが実現される。
【0031】
また、フランジ受け部10について、トレイ底部1とトレイ胴部5を構成する合成樹脂とは別材料となる成形されたエラストマーによりフランジ受け部10を構成し、さらにトレイ胴部5の開口部6周縁に接合すること、或いは、熱可塑性樹脂を用いてブロー成形し、トレイ底部1とトレイ胴部5を形成するに際し、射出成形により得たエラストマー製のフランジ受け部10をフランジ受け部10が嵌入される切り欠きを彫り込んだ金型にセットしてインサート成形することにより、成型樹脂がむき出しになって物品AのフランジFが滑って、固定できないことが防止でき、さらにエラストマーが備える硬度が低いことや弾性変形可能な特徴が作用することによって、外部からの揺れや震動によって加わる衝撃を吸収する力が働き物品Aへのダメージを防止することができる。
【0032】
また、エラストマー製のフランジ受け部10を複数個同時に射出成形するにあたり、フランジ受け部10間に形成されるランナー12を残すとともに、インサート成形する際において、ランナー溝も彫り込んだブロー用金型を使用するので、フランジ受け部10をフランジ受け部10の切り欠き8に嵌入する際に、このランナー12を段部7の上面に凹設した溝9に同時に嵌入することにより、個々のフランジ受け部10の成型品が切り欠き8から脱落し難くなる。その結果、物品搬送用トレイTにおけるトレイ胴部5に対するフランジ受け部10の確実な固定が実現される。
【0033】
また、物品搬送用トレイTには、物品Aを収容するための凹部T1が3カ所設けられており、さらに物品搬送用トレイTにより搬送或いは収容する対象とする物品Aについて、重量物であることから、例えば、1個あたりの重量が20kg以上の重量物であったと仮定すると、物品搬送用トレイTは当該重量物である物品Aを少なくとも3個保持することになる。つまり、保持する物品Aの総重量が60kg以上であることになり、一般的なブロー成型されたトレイでは荷重を支えられない状況となる。しかしながら、本実施形態の物品搬送用トレイTにおいては、物品Aを収容するための凹部T1を3カ所設けた構成において、トレイ底部1とトレイ胴部5とからなる上下に分割し、さらに別部材よりなるフランジ受け部10を備えたトレイ構造を採用していることにより、フランジ受け部10およびその近傍が受ける力を分散し、ABS以外の材料により当該荷重を支えることができる。また、凹部T1について、3カ所を超えて設けた場合にも、物品搬送用トレイTが保持する総重量はさらに増加することになるが、フランジ受け部10およびその近傍が受ける力を分散する作用は同様に得られることから、物品搬送用トレイTの構成は有効である。
【0034】
なお、以上説明を行った実施形態においては、物品搬送用トレイTにより搬送或いは収容する対象とする物品Aについて、フランジFを突設した重量物であった場合について例示して説明を行った。例えば、物品Aについて、フランジFを突設した重量物の一例となるモータの筐体部やモータ製品とした場合においては、物品AのフランジF部分以外の部分が衝撃や他部材が当接されることに対して脆弱であって、トレイによってフランジF部分以外の部分により物品Aを保持する形態とすると、モータの筐体部やモータ製品が損傷などを受けることが懸念される。従って、本実施の形態の物品搬送用トレイTによる物品を没入して収容するための凹部T1とフランジ受け部10を用いた構成はモータの筐体部やモータ製品を搬送することにおいて、より好適な構成となる。
【符号の説明】
【0035】
T 物品搬送用トレイ
T1 凹部
A 物品
F フランジ
1 トレイ底部
2 底部
3 貫通孔
5 トレイ胴部
6 開口部
7 段部
8 切り欠き
9 溝
10 フランジ受け部
11 凹陥部
12 ランナー
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側にフランジを突設した物品を搬送するための物品搬送用トレイにおいて、
上記物品を没入して収容するための凹部と、上記凹部の開口部周縁に上記フランジをもって上記物品を懸架するためのフランジ受け部を有し、
上記凹部は、互いに分割される上記凹部中の底部を凹設したトレイ底部および上記凹部中の開口部を貫設したトレイ胴部により設けられ、
上記トレイ底部および上記トレイ胴部はブロー成形により成形可能な合成樹脂材料により中空状に構成されるとともに接合されて一体化されてなることを特徴とする物品搬送用トレイにおいて、
上記フランジ受け部は、成型されたエラストマーによりなり、上記トレイ胴部の開口部周縁に接合されてなることを特徴とする物品搬送用トレイ。
【請求項2】
上記合成樹脂材料として高密度ポリエチレンを用いた請求項1記載の物品搬送用トレイ。
【請求項3】
上記凹部を少なくとも3カ所以上設けた請求項1または2記載の物品搬送用トレイ。
【請求項4】
周側にフランジを突設した物品を搬送するための物品搬送用トレイの製造方法において、
上記物品搬送用トレイは、上記物品を没入して収容するための凹部と、上記凹部の開口部周縁に上記フランジをもって上記物品を懸架するためのフランジ受け部を有し、上記凹部は、互いに分割される上記凹部中の底部を凹設したトレイ底部および上記凹部中の上記開口部を貫設したトレイ胴部により設けられ、
上記物品搬送用トレイを製造するにあたり、上記トレイ底部および上記トレイ胴部のそれぞれについて、熱可塑性樹脂材料を用いたブロー成形により合成樹脂を中空状に成形することにより得るとともに、当該ブロー成形を行うに際し、射出成形により得たエラストマー製のフランジ受け部を当該フランジ受け部が嵌入される切り欠きを彫り込んだ金型にセットしてインサート成形すること、その後、上記トレイ底部および上記トレイ胴部を接合することを特徴とする物品搬送用トレイの製造方法。
【請求項5】
上記熱可塑性樹脂材料として高密度ポリエチレンを用いた請求項記載の物品搬送用トレイの製造方法。
【請求項6】
上記フランジ受け部を複数個同時に射出成形するにあたり、当該複数のフランジ受け部間に形成されるランナーを残すとともに、上記インサート成形する際において、ランナー溝も彫り込んだブロー用金型を使用する請求項或いは請求項記載の物品搬送用トレイの製造方法。