(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062650
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】排泄通知システム
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20220413BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20220413BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
A61F5/44 S
A61G12/00 E
G01N27/12 A
G01N27/12 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170828
(22)【出願日】2020-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】591212132
【氏名又は名称】美藤 均
(72)【発明者】
【氏名】美藤 均
【テーマコード(参考)】
2G046
4C098
4C341
【Fターム(参考)】
2G046AA09
2G046DC18
4C098AA09
4C098CD08
4C098CD09
4C341JJ01
4C341LL10
4C341MR12
4C341MR15
4C341MR17
4C341MS02
4C341MS12
(57)【要約】
【課題】在宅介護や介護施設で排泄を介護者に通知できない被介護者の排泄を通知し、取扱いが簡単で安価な排泄通知システムを提供する。
【解決手段】排泄の判定は、気候、設置環境、個人差、排泄物の成分などの条件で湿度センサー1とニオイセンサー2の実測値は、短期的にも長期的にも変動する。そのため、本発明では短期移動平均値の長期移動平均値からの乖離値の0以上の値を夫々ニオイレベルと湿度レベルとし、表示デバイス5のLED個数又はグラフ面積に置換して表示する。
また排泄したにもかかわらず時間経過でニオイレベルや湿度レベルは少くなるが、リセットスイッチ4が押されるまでニオイレベルと湿度レベルの最大値に対応するLED個数又はグラフ面積は保持する。
介護者はこの表示デバイス5のLED個数又はグラフ面積の形状から容易に排泄の判断を行うことが出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の敷布団のシーツ下の肛門付近、又はスカートやズボンとおむつの間の下腹部に、ニオイセンサー又は湿度センサーの少なくともいずれか一つのセンサーと接続する排泄通知端末に於いて、該センサーの実測値から短期移動平均値と長期移動平均値を算出し、短期移動平均値の長期移動平均値からの乖離値の0以上の値をセンサーレベルとし、ニオイセンサー又は湿度センサーの少なくてもいずれか一つのセンサーレベルを表示デバイスのLED個数又はグラフ面積に置換して表示することを特徴とする排泄通知システム。
【請求項2】
請求項1記載の表示デバイスのLED個数又はグラフ面積は、前回のリセットスイッチが押された時から、次回のリセットスイッチが押されるまでの期間のセンサーレベルの最大値に対応するLED個数又はグラフ面積を保持することを特徴とする排泄通知システム。
【請求項3】
請求項1記載の排泄通知端末から無線でパソコン、スマートフォン又はタブレットなどのインテリジェント装置に送信されてきたニオイセンサー又は湿度センサーの少なくともいずれか一つのセンサーレベルは、インテリジェント装置で該センサーレベルの最大値に1未満の値を乗じた値を閾値として算出し、該閾値をインテリジェント装置は自動で閾値として設定する事を特徴とする排泄通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄を介護者に通知できない被介護者の排泄状況を介護者に通知する排泄通知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排便はニオイで検知するのが一番であるが、現在実用化されているニオイ検知用のニオイセンサーは、熱した金属酸化物半導体にニオイ成分が接触することで、金属酸化物半導体の抵抗値が変化しニオイ成分濃度を判定している。このセンサーは絶対値検知でなく、空気の清浄状態の抵抗値を基準とし、ニオイ成分が増えてくるに従って金属酸化物半導体の抵抗値が変化する割合をもってニオイ濃度を判定する相対比較の方法を取っている。
【0003】
ニオイセンサーは空気の計測時の実測値と、清浄状態の実測値の差で排泄判定するのであるが、下記の3つの条件でニオイセンサーの実測値が大きく変動するために、排泄を判定を0/1の2値で正確に判断することはできない。この排泄判定論理が困難である事がニオイで排泄物を判定するシステムが実用化されていない大きな理由である。
【0004】
1番目の問題点は、排泄物に含まれるニオイ成分は、被介護者の体調、食事、投薬などの条件によりニオイ成分が変化する。一方ニオイセンサーはニオイ成分毎に感度が異なるため、排泄判定を固定したニオイの実測値では閾値を設定できない点である。
【0005】
2番目の問題点は、基準となっている空気の清浄状態も、気候、空調、換気、清掃、被介護者の状況などの要因で基準ニオイレベルが短時間的にも長時間的にも変化するため、固定した基準値が設定できない点である。
【0006】
3番目の問題点は、被介護者の個人差、センサーの個体差、センサーの設置位置などの不確定要素から実測値の違いが生じる点である。
【0007】
排泄物のニオイを得る方法にも幾つもの手段が提案されている。1つは紙オムツの中に直接ニオイセンサーを設置するので検知精度は良いが被介護者に違和感を与え、介護者に紙オムツ交換のたびにニオイセンサーを取り付ける手間が掛かる欠点がる。
他にはパイプで肛門近くの空気を吸引した空気のニオイや湿度を計測する方式もあるが、パイプ内部に水分が結露しニオイ成分も吸い取られるため湿度もニオイも正確に計測できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2018-082118
【特許文献2】特願2012-175430
【特許文献3】特願2017-039587
【特許文献4】特開平10-192323
【特許文献5】特開2000-245779
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
排泄を放っておくと悪臭を放つ上に、雑菌の繁殖など衛生面でも問題を起こし。被介護者の肌に直接触れたままになっていれば、かゆみやかぶれなど皮膚疾患が生じる。さらに悪化すれば褥瘡を発症し、被介護者に苦痛を与えると共に健康を損なうことになる。
【0010】
解決しようとする課題は、被介護者の排泄の状況を介護者に迅速に知らせる事が出来、取扱いが簡単で安価な排泄通知システムを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
排泄の有/無の判断する事は、気象、環境、高度なニオイ分析装置、個人データ、健康状態などの膨大な試験データからAI等の技術を使えば可能であるが、市販されているニオイセンサーや湿度センサーとマイクロコンピュータだけで排泄を正確に判断する事は困難である。
一方、在宅介護や介護施設においては、介護者が簡単に操作ができ、その上安価な排泄通知システムが要求される。そこで本発明では、ニオイセンサーや湿度センサーからの実測値を人間が判断し易いレベル値に変換しバーグラフ又は円グラフに表示する。人間はバーグラフ又は円グラフの形状から、経験と勘で排泄の判断を行う、人間とマシンが補完し合う排泄通知システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
現状では介護者は被介護者が排泄していないかを観察するため定期的に掛け布団をはがし、オムツを開き排泄の点検をしなくてはいけない。これを毎日何度も行う事は介護者に取って大きな負担であり、最悪の場合には被介護者は点検間隔の間は排泄を処置してもらえない状態となっている。
【0013】
本発明の効果は、介護者は表示デバイスに表示されるグラフ形状を見る事で排泄状況が判断できるためオムツの点検回数が大幅に減り介護負担が軽くなり、その上被介護者も速やかな排泄処置のため被介護者の健康と清潔性が保てる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】ニオイセンサー実測値と移動平均値の相関を表したグラフ
【
図3】排泄通知端末から無線でインテリジェント装置に情報伝達する排泄通知システム
【
図4】寝具に横たわる被介護者に設置する排泄通知システム
【
図5】移動する被介護者に排泄通知システムを設置した場合の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のシステムの特徴は人間の経験と勘と知恵を生かし、マシンは人間が排泄を判断できる情報表示機能だけを持ち、人間とマシンが相互に補完しあえる調和のとれたシンプルなシステムとなっている。
【0016】
ニオイレベルまたは湿度レベルを数個のLEDアレイ、LEDマトリクス、液晶、有機ELなどのディスプレイに表示するためには、清浄時のニオイレベルまたは湿度レベルが0から始まってないと、表示で変動する範囲が小さくなって見難くなる。
例えば10個のLEDアレイに湿度60%を直接表示するとLEDは6個が点灯する。その後排尿で湿度が80%になってLEDの点灯個数は8個になるが、その差が2個で分かりにくい。しかし、これを湿度60%の時にLEDを0個点灯し、80%の時にLEDを9個点灯すればその差は9個となり一目瞭然に判別できる。
そのためニオイセンサーも湿度センサーも実測値でLEDを点灯させさせず、実測値を変換した湿度レベルとニオイレベルで表示させる必要がある。
【0017】
湿度レベルとニオイレベルは0から始める論理は、短期移動平均値と長期移動平均値の差(乖離値)を求めれば、清浄時は短期移動平均値と長期移動平均値が同じであるためレベルは0となる。乖離値の最大値は湿度とニオイで異なるがLEDの個数と最大レベル値を比例させることで少ないLEDで変動が分かりやすい表示となる。
【0018】
排泄通知システムの表示デバイスに表示するグラフは、ニオイレベルの理論上の最大値をグラフの最大値とし、レベル0はグラフの最小値とし、この間はレベルに比例してグラフに表示する。
介護者はグラフの形状を見て、過去に排便や排尿があった時と同様ならば、排便または排尿と判断し排泄介護を行い、排泄介護を完了した時にリセットスイッチを押し、ニオイレベルと湿度レベルを清浄値に戻す。
また、排泄通知端末はスマートフォンやタブレットやパソコン等のインテリジェント装置に無線でニオイレベル、湿度レベル、リセットスイッチを押されたタイミングを送信し、インテリジェント装置はニオイレベルと湿度レベルが過去の最大レベルより大きければ最大レベルを更新する。
最大レベル値を閾値にすると、通常は閾値を超える事がなくなるため1より小さい係数を乗じた値を自動的に閾値とし、次回にニオイレベル又は湿度レベルのいずれか一つが閾値を超えた時に表示と音声で排泄の通知を行う。
【0019】
本発明では、被介護者の敷布団のシーツ下の肛門付近又は、スカートやズボンとおむつの間の下腹部に、ニオイセンサー又は湿度センサーの少なくともいずれか一つのセンサーと接続する排泄通知端末に於いて、該センサーの実測値から短期移動平均値と長期移動平均値を算出し、短期移動平均値の長期移動平均値からの乖離値の0以上の値をセンサーレベルとし、ニオイセンサー又は湿度センサーの少なくてもいずれか一つのセンサーレベルを表示デバイスのLED個数又はグラフ面積に置換して表示する。
【実施例0020】
図1は湿度センサー1とニオイセンサー2をセンサーユニット6に格納し、センサーケーブル8でマイクロプロセッサー3と表示デバイス5とリセットスイッチ4からなる通知端末7に接続した排泄通知システムの構成図である。
表示デバイス5は2列計10個のLEDからなり、1列目の5個のLEDはニオイレベル、2列目の5個のLEDは湿度レベルを表す。5aではニオイレベルが5段階中の4段階であることを表し、5bは湿度レベルが5段階中の2段階であることを表す。表示デバイス5はLEDアレー、液晶、有機ELなどのであっても構わない。またLEDの個数は特に5個に特定するものではない。表示方法はバーグラフが一番簡単であるが、円グラフや他のグラフ形式であっても構わない。
【0021】
排泄があっても時間経過とともにニオイレベルも湿度レベルも減少し、
図2のH点のように排泄が無かったようになる。この現象を救うために、前回のリセットスイッチ4が押された時から、次回のリセットスイッチ4が押されるまでの期間のセンサーレベルの最大値に対応するバーグラフの長さ又は円グラフの角度は保持する。
【0022】
本発明の排泄通知システムの操作はリセットスイッチ5だけであるため操作は簡単でコストダウンが図れ、排便と排泄の判断は介護者の経験と勘で表示デバイスの表示の形状から排便と排尿を判断する、マシンと人間が補完し合うシステムである。
【0023】
図2はニオイセンサー2の実測値と移動平均からニオイレベルを算出する論理を表したグラフである。
ニオイの実測値は実線で表し、数分の短期移動平均値は中点線で表し、数時間の長期移動平均値は長点線で表し、短期移動平均値と長期移動平均値の乖離値は短点線で表している。
A点はニオイの清浄時の実測値で、
B点はオナラの短時間のプラスピーク時の実測値、
C点は掛け布団をはがし体位移動やおむつの点検でニオイや湿度が下がった時の短時間のマイナスピーク時の実測値、
D点は排便時の実測値、
E点は短時間移動平均値と長時間移動平均値の値が同じポイントを表し、
F点は短時間プラスピーク値時の短時間移動平均値の長時間移動平均値からの乖離値、
G点は排便時の短時間移動平均値の長時間移動平均値からの乖離値、
H点は短時間移動平均値と長時間移動平均値の値が同じポイント時の短時間移動平均値の長時間移動平均値からの乖離値、
Xは短時間移動平均値と長時間移動平均値の値が同じポイント時の実測値と清浄時との差
【0024】
ニオイセンサーの排泄のない清浄時の実測値は、センサーの設置位置、寝具の変更、季節などの要素の緩やかな変化に対応するため数時間の長期移動平均を用い、オナラや体位移動などの短時間で変化する要素を除外するために数分から十数分の短期移動平均を用いる。そのためグラフの短期移動平均値F点の波高値は、B点の実測値の波高値に比べて小さくなっている。
【0025】
短期移動平均値から長期移動平均値を引いた乖離値をニオイレベルとして用いる。E点でのニオイ実測値と清浄時のニオイ実測値と差X値が存在するが、同ポイントでのニオイレベル値は0である。つまりニオイ実測値は値が存在するのに、ニオイレベルは0となる現象が発生する。
【0026】
湿度もニオイも窓を開けて換気したり、空調機をON/OFFしたり、掛け布団をはがし被介護者の体位交換をすることで変化するが短期移動平均を用いることでこれらの影響を除外し、雨や乾燥など気候のゆっくりした変化は長期移動平均を用いてこれらの影響を除外する。
【0027】
図3は
図1に無線通信10でスマートフォン、パソコン又はタブレット装置等のインテリジェント装置9に常時ニオイレベルや湿度レベルを送信し、リセットスイッチ5を押されたタイミングも送信する。
インテリジェント装置9はニオイレベルと湿度レベルのそれぞれの最大レベルを記憶し、その最大レベルに1未満の係数Nを乗じた値を閾値として算出し、その閾値を自動で閾値として設定する。
【0028】
インテリジェント装置9はリアルタイムでニオイレベルと湿度レベルと表示するとともに、自動で設定した閾値を超えた時に介護者に表示と音声でリアルタイムの排泄を通知する。またリセットスイッチ5を押されたタイミングを被介護者11の排泄処置記録として作成する。
【0029】
図4は敷布団13に被介護者11が寝ている状態で、両膝と肛門で囲まれたエリアのシーツ12の下にセンサーユニット6を設置し、センサーケーブル8で排泄通知端末7を布団の外部の介護者が見やすい場所に設置した図である。
被介護者11は掛け布団をするため、敷布団13と掛け布団の間の空間にはニオイと湿気がこもり、ニオイセンサー2と湿度センサー1での実測が可能となる。
在宅介護の場合は、介護者と被介護者11の距離は近いため表示を見る機会も多いので音声による通報も不要である。
【0030】
図5は認知症で通常の生活を送っていても排泄を通知できない被介護者11に取り付けた排泄通知システムである。
本システムは小型のため、被介護者11のおむつ15とズボンまたはスカート14の間にセンサーユニット6を設置し、排泄通知端末7の表示デバイス6は介護者の目に付きやすい位置に設置することで、排泄があればすぐに介護者が発見できる。
高齢化人口が増加する社会に於いて、認知症や寝た切り状態で介護者に自分の排泄を通知できない被介護者が多くなっている。介護は「下の世話に尽きる」と言われているように、排泄の管理は介護者に大変な負担となっている。介護者は被介護者の排泄状況を定期的に観察し、排泄がある場合は速やかに排泄の処理を施さなければいけない。排泄処置が遅れると排泄物で寝具を汚したり、被介護者の健康を損ねるので、排泄を速やかに通知してくれる排泄通知システムは介護者に望まれている装置である。
排泄を介護者に知らせる事が出来ない被介護者には、高齢者ばかりでなく、痴ほう症や、病気で寝たきりになった若年者、赤ちゃんなども対象となり、市場規模は大きい。