IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛電株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マルチ殺菌装置 図1
  • 特開-マルチ殺菌装置 図2
  • 特開-マルチ殺菌装置 図3
  • 特開-マルチ殺菌装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062651
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】マルチ殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20220413BHJP
   A61L 2/26 20060101ALI20220413BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20220413BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220413BHJP
【FI】
A61L2/08
A61L2/26
A61L9/20
F24F7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170830
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】519118337
【氏名又は名称】愛電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148068
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】清田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】平田 義典
(72)【発明者】
【氏名】平井 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC05
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK50
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180KK04
4C180LL04
(57)【要約】
【課題】殺菌対象物だけでなく殺菌装置の周辺に存在する気体を積極的に殺菌することができるとともに、殺菌対象物に応じた殺菌の利便性及び安全性を向上させることができるマルチ殺菌装置を提供する。
【解決手段】本実施形態のマルチ殺菌装置1は、上面壁21と側面壁22と開口部23とを有する筒状壁2と、搬入口22Eと、照射部3と、筒状壁2の下端よりも下方に取り付けられる脚部4と、脚部4が接地する接地面と筒状壁2の下端との隙間を利用して殺菌空間内へ気体の出入りを可能にする通気口5と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面壁と、前記上面壁の周縁付近から下方に延びる側面壁と、前記側面壁の下方周縁に囲まれてなる開口部と、を有する筒状壁と、
前記筒状壁に囲まれてなる殺菌空間内に殺菌対象物を出し入れする出入口となる搬入口と、
前記筒状壁に取り付けられており前記殺菌空間内にある前記殺菌対象物及び/又は気体に殺菌光を照射する照射部と、
前記筒状壁の下端よりも下方に取り付けられる脚部と、
前記脚部が接地する接地面と前記筒状壁の下端との隙間を利用して前記殺菌空間内へ気体の出入りを可能にする通気口と、
を備えることを特徴とするマルチ殺菌装置。
【請求項2】
前記脚部は、前記筒状壁の移動を可能にする脚車である
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項3】
前記筒状壁に取り付けられており前記殺菌空間内にある気体を排出する排気部と、
前記殺菌空間内に充満した気体の量を充満気体量として前記排気部が前記充満気体量と同量又はそれ以下の量だけ前記気体を排出する制御を行う排気制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項4】
前記排気制御部は、前記照射部が照射を終了した照射終了時から所定の排気待機時間後に前記排気部が前記気体の排出を開始する制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項5】
前記筒状壁に取り付けられており、前記排気部が排出する気体が流れる流路において前記殺菌空間から前記排気部までの間に配置されている除菌フィルタと、
を更に備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項6】
前記搬入口は、前記側面壁の一部に設けられた扉を有し、
前記扉は、前記殺菌光が人体に影響を及ぼさない程度に前記殺菌光を透過する透過窓を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項7】
前記照射部が照射していることを示す作動標識を表示する標識表示部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項8】
前記扉を施錠又は解錠することができる鍵と、
前記照射部が照射を開始する際の操作ボタンとなる照射開始ボタンと、
前記照射開始ボタンの操作開始時に基づき前記鍵が前記扉を施錠する制御を行うとともに、前記照射部の照射終了時に基づき前記鍵が前記扉を解錠する制御を行う施錠制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項9】
前記殺菌対象物が前記殺菌空間内に配置されたことを感知したときに照射開始を自動的に操作にする自動開始時から所定の照射待機時間後に所定の照射時間だけ前記照射部が前記殺菌光を照射する制御を行う照射制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項10】
前記殺菌空間内に人を含む動物がいるか否かを感知する動物感知センサと、を更に備えており、
前記照射制御部は、前記殺菌空間内に前記動物がいることを前記動物感知センサが感知したときに前記照射部が前記殺菌光を照射しない制御を行う
ことを特徴とする請求項9のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項11】
前記殺菌対象物は、スーパーマーケットなどの商店で使用される1個の商店用買い物かご又は2個以上の前記商店用買い物かごを上下方向に集合させてなるかご集合体であり、
前記上面壁は、前記殺菌対象物を取り出すことが可能な程度の大きさを有する取出口を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項12】
前記取出口の高さを基準にして前記殺菌対象物の高さが一定の範囲内となるように前記殺菌対象物を上方に持ち上げる高さ調整部と、
を更に備えることを特徴とする請求項11に記載のマルチ殺菌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌光を用いて商店用買い物かごなどの殺菌対象物及び装置周辺に存在する空気を殺菌することに好適なマルチ殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の殺菌装置は、滅菌チャンバと、滅菌チャンバ内に配置されるメッシュ状のカゴと、カゴの上面・底面及び側面のそれぞれにおいて平行に配置された複数の紫外線ランプと、紫外線ランプと平行に配置された複数の分解用ランプと、滅菌チャンバ内が所定気圧になるまで滅菌チャンバ内を排気する真空ポンプと、排気された滅菌チャンバ内に酸素を含む気体を供給する制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5206546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の殺菌装置は、殺菌対象物だけでなく、殺菌装置の周辺に存在する空気などの気体を積極的に殺菌するという概念が存在しなかった。
【0005】
また、従来の殺菌装置は、殺菌対象物に応じて利便性及び安全性を向上させるという点で機能を特化しているとは言えないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、殺菌対象物だけでなく殺菌装置の周辺に存在する気体を積極的に殺菌することができるとともに、殺菌対象物に応じた殺菌の利便性及び安全性を向上させることができるマルチ殺菌装置を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前述した目的を達成するため、本発明のマルチ殺菌装置は、上面壁と、上面壁の周縁付近から下方に延びる側面壁と、側面壁の下方周縁に囲まれてなる開口部と、を有する筒状壁と、筒状壁に囲まれてなる殺菌空間内に殺菌対象物を出し入れする出入口となる搬入口と、筒状壁に取り付けられており殺菌空間内にある殺菌対象物及び/又は気体に殺菌光を照射する照射部と、筒状壁の下端よりも下方に取り付けられる脚部と、脚部が接地する接地面と筒状壁の下端との隙間を利用して殺菌空間内へ気体の出入りを可能にする通気口と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌装置の周辺に存在する気体を殺菌空間に対して自由に出入りさせることができる。
【0009】
(2)また、本発明のマルチ殺菌装置において、脚部は、筒状壁の移動を可能にする脚車であることが好ましい。
【0010】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、マルチ殺菌装置が重くて持ち運ぶことができなくても、マルチ殺菌装置を容易に移動させることができる。
【0011】
(3)また、本発明のマルチ殺菌装置は、筒状壁に取り付けられており殺菌空間内にある気体を排出する排気部と、殺菌空間内に充満した気体の量を充満気体量として排気部が充満気体量と同量又はそれ以下の量だけ気体を排出する制御を行う排気制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0012】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌した気体量分だけ殺菌空間内の気体を強制的に出入りさせることができる。
【0013】
(4)また、本発明のマルチ殺菌装置において、排気制御部は、照射部が照射を終了した照射終了時から所定の排気待機時間後に排気部が気体の排出を開始する制御を行うことが好ましい。
【0014】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌空間内にある気体の殺菌処理を終えた後に気体を自動的に出入りさせることができる。
【0015】
(5)また、本発明のマルチ殺菌装置は、筒状壁に取り付けられており、排気部が排出する気体が流れる流路において殺菌空間から排気部までの間に配置されている除菌フィルタと、を更に備えることが好ましい。
【0016】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌空間内にある気体を完全に殺菌処理できずに気体内に残留菌が存在したとしても、除菌フィルタが気体内の残留菌を確保することができる。
【0017】
(6)また、本発明のマルチ殺菌装置において、搬入口は、側面壁の一部に設けられた扉を有し、扉は、殺菌光が人体に影響を及ぼさない程度に殺菌光を透過する透過窓を有することが好ましい。
【0018】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、透過窓から透過する光の有無によって照射部が照射中か否かを装置周辺者に視認させることができる。
【0019】
(7)また、本発明のマルチ殺菌装置は、照射部が照射していることを示す作動標識を表示する標識表示部と、を更に備えることが好ましい。
【0020】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、照射部が照射中か否かを作動標識により視認させることができる。
【0021】
(8)また、本発明のマルチ殺菌装置は、扉を施錠又は解錠することができる鍵と、照射部が照射を開始する際の操作ボタンとなる照射開始ボタンと、照射開始ボタンの操作開始時に基づき鍵が扉を施錠する制御を行うとともに、照射部の照射終了時に基づき鍵が扉を解錠する制御を行う施錠制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0022】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、手動操作によって照射部が照射をしている際に扉が誤って開いてしまい、殺菌光が殺菌空間外に意図せず漏れてしまうことを防止することができる。
【0023】
(9)また、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌対象物が殺菌空間内に配置されたことを感知したときに照射開始を自動的に操作にする自動開始時から所定の照射待機時間後に所定の照射時間だけ照射部が殺菌光を照射する制御を行う照射制御部と、を更に備えることを特徴とすることが好ましい。
【0024】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、自動で照射を開始することができる。
【0025】
(10)また、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌空間内に人を含む動物がいるか否かを感知する動物感知センサと、を更に備えており、照射制御部は、殺菌空間内に動物がいることを動物感知センサが感知したときに照射部が殺菌光を照射しない制御を行うことが好ましい。
【0026】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌空間内に人やペットなどの動物が誤って侵入した場合に、照射部が動物に殺菌光を照射することを防止することができる。
【0027】
(11)また、本発明のマルチ殺菌装置において、殺菌対象物は、スーパーマーケットなどの商店で使用される1個の商店用買い物かご又は2個以上の商店用買い物かごを上下方向に集合させてなるかご集合体であり、上面壁は、殺菌対象物を取り出すことが可能な程度の大きさを有する取出口を有することが好ましい。
【0028】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌空間内に設置したまま殺菌対象物の商店用買い物かごを取出口から取り出すことができる。
【0029】
(12)また、本発明のマルチ殺菌装置は、取出口の高さを基準にして殺菌対象物の高さが一定の範囲内となるように殺菌対象物を上方に持ち上げる高さ調整部と、を更に備えることが好ましい。
【0030】
これにより、本発明のマルチ殺菌装置は、取出口から殺菌空間内に手を必要以上に入れることなく、取出口から殺菌対象物を容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のマルチ殺菌装置は、殺菌装置の周辺に存在する気体を殺菌空間に対して出入りさせることができるので、殺菌空間内に配置された殺菌対象物だけでなく殺菌装置の周辺に存在する気体を積極的に殺菌することができるとともに、殺菌対象物に応じた殺菌の利便性及び安全性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本実施形態のマルチ殺菌装置において取出口がなく、かつ、側面扉を閉じた状態を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態のマルチ殺菌装置において取出口がなく、かつ、側面扉を開いた状態を示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態のマルチ殺菌装置において取出口があり、かつ、側面扉を閉じた状態を示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態のマルチ殺菌装置において取出口があり、かつ、側面扉を開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のマルチ殺菌装置1の実施形態を説明する。
【0034】
[マルチ殺菌装置1]本実施形態のマルチ殺菌装置1は、図1図4に示すように、筒状壁2と、搬入口22Eと、照射部3と、脚部4と、通気口5と、排気部6と、排気制御部と、除菌フィルタ7と、標識表示部8と、動物感知センサ9と、照射制御部と、照射開始ボタン10Sと、照射停止ボタン10Fと、高さ調整部11と、を備える。
【0035】
[筒状壁2]筒状壁2は、図1図4に示すように、上面壁21と、上面壁21の周縁付近から下方に延びる側面壁22と、側面壁22の下方周縁に囲まれてなる開口部23と、を有する。
【0036】
上面壁21及び側面壁22の材料は、不透明なプラスティックや金属など殺菌光の透過を防ぎつつ、構造材料として適切な強度を有する材料であることが好ましい。
【0037】
本実施形態の筒状壁2の形状は、本実施形態の殺菌対象物OSの形状を考慮して、上下に伸びる略直方体形状であることが好ましい。本実施形態の筒状壁2が略直方体形状である場合、筒状壁2が略円筒形状である場合と比較して、複数のマルチ殺菌装置1を並べて配置したときに無駄なスペースが生じないため空間を有効利用することができる。
【0038】
開口部23は、筒状壁2を上下に伸びる直方体に見立てたときの底面に相当する位置に形成されている。
【0039】
[殺菌対象物OS]本実施形態において殺菌対象物OSは、1個の商店用買い物かごSB又はかご集合体BAを想定している。かご集合体BAとは、2個以上の商店用買い物かごSBを上下方向に集合させてなるものである。
【0040】
商店用買い物かごSBが略直方体状の場合、かご集合体BAは、複数の商店用買い物かごSBを上方に重ねたことにより上下方向に伸びる略直方体状となる。筒状壁2の設計時においてかご集合体BAの形状に応じて筒状壁2の形状を変更することが好ましい。
【0041】
[かご台BS]かご台BSは、殺菌対象物OSをその下方から支えることが好ましい。殺菌対象物OSの収納を容易にするためである。また、かご台BSは、かご台BS及び殺菌対象物OSの移動を容易にするため、脚車を有するかご台BSであることが好ましい。
【0042】
[搬入口22E]搬入口22Eは、筒状壁2に囲まれてなる殺菌空間AS内に殺菌対象物OSを出し入れする出入口となる。本実施形態の搬入口22Eは、殺菌対象物OSの出し入れを容易にするため、側面壁22(例えば4つの側面の内の正面壁221)において殺菌対象物OSよりも大きく形成されていることが好ましい。以下の取出口21Eがない場合、照射後の殺菌対象物OSは搬入口22Eから取り出される。
【0043】
[側面扉22D]搬入口22Eは、側面壁22の一部に設けられた側面扉22Dを有することが好ましい。また、側面扉22Dは、その構造を簡素化しつつ、殺菌対象物OSの出し入れを容易にするため、手前に開く両開き扉(図1及び2参照)又は片開き扉(図3及び4参照)であることが好ましい。
【0044】
[透過窓22W]側面扉22Dは、殺菌光が人体に影響を及ぼさない程度に殺菌光を透過する透過窓22Wを有することが好ましい。また、透過窓22Wは、その透過窓22Wからマルチ殺菌装置1の外側に透過する光を乱反射させつつ、そのマルチ殺菌装置1を技術面だけでなくデザイン面からも親しんでもらえるようにするため、模様彫りを有することが好ましい。
【0045】
[取出口21E]上面壁21は、図3及び4に示すように、殺菌対象物OSを取り出すことが可能な程度の大きさを有する取出口21Eを有することが好ましい。
【0046】
[上面扉21D]取出口21Eは、図3及び4に示すように、上面壁21の表面又は裏面に設けられた上面扉21Dを有することが好ましい。上面扉21Dは、その構造を簡素化しつつ、上面扉21Dの開閉保持を容易にするため、片引き扉又は両引き扉であることが好ましい。
【0047】
[照射部3]照射部3は、図2及び4に示すように、筒状壁2に取り付けられており殺菌空間AS内にある殺菌対象物OS及び/又は気体に殺菌光を照射する。本実施形態の気体は、主に、マルチ殺菌装置1の内部及び外部に存在しており筒状壁2の開口部23から出入りする空気を想定している。つまり、本実施形態の照射部3は、殺菌空間AS内において殺菌光の照射により、殺菌対象物OSのみ、気体(例:周辺空気)のみ、又は、殺菌対象物OS及び気体の両方を殺菌する。
【0048】
殺菌光は、細菌の除菌・殺菌・滅菌・消毒・抗菌だけでなく、ウィルスの不活性化にも効果的な光であることが好ましい。そのため、現時点において、照射部3は、例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策に有用な深紫外線(UV-C)ランプであることが好ましい。
【0049】
[脚部4]脚部4は、図1~4に示すように、筒状壁2の下端よりも下方に取り付けられる。この脚部4は、筒状壁2の移動を可能にする脚車であることが好ましい。
【0050】
[通気口5]通気口5は、脚部4が接地する接地面と筒状壁2の下端との隙間を利用して殺菌空間AS内へ気体の出入りを可能にする。通気口5の形状は、筒状壁2の下端形状及び脚部4の高さの調整によって適宜変更可能である。
【0051】
[排気部6]排気部6は、図1~4に示すように、筒状壁2に取り付けられており殺菌空間AS内にある気体を排出する。本実施形態の排気部6は、排気ファンを想定している。
【0052】
図1及び2に示すように取出口21Eが上面壁21に設けられていない場合、排気部6は筒状壁2の上端である上面壁21に設けられていることが好ましい。これは、筒状壁2の下端付近に設けられている通気口5から流入する空気の流れを考慮したからである。
【0053】
その一方、図3及び4に示すように取出口21Eが上面壁21に設けられている場合、上記と同様に空気の流れを考慮し、排気部6は側面壁22の一部の領域かつ筒状壁2の上端付近の領域に設けられていることが好ましい。図3及び4に示すマルチ殺菌装置1の場合、側面扉22Dが側面壁22のうちの正面壁221に設けられているため、排気部6は正面壁221の反対側の背面壁222に取り付けられている。
【0054】
[排気制御部]排気制御部は、殺菌空間AS内に充満した気体の量を充満気体量として、排気部6が充満気体量と同量又はそれ以下の量だけ気体を排出する制御を行うことが好ましい。
【0055】
また、排気制御部は、照射部3が照射を終了した照射終了時から所定の排気待機時間後に、排気部6が気体の排出を開始する制御を行うことが好ましい。
【0056】
[除菌フィルタ7]除菌フィルタ7は、筒状壁2に取り付けられており、排気部6が排出する気体が流れる流路において殺菌空間ASから排気部6までの間に配置されている。
【0057】
そのため、図1及び2に示すように、排気部6が上面壁21に設けられている場合、除菌フィルタ7は上面壁21の内側に取り付けられており、排気部6は上面壁21の外側に取り付けられる。
【0058】
その一方、図3及び4に示すように、排気部6が側面壁22(例:背面壁222)に設けられている場合、除菌フィルタ7は側面壁22の内側に取り付けられており、排気部6は側面壁22の外側に取り付けられる。
【0059】
除菌フィルタ7としては、気体から細菌やウィルスを除去するHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などのエア・フィルタであることが好ましい。
【0060】
[標識表示部8]標識表示部8は、照射部3が照射していることを示す作動標識を表示する。作動標識としては、文字、図形、記号、色彩など人が照射部3による照射を認識することができる視覚標識であれば何でもよい。本実施形態の作動標識としては点状有色ランプを想定している。
【0061】
標識表示部8は、側面壁22の一部の領域かつ筒状壁2の上端付近の領域(例:正面壁221の上部右側)に設けられている。
【0062】
[動物感知センサ9]動物感知センサ9は、殺菌空間AS内に人を含む動物(例:人の子供、犬・猫などのペット)がいるか否かを感知する。本実施形態の動物感知センサ9としては、赤外線、超音波、可視光などを利用した人感センサが用いられている。
【0063】
[照射開始ボタン10S・照射停止ボタン10F]照射開始ボタン10Sは、照射部3が照射を開始する際の操作ボタンとなる。それに対し、照射停止ボタン10Fは、照射部3が照射を停止する際の操作ボタンとなる。
【0064】
[鍵22K]鍵22Kは、側面扉22D又は上面扉21Dのうち少なくとも側面扉22Dを機械的又は電気的のうち少なくとも電気的に施錠又は解錠することができる構造及び配置になっている。
【0065】
[照射制御部]照射制御部は、手動開始時又は自動開始時に応じて以下の所定の照射制御を行う。
【0066】
手動開始時とは、操作者が照射開始ボタン10Sを操作することを意味する。施錠制御部は、手動操作により照射が開始される場合、照射開始ボタン10Sの操作開始時に基づき、鍵22Kが少なくとも側面扉22Dを施錠する制御を行うとともに、照射部3の照射終了時に基づき鍵22Kが少なくとも側面扉22Dを解錠する制御を行うことが好ましい。
【0067】
その一方、自動操作とは、殺菌対象物OSが殺菌空間AS内に配置されたことを感知したときに照射開始を自動的に操作にする。照射制御部は、自動操作により照射が開始される場合、自動開始時から所定の照射待機時間後に所定の照射時間だけ照射部3が殺菌光を照射する制御を行う。
【0068】
ここで、照射制御部は、殺菌空間AS内に動物がいることを動物感知センサ9が感知したときに照射部3が殺菌光を照射しない制御を行うことが好ましい。
【0069】
また、照射制御部は、側面扉22D又は/及び上面扉21Dが閉じていないときに照射部3が殺菌光を照射しない制御を行うことが好ましい。側面扉22D又は上面扉21Dが開いているときに人体に悪影響の懸念がある殺菌光が殺菌空間AS外に漏れ出ることを防ぐためである。
【0070】
[高さ調整部11]高さ調整部11は、取出口21Eの高さを基準にして殺菌対象物OSの高さが一定の範囲内となるように殺菌対象物OSを上方に持ち上げる。
【0071】
本実施形態の高さ調整部11は、1個又は2個以上の商店用買い物かごSBを掴む又は引っ掛ける把持部111と、把持部111を上方に移動させる移動補助部112と、を有している。また、把持部111は、側面壁22のうちの右面壁223及び左面壁224の各内側に相対してそれぞれ取り付けられている。
【0072】
[効果]次に、本実施形態のマルチ殺菌装置1の効果を説明する。
【0073】
(1)前述した目的を達成するため、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、上面壁21と、上面壁21の周縁付近から下方に延びる側面壁22と、側面壁22の下方周縁に囲まれてなる開口部23と、を有する筒状壁2と、筒状壁2に囲まれてなる殺菌空間AS内に殺菌対象物OSを出し入れする出入口となる搬入口22Eと、筒状壁2に取り付けられており殺菌空間AS内にある殺菌対象物OS及び/又は気体に殺菌光を照射する照射部3と、筒状壁2の下端よりも下方に取り付けられる脚部4と、脚部4が接地する接地面と筒状壁2の下端との隙間を利用して殺菌空間AS内へ気体の出入りを可能にする通気口5と、を備えることを特徴とする。
【0074】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌装置の周辺に存在する気体を殺菌空間ASに対して自由に出入りさせることができる。
【0075】
(2)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1において、脚部4は、筒状壁2の移動を可能にする脚車であることが好ましい。
【0076】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、マルチ殺菌装置1が重くて持ち運ぶことができなくても、マルチ殺菌装置1を容易に移動させることができる。
【0077】
(3)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、筒状壁2に取り付けられており殺菌空間AS内にある気体を排出する排気部6と、殺菌空間AS内に充満した気体の量を充満気体量として排気部6が充満気体量と同量又はそれ以下の量だけ気体を排出する制御を行う排気制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0078】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌した気体量分だけ殺菌空間AS内の気体を強制的に出入りさせることができる。
【0079】
(4)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1において、排気制御部は、照射部3が照射を終了した照射終了時から所定の排気待機時間後に排気部6が気体の排出を開始する制御を行うことが好ましい。
【0080】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌空間AS内にある気体の殺菌処理を終えた後に気体を自動的に出入りさせることができる。
【0081】
(5)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、筒状壁2に取り付けられており、排気部6が排出する気体が流れる流路において殺菌空間ASから排気部6までの間に配置されている除菌フィルタ7と、を更に備えることが好ましい。
【0082】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌空間AS内にある気体を完全に殺菌処理できずに気体内に残留菌が存在したとしても、除菌フィルタ7が気体内の残留菌を確保することができる。
【0083】
(6)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1において、搬入口22Eは、側面壁22の一部に設けられた扉を有し、扉は、殺菌光が人体に影響を及ぼさない程度に殺菌光を透過する透過窓22Wを有することが好ましい。
【0084】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、透過窓22Wから透過する光の有無によって照射部3が照射中か否かを装置周辺者に視認させることができる。
【0085】
(7)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、照射部3が照射していることを示す作動標識を表示する標識表示部8と、を更に備えることが好ましい。
【0086】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、照射部3が照射中か否かを作動標識により視認させることができる。
【0087】
(8)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、少なくとも側面扉22Dを施錠又は解錠することができる鍵22Kと、照射部3が照射を開始する際の操作ボタンとなる照射開始ボタン10Sと、照射開始ボタン10Sの操作開始時に基づき鍵22Kが少なくとも側面扉22Dを施錠する制御を行うとともに、照射部3の照射終了時に基づき鍵22Kが少なくとも側面扉22Dを解錠する制御を行う施錠制御部と、を更に備えることが好ましい。
【0088】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、手動操作によって照射部3が照射をしている際に側面扉22Dが誤って開いてしまい、殺菌光が殺菌空間AS外に意図せず漏れてしまうことを防止することができる。
【0089】
(9)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌対象物OSが殺菌空間AS内に配置されたことを感知したときに照射開始を自動的に操作にする自動開始時から所定の照射待機時間後に所定の照射時間だけ照射部3が殺菌光を照射する制御を行う照射制御部と、を更に備えることを特徴とすることが好ましい。
【0090】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、自動で照射を開始することができる。
【0091】
(10)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌空間AS内に人を含む動物がいるか否かを感知する動物感知センサ9と、を更に備えており、照射制御部は、殺菌空間AS内に動物がいることを動物感知センサ9が感知したときに照射部3が殺菌光を照射しない制御を行うことが好ましい。
【0092】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌空間AS内に人やペットなどの動物が誤って侵入した場合に、照射部3が動物に殺菌光を照射することを防止することができる。
【0093】
(11)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1において、殺菌対象物OSは、スーパーマーケットなどの商店で使用される1個の商店用買い物かごSB又は2個以上の商店用買い物かごSBを上下方向に集合させてなるかご集合体BAであり、上面壁21は、殺菌対象物OSを取り出すことが可能な程度の大きさを有する取出口21Eを有することが好ましい。
【0094】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌空間AS内に設置したまま殺菌対象物OSの商店用買い物かごSBを取出口21Eから取り出すことができる。
【0095】
(12)また、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、取出口21Eの高さを基準にして殺菌対象物OSの高さが一定の範囲内となるように殺菌対象物OSを上方に持ち上げる高さ調整部11と、を更に備えることが好ましい。
【0096】
これにより、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、取出口21Eから殺菌空間ASAS内に手を必要以上に入れることなく、取出口21Eから殺菌対象物OSを容易に取り出すことができる。
【0097】
すなわち、本実施形態のマルチ殺菌装置1は、殺菌装置の周辺に存在する気体を殺菌空間ASに対して出入りさせることができるので、殺菌空間AS内に配置された殺菌対象物OSだけでなく、マルチ殺菌装置1の周辺に存在する気体を積極的に殺菌することができるとともに、殺菌対象物OSに応じた殺菌の利便性及び安全性を向上させることができるという効果を奏する。
【0098】
なお、本実施形態は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 マルチ殺菌装置
2 筒状壁
3 照射部
4 脚部
5 通気口
6 排気部
7 除菌フィルタ
8 標識表示部
9 動物感知センサ
10S 照射開始ボダン
10F 照射停止ボダン
11 高さ調整部
21 上面壁
21E 取出口
21D 上面扉
22 側面壁
22E 搬入口
22D 側面扉
22K 鍵
22W 透過窓
23 開口部
111 把持部
112 移動補助部
221 正面壁
222 背面壁
223 右面壁
224 左面壁
AS 殺菌空間
BA かご集合体
BS かご台
OS 殺菌対象物
SB 商店用買い物かご

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2020-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面壁と、前記上面壁の周縁付近から下方に延びる側面壁と、前記側面壁の下方周縁に囲まれてなる開口部と、を有する筒状壁と、
前記筒状壁に囲まれてなる殺菌空間内に殺菌対象物を出し入れする出入口となる搬入口と、
前記筒状壁に取り付けられており前記殺菌空間内にある前記殺菌対象物及び/又は気体に殺菌光を照射する照射部と、
前記筒状壁の下端よりも下方に取り付けられる脚部と、
前記脚部が接地する接地面と前記筒状壁の下端との隙間を利用して前記殺菌空間内へ気体の出入りを可能にする通気口と、
を備えることを特徴とするマルチ殺菌装置。
【請求項2】
前記脚部は、前記筒状壁の移動を可能にする脚車である
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項3】
前記筒状壁に取り付けられており前記殺菌空間内にある気体を排出する排気部と、
前記殺菌空間内に充満した気体の量を充満気体量として前記排気部が前記充満気体量と同量又はそれ以下の量だけ前記気体を排出する制御を行う排気制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項4】
前記排気制御部は、前記照射部が照射を終了した照射終了時から所定の排気待機時間後に前記排気部が前記気体の排出を開始する制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項5】
前記筒状壁に取り付けられており、前記排気部が排出する気体が流れる流路において前記殺菌空間から前記排気部までの間に配置されている除菌フィルタと、
を更に備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項6】
前記搬入口は、前記側面壁の一部に設けられた扉を有し、
前記扉は、前記殺菌光が人体に影響を及ぼさない程度に前記殺菌光を透過する透過窓を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項7】
前記照射部が照射していることを示す作動標識を表示する標識表示部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項8】
前記扉を施錠又は解錠することができる鍵と、
前記照射部が照射を開始する際の操作ボタンとなる照射開始ボタンと、
前記照射開始ボタンの操作開始時に基づき前記鍵が前記扉を施錠する制御を行うとともに、前記照射部の照射終了時に基づき前記鍵が前記扉を解錠する制御を行う施錠制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項9】
前記殺菌対象物が前記殺菌空間内に配置されたことを感知したときに照射開始を自動的に操作にする自動開始時から所定の照射待機時間後に所定の照射時間だけ前記照射部が前記殺菌光を照射する制御を行う照射制御部と、
を更に備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項10】
前記殺菌空間内に人を含む動物がいるか否かを感知する動物感知センサと、を更に備えており、
前記照射制御部は、前記殺菌空間内に前記動物がいることを前記動物感知センサが感知したときに前記照射部が前記殺菌光を照射しない制御を行う
ことを特徴とする請求項9のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項11】
前記殺菌対象物は、スーパーマーケットなどの商店で使用される1個の商店用買い物かご又は2個以上の前記商店用買い物かごを上下方向に集合させてなるかご集合体であり、
前記上面壁は、前記殺菌対象物を取り出すことが可能な程度の大きさを有する取出口を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のマルチ殺菌装置。
【請求項12】
前記取出口の高さを基準にして前記殺菌対象物の高さが一定の範囲内となるように前記殺菌対象物を上方に持ち上げる高さ調整部と、
を更に備えることを特徴とする請求項11に記載のマルチ殺菌装置。