(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062667
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20220413BHJP
【FI】
G06Q40/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081474
(22)【出願日】2021-05-13
(62)【分割の表示】P 2020555244の分割
【原出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】葛 鴻鵬
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕
(72)【発明者】
【氏名】小俣 智
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴亮
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB64
(57)【要約】
【課題】請求書に記載された品目が課税対象であるか否かを判別しやすくする。
【解決手段】データ処理装置1は、請求書データに含まれている複数の文字列を特定する文字列特定部141と、文字列特定部141が特定した文字列に基づいて、請求書データに含まれている一以上の品目の請求額を特定する請求額特定部142と、請求額特定部142が特定した請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する判定部144と、判定部144が判定した結果を出力する出力部145と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求書データに含まれている複数の文字列を特定する文字列特定部と、
前記文字列特定部が特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに含まれている一以上の品目の請求額を特定する請求額特定部と、
前記請求額特定部が特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が判定した結果を出力する出力部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記税加算値で前記請求額を除算した結果に剰余が生じない場合に、前記税加算値で前記請求額を除算して税抜額を算出し、前記税抜額に税率を乗算することにより、又は前記請求額から前記税抜額を減算することにより前記請求額に対応する税額を算出し、
前記出力部は、前記判定部が算出した前記税額を出力する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記請求書データにおいて品目に関連付けられて記載されている記載税額が、前記判定部が算出した前記税額と異なる場合に、当該品目に関連付けて警告情報を出力する、
請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
品目と課税対象であるか否かを示す課税情報とを関連付けて記憶する記憶部をさらに有し、
前記判定部は、前記請求額に係る品目に関連付けて前記記憶部に記憶された前記課税情報にさらに基づいて、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記請求額に係る品目に関連付けて前記課税情報が前記記憶部に記憶されていない場合、前記請求額を前記税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて判定した結果を、前記請求額に係る品目に関連付けて前記課税情報として前記記憶部に記憶させる、
請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、前記課税情報に基づいて課税対象であるか否かを判定した結果とが一致しているか否かに基づいて、前記判定部による判定の信頼度を示す信頼度数を出力する、
請求項4又は5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記記憶部は、品目に関連付けて課税対象でない理由をさらに記憶し、
前記出力部は、前記判定部が前記請求額に係る品目が課税対象でないと判定した場合に、前記記憶部を参照することにより、前記請求額に係る品目に関連付けて課税対象でない理由を出力する、
請求項4から6のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記判定部は、品目を示す文字列と課税対象であるか否か示す情報とを教師データとして学習し、入力された文字列に対応する品目が課税対象であるか否かを出力する機械学習モデルに、前記請求額に係る品目を入力することにより、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する、
請求項1から7のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、前記機械学習モデルに基づいて課税対象であるか否かを前記判定部が判定した結果とが一致しているか否かに基づいて、前記判定部による判定の信頼度を示す信頼度数を出力する、
請求項8に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記請求書データには、複数の品目それぞれに対応する複数の請求額と、前記複数の品目の全体に対する合計税額とが含まれており、
前記判定部は、課税対象であると判定した一以上の品目の請求額それぞれを、1.0に税率を加算した税加算値で除算することにより一以上の税額を算出し、算出した前記一以上の税額を合算した合算額が前記合計税額と一致している場合に、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じる前記請求額に係る品目が課税対象でないと判定する、
請求項1から9のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記合算額が前記合計税額と一致していると前記判定部が判定した場合に、前記一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力する、
請求項10に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記出力部は、前記合算額が前記合計税額と一致しているか否かを判定した結果とともに、前記一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力する、
請求項10又は11に記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記請求書データは、前記合計税額が含まれる鑑ページと、前記一以上の品目の請求額それぞれが含まれる明細ページとを含んでおり、
前記請求額特定部は、前記鑑ページにおいて前記合計税額を特定し、前記明細ページにおいて前記一以上の品目それぞれの請求額を特定する、
請求項10から12のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項14】
前記判定部は、1.0に第1税率を加算した第1税加算値又は1.0に第2税率を加算した第2税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、前記請求額に前記第1税率に対応する第1消費税額が含まれているか、前記請求額に前記第2税率に対応する第2消費税額が含まれているかを判定する、
請求項1から13のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項15】
前記出力部は、前記一以上の品目に関連付けて、前記第1消費税額又は前記第2消費税額を示す画面を外部装置に表示させる、
請求項14に記載のデータ処理装置。
【請求項16】
前記文字列特定部が特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに含まれている品目名を特定する品目名特定部をさらに有し、
前記出力部は、前記品目名特定部が特定した一以上の品目名の税率を入力するための画面を出力し、
前記判定部は、前記画面において入力された税率を1.0に加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する、
請求項1から15のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項17】
コンピュータが実行する、
請求書データに含まれている複数の文字列を特定するステップと、
特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに記載されている請求額を特定するステップと、
特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かが判定された結果を出力するステップと、
を有するデータ処理方法。
【請求項18】
コンピュータに、
請求書データに含まれている複数の文字列を特定するステップと、
特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに記載されている請求額を特定するステップと、
特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かが判定された結果を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、請求書の明細には消費税が記載されている(例えば、非特許文献1を参照)。特許文献1には、課税対象であるか非課税対象であるかが指定される会計システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国税庁,“適格請求書等保存方式の導入について”,[online],[令和2年9月20日検索],インターネット<URL:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_5.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
請求書に記載される品目によって課税対象であったり非課税であったりする場合があり、経理担当者は、課税対象であるか否かに応じて異なる処理をする必要がある。受け取った請求書に消費税額が記載されていない場合、課税対象であるか否かを経理担当者が判別できず、経理処理が適切に行われない場合があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、請求書に記載された品目が課税対象であるか否かを判別しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様のデータ処理装置は、請求書データに含まれている複数の文字列を特定する文字列特定部と、前記文字列特定部が特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに含まれている一以上の品目の請求額を特定する請求額特定部と、前記請求額特定部が特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が判定した結果を出力する出力部と、を有する。
【0008】
前記判定部は、前記税加算値で前記請求額を除算した結果に剰余が生じない場合に、前記税加算値で前記請求額を除算して税抜額を算出し、前記税抜額に税率を乗算することにより、又は前記請求額から前記税抜額を減算することにより前記請求額に対応する税額を算出し、前記出力部は、前記判定部が算出した前記税額を出力してもよい。
【0009】
前記出力部は、前記請求書データにおいて品目に関連付けられて記載されている記載税額が、前記判定部が算出した前記税額と異なる場合に、当該品目に関連付けて警告情報を出力してもよい。
【0010】
前記データ処理装置は、品目と課税対象であるか否かを示す課税情報とを関連付けて記憶する記憶部をさらに有し、前記判定部は、前記請求額に係る品目に関連付けて前記記憶部に記憶された前記課税情報にさらに基づいて、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。
【0011】
前記判定部は、前記請求額に係る品目に関連付けて前記課税情報が前記記憶部に記憶されていない場合、前記請求額を前記税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて判定した結果を、前記請求額に係る品目に関連付けて前記課税情報として前記記憶部に記憶させてもよい。
【0012】
前記出力部は、前記税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、前記課税情報に基づいて課税対象であるか否かを判定した結果とが一致しているか否かに基づいて、前記判定部による判定の信頼度を示す信頼度数を出力してもよい。
【0013】
前記記憶部は、品目に関連付けて課税対象でない理由をさらに記憶し、前記出力部は、前記判定部が前記請求額に係る品目が課税対象でないと判定した場合に、前記記憶部を参照することにより、前記請求額に係る品目に関連付けて課税対象でない理由を出力してもよい。
【0014】
前記判定部は、品目を示す文字列と課税対象であるか否か示す情報とを教師データとして学習し、入力された文字列に対応する品目が課税対象であるか否かを出力する機械学習モデルに、前記請求額に係る品目を入力することにより、前記請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。
【0015】
前記出力部は、前記税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、前記機械学習モデルに基づいて課税対象であるか否かを前記判定部が判定した結果とが一致しているか否かに基づいて、前記判定部による判定の信頼度を示す信頼度数を出力してもよい。
【0016】
前記請求書データには、複数の品目それぞれに対応する複数の請求額と、前記複数の品目の全体に対する合計税額とが含まれており、前記判定部は、課税対象であると判定した一以上の品目の請求額それぞれを、1.0に税率を加算した税加算値で除算することにより一以上の税額を算出し、算出した前記一以上の税額を合算した合算額が前記合計税額と一致している場合に、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じる前記請求額に係る品目が課税対象でないと判定してもよい。
【0017】
前記出力部は、前記合算額が前記合計税額と一致していると前記判定部が判定した場合に、前記一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力してもよい。
【0018】
前記出力部は、前記合算額が前記合計税額と一致しているか否かを判定した結果とともに、前記一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力してもよい。
【0019】
前記請求書データは、前記合計税額が含まれる鑑ページと、前記一以上の品目の請求額それぞれが含まれる明細ページとを含んでおり、前記請求額特定部は、前記鑑ページにおいて前記合計税額を特定し、前記明細ページにおいて前記一以上の品目それぞれの請求額を特定してもよい。
【0020】
前記判定部は、1.0に第1税率を加算した第1税加算値又は1.0に第2税率を加算した第2税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、前記請求額に前記第1税率に対応する第1消費税額が含まれているか、前記請求額に前記第2税率に対応する第2消費税額が含まれているかを判定してもよい。
【0021】
前記出力部は、前記一以上の品目に関連付けて、前記第1消費税額又は前記第2消費税額を示す画面を外部装置に表示させてもよい。
【0022】
前記文字列特定部が特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに含まれている品目名を特定する品目名特定部をさらに有し、前記出力部は、前記品目名特定部が特定した一以上の品目名の税率を入力するための画面を出力し、前記判定部は、前記画面において入力された税率を1.0に加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。
【0023】
本発明の第2の態様のデータ処理方法は、コンピュータが実行する、請求書データに含まれている複数の文字列を特定するステップと、特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに記載されている請求額を特定するステップと、特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かが判定された結果を出力するステップと、を有する。
【0024】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、請求書データに含まれている複数の文字列を特定するステップと、特定した前記文字列に基づいて、前記請求書データに記載されている請求額を特定するステップと、特定した前記請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かが判定された結果を出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、請求書を受け取った事業者が、請求書に記載された品目が課税対象であるか否かを判別しやすくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】データ処理装置の概要を説明するための図である。
【
図2】請求書データに対応する請求書の一例である。
【
図4】出力部が出力する登録用データの一例を示す図である。
【
図5】データ処理装置が請求書の記載内容の適否を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[データ処理装置1の概要]
図1は、データ処理装置1の概要を説明するための図である。データ処理装置1は、請求書データを取得し、請求書データに含まれる文字列を解析した結果を用いて請求書を管理するための装置であり、例えばコンピュータである。請求書データは、請求書を発行した企業の会社名、連絡先、請求対象の商品又はサービスの名称(品目名)、請求額及び税額等が含まれているデータであり、例えば画像読取装置2(例えばスキャナ又はデジタルカメラ)が請求書を読み取ることによって生成された画像データである。請求書データは、コンピュータにより作成された画像データ又はテキストデータであってもよい。
【0028】
データ処理装置1は、請求書データに含まれる文字列に基づいて、請求書データに含まれている品目それぞれの請求額が課税対象であるか否かを判定し、判定した結果を外部装置3に出力する。データ処理装置1は、例えば、不課税取引、非課税取引、免税取引又は不課税取引に係る品目が課税対象でないと判定する。
【0029】
外部装置3は、例えば、請求書を受け取った企業の経理担当者が使用するコンピュータ、又は会計基幹システム(ERP:Enterprise Resource Planning)である。データ処理装置1は、例えば、データ処理装置1にアクセス可能な経理担当者のコンピュータに判定結果を表示させたり、判定結果を会計基幹システムに送信したりする。
【0030】
データ処理装置1は、所定の税率に対応する消費税額が請求額に含まれているか否かを判定した結果を出力してもよい。データ処理装置1は、例えば、請求書に記載されている複数の品目に対する請求額が、第1税率(例えば通常税率の10%)の消費税額を含んでいるか、第2税率(例えば軽減税率の8%)の消費税額を含んでいるかを判定した結果を出力する。
【0031】
図2は、請求書データに対応する請求書の一例である。請求書データには、複数の品目それぞれに対応する複数の請求額と、複数の品目の全体に対する合計税額とが含まれている。
図2に示す請求書においては、品目それぞれの請求額と、各品目の請求額を合算した合計請求額89,200円と、消費税の合計額7,200円が示されている。しかし、ビール、小麦粉、牛肉、商品券のそれぞれの税額は記載されていない。
【0032】
詳細については後述するが、データ処理装置1は、各品目の請求額それぞれを1.0に税率を加算した額で除算した剰余の値に基づいて、各品目が課税対象であるか否かを判定する。データ処理装置1は、例えば立替金である「商品券」が課税対象でないと判定する。また、データ処理装置1は、課税対象の品目に対しては税率を特定する。データ処理装置1は、例えばビールの税率が10%であり、小麦粉及び牛肉の税率が8%であることを特定する。
【0033】
データ処理装置1が上記のように動作することで、請求書に各品目が課税対象であるか否かが記載されていない場合に、経理担当者が課税対象であるか否かを判定したり、各品目の税率を確認したりすることなく、適切な経理処理を行うことができるので、業務効率が向上するとともに、人為的なミスを防ぐことができる。
【0034】
[データ処理装置1の構成]
図3は、データ処理装置1の構成を示す図である。データ処理装置1は、通信部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。制御部14は、文字列特定部141と、請求額特定部142と、品目名特定部143と、判定部144と、出力部145とを有する。
【0035】
通信部11は、ネットワーク(例えばイントラネット、インターネット又は電話網)に接続するための通信インターフェースであり、例えば画像読取装置2から請求書データを受信するための通信コントローラを有する。また、通信部11は、出力部145からの指示に基づいて、会計基幹システム又は経理担当者のコンピュータにデータを出力する。
【0036】
表示部12は、情報を表示するディスプレイである。表示部12は、出力部145の指示に基づいて、請求書データの内容を表示したり、請求書内の各品目の請求額が課税対象であるか否かの判定結果を表示したりする。
【0037】
記憶部13は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部13は、画像読取装置2から取得された請求書データを記憶する。また、記憶部13は、制御部14が実行するプログラムを記憶する。
【0038】
また、記憶部13は、品目と課税対象であるか否かを示す課税情報とを関連付けて記憶してもよい。記憶部13は、品目に関連付けて課税対象でない理由をさらに記憶してもよい。課税対象でない理由は、例えば家賃のように非課税である、例えば国外取引のように不課税であるという理由である。記憶部13は、品目に関連付けて関税であるということを記憶してもよい。記憶部13は、品目に関連付けて、国税庁で定められている非課税取引の内容を、課税対象でない理由として記憶してもよい。
【0039】
制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部14は、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、文字列特定部141、請求額特定部142、品目名特定部143、判定部144及び出力部145として機能する。
【0040】
文字列特定部141は、画像読取装置2によって生成された請求書データを取得し、取得した請求書データに基づいて、請求書に含まれている複数の文字列を特定する。文字列特定部141は、例えばOCR処理を実行することにより、請求書データに基づいて、請求書に含まれている文字列を特定する。文字列特定部141は、特定した文字列を請求額特定部142に通知する。
【0041】
文字列特定部141は、文字列の位置を特定し、特定した文字列と当該文字列の位置とを関連付けて請求額特定部142に通知してもよい。文字列の位置は、例えば請求書の左上を原点とする位置である。
【0042】
請求額特定部142は、文字列特定部141が特定した文字列に基づいて、請求書データに含まれている一以上の品目の請求額を特定する。請求額特定部142は、例えば、請求書に記載されている複数の品目ごとに請求額を特定する。一例として、請求額特定部142は、漢字、平仮名又は片仮名の文字列により表される品目名の右側に記載された数字列を請求額として特定する。請求額特定部142は、「単価」、「金額」等のように、品目の請求額を示す列に記載された数字列を請求額として特定してもよい。請求額特定部142は、漢字、平仮名又は片仮名の文字列により表される品目名と同じ行における最も右側に記載された数字列を請求額として特定してもよい。請求額特定部142は、特定した請求額を判定部144に通知する。
【0043】
また、請求額特定部142は、特定した文字列に基づいて、請求額以外の各種の情報を特定することにより登録用データを作成してもよい。登録用データは、会計基幹システムに登録するためのデータである。登録用データには、例えば、請求書番号、請求書の発行事業者名、振込先口座番号、請求額及び消費税額が含まれる。登録用データの詳細については後述する。請求額特定部142は、登録用データを判定部144に通知する。
【0044】
品目名特定部143は、文字列特定部141が特定した複数の文字列に基づいて、請求書に含まれている各種の品目を特定する。
図2に示した請求書の例の場合、品目名特定部143は、ビール、小麦粉、牛肉、商品券を品目として特定する。
【0045】
判定部144は、請求額特定部142が特定した請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否か(すなわち、除算した結果が整数になるか否か)に基づいて、請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する。剰余は、除算した場合の「余り」である。判定部144は、剰余が生じる場合に、請求額に係る品目が課税対象ではないと判定する。
【0046】
税率が複数ある場合、判定部144は、1.0に第1税率を加算した第1税加算値又は1.0に第2税率を加算した第2税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、請求額に第1税率に対応する第1消費税額が含まれているか、請求額に第2税率に対応する第2消費税額が含まれているかを判定する。判定部144は、複数の税率の全てに対して、1.0に税率を加算した税加算値で請求額を除算した結果に剰余が生じる場合に、請求額に係る品目が課税対象ではないと判定する。
【0047】
図2に示した請求書の場合、判定部144は、1.0に第1税率0.10(10%)を加算した第1税加算値1.10、及び1.0に第2税率0.08(8%)を加算した第2税加算値1.08で各請求額を除算する。判定部144は、請求額が、第1税加算値及び第2税加算値の両方で除算した結果、剰余が生じた場合(すなわち、割り切れない場合)、請求額が課税対象ではないと判定する。判定部144は、第1税加算値及び第2税加算値のうち、いずれかに剰余が生じなかった場合、剰余が生じなかった税加算値に対応する税率が適用されていると判定する。判定部144は、第1税加算値及び第2税加算値の両方の除算結果に剰余が生じなかった場合、第1税率の可能性と第2税率の可能性があると判定する。
【0048】
図2に示した請求書の場合、ビールの6,600円は1.10で割り切れるので判定部144は、ビールに第1税率が適用されていると判定する。小麦粉の2,160円及び牛肉の5,500円は1.08で割り切れるので、判定部144は、牛肉及び小麦粉に第2税率が適用されていると判定する。商品券の5,000円は、1.08でも1.10でも割り切れないので、判定部144は、商品券が課税対象ではないと判定する。判定部144は、このように判定した結果を出力部145に通知する。
【0049】
判定部144は、課税対象であると判定した一以上の品目の請求額それぞれを、1.0に税率を加算した税加算値で除算することにより、一以上の税額を算出してもよい。判定部144は、例えば、1.0に税率を加算した税加算値で請求額を除算して税抜額を算出し、税抜額に税率を乗算することにより、又は請求額から税抜額を減算することにより、一以上の税額を算出する。
【0050】
図2に示した請求書の場合、判定部144は、ビールの請求額である6,600円を1.10で除算して得られる商が6,000円であり、剰余がゼロであることから、ビールの税抜額が6,000円であることを特定し、税抜額に税率0.10を乗算することにより、ビールの税額が600円であることを特定する。判定部144は、請求額から税抜額を減算することにより、税額が600円であることを特定してもよい。
【0051】
同様に、判定部144は、牛肉の請求額である5,400円を1.08で除算して得られる商が5,000円であり、剰余がゼロであることから、牛肉の税抜額が5,000円であることを特定し、税抜額に税率0.08を乗算することにより、牛肉の税額が400円であることを特定する。判定部144は、このようにして全品目の税額を特定する。
【0052】
算出した一以上の税額を合算した合算額が、請求書に記載されている合計税額と一致している場合には、判定部144が請求書データに含まれている文字列を正しく読み取れている蓋然性が高い。そこで、判定部144は、算出した一以上の税額を合算した合算額が、請求書に記載されている合計税額と一致している場合に、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じる請求額に係る品目が課税対象でないと判定してもよい。判定部144がこのように動作することで、例えば、一以上の税額を合算した合算額が、請求書に記載されている合計税額と一致しておらず、判定部144が文字列を正しく読み取れていない蓋然性が高い場合に、課税対象であるか否かを誤判定してしまうリスクを低減することができる。
【0053】
なお、判定部144は、請求額に係る品目に関連付けて記憶部13に記憶された、品目と課税対象であるか否かを示す課税情報にさらに基づいて、請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。判定部144は、税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、課税情報に基づいて課税対象であるか否かを判定した結果とが一致している場合、判定結果が正しい蓋然性が高いと判定する。一方、判定部144は、これらの結果が一致していない場合、品目又は請求額のいずれかに誤りがある蓋然性が高いと判定する。判定部144は、これらの結果が一致したか否かに基づいて、出力部145に、判定の信頼度を示す信頼度数を出力させてもよい。
【0054】
判定部144は、請求額に係る品目に関連付けて課税情報が記憶部13に記憶されていない場合、請求額を税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて判定した結果を、請求額に係る品目に関連付けて課税情報として記憶部13に記憶させてもよい。判定部144は、経理担当者からの指示を受けたことを条件として、判定結果を課税情報として記憶部13に記憶させてもよい。判定部144がこのように判定結果を記憶部13に記憶させることで、将来の請求書データに含まれる品目が課税対象であるか否かを判定する場合の精度の向上に役立つ。
【0055】
さらに、判定部144は、品目を示す文字列と課税対象であるか否か示す情報とを教師データとして学習し、入力された文字列に対応する品目が課税対象であるか否かを出力する機械学習モデルに、請求額に係る品目を入力することにより、請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。判定部144は、税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、機械学習モデルに基づいて課税対象であるか否かを判定した結果とが一致している場合、判定結果が正しい蓋然性が高いと判定する。一方、判定部144は、これらの結果が一致していない場合、品目又は請求額のいずれかに誤りがある蓋然性が高いと判定する。判定部144は、これらの結果が一致したか否かに基づいて、出力部145に、判定の信頼度を示す信頼度数を出力させてもよい。
【0056】
判定部144は、品目を示す文字列と課税対象でない理由を示す情報とを教師データとして学習し、入力された文字列に対応する品目が課税対象でない理由を出力する機械学習モデルに、請求額に係る品目を入力することにより、請求額に係る品目が課税対象でない理由を特定してもよい。判定部144は、特定した理由を出力部145に出力させる。
【0057】
出力部145は、判定部が判定した結果を外部装置3に出力する。出力部145は、例えば基幹システムに対して判定結果を含む登録用データを送信する。出力部145は、経理担当者が使用するコンピュータに判定結果を含む登録用データを表示させてもよい。
【0058】
図4は、出力部145が出力する登録用データの一例を示す図である。
図4は、
図2に示した請求書データに基づいて出力部145が出力する登録用データである。登録用データにおいては、請求書データに含まれている請求書番号と、発行事業者名と、振込先口座番号と、品目情報と、第1合計請求額と、第1合計消費税額と、第2合計請求額と、第2合計消費税額とが関連付けられている。品目情報においては、購入日と、品目と、税区分と、各品目の金額(請求額)と、税額とが関連付けられている。税区分における※1は、通常税率対象であることを示しており、※2は軽減税率対象であることを示しており、※3は、課税対象でないということを示している。このように、出力部145は、一以上の品目に関連付けて、第1消費税額又は第2消費税額を示す画面を外部装置3に表示させてもよい。
【0059】
判定部144が、複数の税率のうちどの税率が適用されているかを判定できなかった場合、出力部145は、複数の税率それぞれに対応する税額の候補を品目に関連付けて出力してもよい。出力部145がこのような候補を出力することで、経理担当者が税額を計算する必要がないので業務効率が向上する。
【0060】
出力部145は、合算額が合計税額と一致していると判定部144が判定した場合に、一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力してもよい。合算額が合計税額と一致している場合には、文字列特定部141が文字列を正しく特定している蓋然性が高いと考えられるので、出力部145が、文字列特定部141が文字列を正しく特定している蓋然性が高い場合に判定結果を出力することで、出力される判定結果が正しい確率を高めることができる。
【0061】
出力部145は、合算額が合計税額と一致しているか否かを判定した結果とともに、一以上の品目に関連付けて、課税対象であるか否かを示す判定結果を出力してもよい。出力部145がこのように動作することで、判定結果を確認する経理担当者が、判定結果の信頼性を把握しやすくなる。
【0062】
出力部145は、課税対象であるか否かの判定結果とともに、判定結果の信頼度を示す情報を出力してもよい。出力部145は、合算額が合計税額と一致していると判定部144が判定した場合に、合算額が合計税額と一致していないと判定部144が判定した場合よりも高い信頼度であることを示す情報を出力する。出力部145がこのような情報を出力することにより、判定結果を見た経理担当者が、自身で精査する必要性の有無を判断しやすくなる。
【0063】
出力部145は、請求書データにおいて品目に関連付けられて記載されている記載税額が、判定部144が算出した税額と異なる場合に、品目に関連付けて警告情報を出力してもよい。警告情報は、例えば、記号又は文字列であってもよく、品目に対応する領域を通常と異なる色で表示することにより示される情報であってもよい。出力部145がこのような情報を出力することで、請求書データに記載された税額に誤りがあることを経理担当者が気づきやすくなる。
【0064】
また、出力部145は、判定部144が請求額に係る品目が課税対象でないと判定した場合に、記憶部13を参照することにより、請求額に係る品目に関連付けて課税対象でない理由を出力してもよい。出力部145がこのような情報を出力することで、消費税について詳しい知識を持っていない経理担当者であっても、課税対象でない理由を容易に把握することができる。
【0065】
さらに、出力部145は、税加算値を用いた演算によって課税対象であるか否かを判定した結果と、機械学習モデルに基づいて課税対象であるか否かを判定部144が判定した結果とが一致しているか否かに基づいて、判定部144による判定の信頼度を示す信頼度数を出力してもよい。判定結果を見た経理担当者が、自身で精査する必要性の有無を判断しやすくなる。
【0066】
[データ処理装置1の処理の流れ]
図5は、データ処理装置1が請求書の記載内容の適否を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、データ処理装置1が請求書データを取得した時点から開始している。
【0067】
まず、文字列特定部141は、請求書データに含まれている文字列を特定する(S11)。続いて、請求額特定部142は、特定された文字列に基づいて、請求書に記載されている請求額を特定する(S12)。
【0068】
続いて、判定部144は、請求額を1.10で除算し(S13)、剰余の有無を判定する(S14)。判定部144は、剰余がないと判定した場合(S14においてYES)、請求額に係る品目が通常税率の対象であり、請求額に通常税率の消費税額が含まれていると判定する(S15)。
【0069】
判定部144は、ステップS14において剰余があると判定した場合(S14においてNO)、請求額を1.08で除算し(S16)、剰余の有無を判定する(S17)。判定部144は、剰余がないと判定した場合(S17においてYES)、請求額に係る品目が軽減税率の対象であり、請求額に軽減税率の消費税額が含まれていると判定する(S18)。判定部144は、ステップS17において剰余があると判定した場合(S17においてNO)、請求額に対応する品目が課税対象ではないと判定する(S19)。
【0070】
出力部145は、ステップS15、S18、S19における判定結果を出力する(S20)。データ処理装置1は、全ての請求額の確認が終了したか否かを判定し(S21)、全ての品目に対応する請求額の確認が終了していないと判定した場合は(S21においてNO)、ステップS12からS20までの処理を繰り返す。データ処理装置1は、全ての品目に対応する請求額の確認が終了したと判定した場合(S21においてYES)、処理を終了する。
【0071】
なお、
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS13の処理とステップS16の処理の順序は任意である。また、
図5に示すフローチャートにおいては、一つの請求額に対する判定が終了するたびに出力部145が判定結果を出力したが、全ての請求額に対する判定が終了した後に、全ての請求額に対する判定結果を出力してもよい。
【0072】
[第1変形例]
以上の説明においては、
図2に示した請求書データを例に説明したが、請求書データは、合計税額が含まれる鑑ページと、一以上の品目の請求額それぞれが含まれる明細ページとを含んでいてもよい。この場合、請求額特定部142は、鑑ページにおいて合計税額を特定し、明細ページにおいて一以上の品目それぞれの請求額を特定する。
【0073】
[第2変形例]
以上の説明においては、2種類の税率が想定されていたが、3種類以上の税率(例えば、10%、8%、5%、3%、0%のいずれか)が存在する場合にも、本発明を適用することができる。
【0074】
[第3変形例]
出力部145は、品目名特定部143が特定した一以上の品目名の税率を入力するための画面を出力し、判定部144は、画面において入力された税率を1.0に加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定してもよい。データ処理装置1がこのように動作することで、データ処理装置1は、税率が変更になった場合にも当該請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定することができる。
【0075】
[データ処理装置1による効果]
以上説明したように、データ処理装置1は、判定部144が、請求額特定部142が特定した請求額を、1.0に税率を加算した税加算値で除算した結果に剰余が生じるか否かに基づいて、請求額に係る品目が課税対象であるか否かを判定する。データ処理装置1がこのように動作することで、請求書を受け取った事業者が、請求書に記載された品目が課税対象であるか否かを判別しやすくなる。その結果、請求書を受け取った事業者の経理担当者の業務効率が向上する。
【0076】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0077】
1 データ処理装置
2 画像読取装置
3 外部装置
11 通信部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
141 文字列特定部
142 請求額特定部
143 品目名特定部
144 判定部
145 出力部