(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062677
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】内燃機関を運転するための方法、演算装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20220413BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220413BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20220413BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
F01N3/24 U ZAB
F02D45/00 368F
F01N3/00 F
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021151954
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】10 2020 212 710.7
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファイ,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3G091
3G384
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091EA34
3G091HA36
3G091HA37
3G384BA31
3G384DA14
3G384FA37Z
3G384FA42Z
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA08
4D148DA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】触媒ウィンドウから外れることを、早期に検知することができ、より効果的な排気ガス浄化に寄与する。
【解決手段】触媒コンバータと触媒コンバータ上流排ガスセンサ,触媒コンバータ下流排ガスセンサとを備え、理論的な触媒モデルを使用して、貯蔵可能な少なくとも1つの排ガス成分の触媒コンバータ内の充填レベルを決定し、触媒モデルに、上流排ガスセンサの第1の信号をインプットし、下流排ガスセンサの信号を第2の信号として検出し、目標信号からの第2の信号のずれを算出し、目標信号からの第2の信号のずれが所定の閾値を上回ると、触媒モデルをリセットし、リセット後に決定された目標充填レベルに従って、内燃機関に供給された空気燃料混合気を調節することによって充填レベルを調整した後で、第1の信号と第2の信号との間のずれを算出し、第1の信号と第2の信号との間のずれに依存して算出された修正値を用いて第1の信号を修正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒コンバータ(130)と少なくとも2つの排ガスセンサ(145,147)とを備えた排ガス後処理システムを有する内燃機関(120)を運転するための方法(200)であって、少なくとも1つの第1の排ガスセンサ(145)が前記触媒コンバータ(130)の上流に配置されていて、少なくとも1つの第2の排ガスセンサ(147)が前記触媒コンバータ(130)の下流に配置されており、
前記触媒(130)内に貯蔵可能な少なくとも1つの排ガス成分の前記触媒コンバータ(130)内の充填レベルを、理論的な触媒モデルを用いて決定し(220)、前記触媒モデルに、前記第1の排ガスセンサ(145)の第1の信号としての少なくとも1つの信号を入力値としてインプットし、
前記触媒コンバータ(130)の下流で前記第2の排ガスセンサ(147)の信号を第2の信号として検出し(230)、
目標信号からの前記第2の信号のずれを算出し(240)、この場合、前記目標信号は前記触媒コンバータ(130)内の前記決定された充填レベルにおいて予測される信号に相当しており、
前記目標信号からの前記第2の信号のずれが所定の閾値を上回ると、前記触媒モデルをリセットし(260)、それによって前記リセット(260)後に前記決定された充填レベルが、検出された前記第2の信号に相当する目標信号を発生させるようにし、
前記決定された充填レベルに基づく目標充填レベルに従って、前記内燃機関(120)に供給された空気燃料混合気を調節することによって前記触媒コンバータ(130)内の充填レベルを調整し(270)、
前記触媒モデルの前記リセット(260)後、および前記充填レベルを前記目標充填レベルに調整(270)した後で、前記第1の信号と前記第2の信号との間のずれを算出し(280)、
前記第1の信号と前記第2の信号との間のずれに依存して算出された修正値(285)を用いて前記第1の信号を修正し、それによって前記第1の信号と前記第2の信号との間のずれを減少させるようにする、
排ガス後処理システムを有する内燃機関(120)を運転するための方法(200)。
【請求項2】
前記第1の排ガスセンサ(145)が広帯域ラムダセンサであり、並びに/または前記第2の排ガスセンサ(147)がジャンプ・ラムダセンサであり、並びに/または前記第1および第2の信号がラムダ値を含有している、請求項1記載の方法(200)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記排ガス成分が酸素を含有している、請求項1または2記載の方法(200)。
【請求項4】
前記修正値(285)を、前記第1の信号と前記第2の信号との間のずれと、特にゼロと1との間の値域から選択されている減衰ファクターとの積として算出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項5】
前記減衰ファクターを、前記第2の信号と前記目標信号との間の間隔が大きければ大きい程、小さくなるように選定する、請求項4記載の方法(200)。
【請求項6】
前記修正値(285)を前記第1の信号に加えることによって、前記第1の信号の修正を行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項7】
演算装置(140)において、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法(200)のすべての方法ステップを実施するために設計されている演算装置(140)。
【請求項8】
コンピュータプログラムであって、このコンピュータプログラムが演算装置(140)で実行されるときに、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法(200)のすべての方法ステップを実行するように、前記演算装置(140)を指示する、コンピュータプログラム。
【請求項9】
機械読み取り可能な記憶媒体であって、この記憶媒体に記憶された請求項8記載のコンピュータプログラムを有する、機械読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を運転するための方法、並びに演算装置およびこの方法を実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジンまたはロータリーエンジン内で、空気燃料混合気の不完全燃焼時に、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)の他に、多くの燃焼生成物が放出され、そのうちの少なくとも炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOX)が法的に制限されている。自動車に適用される排出ガス限界値は、今日の従来技術によれば、触媒による排ガス後処理によってのみ維持され得る。例えば三元触媒を使用することによって、前記有害物質成分は、例えば二酸化炭素、窒素および水等の比較的無害な排ガス成分に変換され得る。
【0003】
HC,CO,NOXのための同時に高い変換率は、三元触媒では化学量論的な作動点(ラムダ=1)あたりの狭いラムダ範囲内、いわゆる「触媒ウィンドウ」内でしか得られない。一般的に、触媒ウィンドウ内で触媒を運転するために、触媒の前後のラムダセンサの信号に基づくラムダ調整が行われる。触媒の前のラムダ値を調整するために、触媒の前の排ガスの酸素含有量がラムダセンサによって測定される。この測定値に依存して、この調整が、内燃機関に供給される燃料量を修正する。より精確な調整のために追加的に、触媒の後ろの排ガスが別のラムダセンサによって分析される。この信号は、触媒の前のラムダ調整に重畳された誘導調整のために使用される。触媒の後ろのラムダセンサとして通常はジャンプ・ラムダセンサが使用され、このジャンプ・ラムダセンサはラムダ=1において非常に急勾配の特性曲線を有していて、従ってラムダ=1を非常に精確に示すことができる。
【0004】
一般的に、ラムダ=1からの非常に僅かなずれが調整されかつ比較的ゆっくりと調整される誘導調整の他に、最新のエンジンコントロールシステムには通常は、ラムダ=1からの大きいずれの後にラムダ・パイロット制御として触媒ウィンドウが迅速に再び得られるように配慮する機能性が存在する。
【0005】
多くの最新の調整コンセプトは、触媒ウィンドウから外れたことを、触媒の後ろのジャンプ・ラムダセンサの電圧を用いて後になってから気づく、という欠点を有している。
【0006】
触媒の後ろでラムダセンサの信号に基づいて三元触媒を調整することに対する代替案は、触媒の平均的な酸素充填レベルを調整することである。このような平均的な充填レベルは測定可能ではないので、平均的な充填レベルは経路モデルを用いてのみモデル化され得る。このような形式の調整は、差し迫った破損を早期に検知し、実際に破損に至る前にそれに対して反応することができる。触媒内で実行される最も重要な反応の動力学および酸素貯蔵能力に基づく三元触媒の充填レベルの相応のモデルベース調整は、特許文献1に記載されている。このような形式のモデルベース触媒調整に、記憶されたモデルパラメータの複数の組み合わせも含まれる。最新の作動点に依存した、触媒の貯蔵能力の適応も可能である。このような形式の方法は、例えば特許文献2および特許文献3により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102016222418号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第102018216980号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許公開第102018251720号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、独立請求項の特徴を有する、内燃機関を運転するための方法、並びにこの方法を実施するための演算装置およびコンピュータプログラムが提案される。好適な実施形態は、従属請求項並びに以下の説明の対象である。
【0009】
触媒コンバータと少なくとも2つの排ガスセンサとを備えた排ガス後処理システムを有する内燃機関を制御するための本発明による方法において、この場合、少なくとも1つの第1の排ガスセンサが触媒コンバータの上流に配置されていて、少なくとも1つの第2の排ガスセンサが触媒コンバータの下流に配置されており、触媒内に貯蔵可能な少なくとも1つの排ガス成分の触媒コンバータ内の充填レベルを理論的な触媒モデルを用いて決定し、この触媒モデルに第1の排ガスセンサの第1の信号としての少なくとも1つの信号を入力値としてインプットし、触媒コンバータの下流で第2の排ガスセンサの信号を第2の信号として検出し、目標信号からの第2の信号のずれを算出し、この場合、目標信号が決定された充填レベルで予測される信号に相当しており、目標信号からの第2の信号のずれが所定の閾値を上回ると、触媒モデルをリセットし、それによって、決定された充填レベルがリセット後に、検出された第2の信号に相当する目標信号を発生させるようにし、決定された充填レベルに基づく目標充填レベルに従って、内燃機関に供給された空気燃料混合気を調節することによって充填レベルを調整し、触媒モデルのリセット後、および充填レベルを目標充填レベルに調整した後で、第1の信号と第2の信号との間のずれを算出し、第1の信号と第2の信号との間のずれに依存して算出された修正値を用いて第1の信号を修正し、それによって第1の信号と第2の信号との間のずれを減少させるようになっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による調整コンセプトは、触媒ウィンドウから外れることを、モデル化された充填レベルを用いて早期に検知することができ、それによって全体的により少ない排出有害物質またはより効果的な排気ガス浄化に寄与する、という基本的な利点を有している。
【0011】
リセットとは、本発明の枠内で、測定された値(特に第2の信号)が、触媒充填レベルの演算規定における単数または複数の入力値の処理時に、測定された信号がモデル化された充填レベルに適合するように、(理論的な触媒モデルの)演算規定のパラメータを変えるために用いられる方法ステップであると解釈される。
【0012】
この場合、好適な形式で、第1の排ガスセンサが広帯域ラムダセンサであり、並びに/または第2の排ガスセンサがジャンプ・ラムダセンサであり、並びに/または第1および/若しくは第2の信号が内燃機関の排ガスのラムダ値を含有している。広帯域ラムダセンサは特に触媒コンバータの上流で使用するために適している。何故ならば、ここで内燃機関の運転中により広い値域が通過され、これに対して触媒の下流では、狭い値域内でのジャンプ・ラムダセンサの高い精度が排気ガス浄化を確実に監視するために役立つからである。これにより、(ラムダ=1の範囲内の特に急勾配の特性曲線を有するジャンプ・ラムダセンサの)特に信頼できる信号をベースにして、(明らかにフラットな特性曲線およびひいてはそれに伴うより高い測定精度を有する広帯域ラムダセンサの)、より大きい不確実性を有する信号が適応されることによって、触媒モデル内の不確実性が減少される。しかしながら、本発明に関連して別の排ガスセンサ、特に排ガス成分の濃度を測定または決定する、例えば窒素酸化物センサも使用可能である。
【0013】
少なくとも1つの排ガス成分は特に酸素を含んでいる。酸素は、機能正常性、特に触媒コンバータの変換能力のために特に重要である。
【0014】
修正値は好適には、第1の信号と第2の信号との間のずれと、特にゼロと1との間の値域から選択された減衰ファクターとの積として算出される。これによって、過剰補償およびひいては修正の「上振れ」は避けられる。
【0015】
この場合、減衰ファクターは好適には、第2の信号と目標信号との間の間隔が大きければ大きいほど、小さくなるように選定される。これによって、触媒の後ろのラムダセンサがラムダ値1(つまり通常運転モードにおける目標信号の付近)において特に信頼できる値を提供し、これに対してラムダ値1からの間隔が大きくなると(つまり通常の目標信号からより大きく離れると)、測定された値は耐負荷能力が低くなる、という事実が考慮される。
【0016】
第1の信号の修正は好適には、第1の信号に修正値を付加することによって行われる。これは特に、2つの信号が予めラムダ値を含有しているか、または信号と所属のラムダ値との間の一次関数的な依存性が存在するときに、特に計算上経済的な修正として得られる。
【0017】
本発明を、三元触媒の例を挙げて以下に説明する。この構成は、別の型式の触媒にも合理的に転用可能であり、本発明は三元触媒の使用だけに限定されるものではない。原則的に、少なくとも1つの排ガス成分を貯蔵することができる、考えられるすべての型式の触媒コンバータが使用可能である。
【0018】
本発明の核心は、触媒のモデル化された充填レベルを、まず触媒の後ろのラムダセンサの信号に基づいてリセットすることによって、実際の触媒の充填レベルとモデル化された充填レベルとが少なくとも概ね一致している所定の状態にもたらす、という点にある。このリセットに続いて、最少の排出ガスおよび触媒の後ろのラムダ=1が予測される充填レベルが調整される。この充填レベルが調整された後で、ラムダセンサを用いて実際に触媒の後ろで測定されたラムダの、1からのずれが検出される。このずれは、触媒の前のラムダと後ろのラムダとの間に存在するオフセットに相当する。ダイナミックな走行動作中の触媒の後ろのラムダの変動および触媒の後ろのラムダセンサの公差は、センサ信号の低域通過フィルタ、および算出されたオフセットが比例的にのみ伝送されるかまたは適応されるように作用する減衰ファクターによって考慮される。これによって、この方法のロバスト性は向上され、オフセットの過剰補償は避けられる。この方法は、触媒の後ろで実際に測定されたラムダ値の、1からのずれが十分に小さくなるまで、直接連続して複数回実施されてよい。従って、存在するオフセットはより短い時間内で段階的に完全に適応され得る。
【0019】
触媒のモデルベース調整は、触媒ウィンドウから外れることが目前に迫っていることが、触媒の後ろの排ガスセンサの信号に基づく誘導調整におけるよりも早期に検知され得るので、触媒ウィンドウから外れることが実際に発生する前に、空気燃料混合気のより早期に得られる修正によって触媒ウィンドウから外れることを阻止することができる、という利点を有している。測定およびモデル不確実性の補償を、本発明による迅速なラムダオフセット適応の分だけ拡張したことによって、モデルベース調整のロバスト性をさらに改善することができる。特に数値的により大きいラムダオフセットは同時に、より迅速かつより安定的に適応され得る。これによって、実際の走行動作中の排出ガスはさらに減少され得る。より厳しい法的な要求を、触媒のための安価な費用で満たすことができる。
【0020】
ここでは本発明を、流れ方向で相前後して広帯域ラムダセンサ、三元触媒およびジャンプ・ラムダセンサを有する排ガス装置の例を用いて説明する。しかしながら、この方法の使用に少なくとも不都合な影響を与えることのない、別のまたは他の触媒、センサおよび追加的な構成要素、例えば微粒子フィルタが設けられていてもよい。
【0021】
本発明はアダプティブ触媒モデルから出発する。この場合、例えば複数段階の適応を実現する触媒モデルが設けられていてよく、この複数段階の適応によって、モデルの基礎を成す経路モデルにインプットする測定値またはモデル値の不確実性および経路モデルの不確実性が補償される。
【0022】
このような複数段階の適応は、例えば連続的に作業する非常に精確な小さいずれの適応と、より大きいずれの断続的で迅速な修正とを組み合わせる。
【0023】
この場合、連続的な適応および断続的な修正は、センサ、特に流れ方向で触媒の下流およびひいては出力側に配置されたラムダセンサの様々な信号値域からの信号値に基づいていてよいが、これらの信号値から本質的に異なる2つの情報が導き出される。このようなモデルは、触媒内の少なくとも1つの排ガス成分の充填レベルに関するおよび排ガス組成に関する様々な信号値域から信号値の様々な説得力を考慮することを可能にする。
【0024】
さらに、連続的な適応だけ、断続的な修正だけ、またはその両方が一緒に作動されている複数の信号値域が設けられていてよい。
【0025】
断続的な修正においては、例えば出力側のラムダセンサの電圧が、触媒の後ろでリッチ排ガスまたはリーン排ガスの出現、およびひいては低すぎるまたは高すぎる実際の(酸素)充填レベルを示すと、実際の充填レベルが相応に修正される。この修正は、触媒の後ろのラムダセンサの電圧の反応を評価できるようにするために、断続的に行われる。この反応は、触媒の貯蔵特性および経路無駄時間に基づいて遅れて行われるので、アダプティブ触媒モデルは、触媒の下流に配置されたラムダセンサの信号のラムダ値が触媒内の実際の(酸素)充填レベルの推定を可能にするときに、修正をまず一度だけ実施するようになっていてよい。
【0026】
本発明は、このような断続的な修正に基づいていて、この修正をラムダオフセット適応で補う。何故ならば、モデル化された充填レベルのこのような形式の修正後の状態でまさに、触媒の下流のラムダセンサの信号を用いて触媒の上流のラムダセンサのオフセットを可能な限り精確に算出することを可能にする、特に良好に規定された状態が存在することが分かったからである。
【0027】
前記連続的な適応において、例えば触媒の後ろのジャンプ・ラムダセンサのラムダ信号が触媒の後ろのモデル化されたラムダ信号と比較される。この比較から、触媒の前のラムダ値と触媒の後ろのラムダ値との間のラムダオフセットを導き出すことができる。ラムダオフセットによって、例えばパイロット制御によって形成されたラムダ目標値が修正される。しかしながらこの連続的な適応は、ちょうどいま説明した断続的な修正よりも明らかにゆっくりと作業するので、より大きいオフセットを取り除くために適していない。何故ならば、それによって触媒ウィンドウへの到達は著しく遅延されるからである。本発明は特に好適な形式で、触媒の上流のラムダセンサのオフセットが大きい場合に、このギャップを精確に閉鎖する。
【0028】
本発明による演算装置、例えば自動車のコントロールユニットは、特にプログラム技術的に本発明による方法を実施するために設計されている。
【0029】
すべての方法ステップを実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品として、本発明による方法を実行することも好適である。何故ならば、これは、特に実行するコントロールユニットがさらに別の課題のために利用され、従っていずれにしても存在している場合、特に安価な費用で得られるからである。コンピュータプログラムを提供するための適切なデータ記憶媒体は、特に電磁的、光学的および電気的なメモリー、例えばハードディスク、フラッシュメモリー、EEPROM、DVD等である。コンピュータネットワーク(インターネット、イントラネットその他)を介したプログラムのダウンロードも可能である。
【0030】
本発明のその他の利点および実施態様は明細書および添付の図面から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による方法を使用することができる車両の概略図である。
【
図2】本発明による方法の好適な1実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、図面に示された1実施例を用いて概略的に示されていて、以下に図面を用いて説明されている。
【0033】
図1には、本発明による方法を使用することができる車両100がブロック図として概略的に示されている。車両100は、好適な形式で
図2に示した方法200を実施するために設計されていて、内燃機関120、例えばガソリンエンジン、触媒130および演算装置140を有している。さらに、車両100は、例えば噴射ポンプ、ターボチャージャ等の形の、またはこれらの組み合わせから成る燃料再処理装置110を有していてよい。
【0034】
さらに、このような車両は、(排ガス)センサ145,147、特にラムダセンサを有しており、このラムダセンサは、触媒130の上流および下流で車両100の排気装置内に配置されている。
【0035】
演算装置は、例えば点火時期、弁開放時期を制御することによって、並びに燃料再処理装置110によって提供された燃料空気混合気の組成、量および/または圧力を制御することによって、特に内燃機関120の運転を制御する。
【0036】
そのために演算装置140は好適な形式で、さらに
図2に示した、本発明の好適な実施例による方法200を実施するために設計されている。
【0037】
内燃機関120の運転時に発生する排ガスは触媒130に供給される。触媒130の上流において方法200の第1のステップ210で、第1のラムダセンサ145によって排ガスの空気過剰率ラムダが測定され、この第1のラムダ値が演算装置140に伝送される。
【0038】
ステップ210で算出された触媒130の上流におけるラムダ値に依存して、ステップ220で、触媒130内の少なくとも1つの排ガス成分の充填レベルが算出される。これは例えば酸素充填レベルに相当するが、別の排ガス成分、例えば窒素酸化物のための触媒130内の相応の充填レベルも算出される。
【0039】
触媒によって、排ガス成分の相互の反応も加速され、またははじめて可能にされ、それによって、例えば一酸化炭素、窒素酸化物および完全燃焼されていない炭化水素等の有害成分が、水蒸気、窒素および二酸化炭素等の比較的無害な生成物に変換される。触媒130の下流においてステップ230で、第2のラムダ値が第2のラムダセンサ147によって算出され、演算装置140に伝送される。
【0040】
第1および第2のラムダ値は、一時的にまたは持続的に互いに異なっていてよい。何故ならば、触媒130内の反応によって排ガスの組成は触媒130の上流および下流で互いに異なっているからである。しかも、排ガスは、触媒130を貫流するために、所定の時間を必要とする(いわゆる無駄時間)。この無駄時間は、特に排ガスの実際の体積流量、つまり内燃機関120の実際の運転状態に依存している。例えば、内燃機関120の全負荷下の運転時に、アイドリング運転におけるよりも高い、時間単位当たりの排ガス量が発生される。これによって、それぞれの無駄時間は、内燃機関120の運転状態に依存して変化する。何故ならば、触媒130の体積は一定だからである。
【0041】
簡単にするためにこの説明において、それぞれラムダ値1が排出ガス最小であることを前提とする。しかしながら本発明は、最小の排出ガスを得るために目標充填レベルがラムダ=1とは異なるラムダ目標値に相当する場合に、同様に使用可能である。
【0042】
前述のように、本発明は、触媒130の下流における排ガスセンサ147の信号に基づいている。この場合、本発明は、特にラムダセンサ147が触媒130の後ろで明らかに高いかまたは低い電圧を表示している場合、電圧信号が触媒130内の実際の(酸素)充填レベルと関係しているということを利用する。これは特に、センサ電圧が1の範囲内のラムダに相当しないときである。この場合、触媒130は、リッチ排ガスが現われる程度に酸素を含有していないか、またはリーン排ガスが現われる程度に酸素で満たされている。これは、本発明に従って、触媒130の後ろでラムダセンサ147の明らかに高いまたは明らかに低い電圧が発生すると、単数または複数のモデル化された充填レベル、例えば触媒130の複数の軸方向領域内でモデル化された酸素充填レベルをリセットするために利用される。
【0043】
それに応じてステップ240において、触媒130の下流のラムダセンサ147の、ステップ230で算出されたセンサ信号と、ステップ220で算出された触媒充填レベルに基づいて予測される信号に相当する目標信号との間のずれが算出される。目標信号は、内燃機関120の定常運転状態で、つまり一定の負荷要求を伴う運転状態で、特に1または概ね1に近いラムダ値に相当していてよい。
【0044】
ステップ250において、ステップ240で算出された触媒130の下流の実際のラムダ値と、予測された値との間のずれが、閾値と比較される。このずれが閾値よりも小さければ、方法200はステップ210に戻る。これに対してずれが閾値に達するかまたはこれを上回ると、この方法200はステップ260に進み、このステップ260で、触媒130の下流で算出されたセンサ信号に基づいて触媒モデルがリセットされる。このリセット260によって、触媒130のモデル化された充填レベルは、実際の触媒130の相応の充填レベルに少なくとも概ね良好に一致する所定の状態にもたらされる。
【0045】
モデル化された充填レベルの、このような断続的な修正またはリセット260は、平均的なモデル化された充填レベルの、予め設定された目標値からのずれを生ぜしめる。このようなずれは次のステップ270で調整される。これによって、空気燃料混合気は充填レベル調整の目標値に向かう方向に調節され、触媒130を非常に迅速に触媒ウィンドウに向かう方向にもたらす。これによって、つまり直接的に排出ガス改善を生ぜしめ、それと同時に触媒130が、触媒130の後ろで予測可能なラムダ=1(または1に近いラムダ目標値)が調節される所定の状態にもたらされる。しかしながらラムダセンサ145の信号が、調整された酸素充填レベルのモデル化に基づく触媒130の前でオフセットを有していないときにだけ、触媒ウィンドウは実際に得られ、ラムダ=1は触媒130の後ろで実際に調節される。これに対して、オフセットが存在する場合は、触媒130の後ろでラムダ=1が調節されるのではなく、ラムダ=1からこのオフセット分だけずれを有するラムダ値が調節される。
【0046】
酸素充填レベルが(ステップ260で)リセット後に調整されると直ちに、ステップ280で、ラムダ=1(またはラムダ目標値)からの、触媒130の後ろの実際のラムダ値のずれが、触媒130の後ろに配置されたラムダセンサ147を用いて検出される。このずれに基づいて、修正値285が算出され、この修正値285は次いで、触媒130の上流でラムダ値を算出する際に考慮される。特に、この修正値285は、触媒130の上流においてステップ210で測定されたラムダ値に加えられる数値である。ずれの検出は、触媒130の後ろのラムダセンサ147の信号が信頼できるものであって、このセンサ147が特にスタンバイ状態にあるときにのみ有効であることは自明である。オプション的に、ずれが検出される前に待機されなければならない待機時間または発生させなければならない最小排ガス量が設けられていてもよい。
【0047】
ステップ280の後でステップ200はステップ210に戻り、この場合、新たなステップ210で、算出された修正値285が、触媒130の上流でラムダ値を算出する際に考慮される。
【0048】
ダイナミックな走行動作中に、触媒130の後ろのラムダ値は一定ではなく平均値だけ変動し得ることが前提となっているので、触媒130の後ろのラムダセンサ147の信号は好適な形式で低域通過フィルタ処理される。つまり、触媒130の後ろで低域通過フィルタ処理されたセンサ147のラムダ信号の、ラムダ=1からのずれが検出され、触媒130の前のラムダ値と触媒130の後ろのラムダ値との間のオフセットとして解釈される。
【0049】
触媒130の後ろのジャンプ・ラムダセンサ147の信号のラムダ値精度は、ラムダ=1を離れると、温度の影響、横感度およびジャンプ・ラムダ特性曲線のフラットな特性によって制限され得るので、さらに、算出されたオフセットを、減衰ファクターを用いて比例してのみ、例えば50%だけ修正値285として伝送するようになっている。好適な形式で減衰はさらにラムダ=1から離れると増幅され、減衰が大きければ大きいほど、測定されたセンサ信号はラムダ=1においてより密になる。何故ならば、そこでラムダ精度は最も高いからである。オフセット修正のロバスト性は比例した伝送によって向上する。何故ならばそれによって、オフセット適応の減衰および高められた排出ガスを生ぜしめる、オフセットの過剰補償は確実に避けられるからである。
【0050】
このようにして算出された修正値285は好適な形式で、触媒130の前のラムダセンサ145の信号の適応または修正のために用いられる。減衰ファクターを50%と仮定した場合、第1の適応ステップ後にまだ存在する、触媒130の前のラムダ値と触媒130の後ろのラムダ値との間のオフセットは、最初のオフセットの半分だけである。
【0051】
触媒130の後ろのラムダセンサ147の電圧が、明らかに高いかまたは低い電圧を新たに示すと、方法200が繰り返され、場合によっては複数回繰り返される。オプション的に、この方法200は、触媒130の後ろのラムダセンサ147の信号が、リセットに基づいて予測された方向とは異なる方向に進むときに、例えばセンサ電圧が低いセンサ電圧におけるリセット後にまずより高いセンサ電圧の方向に進むが、次いで再び低いセンサ電圧の方向に進むときにも繰り返されてよい。減衰ファクターは、ラムダ=1において触媒130の後ろのラムダセンサ147の測定された振動が密であればある程、より強く減衰されるので、各ステップで比例してより多くのオフセットが適応される。このような形式で、数値的に大きいラムダオフセットも、複数の連続するリセットステップおよび適応ステップによって迅速にかつ安定的に完全に適応され得る。
【符号の説明】
【0052】
100 車両
110 燃料再処理装置
120 内燃機関
130 触媒コンバータ、触媒
140 演算装置
145 第1の排ガスセンサ、ラムダセンサ
147 第2の排ガスセンサ、ラムダセンサ
200 方法
210 第1のステップ
220,230,240,250 ステップ
260 ステップ、リセット
270 ステップ、調整
280 ステップ
285 修正値
【外国語明細書】