(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062710
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその成形体である透明吸湿シート
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220413BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220413BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20220413BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/22
C08K9/00
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166459
(22)【出願日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2020170527
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302018053
【氏名又は名称】株式会社中村超硬
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
(72)【発明者】
【氏名】垣永 貴光
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA28X
4F071AB26
4F071AC16A
4F071AC18A
4F071AD03
4F071AD06
4F071AF10
4F071AF30Y
4F071AH04
4F071AH12
4F071BA09
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4J002AA001
4J002BB001
4J002BB031
4J002BB121
4J002BF031
4J002DE076
4J002DE136
4J002DE146
4J002EX036
4J002FB076
4J002FB086
4J002FD016
4J002FD206
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】メジアン径(D50)が所定範囲のナノサイズであるゼオライト粒子であっても、このゼオライト粒子が所定範囲の高濃度で透明樹脂中に分散されている樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】透明樹脂と、1種又は2種以上の、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子とを含み、前記ゼオライト粒子のメジアン径(D50)が20~150nmであり、前記カップリング剤の屈折率(A)と表面処理される前の前記ゼオライト粒子の屈折率(B)との比(A/B)が、1.000~1.122であり、前記カップリング剤の屈折率(A)と前記透明樹脂の屈折率(C)との比(A/C)が、0.950~1.064であり、前記ゼオライト粒子の含有量が、樹脂組成物中20~60重量%である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂と、1種又は2種以上の、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子とを含み、
前記ゼオライト粒子のメジアン径(D50)が20~150nmであり、
前記カップリング剤の屈折率(A)と表面処理される前の前記ゼオライト粒子の屈折率(B)との比(A/B)が、1.000~1.122であり、
前記カップリング剤の屈折率(A)と前記透明樹脂の屈折率(C)との比(A/C)が、0.950~1.064であり、
前記ゼオライト粒子の含有量が、樹脂組成物中20~60重量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記透明樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリオレフィンから選択される少なくとも一種である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記カップリング剤の屈折率が1.473以上かつSP値が10以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂組成物の成形体である透明吸湿シートであって、
前記ゼオライト粒子が透明吸湿シート中に均一に分散されており、前記ゼオライト粒子の透明吸湿シート中の濃度が1~60重量%である、透明吸湿シート。
【請求項5】
前記透明吸湿フィルムの厚さが100μmのときの全光線透過率が、JIS K7361-1(1997年)に準拠して測定したときに86%以上であり、かつ、ヘーズ(Haze)が、JIS K7136(2000年)に準拠して測定したときに35%以下である、請求項4記載の透明吸湿シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその成形体である透明吸湿シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透明性を有する樹脂成分を含有する樹脂組成物等を用いて成形された透明フィルムは、食品、電子部品、薬品等の包装用フィルム、画像表示装置の画面等の保護膜、有機EL素子の封止材等に用いられている。また、このような包装用フィルムや封止材等の用途では、被包装物や被封止物の空気中の水分等による変性等を防止するため透明フィルム等に吸湿剤等が添加されることがある(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、固形薬剤の包装用として一般的なプレス・スルー・パック(PTP)包装用ポリプロピレン系シートに関し、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、充填剤として平均粒径1~10μmであるカリウムナトリウムアルミノシリケートが1~8重量部添加された樹脂組成物からなるPTP包装用ポリプロピレン系シートが開示されている。そして、このようなシートにより、カール性に優れ、防湿性も向上させ、成形温度幅、透明性などの他のPTP包装に求められる特性についても充分なPTP用ポリプロピレン系シートを提供することができるとされている。
【0004】
特許文献2には、(A)透明重合体中に(B)平均粒子径が0.3μm以下の吸湿剤を含有することを特徴とする透明吸湿組成物及びこれを成形して形成されるフィルムが開示されている。そして、このようなフィルムは、吸湿性及び透明性の両者に優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-47601号公報
【特許文献2】特開2006-272190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載のシートやフィルムは、一定程度の吸湿性及び透明性を有すると考えられる。しかし、吸湿性を向上させるために、吸湿剤の含有量を増加させると透明性が低下する。また、本発明者の検討によると、吸湿剤としてメジアン径(D50)がナノサイズのゼオライト粒子を用いると、その粒子を透明樹脂中に分散させることが困難であることが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、メジアン径(D50)が所定範囲のナノサイズであるゼオライト粒子であっても、このゼオライト粒子が所定範囲の高濃度で透明樹脂中に分散されている樹脂組成物を提供すること、また、当該樹脂組成物を用いてシートを形成した場合に、従来よりも高濃度で前記ゼオライト粒子を含有しても、従来と遜色のない透明性を有する透明吸湿シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、特定のカップリング剤により表面処理した所定サイズのゼオライト粒子を用いることにより、ゼオライト粒子の屈折率を透明樹脂に近づけるように調整することが可能で、且つ、ゼオライト粒子の分散性を向上させることも可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
[1]透明樹脂と、1種又は2種以上の、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子とを含み、前記ゼオライト粒子のメジアン径(D50)が20~150nmであり、前記カップリング剤の屈折率(A)と表面処理される前の前記ゼオライト粒子の屈折率(B)との比(A/B)が、1.000~1.122であり、前記カップリング剤の屈折率(A)と前記透明樹脂の屈折率(C)との比(A/C)が、0.950~1.064であり、前記ゼオライト粒子の含有量が、樹脂組成物中20~60重量%である、樹脂組成物。
[2]前記透明樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリオレフィンから選択される少なくとも一種である、前項[1]記載の樹脂組成物。
[3]前記カップリング剤の屈折率が1.473以上かつSP値が10以下である前項[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前項[1]~[3]の何れか一項に記載の樹脂組成物の成形体である透明吸湿シートであって、前記ゼオライト粒子が透明吸湿シート中に均一に分散されており、前記ゼオライト粒子の透明吸湿シート中の濃度が1~60重量%である、透明吸湿シート。
[5]前記透明吸湿フィルムの厚さが100μmのときの全光線透過率が、JIS K7361-1(1997年)に準拠して測定したときに86%以上であり、かつ、ヘーズ(Haze)が、JIS K7136(2000年)に準拠して測定したときに35%以下である、前項[4]記載の透明吸湿シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メジアン径(D50)が所定範囲のナノサイズであるゼオライト粒子であっても、このゼオライト粒子が所定範囲の高濃度で透明樹脂中に分散されている樹脂組成物を提供することができる。また、当該樹脂組成物を用いてシートを形成した場合に、従来よりも高濃度で前記ゼオライト粒子を含有しても、従来と遜色のない透明性を有する透明吸湿シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、透明樹脂と、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子とを含む。そのゼオライト粒子のメジアン径(D50)は20~150nmである。また、カップリング剤の屈折率(A)と表面処理される前の前記ゼオライト粒子の屈折率(B)との比(A/B)が、1.000~1.122であり、カップリング剤の屈折率(A)と前記透明樹脂の屈折率(C)との比(A/C)が、0.770~1.064である。さらに、ゼオライト粒子の含有量が、樹脂組成物中20~60重量%である。樹脂組成物に含まれる、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子は、1種でも良いし、2種以上でも良い。
【0012】
このように、所定の屈折率のカップリング剤により所定のゼオライト粒子の表面を処理することで、ゼオライト粒子の屈折率を透明樹脂の屈折率に近づけることができ、かつ、ゼオライト粒子の透明樹脂に対する分散性を向上させることができる。その結果、従来のゼオライト粒子では困難であった量を透明樹脂中に分散させることが可能になる。また、透明樹脂中への均一な分散性を確保可能なため、この樹脂組成物を用いて成形された成形体であるシートにも、所定のゼオライト粒子が均一に分散されており、且つ、当該粒子の屈折率が透明樹脂に近づくように調整されているため、ゼオライト粒子の含量が従来よりも多いにもかかわらず、シートの透明性が確保される。また、ゼオライト粒子の含量が多いため、良好な吸湿特性を有する。
【0013】
先ず、樹脂組成物について説明する。
【0014】
ゼオライト粒子は、メジアン径(D50)が20~150nmのものである。吸湿性及び透明性の観点からは、メジアン径(D50)は20~100nmであるのが好ましい。尚、カップリング剤による表面処理前後でゼオライト粒子の粒子径に実質的な変化はないと考えられる。
【0015】
ゼオライト粒子を構成するゼオライトは、吸湿性の観点から、シリコン原子(Si)とアルミニウム原子(Al)のモル比(Si/Al)が0~5であるのが好ましい。このようなゼオライトとしては、例えば、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association:IZA)によりデータベース化されている構造コードで示すところのLTA、SOD、FUA、CHA、MER、MOR、MFI、AFI、AEI等が挙げられる。尚、Si/Alモル比が0のゼオライトは、例えば、MAPO-5、CoAPO-5等の各種のAFI構造のゼオライトが挙げられる。
【0016】
このようなメジアン径(D50)が所定範囲のゼオライト粒子は、例えば、特開2017-48096号公報等に記載の方法により得ることができる。
【0017】
所定の表面処理されたゼオライト粒子の含有量は、吸湿性及び分散性の観点から、樹脂組成物中20~60重量%であり、好ましくは、30~60重量%である。
【0018】
カップリング剤は、ゼオライト粒子と透明樹脂の屈折率の差が小さくなるように調整し、得られる透明吸湿シートの透明性を確保する観点から、その屈折率(A)と表面処理される前のゼオライト粒子の屈折率(B)との比(A/B)が、1.000~1.122であり、かつ、その屈折率(A)と透明樹脂の屈折率(C)との比(A/C)が0.950~1.064であるものが好適である。屈折率の比A/Bは、好ましくは、1.030~1.100であり、屈折率の比A/Cは、好ましくは、0.985~1.064、より好ましくは、1.000~1.040である。
【0019】
カップリング剤は、透明樹脂の屈折率にもよるが、透明性の観点から、屈折率が1.473以上であるのが好ましい。屈折率は、一般に高いほど良い傾向にある。特に、光学用途の樹脂組成物の場合は高いほど良い傾向にある。また、透明樹脂への分散性の観点から、カップリング剤のSP値(溶解度パラメータ)は、10以下であるのが好ましい。SP値は、透明樹脂に応じて選択されるが、7.0以上が好ましい。透明性及び分散性の観点から、屈折率が1.473以上であり、かつ、SP値が10以下であるのがより好ましい。
【0020】
ここで、ゼオライト粒子の屈折率は、以下のようにして特定した値である。
【0021】
予め屈折率が特定されている液体100重量部に、ゼオライト粒子1重量部を添加し、得られた混合液のヘーズ(Haze)が0~5%、かつ、全光線透過率が95%以上となる場合に、その液体の屈折率を、ゼオライト粒子の屈折率とする。尚、ヘーズ(Haze)及び全光線透過率は、後述する実施例の欄に記載の方法で測定することができる。液体の屈折率は、アッベ屈折計により決定できる。尚、屈折率及び全光線透過率は、理論上0~100%であるが、ブランクを用いてゼロを決定するため、100%を超える場合がある。
【0022】
カップリング剤及び透明樹脂の屈折率は、アッベ屈折計により測定した値を採用することができる。透明樹脂の屈折率は、例えばシート状に成形した成形体を用いてアッベ屈折計により測定した値を採用することができる。
【0023】
カップリング剤のSP値は、原則として、下記で示されるFedorsの式により算出される25℃における値δ(cal/cm3)1/2である。尚、1(cal/cm3)1/2=2.05(J/cm3)1/2=2.05(MPa)1/2である。
【0024】
δ=[ΔEv/V]1/2=[ΣΔei/ΣΔvi]1/2
δ:SP値(cal/cm3)1/2
ΔEv:凝集エネルギー(蒸発エネルギー)(cal/mol)
V:モル分子容(cm3/mol)
Δei:各成分の原子又は原子団のモル凝集エネルギー(cal/mol)
Δvi:各原子又は原子団のモル分子容(cm3/mol)
【0025】
Fedorsの式の計算に使用する各原子又は原子団のモル凝集エネルギー、モル分子容は、F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,Vol.14,No.2,147-154p(1974)に記載のものを採用することができる。
【0026】
Fedorsの式によりSP値を算出するのが困難な場合は、物性値から推算する方法により決定することも可能である。但し、このような推算方法により推算される値は、Fedorsの式の値とは異なる場合がある。そのため、このような推算値を用いる場合は、Fedorsの式の値に対して概ね20%の乖離があり得ることを考慮して、SP値を決定し得るものとする。物性値から推算する方法としては、例えば、蒸発潜熱から求める方法、表面張力による方法、溶解度の値から求める方法、屈折率から求める方法、Hildebrand Ruleによる方法等が挙げられる。溶解度の値から求める方法としては、例えば濁点滴定法から求める方法等が挙げられる。濁点滴定法は高分子化合物(樹脂)のSP値の算出に適用可能である。
【0027】
カップリング剤は、好ましくは前述の所定範囲の屈折率を示すもの、より好ましくは、所定範囲のSP値を有するものであればよく、例えば、シラン系、アルミネート系、チタネート系、ジルコネート系等を採用することができる。このうち、透明性、分散性の観点からは、アルミネート系、チタネート系が好ましい。カップリング剤は、市販のものを用いることができる。具体例を示すと、以下のとおりであるが、これらに限定されるものではない。
大阪ガスケミカル株式会社製:OGSOL SC-001(シラン系、屈折率1.55~1.57、SP値10以下)等、
味の素ファインテクノ株式会社製:プレンアクトAL-M(アルミネート系、屈折率1.490、SP値8.8)、プレンアクト9SA(チタネート系、屈折率1.496、SP値9.6)等、
信越化学工業株式会社製:KBM-103(シラン系、屈折率1.473、SP値8.8)等。
【0028】
ゼオライト粒子の表面処理は、定法に従って行うことができる。例えば、ゼオライト粒子とカップリング剤とを混合し、撹拌後加熱することで、ゼオライト粒子の表面がカップリング剤で被覆され、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子が得られる。混合、撹拌の条件は特に限定はなく、例えば、カップリング剤(a)とゼオライト粒子(b)の重量基準の配合比(a/b)は、1/1000~20/100とすることができる。撹拌条件や加熱条件は、適宜決定することができる。
【0029】
ゼオライト粒子及びその表面処理に用いるカップリング剤の種類は、前述の各屈折率の比となるものを適宜選択して組み合わせて用いることができる。また、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子は、前述の各屈折率の比となるものを、1種のみ用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、透明樹脂の特性に応じて、2種以上組み合わせて用いると、透明樹脂の良好な透明性を確保すると同時に、透明樹脂を用いた良好な成形性を確保することができ得る。
【0030】
透明樹脂は、本技術分野において、成形体にした時に、一般に透明と認識される外観を呈する樹脂であればよく、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリカーボネート系、スチレン系、ポリオレフィン系、水添環状樹脂、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル-ウレタン共重合体、エポキシ系など種々の樹脂が挙げられる。このうち、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体、環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(LDPE:分岐状低密度ポリエチレン、HDPE:高密度ポリエチレン、LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン等のアルケンの重合体(但し、エラストマーを除く)が挙げられる。オレフィン系エラストマーは、汎用ポリオレフィンを主鎖にαオレフィンをコモノマーとする共重合体(LLDPE等を除く)であり、例えば、エチレンと1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3以上のαオレフィンとの共重合体、プロピレンと1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体等が挙げられる。エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アルキルメタクリレート共重合体等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0031】
透明樹脂は、前述のようなもののうち、所定のゼオライト粒子の分散性、透明性の観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリオレフィンから選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0032】
透明樹脂の屈折率、SP値は、樹脂の種類等により異なるが、代表的なものを例示すると、以下のとおりである。SP値は、例えば、前述の物性値から推算する方法、特に、濁点滴定法により推算することができる。
ポリエチレン:屈折率は、1.51~1.54、SP値は、7.9~8.2である。
ポリプロピレン:屈折率は、8.0、SP値は、1.48~1.49である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体:屈折率は、1.476~1.495、SP値は、8.2~8.5である。
【0033】
透明樹脂は、市販のものを用いることができ、例示すると以下のとおりである。
日本ポリエチレン株式会社:ノバテックLL、HD、LD、EVA;カーネル等、
株式会社プライムポリマー:プライムポリプロ等、
三井・ダウ ポリケミカル社:エバフレックス等、
ダウ・ケミカル社:ENGAGE等。
【0034】
透明樹脂の樹脂組成物中の含有量は、70.0~40.0重量%であるのが好ましい。また、後述する添加剤を含む場合は、添加剤と透明樹脂との合計が、70.0~40.0重量%であるのが好ましい。
【0035】
樹脂組成物には、前述の各成分の他、成形体にした際の透明性、ゼオライト粒子の分散性に影響がない範囲で、添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ステアリン酸、ポリエチレングリコール等の滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料、顔料、難然剤、可塑剤、結晶造核剤、吸湿剤等を含有することができる。このような添加剤の含有量は、透明樹脂100重量部に対して、合計で1.0~34重量部が好ましい。
【0036】
樹脂組成物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、透明樹脂、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子、必要に応じて添加する添加剤を従来公知の混練機で混練して、各成分を均一に混合させた後、所望の形状に成形することで得ることができる。混練及び成形の際は、必要に応じて、所定時間、所定温度に加熱してもよい。
【0037】
得られる樹脂組成物は、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子が透明樹脂中に均一に分散しており、この樹脂組成物を用いて成形されたシート状の成形体は透明を呈する。
【0038】
樹脂組成物は、そのまま用いてシート等の成形体を製造することが可能である。また、この樹脂組成物をマスターバッチとし、これと、別途準備した前述の透明樹脂とを混練して両者を均一に混合させた希釈組成物を用いてシート等の成形体を製造することも可能である。この希釈組成物は、従来公知の方法で得ることができる。希釈に用いる透明樹脂は、マスターバッチ(即ち、樹脂組成物)に含まれる透明樹脂と同一のものを用いても、用いなくてもよいが、透明性、所定のゼオライト粒子の分散性の観点から、同一のものを用いるのが好ましい。希釈組成物中の所定のゼオライト粒子の濃度は、1重量%以上60重量%未満であるのが好ましい。
【0039】
透明除湿シートは、前述の樹脂組成物(前述の希釈組成物を含む。)を用いて成形されたものである。換言すると、当該透明除湿シートは、前述の樹脂組成物(前述の希釈組成物を含む。)の成形体であって、シート状の形状を有するものである。また、所定のゼオライト粒子が、透明吸湿シート中に均一に分散されている。また、所定のゼオライト粒子の透明吸湿シート中の濃度が1~60重量%である。
【0040】
透明除湿シートは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、前述の樹脂組成物又は希釈組成物を、T-ダイ押出し、カレンダー等の従来公知の方法によりシート状に成形することにより得ることができる。シートの厚みは、用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、10~300μmとすることできる。
【0041】
透明除湿シートは、所定のゼオライト粒子を従来よりも多く含むにもかかわらず透明な外観を呈する。この透明の指標としては、透明吸湿フィルムの厚さが100μmのときの全光線透過率が、JIS K7361-1(1997年)に準拠して測定したときに86%以上であり、かつ、ヘーズが、JIS K7136(2000年)に準拠して測定したときに35%以下であるのが好ましい。
【0042】
透明除湿シートは、透明性に優れ、かつ、ゼオライト粒子に基づく優れた吸湿性を有するため、食品、電子部品、薬品等の包装用フィルム、画像表示装置の画面等の保護膜、有機EL素子の封止材等に好適である。
【実施例0043】
以下、実施例に基づき、本発明に係る実施形態をより詳細に説明する。
【0044】
(製造例1)
ゼオライト粒子(株式会社中村超硬製、Zeoal(登録商標) 4A、メジアン径(D50):50nm、A型ゼオライト(構造コード:LTA))100重量部と、カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製、プレンアクト ALM、屈折率:1.490、SP値:8.8)10重量部とをトルエン溶媒中で混合し、固液分離して乾燥させた後熱処理及び脱水処理をして、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子を得た。
【0045】
(製造例2~4)
表1に示すカップリング剤を用いた以外は製造例1と同様にしてカップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子を得た。
【0046】
【0047】
各製造例で用いたカップリング剤は下記のとおりである。また、SP値は下記化合物又はCAS番号の化合物から導出される構造式に基づき、Fedorsの式により算出した値である。
・プレンアクトAL-M:アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート
・プレンアクト9SA:CAS番号 61417-55-8
・KBE-903:3-アミノプロピルトリエトキシシラン
・KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0048】
(ゼオライト粒子の屈折率の決定)
屈折率が1.4015であるシリコーン油(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、Element14*PDMS 50-J)100重量部に、製造例で用いたゼオライト粒子1重量部を添加し撹拌したところ、透明な液体が得られた。この透明な液体について、25℃の雰囲気下で、ヘーズメーター(日本電色社製、製品名NDH4000)を用いてヘーズ(Haze)及び全光線透過率を測定した。その結果、透明な液体のヘーズ(Haze)は3.4%で、全光線透過率は100.22%であった。これらの結果から前述の定義にしたがって、製造例で用いたゼオライト粒子の屈折率を、1.4015とした。
【0049】
(実施例1)
製造例1で得られた、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子30重量部、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製、EV40LX、屈折率1.476、SP値8.5)69重量部、ステアリン酸1重量部をニーダーにより混錬し、樹脂組成物を得た。
【0050】
得られた樹脂組成物をプレス機によりシート状に成形し、厚さ100μmのシートを得た。得られたシートを用いて後述する評価を行った。
【0051】
(実施例2、比較例1、2)
製造例1で得られた、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子に替えて、製造例2~4で得られた、カップリング剤により表面処理されたゼオライト粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、シートを得た。
【0052】
(評価)
後述のようにして、実施例1、2及び比較例1、2で得られたシートを用いて、ヘーズ(Haze)及び全光線透過率を測定した。結果を表2に示す。また、ゼオライト粒子の屈折率Aと、カップリング剤の屈折率B、EVA樹脂の屈折率Cとの各比A/B、A/Cを表2に示す。
【0053】
<ヘーズ(Haze)の測定>
JIS K7136(2000年)に準拠して測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:30%以下、△:30%より大きく35%以下、×:35%より大きい。
【0054】
<全光線透過率の測定>
JIS K7361-1(1997年)に準拠して測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:90%以上、△86%以上90%未満、×:86%未満。
【0055】
【0056】
表2より、所定のゼオライト粒子を用いることで、ゼオライト粒子を透明な樹脂中に均一にかつ多量に含有させることが可能であり、得られるシートのヘーズ(Haze)及び全光線透過性が良好であることが分かる。このようにゼオライト粒子が透明樹脂中に多量に均一に含有されていることから、当該シートは、吸湿性に優れ、しかも、透明性に優れており、透明吸湿シートとして好適であることが分かる。