(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062711
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】抗酸化性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20220413BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220413BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220413BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20220413BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20220413BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20220413BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220413BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220413BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220413BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220413BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220413BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20220413BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220413BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220413BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220413BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220413BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20220413BHJP
C07C 49/743 20060101ALI20220413BHJP
C07C 45/78 20060101ALI20220413BHJP
C07C 45/86 20060101ALI20220413BHJP
A23L 5/44 20160101ALI20220413BHJP
【FI】
A61K31/122
A23L33/10
A23L33/105
A23L33/15
A61K31/015
A61K31/555
A61K31/375
A61K31/01
A61K8/35
A61K8/31
A61K8/49
A61K8/67
A61P17/00
A61Q19/08
A61P17/18
A61K45/00
C07D487/22
C07C49/743 C
C07C45/78
C07C45/86
A23L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166504
(22)【出願日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2020170815
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】521437150
【氏名又は名称】株式会社レドックス
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】山田 孫平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宏水
【テーマコード(参考)】
4B018
4C050
4C083
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD52
4B018MD53
4B018MD69
4B018MF06
4B018MF13
4C050PA01
4C050PA08
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC211
4C083AC212
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC02
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4C084AA17
4C084MA02
4C084MA52
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4C084NA05
4C084ZA89
4C086AA02
4C086AA04
4C086BA18
4C086CB04
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206BA02
4C206BA04
4C206CB25
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZA89
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AD17
4H006AD40
4H006BB14
(57)【要約】
【課題】天然由来成分を主要な成分として含有し、高い抗酸化性および安定性を有し、抗酸化機能の持続性に優れる抗酸化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、および(C)アスコルビン酸塩を含有する、抗酸化性組成物とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、及び(C)アスコルビン酸塩を含有する、抗酸化性組成物。
【請求項2】
(A)キサントフィルがアスタキサンチンである、請求項1に記載の抗酸化性組成物。
【請求項3】
(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質が、カロテン類およびクロロフィル類からなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の抗酸化性組成物。
【請求項4】
(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質が、リコペン、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルdおよびクロロフィルfからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の抗酸化性組成物。
【請求項5】
(C)アスコルビン酸塩が、アスコルビン酸のナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群より選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物。
【請求項6】
(A)キサントフィルの含有量に対する(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質の含有量の比[(B)/(A)]が、モル比にて0.5以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物。
【請求項7】
(A)キサントフィルの含有量に対する(C)アスコルビン酸塩の含有量の比[(C)/(A)]が、モル比にて75以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物を含有する医薬品。
【請求項9】
経口剤である、請求項8に記載の医薬品。
【請求項10】
皮膚外用剤である、請求項8に記載の医薬品。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物を含有する医薬部外品。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物を含有する化粧品。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物を含有する食品。
【請求項14】
アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとを混合する工程を含む、アスコルビン酸カルシウムの製造方法。
【請求項15】
アスコルビン酸が発酵法により産生され、またはアスコルビン酸を含有する植物体から抽出されたものである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
さらに混合物を濃縮する工程を含む、請求項14または15に記載の製造方法。
【請求項17】
アスタキサンチンを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にアスタキサンチンを抽出する工程を含む、アスタキサンチンの製造方法。
【請求項18】
さらに、アスコルビン酸カルシウムの存在下に、アスタキサンチンを含有する原材料から抽出したアスタキサンチンの抽出物を濃縮する工程を含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
クロロフィルを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にクロロフィルを抽出する工程を含む、クロロフィルの製造方法。
【請求項20】
さらに、アスコルビン酸カルシウムの存在下に、クロロフィルを含有する原材料から抽出したクロロフィルの抽出物を濃縮する工程を含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
(C)アスコルビン酸塩としてアスコルビン酸カルシウムを製造する工程、(A)キサントフィルとしてアスタキサンチンを製造する工程、および(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質としてクロロフィルを製造する工程、ならびにアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムを混合し、製剤化する工程を含む、抗酸化性組成物の製造方法であって、
アスコルビン酸カルシウムを製造する工程が、アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとを混合する工程を含み、アスタキサンチンを製造する工程が、アスタキサンチンを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にアスタキサンチンを抽出する工程を含み、クロロフィルを製造する工程が、クロロフィルを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にクロロフィルを抽出する工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化性および安定性が高く、食品等の有効成分として有用な抗酸化性組成物に関する。
また、本発明は、抗酸化性組成物に好適に用いられる成分および抗酸化性組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素は生物にとって必要不可欠であり、エネルギーを産生し、生命を維持するために使用される。その一方で、体内に取り込まれた酸素の一部は、反応性の高い活性酸素に変換される。この活性酸素は、生体内で組織に障害をもたらすため、動脈硬化、癌、白内障等が引き起こされることが知られている。また、生体の老化とも密接な関係があり、体内のタンパク質、脂質、DNA等を傷害するため、老化を促進するとされ、健康寿命を脅かすとされている。生体内には活性酸素に対する防御機構が備わっており、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンパーオキシダーゼはその代表例である。
近年では、活性酸素に対する防御が重要視されており、そのひとつとして、抗酸化活性を有する食品の摂取が奨められている。食品に含有される抗酸化成分としては、トコフェロール、ビタミンC、カロテン、フラボノイド等の多種多様な物質が知られており、それらの物質を効率良く摂取できることを訴求した健康食品も市販されている。毎日きちんとした食生活を送ることが健康上好ましいものの、現代の生活スタイルにおいては困難な場合も多く、これら健康食品が健康を維持する上で果たす役割は大きい。
かかる状況において、抗酸化成分を含有する健康食品においては、少量でも効率良く活性酸素を捕捉でき、抗酸化力が高い組み合わせで用いることが必要である。
【0003】
抗酸化成分として注目されているアスタキサンチンは、天然に存在する成分であり、エビ、カニなどの甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻へマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等に広く分布している。その抗酸化作用は、α-トコフェロールの200倍以上(特許文献1)または約550倍(非特許文献1)であり、β-カロテンの約40倍(非特許文献1)であることが報告されている。
また、抗酸化能が最も高く、活性酸素消去能を有する抗酸化成分として、アスタキサンチンやリコピンが報告されている(非特許文献2)。
しかし、かかる抗酸化成分は、単独では十分な安定性を担保することができず、従来の健康食品等では、安定化剤を添加し、または容器や包装の工夫などにより品質を保っているのが実情である。特に安定化剤として酸化安定化剤についての報告が見られるが、いずれにおいても抗酸化成分の十分な安定化効果は認められておらず、安定化剤の組み合わせと添加量の関係についての報告も乏しく、品質を担保する上で十分なエビデンスが得られているとはいえない。また、複合的な抗酸化成分について、単独の抗酸化成分より高い抗酸化性を示すとの報告は、特に見られない。
さらに、安全性の高い抗酸化剤を得るために、天然由来原材料を用いることは、工業的に得られた一般的な原材料を用いる場合に比べコストが高く、天然由来原材料を用いて製造された製品はほとんど見られないのが実情である。それゆえ、安全な抗酸化性製品を製造するため、既に食品として用いられ、安全性が確認された天然由来の原材料を用いる方法の開発が望まれている。
【0004】
また、黒茶抽出物を含有する組成物の腐敗や変質を防止して、味や安定性を改善するために、多糖類としてデキストリン、セルロースおよびデンプンから選択される1種以上を添加すること(特許文献2)、生物学的に活性な低分子をカプセル化して配合する栄養補助サプリメントにおいて、酸化安定剤として、金属キレート剤、抗酸化剤、および乳化剤などを添加すること(特許文献3)が開示されている。
しかし、かかる技術において、抗酸化成分以外に添加される安定化剤が安全性に及ぼす影響を否定できないという大きな問題があり、また、天然由来成分以外の安定化剤を含有する場合は、昨今の消費者の天然志向に沿わないという問題もある。
【0005】
それゆえ、高い抗酸化性を示し、安定性および安全性に優れる抗酸化性組成物であって、天然由来成分以外の安定化剤をなるべく含有しない組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-049091号公報
【特許文献2】特開2005-253373号公報
【特許文献3】特表2007-532543号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】板倉弘重ら;日本補完代替医療学会誌 5,173‐182 (2008)
【非特許文献2】向井和男ら;オレオサイエンス 13,371‐378 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、天然由来成分を主要な成分として含有し、高い抗酸化性および安定性を有し、安定化剤を含有せずとも、抗酸化機能の持続性に優れる抗酸化性組成物を提供することを目的とした。
また、本発明は、抗酸化性組成物に好適に用いられる成分を安定にかつ低コストで製造する方法、ならびに、高い抗酸化性および安定性を有する抗酸化性組成物を低コストで製造する方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、および(C)アスコルビン酸塩を含有する組成物が高い抗酸化性および安定性を有し、安定化剤を含有せずとも抗酸化機能の持続性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、貝殻焼成カルシウムを用いることにより、(C)アスコルビン酸塩として好適に用いられるアスコルビン酸カルシウムを安定にかつ低コストで製造することができ、さらに前記アスコルビン酸カルシウムを添加することにより、(A)キサントフィルおよび(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質として好適に用いられるアスタキサンチンおよびクロロフィルを安定にかつ低コストで製造することができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1](A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、及び(C)アスコルビン酸塩を含有する、抗酸化性組成物。
[2](A)キサントフィルがアスタキサンチンである、[1]に記載の抗酸化性組成物。
[3](B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質が、カロテン類およびクロロフィル類からなる群より選択される1種以上である、[1]または[2]に記載の抗酸化性組成物。
[4](B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質が、リコペン、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルdおよびクロロフィルfからなる群より選択される1種以上である、[1]または[2]に記載の抗酸化性組成物。
[5](C)アスコルビン酸塩が、アスコルビン酸のナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群より選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗酸化性組成物。
[6](A)キサントフィルの含有量に対する(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質の含有量の比[(B)/(A)]が、モル比にて0.5以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の抗酸化性組成物。
[7](A)キサントフィルの含有量に対する(C)アスコルビン酸塩の含有量の比[(C)/(A)]が、モル比にて75以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の抗酸化性組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の抗酸化性組成物を含有する医薬品。
[9]経口剤である、[8]に記載の医薬品。
[10]皮膚外用剤である、[8]に記載の医薬品。
[11][1]~[7]のいずれかに記載の抗酸化性組成物を含有する医薬部外品。
[12][1]~[7]のいずれかに記載の抗酸化性組成物を含有する化粧品。
[13][1]~[7]のいずれかに記載の抗酸化性組成物を含有する食品。
[14]アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとを混合する工程を含む、アスコルビン酸カルシウムの製造方法。
[15]アスコルビン酸が発酵法により産生され、またはアスコルビン酸を含有する植物体から抽出されたものである、[14]に記載の製造方法。
[16]さらに混合物を濃縮する工程を含む、[14]または[15]に記載の製造方法。
[17]アスタキサンチンを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にアスタキサンチンを抽出する工程を含む、アスタキサンチンの製造方法。
[18]さらに、アスコルビン酸カルシウムの存在下に、アスタキサンチンを含有する原材料から抽出したアスタキサンチンの抽出物を濃縮する工程を含む、[17]に記載の製造方法。
[19]クロロフィルを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にクロロフィルを抽出する工程を含む、クロロフィルの製造方法。
[20]さらに、アスコルビン酸カルシウムの存在下に、クロロフィルを含有する原材料から抽出したクロロフィルの抽出物を濃縮する工程を含む、[19]に記載の製造方法。
[21](C)アスコルビン酸塩としてアスコルビン酸カルシウムを製造する工程、(A)キサントフィルとしてアスタキサンチンを製造する工程、および(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質としてクロロフィルを製造する工程、ならびにアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムを混合し、製剤化する工程を含む、抗酸化性組成物の製造方法であって、
アスコルビン酸カルシウムを製造する工程が、アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとを混合する工程を含み、アスタキサンチンを製造する工程が、アスタキサンチンを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にアスタキサンチンを抽出する工程を含み、クロロフィルを製造する工程が、クロロフィルを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にクロロフィルを抽出する工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高い抗酸化性および安定性を有し、抗酸化機能の持続性にも優れる抗酸化性組成物を提供することができる。
本発明の抗酸化性組成物は、安定化剤を含有することなく高い安定性を示し、主として天然由来の成分により構成されるため、安全性上の懸念が少なく、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等への利用に適する。
【0012】
また、本発明により、抗酸化性に優れ、酸化ストレスに起因する疾患や症状の予防または改善に有効な医薬品、医薬部外品、化粧品および食品を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明により、抗酸化性組成物の成分として好適に用いられるアスタキサンチン、クロロフィル、およびアスコルビン酸カルシウムを低コストにて安定に製造することができ、抗酸化性および安定性により優れる抗酸化性組成物を得ることができる。
さらにまた、本発明により、原材料として天然物および天然由来の廃棄物や規格外品を再利用し、エコロジーに配慮した製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、試験例1において、アスタキサンチンのK
Q値を求めるために、S
Blank/S
Astaxantin値をアスタキサンチン濃度に対してプロットした図である。
【
図2】
図2は、試験例2において、アスタキサンチン・クロロフィル混合物についてのK
Q値およびORP値と、クロロフィル濃度との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、試験例3において、アスタキサンチン・クロロフィル・アスコルビン酸カルシウム混合物についてのK
Q値およびORP値と、アスコルビン酸カルシウム濃度との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、(I)試験例4において、各試料におけるアスタキサンチンの残存率を示す図および(II)試験例4において、各試料におけるクロロフィルaの残存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の抗酸化性組成物は、(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、および(C)アスコルビン酸塩を含有する。
【0016】
本発明の抗酸化性組成物に、(A)成分として含有されるキサントフィルは、カロテノイド由来の黄色の色素であり、カロテンの水素原子のいくつかがヒドロキシル基に置換され、または同じ炭素原子に結合する水素原子対がオキソ基と置換した構造を有する。
キサントフィルとしては、アスタキサンチン、カンタキサンチン、β-クリプトキサンチン、カプサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ミキソキサントフィル、ゼアキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
本発明の目的には、キサントフィルとしては、アスタキサンチンが好ましく用いられる。
アスタキサンチンは、甲殻類の殻やマダイの体表、サケ科魚類の筋肉の赤色部分に存在する。また、ヘマトコッカス(Heamatococcus)属に属する緑藻や、ユーグレナ(Euglena heliorubescens)、クロレラ(Chlorela zofingiensis)、赤色酵母のPhaffia Rhodozyma等の微生物により産生される。
【0017】
本発明においては、アスタキサンチン等のキサントフィルは、甲殻類の殻、藻類等の動植物から抽出し、精製して用いることができるが、各社より市販されている製品を利用することもできる。
本発明の抗酸化性組成物におけるキサントフィルの含有量は、0.1重量%~10重量%であることが好ましく、0.2重量%~6重量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明の抗酸化性組成物には、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質が含有される。
キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質としては、カロテン類やクロロフィル類が挙げられる。
カロテン類としては、カボチャ、ニンジン、ホウレンソウ等の黄緑色野菜、マンゴー等に含まれる黄色色素であるβ-カロテンや、トマト、柿、金時ニンジン、グミ等に存在する赤色色素であるリコペンが挙げられる。
クロロフィル類としては、クロリン環を有するクロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルd、クロロフィルf、ポルフィリン環を有するクロロフィルc1、クロロフィルc2等、植物や藻類、シアノバクテリアに含まれるクロロフィル;バクテリオクロリン環を有するバクテリオクロロフィルa、バクテリオクロロフィルb、バクテリオクロロフィルg、クロリン環を有するバクテリオクロロフィルc、バクテリオクロロフィルd、バクテリオクロロフィルe、バクテリオクロロフィルf等、光合成細菌に存在するバクテリオクロロフィル、銅クロロフィル等のクロロフィル誘導体が挙げられる。
上記したカロテン類やクロロフィル類は、植物や藻類、細菌から抽出し、精製し、または発酵法等により製造して用いることもできるが、各社より市販されている製品を利用することもできる。
本発明の抗酸化性組成物には、キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質は、1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
本発明においては、キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質として、リコペンおよびクロロフィル(クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルf等)が好ましく用いられ、クロロフィルがより好ましく用いられる。
本発明の抗酸化性組成物において、キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する(B)成分から、(A)成分であるキサントフィルに対して分子間電子移動が起こり、キサントフィルが電子を受け取ることにより、抗酸化機能が持続すると考えられる。
本発明の抗酸化性組成物の抗酸化機能およびその安定化の観点から、(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の比[(B)/(A)]は、モル比にて0.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、モル比にて6以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明の抗酸化性組成物に(C)成分として含有されるアスコルビン酸塩は、製剤学的に許容可能なアスコルビン酸の塩であれば特に限定されないが、可食性の塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
本発明の目的には、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩が好ましく用いられ、カルシウム塩がより好ましく用いられる。
また、D-体、L-体およびDL-体のアスコルビン酸の塩を用いることができるが、L-体およびDL-体のアスコルビン酸の塩が好ましく用いられ、L-体のアスコルビン酸の塩がより好ましく用いられる。
本発明において、アスコルビン酸の塩は、自体公知の製造方法により製造して用いることができるが、医薬品または食品用添加物として市販されている製品を利用することもできる。
【0021】
本発明の抗酸化性組成物において、アスコルビン酸塩は、上記(A)成分および(B)成分の安定化に寄与するものと考えられる。
本発明の抗酸化性組成物の抗酸化機能およびその安定化の観点から、(A)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の比[(C)/(A)]は、モル比にて75以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。また、モル比にて210以下であることが好ましく、160以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明の抗酸化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)成分~(C)成分以外の抗酸化剤を含有することができる。
本発明の目的には、かかる抗酸化剤としては、天然由来、または天然の原材料を用いて、バイオマスの利用等により製造されたものが好ましく用いられ、エリソルビン酸、システイン、トコフェロール、ユビキノール(コエンザイムQ10)、ポリフェノール(カテキン、アントシアニジン、ケルセチン等)等が挙げられる。
【0023】
本発明の抗酸化性組成物は、上記(A)成分~(C)成分に、必要に応じて、上記抗酸化剤や、製剤の分野で一般的に用いられる添加剤を加えて、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により調製することができ、溶液状、懸濁液状、乳液状等の液状;ゲル状、ペースト状、クリーム状等の半固形状;粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル状等の固形状等の形態とすることができる。
たとえば、(A)成分~(C)成分が粉体である場合は、適宜混合して粉末状の組成物とすることができる。(A)成分が油状、ペースト状等、粉体ではない場合、粉体である(B)成分および(C)成分とあらかじめ混合し、粉末状としておき、均一となりにくい場合には、適宜添加剤を加えて、均一な粉末状組成物とすることができる。
液状の組成物は、(A)成分~(C)成分を後述する基剤や溶剤に分散し、また乳化して調製することができる。
ゲル状またはペースト状の組成物は、後述する粘稠剤やゲル化剤により増粘またはゲル化した基剤や溶剤に、(A)成分~(C)成分を混練等して調製することができる。
上記(A)成分~(C)成分の相溶性や安定性を考慮すると、本発明の抗酸化性組成物は、粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル状等の固形状の形態とすることが好ましい。
また、粉末状、固形状の形態で提供され、使用時に溶剤に溶解または懸濁して用いられる用時調製タイプの剤形とすることもできる。
【0024】
上記添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、基剤、溶剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、粘稠剤、ゲル化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、矯味剤、甘味剤、香料、着色剤等が挙げられる。
本発明の目的には、以下に例示するような天然由来、または天然の原材料を用いて、バイオマスの利用等により製造された添加剤が好ましく用いられる。
【0025】
賦形剤としては、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、デンプン(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン等)、糖類(ブドウ糖、乳糖、白糖等)、糖アルコール(ソルビトール、マルチトール、マンニトール等)等が挙げられる。
【0026】
結合剤としては、ゼラチン、カゼインナトリウム、デンプンおよび加工デンプン(トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン等)、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等が挙げられる。
【0027】
崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、メチルセルロース等)等が挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、タルク、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0029】
被覆剤としては、カルナウバロウ、セラック、ミツロウ等が挙げられる。
【0030】
基剤としては、オリーブ油、ゴマ油、ナタネ油、ヒマシ油、牛脂、豚脂等の動植物性油脂等が挙げられる。
【0031】
溶剤としては、精製水、エタノール等が挙げられる。
【0032】
乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、キラヤサポニン等の天然由来または天然の原材料から製造された界面活性剤が挙げられる。
【0033】
分散剤としては、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコール、大豆レシチン等が挙げられる。
【0034】
懸濁化剤としては、アルギン酸ナトリウム、寒天、大豆レシチン等が挙げられる。
【0035】
安定化剤としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン等が挙げられる。
【0036】
粘稠剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガント等の多糖類等が挙げられる。
【0037】
ゲル化剤としては、寒天、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン等が挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、酢酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
防腐剤としては、dl-カンフル、チモール、d-ボルネオール、l-メントール、ユーカリ油等が挙げられる。
【0040】
保存剤としては、D-ソルビトール、チモール、硫酸銅等が挙げられる。
【0041】
矯味剤としては、エリスリトール、5’-グアニル酸二ナトリウム、クエン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、酒石酸、DL-リンゴ酸等が挙げられる。
【0042】
甘味剤としては、アマチャ末、甘草エキス、ステビア等が挙げられる。
【0043】
香料としては、オレンジエッセンス、l-メントール、d-ボルネオール、バニリン、リナロール等が挙げられる。
【0044】
着色剤としては、ベンガラ、黄色三二酸化鉄、酸化チタン等の無機顔料、アナトー色素、ウコン色素等の天然色素等が挙げられる。
【0045】
上記した添加剤は、必要に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
なお、本発明の抗酸化性組成物は、安定性をより向上させるため、窒素気流下や鉄粉を練り込んだ樹脂シート等の酸素吸収材シートの存在下、または真空ポンプにより排気し、真空に近い状態まで減圧した状態下で調製し、排気し窒素ガスで置換したカプセルや容器に脱酸素剤とともに充填して、脱酸素化された製剤とすることができる。
脱酸素剤としては、鉄の酸化反応を利用して酸素を吸収する無機系の製剤や、糖やレダクトン等の酸化反応を利用した有機系の製剤を用いることができ、各社より提供されている市販の製剤を利用することができる。
【0047】
本発明の抗酸化性組成物は、高い抗酸化性および安定性を有し、抗酸化機能の持続性にも優れるため、生体内における余剰な活性酸素の消去効果に優れ、生体内タンパク質、脂質、核酸等の活性酸素による傷害を有効に防止することができる。
その結果、本発明の抗酸化性組成物は、活性酸素に起因し、または活性酸素が関与して生じる生体の老化や、生活習慣病、癌等の疾患を良好に予防し、または改善することができる。
【0048】
本発明の抗酸化性組成物の1日あたりの摂取量もしくは使用量または投与量は、適用される対象(以下本明細書において、「適用対象」ともいう)の性別、年齢、適用対象において観察される活性酸素による傷害の状況および程度、ならびに本発明の抗酸化性組成物の形態、投与方法等により適宜決定されるが、適用対象がヒト成人である場合、キサントフィルの量として、通常1mg~30mgであり、好ましくは1.5mg~15mgであり、より好しくは2mg~10mgである。
上記の量は、1回で摂取もしくは使用させまたは投与してもよく、1日数回(たとえば2~3回)に分けて摂取もしくは使用させまたは投与してもよい。
【0049】
また、本発明の抗酸化性組成物の摂取もしくは使用または投与期間も、適用対象において観察される活性酸素による傷害の状況および程度等に応じて適宜設定される。活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患が、急性的なもののみでなく、慢性的に持続する場合も多いこと、活性酸素に対する曝露が日常的であり、または長期間に渡ること等を考慮すると、かかる症状や疾患を予防または改善するためには、本発明の抗酸化性組成物は、長期間にわたり継続して摂取もしくは使用させまたは投与することが好ましい。
【0050】
本発明の抗酸化性組成物は、単位包装形態とすることができる。本明細書において「単位包装形態」とは、特定量(たとえば、1回あたりの摂取量もしくは使用量または投与量等)を1単位とし、該1単位または2単位以上が一つの容器に充填され、または包装体に包装される等して収容された形態をいい、たとえば、1回あたりの摂取量もしくは使用量または投与量を1単位とする単位包装形態は、「1回あたりの摂取量もしくは使用量または投与量単位の包装形態」と称する。単位包装形態に用いられる容器または包装体は、本発明の抗酸化性組成物の形態等に応じて適宜選択され得るが、たとえば、紙製の容器または袋体、プラスチック製の容器または袋体、パウチ、アルミ缶、スチール缶、ガラス瓶、ペットボトル、PTP(press through pack)包装シート等が挙げられる。
【0051】
本発明の抗酸化性組成物の適用対象としては、哺乳動物(たとえば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ等)や、鳥類(たとえば、アヒル、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥等)等が挙げられる。
本発明の抗酸化性組成物をヒト以外の適用対象動物(以下、単に「対象動物」ともいう)に適用する場合、本発明の抗酸化性組成物の摂取量もしくは使用量または投与量は、対象動物の種類、性別、体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
本発明の抗酸化性組成物は、そのまま、またはさらに上記した製剤の分野で一般的な添加剤を加えて、医薬品(以下、本明細書において「本発明の医薬品」とも称する)として提供することができる。
本発明の医薬品は、好ましくは、錠剤、被覆錠剤、チュアブル錠、丸剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、エリキシル剤、リモナーゼ剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、経口ゼリー剤等の経口剤;または、外用散剤、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤、水中油型クリーム剤、油中水型クリーム剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤、テープ剤、パップ剤等の皮膚外用剤として提供され得る。
【0053】
本発明の医薬品には、本発明の抗酸化性組成物は、キサントフィル含有量にして、通常0.7重量%~10重量%、好ましくは0.8重量%~6重量%、より好ましくは0.9重量%~3重量%含有される。
【0054】
本発明の医薬品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患を有する者や、日常的にまたは長時間活性酸素に曝露され、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患を発症するリスクの高い者に対し、好適に投与され得る。
本発明の医薬品は、上記適用対象に対し、キサントフィル量に換算した1日あたりの投与量が、上記した1日あたりの投与量となるように、投与される。
本発明の医薬品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患、たとえば癌;動脈硬化症、高血圧等の生活習慣病;肝炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患等の炎症性疾患等を良好に予防または改善することができる。
また、皮膚外用剤として提供される本発明の医薬品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する皮膚症状や皮膚疾患、たとえば湿疹、皮膚炎、乾癬等を良好に予防または改善することができる。
【0055】
また、本発明の抗酸化性組成物は、そのまま、またはさらに上記した製剤の分野で一般的な添加剤を加えて、医薬部外品(以下、本明細書において「本発明の医部外薬品」とも称する)または化粧品(以下、本明細書において「本発明の化粧品」とも称する)として提供することができる。
ここで、「医薬部外品」とは、医薬品よりは人体等に対する効果が緩和であるが、何らかの改善効果を有するものをいい、いわゆる薬用化粧品等が含まれる。
また、「化粧品」とは、身体を清潔にしたり、見た目を美しくしたりする目的で、皮膚等に適用されるもので、作用の緩和なものをいう。
本発明の医薬部外品または化粧品は、化粧水、美容液、乳液、クリーム、洗顔料、パック、身体用洗浄料等の形態で提供され得る。
【0056】
本発明の医薬部外品または化粧品は、本発明の特徴を損なわない範囲で、上記した一般的な添加剤の他に、保湿剤、収斂剤、抗炎症剤、肌荒れ防止剤、抗シワ剤、美白剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等を含有することができる。
【0057】
本発明の医薬部外品または化粧品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する皮膚症状や皮膚の状態を呈する者や、日常的にまたは長時間活性酸素に曝露され、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する皮膚症状や皮膚の状態を呈するおそれのある者に対し、好適に使用させ得る。
本発明の医薬部外品または化粧品は、上記適用対象に対し、キサントフィル量に換算した1日あたりの使用量が、上記した1日あたりの使用量となるように、使用させ得る。
本発明の医薬部外品または化粧品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する皮膚症状や皮膚の状態、たとえば肌荒れ、シワ、シミ等の皮膚の老化症状等を良好に予防または改善することができる。
【0058】
さらに、本発明の抗酸化性組成物は、各種食品に添加して摂取させることができる。本発明の抗酸化性組成物が添加される食品は特に制限されず、一般的に食事やデザートに供される形態の食品であれば如何なるものでもよい。
たとえば、本発明の抗酸化性組成物をシリアル食品に添加し、所望により適当な風味を加えて、機能性食品とすることができる。
より具体的には、本発明の抗酸化性組成物は、たとえば、野菜飲料、果実飲料等の清涼飲料水;スープ;牛乳、ヨーグルト等の乳製品;パン;ゼリー、ビスケット、キャンディ、キャラメル等の菓子等に添加することができる。
【0059】
本発明の抗酸化性組成物は、1日あたりに摂取される量の上記各種食品に対し、キサントフィル量として、上記した1日あたりの摂取量となるように添加されることが好ましい。
【0060】
また、本発明の抗酸化性組成物は、そのまま、または必要に応じて一般的な食品添加物を加えて、通常の食品製造技術により、食品(以下、本明細書において「本発明の食品」とも称する)として提供することができる。
本発明の食品は、溶液状、懸濁液状、乳状等の液状;ゲル状、クリーム状、ペースト状等の半固形状;粉末状、顆粒状、シート状、カプセル状、タブレット状等の固形状等、種々の形態とすることができる。
さらに、本発明の食品は、本発明の抗酸化性組成物を各種食品原材料に加え、必要に応じて一般的な食品添加物を加えて、清涼飲料水(野菜飲料、果汁飲料等)、茶(緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶、花茶等)、乳製品(乳酸菌飲料、発酵乳、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等)、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ハンバーグ等)、魚肉練り製品(蒲鉾、竹輪等)、卵加工品(だし巻き、卵豆腐、茶碗蒸し等)、大豆加工品(味噌、豆腐、納豆等)、小麦加工品(パン、うどん、パスタ等)、魚介乾物(鰹節、煮干、ちりめんじゃこ等)、菓子(クッキー、ビスケット、ゼリー、チューイングガム、キャンディ、キャラメル、アイスクリーム等)、スープ(コンソメスープ、コーンスープ、ポタージュ等)、調味料(ドレッシング、ウスターソース、マヨネーズ等)等、種々の形態とすることができ、瓶詰め、缶詰、レトルトパウチ等の包装形態を採用することもできる。
【0061】
上記食品添加物としては、製造用剤(かんすい、結着剤等)、増粘安定剤(キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、ゲル化剤(ゼラチン、寒天、カラギーナン等)、ガムベース(酢酸ビニル樹脂、ジェルトン、チクル等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン等)、保存料(安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ε-ポリリシン等)、光沢剤(セラック、パラフィンワックス、ミツロウ等)、防かび剤(チアベンダゾール、フルジオキソニル等)、膨張剤(炭酸水素ナトリウム、グルコノδ-ラクトン、ミョウバン等)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等)、苦味料(カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物等)、酸味料(クエン酸、酒石酸、乳酸等)、調味料(L-グルタミン酸ナトリウム、5’-イノシン酸二ナトリウム等)、着色料(アナトー色素、ウコン色素、クチナシ色素等)、香料(アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド等の合成香料、オレンジ、ラベンダー等の天然香料)等が挙げられる。
本発明において、上記食品添加物は、1種または2種以上を用いることができる。
【0062】
本発明の食品には、本発明の抗酸化性組成物は、キサントフィル量にして、通常0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~6重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%含有される。
【0063】
さらに本発明の食品は、本発明の特徴を損なわない範囲で、炭水化物、脂質、タンパク質、他のビタミン類(ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンK等)、ミネラル(マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)等の栄養素や、これら栄養素を含む食品素材を含有することができる。
【0064】
本発明の食品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や状態を呈する者や、日常的にまたは長時間活性酸素に曝露され、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や状態を呈するおそれのある者等に好適に摂取させ得る。また、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患の予防を目的として、幅広い対象者に摂取させることができる。
本発明の食品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や状態を良好に改善することができ、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患、たとえば癌;動脈硬化症、高血圧等の生活習慣病;肝炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患等の炎症性疾患等を良好に予防することができる。
【0065】
従って、本発明の食品は、活性酸素による傷害に起因するまたは活性酸素による傷害が関与する症状や疾患の予防または改善用の特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品、病者用食品、高齢者用食品等の特別用途食品、健康補助食品、ダイエタリーサプリメント等としても提供され得る。
【0066】
本発明の食品は、上記適用対象に対し、1日あたりのキサントフィル量の摂取量が、上記した1日あたりの摂取量となるように摂取させることが好ましい。
【0067】
本発明はまた、上記した本発明の抗酸化性組成物と、本発明の抗酸化性組成物を、活性酸素による傷害の予防または改善や、前記傷害に起因するまたは前記障害が関与する症状や疾患の予防または改善に使用することができること、または使用すべきであることを記載した記載物とを含む、商業的パッケージを提供することができる。
【0068】
本発明はさらに、本発明の抗酸化性組成物において、(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、および(C)アスコルビン酸塩としてそれぞれ好適に用いられるアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムを製造する方法を提供する。
【0069】
まず、本発明の抗酸化性組成物において、(C)アスコルビン酸塩として好適に用いられるアスコルビン酸カルシウムを製造する方法(以下、本明細書にて「本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法」と称することがある)は、アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとを混合する工程を含む。
【0070】
本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法において、アスコルビン酸は、化学合成法、発酵法等により製造することができ、発酵法により得られるものが好ましく用いられる。
発酵法によるアスコルビン酸の製造は、常法に従い、グルコースを出発原料として、Gluconobacter oxydans、Ketogulonicigenium vulgare等の微生物を用いて行うことができる。本発明においては、発酵法により製造された市販の製品を利用することもできる。
また、本発明において、アスコルビン酸として、アスコルビン酸を含有する植物体から抽出された抽出物を利用することができる。
アスコルビン酸を含有する植物体としては、レモン、ライム、ミカン等のミカン属植物の果実等が挙げられる。かかる植物体からの抽出は、通常行われる方法により、特に制限されることなく行うことができるが、エタノール等の低級アルコールを抽出溶媒として用い、10℃~80℃にて0.5時間~6時間抽出することが好ましく、50℃~80℃にて1時間~3時間抽出することがより好ましい。前記植物体100gに対する抽出溶媒の使用量は、100mL~500mLとすることが好ましく、100mL~300mLとすることがより好ましい。
アスコルビン酸をより安定に得ることができるという観点からは、超臨界二酸化炭素抽出法により抽出を行うこともできる。
なお、抽出効率の観点からは、上記植物体を抽出に供する前に、細切、粉砕、乾燥等の前処理を行うことが好ましい。
【0071】
また、アスコルビン酸を含有する植物体からの抽出物は、濃縮して用いることが好ましい。
本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法において用いられる貝殻焼成カルシウムは、主として養殖される牡蛎、ホタテ、ホッキ貝等の貝殻を1100℃以上の高温で焼成することによって得られる天然の酸化カルシウムである。貝殻焼成カルシウムとしては、食材として利用された貝類から回収された貝殻を、1100℃以上、たとえば1200℃にて焼成して得た酸化カルシウムを用いてもよいが、各社より提供されている市販の製品を利用することもできる。
アスコルビン酸と貝殻焼成カルシウムとの混合は、たとえば、アスコルビン酸をエタノールに溶解した溶液または上記した植物体の抽出物と、貝殻焼成カルシウムの水溶液もしくは懸濁液とを混合して行うことができる。かかる混合処理は、15℃~30℃で行うことが好ましく、15℃~25℃で行うことがより好ましい。
本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法は、さらに上記混合物を濃縮、洗浄、乾固等する工程を含むことができ、上記混合物を濃縮し、または濃縮および乾固する工程を含むことがより好ましい。上記混合物の濃縮、洗浄および乾固は、それぞれ15℃~80℃、15℃~30℃および15℃~80℃で行うことが好ましい。また、上記混合物の濃縮および乾固は、7以上のpHで行うことが好ましい。
【0072】
本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法は、廃棄される貝殻を有効に利用することができ、また、製造コストを安価に抑えることができる点で有用である。
さらに、アスコルビン酸として、型崩れ等の規格外品等のミカン属果実等の抽出物を用いることにより、廃棄される植物体を有効利用することができ、コストをより抑制することができるため、より好ましい。
すなわち、本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法は、コスト面およびエコロジーに配慮した方法である点において、非常に有用であり、好ましい。
【0073】
本発明の抗酸化性組成物において、(A)キサントフィルとして好適に用いられるアスタキサンチンを製造する方法(以下、本明細書において、「本発明のアスタキサンチンの製造方法」と称することがある)は、アスタキサンチンを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にアスタキサンチンを抽出する工程を含む。
【0074】
アスタキサンチンを含有する原材料としては、ヘマトコッカス(Hematococcus)属に属する緑藻、マダイ、サケ科の魚類、エビ、カニ等の甲殻類の殻等が挙げられる。食材として利用した後の廃棄物を有効に利用することができ、コストを低く抑えることができることから、甲殻類の殻が好ましく用いられる。
本発明のアスタキサンチンの製造方法においては、上記原材料からのアスタキサンチンの抽出を、アスコルビン酸カルシウムを添加して行う。アスコルビン酸カルシウムとしては、安全性の観点から、上記した本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法により製造したものを用いることが好ましい。
アスコルビン酸カルシウムの添加量は、アスタキサンチンを含有する原材料に対し、0.05重量%~2重量%とすることが好ましく、0.1重量%~0.5重量%とすることがより好ましい。
上記原材料からのアスタキサンチンの抽出は、通常行われる方法により、特に制限されることなく行うことができるが、エタノール等の低級アルコールを抽出溶媒として用い、60℃~80℃にて1時間~4時間抽出することが好ましい。上記原材料100gに対する抽出溶媒の使用量は、100mL~400mLとすることが好ましい。
アスタキサンチンをより安定に得ることができるという観点からは、超臨界二酸化炭素抽出法により抽出を行うこともできる。
なお、抽出効率の観点からは、上記原材料を抽出に供する前に、細切、粉砕、乾燥等の前処理を行うことが好ましい。
本発明のアスタキサンチンの製造方法は、さらに上記抽出物を濃縮、洗浄、乾固等する工程を含むことができ、上記抽出物を濃縮する工程、または上記抽出物を濃縮および乾固する工程を含むことがより好ましい。上記抽出物の濃縮、洗浄および乾固は、それぞれ15℃~80℃、15℃~30℃および15℃~80℃で行うことが好ましい。
本発明のアスタキサンチンの製造方法において、上記抽出物を濃縮、乾固する工程も、アスコルビン酸カルシウムを添加して行うことが好ましい。かかる工程におけるアスコルビン酸カルシウムの添加量は、抽出物1g(乾燥固形分量にして)に対し6g~19gとすることが好ましく、8g~16gとすることがより好ましい。
【0075】
本発明のアスタキサンチンの製造方法により、抽出、濃縮工程におけるアスタキサンチンの熱安定性を向上させることができ、アスタキサンチンの回収率を向上させることができる。
また、本発明のアスタキサンチンの製造方法は、廃棄される甲殻類の殻等を再利用することができるものであり、コスト面およびエコロジーに配慮した方法である点において、非常に有用であり、好ましい。
【0076】
本発明の抗酸化性組成物において、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質として好適に用いられるクロロフィルを製造する方法(以下、本明細書にて「本発明のクロロフィルの製造方法」とも称する)は、クロロフィルを含有する原材料から、アスコルビン酸カルシウムの存在下にクロロフィルを抽出する工程を含む。
【0077】
本発明のクロロフィルの製造方法において、クロロフィルを含有する原材料としては、酸素発生型の光合成を行う植物、シアノバクテリア等の酸素発生型の光合成を行う細菌、クロレラ、スピルリナ等の植物性プランクトン等が挙げられるが、クロロフィル含有量が多いことから、ホウレンソウ、パセリ、レタス等の植物が好ましく用いられる。
本発明のクロロフィルの製造方法においては、上記原材料からのクロロフィルの抽出を、アスコルビン酸カルシウムを添加して行う。アスコルビン酸カルシウムとしては、安全性の観点から、上記した本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法により製造したものを用いることが好ましい。
アスコルビン酸カルシウムの添加量は、クロロフィルを含有する原材料に対し、1重量%~10重量%とすることが好ましく、2重量%~6重量%とすることがより好ましい。
上記原材料からのクロロフィルの抽出は、通常行われる方法により、特に制限されることなく行うことができるが、エタノール等の低級アルコールを抽出溶媒として用い、10℃~60℃にて1時間~3時間抽出することが好ましい。上記原材料100gあたりの抽出溶媒の使用量は、1000mL~4000mLとすることが好ましい。
クロロフィルをより安定に得ることができるという観点からは、超臨界二酸化炭素抽出法により抽出を行うこともできる。
なお、抽出効率の観点からは、上記原材料を抽出に供する前に、細切、粉砕、乾燥等の前処理を行うことが好ましい。
本発明のクロロフィルの製造方法は、さらに上記抽出物を濃縮、洗浄、乾固等する工程を含むことができ、上記抽出物を濃縮する工程、または上記抽出物を濃縮および乾固する工程を含むことがより好ましい。上記抽出物の濃縮、洗浄および乾固は、それぞれ15℃~80℃、15℃~30℃および15℃~80℃で行うことが好ましい。
本発明のクロロフィルの製造方法において、上記抽出物を濃縮、乾固する工程も、アスコルビン酸カルシウムを添加して行うことが好ましい。かかる工程におけるアスコルビン酸カルシウムの添加量は、抽出物1g(乾燥固形分量にして)に対し2g~8gとすることが好ましく、4g~6gとすることがより好ましい。
【0078】
本発明のクロロフィルの製造方法により、抽出、濃縮工程におけるクロロフィルの熱安定性を向上させることができ、クロロフィルの回収率を向上させることができる。
また、本発明のクロロフィルの製造方法は、廃棄されまたは規格外の野菜等を再利用することができるものであり、コスト面およびエコロジーに配慮した方法である点において、非常に有用であり、好ましい。
【0079】
さらに本発明は、(A)キサントフィルとしてアスタキサンチン、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質としてクロロフィル、および(C)アスコルビン酸塩としてアスコルビン酸カルシウムを含有し、抗酸化性および安定性に優れた抗酸化性組成物を製造する方法(以下、本明細書にて「本発明の抗酸化性組成物の製造方法」とも称する)を提供する。
本発明の抗酸化性組成物の製造方法は、(C)アスコルビン酸塩として好適に用いられるアスコルビン酸カルシウムを製造する工程、(A)キサントフィルとして好適に用いられるアスタキサンチンを製造する工程、および(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質として好適に用いられるクロロフィルを製造する工程、ならびにアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムを混合し、製剤化する工程を含む。
【0080】
(C)アスコルビン酸塩として好適に用いられるアスコルビン酸カルシウムを製造する工程、(A)キサントフィルとして好適に用いられるアスタキサンチンを製造する工程、および(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質として好適に用いられるクロロフィルを製造する工程については、それぞれ本発明のアスコルビン酸カルシウムの製造方法、本発明のアスタキサンチンの製造方法、および本発明のクロロフィルの製造方法において上記した通りである。
アスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムの混合、製剤化については、本発明の抗酸化性組成物について上記した通りであり、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により行うことができる。
本発明の抗酸化性組成物の製造方法は、さらに、アスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウム以外の抗酸化剤や、製剤の分野で一般的に用いられる添加剤を添加することを含むことができる。
なお、本発明の抗酸化性組成物の製造方法により製造された抗酸化性組成物において、アスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムの含有量比は、アスタキサンチンを製造する工程およびクロロフィルを製造する工程において、抽出物を濃縮する際に添加されるアスコルビン酸カルシウムの量を加味して算出される。
【0081】
本発明の抗酸化性組成物の製造方法により、(A)成分としてアスタキサンチン、(B)成分としてクロロフィル、および(C)成分としてアスコルビン酸カルシウムを含有する抗酸化性組成物を低コストにて製造することができる。
また、本発明の抗酸化性組成物の製造方法により、抗酸化性および安定性に優れた、好ましい態様の抗酸化性組成物を得ることができる。
【実施例0082】
以下、本発明について、実施例および試験例により、さらに詳細に説明する。
【0083】
[実施例1~4、比較例1]抗酸化性組成物
アスタキサンチン2.53μmol、クロロフィル5.07μmol(アスタキサンチンの2モル倍)およびアスコルビン酸カルシウム768μmol(アスタキサンチンの303.6モル倍)を混合し、実施例1の抗酸化性組成物とした。
実施例1の抗酸化性組成物において、アスコルビン酸カルシウム量を384μmol(アスタキサンチンの151.8モル倍)、192μmol(アスタキサンチンの75.9モル倍)および96μmol(アスタキサンチンの37.9モル倍)にそれぞれ変更し、同様に調製したものを、それぞれ実施例2~4の抗酸化性組成物とした。
また、実施例1の抗酸化性組成物において、アスコルビン酸カルシウムを添加しないで同様に調製したものを、比較例1の抗酸化性組成物とした。
なお、アスタキサンチンとしては、市販の純品を用いた。また、クロロフィルとしては、市販のクロロフィルa(純品)を用いた。アスコルビン酸カルシウムは、下記の方法により、製造して用いた。
【0084】
<アスコルビン酸カルシウムの製造>
発酵法により製造された市販のアスコルビン酸12g(6.72mM)をエタノール100mLに溶解した。前記溶液に、焼成カルシウム(CaO)1.56g(2.8mM)を精製水10mLに懸濁して冷却下に(25℃を超えないように)加え、pH=7以上にてエバポレーターで濃縮した。次いで、濃縮物をエタノールで洗浄し、洗浄液からアスコルビン酸を回収し、固形物を乾燥して、アスコルビン酸カルシウム11g(収率=91%)を得た。アスコルビン酸カルシウムの確認は融点および純度の測定により行った。
【0085】
[試験例1]抗酸化性成分の一重項酸素消去能(KQ)の測定
A. Ouchi et al.(J. Agric. Food Chem. 58 9967-9978 (2010))に準じて、エンドぺルオキシド(EP)の熱分解により発生する一重項酸素により、1,3-ジフェニルイソベンゾフラン(DPBF)が分解し、DPBFの413nmにおける吸収が減少するのを測定し、下記に示す各試料について、KQを求めた。
【0086】
<測定方法>
溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド(DMF):クロロホルム:重水素水(いずれも試薬特級)=7:1:2(体積比))を準備し、試料の前記溶媒による溶液各0.2mLと、0.1mM DPBFの前記溶媒による溶液2mLを試験管に加えて混和した後、直ちに35℃の恒温槽中、1.5mM EPの前記溶媒による溶液1mLを加え、直ちに混和して、413nmにおける吸光度を2時間経時的に(4分間隔で)測定した。なお、前記溶媒のみをブランクとして測定した。DPBFの吸光度の測定値を時間に対してプロットして得られた減衰曲線を、吸光度の対数の時間に対するプロットに変換し、得られた直線から、各試料について、各濃度における減衰速度を算出した。
次いで、各試料について、濃度=0μM(ブランク)における減衰速度(S
Blank)と、各濃度における減衰速度(S
Antioxidant)の比(S
Blank/S
Antioxidant)を求め、各試料濃度に対してプロットし、得られた直線の勾配(
傾きの値)に測定溶媒中の一重項酸素消去速度(30300s
-1)を乗じてK
Qを求めた。
一例として、アスタキサンチンの場合について、S
Blank/S
Astaxanthinをアスタキサンチンの濃度に対してプロットした図を
図1に示した。
【0087】
<測定試料>
(1)単一成分の試料
抗酸化成分として、アスタキサンチン、クロロフィルおよびリコペンを、2.28μM、3.8μM、5.32μMおよび7.6μMの濃度で用いた。
なお、リコペンとしては、市販の純品を用いた。
(2)二成分の試料
(i)アスタキサンチン・クロロフィル混合物;アスタキサンチンとクロロフィルの合計濃度を最大で7.6μMとし、アスタキサンチン1に対し、クロロフィルを0.5、1、2および4のモル比で混合し、試料とした。
(ii)アスタキサンチン・リコペン混合物;アスタキサンチンおよびリコペンを、1:1のモル比で混合し(合計最大濃度=7.6μM)、試料とした。
(iii)アスタキサンチン・アスコルビン酸カルシウム混合物;アスタキサンチンおよびアスコルビン酸カルシウムを1:67のモル比で混合し(アスタキサンチン最大濃度=7.6μM)、試料とした。
(iv)クロロフィル・アスコルビン酸カルシウム混合物;クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムを1:67のモル比で混合し(クロロフィル最大濃度=7.6μM)、試料とした。
(3)三成分の試料
上記実施例1~4および比較例1の各抗酸化性組成物を試料とした。
【0088】
上記した測定試料について、算出したKQ値を表1に示した。
【0089】
【0090】
表1に示されるように、本発明の実施例1~4に係る抗酸化性組成物では、アスタキサンチン、クロロフィルおよびリコペン各単独の場合や、これらのうち二成分を混合した場合に比べて、高いKQ値が認められた。
特に、アスタキサンチンおよびクロロフィルの1:2(モル比)混合物に、アスコルビン酸カルシウムをアスタキサンチンの75モル倍以上添加した混合物において、KQ値の良好な向上が認められ、アスコルビン酸カルシウムをアスタキサンチンの151モル倍以上添加した混合物において、KQ値の顕著な向上が認められた。
【0091】
[試験例2]抗酸化性組成物中におけるアスタキサンチンおよびクロロフィルの最適比の検討
アスタキサンチン3.4μmolと、試験例1で調製したアスタキサンチン・クロロフィル混合物と同様の比でクロロフィルを含有する組成物について、試験例1と同様の方法でK
Q値を求めた。また、100mLの精製水中で撹拌しながら、ORP(酸化還元電位)メーター(株式会社堀場製作所製)でORP値を測定した。
その際のK
Q値およびORP値と、クロロフィル濃度との関係を
図2に示した。
【0092】
図2に示されるように、アスタキサンチンおよびクロロフィルの含有量比(アスタキサンチン:クロロフィル)がモル比にて1:2である場合に、K
Q値はほぼ最大値に達し(2.11×10
10M
-1s
-1)、ORP値は最小値(94mV)に達することが認められた。
以上の結果から、抗酸化性組成物におけるアスタキサンチンとクロロフィルの最小最適混合比は、1:2であることが示唆された。
【0093】
[試験例3]抗酸化性組成物中におけるアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムの最適比の検討
アスタキサンチン3.4μmolおよびクロロフィル6.8μmolの混合物に対し、アスコルビン酸カルシウムをアスタキサンチンに対し37モル倍、75モル倍、151モル倍および303モル倍となるように添加して混合した組成物について、試験例1と同様の方法でK
Q値を求め、また、試験例2と同様にORP値を測定した。
その際のK
Q値およびORP値と、アスコルビン酸カルシウム濃度との関係を
図3に示した。
【0094】
図3に示されるように、アスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムの含有量比(アスタキサンチン:クロロフィル:アスコルビン酸カルシウム)がモル比にて1:2:151である場合に、K
Q値はほぼ最大値に達し(2.79×10
10M
-1s
-1)、ORP値はほぼ最小値(-28mV)に達することが認められた。
以上の結果から、抗酸化性組成物におけるアスタキサンチン、クロロフィルおよびアスコルビン酸カルシウムの最小最適混合比は、1:2:151であることが示唆された。
【0095】
[試験例4]アスタキサンチンおよびクロロフィルaの37℃負荷試験における安定性の評価
(1)試料
アスタキサンチン(市販品、純品)、クロロフィルa(市販品、純品)、アスコルビン酸カルシウム(上述した製造方法による製造物)、アスコルビン酸(市販品)、クロレラ(市販品)およびアスタキサンチン(市販品)(粉体品、純度=2%)を用い、アスタキサンチンとクロロフィルaとの混合物(モル比=1:3)、アスタキサンチンとアスコルビン酸カルシウムもしくはアスコルビン酸との混合物(モル比=1:151)、クロロフィルaとアスコルビン酸カルシウムもしくはアスコルビン酸との混合物(モル比=1:151)、ならびにアスタキサンチン、クロロフィルaおよびアスコルビン酸カルシウムの混合物(モル比=1:2:151)を調製した。
【0096】
(2)試験方法
37℃で上記の各試料を正確に10mg計り取り、ローターで混合した後静置して、6日後、12日後および18日後にジメチルホルムアミド(DMF)で完全に溶解し、それぞれのアスタキサンチンおよびクロロフィルaの各吸光度を測定し、試験開始時(0日目)に対する各残存率を算出した。アスタキサンチンの残存率を
図4(I)に、クロロフィルaの残存率を
図4(II)に示した。
【0097】
(3)結果
図4(I)および(II)に示されるように、アスタキサンチン、クロロフィルaおよびアスコルビン酸カルシウムの混合物において、アスタキサンチンまたはクロロフィルaが最も安定に維持されることが認められた。
アスコルビン酸との混合物では、アスタキサンチンまたはクロロフィルaの安定化は認められなかった。
この結果より、抗酸化成分を安定化するには、アスコルビン酸塩(カルシウム塩等)の添加が必要で、アスコルビン酸では安定性を担保できないことが示された。
【0098】
[実施例5]アスコルビン酸カルシウムの製造
発酵法で製造された市販のアスコルビン酸12g(68mmoL)をエタノール100mLに溶解してI液とした。また、ホタテの貝殻を1200℃に加熱し粉砕して調製した焼成カルシウムとして、「抗菌剤スカローS」(株式会社抗菌研究所製)(ホタテ貝殻カルシウム粉・水酸化カルシウム)を2.08g秤量し、精製水10mLに懸濁して II液とした。次に、25℃を超えない温度でI液とII液を混合し、pHを7以上とし、エバポレーターにて濃縮乾固した。濃縮物をエタノール100mLで洗浄した後乾燥し、固形物としてアスコルビン酸カルシウム11gを得た(収率=91%)。
【0099】
[実施例6]アスコルビン酸カルシウムの製造
精製水で洗浄したレモン(果実)200gを市販のミキサーで粉砕し、フラスコに入れ加熱してエバポレーターで水分を除き乾燥した後、ミル(「フォーミルFM-1」、容量:300mL)(大阪ケミカル株式会社製)で22000rpmにて10分間粉砕した。次にエバポレーターのフラスコ中にレモンの粉砕物および発酵エタノール400mLを入れ、回転させながら50℃にて1時間抽出し、ろ過して抽出液を回収し、その半量をエバポレーターで濃縮して濃縮物70mgを得た。この濃縮物を精秤し、メタリン酸水溶液25mLに溶解し、0.01Mヨウ素水溶液で滴定して純度を求めたところ、純度は72%であった。
残りの半量のエタノール抽出液200mLを10mLに濃縮し、「抗菌剤スカローS」(株式会社抗菌研究所製)18mgを精製水1mLに溶解した水溶液を加え、25℃を超えない温度で混合した。次いで、pHを7以上とし、エバポレーターにて濃縮乾固し、濃縮物をエタノール10mLで洗浄した後乾燥し、固形物としてアスコルビン酸カルシウム69mg(収率=90%)を得た。
【0100】
[実施例7、比較例2]アスタキサンチンの製造
カニの殻200gを精製水200mLで洗浄して風乾し、市販のミキサーで荒く粉砕した後、さらにミル(「フォーミルFM-1」、容量:300mL)(大阪ケミカル株式会社製)で22000rpmにて15分間粉砕した。粉砕物132gを二等分してそれぞれエバポレーターのフラスコに入れ、一方には上記実施例5で製造されたアスコルビン酸カルシウム0.2gを加え(実施例7)、もう一方にはアスコルビン酸カルシウムを添加せずに(比較例2)、それぞれ発酵エタノールを200mL加え、回転させながら、60℃で4時間抽出し、ろ過して抽出液を分離した。各抽出液を1mLずつ取り、発酵エタノールで7倍に希釈して、分光光度計にて486nmの吸光度を測定した。
次に、実施例7で得た抽出液にはアスコルビン酸カルシウム0.2gを添加し、比較例2で得た抽出液にはアスコルビン酸カルシウムを添加せずに、それぞれ80℃に加熱し、エバポレーターにて濃縮乾固した。濃縮乾固物の収量は、実施例7で264mg、比較例2では62mgであった。各濃縮乾固物をそれぞれ正確に秤量し、エタノール200mLを加え10分間攪拌混合し、静置後、各上清1mLを取り、発酵エタノールで7倍に希釈して、分光光度計にて486nmの吸光度を測定した。
実施例7で得た抽出液の吸光度を100として、実施例7で得た濃縮乾固物、比較例2で得た抽出液および濃縮乾固物の回収率を求めた。実施例7および比較例2について、同様の操作をそれぞれ3回繰り返し、得られた回収率の平均値および標準偏差を表2に示した。濃縮乾固物の回収率について、実施例7と比較例2の間で対応のあるt検定を実施した。
【0101】
【0102】
表2に示されるように、カニ殻からアスタキサンチンを抽出する工程および抽出物を濃縮する工程をアスコルビン酸カルシウムの存在下に行った実施例7では、前記抽出工程および濃縮工程を、アスコルビン酸カルシウムの非存在下に行った比較例2に比べて、アスタキサンチンの回収率が有意に(P<0.005)高いことが認められた。
【0103】
[実施例8、比較例3]クロロフィルの製造
市販のホウレンソウ100gを精製水200mLで洗浄して風乾し、市販のミキサーで粉砕した後、さらにミル(「フォーミルFM-1」、容量:300mL)(大阪ケミカル株式会社製)で22000rpmにて10分間粉砕した。粉砕物16.2gを二等分してそれぞれエバポレーターのフラスコに入れ、一方には上記実施例5で製造されたアスコルビン酸カルシウム0.2gを加え(実施例8)、もう一方にはアスコルビン酸カルシウムを添加せずに(比較例3)、それぞれ発酵エタノールを200mL加え、回転させながら、50℃で1時間抽出し、ろ過して抽出液を分離した。各抽出液を1mLずつ取り、発酵エタノールで8倍に希釈して、分光光度計にて664nmの吸光度を測定した。
次に、実施例8で得た抽出液にはアスコルビン酸カルシウム0.2gを添加し、比較例3で得た抽出液にはアスコルビン酸カルシウムを添加せずに、それぞれ80℃に加熱し、エバポレーターにて濃縮乾固した。濃縮乾固物の収量は、実施例8で282mg、比較例3では79mgであった。各濃縮乾固物をそれぞれ正確に秤量し、エタノール200mLを加え10分間攪拌混合し、静置後、各上清1mLを取り、発酵エタノールで8倍に希釈して、分光光度計にて664nmの吸光度を測定した。
実施例8で得た抽出液の吸光度を100として、実施例8で得た濃縮乾固物、比較例3で得た抽出液および濃縮乾固物の回収率を求めた。実施例8および比較例3について、同様の操作をそれぞれ3回繰り返し、得られた回収率の平均値および標準偏差を表3に示した。濃縮乾固物の回収率について、実施例8と比較例3の間で対応のあるt検定を実施した。
【0104】
【0105】
表3に示されるように、ホウレンソウからクロロフィルを抽出する工程および抽出物を濃縮する工程をアスコルビン酸カルシウムの存在下に行った実施例8では、前記抽出工程および濃縮工程をアスコルビン酸カルシウムの非存在下に行った比較例3に比べて、クロロフィルの回収率が有意に(P<0.009)高いことが認められた。
また、本発明により、本発明の抗酸化性組成物において、(A)キサントフィル、(B)キサントフィルよりも高いポテンシャルエネルギーを有する抗酸化性物質、および(C)アスコルビン酸塩としてそれぞれ好適に用いられるアスタキサンチン、クロロフィル、およびアスコルビン酸カルシウムを、安定にかつ低コストにて製造することができ、抗酸化性および安定性に優れた、好ましい態様の抗酸化性組成物を得ることができる。