(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062734
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】微細泡生成装置、および微細泡供給装身具
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20220414BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220414BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20220414BHJP
A45D 44/22 20060101ALI20220414BHJP
A61H 33/02 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/06
B01F15/02 A
A45D44/22 C
A61H33/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170833
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】399120763
【氏名又は名称】宮村 幸春
(74)【代理人】
【識別番号】100210804
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 一
(72)【発明者】
【氏名】宮村 幸春
【テーマコード(参考)】
4C094
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094AA04
4C094AA07
4C094BB11
4C094DD06
4C094EE05
4C094GG04
4C094GG06
4G035AB04
4G035AC26
4G035AE13
4G037AA01
4G037AA02
4G037EA01
4G037EA02
(57)【要約】
【課題】気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力する技術を提供する。
【解決手段】
本発明の代表的な微細泡生成装置の一つは、液体を供給するための液体供給路と、気体を供給するための気体供給路と、前記液体供給路から供給される前記液体と、前記気体供給路から供給される前記気体とを混合した気液混合体を流す導管と、前記導管を流れた前記気液混合体を出力するための気液導出口と、前記導管の流路に配置されて前記気液混合体の流れによって回転するスクリューと、前記スクリューの近傍に配置されて前記気液混合体に対して流れ抵抗を加える流れ抵抗体とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給するための液体供給路と、
気体を供給するための気体供給路と、
前記液体供給路から供給される前記液体と、前記気体供給路から供給される前記気体とを混合した気液混合体を流す導管と、
前記導管を流れた前記気液混合体を出力するための気液導出口と、
前記導管の流路に配置され、前記気液混合体の流れによって回転するスクリューと、
前記導管の流路において前記スクリューの近傍に配置され、前記気液混合体に対して流れ抵抗を加える流れ抵抗体と
を備えたことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細泡生成装置であって、
前記流れ抵抗体として、フィルタ面に多孔を有し、前記導管の流束の断面方向に沿って前記フィルタ面を配置した多孔フィルタを備える
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の微細泡生成装置であって、
前記流れ抵抗体として、筒の側面に多孔を有し、前記気液混合体の流れる方向に沿って前記筒の対称軸を配置した多孔筒を備える
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の微細泡生成装置であって、
前記流れ抵抗体として、
筒の側面に多孔を有し、前記気液混合体の流れる方向に沿って前記筒の対称軸を配置した多孔筒と、
多孔を有するフィルタ面が前記多孔筒の端面に接合された多孔フィルタと
を備えることを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項5】
請求項4のいずれか一項に記載の微細泡生成装置であって、
前記流れ抵抗体として、
筒径の異なる複数の前記多孔筒を略同軸に配置して、前記多孔筒の側面を一部重ねた同軸流れ抵抗体を備える
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微細泡生成装置であって、
前記スクリューは、
前記同軸流れ抵抗体を構成する2つの前記多孔フィルタの軸間に挿置される
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の微細泡生成装置であって、
前記気体供給路は、前記多孔筒の少なくとも一つの外周付近に配置され、
前記外周付近に生じた気泡は、前記スクリューの回転による遠心分離作用によって前記多孔筒の外周から回転中心の方向へ誘導されて前記多孔筒の側面を通過する
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の微細泡生成装置であって、
前記スクリューの回転を前記流れ抵抗体に伝達する回転伝達部を備え、
前記流れ抵抗体は、前記スクリューの回転によって回転駆動される回転体である
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の微細泡生成装置であって、
前記液体供給路に前記液体が供給されると共に前記気体供給路に前記気体を供給し、前記液体供給路に前記液体が供給停止されると共に前記気体供給路に前記気体を供給停止する連動開閉弁を備えた
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の微細泡生成装置であって、
前記気液導出口から出力される前記気液混合体を流すための微細泡出力ホースをさらに備え、
前記微細泡出力ホースは、
フレキシブルなホースと、
「前記ホースの流路径を狭める縮径部」および「狭めた流路径を拡げる拡径部」を対称構造に備え、前記ホースの流路内に一つ以上挿置される加圧パーツとを有する
ことを特徴とする微細泡生成装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の微細泡生成装置と、
ユーザに装着することによって、前記微細泡生成装置から出力された前記気液混合体をユーザの装着箇所に供給する装身具と、
を備えたことを特徴とする微細泡供給装身具。
【請求項12】
請求項11に記載の微細泡供給装身具であって、
前記装身具は、出力された前記気液混合体をユーザの顔に供給するためのフェイスマスク形状をなす
ことを特徴とする微細泡供給装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細泡生成装置、および微細泡供給装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細化した気泡(ナノバブルやマイクロバブルなど)を液体に混合させて気液混合体を生成する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、『2本の円筒(大径・小径)を同軸に嵌合させ、2本の円筒間にできる微小な隙間(以下「狭隘路」という)に炭酸ガスと水の混合流体(気液混合体)を流すことによって、炭酸ガスを混合する多目的ガス溶解装置』が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術は、狭隘路に気液混合体を流すことによって、高い動圧を気液混合体にかけて液中の気泡を微細化するという点で優れている。
【0006】
しかし、狭隘路を流路に使用するため、微細泡を含む気液混合体の収量を増やすことが難しいという問題点があった。
【0007】
また、気液混合体が狭隘路を通るように高い液圧をかけるため、ガス溶解装置の壁面に亀裂が入って液体が漏れるなどのおそれがあり、ガス溶解装置には頑丈な素材(肉厚の金属など)を使用する必要があった。そのため、汎用かつ安価なプラスチック素材を使用できないという問題点があった。
【0008】
さらに、狭隘路に大きな気泡が混入するたびに、圧縮された大きな気泡で栓をされた状態になり、気液混合体は瞬間的に流れにくくなる。そのため、狭隘路中の気液混合体はたびたび詰まって間欠的に吹き出すようになる。したがって、気液混合体の円滑な流れを得ることが難しいという問題点があった。
【0009】
そこで、本願発明は、これら問題点のいずれかを解決するために、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な微細泡生成装置の一つは、液体を供給するための液体供給路と、気体を供給するための気体供給路と、前記液体供給路から供給される前記液体と、前記気体供給路から供給される前記気体とを混合した気液混合体を流す導管と、前記導管を流れた前記気液混合体を出力するための気液導出口と、前記導管の流路に配置されて前記気液混合体の流れによって回転するスクリューと、前記導管の流路において前記スクリューの近傍に配置されて前記気液混合体に対して流れ抵抗を加える流れ抵抗体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力することが可能になる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果については、以下の実施形態の説明において、さらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、微細泡生成装置100の全体構成を例示する断面図である。
【
図2】
図2は、微細化ブロック130の内側部分を例示する図である。
【
図3】
図3は、微細化ブロック130の外側部分を例示する図である。
【
図4】
図4は、微細化ブロック130の外側部分(一部切り欠き)を例示する図である。
【
図5】
図5は、微細化ブロック130のパーツ構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、微細泡生成装置100内の気泡の経路を例示する図である。
【
図7】
図7は、流れ抵抗体による気泡の剪断作用を説明する図である。
【
図8】
図8は、微細泡生成装置100Aの微細化ブロック130A(一部切り欠き)を例示する図である。
【
図9】
図9は、微細泡生成装置100Bの構成を示す図である。
【
図10】
図10は、微細泡出力ホース200の構造を例示する図である。
【
図11】
図11は、加圧パーツ220の配列構造を例示する図である。
【
図12】
図12は、フェイスマスクへの応用を説明する図である。
【
図13】
図13は、サウナスーツへの応用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例0015】
<微細泡生成装置100の全体構成>
図1は、微細泡生成装置100の全体構成を例示する断面図である。
【0016】
同図において、微細泡生成装置100は、樹脂成形品である供給ブロック110と、樹脂成形品である導出ブロック120と、微細化ブロック130とから概略構成される。
【0017】
供給ブロック110と導出ブロック120とは、微細化ブロック130を間に挟んだ状態で、互いの螺合部110a、120aを介して螺合される。この螺合箇所にOリング110b、120bを挟むことによって微細泡生成装置100の気密性および液密性が保たれる。
【0018】
この供給ブロック110は、供給側軸支部111、液体供給路112、気体供給路114、および導管116(上流方向の片側)を備える。
【0019】
供給側軸支部111は、微細化ブロック130の片軸を軸支する。この供給側軸支部111は、
図1に例示するように流路の上流側に向けて先細りの形状をなすことによって、流れ抵抗を少なくしている。
【0020】
液体供給路112は、水道管などの供給源から液体弁112aを介して液体が供給される導入路である。この液体供給路112の内壁には、液体の無用な流れを整流するための整流フィン112bが設けられる。
【0021】
気体供給路114は、ガス管やガスボンベなどの供給源から気体が供給される導入路であって、連動開閉弁114aを備える。連動開閉弁114aは、液体弁112aの開閉操作または液圧などに連動して開閉するエアー弁である。
【0022】
導管116は、液体供給路112から供給される液体と、気体供給路114から供給される気体(気泡)とを混合した気液混合体を流すための流路である。
【0023】
一方、導出ブロック120は、導管116(下流方向の片側)、導出側軸支部121、および気液導出口122を備える。
【0024】
導出側軸支部121は、微細化ブロック130の片軸を軸支する。この導出側軸支部121は、
図1に例示するように流路の下流側に向けて先細りの形状をなすことによって、流れ抵抗を少なくしている。
【0025】
気液導出口122は、導管116を流れた気液混合体の出口であって、導出する気液混合体を整流するための整流フィン122aを備える。
【0026】
<微細化ブロック130の内側部分>
次に、微細化ブロック130の内側部分について説明する。
図2は、微細化ブロック130の内側部分を例示する図である。
同図において、微細化ブロック130は、内側部分として、回転軸131、ベアリング132、スクリュー133、ホイール134、およびベアリング135を備える。
【0027】
この回転軸131は、スクリュー133およびホイール134の回転中心を実体的(または見かけ上)貫通して設けられる。この回転軸131の両端には、回転抵抗を軽減するベアリング132、135が設けられる。ベアリング132、135は、
図1に示した供給側軸支部111および導出側軸支部121に嵌合する。この構造により、回転軸131、スクリュー133、およびホイール134は、ベアリング132、135を介して回転する。
【0028】
スクリュー133は、導管116の中心軸の方向に対して捻れた回転翼(例えば
図2では6枚の回転翼)を有する。スクリュー133は、
図1に示す導管116の流路内に配置され、回転翼で気液混合体の流れを受けることによって回転する。
【0029】
ホイール134は、気液混合体の流圧に抗して、後述する同軸流れ抵抗体142を流路上に位置させるための抑え部材である。
【0030】
<微細化ブロック130の外側部分>
続いて、微細化ブロック130の外側部分について説明する。
図3は、微細化ブロック130の外側部分を例示する図である。
図4は、微細化ブロック130の外側部分(一部切り欠き)を例示する図である。
図5は、微細化ブロック130のパーツ構成を例示する図である。
【0031】
図3~
図5において、微細化ブロック130は、スクリュー133の周囲に近傍配置される流れ抵抗体として、比較的小径の流れ抵抗体140と、比較的大径の流れ抵抗体141とを備える。これら流れ抵抗体140、141は、互いの対称軸を略同軸にして、互いの側面を一部重ねることによって、同軸流れ抵抗体142を構成する。
【0032】
以下、ここでの「近傍」とは、気液混合体に対して、流れ抵抗体が気泡の微細化に寄与する(好ましくは、有効、十分、または高効率な)流れ抵抗を加えることができるほどに接近した配置関係という意味である。より具体的な「近傍」については、液の粘性や、流れ抵抗の値や、気泡の物理特性や、実験的な微細化の効果確認などに応じて設定される。
【0033】
流れ抵抗体140は、気液混合体の流れる方向に沿って対称軸が配置されて側面に多孔を設けた多孔筒143と、多孔を設けたフィルタ面を多孔筒143の端面(上流側または下流側の端面、
図3~5では下流側の端面)に接合した多孔フィルタ144とを備える。この多孔フィルタ144は、導管116の流束の断面方向に沿って配置される。
【0034】
流れ抵抗体141は、気液混合体の流れる方向に沿って対称軸が配置されて側面に多孔を設けた多孔筒145と、多孔筒145の端面(上流側または下流側の端面、
図3~5では下流側の端面)に接合された多孔フィルタ146とを備える。この多孔フィルタ146は、導管116の流束の断面方向に沿って配置される。
【0035】
ここでの「多孔」の好ましい一例は、
・孔の幅…0.4mm程度
・孔の中心間隔…0.5mm程度
・孔の配列…六角孔のハニカム配列
・孔の加工方法…金属薄板をエッチング処理
などである。
【0036】
<回転の伝達機構について>
次に、
図4および
図5を用いて、スクリュー133から流れ抵抗体(ここでは同軸流れ抵抗体142)への回転の伝達機構について説明する。
【0037】
ホイール134には、回転軸131を中心に挟んで一対の回転伝達部134Pが設けられる。一対の回転伝達部134Pは、
図4に例示するように、多孔フィルタ146の対応する穴を貫通しつつ、スクリュー133の対応する箇所に嵌合する。さらに、多孔フィルタ146は多孔筒145の端面に接合される。
【0038】
このような構造により、スクリュー133の回転は、一対の回転伝達部134Pを介して、
(1)ホイール134
(2)多孔フィルタ146
(3)多孔筒145
に伝達される。
【0039】
さらに、スクリュー133の回転翼には、回転軸131を中心に挟んで一対の回転伝達部133Pが設けられる。一対の回転伝達部133Pは、
図4に例示するように、多孔フィルタ144の対応する穴を貫通する。さらに、多孔フィルタ144は多孔筒143の端面に接合される。
【0040】
このような構造により、スクリュー133の回転は、一対の回転伝達部133Pを介して、
(1)多孔フィルタ144
(2)多孔筒143
に伝達される。
【0041】
このような回転の伝達機構によって、同軸流れ抵抗体142は、スクリュー133の回転に伴って、同軸状態を保ちながら一体に回転駆動される。
【0042】
<気体の供給源について>
続いて、気体の供給源について、炭酸ガスを例にあげて説明する。
炭酸ガスの供給源としては、ビールサーバー用などの汎用のガスボンベや、微細泡生成装置100専用に設計されたガスボンベや供給管などが使用可能である。ガスの供給源と気体供給路114との間には、ガスレギュレータが配置される。連動開閉弁114aには、このガスレギュレータを介して適度に減圧されて安定化された炭酸ガスが供給される。このときのガス圧は、気液混合体が気体供給路114を逆流せず、気体が液体供給路112から噴出せず、かつ気泡が液体に所望割合で混合するのに必要な圧力値(例えば0.3MPa)に調整される。
【0043】
<気泡の微細化作用について>
図6は、微細泡生成装置100内の気泡の経路を例示する図である。
図7は、流れ抵抗体による気泡の剪断作用を説明する図である。
以下、
図6および
図7を用いて、気泡の微細化作用について説明する。
【0044】
連動開閉弁114aは、液体弁112aの開閉操作や液圧に連動して開閉することによって、液体供給路112に液体が供給開始されると共に気体を供給開始し、液体が供給停止されると共に気体を供給停止する。
【0045】
気体供給路114に供給された気体は、
図6に例示するように多孔筒143の外周付近の1箇所に到達して、導管116内を流れる液体に気泡として混合する。混合後の気泡は、導管116の周壁に沿って回転する多孔筒143と液の粘性作用によって旋回し、多孔筒143の外周付近の1箇所から導管116の周壁方向に拡幅する。
【0046】
このように導管116の周壁方向に拡幅した気泡の流れは、
図6に例示する複数の経路を通って流れる。
以下、
図6の経路ごとに気泡の微細化作用を説明する。
【0047】
(1)経路R1の場合
多孔筒143およびスクリュー133の回転によって近傍の気液混合体は周壁方向に旋回するため、遠心分離作用が働く。この遠心分離作用によって、液体よりも比重の軽い気泡は、多孔筒143の外周から多孔壁を通り抜けて回転中心の方向へ誘導される。この多孔筒143を気泡が通過する前後において、流れ抵抗体である多孔筒143の多孔壁(透過孔)の回転と液の粘性作用とによって、気泡には周壁方向へ引きちぎるような剪断力が作用する。その結果、多孔筒143の回転駆動によって、気泡は、
図7[B]に例示するように引きちぎられ、細かく剪断され微細化される。
このように微細化された気泡は、導管116の中心域の流れに導かれて旋回しながら、多孔フィルタ144、スクリュー133、および多孔フィルタ146を順番に通過する。まず、多孔フィルタ144の多孔壁(透過孔)の回転と液の粘性作用によって、気泡には回転方向へ引きちぎるような剪断力が作用する。次に、スクリュー133による流れ方向の曲折と液の粘性作用によって、気泡には引きちぎるような剪断力が作用する。さらに、多孔フィルタ146の多孔壁(透過孔)の回転と液の粘性作用によって、気泡には回転方向へ引きちぎるような剪断力が作用する。
以上の代表的な剪断作用によって、経路R1を通って流れる気泡は効率よく多段階に微細化(例えばナノバブルやマイクロバブル程度に微細化)される。
【0048】
(2)経路R2の場合
多孔筒143の多孔壁を通り抜けなかった気泡は、そのまま下流方向へ流れて、多孔筒143と多孔筒145との円筒間にできる隙間(以下「第1狭隘路S1」という)に入る。気泡は、第1狭隘路S1を通過することによって大きな動圧差が作用して引きちぎられ、剪断されて微細化される。
なお、第1狭隘路S1の内周壁(多孔筒143)と外周壁(多孔筒145)が回転するため、第1狭隘路S1を流れる気泡と液体との間には攪拌作用が働きやすい。この攪拌作用によって第1狭隘路S1が大きな気泡で栓をされた状態は起こりづらく、気泡は円滑に流れる。
このように微細化された気泡は、導管116の中心域の流れに導かれて旋回しながら、多孔フィルタ146を通過する。多孔フィルタ146の多孔壁(透過孔)の回転と液の粘性作用によって、気泡には回転方向へ引きちぎるような剪断力が作用する。
以上の代表的な剪断作用によって、経路R2を通って流れる気泡は効率よく多段階に微細化(例えばナノバブルやマイクロバブル程度に微細化)される。
【0049】
(3)経路R3の場合
経路R2と同様にして、気泡は、多孔筒143と多孔筒145との円筒間にできる第1狭隘路S1を円滑に流れて剪断され微細化される。
このように微細化された気泡は、導管116の周壁(静止状態)と、多孔筒145およびホイール134の周壁(回転状態)との隙間(以下「第2狭隘路S2」という)に生じる流れに巻き込まれて、第2狭隘路S2に入る。第2狭隘路S2では、静止状態の外周壁と、回転状態の内周壁との狭い隙間に大きな動圧差が生じる。気泡がこの動圧差に晒されることによって、気泡には引きちぎるような剪断力が作用する。
なお、第2狭隘路S2を流れる気泡と液体との間には、回転による攪拌作用が働く。この攪拌作用によって第2狭隘路S2が大きな気泡で栓をされた状態は起こりづらく、気泡は円滑に流れる。
以上の代表的な剪断作用によって、経路R3を通って流れる気泡は効率よく多段階に微細化(例えばナノバブルやマイクロバブル程度に微細化)される。
【0050】
<実施例1の効果>
【0051】
(1)本実施例1では、導管116内のスクリュー133が回転することによって、同軸流れ抵抗体142を構成する複数の流れ抵抗体は一体になって自動的に回転駆動される。
このような流れ抵抗体の一つ一つの自動回転と、液の粘性とによって、気液混合体に含まれる気泡は剪断されて微細化される。
したがって、本実施例1は、導管116内に「回転する流れ抵抗体」を配置したことによって、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
【0052】
(2)本実施例1では、特許文献1に比べて、気液混合体を通す経路(導管116)の径が広く、気液混合体の収量を増やすことが容易になる。
したがって、本実施例1は、特許文献1に比べて、気液混合体の収量を増やしやすいという点で優れている。
【0053】
(3)本実施例1では、特許文献1に比べて、気液混合体を通す経路(導管116)の径が広く、かつ気液混合体が複数経路(
図6参照)に分流して流れる。そのため、導管116の内壁に過大な圧力はかかりづらい。そのため、導管116の壁面に亀裂が入って液体が漏れるなどのおそれが少ない。
したがって、本実施例1は、導管116の素材に汎用かつ安価なプラスチック素材を使用できるという点で優れている。
【0054】
(4)本実施例1では、特許文献1に比べて、気液混合体を通す経路(導管116)の径が広い上に、導管116内で微細化ブロック130(流れ抵抗体)が回転する。この回転による攪拌作用によって、導管116を流れる気液混合体は円滑に流れる。
したがって、本実施例1は、気液混合体の円滑な流れを得ることができるという点で優れている。
【0055】
(5)本実施例1では、回転する流れ抵抗体として多孔フィルタ144、146を備える。そのため、多孔フィルタ144、146を通過して流れる気泡は、多孔フィルタ144、146の回転駆動によって、流束の断面方向に剪断され微細化される。
したがって、本実施例1は、多孔フィルタ144、146が導管116内で回転することによって、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
【0056】
(6)本実施例1では、回転する流れ抵抗体として多孔筒143、145を備える。そのため、多孔筒143、145を通過して流れる気泡は、多孔筒143、145の回転駆動によって周壁方向に剪断され微細化される。
したがって、本実施例1は、多孔筒143、145が導管116内で回転することによって、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
【0057】
(7)本実施例1では、回転する流れ抵抗体として、複数の多孔壁(筒の側面、フィルタ面)を有する流れ抵抗体140、141を備える。そのため、流れ抵抗体140、141を通過して流れる気泡は、回転する複数の多孔壁(筒の側面、フィルタ面)を段階的に経て剪断され微細化される。
したがって、本実施例1は、流れ抵抗体140、141が導管116内で回転することによって、気液混合体の気泡を筒の側面およびフィルタ面で段階的に効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
【0058】
(8)本実施例1では、回転する流れ抵抗体として、複数の流れ抵抗体140、141を略同軸にして側面を一部重ねた同軸流れ抵抗体142を備える。この同軸流れ抵抗体142を通過して流れる気泡は、
図6に例示するように、多様な経路(例えばR1~R3)に分流して流れる。これら多様な経路それぞれにおいて、先に詳述したように気泡は剪断され微細化される。
したがって、本実施例1は、同軸流れ抵抗体142が導管116内で回転することによって、複数の分流経路を介して、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
【0059】
(9)本実施例1では、スクリュー133は、同軸流れ抵抗体142を構成する2つの多孔フィルタ144、146の軸間に挿置され、前後の流れ抵抗体140、141に連結される。このようなスクリュー133を中間にした直線的な連結関係によって、スクリュー133から前後の流れ抵抗体140、141までの間隔がそれぞれ略最短になり、回転駆動の伝達損失を低減することが可能になる。
したがって、本実施例1は、同軸流れ抵抗体142が低損失で効率よくスクリュー回転するという点で優れている。
【0060】
(10)本実施例1では、多孔筒143の外周付近に気泡を供給する。スクリュー133および多孔筒143の回転による遠心分離作用によって、液よりも比重の軽い気泡を多孔筒143の外周から回転中心の方向へ効率的に誘導する。その結果、効率的に誘導される多くの気泡を多孔筒143の多孔壁で剪断して微細化することが可能になる。
したがって、本実施例1は、スクリュー133および多孔筒143の回転による遠心分離作用によって気泡を誘導して、一段と効率的に気泡を微細化して出力できるという点で優れている。
【0061】
(11)本実施例1では、液体供給に連動して自動的に気体供給を行う連動開閉弁114aを備える。そのため、装置の利用者は、液体供給の開始/停止のみを操作すればよく、気体供給の開始/停止を操作する必要がない。また、液体と気体の供給タイミングがずれて、気液導出口122から液体や気体の一方のみが無駄に出力されることもない。
したがって、本実施例1は、連動開閉弁114aを備えることによって、装置の操作を簡単にし、かつ液体や気体の無駄を省くことができるという点で優れている。
同図において、微細化ブロック130Aは、スクリュー133の周囲に近傍配置される流れ抵抗体として、比較的小径の流れ抵抗体140Aと、比較的大径の流れ抵抗体141Aとを備える。これらの流れ抵抗体140A、141Aは、互いの対称軸を略同軸にして、互いの側面を一部重ねることによって、同軸流れ抵抗体142Aを構成する。
実施例2は、スクリュー133と多孔フィルタ146Aとの間に回転伝達部134P(実施例1参照)を有しない。さらに、回転摺動部146Sは回転軸131に対して滑る。そのため、流れ抵抗体141A(多孔フィルタ146A、多孔筒145A)は回転フリーの状態に置かれる。
さらに、実施例2は、スクリュー133と多孔フィルタ144Aとの間に回転伝達部133P(実施例1参照)を有しない。さらに、回転摺動部144Sは回転軸131に対して滑る。そのため、流れ抵抗体140A(多孔フィルタ144A、多孔筒143A)は回転フリーの状態に置かれる。
連動開閉弁114aによって気体供給路114に供給された気体は、多孔筒143Aの外周付近の1箇所に到達して、導管116内を流れる液体に気泡として混合する。混合後の気泡は、スクリュー133の回転作用と液の粘性によって旋回し、多孔筒143Aの外周付近の1箇所から導管116の周壁方向に拡幅する。
(3)本実施例2では、特許文献1に比べて、気液混合体を通す経路(導管116)の径が広く、かつ気液混合体が複数経路(経路R1~R3など)に分流して流れる。そのため、導管116の内壁に過大な圧力はかかりづらい。そのため、導管116の壁面に亀裂が入って液体が漏れるなどのおそれが少ない。
したがって、本実施例2は、導管116の素材に汎用かつ安価なプラスチック素材を使用できるという点で優れている。
(4)本実施例2では、特許文献1に比べて、気液混合体を通す経路(導管116)の径が広い上に、スクリュー133によって導管116内を流れる気液混合体は旋回する。この旋回による攪拌作用によって、導管116を流れる気液混合体は円滑に流れる。
したがって、本実施例2は、気液混合体の円滑な流れを得ることができるという点で優れている。
(5)本実施例2では、スクリュー133の近傍に流れ抵抗体として多孔フィルタ144A、146Aを配置する。そのため、多孔フィルタ144A、146Aの多孔壁(透過孔)の流れ抵抗と、スクリュー133と共に旋回する液の粘性とによって、多孔フィルタ144A、146Aを通過する気泡には、引きちぎるような剪断力が働く。その結果、気泡は微細化される。
したがって、本実施例2は、スクリュー133の近傍に多孔フィルタ144A、146Aを配置したことによって、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
(6)本実施例2では、スクリュー133の近傍に流れ抵抗体として多孔筒143A、145Aを配置する。そのため、多孔筒143A、145Aの多孔壁(透過孔)の流れ抵抗と、スクリュー133と共に旋回する液の粘性とによって、多孔筒143A、145Aを通過する気泡に引きちぎるような剪断力が働く。その結果、気泡は微細化される。
したがって、本実施例2は、スクリュー133の近傍に多孔筒143A、145Aを配置したことによって、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
(7)本実施例2では、スクリュー133の近傍に流れ抵抗体として、複数の多孔壁(筒の側面、フィルタ面)を有する流れ抵抗体140A、141Aを配置する。そのため、流れ抵抗体140A、141Aを通過して流れる気泡は、複数の多孔壁(筒の側面、フィルタ面)を段階的に経て剪断され微細化される。
したがって、本実施例1は、スクリュー133の近傍に流れ抵抗体140A、141Aを配置したことによって、気液混合体の気泡を複数の多孔壁(筒の側面、フィルタ面)で段階的に効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
(8)本実施例2では、複数の流れ抵抗体140A、141Aを略同軸にして側面を一部重ねた同軸流れ抵抗体142Aを備える。この同軸流れ抵抗体142Aを通過して流れる気泡は、多様な経路(例えばR1~R3)に分流して流れる。これらの多様な経路それぞれにおいて、先に詳述したように気泡は剪断され微細化される。
したがって、本実施例2は、スクリュー133の近傍に同軸流れ抵抗体142Aを配置したことによって、複数の多様な分流経路を介して、気液混合体の気泡を効率よく微細化して出力できるという点で優れている。
(9)本実施例2では、スクリュー133は、同軸流れ抵抗体142Aを構成する2つの多孔フィルタ144A、146Aの軸間に挿置される。さらに、同軸流れ抵抗体142Aを構成する多孔筒143A、145Aの側面は一部が重なる。その結果、スクリュー133の全周囲を殆ど囲むように同軸流れ抵抗体142Aが配置される。この構造によって、スクリュー133の全周囲(上流方向、下流方向、周方向など)に生じる旋回流に対して、全周囲の同軸流れ抵抗体142Aが作用することで、気泡の微細化を漏れなく(または漏れ少なく)行うことができる。
したがって、本実施例2は、スクリュー133を2つの多孔フィルタ144A、146Aの軸間に挿置したことによって、スクリュー133の全周囲について漏れなく(または漏れ少なく)気泡の微細化が可能になるという点で優れている。
(10)本実施例2では、多孔筒143Aの外周付近に気泡を供給する。スクリュー133の回転による遠心分離作用によって、液よりも比重の軽い気泡を多孔筒143Aの外周から回転中心の方向へ効率的に誘導する。その結果、効率的に誘導される多くの気泡を多孔筒143Aの多孔壁(透過孔)で剪断して微細化することが可能になる。
したがって、本実施例2は、スクリュー133の回転による遠心分離作用によって気泡を誘導することによって、一段と効率的に気泡を微細化して出力できるという点で優れている。
(11)本実施例2では、液体供給に連動して自動的に気体供給を行う連動開閉弁114aを備える。そのため、装置の利用者は、液体供給の開始/停止のみを操作すればよく、気体供給の開始/停止を操作する必要がない。また、液体と気体の供給タイミングがずれて、気液導出口122から液体や気体の一方のみが無駄に出力されることもない。
したがって、本実施例2は、連動開閉弁114aを備えることによって、装置の操作を簡単にし、かつ液体や気体の無駄を省くことができるという点で優れている。