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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062796
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20220414BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F04D13/06 D
F04D29/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170927
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA95C
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130DD04Z
3H130EA02C
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EB01C
3H130EB04C
3H130EC17C
3H130EC17H
(57)【要約】
【課題】溶着することが容易なインペラを備えるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】本形態のポンプ装置1において、インペラ3は、円形の第1プレート31と、第1プレート31から一方側に突出するとともに周方向に一定の間隔で配置された複数の羽根部32と、羽根部32の一方側の先端部321と当接する円形の第2プレート33とを備える。第2プレート33は、一方側を向く第1面331と、第1面331とは反対側を向く第2面335とを備える。第1面331は、外周部分に回転中心軸方向と直交する平面である平面部332を備え、第2面335は、径方向内側から径方向外側に向かって第1プレート31に近づく傾斜面である第2面側傾斜部336を備える。第2面335と先端部321とは、軸線方向において平面部332と重なる位置で溶着されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを備えたモータと、
前記ロータの回転中心軸線が延在する軸線方向の一方側に配置され、前記ロータと一体に回転する樹脂製のインペラと、
前記インペラを収容するポンプ室を区画するケースと、
を有し、
前記インペラは、円形の第1プレートと、前記第1プレートから前記一方側に向けて突出し、前記回転中心軸線を中心とする周方向の複数個所で径方向に延在する複数の羽根部と、前記複数の羽根部の前記一方側の先端部が当接する円形の第2プレートとを備え、
前記第2プレートは、前記一方側を向く第1面と、前記第1面とは反対側を向く第2面とを備え、
前記第2面では、径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた第2面側傾斜部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、
前記第1面では、前記回転中心軸線と直交する平面部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、
前記第2プレートは、前記軸線方向からみたときに前記複数の羽根部と前記平面部と重なる位置で前記先端部と溶着されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置において、
前記第1プレートの前記第2プレートとは反対側の面では、前記軸線方向からみたときに前記平面部と重なる領域に前記回転中心軸線と直交する平面が設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポンプ装置において、
前記複数の羽根部は、前記第1プレートと一体に形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のポンプ装置において、
前記ロータは、磁石と、前記磁石を保持する樹脂製のホルダと、を備え、
前記第1プレートは、前記ホルダの前記一方側の端部に前記ホルダと一体に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のポンプ装置において、
前記先端部は、前記軸線方向と直交する第1部分と、前記第1部分の径方向内側または径方向外側で径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた第2部分と、を備え、
前記第2プレートにおいて前記第1部分が当接する被当接部は、前記回転中心軸線と直交する面であり、
前記第1部分と前記被当接部とが溶着されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプ装置において、
前記第2面には、前記第1部分が内側に嵌る第1収容溝を含む溝が設けられ、
前記第1収容溝の底面によって前記被当接部が構成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のポンプ装置において、
前記溝は、前記第2部分が内側に嵌る第2収容溝を含み、
前記第2収容溝の底面は、径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた面であることを特徴とするポンプ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のポンプ装置において、
前記第1部分は、前記第2部分の径方向外側に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のポンプ装置において、
前記溝の径方向外側の端部は、前記第2プレートの外周縁まで到達していないことを特徴とするポンプ装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のポンプ装置において、
前記第1面では、前記平面部の径方向内側または径方向外側で径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように傾いた第1面側傾斜部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、
前記ケースの前記ポンプ室を区画する内壁のうち、前記インペラに前記一方側で対向する部分は、前記第1面側傾斜部に沿って傾斜した傾斜面を含むことを特徴とするポンプ装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載のポンプ装置において、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間において周方向で隣り合う2つの前記羽根部によって挟まれた径方向内側の第1開口部の開口面積をAとし、前記第1プレートと前記第2プレートとの間において周方向で隣り合う2つの前記羽根部によって挟まれた径方向外側の第2開口部の開口面積をBとしたとき、開口面積A,Bは、以下の条件式
1.2A≦B≦1.5A
を満たすことを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の円形プレートの間に複数の羽根部が設けられたインペラを備えたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置では、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させる。このようなポンプ装置は、例えば特許文献1に記載されている。同文献では、ロータの回転中心軸線が延在する軸線方向の一方側に樹脂製のインペラが配置されている。より具体的には、インペラは、ロータと一体に形成された第1円盤部と、第1円盤部から一方側に突出するブレードと、ブレードの先端と当接する第2円盤部とを備える。第2円盤部において、軸線方向の一方側の面の全体、および軸線方向の他方側の面の全体が、径方向内側が径方向外側より一方側に位置するように傾斜した傾斜面からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-108024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のポンプ装置のインペラは、第2円盤部の両面の全体が傾斜面からなるため、第2円盤部とブレートとを結合させるのが容易でないという問題点がある。例えば、第2円盤部とブレートとを接着や溶着等の方法によって結合させる際には、第2円盤部をブレードに向けて押圧する必要があるが、その際、傾斜面を介して第2円盤部を押圧することになるため、第2円盤部の位置ずれ等が発生しやすい。特に、第2円盤部とブレートとを溶着によって結合させる際には、第2円盤部に対して一方側から溶着ヘッドを押し当てる必要があるため、押し付け治具等により第2円盤部を位置決めしておく必要がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1プレートと第2プレートとを羽根部を介して容易に結合させることのできるインペラを備えるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るポンプ装置は、ロータを備えたモータと、前記ロータの回転中心軸線が延在する軸線方向の一方側に配置され、前記ロータと一体に回転する樹脂製のインペラと、前記インペラを収容するポンプ室を区画するケースと、を有し、前記インペラは、円形の第1プレートと、前記第1プレートから前記一方側に向けて突出し、前記回転中心軸線を中心とする周方向の複数個所で径方向に延在する複数の羽根部と、前記複数の羽根部の前記一方側の先端部が当接する円形の第2プレートとを備え、前記第2プレートは、前記一方側を向く第1面と、前記第1面とは反対側を向く第2面とを備え、前記第2面では、径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた第2面側傾斜部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、前記第1面では、前記回転中心軸線と直交する平面部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、前記第2プレートは、前記軸線方向からみたときに前記複数の羽根部と前記平面部と重なる位置で前記先端部と溶着されていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、インペラに用いた第2プレートの羽根部側の第2面には斜面部が設けられているが、第2プレートの羽根部とは反対側の第1面には、ロータの回転中心軸線と
直交する平面部が設けられている。このため、第2プレートと羽根部の先端部とを溶着により結合させる際、溶着装置の溶着ヘッドを平面部に押し当てて、第2プレートを羽根部に対して軸線方向に押し付けることができる。従って、第2プレートと羽根部の先端部との溶着を容易に行うことができる。
【0008】
本発明において、前記第1プレートの前記第2プレートとは反対側の面では、前記軸線方向からみたときに前記平面部と重なる領域に前記回転中心軸線と直交する平面が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2プレートと羽根部の先端部とを溶着する際、第1プレートの第2プレートとは反対側の面を容易に支持することができる。
【0009】
本発明において、前記複数の羽根部は、前記第1プレートと一体に形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、羽根部に流体圧が加わったときでも、かかる流体圧は第1プレートの側に加わる。従って、第2プレートが羽根部から脱落しにくい。
【0010】
本発明において、前記ロータは、磁石と、前記磁石を保持する樹脂製のホルダと、を備え、前記第1プレートは、前記ホルダの前記一方側の端部に前記ホルダと一体に設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ロータと第1プレートとを一体化しやすい。
【0011】
本発明において、前記先端部は、前記軸線方向と直交する第1部分と、前記第1部分の径方向内側または径方向外側で径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた第2部分と、を備え、前記第2プレートにおいて前記第1部分が当接する被当接部は、前記回転中心軸線と直交する面であり、前記第1部分と前記被当接部とが溶着されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1部分および被当接部の双方が回転中心軸線と直交する面であるので、確実に溶着することができる。
【0012】
本発明において、前記第2面には、前記第1部分が内側に嵌る第1収容溝を含む溝が設けられ、前記第1収容溝の底面によって前記被当接部が構成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1部分と被当接部とを溶着した際にバリが発生した場合でも、バリは第1収容溝から外に露出しない。よって、インペラが回転した際、バリがインペラから剥がれ落ちることを、抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記溝は、前記第2部分が内側に嵌る第2収容溝を含み、前記第2収容溝の底面は、径方向内側が径方向外側より前記一方側に位置するように斜めに傾いた面である態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1部分と被当接部とを溶着した際、第1部分と第2部分との境界部分にバリが発生した場合でも、バリは第2収容溝から外に露出しない。よって、インペラが回転した際、バリがインペラから剥がれ落ちることを、抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記第1部分は、前記第2部分の径方向外側に設けられている態様を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記溝の径方向外側の端部は、前記第2プレートの外周縁まで到達していない態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1部分と被当接部とを溶着した際、第1部分の径方向外側の端部にバリが発生した場合でも、バリは溝から外に露出しない。よって、インペラが回転した際、バリがインペラから剥がれ落ちることを、抑制することができる。
【0016】
本発明において、前記第1面では、前記平面部の径方向内側または径方向外側で径方向
内側が径方向外側より前記一方側に位置するように傾いた第1面側傾斜部が前記回転中心軸線を中心に周方向に延在し、前記ケースの前記ポンプ室を区画する内壁のうち、前記インペラに前記一方側で対向する部分は、前記第1面側傾斜部に沿って傾斜した傾斜面を含む態様を採用することができる。かかる態様によれば、ポンプ室内の流体をインペラで移動させる際の損失を抑制することができる。
【0017】
本発明において、前記第1プレートと前記第2プレートとの間において周方向で隣り合う2つの前記羽根部によって挟まれた径方向内側の第1開口部の開口面積をAとし、前記第1プレートと前記第2プレートとの間において周方向で隣り合う2つの前記羽根部によって挟まれた径方向外側の第2開口部の開口面積をBとしたとき、開口面積A,Bは、以下の条件式
1.2A≦B≦1.5A
を満たす態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2開口部の開口面積を第1開口部の開口面積より極端に大きくならないように構成することができる。これにより、ポンプ装置の効率が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明において、インペラに用いた第2プレートの羽根部側の第2面には斜面部が設けられているが、第2プレートの羽根部とは反対側の第1面には、ロータの回転中心軸線と直交する平面部が設けられている。このため、第2プレートと羽根部の先端部とを溶着により結合させる際、溶着装置の溶着ヘッドを平面部に押し当てて、第2プレートを羽根部に対して軸線方向に押し付けることができる。従って、第2プレートと羽根部の先端部との溶着を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したポンプ装置の斜視図である。
図2図1に示すポンプ装置の断面図である。
図3】インペラの斜視図である。
図4】インペラの断面図である。
図5】インペラを一方側から見た分解斜視図である。
図6】インペラを他方側から見た分解斜視図である。
図7】羽根部と第2プレートとの関係を模式的に説明する図である。
図8】変形例1のインペラの分解斜視図である。
図9】変形例1における羽根部と第2プレートとの関係を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明に係るインペラを備えるポンプ装置について説明する。以下の説明において、回転中心軸線Lの延在方向を軸線方向として説明する。また、軸線方向において、一方側にはL1を付し、他方側にL2を付して説明する。また、以下の説明において、回転中心軸線を中心とする径方向および周方向を各々、単に「径方向」および「周方向」とする。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1の断面図である。図1および図2に示すように、ポンプ装置1は、回転中心軸線L周りに回転するロータ5を備えるモータ2と、ロータ5に対して軸線方向の一方側L1に配置された樹脂製のインペラ3と、インペラ3を収容するポンプ室20を区画するケース4とを有する。ポンプ装置1は、インペラ3がロータ5と一体に回転することによりポンプ室20内の流体を移動させる。
【0022】
(モータ)
モータ2は、ロータ5と、ロータ5の径方向外側に位置するステータ6と、ステータ6を覆う樹脂製の隔壁部材7と、ロータ5を回転可能に支持する支持軸8とを備える。ロータ5は、軸線方向に延びる円筒状のホルダ51と、ホルダ51の外周面に保持された円筒状の磁石10とを備える。
【0023】
ホルダ51は樹脂製である。ホルダ51は、外周面に磁石10を保持する小径部52と、磁石10の一方側L1の端部と当接する円形の当接部53と、当接部53の外周縁から一方側L1に突出する大径部54とを備えており、小径部52の外径寸法は、大径部54の外径寸法より小さい。小径部52と大径部54とは、同軸に設けられている。小径部52は、内部に軸受56を保持しており、ロータ5は、軸受56を介して支持軸8に回転可能に支持されている。
【0024】
磁石10は、ネオジムボンド磁石である。この磁石10は、全体が樹脂のスキン層で覆われる。磁石10の外径寸法は、大径部54の外径寸法と略同一である。磁石10と小径部52との間に接着剤を塗布することにより、磁石10と小径部52とは接着されている。この際、磁石10は当接部53と当接することにより、磁石10は位置決めされる。
【0025】
ステータ6は、ステータコア61と、ステータコア61にインシュレータ62を介して巻回されたコイル63とを有している。詳細な説明を省略するが、ステータコア61は、円環状に延在する円環部と、円環部から径方向の内側へ突出する複数の突極とを備えている。コイル63は、突極を覆うインシュレータ62の径方向内側の第1鍔部621と径方向外側の第2鍔部622との間に巻回される。本形態において、モータ2は3相モータであり、コイル63には、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルが含まれている。
【0026】
隔壁部材7は、一方側L1を向く第1隔壁部71と、ステータ6と磁石10との間に介在する第2隔壁部72と、ロータ5の他方側L2の端面と対向する第3隔壁部73とを備える。本形態において、隔壁部材7は、ステータ6を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材である。隔壁部材7の材質は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)によってステータ6をインサート成形することにより形成されている。また、例えば、隔壁部材7は、BMC(Bulk Molding Compound)等によってステータ6をインサート成形することにより形成してもよい。
【0027】
隔壁部材7の他方側L2の端部には、カバー15が固定される。カバー15と隔壁部材7との間には、コイル63に対して給電を制御する回路等が設けられた基板16が配置される。また、隔壁部材7には、コネクタハウジング76が設けられている。コネクタハウジング76にコネクタを連結して電源供給等を行うことにより、モータ2のロータ5が回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ3が回転する。
【0028】
支持軸8は、金属製の棒状部材である。支持軸8の中心軸線がロータ5の回転中心軸線と一致する。支持軸8の他方側L2の端部は、第3隔壁部73に形成された孔部74に圧入されている。支持軸8の一方側L1の端部には、円環状の板部材81が取り付けられている。板部材81は、当接部53から突出した軸受56の一方側L1の端部と当接する。
【0029】
(インペラ)
図3は、インペラ3の斜視図である。図4は、インペラ3の断面図である。図5は、インペラ3を一方側L1から見た分解斜視図である。図6は、インペラ3を他方側L2から見た分解斜視図である。図7は、羽根部32と第2プレート33との関係を模式的に説明する図である。すなわち、羽根部32は周方向に湾曲しながら径方向に延在しているが、
図7では、羽根部32が径方向に直線的に延在しているものとして示してある。
【0030】
図3図7に示すように、インペラ3は、円形の第1プレート31と、第1プレート31から一方側L1に突出するとともに周方向に一定の間隔で配置された複数の羽根部32と、羽根部32の一方側L1側の先端部321と当接する円形の第2プレート33とを備える。複数の羽根部32はいずれも、周方向に厚さ方向を向けた板状である。第1プレート31は、ロータ5のホルダ51の大径部54の一方側L1の端部に一体に設けられており、一方側L1側の端部から径方向外側に突出する。すなわち、第1プレート31とロータ5のホルダ51とは、樹脂材料により一体に形成されている。第1プレート31の中央には、孔部310が形成されている。本形態において、第1プレート31の一方側L1の面311、および他方側L2の面312はいずれも、軸線方向と直交する平面である。
【0031】
本形態の羽根部32は、周方向に7枚設けられている。羽根部32は、軸線方向から見た場合、周方向に湾曲した板形状である。羽根部32において、径方向内側の側面部324は、孔部310より径方向外側に位置する。羽根部32において、径方向外側の側面部325は、第1プレート31の外周面と一致する。
【0032】
先端部321は、軸線方向と直交する第1部分323と、第1部分323の径方向内側または径方向外側で径方向内側が径方向外側より一方側L1に位置するように斜めに傾いた第2部分322とを備えている。本形態において、第1部分323は、第2部分322の径方向外側に設けられている。
【0033】
第2プレート33は、円形の板形状である。第2プレート33は、中央に孔部330を備える。第2プレート33は、一方側L1を向く第1面331と、他方側L2側を向く第2面335とを備える。第1面331は、軸線方向と直交する平面である平面部332を備え、平面部332は、周方向に延在している。本形態において、第1面331では、平面部332の径方向内側または径方向外側で径方向内側が径方向外側より一方側L1に位置するように傾いた第1面側傾斜部333に周方向に延在している。本形態において、平面部332は、第1面側傾斜部333の径方向外側に円環状に設けられており、平面部332は、軸線方向から見た場合、羽根部32の第1部分323と重なる。
【0034】
第2面335では、径方向内側が径方向外側より一方側L1に位置するように斜めに傾いた第2面側傾斜部336が周方向に延在している。本形態において、第2面335の全体が第2面側傾斜部336になっている。なお、第2面335は、一部に第2面側傾斜部336を備える構成であってもよい。例えば、第2面335は、第2面側傾斜部336と、第2面側傾斜部336の径方向内側または径方向外側に軸線方向と直交する平面部を備えてもよい。
【0035】
第2面335には、第1部分323を収容する第1収容溝337を含む溝334が設けられており、溝334は、第2部分322を収容する第2収容溝338を含む。第1収容溝337および第2収容溝338は、一方側L1に凹む溝である。本形態において、第1収容溝337は、第2収容溝338の径方向外側に設けられており、第1収容溝337は、第2プレート33の外周縁まで延びる。第1収容溝337は、軸線方向から見た場合、第1部分323と重なる。第1収容溝337の底面は、軸線方向に直交する面であり、先端部321の第1部分323が当接する被当接部337aである。第2収容溝338の底面338aは、第1収容溝337の被当接部337aと連続する。
【0036】
図3および図4に示すように、インペラ3は、第1プレート31と第2プレート33との間において周方向で隣り合う2つの羽根部32によって挟まれた径方向内側の第1開口部34と、第1プレート31と第2プレート33との間において周方向で隣り合う2つの
羽根部32によって挟まれた径方向外側の第2開口部35とを備える。本形態において、第1開口部34および第2開口部35は各々、7つずつ形成されている。第2開口部35の開口面積は、第1開口部34の開口面積より大きい。本形態では、第2面335は第2面側傾斜部336を備えるので、第2開口部35の開口面積が第1開口部34の開口面積より極端に大きくならないように構成されている。より具体的には、第1開口部34の開口面積をA、第2開口部35の開口面積をBとすると、開口面積A,Bは、以下の条件式を満たしように構成されている。
1.2A≦B≦1.5A
【0037】
次に、インペラの溶着について説明する。図7に示すように、溶着装置の溶着ヘッド100により、第2面335と先端部321とは、軸線方向において平面部332と重なる位置で溶着される。これにより、第2プレート33は、羽根部32の一方側L1の先端部321に固定されている。本形態では、第1収容溝337の底面である被当接部337aと先端部321の第1部分323とが溶着される。本形態では、平面部332は軸線方向と直交する平面であるので、溶着の際に、溶着装置の溶着ヘッド100を平面部332に押し当てることにより、第2プレート33を羽根部32に対して軸線方向に押し付けることができる。
【0038】
ここで、溶着の際、バリが発生する。発生したバリは、第1収容溝337に収容されるので、バリは第1収容溝337から外に露出しない。また、第2部分322と接続する第1部分323の端部において発生したバリは、第2収容溝338にも収容されるので、バリは第2収容溝338から外に露出しない。
【0039】
(ケース)
図1および図2に示すように、ケース4は、ポンプ室20を構成する内壁43に、インペラ3に一方側L1で対向する対向壁45と、周方向に延在する側壁44とを備える。ケース4は、軸線方向に沿って延在する吸入管41と、軸線方向に対して直交する方向に延在する吐出管42とを備える。吸入管41および吐出管42は各々、端部に吸入口41aおよび吐出口42aを備える。吸入管41および吸入口41aは、回転中心軸線Lに対して同心状に設けられている。吐出管42は、インペラ3の径方向外側に位置する。
【0040】
図2に示すように、対向壁45は、軸線方向と直交する方向から見た場合、第2プレート33の第1面331に沿った形状である。より具体的には、対向壁45は、第1面側傾斜部333に沿って傾斜した傾斜面451と、平面部332に沿う平面部452とを含んでおり、平面部452は、回転中心軸線Lに対して直交する面である。
【0041】
(作用効果)
本形態のポンプ装置1は、第2面335と先端部321とは、回転中心軸方向において平面部332と重なる位置で溶着されている。よって、第2プレート33の第2面335は、径方向内側から径方向外側に向かって第1プレート31に近づく傾斜面である第2面側傾斜部336を備える場合であっても、溶着装置の溶着ヘッド100を平面部332に押し当てることにより、第2プレート33を羽根部32に対して軸線方向に押し付けることができるので、第2面335と先端部321との溶着を容易に行うことができる。
【0042】
本形態のポンプ装置1において、第1プレート31の第2プレート33とは反対側の面312では、軸線方向からみたときに平面部332と重なる領域に回転中心軸線と直交する平面が設けられている。このように構成すれば、第2プレート33と羽根部32の先端部321とを溶着する際、第1プレート31の第2プレート33とは反対側の面312を容易に支持することができる。
【0043】
本形態のポンプ装置1において、複数の羽根部32は、第1プレート31と一体に形成されている。このように構成すれば、羽根部32に流体圧が加わったときでも、かかる流体圧は第1プレート31の側に加わる。従って、第2プレート33が羽根部から脱落しにくい。
【0044】
本形態のポンプ装置1において、ロータ5は、磁石10を保持するホルダ51を備え、第1プレート31は、ホルダ51のL1側の端部に一体に設けられる。このように構成すれば、ロータ5とインペラ3とを一体にすることができるので、ロータ5とインペラ3とを別体とした構成と比べて、結合強度が向上する。また、部品点数を削減することができる。
【0045】
本形態のポンプ装置1において、先端部321は、径方向内側から径方向外側に向かって第1プレート31に近づく傾斜面である第2部分322と、第2部分322から径方向外側に向かって軸線方向と直交する平面である第1部分323とを備える。第2面335は、第1部分323と当接する被当接部337aを備えている。被当接部337aは、軸線方向と直交する平面であり、第1部分323と被当接部337aとが溶着される。このように構成すれば、第1部分323および被当接部337aは、互いに軸線方向で直交する面であるので、第2プレート33を羽根部32に対して軸線方向に押し付けた際に、互いは確実に当接する。よって、第1部分323と被当接部337aとを溶着することが容易となる。
【0046】
本形態のポンプ装置1において、第2面335には、第1部分323が内側で嵌る第1収容溝337を含む溝334が設けられ、第1収容溝337の底面によって被当接部337aが構成されている。このように構成すれば、第1部分323と被当接部337aとを溶着した際に発生したバリは、第1収容溝337に収容されるので、バリは第1収容溝337から外に露出しない。よって、ポンプ装置1を稼働した時に、バリがインペラ3から剥がれ落ちることを、抑制することができる。
【0047】
本形態のポンプ装置1において、溝334は、第2部分322が内側に嵌る第2収容溝を338含み、第2収容溝338の底面338aは、径方向内側が径方向外側より一方側L1に位置するように斜めに傾いた面である。このように構成すれば、第1部分323と被当接部337aとを溶着した際、第2部分322と接続する第1部分323の端部において発生したバリは、第2収容溝338に収容されるので、バリは第2収容溝338から外に露出しない。よって、ポンプ装置1を稼働した時に、バリがインペラ3から剥がれ落ちることを、抑制することができる。
【0048】
本形態のポンプ装置1において、第1面331では、平面部332の径方向内側で径方向内側が径方向外側より一方側L1に位置するように傾いた第1面側傾斜部333が回転中心軸線Lを中心に周方向に延在する。ケース4のポンプ室20を区画する内壁43のうち、インペラ3に一方側L1で対向する対向壁45は、第1面側傾斜部333に沿って傾斜した傾斜面451を含む。このように構成すれば、ポンプ室内の流体をインペラで移動させる際の損失を抑制することができる。
【0049】
本形態のポンプ装置1において、第1プレート31と第2プレート33との間において周方向で隣り合う2つの羽根部32によって挟まれた径方向内側の第1開口部34の開口面積をAとし、第1プレート31と第2プレート33との間において周方向で隣り合う2つの羽根部32によって挟まれた径方向外側の第2開口部35の開口面積をBとしたとき、開口面積A,Bは、以下の条件式
1.2A≦B≦1.5A
を満たす。このように構成すれば、第2開口部35の開口面積を第1開口部34の開口面
積より極端に大きくならないように構成することができる。これにより、ポンプ装置の効率が低下することを抑制することができる。
【0050】
(変形例1)
図8は、変形例1のインペラ3の分解斜視図である。図9は、変形例1における羽根部32と第2プレート33との関係を模式的に説明する図である。変形例1のインペラ3は、上記のインペラ3の第1収容溝337および側面部325の構成が相違するが、他の構成は同一である。よって、変形例1のインペラ3の説明では、上記のインペラ3と対応する構成に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図8および図9に示すように、第2プレート33において、溝334の径方向外側の端部は、第2プレート33の外周縁まで到達していない。このため、羽根部32の側面部325は、一方側L1の端部において切欠かれた切欠き部326を備える。第1収容溝337は、径方向外側の端部において、対向壁部分339を備える。対向壁部分339は、第1収容溝337の径方向外側を塞ぐ。図9に示すように、対向壁部分339は、切欠き部326を径方向外側から覆う。本形態では、対向壁部分339によって第1収容溝337の径方向外側が塞がれているので、溶着の際に、第1部分323の径方向外側の端部において発生したバリは、上記の形態と比べて、確実に第1収容溝337に収容される。このため、バリは、第1収容溝337から外に露出しない。よって、上記形態と比べて、ポンプ装置1を稼働した時に、バリがインペラ3から剥がれ落ちることを、より抑制することができる。
【0052】
(他の変形例)
上記形態では、第2プレート33は、第2収容溝338を備えていたが、第2収容溝338を備えない構成であってもよい。
【0053】
上記形態では、第1プレート31とロータ5の大径部54とは、樹脂材料により一体に形成されていたが、別体となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ポンプ装置、2…モータ、3…インペラ、4…ケース、5…ロータ、6…ステータ、7…隔壁部材、8…支持軸、10…磁石、15…カバー、16…基板、20…ポンプ室、31…第1プレート、32…羽根部、33…第2プレート、34…第1開口部、35…第2開口部、41…吸入管、41a…吸入口、42…吐出管、42a…吐出口、43…内壁、44…側壁、45…対向壁、51…ホルダ、52…小径部、53…当接部、54…大径部、56…軸受、61…ステータコア、62…インシュレータ、63…コイル、71…第1隔壁部、72…第2隔壁部、73…第3隔壁部、74…孔部、76…コネクタハウジング、81…板部材、100…溶着ヘッド、310…孔部、321…先端部、322…第2部分、323…第1部分、324…側面部、325…側面部、326…切欠き部、330…孔部、331…第1面、332…平面部、333…第1面側傾斜部、334…溝、335…第2面、336…第2面側傾斜部、337…第1収容溝、337a…被当接部、338…第2収容溝、338a…底面、339…対向壁部分、621…第1鍔部、622…第2鍔部、L…回転中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9