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特開2022-62805真空ポンプとこれを用いた真空排気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062805
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】真空ポンプとこれを用いた真空排気システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220414BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F04D19/04 E
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170939
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 祐幸
【テーマコード(参考)】
3H131
5F004
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA07
3H131BA12
3H131CA04
3H131CA13
3H131CA33
5F004BC02
5F004BD02
(57)【要約】
【課題】チャンバ内の圧力の均一化と圧縮比の向上を図るのに好適な真空ポンプとこれを用いた真空排気システムを提供する。
【解決手段】真空ポンプP1は、筒状の内ハウジング1と、内ハウジングの外方に配置された筒状のステータ2と、内ハウジングとステータとの間に回転自在に配設された筒状のシャフト3と、シャフトをその軸心周りに回転駆動するモータMTと、シャフトの外周面に配設された複数段の回転翼4A、4B・・・と、複数段の回転翼の外方に設けられ、吸気口5および排気口6を有する筒状の外ハウジング7と、を備え、内ハウジング1の外周面とシャフト3の内周面との間の隙間に、その隙間へのガスの流入を阻害するシール機構8が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内ハウジングと、
前記内ハウジングの外方に配置された筒状のステータと、
前記内ハウジングと前記ステータとの間に回転自在に配設された筒状のシャフトと、
前記シャフトをその軸心周りに回転駆動するモータと、
前記シャフトの外周面に配設された複数段の回転翼と、
前記複数段の回転翼の外方に設けられ、吸気口および排気口を有する筒状の外ハウジングと、を備えた真空ポンプにおいて、
前記内ハウジングの外周面と前記シャフトの内周面との間の隙間に、その隙間へのガスの流入を阻害するシール機構を設けたこと
を特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記シール機構は、その形状ないしは構造の相違によって、前記隙間の上流側では該隙間へのプロセスガスの流入を阻害する手段として機能し、前記隙間の下流側では該隙間へのパージガスの流入を阻害する手段として機能すること
を特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記シール機構は、前記シャフトの内周面の少なくとも一部に複数のブレード部を有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記シール機構は、前記内ハウジングの外周面と前記シャフトの内周面のいずれか一方の少なくとも一部にネジ溝部を有すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記外ハウジングの内周面に、通常、前記複数段の回転翼と軸方向で交互に配置される複数段の固定翼を備えていないこと
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1の真空ポンプの中心軸と同軸上で、かつ、該真空ポンプの下流側に、別の真空ポンプを備えた
ことを特徴とする真空排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバその他のチャンバのガス排気手段として利用される真空ポンプとこれを用いた真空排気システムに関し、特に、チャンバ内の圧力の均一化と圧縮比の向上を図るのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の真空排気システムの断面図である。
【0003】
図7を参照すると、従来の真空排気システムでは、チャンバ300に真空ポンプP3を接続し、真空ポンプP3を通じてチャンバ300内のガスを排気している。チャンバ300内には処理ステージ400が設けられ、この処理ステージ400上に半導体ウエハ等のワークが載置される。そして、チャンバ300内にプロセスガスが供給され、処理ステージ400上のワークに対してプロセスガスによる処理(例えば、半導体ウエハのエッチング処理)が行なわれる。処理で使用されたプロセスガスは真空ポンプP3を通じてチャンバ300外に排気される。
【0004】
前記のようなチャンバ300内でのプロセスガスの処理時に該チャンバ300内の圧力を調整する手段として、図7の従来の真空排気システムでは、チャンバ300内にゲートバルブ装置500が設けられている。
【0005】
ゲートバルブ装置500は、チャンバ300内に配置されたバルブ本体500Aの上下移動によって、真空ポンプP3とチャンバ300を結ぶ連通路Rを一時的に遮断したり開放したりするこができる。バルブ本体500Aの上下移動は、駆動シリンダロッド500Bの昇降動作によって行われる。
【0006】
しかしながら、図7の従来の真空排気システムにあっては、バルブ本体500Aを上下移動するための駆動シリンダロッド500Bが連通路Rの外周付近に位置すること、および、チャンバ300の内側壁に処理ステージ400が取付けられた構造になっていて、処理400ステージに対する排気経路の対称性が無いため、その取付け部周辺とそれ以外の場所とでガスの流れ方が変わることから、圧力分布の不均一が生じやすくなる。例えば、プロセスガスによるワークの処理時に、処理ステージ400や駆動シリンダロッド500Bの周辺でプロセスガスの流れが均一にならず、ゲートバルブ装置500によってチャンバ300内の圧力を均一に保つことが困難となるため、プロセスガスによるワークの処理にムラが生じる等の問題点を有している。
【0007】
特許文献1の排気システムでは、チャンバ内の処理ステージに対して真空ポンプを同軸に配置する構成、および、同真空ポンプを中空構造とし、その中空部に処理ステージが収納される構成を採用しているため、処理ステージの周辺におけるプロセスガスの流れ方は先に説明した図7の従来の真空排気システムに比べて改善されている。
【0008】
しかしながら、同文献1の排気システムによると、真空ポンプを構成するロータの軸受けを介して真空ポンプの吸気側(上流側)と排気側(下流側)が連通しているので、ガスの逆流が生じ、所望の圧縮比(吸気側の圧力と排気側の圧力との比率、排気圧力/吸気圧力)が得られないという問題点や、腐食性ガスによって磁気軸受の構成部品が腐食しダメージを受けるという問題点等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-183037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、チャンバ内の圧力の均一化と圧縮比の向上を図るのに好適な真空ポンプとこれを用いた真空排気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、真空ポンプの本発明は、筒状の内ハウジングと、前記内ハウジングの外方に配置された筒状のステータと、前記内ハウジングと前記ステータとの間に回転自在に配設された筒状のシャフトと、前記シャフトをその軸心周りに回転駆動するモータと、前記シャフトの外周面に配設された複数段の回転翼と、前記複数段の回転翼の外方に設けられ、吸気口および排気口を有する筒状の外ハウジングと、を備えた真空ポンプにおいて、前記内ハウジングの外周面と前記シャフトの内周面との間の隙間に、その隙間へのガスの流入を阻害するシール機構を設けたことを特徴とする。
【0012】
前記本発明において、前記シール機構は、その形状ないしは構造の相違によって、前記隙間の上流側では該隙間へのプロセスガスの流入を阻害する手段として機能し、前記隙間の下流側では該隙間へのパージガスの流入を阻害する手段として機能することを特徴としてもよい。
【0013】
前記本発明において、前記シール機構は、前記シャフトの内周面の少なくとも一部に複数のブレード部を有することを特徴としてもよい。
【0014】
前記本発明において、前記シール機構は、前記内ハウジングの外周面と前記シャフトの内周面のいずれか一方の少なくとも一部にネジ溝部を有することを特徴としてもよい。
【0015】
前記本発明において、前記外ハウジングの内周面に、通常、前記複数段の回転翼と軸方向で交互に配置される複数段の固定翼を備えていないことを特徴としてもよい。
【0016】
また、真空排気システムの本発明は、前記真空ポンプの中心軸と同軸上で、かつ、該真空ポンプの下流側に、別の真空ポンプを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、前述の通り、内ハウジングも外ハウジングも筒状の形態であることにより真空ポンプ全体が中空構造になっていて、その中空部にチャンバ内の処理ステージを配置することができ、このような処理ステージの配置構成によって、従来の処理ステージの取付け部のようにガスの流れを阻害する要因がなくなり、処理ステージの周囲でガスの流れ方が一様になる点で、チャンバ内の圧力の均一化を図るのに好適な真空ポンプとこれを用いた真空排気システムを提供し得る。
【0018】
また、本発明では、真空ポンプの具体的な構成として、前述の通り、内ハウジングの外周面とシャフトの内周面との間の隙間に、その隙間へのガスの流入を阻害するシール機構が設けられる構成を採用した。このため、当該隙間を介する排気側と吸気側の連通はシール機構によって遮断されるから、その隙間を通じた排気側から吸気口側へのガスの逆流が防止でき、吸気側の圧力と排気側の圧力との比率である、圧縮比の向上を図るのに好適な真空ポンプとこれを用いた真空排気システムを提供し得る。
【0019】
さらに、本発明にあっては、前述の隙間への腐食性ガスの流入によってシャフトの支持系(例えば、磁気受けの電磁石やセンサ)が腐食しダメージを受けるという問題も生じ難く、ポンプ内蔵電装部品の故障によるトラブルが少なく、信頼性の高い真空ポンプとこれを用いた排気システムも提供し得る。
【0020】
また、さらに、本発明にあっては、圧力の均一化と圧縮比等の排気性能の役割をそれぞれ別なポンプにうまく配分した構成となっているので、圧力の均一化と排気性能の両面を満足する信頼性の高い真空排気システムを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した真空排気システムの構成断面図。
図2図1の真空排気システムを構成する第2の真空ポンプの断面図。
図3】アンプ回路の回路図。
図4】電流指令値が検出値より大きい場合の制御を示すタイムチャート。
図5】電流指令値が検出値より小さい場合の制御を示すタイムチャート。
図6】シール機構の概念説明図。
図7】従来の真空排気システムの構成断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明を適用した真空排気システムの構成断面図、図2は、図1の真空排気システムを構成する第2の真空ポンプの断面図である。
【0024】
《真空排気システムESの概要》
図1を参照すると、同図の真空排気システムESは、真空ポンプP1(以下「第1の真空ポンプ」という)の中心軸と同軸上で、かつ、該第1の真空ポンプP1の下流側に、別の真空ポンプとして、第2の真空ポンプP2を備えている。
【0025】
《第2の真空ポンプP2の詳細》
図2を参照すると、第2の真空ポンプP2は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103が備えられている。この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。
【0026】
磁気軸受の具体的な構成例として、上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104の近接に、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応されて4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、すなわちそれに固定された回転体103の径方向変位を検出し、制御装置200に送るように構成されている。
【0027】
この制御装置200においては、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、図3に示すアンプ回路150(後述する)が、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
【0028】
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
【0029】
さらに、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が制御装置200に送られるように構成されている。
【0030】
そして、制御装置200において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150が、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
【0031】
このように、制御装置200は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。なお、これら上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150については、後述する。
【0032】
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置200によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
【0033】
さらに、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置200では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
【0034】
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。
【0035】
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
【0036】
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設されている。ベース部129には排気口133が形成され、外部に連通されている。チャンバ側から吸気口101に入ってベース部129に移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
【0037】
さらに、第2の真空ポンプP2の用途によって、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間には、ネジ付スペーサ131が配設される。ネジ付スペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。回転体103の回転翼102(102a、102b、102c・・・)に続く最下部には円筒部102dが垂下されている。この円筒部102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付スペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付スペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。回転翼102および固定翼123によってネジ溝131aに移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつベース部129へと送られる。
【0038】
ベース部129は、第2の真空ポンプP2の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129は第2の真空ポンプP2を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
【0039】
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバから排気ガスが吸気される。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
【0040】
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触する際に生ずる摩擦熱などを外部へと伝達する。
【0041】
なお、上記では、ネジ付スペーサ131は回転体103の円筒部102dの外周に配設し、ネジ付スペーサ131の内周面にネジ溝131aが刻設されているとして説明した。しかしながら、これとは逆に円筒部102dの外周面にネジ溝が刻設され、その周囲に円筒状の内周面を有するスペーサが配置される場合もある。
【0042】
また、第2の真空ポンプP2の用途によっては、吸気口101から吸引されたガスが上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107、モータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、軸方向電磁石106A、106B、軸方向センサ109などで構成される電装部に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、このステータコラム122内はパージガスにて所定圧に保たれる場合もある。
【0043】
この場合には、ベース部129には図示しない配管が配設され、この配管を通じてパージガスが導入される。導入されたパージガスは、保護ベアリング120とロータ軸113間、モータ121のロータとステータ間、ステータコラム122と回転翼102の内周側円筒部の間の隙間を通じて排気口133へ送出される。
【0044】
ここに、第2の真空ポンプP2は、機種の特定と、個々に調整された固有のパラメータ(例えば、機種に対応する諸特性)に基づいた制御を要する。この制御パラメータを格納するために、第2の真空ポンプP2は、その本体内に電子回路部141を備えている。電子回路部141は、EEP-ROM等の半導体メモリ及びそのアクセスのための半導体素子等の電子部品、それらの実装用の基板143等から構成される。この電子回路部141は、第2の真空ポンプP2の下部を構成するベース部129の例えば中央付近の図示しない回転速度センサの下部に収容され、気密性の底蓋145によって閉じられている。
【0045】
ところで、半導体の製造工程では、チャンバに導入されるプロセスガスの中には、その圧力が所定値よりも高くなり、或いは、その温度が所定値よりも低くなると、固体となる性質を有するものがある。第2の真空ポンプP2内部では、排気ガスの圧力は、吸気口101で最も低く排気口133で最も高い。プロセスガスが吸気口101から排気口133へ移送される途中で、その圧力が所定値よりも高くなったり、その温度が所定値よりも低くなったりすると、プロセスガスは、固体状となり、第2の真空ポンプP2内部に付着して堆積する。
【0046】
例えば、Alエッチング装置にプロセスガスとしてSiClが使用された場合、低真空(760[torr]~10-2[torr])かつ、低温(約20[℃])のとき、固体生成物(例えばAlCl)が析出し、第2の真空ポンプP2内部に付着堆積することが蒸気圧曲線からわかる。これにより、第2の真空ポンプP2内部にプロセスガスの析出物が堆積すると、この堆積物がポンプ流路を狭め、第2の真空ポンプP2の性能を低下させる原因となる。そして、前述した生成物は、排気口付近やネジ付スペーサ131付近の圧力が高い部分で凝固、付着し易い状況にあった。
【0047】
そのため、この問題を解決するために、従来はベース部129等の外周に図示しないヒータや環状の水冷管149を巻着させ、かつ例えばベース部129に図示しない温度センサ(例えばサーミスタ)を埋め込み、この温度センサの信号に基づいてベース部129の温度を一定の高い温度(設定温度)に保つようにヒータの加熱や水冷管149による冷却の制御(以下TMSという。TMS;Temperature Management System)が行われている。
【0048】
次に、このように構成される第2の真空ポンプP2に関して、その上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150について説明する。このアンプ回路150の回路図を図3に示す。
【0049】
図3において、上側径方向電磁石104等を構成する電磁石巻線151は、その一端がトランジスタ161を介して電源171の正極171aに接続されており、また、その他端が電流検出回路181及びトランジスタ162を介して電源171の負極171bに接続されている。そして、トランジスタ161、162は、いわゆるパワーMOSFETとなっており、そのソース-ドレイン間にダイオードが接続された構造を有している。
【0050】
このとき、トランジスタ161は、そのダイオードのカソード端子161aが正極171aに接続されるとともに、アノード端子161bが電磁石巻線151の一端と接続されるようになっている。また、トランジスタ162は、そのダイオードのカソード端子162aが電流検出回路181に接続されるとともに、アノード端子162bが負極171bと接続されるようになっている。
【0051】
一方、電流回生用のダイオード165は、そのカソード端子165aが電磁石巻線151の一端に接続されるとともに、そのアノード端子165bが負極171bに接続されるようになっている。また、これと同様に、電流回生用のダイオード166は、そのカソード端子166aが正極171aに接続されるとともに、そのアノード端子166bが電流検出回路181を介して電磁石巻線151の他端に接続されるようになっている。そして、電流検出回路181は、例えばホールセンサ式電流センサや電気抵抗素子で構成されている。
【0052】
以上のように構成されるアンプ回路150は、一つの電磁石に対応されるものである。そのため、磁気軸受が5軸制御で、電磁石104、105、106A、106Bが合計10個ある場合には、電磁石のそれぞれについて同様のアンプ回路150が構成され、電源171に対して10個のアンプ回路150が並列に接続されるようになっている。
【0053】
さらに、アンプ制御回路191は、例えば、制御装置200の図示しないディジタル・シグナル・プロセッサ部(以下、DSP部という)によって構成され、このアンプ制御回路191は、トランジスタ161、162のon/offを切り替えるようになっている。
【0054】
アンプ制御回路191は、電流検出回路181が検出した電流値(この電流値を反映した信号を電流検出信号191cという)と所定の電流指令値とを比較するようになっている。そして、この比較結果に基づき、PWM制御による1周期である制御サイクルTs内に発生させるパルス幅の大きさ(パルス幅時間Tp1、Tp2)を決めるようになっている。その結果、このパルス幅を有するゲート駆動信号191a、191bを、アンプ制御回路191からトランジスタ161、162のゲート端子に出力するようになっている。
【0055】
なお、回転体103の回転速度の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体103の位置制御をする必要がある。そのため、電磁石巻線151に流れる電流の急激な増加(あるいは減少)ができるように、電源171としては、例えば50V程度の高電圧が使用されるようになっている。また、電源171の正極171aと負極171bとの間には、電源171の安定化のために、通常コンデンサが接続されている(図示略)。
【0056】
かかる構成において、トランジスタ161、162の両方をonにすると、電磁石巻線151に流れる電流(以下、電磁石電流iLという)が増加し、両方をoffにすると、電磁石電流iLが減少する。
【0057】
また、トランジスタ161、162の一方をonにし他方をoffにすると、いわゆるフライホイール電流が保持される。そして、このようにアンプ回路150にフライホイール電流を流すことで、アンプ回路150におけるヒステリシス損を減少させ、回路全体としての消費電力を低く抑えることができる。また、このようにトランジスタ161、162を制御することにより、第2の真空ポンプP2に生じる高調波等の高周波ノイズを低減することができる。さらに、このフライホイール電流を電流検出回路181で測定することで電磁石巻線151を流れる電磁石電流iLが検出可能となる。
【0058】
すなわち、検出した電流値が電流指令値より小さい場合には、図4に示すように制御サイクルTs(例えば100μs)中で1回だけ、パルス幅時間Tp1に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をonにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、正極171aから負極171bへ、トランジスタ161、162を介して流し得る電流値iLmax(図示せず)に向かって増加する。
【0059】
一方、検出した電流値が電流指令値より大きい場合には、図5に示すように制御サイクルTs中で1回だけパルス幅時間Tp2に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をoffにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、負極171bから正極171aへ、ダイオード165、166を介して回生し得る電流値iLmin(図示せず)に向かって減少する。
【0060】
そして、いずれの場合にも、パルス幅時間Tp1、Tp2の経過後は、トランジスタ161、162のどちらか1個をonにする。そのため、この期間中は、アンプ回路150にフライホイール電流が保持される。
【0061】
《第1の真空ポンプP1の概要》
図1を参照すると、第1の真空ポンプP1は、筒状の内ハウジング1と、内ハウジング1の外方に配置された筒状のステータ2と、内ハウジング1とステータ2との間に回転自在に配設された筒状のシャフト3と、シャフト3をその軸心周りに回転駆動するモータMTと、シャフト3の外周面に配設された複数段の回転翼4(4A、4B、4C・・・)と、複数段の回転翼4の外方に設けられ、吸気口5および排気口6を有する筒状の外ハウジング7と、を備えている。そして、内ハウジングの外周面とシャフトの内周面との間の隙間Gには、その隙間Gへのガスの流入を阻害するシール機構8が設けられている。
【0062】
《内ハウジング1の詳細》
第1の真空ポンプP1では、内ハウジング1の内側が中空部であって、この中空部に処理ステージ200が配置される構成を採用している。また、処理ステージ200の上端外周にはフランジ部201が形成されており、このフランジ部201が内ハウジング1の上端面に当接し、かつ、図示しないボルト等の締結手段によって当該フランジ201と内ハウジング1とが締結されることにより、内ハウジング1は処理ステージ200を位置決め固定及び支持する構造になっている。また、この内ハウジング1の下部には第1の真空ポンプP1全体を支持するベース部9が一体に設けられている。
【0063】
内ハウジング1の上端面と処理ステージ200上端外周のフランジ部201との間にはシール部10が設けられており、このシール部10により内ハウジング1の内外は連通することなく遮断されている。内ハウジング9の外側(具体的には、内ハウジング1と外ハウジング7の間の空間)は、吸気口5を介してチャンバ300に通じる真空領域の空間として構成されており、また、内ハウジング1の内側は、大気圧領域の空間として構成されている。処理ステージ200全体のうち、その上面付近は真空領域の空間(内ハウジング1の外側)に位置し、それ以外の部分は大気圧領域の空間(内ハウジング1の内側)に位置するように構成してある。
【0064】
《ステータ2の詳細》
ステータ2には、磁気軸受やモータ等の各種電装部品(例えば、前述の電磁石やセンサなど)が取付けられている。また、このステータ2は、その下部に設けた連結部11を介してベース部9に連結固定され、ベース部9上に立設された状態になっている。
【0065】
よって、第1の真空ポンプP1では、連結部11に外ハウジング7の下端部が連結固定され、かつ、連結部11とベース部9とが連結固定されることにより、内ハウジング1、ステータ2、外ハウジング7が一体化している。
【0066】
《シャフト3、磁気軸受MB、モータMTの詳細》
シャフト3は、磁気軸受MBで支持されることにより回転自在に配設され、かつ、モータMTによりその軸心周りに回転駆動される。なお、この磁気軸受MBの具体的な構成、例えば5軸制御の磁気軸受によりシャフト3を空中に浮上支持かつ位置制御すること等は、先に説明した第2の真空ポンプP2の磁気軸受と同様であるため、その詳細説明は省略する。また、このモータMTの具体的な構成、例えば、シャフト3を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えていること等は、先に説明した第2の真空ポンプP2のモータと同様であるため、その詳細説明は省略する。また、図1では、磁気軸受MBやモータMTの構成部品を一部省略している。
【0067】
シャフト3と内ハウジング1との間の隙間Gは、シャフト3を回転可能とするために必要な隙間(以下「シャフト径方向隙間G」という)であり、このシャフト径方向隙間Gは磁気軸受によって常時所定の値となるように制御される。
【0068】
《回転翼4(4A、4B、4C・・・)などの詳細》
第1の真空ポンプP1では、前述の通り、シャフト3の外周面に複数段の回転翼4が配設されているが、通常、この複数段の回転翼4と軸方向で交互に配置される複数段の固定翼(第2の真空ポンプP2で説明した固定翼123を参照)は備えていない。つまり、第1の真空ポンプP1における回転翼4(4A、4B、4C・・・)の周囲は固定翼が存在しない固定翼不存在部12(12A、12B、12C・・・)として設定されている。しかし、かかる複数段の固定翼(図6中の2点鎖線で表示した仮想部材を参照)を備える構成も採用し得る。
【0069】
通常、第2の真空ポンプP2にあるような複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)がない構造である、固定翼不存在部12(12A、12B、12C・・・)を採用し得る理由としては、第1の真空ポンプP1においては、チャンバ300内における圧力の均一性を優先しているため、必ずしも高い圧縮比を求める必要がないことがある。また、ここでの圧縮比を高くする為には、後述するシャフト径方向隙間Gにおけるシール機構8でのシール効果を高いものとする必要があるが、逆に、ここでの圧縮比を容易に達成できるシール能力から設定することで、シール機構を簡素化することも可能となる利点もある。
【0070】
《外ハウジング7の詳細》
外ハウジング7の上端は前述の吸気口5として開口し、この吸気口5がチャンバ300の底に連通するように、第1の真空ポンプP1とチャンバ300は連結されている。
【0071】
外ハウジング7の下端には前述の排気口6が設けられており、この排気口6が第2の真空ポンプP2の吸気口101に連通するように、第1の真空ポンプP1と第2の真空ポンプP2は連結されている。
【0072】
《チャンバ300の詳細》
チャンバ300にはゲートバルブ装置301が設けられている。このゲートバルブ装置301の具体的な構造例として、図1の真空排気システムESでは、かかるゲートバルブ装置301は、(1)チャンバ300内にバルブ本体301Aが配置される構造、(2)チャンバ300の天井面からバルブ本体301Aに向って延びた駆動ロッド301Bの昇降動作によりバルブ本体301Aを上下方向に移動可能とする構造、(3)処理ステージ200の上端部に対応した形状の開口部301Cがバルブ本体301Aに設けられ、バルブ本体301Aの下降移動により処理ステージ200の上端部が当該開口部301Cに嵌合する構造、(4)その嵌合時に処理ステージ200外周の段差面と外ハウジング7の上端面の内側付近とがシール面Sとして機能し、該シール面Sにバルブ本体301Aの下面が当接することで、吸気口5を介するチャンバ300と第1の真空ポンプP1との連通が遮断される構造を採用している。
【0073】
《シール機構の概要》
シール機構8は、その形状ないしは構造の相違によって、シャフト径方向隙間Gの上流側では図6中矢印U1で示したように該隙間Gへのプロセスガスの流入を阻害する手段として機能し、シャフト径方向隙間Gの下流側では同図中矢印U2で示したように該隙間Gへのパージガスの流入を阻害する手段として機能する。
【0074】
《シール機構の実施例(その1)》
シール機構8の前記機能(隙間Gへの流入を阻害する機能)を具体的に実現するための一実施例として、第1の真空ポンプP1では、かかるシール機構8は、シャフト3の内周面の少なくとも一部に複数のブレード部13(13A、13B、13C・・・13Z)を有するものとし、かつ、その複数のブレード部13の傾斜方向がシャフト径方向隙間Gの上流側と下流側で異なる構成を採用した。
【0075】
具体的には、シャフト径方向隙間Gの上流側に位置するブレード部13(13A、13B等)は、吸気口5側から該隙間Gに流入しようとするガス分子を跳ね返し可能な方向(図6中のU字形矢印U1を参照)に傾斜するように構成している。この一方、シャフト径方向隙間Gの下流側に位置するブレード部13(13Y、13Z等)については、排気口6側から該隙間Gに流入しようとするガス分子を跳ね返し可能な方向(図6中のU字形矢印U2を参照)に傾斜するように構成してある。
【0076】
ブレード部の進行方向をブレード部の傾斜基準(0°)とした場合、シャフト径方向隙間Gの上流側に位置するブレード部13(13A、13B等)の傾斜角度θ1は、必要に応じて適宜0°<θ1<90°の範囲内で設定することができる。また、シャフト径方向隙間Gの下流側に位置するブレード部13(13Y、13Z等)の傾斜角度θ2は、必要に応じて適宜-90°<θ2<0°の範囲内で設定することができる。
【0077】
また、図1に示したように、シャフト径方向隙間Gの上流側に位置するブレード部13が複数の場合、各ブレード部13(13A、13B等)の傾斜角度θ1は、0°<θ1<90°の範囲内であるなら必ずしも皆同一である必要はなく、異なっていてもよい。この点は、シャフト径方向隙間Gの下流側に位置するブレード部13(13Y、13Z等)が複数の場合も同様である。
【0078】
第1の真空ポンプP1では、ブレード部13(13A、13B、13C)は、その外周端が、複数の段積みされたスペーサ(符号省略)の間に嵌挿された状態で支持される構造を採用したが、これ以外の別の構造でブレード部13は支持されてもよい。
【0079】
第1の真空ポンプP1の運転開始ボタン(図示省略)を押下すると、シャフト3がその軸心周りに回転し、シャフト3と一体に、回転翼4(4A、4B、4C…)およびシール機構8のブレード部(13A、13B、13C・・・)が回転する。そして、回転翼4の回転作用により、チャンバ300内のプロセスガス分子は吸気口5から排気口6に向って移行するように排気される。
【0080】
この際、プロセスガス分子の一部は、吸気口5からシャフト径方向隙間Gの上流側に流入しようとするが、そのような流入はシール機構8によって阻止される。シャフト径方向隙間Gの上流側では回転するブレード部13(13A、13B等)によってガス分子を跳ね返す作用が生じているからである。
【0081】
第1の真空ポンプP1では、例えば、シャフト3やステータ2などの内部部品の冷却や腐食性ガスに対する保護を目的として、連結部11に設けられているパージガス供給口14から第1の真空ポンプP1内に向けて窒素ガス等のパージガスが常時供給される場合がある。
【0082】
前記のように供給されたパージガスは、保護ベアリング15の内外輪間、ステータ2とシャフト3の隙間、そしてステータ2と回転翼4(4A、4B、4C…)の基部との隙間などをその順に巡ってパージガス供給口14の方向に戻ってくる。
【0083】
その際、一部のパージガスはシャフト径方向隙間Gの下流側に流入しようとするが、その流入はシール機構8によって阻止される。シャフト径方向隙間Gの下流側では回転するブレード部13(13Z、13Y等)によってガス分子を跳ね返す作用が生じているからである。
【0084】
《シール機構の実施例(その2)》
シール機構8の前記機能(隙間Gへの流入を阻害する機能)を具体的に実現するための他の実施例として、図示は省略するが、かかるシール機構8は、内ハウジング1の外周面とシャフト3の内周面のいずれか一方の少なくとも一部にネジ溝部を有し、かつ、そのネジ溝部の螺旋の巻き方向がシャフト径方向隙間Gの上流側と下流側で異なるという構成を採用してもよい。
【0085】
この場合、シャフト径方向隙間Gの上流側では、ネジ溝部の形状を例えば右ネジのようなネジ溝形状とする一方、シャフト径方向隙間Gの下流側では、ネジ溝部の形状を例えば左ネジのようなネジ溝形状とする構成が考えられるが、これに限定されることはない。
【0086】
要するに、シャフト径方向隙間Gの上流側に位置するネジ溝部は、吸気口5側から該隙間Gに流入しようとするガス分子を跳ね返し可能なネジ溝形状とし、シャフト径方向隙間Gの下流側に位置するネジ溝部は、排気口6側から当該隙間Gに流入しようとするガス分子を跳ね返し可能なネジ溝形状とすればよい。
【0087】
以上説明した実施形態の第1の真空ポンプP1にあっては、前述の通り、内ハウジング1も外ハウジング7も筒状の形態であることにより真空ポンプP1全体が中空構造になっていて、その中空部にチャンバ300内の処理ステージ200が配置される構成を採用しており、このような処理ステージ200の配置構成によって、従来の処理ステージの取付け部のようにガスの流れを阻害する要因がなくなり、処理ステージ200の周囲でガスの流れ方が一様になる点で、チャンバ300内の圧力の均一化を図るのにも好適である。
【0088】
また、同真空ポンプP1によると、その具体的な構成として、内ハウジング1の外周面とシャフト3の内周面との間の径方向隙間G(隙間G)に、その径方向隙間Gへのガスの流入を阻害するシール機構8が設けられる構成を採用した。このため、径方向隙間Gを介する排気側と吸気側の連通はシール機構8によって遮断されるから、隙間Gを通ってのガスの逆流を防止できる。
【0089】
さらに、本発明にあっては、前述の隙間への腐食性ガスの流入によってシャフトの支持系(例えば、磁気受けの電磁石やセンサ)が腐食しダメージを受けるという問題も生じ難く、ポンプ内蔵電装部品の故障によるトラブルが少なく、信頼性の高い真空ポンプとこれを用いた排気システムも提供し得る。
【0090】
また、さらに、本発明にあっては、第2の真空ポンプP2を、第1の真空ポンプP1の中心軸と同軸上で、かつ、第1の真空ポンプP1の下流側に配置したことで、第1の真空ポンプP1単独では達成しがたい、真空排気システムにおいて求められる圧縮比等の排気性能を達成する構成となっているので、圧力の均一化と排気性能の両面を満足する信頼性の高い排気システムを提供し得る。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 内ハウジング
2 ステータ
3 シャフト
4A、4B、4C 回転翼
5 吸気口
6 排気口
7 外ハウジング
8 シール機構
9 ベース部
10 シール部
11 連結部
12 固定翼不存在部
13 ブレード部
14 パージガス供給口
15 保護ベアリング
200 処理ステージ
300 チャンバ
301 ゲートバルブ装置
301A バルブ本体
G 隙間(シャフト径方向隙間)
MT モータ
MB 磁気軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7