(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062820
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】エアジェット織機の緯入れ装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
D03D47/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170962
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】垣内 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 藤雄
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB03
4L050CB13
4L050CB82
4L050CB84
(57)【要約】
【課題】緯糸飛走経路の開口部側へのエアの吹き出しを抑制し、安定して緯糸を緯糸飛走経路に緯入れできるエアジェット織機の緯入れ装置を提供する。
【解決手段】エアジェット織機1の緯入れノズル20は、メインノズル22と、メインノズル22に並列に設けられ、緯糸飛走経路41の入口41aに向けてエアを噴射する誘引ノズル60とを備える。誘引ノズル60がエアの噴射を開始する誘引ノズルエア噴射開始タイミングは、メインノズル22がエアの噴射を開始するメインノズルエア噴射開始タイミングより前であるため、緯糸飛走経路41の開口部側へのエアの吹き出しが抑制され、安定して緯糸11を緯糸飛走経路41に緯入れすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸飛走経路を有する変形筬と、
前記緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射することによって緯糸を前記緯糸飛走経路に射出するメインノズルと、
前記メインノズルに並列に設けられ、前記緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射する誘引ノズルと
を備え、
前記誘引ノズルがエアの噴射を開始するタイミングは、前記メインノズルがエアの噴射を開始するタイミングより前であるエアジェット織機の緯入れ装置。
【請求項2】
前記誘引ノズルの出口の直径は、前記メインノズルの出口の直径よりも小さい請求項1に記載のエアジェット織機の緯入れ装置。
【請求項3】
前記誘引ノズルは、前記メインノズルに対して前記変形筬の前側に設けられるとともに、エアの噴射方向が前記緯糸飛走経路の長手方向に対して鋭角をなす請求項1又は2に記載のエアジェット織機の緯入れ装置。
【請求項4】
前記誘引ノズルの噴射するエアの圧力値は、前記メインノズルの噴射するエアの圧力値以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のエアジェット織機の緯入れ装置。
【請求項5】
前記メインノズルが噴射するエアを貯留するメインエアタンクと、前記メインエアタンクとは別に設けられ前記誘引ノズルが噴射するエアを貯留する誘引ノズルエアタンクとを有する請求項1~4のいずれか一項に記載のエアジェット織機の緯入れ装置。
【請求項6】
前記誘引ノズルがエアの噴射を終了するタイミングは、前記メインノズルがエアの噴射を終了するタイミングより前である請求項1~5のいずれか一項に記載のエアジェット織機の緯入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機の緯入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緯入れノズルから圧縮空気(エア)を噴射することにより緯糸を射出するエアジェット織機の緯入れ装置としては、例えば特許文献1に記載されているようなエアジェット織機の緯入れ装置が知られている。この特許文献1に記載されている緯入れ装置では、変形筬の緯糸飛走経路の開口部側へのエアの吹き出しに起因する緯糸飛走経路からの緯糸の飛び出しを防止するための構成を有している。この構成では、緯糸飛走経路を形成する筬羽のガイド孔壁面の、メインノズル寄り区間に配置されたガイド孔壁面の傾斜角が、メインノズルと反対寄りの区間に配置されたガイド孔壁面の傾斜角よりも小さくなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアジェット織機の緯入れ装置のような傾斜角を有する筬羽のガイド孔壁面を形成しても、緯糸飛走経路の開口部側へのエアの吹き出しを完全に防止することができない。そのため、特にフィラメントのような剛性の高い緯糸を用いる場合には緯糸飛走経路からの緯糸の飛び出しを防止できない場合があることが実験により明らかとなっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、緯糸飛走経路の開口部側へのエアの吹き出しを抑制し、安定して緯糸を緯糸飛走経路に緯入れできるエアジェット織機の緯入れ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、緯糸飛走経路を有する変形筬と、緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射することによって緯糸を緯糸飛走経路に射出するメインノズルと、メインノズルに並列に設けられ、緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射する誘引ノズルとを備える。そして誘引ノズルがエアの噴射を開始するタイミングは、メインノズルがエアの噴射を開始するタイミングより前である。
【0007】
また、誘引ノズルの出口の直径は、メインノズルの出口の直径よりも小さくてもよい。
また、誘引ノズルは、メインノズルに対してエアジェット織機の前側に設けられるとともに、エアの噴射方向が緯糸飛走経路の長手方向に対して鋭角をなしてもよい。
また、誘引ノズルの噴射するエアの圧力値は、メインノズルの噴射するエアの圧力値以上であってもよい。
また、メインノズルの噴射するエアを貯留するメインエアタンクと、メインエアタンクとは別に設けられ誘引ノズルが噴射するエアを貯留する誘引ノズルエアタンクとを有してもよい。
また、誘引ノズルがエアの噴射を終了するタイミングは、メインノズルがエアの噴射を終了するタイミングより前であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアジェット織機の緯入れ装置は、メインノズルに並列に設けられ緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射する誘引ノズルを備え、そして誘引ノズルがエアの噴射を開始するタイミングは、メインノズルがエアの噴射を開始するタイミングより前であるため、緯糸飛走経路の開口部側へのエアの吹き出しを抑制し、安定して緯糸を緯糸飛走経路に緯入れすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1のエアジェット織機の概略図である。
【
図2】
図1に示すメインノズル及び誘引ノズルの概略図である。
【
図3】
図2に示す第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の平面図である。
【
図4】
図3に示す第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図5】
図2に示すメインノズル及び誘引ノズルからのエア噴射のタイミングチャートである。
【
図6】従来のエアジェット織機の緯糸飛走経路のエアの流速分布の概略図である。
【
図7】実施の形態1のエアジェット織機の緯糸飛走経路のエアの流速分布の概略図である。
【
図8】緯糸飛走経路の長手方向と誘引ノズルのエア噴射方向とがなす角度と、緯入れ時の緯糸飛び出し頻度と、RHフィーラへの緯糸到達時間のばらつきとの関係を示すグラフである。
【
図9】実施の形態2の第1の実施例の第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図10】実施の形態2の第2の実施例の第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図11】実施の形態2の第3の実施例の第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図12】実施の形態3に係るメインノズル及び誘引ノズルの概略図である。
【
図13】
図12に示す第1~第6メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図14】実施の形態4の第1の実施例の第1~第6メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図15】実施の形態4の第2の実施例の第1~第6メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図16】実施の形態4の第3の実施例の第1~第6メインノズル加速管及び誘引ノズル加速管の側面概略図である。
【
図17】実施の形態5に係るメインノズル及び誘引ノズルの平面図である。
【
図18】実施の形態6に係る誘引ノズルの平面図である。
【
図19】
図18に示す第1メインノズル加速管、第2メインノズル加速管、第1誘引ノズル出口及び第2誘引ノズル出口の側面概略図である。
【
図20】実施の形態7に係るエアジェット織機の誘引ノズルの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態1のエアジェット織機の概略図である。エアジェット織機1には、緯糸11を供給する給糸装置10が設けられている。緯糸11は、図示しない巻き付けアームの回転により引き出され、貯留ドラム12に巻き付けられて貯留される。貯留ドラム12の近傍には、緯糸11を貯留ドラム12から解除し、又は緯糸11を係止するための緯糸係止ピン13と、緯糸11が貯留ドラム12から解除されたことを検出するためのバルーンセンサ14とが設けられている。給糸装置10と、貯留ドラム12と、緯糸係止ピン13と、バルーンセンサ14とは、エアジェット織機1の図示しないフレームに固定されている。また、緯糸係止ピン13とバルーンセンサ14とは、エアジェット織機1の全体の動作を制御する主制御装置50に接続されている。主制御装置50は、緯糸係止ピン13を制御し緯糸11を解除状態とするか又は係止状態とする。また、バルーンセンサ14の検出結果は、主制御装置50に入力される。
【0011】
また、エアジェット織機1には、緯入れノズル20が設けられている。緯入れノズル20は、後述する緯入れ経路、すなわち緯糸飛走経路41の入口41aに向けて圧縮空気(エア)を噴射することにより貯留ドラム12の緯糸11を引き出すタンデムノズル21と、エアを噴射することにより緯糸11を出口から緯糸飛走経路41へ送出し飛走させるためのメインノズル22とを有している。さらに、緯入れノズル20は、メインノズル22に並列に設けられた誘引ノズル60を有している。タンデムノズル21には、緯糸11の飛走を制動するためのブレーキ23が設けられている。ブレーキ23は、機械式ブレーキ又はエア式ブレーキ等の公知のブレーキ装置である。タンデムノズル21と、ブレーキ23とは、エアジェット織機1の図示しないフレームに固定されている。また、ブレーキ23は主制御装置50に接続されており、主制御装置50により制御される。なお、緯入れノズル20は、緯入れ装置を構成している。
【0012】
タンデムノズル21は、ホース24を介してタンデムバルブ26に接続されている。メインノズル22は、ホース25を介してメインバルブ27に接続されている。タンデムバルブ26及びメインバルブ27は、ホース28を介してメインエアタンク29に接続されている。メインエアタンク29には、エアジェット織機1が設けられている製織工場の図示しないエア供給系統から供給されたエアが貯留される。メインエアタンク29に貯留されたエアは、タンデムノズル21及びメインノズル22から噴射される。また、タンデムバルブ26及びメインバルブ27は、主制御装置50に接続されて制御されている。なお、メインエアタンク29は、緯入れ装置を構成している。
【0013】
細長形状の誘引ノズル60は、メインノズル22から送出される緯糸11をエアの噴射により緯糸飛走経路41へ誘引する。なお、誘引ノズル60は、メインノズル22及びタンデムノズル21とは異なり、内部を緯糸11が通過しない。また、誘引ノズル60は、ホース61を介して誘引ノズルバルブ62に接続されている。誘引ノズルバルブ62は、ホース69を介して誘引ノズルエアタンク63に接続されている。誘引ノズルエアタンク63には、エアジェット織機1が設けられている製織工場のエア供給系統から供給されたエアが貯留される。誘引ノズルエアタンク63に貯留されたエアは、誘引ノズル60から噴射される。また、誘引ノズルバルブ62は主制御装置50に接続されて制御されている。なお、誘引ノズルエアタンク63は、緯入れ装置を構成している。
【0014】
メインノズル22と、誘引ノズル60と、変形筬40と、サブノズル35とは、後述する図示しないスレイ上に設けられており、エアジェット織機1の前後方向に往復揺動される。変形筬40は、緯糸11が飛走する緯糸飛走経路41を有している。緯糸飛走経路41は、変形筬40の長手方向の全体に渡って設けられている。すなわち、緯糸飛走経路41は、
図1における変形筬40の左端の上流側から右端の下流側に渡って設けられている。サブノズル35は、緯糸飛走経路41に沿って複数設けられており、エアを噴射することで緯糸11を緯糸飛走経路41に沿ってメインノズル22の側、すなわち左端の上流側から搬送する。すなわち緯糸飛走経路41は、緯糸11の搬送経路である。また、サブノズル35は、ホース34を介してサブバルブ33に接続されている。サブバルブ33は、それぞれサブエアタンク32に接続されている。サブエアタンク32には、エアジェット織機1が設けられている製織工場のエア供給系統から供給されたエアが貯留される。サブエアタンク32に貯留されたエアは、サブノズル35から噴射される。また、サブバルブ33は、それぞれ主制御装置50に接続されており、主制御装置50によりサブバルブ33の開閉制御が行われる。
【0015】
変形筬40の右端側には、緯糸の飛走状態を検出するRHフィーラ36が設けられている。RHフィーラ36は、主制御装置50に接続されている。主制御装置50は、ファンクションパネル51に接続されている。ファンクションパネル51は、エアジェット織機1の状態を表示し、またユーザがエアジェット織機1を操作するためのタッチパネルである。
【0016】
図2は、メインノズル22及び誘引ノズル60の概略図である。メインノズル22は、2色の緯糸を送出する2色メインノズルであり、メインノズル基部22aと、緯糸の色に対応する第1メインノズル加速管70と第2メインノズル加速管71とを有している。第1メインノズル加速管70と第2メインノズル加速管71は、メインノズル基部22aに設けられている。誘引ノズル60は、メインノズル基部22aに設けられており、第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71に並列に延びる細長形状の誘引ノズル加速管64を有している。メインノズル基部22aの側面に形成されたメインノズル供給ポート80は、ホース25(
図1参照)を介してメインバルブ27に接続されており、メインノズル基部22aの側面に形成された誘引ノズル供給ポート65は、ホース61(
図1参照)を介して誘引ノズルバルブ62に接続されている。なお、
図2においては、説明の便宜のために、ホース25及びホース61の記載を省略している。
【0017】
メインノズル供給ポート80からはメインノズル22にエアが供給され、誘引ノズル供給ポート65からは誘引ノズル60にエアが供給される。メインノズル基部22aは、メインノズル支持部材82を介してスレイ42に取り付けられている。また、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64は、加速管支持部材81に支持されている。加速管支持部材81は、メインノズル支持部材82に取り付けられている。
【0018】
図3は、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の出口の平面図である。第1メインノズル加速管70は、変形筬40の緯糸飛走経路41の長手方向と略同じ方向に配置されている。第2メインノズル加速管71は、第1メインノズル加速管70に対して変形筬40の前側(Y方向)に設けられており、緯糸飛走経路41に近い側で第1メインノズル加速管70に接触して、第1メインノズル加速管70と鋭角をなすように配置されている。また、誘引ノズル加速管64(誘引ノズル60)は、第2メインノズル加速管71に対して、変形筬40の前側(Y方向)に設けられており、緯糸飛走経路41に近い側で第2メインノズル加速管71に接触している。なお、ここで変形筬40の前側とは、エアジェット織機1(
図1参照)において、緯糸飛走経路41の水平方向における前側であり、緯糸飛走経路41の開口部側(開放側)をいう。第1メインノズル加速管70(メインノズル22)と誘引ノズル加速管64(誘引ノズル60)とは、第1メインノズル加速管70の延びる方向すなわち緯糸飛走経路41の長手方向と誘引ノズル加速管64とが、鋭角である角度Aをなすように配置されている。なおこの角度Aは、5~25度の範囲であることが好ましい。角度Aは鈍角であってもよいが、噴流が合流する点がメインノズル22に近づき過ぎて誘引ノズル60の効果が低下してしまうため、鋭角であることがより好ましい。角度Aが鋭角である場合に5~25度の範囲外であってもよいが、
図8に示すように、緯糸飛出し頻度や緯糸到達時間のばらつきを抑制するためには、5~25度の範囲であることがより好ましい。
【0019】
図4は、変形筬40の側から、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の出口を見たときの側面概略図である。第1メインノズル加速管70に対して第2メインノズル加速管71は、緯糸飛走経路41の前側(Y方向)、すなわち緯糸飛走経路41の奥壁側よりも遠い側である外側に配置されている。誘引ノズル加速管64は、第2メインノズル加速管71の前側に配置されている。すなわち、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64は、緯糸飛走経路41の奥壁側すなわち内側から順に直線状に配置されている。
【0020】
再び
図3を参照すると、緯糸飛走経路41の長手方向と誘引ノズル加速管64とは、鋭角である角度Aをなすように配置されている。そのため、
図4に示す誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41aに向けて噴射される。
【0021】
また、誘引ノズル加速管64の出口(誘引ノズル60の出口)の直径φUは、第1メインノズル加速管70の出口(メインノズル22の出口)の直径φ1及び第2メインノズル加速管71の出口(メインノズル22の出口)の直径φ2よりも小さく形成されている。この誘引ノズル加速管64の出口の直径φUは、第1メインノズル加速管70の出口の直径φ1及び第2メインノズル加速管71の出口の直径φ2の14~50%であることが好ましい。また、誘引ノズル加速管64の出口の断面積は、第1メインノズル加速管70の出口の断面積と第2メインノズル加速管71の出口の断面積との和に対して約25%以下であることが好ましい。なお、誘引ノズル加速管64の出口(誘引ノズル60の出口)の直径φUは、第1メインノズル加速管70の出口(メインノズル22の出口)の直径φ1及び第2メインノズル加速管71の出口(メインノズル22の出口)の直径φ2と同じかそれよりも大きく形成されていてもよいが、小さく形成される方がより好ましい。
【0022】
次に、本実施の形態1に係るエアジェット織機の動作について説明する。
図1に示すようにエアジェット織機1において緯入れを行うときには、タンデムノズル21からエアを噴射することにより貯留ドラム12から緯糸11を引き出してメインノズル22に緯糸11を射出する。射出された緯糸11は、メインノズル22及び誘引ノズル60から緯糸飛走経路41の入口41aに向けてエアを噴射することで、変形筬40の緯糸飛走経路41に緯入れされる。タンデムノズル21からのエア噴射は、主制御装置50によりタンデムバルブ26を開閉制御することにより行われる。メインノズル22からのエア噴射は、主制御装置50により、メインバルブ27を開閉制御することにより行われる。誘引ノズル60からのエア噴射は、主制御装置50により、誘引ノズルバルブ62を開閉制御することにより行われる。
【0023】
変形筬40の緯糸飛走経路41に緯入れされた緯糸11は、メインノズル22及び誘引ノズル60による緯糸飛走経路41へのエア噴射と、サブノズル35からのエア噴射とにより搬送されて緯糸飛走経路41内を下流へ飛走する。サブノズル35からのエア噴射は、主制御装置50によりサブバルブ33を開閉制御することにより行われる。
【0024】
図5は、メインノズル22(
図2参照)及び誘引ノズル60からのエア噴射のタイミングチャートである。エアジェット織機1(
図1参照)の運転時における、図示しない織機主軸の回転角度、すなわちクランク角度が0度のときから次のクランク角度が0度のときまでの間において、メインノズル22は、メインノズルエア噴射開始タイミングM1からメインノズルエア噴射終了タイミングM2の間にエアを噴射し、誘引ノズル60は、誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1から誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2の間にエアを噴射する。誘引ノズル60の誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1は、メインノズルエア噴射開始タイミングM1より前である。すなわち、誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1から、所定の遅延時間T1経過後のメインノズルエア噴射開始タイミングM1に、メインノズル22からのエア噴射が開始される。誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2は、誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1から所定の噴射時間T2の経過後であり、メインノズルエア噴射終了タイミングM2より前である。
【0025】
本実施の形態1における誘引ノズル60の噴射時間T2は、使用する緯糸11の種類によって予め決められた時間である。なお、緯糸11の種類によっては、誘引ノズル60の誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2を任意の誘引ノズルエア噴射終了タイミングN3まで遅らせて、エアの噴射時間を噴射時間T2よりも長い任意の噴射時間T3としてもよい。誘引ノズルエア噴射終了タイミングN3は、メインノズルエア噴射終了タイミングM2より前である。また、このときの誘引ノズル60のエア噴射圧力値は、メインノズル22のエア噴射圧力値以上となるように設定されている。
【0026】
図6は、本実施の形態1の誘引ノズル60(
図1参照)を有さない従来のエアジェット織機の、緯糸飛走経路41内のエアの流速分布を緯糸飛走経路41の入口41a側から見たときの概略図である。このときのエアの流速分布の測定位置は、最もメインノズル22に近い第1サブノズル35aと第1サブノズル35aと隣り合う第2サブノズル35bの間の位置である。V1,V2及びV3は、エアの流速が等しい位置を接続して示す線であり、V1が最も流速が大きく、V2がV1の次に流速が大きく、V3が最も流速が小さい。この従来のエアジェット織機の変形筬40では、メインノズル22が噴射したエアが、噴射開始後の初期の段階から拡散、膨張する。そして、拡散、膨張したエアが緯糸飛走経路41の前側(外側)に溢れて吹き出すため、エアの流速V2及び流速V3の領域が緯糸飛走経路41の前側に位置している。すなわち、エアは緯糸飛走経路41の外側まで拡散、膨張している。
【0027】
そのため、従来の変形筬40では、特に緯糸11(
図1参照)として比較的剛性の高いスパン糸やフィラメント糸等を用いたときには、緯入れ時にこの緯糸飛走経路41の前側に吹き出すエアの流れに緯糸11が流されて緯糸飛走経路41の前側(外側)に緯糸11の先端が飛び出す場合があった。さらに従来の変形筬40では、上流から先端以降の緯糸11が飛走してくるために緯糸11の先端が緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)に再び戻ることによって、緯糸11が所定の距離を飛走するためにより長い時間を要する場合があった。これにより、緯糸11の先端の飛び出しの状況によっては、所定の時間内に緯糸飛走経路41の出口まで緯糸11が飛走することができず、緯糸11がRHフィーラ36に検出されないために、緯糸11の緯入れミスと判定される場合があった。
【0028】
図7は、本実施の形態1の誘引ノズル60(
図1参照)及びメインノズル22を有するエアジェット織機1の、緯糸飛走経路41内のエアの流速分布を緯糸飛走経路41の入口41a側から見たときの概略図である。このときのエアの流速分布の測定位置は、
図6と同じ位置である。この場合には、メインノズル22のメインノズルエア噴射開始タイミングM1(
図5参照)より前の誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1に、誘引ノズル60がメインノズル22よりも高い圧力値で最初にエアを噴射する。そのため、拡散の少ない比較的高速なエアの流れが緯糸飛走経路41内の入口41a側に形成される。この最初に形成された比較的高速なエアの流れが、次にメインノズル22から噴射されるエアの噴射開始後の初期の流れを緯糸飛走経路41内に誘引する。
【0029】
誘引ノズル60からのエア噴射により、メインノズル22から噴射されたエアが緯糸飛走経路41内に誘引されることによって、メインノズル22から噴射されたエアの拡散、膨張が抑制される。そのため、緯糸飛走経路41の前側(外側)へのエアの吹き出しが抑制されるため、エアの流速V2及び流速V3の領域が緯糸飛走経路41内に位置している。また、メインノズル22よりも早く誘引ノズル60から噴射される高速の噴流があるため、
図6におけるV1よりも高速の流れV0が存在する。これらにより、緯糸11として剛性の高いフィラメント糸やスパン糸等を用いる場合であっても緯入れを安定して行うことが可能となる。これにより、緯入れミスによりエアジェット織機1が稼働停止する頻度を低減して、エアジェット織機1の稼働率を向上させることができる。
【0030】
また、
図4に示す第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71として、出口の直径φ1及びφ2が大口径の加速管を採用すると、緯糸を飛走させる推進力は高くなるもののメインノズル22から噴射されたエアの拡散の度合いが大きくなる。そのため、そのような大口径の加速管は実用が困難であった。一方、本実施の形態1のように誘引ノズル60を設ける場合には、誘引ノズル60から噴射されたエアの流れにより、メインノズル22から噴射されるエアが緯糸飛走経路41内に誘引されて緯糸飛走経路41の前側(外側)へのエアの吹き出しが抑制される。そのため、出口の直径が大口径の加速管を採用しても安定して緯入れを行うことができる。これにより、出口の直径が大口径の加速管を採用することが可能となり、緯糸11(
図1参照)の推進力向上によりサブノズル35等の噴射圧の低圧化及び空気消費量の低減を図ることが可能となる。よって、エアジェット織機1の運用コストを低減することができる。
【0031】
図8は、緯糸飛走経路41の長手方向と誘引ノズル加速管64との角度A(
図3参照)と、緯入れ時に緯糸飛走経路41から緯糸11の飛び出しが発生した頻度である緯糸飛び出し頻度Fと、緯糸11の飛び出し等に起因するRHフィーラ36への緯糸到達時間のばらつきGとの関係を示すグラフである。グラフの横軸が誘引ノズル噴射角度Aを示し、グラフ左側の縦軸が緯糸飛び出し頻度Fを示し、グラフ右側の縦軸が緯糸到達時間のばらつきGを示している。実験の結果、グラフに範囲Eとして示している角度Aが約5~25度の範囲であれば、緯糸飛び出し頻度F及び緯糸到達時間のばらつきGを低い範囲に抑えることが可能であることが判明している。
【0032】
このように、実施の形態1に係るエアジェット織機1の緯入れノズル20は、緯糸飛走経路41を有する変形筬40と、緯糸飛走経路41の入口41aに向けてエアを噴射することによって緯糸11を緯糸飛走経路41に射出するメインノズル22と、メインノズル22に並列に設けられ、緯糸飛走経路41の入口41aに向けてエアを噴射する誘引ノズル60とを備えている。そして、誘引ノズル60がエアの噴射を開始する誘引ノズルエア噴射開始タイミングN1は、メインノズル22がエアの噴射を開始するメインノズルエア噴射開始タイミングM1より前であるため、緯糸飛走経路41の開口部側へのエアの吹き出しが抑制され、安定して緯糸11を緯糸飛走経路41に緯入れすることができる。
【0033】
また、誘引ノズル60の出口の直径φUは、メインノズル22の第1メインノズル加速管70の出口の直径φ1及び第2メインノズル加速管71の出口の直径φ2の14~50%であるため、誘引ノズル60から噴射されたエアがメインノズル22から噴射されたエアを、より効果的に緯糸飛走経路41内に誘引することができる。
【0034】
また、誘引ノズル60は、メインノズル22に対してエアジェット織機1の前側に設けられるとともに、エアの噴射方向が緯糸飛走経路41の長手方向に対して5~25度の角度Aであるため、誘引ノズル60から噴射されたエアがメインノズル22から噴射されたエアを、より効果的に緯糸飛走経路41内に誘引することができる。
【0035】
また、誘引ノズル60の噴射するエアの圧力値は、メインノズル22の噴射するエアの圧力値以上であるため、誘引ノズル60から噴射されたエアがメインノズル22から噴射されたエアを、より効果的に緯糸飛走経路41内に誘引することができる。
【0036】
また、メインノズル22の噴射するエアを貯留するメインエアタンク29と、メインエアタンク29とは別に設けられ誘引ノズル60が噴射するエアを貯留する誘引ノズルエアタンク63とを有するため、メインエアタンク29の影響を受けることなく別個に独立した誘引ノズルエアタンク63を介して誘引ノズル60から噴射されるエアの圧力が安定し、安定してメインノズル22から噴射されたエアを緯糸飛走経路41内に誘引することができる。
【0037】
また、誘引ノズル60がエアの噴射を終了する誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2は、メインノズル22がエアの噴射を終了するメインノズルエア噴射終了タイミングM2より前であるため、エアの消費量を抑制してエアジェット織機1の運用コストを低減することができる。
【0038】
なお、本実施の形態1では、誘引ノズル60の噴射するエアの圧力値は、メインノズル22の噴射するエアの圧力値以上であったが、誘引ノズル60の噴射するエアの圧力値がメインノズル22の噴射するエアの圧力値未満であってもよい。また、本実施の形態ではメインエアタンク29と誘引ノズルエアタンク63とを独立に設けていたが、メインエアタンク29が誘引ノズルエアタンク63を兼ねる構成であってもよい。しかしながら、誘引ノズル60から噴射するエアの圧力を安定させるためには、独立した誘引ノズルエアタンクを設けることが好ましい。
【0039】
また、本実施の形態1では、誘引ノズル60がエアの噴射を終了する誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2は、メインノズル22がエアの噴射を終了するメインノズルエア噴射終了タイミングM2より前であったが、制御を簡素化するために誘引ノズルエア噴射終了タイミングN2とメインノズルエア噴射終了タイミングM2とを同時としてもよい。
【0040】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。なお、以下の実施の形態において、実施の形態1の
図1~
図8の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態1に対して第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の配置を変更したものである。
【0041】
図9~
図11は、変形筬40の側から、実施の形態1とはそれぞれ異なる配置にされた第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の出口を見たときの側面概略図である。
図9に示す実施例では、第1メインノズル加速管70に対して誘引ノズル加速管64は、緯糸飛走経路41の前側(外側)に配置されている。また、誘引ノズル加速管64に対して第2メインノズル加速管71は、緯糸飛走経路41の前側に配置されている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0042】
図10に示す実施例では、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71の出口の径方向中心に対して鉛直方向上側に設けられている。また、誘引ノズル加速管64は、その出口の径方向中心が、第1メインノズル加速管70の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の前側且つ第2メインノズル加速管71の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の奥壁側に設けられている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは緯糸飛走経路41の奥壁側且つ鉛直方向下方、すなわち内側斜下方である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0043】
図11に示す実施例では、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71の出口の径方向中心に対して鉛直方向下側に設けられている。また、誘引ノズル加速管64は、その出口の径方向中心が、第1メインノズル加速管70の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の前側且つ第2メインノズル加速管71の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の奥壁側に設けられている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは緯糸飛走経路41の奥壁側且つ鉛直方向上方、すなわち内側斜上方である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0044】
このように、本実施の形態2に係る第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の配置であっても、実施の形態1と同様に、誘引ノズル60からのエア噴射により、メインノズル22から噴射されたエアが緯糸飛走経路41内に誘引され、緯糸11を安定して緯糸飛走経路41内に緯入れすることができる。
【0045】
なお、本実施の形態2で挙げた第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び誘引ノズル加速管64の配置は、実施例の例示であり、例示された配置以外の配置であってもよい。
【0046】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。本実施の形態3に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態1に対してメインノズルを6色の緯糸に対応したメインノズル加速管を有するメインノズルに変更したものである。
【0047】
図12は、メインノズル22及び誘引ノズル60の概略図である。メインノズル22は、6色の緯糸を送出する6色メインノズルであり、メインノズル基部22aと、それぞれがメインノズル基部22aに設けられた、緯糸の色に対応する第1メインノズル加速管70と、第2メインノズル加速管71と第3メインノズル加速管72と、第4メインノズル加速管73と、第5メインノズル加速管74と、第6メインノズル加速管75とを有している。また、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64は、加速管支持部材81に支持されている。誘引ノズル加速管64は、誘引ノズル加速管出口64aよりも誘引ノズル加速管入口部64bの直径が大きくなるように形成されている。
【0048】
図13は、変形筬40の側から、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64の出口を見たときの側面概略図である。第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74及び第6メインノズル加速管75は、上下2段に配置されている。上段には、緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)から順に第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71及び第3メインノズル加速管72が設けられている。下段には、緯糸飛走経路41の奥壁側から順に第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74及び第6メインノズル加速管75が設けられている。
【0049】
誘引ノズル加速管64は、第3メインノズル加速管72及び第6メインノズル加速管75に対して緯糸飛走経路41の前側に設けられている。また、誘引ノズル加速管64は、その出口の径方向中心が、第3メインノズル加速管72の出口の径方向中心の鉛直方向下側且つ第6メインノズル加速管75の出口の径方向中心の鉛直方向上側に設けられている。誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは、緯糸飛走経路41の奥壁側である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0050】
このように、メインノズル加速管の数を使用する緯糸の数に対応して6本とした場合であっても、実施の形態1と同様に、誘引ノズル60からのエア噴射により、メインノズル22から噴射されたエアが緯糸飛走経路41内に誘引され、緯糸11を安定して緯糸飛走経路41内に緯入れすることができる。また、誘引ノズル60の誘引ノズル加速管64は、出口よりも入口の直径が大きくなるように形成されているため、誘引ノズル加速管64におけるエアの圧力損失が低減され、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアの噴流速度が向上する。
【0051】
なお、本実施の形態3では、メインノズル加速管の数は6本であったがこれに限定されるものではなく、使用する緯糸の色数に対応する任意の数のメインノズル加速管を設けてもよい。
【0052】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。本実施の形態4に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態3に対して第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64の配置を変更したものである。なお、以下の実施の形態において、実施の形態3の
図12及び
図13の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。
【0053】
図14~
図16は、変形筬40の側から、実施の形態3とはそれぞれ異なる配置にされた第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64の出口を見たときの側面概略図である。
図14に示す実施例では、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が、第2メインノズル加速管71及び第5メインノズル加速管74の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の前側に配置され、且つ第3メインノズル加速管72及び第6メインノズル加速管75の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の奥壁側に配置されている。さらに、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が第2メインノズル加速管71及び第3メインノズル加速管72の出口の径方向中心に対して鉛直方向下側に配置され、且つ第5メインノズル加速管74及び第6メインノズル加速管75の出口の径方向中心に対して鉛直方向上側に配置されている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは、緯糸飛走経路41の奥壁側である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態3と同じである。
【0054】
図15に示す実施例では、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が第2メインノズル加速管71及び第3メインノズル加速管72の出口の径方向中心に対して鉛直方向上側に設けられている。また、誘引ノズル加速管64はその出口の径方向中心が、第2メインノズル加速管71の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の前側(外側)且つ第3メインノズル加速管72の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)に設けられている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは、緯糸飛走経路41の奥壁側且つ鉛直方向下方、すなわち内側斜下方である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0055】
図16に示す実施例では、誘引ノズル加速管64は、出口の径方向中心が第5メインノズル加速管74及び第6メインノズル加速管75の出口の径方向中心に対して鉛直方向下側に設けられている。また、誘引ノズル加速管64は、その出口の径方向中心が、第5メインノズル加速管74の出口の径方向中心に対して緯糸飛走経路41の前側且つ第6メインノズル加速管75の出口の径方向中心に対して奥壁側に設けられている。この実施例では、誘引ノズル加速管64から噴射されるエアは、緯糸飛走経路41の奥壁側且つ鉛直方向上方、すなわち内側斜上方である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0056】
このように、本実施の形態4に係る第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64の配置であっても、実施の形態3と同様に、誘引ノズル60からのエア噴射により、メインノズル22から噴射されたエアが緯糸飛走経路41内に誘引され、緯糸11を安定して緯糸飛走経路41内に緯入れすることができる。
【0057】
なお、本実施の形態4で挙げた第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第3メインノズル加速管72、第4メインノズル加速管73、第5メインノズル加速管74、第6メインノズル加速管75及び誘引ノズル加速管64の配置は、実施例の例示であり、例示された配置以外の配置であってもよい。
【0058】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。本実施の形態5に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態1に対して誘引ノズル加速管の出口の形状を変更したものである。
図17は、実施の形態5に係るメインノズル22及び誘引ノズル60の平面図である。誘引ノズル60の誘引ノズル加速管64の出口には、メインノズル22の第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71の側に屈曲している屈曲部64cが形成されている。
【0059】
第1メインノズル加速管70の延びる方向すなわち緯糸飛走経路41の長手方向と誘引ノズル加速管64の屈曲部64cとは、鋭角である角度Cをなすように形成されている。また、この屈曲部64cは、角度Cが緯糸飛走経路41の長手方向と誘引ノズル加速管64とがなす角度よりも大きな角度となるように形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0060】
このように、誘引ノズル加速管64の屈曲部64cが形成されていることで、誘引ノズル60の配置スペースの制約等の理由により緯糸飛走経路41の長手方向に対する誘引ノズル加速管64の角度をあまり大きくできない場合であっても、緯糸飛走経路41の長手方向に対する誘引ノズル加速管64から噴射されるエアの角度を大きくすることができる。
【0061】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。本実施の形態6に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態1に対して誘引ノズル加速管の出口を2個設けたものである。
図18は、本実施の形態6に係る誘引ノズルの平面図である。誘引ノズル66は、誘引ノズル加速管64を有している。誘引ノズル加速管64には、第1誘引ノズル出口64d及び第2誘引ノズル出口64eの合計2個の出口が設けられている。
【0062】
第1誘引ノズル出口64dには、屈曲部64cが形成されている。この屈曲部64cと第1メインノズル加速管70の延びる方向すなわち緯糸飛走経路41の長手方向とは、角度Cをなすように形成されている。第2誘引ノズル出口64eは、直線状に形成されており屈曲部を有していない。また、第2誘引ノズル出口64eは、第1メインノズル加速管70の延びる方向すなわち緯糸飛走経路41の長手方向と角度Aをなすように配置されている。
【0063】
図19は、変形筬40の側から、第1メインノズル加速管70、第2メインノズル加速管71、第1誘引ノズル出口64d及び第2誘引ノズル出口64eを見たときの側面概略図である。第1誘引ノズル出口64dは、第2メインノズル加速管71に対して緯糸飛走経路41の前側に配置されている。第2誘引ノズル出口64eは、第1誘引ノズル出口64dに対して緯糸飛走経路41の前側に配置されている。また、第1誘引ノズル出口64d及び第2誘引ノズル出口64eから噴射されるエアは、緯糸飛走経路41の奥壁側(内側)である方向Bに向きつつ緯糸飛走経路41の入口41a(
図1参照)に向けて噴射される。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0064】
このように、誘引ノズル66は、屈曲部64cを有する第1誘引ノズル出口64dと直線状の第2誘引ノズル出口64eとを備えるため、実施の形態1及び実施の形態5に係るエアジェット織機と同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、本実施の形態6では誘引ノズル加速管64には、第1誘引ノズル出口64d及び第2誘引ノズル出口64eの合計2個の出口が設けられていたが、合計3個以上の出口を設けてもよい。
【0066】
実施の形態7.
次に、本発明の実施の形態7に係るエアジェット織機の緯入れ装置について説明する。本実施の形態7に係るエアジェット織機の緯入れ装置は、実施の形態1に対して誘引ノズルの形状を変更したものである。
図20は、本実施の形態7に係るエアジェット織機の誘引ノズルの概略図である。誘引ノズル60aは、メインノズル22の第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71の近傍に設けられている。また誘引ノズル60aは、直方体状の本体部68と、本体部68の斜下方に延びる連結部材67と、本体部68から上方に延びる誘引ノズル先端部64hを有している。連結部材67は、エアジェット織機1(
図1参照)のスレイ42のT溝43に結合して、スレイ42と誘引ノズル60aとを連結している。
【0067】
誘引ノズル先端部64hは、第1メインノズル加速管70及び第2メインノズル加速管71の出口に近い側に設けられている。また、誘引ノズル先端部64hには、誘引ノズル出口孔64fが設けられている。誘引ノズル出口孔64fは、開口部の向きが第1メインノズル加速管70の延びる方向に対して鋭角の所定の角度をなすように形成されている。本体部68のメインノズル基部22aに近い側には、誘引ノズル供給ポート65が設けられている。誘引ノズル60aの内部には、誘引ノズル供給ポート65から誘引ノズル先端部64hまでを連絡するエア流路64gが形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。なお、誘引ノズル60aはサブノズル35と同じノズルで構成されていてもよい。
【0068】
次に、本実施の形態7に係るエアジェット織機の動作について説明する。誘引ノズル60がエアを噴射するときには、誘引ノズル供給ポート65に供給されたエアDがエア流路64gを流通して誘引ノズル出口孔64fから噴射される。
【0069】
このように、本実施の形態7では、実施の形態1の細長形状の誘引ノズル60(
図2参照)とは形状の異なる誘引ノズル60aを使用するため、誘引ノズル60よりも比較的短いエア流路64gを有する誘引ノズル60aの方が噴射するエアの圧力損失を低減することができるという利点を有する。また、本実施の形態7の誘引ノズル60aは、連結部材67をスレイ42のT溝43に結合することでエアジェット織機1に取り付けられているため、使用する緯糸の色数が変更された等の理由によりメインノズル加速管の本数又は配置が変更された場合に、図示しないスペーサをT溝43と連結部材67の間に設ける等の対応をとることにより簡単に誘引ノズル出口孔64fの位置を変更することが可能であり、エアジェット織機1の稼働前に発生するイニシャルコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0070】
11 緯糸、22 メインノズル、29 メインエアタンク、40 変形筬、41 緯糸飛走経路、41a 入口、60,60a,66 誘引ノズル、63 誘引ノズルエアタンク、A 角度、C 角度、M1 メインノズルエア噴射開始タイミング、M2 メインノズルエア噴射終了タイミング、N1 誘引ノズルエア噴射開始タイミング、N2 誘引ノズルエア噴射終了タイミング、φ1 出口の直径、φ2 出口の直径、φU 出口の直径。