(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062826
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】地下埋設物破砕撤去装置
(51)【国際特許分類】
E21B 11/00 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
E21B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170969
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】509053994
【氏名又は名称】東京テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】冨 光秀
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA05
2D129BB01
2D129DA12
2D129DC01
2D129DC13
2D129EB13
(57)【要約】
【課題】油圧装置のような複雑な機構を伴わずケリーバー16の操作だけで地中の障害物を破砕してからそのまま撤去する。
【解決手段】
ケリーバー16の下端には回転軸30が連結されている。自在回転接続部32は、回転軸30が回転するときは、その回転をリンクベース34に伝えない。スリーブ28の内壁と回転軸30の外壁にはキーが固定されている。ケリーバー16を正方向に回転させると、スリーブ側のキーと回転軸側のキーが噛み合って、ケーシングチューブ20をケリーバー16と一体に回転させ、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを阻止する。これで、一対のグラブ38が開放された状態を保持する。ケリーバー16を逆方向に回転させたとき、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを許容して、一対のグラブ38を閉じる状態に移行できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケリーバーを吊り下げて正方向または逆方向に回転させ、かつ、そのケリーバーをガイドレールに沿って上下方向に移動させる駆動部と、
ケリーバーの下端にコネクタを介して連結された回転軸と、
この回転軸を貫通させて、ケーシングチューブの上端に固定したスリーブと、
このケーシングチューブの内壁に設けられた軸受けに支軸により支持された一対のグラブと、
グラブの支軸から延びるアームの端部を上下方向に移動させて一対のグラブを開閉させるグラブリンクと、
一対のグラブに接続された一対のグラブリンクを支持するリンクベースと、
回転軸の下端にリンクベースを連結するためのもので、リンクベースを回転軸の上下方向の移動に追従させ、回転軸が回転するときは、その回転をリンクベースに伝えない自在回転接続部と、
スリーブの内壁に固定されたスリーブ側のキーと、回転軸の外壁に固定された回転軸側のキーとを備え、
これらのスリーブ側のキーと回転軸側のキーとは、
ケリーバーを正方向に回転させるときに、スリーブ側のキーと回転軸側のキーが噛み合って、ケーシングチューブをケリーバーと一体に回転させ、かつ、ケーシングチューブに対して回転軸とリンクベースが上方に移動するのを阻止して、一対のグラブが開放された状態を保持し、
ケリーバーを逆方向に回転させたとき、スリーブ側のキーと回転軸側のキーが回転軸の回転方向に離れて、ケーシングチューブに対して回転軸とリンクベースが上方に移動するのを許容して、一対のグラブを閉じる状態に移行させるように配置されていることを特徴とする地中障害物破砕撤去装置。
【請求項2】
スリーブ側のキーと回転軸側のキーとは、回転軸とスリーブの円筒状の壁に複数組、ほぼ等間隔で配置され、一方のキーがJ文字、またはL文字の形状をし、他方のキーが縦棒状をしており、両者が噛み合ったときには、一方が他方の側面と下面の両方に接するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の地中障害物破砕撤去装置。
【請求項3】
ケーシングチューブに対して回転軸とリンクベースが上方に移動するとき、スリーブと一体化したケーシングチューブの重量全部が、グラブの軸受に加わって、グラブを閉じる方向に力を及ぼすように、グラブリンクが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の地中障害物破砕撤去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル建設工事等の障害になる地下埋設物を破砕しながら撤去するための地下埋設物破砕撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの支持杭を打つ場合に障害になる、岩や既存の杭等の障害物を破砕して撤去するために、様々な装置が開発されている(特許文献1、特許文献2)。これらの地中の障害物を破砕して掴み上げるには大きな力が必要なため、油圧装置が使用されている。また、破砕後の破片を吊り上げるための専用の装置も開発されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許号5535894号公報
【特許文献1】特開2019-218827号公報
【特許文献1】特開2004-107984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記の特許文献で紹介されている油圧装置は、いずれも、ピストンや配管を備えた複雑な構造をしている。このような装置を地中に深く送り込んで操作すると、岩石の破片などによって損傷する事故が多くあり、 メンテナンスの手数と費用がかかるという問題があった。さらに、ビルの建設現場では、多数本の杭を打ち込むために、多数の箇所で地中障害物を除去する作業が要求される。この場合に、現場で装置が故障すると、その後の作業が著しく遅延するという問題もあった。破砕後の障害物は、特許文献3のように油圧装置を使用しないで吊り上げることができるが、破砕装置とは別に障害物を吊り上げるための装置を準備し機材を交換するという手数がかかる。本発明では、従来から地面の掘削に使用されている重機のケリーバーの操作のみによって、地中に埋設されている障害物を切り崩し、そのままケリーバーの操作のみで掴んで引き上げることができるという装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
ケリーバー16を吊り下げて正方向または逆方向に回転させ、かつ、そのケリーバー16をガイドレール19に沿って上下方向に移動させる駆動部18と、
ケリーバー16の下端にコネクタ26を介して連結された回転軸30と、
この回転軸30を貫通させて、ケーシングチューブ20の上端に固定したスリーブ28と、
このケーシングチューブ20の内壁に設けられた軸受け46に支軸44により支持された一対のグラブ38と、
グラブ38の支軸44から延びるアームの端部を上下方向に移動させて一対のグラブ38を開閉させるグラブリンク36と、
一対のグラブ38に接続された一対のグラブリンク36を支持するリンクベース34と、
回転軸30の下端にリンクベース34を連結するためのもので、リンクベース34を回転軸30の上下方向の移動に追従させ、回転軸30が回転するときは、その回転をリンクベース34に伝えない自在回転接続部32と、
スリーブ28の内壁に固定されたスリーブ側のキー40と、回転軸30の外壁に固定された回転軸側のキー42とを備え、
これらのスリーブ側のキー40と回転軸側のキー42とは、
ケリーバー16を正方向に回転させるときに、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42が噛み合って、ケーシングチューブ20をケリーバー16と一体に回転させ、かつ、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを阻止して、一対のグラブ38が開放された状態を保持し、
ケリーバー16を逆方向に回転させたとき、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42が回転軸30の回転方向に離れて、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを許容して、一対のグラブ38を閉じる状態に移行させるように配置されていることを特徴とする地中障害物破砕撤去装置。
【0006】
〈構成2〉
スリーブ側のキーと回転軸側のキーとは、回転軸とスリーブの円筒状の壁に複数組、ほぼ等間隔で配置され、一方のキーがJ文字、またはL文字の形状をし、他方のキーが縦棒状をしており、両者が噛み合ったときには、一方が他方の側面と下面の両方に接するように配置されていることを特徴とする構成1に記載の地中障害物破砕撤去装置。
【0007】
〈構成3〉
ケーシングチューブに対して回転軸とリンクベースが上方に移動するとき、スリーブと一体化したケーシングチューブの重量全部が、グラブの軸受に加わって、グラブを閉じる方向に力を及ぼすように、グラブリンクが配置されていることを特徴とする構成1または2に記載の地中障害物破砕撤去装置。
【発明の効果】
【0008】
ケリーバー16の下端には回転軸30が連結されている。グラブ38の支軸44から延びるアーム39の端部を上下方向に移動させると一対のグラブ38を開閉できる。自在回転接続部32は、回転軸30の下端にリンクベース34を連結しており、リンクベース34を回転軸30の上下方向の移動に追従させ、回転軸30が回転するときは、その回転をリンクベース34に伝えない。スリーブ28の内壁と回転軸30の外壁にはキーが固定されている。ケリーバー16を正方向に回転させると、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42が噛み合って、ケーシングチューブ20をケリーバー16と一体に回転させ、障害物の切り崩し等を可能にする。同時に、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを阻止して、一対のグラブ38が開放された状態を保持できる。ケリーバー16を逆方向に回転させたとき、スリーブ側のキーと回転軸側のキーがその回転方向に離れて、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方に移動するのを許容する。このとき、一対のグラブ38を閉じる状態に移行できる。即ち、障害物を切り崩し、そのままケリーバーの操作のみで掴んで引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の地下埋設物破砕装置を使用した工事の説明図である。
【
図2】
図2は本発明の装置のキーの機能を説明する主要部斜視図である。
【
図3】
図3は本発明の装置のグラブ周辺の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例0011】
図1を使用して、本発明の装置の概略を説明する。
図1の下部には、一点鎖線の円内に、ケーシングチューブ20の内部構造縦断面図を用いた、動作を説明するための2種類の図を(M)と(N)と表示して示した。重機12はガイドレール19を地上に垂直に立てて、掘削機構を支持している。ケリーバー16は、その下端に掘削機等を取り付けて、作業孔14を形成するための装置である。
【0012】
ガイドレール19に沿って上下方向に走行するように設けられた駆動部18は、ケリーバー16を吊り下げて正方向(矢印Aの方向)または逆方向(矢印Bの方向)に回転させ、かつ、ガイドレール19に沿って下方向(矢印Cの方向)や上方向(矢印Dの方向)に移動させることができる装置である。
【0013】
ケリーバー16の下端には、
図2の(a)に示すような機構が連結されている。即ち、
図2に示すように、この機構は、コネクタ26と回転軸30と自在回転接続部32とリンクベース34が上から順に連結された構造をしている。
図1に示したケーシングチューブ20の上端には
図2の(b)に示すようなスリーブ28が固定されている。スリーブ28は、上記の回転軸30を貫通させている。
【0014】
上記のコネクタ26は、ケリーバー16に回転軸30を着脱するためのものである。一方、
図3(b)に示すように、ケーシングチューブ20の内壁に設けられた軸受け46には、
図3(a)に示した支軸44により支持された一対のグラブ38が設けられている。このグラブ38は、半球を2分したような構造をしている。
【0015】
図3(a)に示したグラブ38の支軸44から延びるアーム39の端部には、グラブリンク36が連結されている。グラブリンク36を下方向(矢印Cの方向)や上方向(矢印Dの方向)に移動させると、一対のグラブ38を開閉させることができる。
【0016】
一対のグラブ38にそれぞれグラブリンク36が接続されており、
図2(a)に示すように、これらの一対のグラブリンク36をリンクベース34が支持している。
図3(a)と(b)に示すように、自在回転接続部32は、回転軸30の下端にリンクベース34を連結するためのもので、リンクベース34を回転軸30の上下方向の移動に追従させ、回転軸30が回転するときは、その回転をリンクベース34に伝えないように、例えば、フランジとこれを囲むボックス等により構成されている。
【0017】
再び
図2(a)に戻って、上記の回転軸30の外壁には、Jの文字のような形状の回転軸側のキー42が固定されている。また、
図2(c)に示すように、スリーブ28の内壁には、縦棒状のスリーブ側のキー40が設けられている。これらのキーの作用を
図4を用いて説明する。
【0018】
図4(c)に示すように、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42とは、ケリーバー16を正方向(矢印Aの方向)に回転させると、ちょうどJの文字で縦棒状のスリーブ側のキー40を下から支えるような位置関係で噛み合わされる。
【0019】
この状態では、ケリーバー16をさらに正方向(矢印Aの方向)に回転させると、
図1に示したケーシングチューブ20をケリーバー16と一体に正方向に回転させることができる。これで、ケーシングチューブ20を用いて切削ビット22による掘削をしたり、作業孔14の内部にある障害物24を破砕してケーシングチューブ20の内部に取り込むことができる。
【0020】
なお、こうしてケーシングチューブ20を回転させている間は、
図1(M)の円内に示すように、グラブ38を開放した状態にして、一対のグラブ38の間に障害物24が取り込まれるようにする。そして、
図4(c)に示すようにスリーブ側のキー40が回転軸側のキー42の矢印D方向の移動を阻止する。即ち、ケーシングチューブ20に対して
図2(a)に示した回転軸30やリンクベース34が上方に移動するのを阻止する。これで、グラブ38を開放した状態が維持される。
【0021】
次に、ケリーバー16を逆方向(矢印Bの方向)に回転させたときには、
図4(d)に示すように、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42が回転方向に離れる。これで、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方向(矢印Dの方向)に移動するのを許容される。
【0022】
ケリーバー16と回転軸30とが逆方向(矢印Bの方向)に回転しても自在回転接続部32がその回転力を下方に伝えないから、ケリーバー16の操作だけで、スリーブ側のキー40と回転軸側のキー42を噛み合わせた状態を簡単に解除できる。これで、ケーシングチューブ20に対して回転軸30とリンクベース34が上方向(矢印Dの方向)に移動するのを妨げるものが無くなる。
【0023】
その後、ケリーバー16を上方向(矢印Dの方向)に引き上げると、
図4(d)の状態から(e)の状態にまでキーの位置が移動する。ここで、リンクベース34がグラブリンク36を引き上げるから、グラブ38が軸受け46に支持された部分を中心に回転して、
図4(b)に示すように、一対のグラブ38を閉じる状態に移行させることができる。
【0024】
軸受け46を通じてケーシングチューブ20の重量全部がグラブ38を閉じる方向に作用するので、障害物24を強く掴んだまま、引き上げることができる。これは、リンクベース34がグラブリンク36を引き上げるときに一対のグラブ38を閉じる状態に移行させるように、グラブリンク36を配置することで実現する。
【0025】
グラブ38を閉じて障害物24を掴んだ後は、
図1に示したように、駆動部18がケリーバー16を引き上げて、ケーシングチューブ20を地上に取り出す。そして今度は
図4の(f)に示したように、矢印Cの方向にケリーバー16を操作してグラブ38を開放する。
【0026】
こうしてケーシングチューブ20から障害物24を地上に取り出した後は、ケリーバー16を矢印Aの方向に回転させて、
図4(c)に示すような状態に戻す。
これで再びケーシングチューブ20を矢印Aの方向に回転させd、切削ビット22を用いて地面を掘削したり障害物24を破砕したりすることができる。
【0027】
上記のケリーバー16は、ケーシングチューブ20を回転させて掘削するように力を伝達する役割を持つので、チェーンのような柔軟なものではなく、既存の装置のように丈夫な剛体がする。既存の掘削用の装置をそのまま利用できるという効果もある。
【0028】
上記のスリーブ側のキー40と回転軸側のキー42とは、回転軸30の回転によって噛み合わされたり切り離されたりする機能を発揮すればよく、その形状は任意である。掘削をするためにケリーバー16を回転させる方向を反対にすれば、回転軸側のキー42はL文字の形状にすることができる。また、上記の例に示したスリーブ側のキー40を回転軸30に取り付け、回転軸側のキー42をスリーブ28に取り付け、両者の縦方向の向きを反対にしても(J文字やL文字を倒立させる)同様に機能させることができる。
【0029】
即ち、スリーブ側のキーと回転軸側のキーとは、回転軸とスリーブの円筒状の壁に複数組、ほぼ等間隔で配置されるとよい。そして、一方のキーがJ文字、またはL文字の形状をし、他方のキーが縦棒状をしているとよい。この場合に、両者が噛み合ったときには、
図4で説明したように、一方が他方の側面と下面の両方に接するように配置されているとよい。
【0030】
この場合に、上記のように縦棒形とJ文字形の形状を採用し、スリーブ28の内面に複数のスリーブ側のキー40が配置され、その中間に位置するように回転軸側のキー42が配置されていると、ケーシングチューブ20を引き上げる時には
図4(e)か(f)のような状態になる。
【0031】
このときは、ケーシングチューブ20をどちらに回しても、回転軸側のキー42が必ず隣接するスリーブ側のキー40に衝突するので、ケリーバー16の回転力がケーシングチューブ20に伝わって、これを回転させることができる。
【0032】
グラブ38を開閉させるリンクも、リンクベース34を引き上げた時にグラブ38を閉じることができ、リンクベース34を押し下げたときに38が開くような機構であれば任意のものを採用することができる。