IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2022-62833紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法
<>
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図1
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図2
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図3
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図4
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図5
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図6
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図7
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図8
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図9
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図10
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図11
  • 特開-紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062833
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20220414BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
D21H27/00 G
B65D77/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170988
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【テーマコード(参考)】
3E067
4L055
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AB26
3E067AB79
3E067AB81
3E067AB96
3E067AC01
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC02A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA15
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
4L055AG59
4L055AJ02
4L055AJ07
4L055CH18
4L055CH20
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA09
4L055EA12
4L055EA15
4L055FA22
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
【課題】成型し易い紙シートを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る紙シートは、紙製の基材を含む紙シートであり、基材の坪量は30g/m以上700g/m以下であり、紙シートには、第1方向に延びる複数の第1仮想ラインに沿って凸状の複数の第1エンボス部が配置されており、第1方向に延びる複数の第2仮想ラインに沿って第1エンボス部と反対側に凸状の複数の第2エンボス部がで配置されており、複数の第1及び第2仮想ラインは、第1方向に直交する第2方向に沿って交互に配置されており、第1及び第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)とし、第1及び第2仮想ラインを第i仮想ラインとし、第iエンボス部の高さをa[mm]とし、複数の第iエンボスの周期をb[mm]としたとき、aおよびbが式(1)且つ式(2)を満たす。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の基材を含む紙シートであって、
前記基材の坪量は30g/m以上700g/m以下であり、
前記紙シートには、第1方向に延びる複数の第1仮想ラインそれぞれに沿って凸状の複数の第1エンボス部が一定の周期で配置されているとともに、前記第1方向に延びる複数の第2仮想ラインそれぞれに沿って前記第1エンボス部と反対側に凸状の複数の第2エンボス部が一定の周期で配置されており、
前記紙シートの厚さ方向からみて、前記複数の第1仮想ラインおよび前記複数の第2仮想ラインは、前記第1方向に直交する第2方向に沿って交互に配置されており、
前記第1エンボス部および前記第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)と表し、前記第1仮想ラインおよび前記第2仮想ラインを第i仮想ラインと表し、前記第iエンボス部の高さをa[mm]とし、前記第i仮想ラインに沿った複数の第iエンボスの周期をb[mm]としたとき、aおよびbが式(1)且つ式(2)を満たす、
紙シート。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2)
【請求項2】
前記aは、0.5mm以上3.5mm以下である、
請求項1に記載の紙シート。
【請求項3】
前記bは、1.5mm以上7mm以下である、
請求項1又は2に記載の紙シート。
【請求項4】
前記紙シートは、前記基材上にバリア層を有し、
前記紙シートの透気抵抗度は、2000秒以上である、
請求項1~3の何れか一項に記載の紙シート。
【請求項5】
前記aおよび前記bが、式(3)を満たす、
請求項1~4の何れか一項に記載の紙シート。
0.07≦a/b≦2.3・・・(3)
【請求項6】
前記第2方向からみて、前記第1方向に沿って前記第1エンボス部と前記第2エンボス部は交互に配置されている、
請求項1~5の何れか一項に記載の紙シート。
【請求項7】
坪量が30g/m以上700g/m以下である紙製の基材を含む平坦シートを準備する準備工程と、
前記平坦シートにエンボス加工を施すことによって紙シートを得る加工工程と、
を有し、
前記加工工程では、前記紙シートに、第1方向に延びる複数の第1仮想ラインそれぞれに沿って凸状の複数の第1エンボス部が一定の周期で配置されているとともに、前記第1方向に延びる複数の第2仮想ラインそれぞれに沿って前記第1エンボス部と反対側に凸状の複数の第2エンボス部が一定の周期で配置されており、前記紙シートの厚さ方向からみて、前記複数の第1仮想ラインおよび前記複数の第2仮想ラインは、前記第1方向に直交する第2方向に沿って交互に配置されており、前記第1エンボス部および前記第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)と表し、前記第1仮想ラインおよび前記第2仮想ラインを第i仮想ラインと表し、前記第iエンボス部の高さをa[mm]とし、前記第i仮想ラインに沿った複数の第iエンボスの周期をb[mm]としたとき、aおよびbが式(1)且つ式(2)を満たすように、前記平坦シートにエンボス加工が施される、
紙シートの製造方法。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2)
【請求項8】
前記平坦シートにおけるMD方向の破断伸びが2%以上12%以下であり、前記平坦シートにおけるTD方向の破断伸びが0.5%以上15%以下である、
請求項7に記載の紙シートの製造方法。
【請求項9】
前記平坦シートにおけるMD方向の破断強度は30N/15mm以上400N/15mm以下であり、前記平坦シートにおけるTD方向の破断強度は50N/15mm以上500N/15mm以下である、
請求項7または8に記載の紙シートの製造方法。
【請求項10】
フランジ部を有するトレイ型容器の製造方法であって、
請求項7~9の何れか一項に記載の紙シートの製造方法で紙シートを製造する紙シート製造工程と、
前記紙シートを、前記トレイ型容器に対応する金型を用いて成型する成型工程と、
を備える、
トレイ型容器の製造方法。
【請求項11】
前記紙シート製造工程の後に、前記紙シートを厚さ方向に押圧し、前記第1エンボス部の先端部と前記第2エンボス部の先端部を平坦化する平坦化工程を更に有する、
請求項10に記載のトレイ型容器の製造方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載のトレイ型容器の製造方法によって、フランジ部を有するトレイ型容器を製造する工程と、
前記トレイ型容器における開口を塞ぐように、前記トレイ型容器が有する前記フランジ部に蓋を接合する工程と、
を備える、
包装容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙シート、紙シートの製造方法、トレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品容器、あるいは各種工業製品の包装材料として、プラスチック製容器が用いられる。このようなプラスチック製容器として、たとえば、特許文献1に記載の婦サスチックトレイが知られている。近年は、環境問題等に鑑み、紙製の容器が採用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-276993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙製の容器は、たとえば紙シートを成型することによって製造される。しかしながら、紙シートは伸ばすことが難しいことから、プラスチック製容器の場合と同様に紙シートを成型しようとすると、紙シートが破れる。逆に、紙シートが破れないように、伸びを抑制しながら成型すると、十分な深さを確保できていない浅い容器となりやすい。一方、十分な深さを有する容器を紙シートで形成する場合には、絞り成型が採用される傾向にある。この場合、たとえば、容器のフランジ部にシワが生じる。よって、たとえば、容器を蓋で閉じる場合、容器内の密封性が低下する。そのため、成型し易い紙シートが求められていた。
【0005】
本発明の一側面の目的は、成型し易い紙シートおよび紙シートの製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、上記紙シートを用いたトレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る紙シートは、紙製の基材を含む紙シートであって、上記基材の坪量は30g/m以上700g/m以下であり、上記紙シートには、第1方向に延びる複数の第1仮想ラインそれぞれに沿って凸状の複数の第1エンボス部が一定の周期で配置されているとともに、上記第1方向に延びる複数の第2仮想ラインそれぞれに沿って上記第1エンボス部と反対側に凸状の複数の第2エンボス部が一定の周期で配置されており、上記紙シートの厚さ方向からみて、上記複数の第1仮想ラインおよび上記複数の第2仮想ラインは、上記第1方向に直交する第2方向に沿って交互に配置されており、上記第1エンボス部および上記第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)と表し、上記第1仮想ラインおよび上記第2仮想ラインを第i仮想ラインと表し、上記第iエンボス部の高さをa[mm]とし、上記第i仮想ラインに沿った複数の第iエンボスの周期をb[mm]としたとき、aおよびbが式(1)且つ式(2)を満たす。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2)
【0007】
上記紙シートは、式(1)および式(2)を満たした状態で、第1エンボス部および第2エンボス部が形成されている。これによって、紙シートの成型性が向上している。
【0008】
上記aは、0.5mm以上3.5mm以下であってもよい。この場合、紙シートの成型性がより向上する。
【0009】
上記bは、1.5mm以上7mm以下であってもよい。この場合、紙シートの成型性がより向上する。
【0010】
上記紙シートは、上記基材上にバリア層を有し、上記紙シートの透気抵抗度は、2000秒以上であってもよい。この場合、たとえば、紙シートを用いて容器を製造することによって、バリア機能を有する容器を製造できる。
【0011】
上記aおよび上記bが、式(3)を満たしてもよい。
0.07≦a/b≦2.3・・・(3)
この場合、紙シートの成型性が一層向上する。
【0012】
上記第2方向からみて、上記第1方向に沿って上記第1エンボス部と上記第2エンボス部は交互に配置されていてもよい。
【0013】
本発明の他の側面に係る紙シートの製造方法は、坪量が30g/m以上700g/m以下である紙製の基材を含む平坦シートを準備する準備工程と、上記平坦シートにエンボス加工を施すことによって紙シートを得る加工工程と、を有し、上記加工工程では、上記紙シートに、第1方向に延びる複数の第1仮想ラインそれぞれに沿って凸状の複数の第1エンボス部が一定の周期で配置されているとともに、上記第1方向に延びる複数の第2仮想ラインそれぞれに沿って上記第1エンボス部と反対側に凸状の複数の第2エンボス部が一定の周期で配置されており、上記紙シートの厚さ方向からみて、上記複数の第1仮想ラインおよび上記複数の第2仮想ラインは、上記第1方向に直交する第2方向に沿って交互に配置されており、上記第1エンボス部および上記第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)と表し、上記第1仮想ラインおよび上記第2仮想ラインを第i仮想ラインと表し、上記第iエンボス部の高さをa[mm]とし、上記第i仮想ラインに沿った複数の第iエンボスの周期をb[mm]としたとき、aおよびbが式(1)且つ式(2)を満たすように、上記平坦シートにエンボス加工が施される。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2)
【0014】
上記製造方法によって製造された紙シートには、式(1)および式(2)を満たした状態で、第1エンボス部および第2エンボス部が形成されている。そのため、紙シートの成型性が向上している。換言すれば、上記製造方法によって、成型し易い紙シートを製造できる。
【0015】
上記平坦シートにおけるMD方向の破断伸びが2%以上12%以下であり、上記平坦シートにおけるTD方向の破断伸びが0.5%以上15%以下であってもよい。この場合、紙シートに第1エンボス部および第2エンボス部を形成し易い。
【0016】
上記平坦シートにおけるMD方向の破断強度は30N/15mm以上400N/15mm以下であり、上記平坦シートにおけるTD方向の破断強度は50N/15mm以上500N/15mm以下であってもよい。この場合、紙シートに第1エンボス部および第2エンボス部を形成し易い。
【0017】
本発明の更に他の側面に係るトレイ型容器の製造方法は、フランジ部を有するトレイ型容器の製造方法であって、上記紙シートの製造方法で紙シートを製造する紙シート製造工程と、上記紙シートを、上記トレイ型容器に対応する金型を用いて成型する成型工程と、を備える。
【0018】
トレイ型容器の製造方法では、上記紙シートの製造方法で製造された紙シートを成型することでトレイ型容器を製造している。上記紙シートの製造方法で製造された紙シートは成型し易い。そのため、たとえば、フランジ部におけるシワを防止しながら、より深いトレイ型容器を製造可能である。
【0019】
上記紙シート製造工程の後に、上記紙シートを厚さ方向に押圧し、上記第1エンボス部の先端部と上記第2エンボス部の先端部を平坦化する平坦化工程を更に有してもよい。この場合、たとえば、平坦化工程の後における紙シートのハンドリング性が向上する。
【0020】
本発明の更に他の側面に係る包装容器の製造方法は、上記トレイ型容器の製造方法によって、フランジ部を有するトレイ型容器を製造する工程と、上記トレイ型容器における開口を塞ぐように、上記トレイ型容器が有する上記フランジ部に蓋を接合する工程と、を備える。
【0021】
包装容器の製造方法では、上記紙シートの製造方法で製造された紙シートを成型することでトレイ型容器を製造する。その後、トレイ型容器に蓋を接合することで包装容器が製造される。トレイ型容器は、上記紙シートの製造方法で製造された紙シートで製造されるため、トレイ型容器が有するフランジ部ではシワが生じにくい。そのため、蓋とフランジ部とをより密着できる。そのため、上記包装容器の製造方法では、密封性に優れた包装容器を製造できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一側面によれば、成型し易い紙シートおよび紙シートの製造方法を提供できる。本発明の他の側面によれば、上記紙シートを用いたトレイ型容器の製造方法および包装容器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態に係る紙シートの層構成の一例を示す図面である。
図2図2は、一実施形態に係る紙シートの平面図である。
図3図3は、図2の白抜き矢印A方向から紙シートをみた場合の模式図である。
図4図4は、紙シートを製造するための平坦シートを説明するための図面である。
図5図5は、一実施形態に係る紙シートを使用した包装容器の分解断面図である。
図6図6は、一実施形態に係るトレイ型容器の製造方法で使用する金型の一例を説明する模式図である。
図7図7は、紙シートの層構成の他の例を示す図面である。
図8図8は、紙シートにおけるエンボス形状の他の例を示す平面図である。
図9図9は、図8の白抜き矢印A方向から紙シートをみた場合の模式図である。
図10図10は、平坦化処理された第1エンボス部の形状の模式図である。
図11図11は、MD方向の破断強度および破断伸びを測定するためのサンプルの模式図である。
図12図12は、TD方向の破断強度および破断伸びを測定するためのサンプルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一符号を付する。重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0025】
図1は、一実施形態に係る紙シートの層構成を説明するための図面である。図1に示したように、紙シート10は、紙製の基材11と、基材11に積層されるバリア層12とを有する。紙シート10の透気抵抗度は、例えば2000秒以上である。透気抵抗度は、JIS P 8117:2009にて規定される手法にて測定される。紙シート10は、積層フィルムとも呼称できる。本明細書では、「層」、「膜」、「フィルム」、「シート」、及び「箔」は、同一もしくは略同一の意味で用いられることである。
【0026】
本実施形態における紙シート10は、成型技術(たとえば、圧空成型、プレス成型、真空成型等)によって容器に成型されるシートである。換言すれば、本実施形態における紙シート10は、容器を製造するためのシートである。
【0027】
基材11は、抄紙された紙自体から形成されるフィルム状部材である。基材11は、主面11a,11bを有する。主面11a,11bは、基材11の厚さ方向に対して交差する面である。紙シート10から容器が製造されたとき、主面11aは容器の外表面側に位置する一方面であり、主面11bは容器の内表面側に位置する他方面である。基材11を構成する紙は、例えば上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、和紙、模造紙、クラフト紙等である。たとえば、紙シート10を用いて製造した容器の外表面における美粧性の観点から、基材11は、雲龍紙でもよいし、混抄紙でもよい。
【0028】
基材11の坪量は、30g/m以上700g/m以下である。基材11の坪量の下限値は、100g/mでもよい。基材11の坪量の上限値は、400g/mでもよい。したがって、基材11の坪量は、100g/m以上400g/m以下でもよい。基本実施形態では、基材11の質量は、基材11と、バリア層12との合計質量における51%以上である。
【0029】
バリア層12は、主面11bの一部もしくは全体に設けられる。バリア層12は、たとえば、紙シート10を用いた容器を製造した場合、その容器における性能向上のための層である。紙シート10によって容器が製造された場合、バリア層12は、容器における内面側に位置する。バリア層12は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。バリア層12が多層構造を有する場合、バリア層12に含まれる各層は、共押出成形法にて同時に形成されてもよい。バリア層12は、基材11の主面11bにラミネートされる層でもよいし、主面11bをコーティングする層でもよい。バリア層12は、例えば、耐水性、耐油性等を示す。バリア層12の厚さは、例えば8μm以上200μm以下である。
【0030】
バリア層12は、例えばポリオレフィンフィルム、樹脂フィルム、無機コーティング層等を少なくとも一つ含む層である。
【0031】
ポリオレフィンフィルムは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンを主材料として形成されるフィルムである。ポリオレフィンフィルムは、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等によって形成される。
【0032】
樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)等から形成される。樹脂フィルムは、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂から形成されてもよい。「生分解性」とは、黴(かび)、細菌、酵母等の環境中に存在する微生物が産生する酵素の作用によって、一定の期間にポリマーがオリゴマー、モノマー、もしくはさらに低分子の物質まで分解される性質のことである。一定の期間とは、例えば数日でもよいし、数週間でもよいし、数か月でもよい。一定の期間は、例えば1年以内でもよい。
【0033】
無機コーティング層は、例えば、アルミニウム、アルミナ、又はシリカ等が、基材11に蒸着されることによって形成される。バリア層12がポリオレフィンフィルム及び樹脂フィルムを含む場合、当該ポリオレフィンフィルム及び当該樹脂フィルムは、共押出成形されてもよいし、互いに異なるタイミングで成形されてもよい。なお、「生分解性」とは、黴(かび)、細菌、酵母等の環境中に存在する微生物が産生する酵素の作用によって、一定の期間にポリマーがオリゴマー、モノマー、もしくはさらに低分子の物質まで分解される性質のことである。一定の期間とは、例えば数日でもよいし、数週間でもよいし、数か月でもよい。一定の期間は、例えば1年以内でもよい。
【0034】
バリア層12には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤等の各種添加材が添加されてもよい。
【0035】
紙シート10にはエンボス加工が施されている。図2および図3は、エンボス加工によって紙シート10に付与されたエンボス形状を説明するための図面である。図2は、紙シート10の平面図である。図3は、図2の白抜き矢印A方向から紙シート10をみた場合の模式図である。
【0036】
エンボス形状は、第1エンボス部13_1と第2エンボス部13_2によって形成されている。第1エンボス部13_1は、紙シート10の第1主面10aに対して凸状であり、第2エンボス部13_2は、第1エンボス部13_1と反対側に凸状である。したがって、第2エンボス部13_2は、第1エンボス部13_1側からみて凹状であり、紙シート10の第2主面10b(第1主面10aと反対側の面)に対して凸状である。本実施形態において、第2エンボス部13_2は、第1エンボス部13_1を反転した形状を有する。換言すれば、第1エンボス部13_1と第2エンボス部13_2は、頂部が互いに反対側に位置する点以外は、同じ形状を有する。
【0037】
第1エンボス部13_1と第2エンボス部13_2によって形成されているエンボス形状の一例を具体的に説明する。紙シート10に、図2に示したX方向(第1方向)に延びる複数の第1仮想ラインL1(iが1である場合の、第i仮想ラインLi)と、上記X方向に延びる複数の第2仮想ラインL2(iが2である場合の、第i仮想ラインLi)を設定する。複数の第1仮想ラインL1は平行であり、複数の第2仮想ラインL2も平行である。図2に示したように、紙シート10の厚さ方向からみて、複数の第1仮想ラインL1および複数の第2仮想ラインL2は、X方向に直交するY方向(第2方向)に沿って交互に配置されている。
【0038】
紙シート10には、複数の第1仮想ラインL1それぞれに沿って凸状の複数の第1エンボス部13_1が一定の周期b[mm]で配置されているとともに、複数の第2仮想ラインL2それぞれに沿って第1エンボス部13_1と反対側に凸状の複数の第2エンボス部13_2が一定の周期b[mm]で配置されている。本実施形態では、図2に示したように、第1仮想ラインL1に沿って設けられる複数の第1エンボス部13_1は、第1エンボス部13_1の頂部(先端部)13_1aが第1仮想ラインL1上に位置するように配置されており、第2仮想ラインL2に沿って設けられる複数の第2エンボス部13_2は、第2エンボス部13_2の頂部(先端部)13_2aが第2仮想ラインL2上に位置するように配置されている。図3に示したように、Y方向からみて、X方向に沿って第1エンボス部13_1と第2エンボス部13_2は交互に位置していてもよい。たとえば、Y方向からみて、隣接する第1エンボス部13_1の頂部13_1aと第2エンボス部13_2の頂部13_2aの間の距離は、b/2[mm]である。
【0039】
第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2の高さをa[mm]とした場合、高さaおよび周期bは、式(1a)且つ式(2a)を満たす。
0.1mm≦a≦5mm・・・(1a)
1.0mm≦b≦10mm・・・(2a)
【0040】
高さaおよび周期bは、エンボス形状を規定するパラメータである。たとえば、高さaは、第1エンボス部13_1に対しては、第1エンボス部13_1の頂部13_1aと第2主面10bの間の距離であり、第2エンボス部13_2に対しては、第2エンボス部13_2の頂部13_2aと第1主面10aの間の距離である。たとえば、周期bは、第1エンボス部13_1に対しては、第1仮想ラインL1上における隣接する第1エンボス部13_1の頂部13_1aの間の距離であり、第2エンボス部13_2に対しては、第2仮想ラインL2上における隣接する第2エンボス部13_2の頂部13_2aの間の距離である。
【0041】
高さaおよび周期bが式(1a)および式(2a)を満たす場合、aおよびbは、式(3)も満たしてもよい。
0.01≦a/b≦5・・・(3a)
【0042】
aの下限値は、0.5mmであってもよいし、1.5mmであってもよい。aの上限値は、3.5mmであってもよいし、3.3mmであってもよい。よって、aは、0.5mm以上3.5mm以下であってもよい。bの下限値は、1.5mmであってもよい。bの上限値は、7mmであってもよいし、3.5mmであってもよいし、3.3であってもよい。よって、bは、1.5mm以上7mm以下であってもよい。
【0043】
したがって、高さaおよび周期bは、以下の式(1b)および(2b)を満たしてもよい。
0.5mm≦a≦3.5mm・・・(1b)
1.5mm≦b≦7mm・・・(2b)
【0044】
更に、高さaおよび周期bは、式(3b)を満たしてもよい。
0.07≦a/b≦2.3・・・(3b)
【0045】
第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2は、紙シート10の実質的に全面において、上記式(1a)および式(2a)を満たすように形成され得る。
【0046】
Y方向に沿って複数の第1仮想ラインL1は間隔c1[mm]で配置されており、かつ、Y方向に沿って複数の第2仮想ラインL2は間隔c1[mm]で配置されていてもよい。Y方向に沿って、第1仮想ラインL1と第2仮想ラインL2との間の距離c2[mm]は、(c1)/2であってもよい。距離c2は、たとえば、周期b[mm]が満たす範囲と同様の範囲内の距離であってよい。たとえば、距離c2は、周期b[mm]と同様とし得る。
【0047】
第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2は、エンボスロールを使用したエンボス加工によって形成され得る。この場合、図2に示したX方向およびY方向の一方は、MD方向(Machine Direction)に相当する。
【0048】
紙シート10は、たとえば、次のようにして製造され得る。まず、図4に示した平坦シートFSを準備する(準備工程)。平坦シートFSは、紙シート10と同じ層構成および材料を有する平坦なシートである。換言すれば、平坦シートFSは、基材11と、基材11上に積層されたバリア層12とを有する。平坦シートFSが有する基材11およびバリア層12の構成は、紙シート10の基材11およびバリア層12と同じである。
【0049】
その後、平坦シートFSにエンボス加工を施すことによって紙シート10が製造され得る(加工工程)。具体的には、エンボス加工によって、図2および図3を用いて説明したエンボス形状を平坦シートFSに付与する。その結果、紙シート10が得られる。エンボス加工は、たとえばエンボスロールによって実施され得る。
【0050】
たとえば、複数の第1エンボス部13_1を形成するための第1エンボスロールと、複数の第2エンボス部13_2を形成するためのエンボスロールによって、平坦シートFSを挟むことで平坦シートFSに複数の第1エンボス部13_1および複数の第2エンボス部13_2を形成するエンボス加工を施してもよい。
【0051】
第1エンボスロールおよび第2エンボスロールを用いて紙シート10を製造する場合の一例を具体的に説明する。
【0052】
この場合、上記第1エンボスロールとして、第1エンボス部13_1を形成するため、一方向(上記X方向に相当)に沿って周期bで配置された複数の凸状部によって形成される凸状部列が、上記一方向に直交する方向(上記Y方向に相当)に間隔c1でロール表面に複数配置されているロールを準備する。同様に、第2エンボスロールとして、第1エンボス部13_1を形成するため、一方向(上記X方向に相当)に沿って周期bで配置された複数の凸状部によって形成される凸状部列が、上記一方向に直交する方向(上記Y方向に相当)に距離c1で、ロール表面に複数配置されているロールを準備する。上記凸状部は、本実施形態では、高さaの三角錐である。その後、上記第1エンボスロールと第2エンボスロールとによって平坦シートFSを挟み且つ押圧する。この際、第1エンボスロールおよび第2エンボスロールは、第1エンボスロールのロール表面に形成された複数の凸状部列それぞれの延在方向が上記第1仮想ラインL1に相当し、第2エンボスロールのロール表面に形成された複数の凸状部列それぞれの延在方向が第2仮想ラインL2に相当するように、配置されている。これによって、第1エンボスロールのロール表面に形成された複数の凸状部によって、平坦シートFSに複数の第1エンボス部13_1が形成されるとともに、第2エンボスロールのロール表面に形成された複数の凸状部によって、平坦シートFSに複数の第2エンボス部13_2が形成されるので、紙シート10が得られる。
【0053】
第1エンボスロールおよび第2エンボスロールを用いて紙シート10を製造する形態では、第1エンボスロールを用いて複数の第1エンボス部13_1を平坦シートFSに一旦形成した後、複数の第1エンボス部13_1が形成された平坦シートFSに、第2エンボスロールを使用して複数の第2エンボス部13_2を更に形成することによって、紙シート10を製造してもよい。
【0054】
上記のように第1エンボスロールおよび第2エンボスロールを用いて紙シート10を製造する形態では、平坦シートFSにおいて、第1エンボスロールに接する面が紙シート10の第2主面10bに相当し、平坦シートFSにおいて、第2エンボスロールに接する面が紙シート10の第1主面10aに相当する。
【0055】
上記平坦シートFSにおいて、MD方向(Machine Direction)の破断伸びは、たとえば2%以上12%以下であり、たとえばTD方向(Transverse Direction)の破断伸びは、例えば0.5%以上15%以下である。上記平坦シートFSにおいて、MD方向およびTD方向それぞれにおける破断伸びは、JIS P 8113:2006にて規定される引張破断伸びに相当する。MD方向は、基材11の紙目方向(紙の繊維方向)に相当し、例えば、平坦シートFS(または紙シート10)の断面(具体的には基材11の断面)を観察することによって特定できる。TD方向はMD方向に直交する方向である。
【0056】
上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断伸びの下限値は3%でもよい。上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断伸びの上限値は11%でもよい。このため、上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断伸びは、3%以上11%以下でもよい。上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断伸びの下限値は1%でもよい。上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断伸びの上限値は14%でもよい。このため、上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断伸びは、1%以上14%以下でもよい。
【0057】
平坦シートFSは、紙シート10と同じ坪量を有する基材11を含む。基材11の坪量は、30g/m以上700g/m以下である。坪量が30g/m以上であることにより、基材11上にバリア層12を形成する等の加工が容易である。坪量が700g/m以下であることにより、第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2を形成するためのエンボス加工を容易に施せる。
【0058】
平坦シートFSにおいて、MD方向の破断伸びは2%以上12%以下であり且つTD方向の破断伸びは例えば0.5%以上15%以下である。平坦シートFSがこのような破断伸びを有すことによって、上記平坦シートFSにエンボス加工を施す際に基材11の破損を防止しながらエンボス形状を有する紙シート10を容易に製造できる。上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断伸びは、3%以上11%以下であり、TD方向の破断伸びが、1%以上14%以下である場合、エンボス形状を有する紙シート10を一層製造し易い。
【0059】
上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度は、たとえば30N/15mm以上400N/15mm以下であり、TD方向の破断強度は、たとえば50N/15mm以上500N/15mm以下である。平坦シートFSの破断強度は、JIS P 8113:2006に規定される手法にて測定される。上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度の下限値は80N/15mmでもよい。上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度の上限値は300N/15mmでもよい。よって、上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度は80N/15mm以上300N/15mm以下でもよい。上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断強度の下限値は100N/15mmでもよい。上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断強度の上限値は400N/15mmでもよい。よって、よって、上記平坦シートFSにおいて、TD方向の破断強度は、100N/15mm以上400N/15mm以下でもよい。
【0060】
平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度が、30N/15mm以上400N/15mm以下であり、TD方向の破断強度が50N/15mm以上500N/15mm以下である場合、上記平坦シートFSにエンボス加工を施す際に平坦シートFSの破損を防止しながらエンボス形状を有する紙シート10を更に製造し易い。上記平坦シートFSにおいて、MD方向の破断強度が、80N/15mm以上300N/15mmで以下であり、TD方向の破断強度が、100N/15mm以上400N/15m以下である場合、エンボス形状を有する紙シート10を特に製造し易い。
【0061】
次に、上記紙シート10を用いた容器およびその容器を備えた包装容器の製造方法を説明する。図5は、製造する包装容器の概略分解断面図である。図5に示したように、包装容器1は、トレイ型容器20(以下、単に「容器20」と称す)と、容器20の開口20aを塞ぐ蓋30とを有する。図5では、包装容器1に収容される内容物(例えば、飲食物、医薬品、化粧品、化学品、電子機器、工具、文房具等)の図示を省略している。
【0062】
容器20は、紙シート10の成型品である。容器20は、日本の資源有効利用促進法に基づき、紙製容器包装の識別表示が付される容器でもよい。この場合、容器20の主成分は、紙である。本実施形態においては、容器20の合計質量のうち、紙製の基材11の質量が51%以上であり、容器20は紙製容器である。容器20は、トレイ部21と、フランジ部22とを有する。
【0063】
トレイ部21は、底部211と側壁部212とを有する。
【0064】
底部211は、容器20に収容される内容物が載置される部分である。底部211は、板状部分である。本実施形態では、底部211の厚さ方向からみた場合、底部211の形状は略長方形である。
【0065】
側壁部212は、底部211の周縁部に設けられている。側壁部212において底部211と反対側の端部212aが、トレイ部21における開口20aを画成している。側壁部212は、底部211側から端部212a側に向けて外側に広がるように底部211に対して設けられていてもよい。
【0066】
フランジ部22は、容器20の縁部であり、底部211の厚さ方向からみて略枠形状を呈する。底部211の厚さ方向からみて、フランジ部22の外形は略長方形状である。フランジ部22は、側壁部212の端部212aに接続されている。
【0067】
容器20の深さH1は、内容物を収容可能な深さであればよい。深さH1の例は、5~50mmである。深さH1は、側壁部212の端部212aを含む仮想平面VP1と、底部211との間の距離である。
【0068】
蓋30は、フランジ部22に接合されている。蓋30は、開口20aを塞ぎ、容器20内に配置された内容物を封止する。蓋30は、たとえば、フィルム状部材である。蓋30は、たとえば、凝集剥離、界面剥離或いは層間剥離可能なイージーピールフィルムである。蓋30は、例えばプラスチックフィルム等でもよい。環境保護の観点から、プラスチックフィルムは、生分解性樹脂から形成されてもよい。
【0069】
包装容器1は、たとえば、次のようにして製造され得る。
【0070】
まず、前述したように、平坦シートFSを準備した後、たとえば、図2に示したエンボス形状を平坦シートFSに付与することによって紙シート10を製造する(紙シート製造工程)。エンボス加工は、紙シート10の製造方法の例で説明したように、第1エンボスロールおよび第2エンボスロールによって実施され得る。紙シート10が有するバリア層12は、容器20および包装容器1の用途に応じたバリア性を有するように構成されていればよい。
【0071】
次に、製造した紙シート10を、容器20に対応した金型を用いて成型加工をすることによって、容器20を製造する(成型工程)。成型加工法の例は、圧空成型、プレス成型、真空成型等を含む。成型加工は、対応する加工法に応じた成型装置によって実施されればよい。
【0072】
図6は、成型工程で使用する金型の一例の模式図である。金型40は、底部211、側壁部212およびフランジ部22に対応する底部41、側壁部42および平坦部43を有すればよい。金型40の深さH2は、平坦部43を含む仮想平面VP2(側壁部42の底部41と反対側の端部を含む仮想平面に相当)と、底部41との間の距離である。深さH2は、たとえば、製造する容器20における深さH1とほぼ同じか、若干深い。深さH2の例は、6~60mmである。
【0073】
製造した容器20に内容物を収容した後、蓋30をフランジ部22に接合することによって、包装容器1を得る(接合工程)。蓋30のフランジ部22への接合方法は、容器20および蓋30の構成、包装容器1の用途等に応じた方法であればよい。たとえば、蓋30は、例えばヒートシール、インパルスシール、超音波シール等によって、フランジ部22に対して接合する。このとき、蓋30は、接着剤等を介してフランジ部22に密着してもよいし、フランジ部22に溶着してもよい。
【0074】
上述した紙シート10は、平坦シートFSにエンボス形状が付与されたシートである。
【0075】
第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2は、式(1a)および式(2a)を満たす条件で、紙シート10に形成されている。高さaが5mm以下であることで、紙シート10を成型した際に紙シート10が破れにくい。第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2を容易に形成する観点で、周期bは、1mm以上は必要である。高さaが0.1mm以上であること、および、周期bが10mm以下であることを満たすことによって、紙シート10は伸びやすい。したがって、第1エンボス部13_1および第2エンボス部13_2が式(1a)および式(2a)を満たす条件で形成されている紙シート10は、伸びやすく、成型し易い。
【0076】
そのため、紙シート10を用いることによって、たとえば、圧空成型、真空成型、プレス成型などのような成型技術を用いて容器20を製造可能である。紙シート10は成型性に優れていることから、フランジ部22の表面のシワ発生を防止しながら、より深い深さH1を有する容器20を製造できる。フランジ部22の表面にシワが発生していない容器20に蓋30を接合する場合、蓋30とフランジ部22を密着可能である。その結果、容器20の内側およびフランジ部22を蓋30で密封シールでき、たとえば、より高いバリア機能(たとえばガスバリア機能)を実現し得る。
【0077】
周期bに対する高さaの比(a/b)が大きいと、紙シート10が破れやすい傾向にあり、比(a/b)が小さいと紙シート10が伸びにくい傾向にある。したがって、高さaおよび周期bが、式(3b)を満たす場合、紙シート10の成型性がより向上する。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれることが意図されるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下、種々の変形例を説明する。以下の種々の変形例は、少なくとも上記実施形態と同様の作用効果を有する。
【0079】
たてえば、紙シートは、図7に示す層構成を有してもよい。図7は、紙シートにおける層構成の他の例の概略断面図である。図7に示した紙シート10Aは、基材11Aと、バリア層12Aと、基材11B(第2基材)と、バリア層12Bとを有する。基材11Aと、バリア層12Aと、基材11Bと、バリア層12Bとは、紙シート10Aの厚さ方向において順に積層される。
【0080】
基材11A,11Bのそれぞれは、紙製のフィルム状部材である。基材11A,11Bは、互いに同一の紙から形成されてもよいし、互いに異なる紙から形成されてもよい。基材11A,11Bの坪量は、それぞれ30g/m以上700g/m以下である。また、基材11A,11Bの坪量の合計は、60g/m以上700g/m以下である。基材11A,11Bの坪量は、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。
【0081】
バリア層12A,12Bのそれぞれは、上記実施形態のバリア層12と同様の機能を示す層である。バリア層12A,12Bは、互いに同一の構成を有してもよいし、互いに異なる構成を有してもよい。例えば、バリア層12A,12Bの一方が耐水性を示し、バリア層12A,12Bの他方が耐油性を示す。換言すると、バリア層12A,12Bは、互いに同一の機能を示してもよいし、互いに異なる機能を示してもよい。
【0082】
紙シートは、紙シート10Aにおいてバリア層12Bを有しないシートであってもよい。すなわち、紙シートは、基材11A、基材11A上に積層されたバリア層12Aおよびバリア層12A上に積層された基材11Bによって構成されていてもよい。
【0083】
図8は、第1エンボス部および第2エンボス部の他の例を示す平面図である。図9は、図8の白抜き矢印A方向から紙シートをみた場合の模式図である。図8および図9に示した紙シート10Bは、円錐状の第1エンボス部13A_1および第2エンボス部13A_2を有する点で、紙シート10と相違する。紙シート10Bは、上記相違点以外は紙シート10と同様の構成を有する。第1エンボス部13A_1の頂部13_1aおよび第2エンボス部13A_2の頂部13_2aは、円錐の頂部である。第1エンボス部13A_1および第2エンボス部13A_2が、式(1a)および式(2a)を満たすように配置されていることは、第1エンボス部13A_1および第2エンボス部13A_2の場合と同様である。このような紙シート10Bは、たとえば、上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールの表面に形成されている凸状部を円錐状に形成することよって、紙シート10の場合と同様にして製造され得る。
【0084】
第1エンボス部および第2エンボス部は、式(1a)および式(2a)を満たすように形成されていれば、第1エンボス部および第2エンボス部の形状は、三角錐または円錐に限定されない。たとえば、第1エンボス部および第2エンボス部の形状は、半球状でもよいし、四角錐状でもよい。また、第1エンボス部および第2エンボス部が三角錐、円錐、四角錐のような場合でも頂部は例えば若干丸まっていてもよい。上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールを用いて紙シートを製造する場合、第1エンボス部および第2エンボス部の形状は、第1エンボスロールおよび第2エンボスロールの表面に形成されている凸状部の形状によって規定され得る。凸状部の例は、例示した三角錐および円錐の他、四角錐でもよい。また、第1仮想ラインL1および第2仮想ラインL2の間の距離c2も例示した距離に限定されない。たとえば、距離c2がb/2[mm]でもよい。上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールを用いて紙シートを製造する場合、第1エンボスロールで付与する第1エンボス部の一部と第2エンボスロールで付与する第2エンボス部の一部は、紙シートの厚さ方向からみて重なっていてもよい。
【0085】
第1エンボス部および第2エンボス部は、式(1a)および式(2a)を満たすように形成されていれば、紙シートは、紙シート10と少なくとも同様の作用効果を有する。
【0086】
第1エンボス部に関する高さaと第2エンボス部に関する高さaは異なっていてもよい。同様に、第1エンボス部に関する周期bと第2エンボス部に関する周期bは異なっていてもよい。したがって、第1エンボス部および第2エンボス部を第iエンボス部(iは1または2)と表し、第iエンボス部の高さおよび周期を高さaおよび周期bと表した場合、高さaおよび周期bは、上記実施形態でaおよびbを用いて説明した式(1a)および式(2a)を満たす。高さaおよび周期bは、上記実施形態でaおよびbを用いて説明した式(1a)および式(2a)以外の種々の関係を満たしてもよい。
【0087】
紙シートは、たとえば、印刷層を有してもよい。図5に例示したように、紙シートによって形成される容器20が蓋30で閉じられる場合、たとえば、紙シートは、少なくともフランジ部22において蓋30と接合される側にイージーピールシーラント層を有してもよい。これにより、蓋30をフランジ部22に易剥離可能に接合できる。
【0088】
紙シートは、バリア層を有しなくてもよい。換言すれば、紙シートは、紙製の基材自体であってもよい。この場合、基材に直接エンボス加工を施すことで、紙シートが得られる。
【0089】
紙シートを用いてトレイ型容器を製造する場合、紙シートを成型する前に、たとえば、紙シートにバリア層、印刷層、イージーピールシーラント層等の他の層を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で更に積層してもよい。
【0090】
紙シートを用いてトレイ型容器を製造する場合、紙シートを成型する前に、紙シートに平坦化処理を施してもよい(平坦化工程)。具体的には、紙シートを製造するために準備した平坦シートFSの厚さと実質的に同じ隙間で配置された一対のロール間に紙シートを通し、第1エンボス部および第2エンボス部を平坦化してもよい。図10は、平坦化された第1エンボス部の概略側面図である。平坦化処理が紙シートに施されることによって、図10に示した第1エンボス部13_1のように頂部側が平坦な第1エンボス部13_1が得られる。第2エンボス部は、第1エンボス部を反転させた形状である。このように平坦化処理を紙シートに施すことによって、たとえば、前述したように、紙シートに他の層を積層する等の処理のための紙シートのハンドリングが容易になる。平坦化処理は、フラットニングとも称せられる。
【0091】
バリア層は、基材の両面に設けられてもよい。この場合、一方のバリア層と、他方のバリア層とは、互いに同一の構成を有してもよいし、互いに異なる構成を有してもよい。換言すると、一方のバリア層と、他方のバリア層とは、互いに同一の機能を示してもよいし、互いに異なる機能を示してもよい。
【0092】
紙シートで製造した容器として、底部の厚さ方向から見て略長方形を呈する容器を説明した。しかしながら、上記厚さ方向からみた場合の容器の形状は、円形状でもよいし、楕円形状でもよいし、多角形状でもよい。
【0093】
以上説明した実施形態および種々の変形は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜組み合わされてもよい。
【実施例0094】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例の説明においても、上記実施形態の場合と同様に、第1エンボス部と第2エンボス部は、頂部が突出している方向が互いに反対である点以外は、同じ形状を有していた。すなわち、第2エンボス部は、第1エンボス部を反転した形状を有していた。
【0095】
(実施例1)
<紙シートの準備>
まず、紙製の基材として、略長方形状を呈すると共に坪量300g/mの紙を準備した。当該紙(基材)に対して厚さ18μmのポリエチレン樹脂を押出しラミネートすることによって、平坦シートを形成した。実施例1の平坦シートの層構成を構成Iと称す。
【0096】
次に上記平坦シートに対して、上記実施形態で説明した第1エンボスロールおよび第2エンボスロールで平坦シートを挟み且つ押圧することによって、平坦シートにエンボス加工を施した。これによって、第1エンボス部および第2エンボス部によって形成されており且つ表1に示した高さa、周期bおよびa/bで規定されるエンボス形状が付与された紙シートを得た。紙シートの層構成は構成Iであった。第1エンボス部および第2エンボス部の形状は、高さがa[mm]であり、厚さ方向からみて一辺の長さがa[mm]の正三角形である三角錐であった。
【0097】
実施例1では、上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールとして、高さがa[mm]である三角錐(凸状部)が表面に形成されたロールを用いた。三角錐の頂部側からみて(ロールの径方向からみて)、三角錐は一辺の長さがa[mm]である正三角形であった。紙シートに形成されたエンボス形状において、図2に示した第1仮想ラインL1と第2仮想ラインL2との間の距離c2は周期b[mm]と同じ距離であった。隣接する2つの第1仮想ラインL1の間の距離c1は2b[mm]であり、隣接する2つの第2仮想ラインL2の間の距離も同様であった。第1仮想ラインL1(または第2仮想ラインL2)に直交する方向(上記実施形態におけるY方向)からみて、第1エンボス部の頂部と第2エンボス部の頂部との間の距離は、b/2[mm]であった。
【0098】
また、紙シートと同様にして、破断強度および破断伸び試験用のサンプルシートを準備した。サンプルシートの層構成および材料並びにエンボス形状は、準備した紙シートと同じであった。
【0099】
<平坦化処理>
準備した紙シートおよびサンプルシートに対して平坦化工程を実施した。すなわち、紙シートおよびサンプルシートを準備する際に形成した平坦シートの厚さと実質的に同じ隙間で配置された一対のロール間に紙シートおよびサンプルシートそれぞれを通し、第1エンボス部および第2エンボス部を平坦化した。
【0100】
<破断強度および破断伸び試験>
準備したサンプルシートから、図11に示すMD方向に対する試験用の第1試験用サンプルS1と、図12に示すTD方向の試験用の第2試験用サンプルS2を切り出した。第1試験用サンプルS1および第2試験用サンプルS2において、長手方向の長さは130mmであり、幅(長手方向に直交する長さ)は、15mmであった。第1試験用サンプルS1では、長手方向が紙目方向PGであり、第2試験用サンプルS2では、幅方向が紙目方向PGであった。
【0101】
図11に示したように、第1試験用サンプルS1において破断伸び測定用の一対の基準線BLを付与した。一対の基準線BL間の長さは100mmであった。
【0102】
第1試験用サンプルS1に対して破断強度試験を実施した。破断強度およい破断伸びは、JIS P 8113:2006の規定に従って測定した。具体的には、第1試験用サンプルS1を長手方向に引っ張り速度200mm/minで引っ張って破断強度を測定した。次に、破断した第1試験用サンプルS1をテープで貼り合わせ、一対の基準線BL間の距離が初期値である100mmに対して伸びている長さを金尺で測定した。初期値100mmと上記測定値とに基づいて、MD方向の破断伸びを算出した。算出結果は、表1に示したとおりであった。
【0103】
第2試験用サンプルS2に対しても、第1試験用サンプルS1と同様に破断試験を実施し、TD方向の破断強度を測定した。具体的には、第2試験用サンプルS2を長手方向に引っ張り速度200mm/minで引っ張って破断強度を測定した。更に、第1試験用サンプルS1と同様にしてTD方向の破断伸びを算出した。TD方向の破断強度および破断伸びは、表1に示したとおりであった。
【0104】
[紙容器の製造]
【0105】
Multivac社製のフレキシブルディープドローパッケージング装置「R245」に、準備した紙シートを設置した。続いて、温度:110℃、加熱時間:0.5秒、保持時間:2.5秒の条件に、準備した紙シートを加熱した。続いて、フォーミング:0.2秒、保持時間:5.0秒の条件にて、準備した紙シートを成型加工した。
【0106】
成型加工に使用した金型は、図6に示した金型40と同様に、底部、側壁部および平坦部を有する金型であった。金型の開口(図6において側壁部42における底部41と反対側の端部で画成された開口)の形状は、長手方向の長さが250mmであり短手方向の長さが173mmである矩形であった。深さH2は、30mmであった。
【0107】
これにより、上記紙シートから形成されると共に、フランジ部を有するトレイ型容器が製造された。トレイ型容器の底部の厚さ方向から見て、トレイ型容器は、略長方形を呈していた。
【0108】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同じ紙シートおよびサンプルシートを準備した。実施例2における紙シートおよびサンプルシートも構成Iを有する。
【0109】
実施例2では、平坦化処理を実施しなかった点以外は、実施例1と同様にして、準備したサンプルシートのMD方向およびTD方向それぞれにおける破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0110】
実施例2では、平坦化処理を実施しなかった点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0111】
(実施例3)
実施例3では、エンボス形状を規定する高さaおよび周期bを表1に示したように変更した点以外は、実施例1と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。実施例3における紙シートおよびサンプルシートも構成Iを有する。実施例3では、紙シートおよびサンプルシートに対して実施例1と同様の平坦化処理を行った。
【0112】
実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0113】
更に、実施例3で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0114】
(実施例4)
実施例4では、エンボス形状を規定する高さaおよび周期bを表1に示したように変更した点以外は、実施例2と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。実施例4における紙シートおよびサンプルシートも構成Iを有する。
【0115】
実施例2と同様にして(すなわち実施例1と同様にして)、準備したサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0116】
更に、実施例4で準備した紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0117】
(実施例5~7)
実施例5~7それぞれでは、エンボス形状を規定する高さaおよび周期bを表1に示したように変更した点以外は実施例1と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。実施例5~7における紙シートおよびサンプルシートも構成Iを有する。実施例5~7では、紙シートおよびサンプルシートに対して実施例1と同様の平坦化処理を行った。
【0118】
実施例5~7それぞれにおいて、実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0119】
更に、実施例5~7で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0120】
(実施例8)
紙製の基材として、略長方形を呈すると共に坪量150g/mの紙を準備した。当該紙(基材)上に、厚さ30μmのポリエチレン樹脂、実施例8で準備した上記紙(基材)および厚さ18μmのポリエチレン樹脂を順に押出しラミネートすることによって、平坦シートを形成した。使用したポリエチレンフィルムは、厚さ以外は、実施例1と同様であった。実施例8における平坦シートが有する層構成を構成IIと称す。
【0121】
実施例8では、上記平坦シートを用いた点以外は、実施例1と同様にして、紙シートおよびサンプルシートを準備した。紙シートおよびサンプルシートは構成IIを有していた。実施例8では、紙シートおよびサンプルシートに対して実施例1と同様の平坦化処理を行った。
【0122】
実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0123】
更に、実施例8で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0124】
(実施例9)
実施例9では、実施例8と同じ紙シートおよびサンプルシートを準備した。実施例9の紙シートおよびサンプルシートも構成IIを有した。
【0125】
実施例9では、平坦化処理を実施しなかった点以外は、実施例8と同様にして、準備したサンプルシートのMD方向およびTD方向それぞれにおける破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【0126】
実施例9では、平坦化処理を実施しなかった点以外は、実施例8と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0127】
【表1】
【0128】
(比較例1)
実施例1で紙シートおよびサンプルシート用に準備した平坦シートを、比較例1用の紙シートおよびそれに対応するサンプルシートとして使用した。すなわち、比較例1の紙シートおよびそれに対応するサンプルシートとして、エンボス形状を有しない点以外は、実施例1と同様の構成の紙シートおよびサンプルシートを準備した。したがって、比較例1の紙シートおよびそれに対応するサンプルシートは、構成Iを有する。
【0129】
比較例1用に準備したサンプルシートに対して、実施例1と同様にして、MD方向およびTD方向それぞれにおける破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表2に示したとおりであった。
【0130】
更に、比較例1用に準備した紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0131】
(比較例2)
実施例8で紙シートおよびサンプルシート用に準備した平坦シートを、紙シートおよびそれに対応するサンプルシートとして使用した。すなわち、比較例2の紙シートおよびそれに対応するサンプルシートは、エンボス形状を有しない点以外は、実施例8と同様の構成の紙シートおよびサンプルシートを準備した。したがって、比較例2の紙シートおよびそれに対応するサンプルシートは、構成IIを有する。
【0132】
準備したサンプルシートに対して、実施例1と同様にして、MD方向およびTD方向それぞれにおける破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表2に示したとおりであった。
【0133】
更に、準備した紙シートを用いて、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0134】
(比較例3~6)
比較例3~6それぞれでは、エンボス形状を規定する高さaおよび周期bを表2に示したように変更した点以外は実施例1と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。比較例3~6における紙シートおよびサンプルシートも構成Iを有する。比較例3~6では、紙シートおよびサンプルシートに対して実施例1と同様の平坦化処理を行った。
【0135】
比較例3~6それぞれにおいて、実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表2のとおりであった。
【0136】
更に、比較例3~6で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0137】
(比較例7)
紙シートおよびサンプルシートにおけるエンボス形状を、表2に示したように変更した点以外は、実施例8と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。比較例7における紙シートおよびサンプルシートも構成IIを有する。比較例7では、紙シートおよびサンプルシートに対して実施例8と同様の平坦化処理を行った。
【0138】
比較例7において、実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表2のとおりであった。
【0139】
更に、比較例7で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0140】
(比較例9)
紙シートおよびサンプルシートにおけるエンボス形状を、表2に示したように変更した点以外は、実施例9と同様にして紙シートおよびサンプルシートを準備した。比較例9における紙シートおよびサンプルシートも構成IIを有する。
【0141】
比較例9において、実施例1と同様にして、平坦化処理されたサンプルシートにおけるMD方向およびTD方向それぞれの破断強度および破断伸びを測定した。測定結果は、表2のとおりであった。
【0142】
更に、比較例9で準備した平坦化処理された紙シートを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0143】
【表2】
【0144】
(実施例10~18)
実施例10~18それぞれは、実施例1~9それぞれに対応する実施例であった。実施例10~18では、第1エンボス部および第2エンボス部の形状を円錐状に変更した点以外は、対応する実施例1~9と同様にして、破断強度および破断伸びを測定するとともに、フランジ部を有するトレイ型容器を製造した。実施例10~18のエンボス形状を規定する高さaおよび周期bは、表3のとおりであった。実施例10~18それぞれにおいて、紙シートの厚さ方向からみた第1エンボス部および第2エンボス部の形状は直径がa[mm]の円であった。実施例10~18における破断強度および破断伸びは、表3に示したとおりであった。
【0145】
実施例10~18では、上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールとして、高さがa[mm]である円錐(凸状部)がロール表面に形成されたロールを用いた。円錐の頂部側からみて(ロールの径方向からみて)、円錐は直径がa[mm]である円であった。紙シートに形成されたエンボス形状において、図2に示した第1仮想ラインL1と第2仮想ラインL2との間の距離c2はb[mm]であった。隣接する2つの第1仮想ラインL1の間の距離c1は2b[mm]であり、隣接する2つの第2仮想ラインL2の間の距離も同様であった。第1仮想ラインL1(または第2仮想ラインL2)に直交する方向(上記実施形態におけるY方向)からみて、第1エンボス部の頂部と第2エンボス部の頂部との間の距離は、b/2[mm]であった。表3に示すように、実施例10~16の紙シートおよびサンプルシートは構成Iを有しており、実施例17,18の紙シートおよびサンプルシートは、構成IIを有していた。実施例10,12,14~17では、準備された紙シートおよびサンプルシートに平坦化処理を行った後に、破断強度および破断伸びを測定するとともに、フランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0146】
【表3】
【0147】
(比較例9~14)
比較例9~14それぞれは、比較例3~8に対応する比較例であった。比較例9~14では、第1エンボス部および第2エンボス部の形状を円錐状に変更した点以外は、対応する比較例3~8と同様にして、破断強度および破断伸びを測定するとともに、トレイ型容器を製造した。比較例9~14のエンボス形状を規定する高さaおよび周期bは、表4のとおりであった。比較例9~14それぞれにおいて、紙シートの厚さ方向からみた第1エンボス部および第2エンボス部の形状は直径がa[mm]の円であった。比較例9~14では、上記第1エンボスロールおよび上記第2エンボスロールとして、高さがa[mm]である円錐(凸状部)がロール表面に形成されたロールを用いた。円錐の頂部側からみて(ロールの径方向からみて)、円錐は直径がa[mm]である円であった。紙シートに形成されたエンボス形状において、図2に示した第1仮想ラインL1と第2仮想ラインL2との間の距離c2はb[mm]であった。比較例9~14における破断強度および破断伸びは、表4に示したとおりであった。表4に示すように、比較例9~12の紙シートおよびサンプルシートは構成Iを有しており、比較例13,14の紙シートおよびサンプルシートは、構成IIを有していた。比較例9~13では、準備された紙シートおよびサンプルシートに平坦化処理を行った後に、破断強度および破断伸びを測定するとともに、フランジ部を有するトレイ型容器を製造した。
【0148】
【表4】
【0149】
<評価>
実施例1~18及び比較例1~14で製造したトレイ型容器の深さH1を測定した。測定結果は、表5および表6のとおりであった。深さH1の記載が無い欄は、破れなどにより深さH1が測定できなかったケースであった。深さH1の測定結果を考慮して、以下の項目で紙シートを評価した。
(a)製造されたトレイ型容器に破れの有無
破れの有無は、目視で確認した。トレイ型容器として使用不可能な破れの有無で評価した。紙シートを用いてトレイ型容器の成型過程で紙シートが破断した場合も破れ「有」と評価した。破れがない場合を、評価「A」とし、容器として成型されており且つ容器として良品とみなせる程度の微小なダメージが生じている場合を「A」とし、破れが生じている場合を評価「B」とした。評価結果は、表5および表6のとおりであった。
(b)製造したトレイ型容器のフランジ部におけるシワの有無
シワの有無を目視で評価した。シワがない場合を、評価「A」とし、シワが生じていた場合を、評価「B」とした。上記(a)における破れが生じている場合においても、フランジ部に相当する領域におけるシワの有無を評価した。評価結果は、表5および表6のとおりであった。
(c)成型深さ
金型の深さが30mmであったため、深さH1が20mm以上である場合を、十分な深さを有するトレイ型容器に紙シートを成型できたと見なし、評価「A」とした。逆に、深さH1が20mm未満を、評価「B」とした。評価結果は、表5および表6のとおりであった。上記(a)における破れが生じている場合において、深さH1を測定不能のであった場合は、成型深さの評価も評価不能と見なして空欄とした。
【0150】
<総評>
上記(a)~(c)の評価項目全てに評価「B」を含まない場合、成型容易な紙シートと見なして評価「A」とした。逆に、上記(a)~(c)の評価項目の何れか一つに評価「B」が生じている場合、評価「B」とした。総評は、表5および表6のとおりであった。

【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
比較例1~14では、総評の評価結果はBであった。具体的に検討する。比較例1,2では、紙シートがエンボス形状を有しなかった。比較例1,2では、成型深さH1が20mm未満であった。すなわち、エンボス形状を有しない紙シートが伸びにくかったことが理解できる。更に、比較例3~14では、エンボス形状を有していても、式(1a)および式(2a)の何れか一方を満たしていなかった。比較例4,7,10,13の結果より、たとえば、aが5mmを超えていると紙シートが破け易いことが理解できる。比較例3,8,9,14の結果より、aが0.1mm未満である場合も紙シートが伸びにくかったことが理解できる。同様に、比較例6,8,12,14の結果より、周期bが10mmを超えている場合も紙シートが伸びにくかったことが理解できる。
【0153】
これに対して、実施例1~18では総評の評価結果はAであった。具体的には、実施例1~18では、表1および表3に示されたように、エンボス形状を規定するパラメータa,bの範囲は、式(1a)および式(2a)を満たしていた。その結果、破れおよびシワの発生を防止しながら、深さH1が20mm以上のトレイ型容器を成型できた。
【0154】
以上のことから、式(1a)および式(2a)を満たすエンボス形状を有する紙シートは、成型性に優れていることが理解され得る。また、上記実施例および比較例の結果より、高さaが0.5mm以上3.5mmの場合において、成型性に優れた紙シートであることが理解できる。同様に周期bが、1.5mm以上7mm、或いは、1.5mm以上3.5mm以下の場合において、成型性に優れた紙シートであることが理解できる。
【0155】
前述したように、実施例10~18は、実施例1~9に対応しており、実施例10~18と実施例1~9の違いは、エンボス部の形状であった。具体的には、実施例1~9の第1エンボス部および第2エンボス部の形状は三角錐状であり、実施例10~18の第1エンボス部および第2エンボス部の形状は円錐状であった。表5および表6の実施例1~9の深さH1と、対応する実施例10~18の深さH1を比較すると、三角錐状のエンボス部を有する実施例1~9の方が、実施例10~18より成型性に優れている傾向を有する。これは、エンボス形状を規定するパラメータa,bが同じであっても、三角錐形状の方が円錐形状の場合より、密接にエンボスされている領域が大きくなっているためと考えられる。
【符号の説明】
【0156】
1…包装容器、10,10A,10B…紙シート、11,11A,11B…基材、12,12A,12B…バリア層、13_1,13A_1…第1エンボス部、13_2,13A_2…第2エンボス部、13_1a…頂部(先端部)、13_2a…頂部(先端部)、b…周期、FS…平坦シート、20…容器(フランジ部を有するトレイ型容器)、20a…開口、30…蓋、40…金型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12