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特開2022-62835撮像装置、収差補正方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062835
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】撮像装置、収差補正方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220414BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220414BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20220414BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20220414BHJP
【FI】
G02B7/02 C
H04N5/232
G03B17/14
G02B7/02 E
G03B7/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170990
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼敏宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝哲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏宏
【テーマコード(参考)】
2H002
2H044
2H101
5C122
【Fターム(参考)】
2H002FB22
2H002FB32
2H002FB36
2H002GA51
2H002GA70
2H002GA74
2H044AC04
2H044AE07
2H101EE08
2H101EE13
2H101EE21
5C122EA31
5C122EA58
5C122FB04
5C122FH11
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】経時変化で発生するレンズ装置の収差を補正し高画質を維持する撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の撮像装置は、移動して収差を補正する補正群を含む光学系と、前記補正群を移動させる駆動部と、前記光学系によって形成された光学像を撮像する撮像素子と、画像と前記光学系の収差データを学習して得た学習済みモデルを用いて、撮像された画像に基づき収差を取得する収差取得部と、前記収差に基づき、前記駆動部を制御し、前記収差を補正する制御部と、を有することを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動して収差を補正する補正群を含む光学系と、
前記補正群を移動させる駆動部と、
前記光学系によって形成された光学像を撮像する撮像素子と、
画像と前記光学系の収差データを学習して得た学習済みモデルを用いて、撮像された画像に基づき収差を取得する収差取得部と、
前記収差に基づき、前記駆動部を制御し、前記収差を補正する制御部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、画像と撮影条件に関する情報と前記収差データを学習して得られた学習済みモデルであり、
前記収差取得部は、前記学習済みモデルを用いて、前記撮像された画像と撮影条件に関する情報に基づき前記収差を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
得られた前記収差を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記収差に基づいて前記補正群の駆動量を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の前記収差に基づいて、前記駆動量を決定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された第1の期間の前記収差の平均値に基づいて、前記駆動量を決定することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前回の前記補正群の駆動以後に前記記憶部に記憶された全ての前記収差に基づいて、前記駆動量を決定することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前回の前記補正群の駆動以後に前記記憶部に記憶された全ての前記収差の近似式に基づいて、前記駆動量を決定することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記収差取得部は、前記学習済みモデルによって複数種類の収差を取得し、
前記制御部は、前記複数種類の収差に基づいて前記駆動量を決定する、
ことを特徴とする請求項3から7までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、シャッター速度、絞り値、ISO感度、焦点距離、物体距離、露出補正の少なくとも一つと、撮影された画像と、に基づき、収差を取得する、ことを特徴とする請求項2から8までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記学習済みモデルは、前記撮影条件により分類されて学習されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御部により前記駆動部を制御して収差を補正するタイミングと、前記収差取得部が前記収差を決定するタイミングと、が異なることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記収差取得部は、撮像するごとに前記学習済みモデルを用いて、収差を取得し、前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項3から7までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記収差取得部は、予め定められた撮像回数ごとに前記学習済みモデルを用いて、収差を取得し、前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項3から7までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮像された画像と画像の収差データを学習して得た学習済みモデルを用いて、撮像された画像に基づき収差を取得し、
前記収差に基づき、前記収差を補正するために光学系を駆動する駆動量を取得し、
前記駆動量に基づき、前記光学系の駆動を制御し、収差を補正する、
ことを特徴とする収差補正方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、該コンピュータに請求項14に記載された収差補正方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、収差補正方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズの経時変化によって焦点検出や測光に生じた誤差を補正する技術が知られていた。例えば、特許文献1では、経時変化によって発生した焦点検出や測光における誤差を再調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-110115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、焦点検出に関する誤差を修正することが可能であるが、収差を補正することはできない。
【0005】
そこで本発明は、経時変化で発生するレンズ装置の収差を補正し高画質を維持する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、移動して収差を補正する補正群を含む光学系と、前記補正群を移動させる駆動部と、前記光学系によって形成された光学像を撮像する撮像素子と、画像と前記光学系の収差データを学習して得た学習済みモデルを用いて、撮像された画像に基づき収差を取得する収差取得部と、前記収差に基づき、前記駆動部を制御し、前記収差を補正する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経時変化によって発生するレンズ装置の収差を補正し高画質を維持する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における交換レンズの広角端での断面図
図2】実施例における収差補正の処理フロー
図3】実施例における収差補正要否の判定の説明図
図4】その他の実施例における収差補正要否の判定の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例]
以下、図1から図4を参照して、本発明の実施例による、収差補正方法および撮像装置について説明する。
1-2.構成
1-2-1.撮像装置の構成
まず、図1を参照して、本発明の実施例におけるレンズ鏡筒である交換レンズ100(一眼レフカメラ用交換レンズ)の構成について説明する。図1は、本実施例における交換レンズ100の広角端(ワイド端)において光軸(図中X方向)に平行な平面で切断した断面図である。
【0010】
本実施例の撮像装置としての交換レンズ100は、第1レンズ群L1~第7レンズ群L7からなる7群構成のレンズ装置である。交換レンズ100におけるフォーカシング動作(合焦動作)により、第6レンズ群L6であるフォーカスレンズ群と、第4レンズ群L4であるフローティングレンズ群とが光軸方向に移動する。また、交換レンズ100におけるズーミング動作(ズーム、変倍動作)により、全てのレンズ群(第1レンズ群L1~第7レンズ群L7)が、予め決められたそれぞれの軌跡に沿って光軸方向に移動する。
【0011】
交換レンズ100は、不図示のカメラ本体に着脱可能に接続される。カメラ本体は、交換レンズ100によって形成される光学像を受光するCCDやCMOS等の撮像素子を備える。交換レンズ100は、カメラ本体と着脱可能に構成され、カメラ本体と接続されることより撮像装置を構成する。
【0012】
レンズマウント111は、カメラ本体に取り付けるためのバヨネット部を有し、固定筒112に対してビスで固定されている。案内筒116は、固定筒112に対してビスで固定されている。
【0013】
案内筒116には各レンズ群を直進方向にガイドする直進溝が形成されている。また、案内筒116にはカム溝が備えられており、カム筒117にビスで固定された第3のカムフォロアと係合しカム筒をズームにより回転繰り出し可能に保持されている。
【0014】
ズーム操作筒118は案内筒116と径嵌合、及びバヨネットにより光軸中心に回転可能に保持されている。ズーム操作筒118に備えられたカム溝と直進筒の外側に備えられた第1のカムフォロア131、及び案内筒116の直進溝の作用により、ズーム操作筒118の回転力が直進筒122の直進に変換され、ズーム作動により直進筒122が直進する。
【0015】
ここで、直進筒122に備えられた第2のカムフォロア132は、カム筒117のカム溝にも係合しており、直進筒122の直進の動きがカム筒117の回転の動きに変換される。この時、前述のとおり、カム筒117はカム筒117に固定された第3のカムフォロアと案内筒116のカム溝が係合することで回転繰り出し可能に保持されていることから、結果として、直進筒122の直進の動きによってカム筒117は光軸に対して回転繰り出しが可能となっている。
【0016】
次に、カム筒117が案内筒116に対して回転繰り出しする力を利用して、各カムフォロアである第4のカムフォロア、第5のカムフォロアと各直進溝、各カム溝の作用により、後群ユニットと7群ユニット107が光軸方向に駆動可能な構成となっている。
以上の通り、本実施例における各レンズ群のメカ的な動きはズームリングの回転によって、
1:直進筒122が直進繰り出し、
2:カム筒117が回転繰り出し、
3:1群以外の各群が直進繰り出し、
という基本構成となっている。
【0017】
次に、各レンズ群について詳述する。
1群ユニット101は、第1レンズ群L1を保持する保持枠である。1群ユニット101は、直進溝、カム溝、および、コロによって光軸方向に直進移動される直進筒122に固定される。
【0018】
1群ユニット101の先端には外周側にはフード取り付け用のバヨネット部、内周側にはネジが備えられており、フィルター等のアクセサリが装着可能となっている。
【0019】
2群ユニット102は、第2レンズ群L2を保持する保持枠である。2群ユニット102は、振れ補正ユニット108の一部を構成している。振れ補正ユニット108は、2群ユニット102を光軸に直交する方向(光軸直交方向)に駆動可能に保持し、マグネットおよびコイルを備えて構成される振れ補正駆動部により2群ユニット102を駆動することで振れ補正を行う。振れ補正ユニット108は、案内筒116に不図示の固定手段にて保持されている。
【0020】
3群ユニット103は、第3レンズ群L3(第1の補正群)を保持する保持枠である。3群ユニット103は、第1の駆動手段141の一部を構成している。第1の駆動手段141は、3群ユニット103を光軸に直交する方向に駆動可能に保持し、マグネットおよびコイルを備えて構成される駆動部により3群ユニット103を駆動する。第1の駆動手段141は、後群ベース126に固定されており、後群ベース126に備えられた第4のカムフォロアによりズーム操作によって光軸方向に進退される。
【0021】
また、第1の駆動手段141は、絞り駆動部および絞り羽根部を備えて構成される電磁絞りユニット110をベース部で保持している。
【0022】
4群ユニット104は、フローティング群である第4レンズ群L4(第3の補正群)を保持する保持枠である。4群ユニット104は、後群ベース126に保持された2本のガイドバーによって直進案内される。レンズL4は、後群ベース126がズーム動作により光軸方向に進退し、さらに後群ベース126に対して第3の駆動手段143によって光軸方向に駆動される。
【0023】
5群ユニット105は、第5レンズ群L5(第2の補正群)を保持する保持枠である。5群ユニット105は、第2の駆動手段142の一部を構成している。第2の駆動手段142は、5群ユニット105を光軸に直交する方向に駆動可能に保持し、マグネットおよびコイルを備えて構成される駆動部により5群ユニット105を駆動する。第2の駆動手段142は後群ベース126に固定されており、後群ベース126がズーム操作によって光軸方向に進退される動きによって同時に進退される。
【0024】
6群ユニット106は、フォーカス群である第6レンズ群L6(第4の補正群)を保持する保持枠である。6群ユニット106は、後群ベース126に保持された2本のガイドバーによって直進案内される。レンズL6は、後群ベース126がズーム動作により光軸方向に進退し、さらに後群ベース126に対して第4の駆動手段によって光軸方向に駆動される。
【0025】
7群ユニット107は、第7レンズ群L7を保持する保持枠である。7群ユニット107は第5のカムフォロアによってズーム操作によって光軸方向に進退される。
【0026】
ズーム操作筒118の回転情報は、不図示のズーム回転検出手段により検出され制御手段(制御部)119で処理される。
【0027】
フォーカス操作筒114の回転情報は、不図示のフォーカス回転検出手段により検出され制御手段119で処理される。
【0028】
制御手段119は、第1の駆動手段141~第4の駆動手段、電磁絞りユニット110、振れ補正ユニット108などの交換レンズ100全体の制御を行う。
【0029】
実施例における光学調整について以下に説明する。3群ユニット103、5群ユニット105の光軸に直交する方向の移動によってコマ収差及び片ボケの調整が行われる。さらに4群ユニット104、6群ユニット106の光軸方向の移動により像面湾曲及び球面収差の調整が行われる。上述したように3群ユニット103、5群ユニット105は第1の駆動手段、第2の駆動手段によって位置制御されているため、ズームやフォーカスによって常に一定である必要はなく、ズーム状態、フォーカス状態それぞれにおいて光学性能が最良となる位置に保持される。4群ユニット104、6群ユニット106についても同様である。
【0030】
1-2-2.全体の処理フロー
図2を用いて、本実施例における収差補正手段(収差取得部)120の処理について説明する。収差補正手段120は、後述する、判定部、記憶部、決定部、格納部を有する。
【0031】
ステップS1では、撮像装置を用いて、撮影画像の取得を行う。
ステップS2では、学習済みモデルを使用して撮像画像に対して収差認識処理が実行される。
【0032】
ステップS3では、ステップS2での収差認識処理の結果、収差の評価可能か否かが判定部により判定される。評価可能な場合は、ステップS4に進み、評価が不可能な場合は処理を終了する。
【0033】
ステップS4では、収差判定データから収差指標を算出する。ここでの収差指標の算出においては、収差の種類に応じて収差量を正規化する。
【0034】
ステップS5では、収差指標を不図示の記憶部に記憶する。収差指標は撮影(シャッターが切られる)ごとに取得されるので、撮影を繰り返すことで、収差指標が蓄積されることになる。
【0035】
ステップS6では、記憶部に記憶された収差指標を用いて、駆動手段(第1・第2・第3・第4の駆動手段)を駆動する(収差を補正する)べきか否かを判定する。収差を補正する場合は、ステップS7へ進み、補正する必要がない場合は処理を終了する。
【0036】
ステップS7では、ステップS4において算出された収差指標に基づいて駆動手段の駆動量を求め、該駆動量に基づき制御手段は駆動手段を動作させる。収差指標と駆動手段の駆動量の関係性は、予め不図示の格納部に保存されている。
【0037】
1-2-3.収差認識処理
本実施例の収差補正手段120によるステップS2の収差認識処理について説明する。
まず初めに、不図示の格納部について説明する。
収差補正手段120は、交換レンズ100を用いて撮影した画像である教師画像と、その教師画像に含まれる収差の種類と収差の特徴量(収差データ)と、を教師データとして機械学習した学習済みモデルが格納部に保存されている。教師データとして、前記教師画像を得たときの撮影パラメータを含むとより好ましい。教師画像は、収差が発生した際に、その収差の影響が分かりやすく判別できる被写体が撮影された画像である。例えば、点光源・星・葉・枝などを撮影した画像があげられる。
【0038】
また、学習済みモデルを作成する段階においては、教師データとして、様々な種類や特徴量の収差を与える条件で撮影した画像や、撮影条件を含めるようにすると、より高精度で収差の種類と特徴量を特定できるようになるので好ましい。また、学習済みモデルを作成する段階において、設計上考えられる誤差を適切に考慮しているとなおよい。設計上考えらえる誤差とは、レンズや部品の公差や、設計上考えられる性能変化である。あるいは、駆動手段の駆動量を変えることで、意図的に収差を発生させた交換レンズ100をあらかじめ用意して撮影した撮影画像を学習画像として用いてもよい。
【0039】
このように教師画像と、教師画像に含まれる収差の種類と収差の特徴量とを教師データとして機械学習した学習済モデルを使用することにより、撮像した画像を入力データとして、その画像での収差評価の可否を出力データとして取得することができる。さらに、収差評価が可能な場合には、収差の種類とその収差の特徴量を出力データとして取得することができる。
【0040】
教師画像を撮影した時の撮影パラメータの条件ごとに機械学習した複数の学習済モデルを準備し、撮影パラメータの条件ごとに分類した撮像画像に対して対応する学習済みモデルを適用して収差の種類とその収差の特徴量を出力データとして取得するようにしてもよい。または、教師画像を撮影した時の撮影パラメータを教師データに含めて機械学習した学習済モデルを使用することにより、撮影パラメータも入力データに含めた、高精度でより柔軟性を有して、収差の種類とその収差の特徴量を出力データとして取得するようにしてもよい。撮影パラメータとは、教師画像を撮影した際の各々の固有の値である。例えば、撮影日時・シャッター速度・絞り値・ISO感度・フラッシュ使用の有無・露出補正値・焦点距離・物体までの距離(物体距離、ToFセンサーを備える撮像装置の場合)である。
【0041】
1-2-4.駆動手段の駆動の要否判定
実施例における制御手段119のステップS6の処理フローについて説明する。ステップS5において、記憶部に記憶された収差指標が呼び出される。
【0042】
図3に、収差補正手段120の決定部の処理の一例を示す。図3は、収差判定データの数(撮影回数に比例)に応じた収差指標を示している。収差判定データが増加するとともに収差指標が増加している。これは、撮像装置の撮影回数が増え、交換レンズ100の可動部の駆動回数が増加するとともに、交換レンズ100の収差が大きくなっていることを示している。また、収差判定データの数が90回に達したところで、収差指標が減少している理由は、後述のとおり駆動手段が動作して収差が低減しているためである。
【0043】
図3に示された判定期間は、ステップS6の処理で駆動手段を動作させるか否か判定するために参照するデータの範囲である。本実施例においては、判定基準を収差指標の1.0と設定した上で、直近の10個(第1の期間)のデータの平均値を取得して、平均値が1.0を超えたら駆動手段を作動するように設定している。
【0044】
1-2-5.点光源撮影時の動作の一例として効果の説明
図2を用いて、撮影画像としての点光源を含む被写体を撮影したときの、駆動手段の動作と効果について説明する。
撮影条件は、下記の通りである。
撮影日時:2019/11/26 17:03
シャッター速度:1/320(秒)
絞り値:F1.8
ISO感度:ISO100
フラッシュ使用の有無:無し
露出補正値:0
焦点距離:50mm
初めに、ステップS1で、撮影画像が取得される。
【0045】
ステップS2では、格納部に格納された学習済みモデルを使用して、撮影画像の入力データに対して、収差判定情報が出力データとして得られる。ここで、収差判定情報とは、撮像画像に学習済みモデルを適用して収差を定量的に評価可能か否かの情報と、評価可能な場合は、収差の種類と収差の特徴量を含む情報である。この学習済みモデルを適用して得られた収差判定情報に基づき、収差の一例としてのコマ収差を検出し、コマ収差の形状や大きさを判定することができる。
【0046】
ステップS3では、ステップS2で得られた収差判定情報に基づき、収差の評価が可能であればステップS4に進み、収差の評価が不可能であれば処理を終了する。
【0047】
ステップS4では、例えばコマ収差の場合、コマ収差の尾の長さを特徴量とし、許容限界を1.0として正規化し、収差指標として算出する。コマ収差が発生した点光源は、尾を引いたような像の流れやにじみを生じることが知られている。仮に非点収差であれば、点光源に対する楕円形状の像の短辺長さと長辺長さを収差指標とすることができる。
【0048】
ステップS5では、ステップS4で得られた収差指標を記憶部に記憶する。複数の撮影による収差指標を保存することで、後述するステップS6での判定の信頼性を向上させている。仮に専門家が使用する収差判定用の光学チャートを用いれば、1回の撮影画像から信頼ある判定ができると考えられる。しかし、専門知識や専門設備が必要になるため、一般ユーザーには不便である。そこで、本発明の収差認識処理の結果は、収差評価用に用意された光学チャート等の特別な被写体ではなく、通常の撮影で一般的に撮影された撮影画像から収差指標を算出することを特徴としている。
【0049】
図3を用いてステップS6の処理を説明する。
図3は、収差判定データの数(横軸)に対する収差指標(縦軸)を示している。収差判定データの数が増加するとともに収差指標が増加していることがわかる。これは、交換レンズ100の撮影回数が増加するとともに、収差が大きくなっていたためである。
【0050】
図3に示す判定期間は、ステップS6の処理において、駆動手段を動作させるか否か判定するために参照する収差指標のデータの範囲である。判定基準の閾値を収差指標の1.0と設定したので、直近の10個のデータの平均値が1.0を超えた時点で、駆動手段の作動(収差の補正)が必要と判定している。図3の例では、最終的に収差判定データの数が90になったときに収差指標が1.0を超えたため、駆動手段を動作するべきと判断された。ステップS6は、上述のとおり、複数のデータの平均値に基づいて駆動手段の作動有無の判定を行った。そのため、測定誤差等による取得した収差指標のばらつきの影響を低減した信頼性の高い判定を行うことができる。
【0051】
ステップS7では、ステップS6から受け取った収差指標から駆動手段の駆動量を決定し、制御手段119に駆動量を指令する。
このように、本発明の技術は、ユーザーが撮影した撮影画像を入力値として、自動的にあるいは能動的に収差を補正している。経時変化によって発生した収差や、不慮に発生した収差も自動的に補正している。ユーザーが行う特別な操作は必要ではなく、通常の使用の中で撮影される画像が収差の発生状況を判断する対象となっているため、利便性が高い。撮像装置の生産者から撮像装置がユーザーの手に渡った後も長期間に渡り、高い性能を維持することができる。収差認識処理の実行と収差指標の取得は、シャッターが切られるたびに実行されるようにしてもよいし、シャッターが切られた所定の回数ごと(予め定められた撮像回数ごと)に実行されるようにしてもよい。所定の撮影回数は、装置の状態、撮影条件、環境条件などを考慮して適宜設定することができる。いずれにしても、通常の撮像装置の使用中に、ユーザーが収差補正を意識することなく収差が評価され、例示したような処理フローに基づき必要に応じて補正光学系が移動して収差が補正される。
【0052】
1-2-6.判定の性能向上の手法
本発明の技術の精度を向上する手法について、代表的な例について述べる。
第一の手法として、図4を用いて、ステップS6とは異なるステップS6bについて説明する。ステップS6bは、ステップS6と比較して判定期間とその期間中の収差指標の算出方法が異なる。ステップS6bは、判定期間を、前回の補正群の駆動以後(前回の収差の補正以後)の全期間として、全ての収差判定データを用いている。全期間の収差指標を判定関数F(x)(x:収差判定データ数)の近似式で近似して、判定関数F(x)の値が1.0を超えた時点で駆動手段の駆動が必要であると判定している。本実施例では、判定関数F(90)>1.0となったため、駆動手段を動作するべきと判断された。
【0053】
判定期間は、全期間としたが、動的に決定されても構わない。例えば、撮像装置に備えられた加速度センサーが大きな加速度を検出したときは、収差指標が大きく変化することが予想できる。よって、判定期間は、収差指標が大きく変化したときから開始すればよい。
【0054】
第二の手法として、ステップS6とは異なるステップS6cについて説明する。ステップS6cは、複数の収差指標を用いて判定する。例えば、複数種類の収差が発生しているときは、複数の収差指標を予め定めた評価方法に基づいて最小化するように駆動手段の動作方法を決定すればよい。ここで予め定めた評価方法とは、例えば、撮影条件に基づいて定まる優先的に低減すべき収差ほど大きい評価値が付されるように重み付けされた評価方法であってもよい。または、各種類の収差それぞれを個別に独立して評価し、各収差の種類に対して設定された閾値に対してそれぞれの収差指標が評価されるようにしてもよい。
【0055】
第三の手法として、ステップS6とは異なるステップS6dについて説明する。ステップS6dは、判定に使用する収差指標を撮影条件により限定する。例えば、球面収差・コマ収差・非点収差などの収差は、絞り値が最小の時に最も収差が大きく発生する。そのため、絞り値が最小の時に限った収差指標を選択的に用いて評価することで、ステップS6dの処理の精度を向上することができる。絞り値に限らず、焦点距離・光源の色など、収差が大きく表れやすい撮影パラメータで限定した母集団に対して評価することで、収差の補正の精度をより向上することができる。
【0056】
第四の手法として、異なる類似被写体で撮影された収差指標から判断することで、万一被写体が収差の形をしていた場合に発生しうる過補正を予防することができる。
【0057】
第五の手法として、ステップS1の撮影画像の取得時に、フォーカスブラケット撮影を行って、フォーカス位置(合焦距離)を変えた撮影を行い、ステップS2の収差認識処理に入力するデータの数を増やすことも有効である。
【0058】
第六の手法として、ステップS6とは異なるステップS6eについて説明する。ステップS6eは、収差指標の閾値以外の判定基準も考慮して、ステップS7の駆動手段を動作させるタイミングを調整する。撮影中に駆動手段が動作して、収差がなくなると、連続した撮影写真を見たときに違和感を覚える恐れがある。したがって、連続する撮影が終わったら、補正するなど、収差指標以外の指標を考慮してステップS7に進むことがよりよい。
【0059】
第七の手法として、ステップS1における撮影画像取得の際に、焦点距離を意図的に変化させて撮影を行って、ステップS2の収差認識処理への入力データの数を増やすことも有効である。このような撮影により、ステップS2の収差認識処理に供する入力データとして、撮影条件を微小なステップで変化させた複数の撮影で得られた複数の撮像画像を使用することにより、収差指標の信頼性をさらに高めることもできる。
【0060】
本実施例において、第1と第2の駆動手段は光軸に直交する方向に可動な構成としていたが、本発明はそれに限定されることはない。例えば、レンズ装置の光軸に対して光軸を傾けることが可能な構成を有する補正レンズ群であってもよく、これらの組み合わせの駆動が可能な構成であってもよい。もしくは駆動手段が1つのみの構成であってもよい。これら補正光学系の数、駆動方法、駆動方向などについては、光学系が収差を補正するために適切な方法を選ぶことが可能である。
【0061】
本実施例において、第1~第4の駆動手段により、コマ収差、片ボケ、像面湾曲および球面収差を補正する群であるとしたが、これらの構成全てが必要というわけではなく、単一の駆動手段により1つの収差を補正するような構成であってもよい。例えば、各レンズ群が変動した時にコマ収差の変化が極めて小さいような光学系の場合には、コマ収差を調整する群を設ける必要はない。
【0062】
本実施例において、光軸に直交する方向に移動する駆動部として第1と第2の駆動手段の他に振れ補正ユニット108があったが、振れ補正ユニット108を収差補正に用いても良い。収差補正に用いる場合には、振れ補正ユニット108で駆動される2群ユニット102の駆動中心位置をオフセットさせ、オフセットさせた位置を中心に振れ補正のために駆動させるような方法が適切である。
【0063】
本実施例において、収差補正手段120は、交換レンズ100に構成されていたが、カメラ本体に構成されていてもよい。また、収差補正手段120の一部がカメラ本体に構成されていてもよい。例えば、カメラ本体に判定部を構成して、交換レンズ100に記憶部・決定部・格納部を構成してもよい。さらに、本実施例のカメラ本体と交換レンズ100は、着脱可能な構成について述べたが、一体型の構成であっても構わない。
【0064】
本実施例において、収差補正手段120は、機械学習による画像認識を用いたが、これに限定されるものではない。ディープラーニング技術を用いてもよい。
【0065】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例及び変形例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。コンピュータは、1つ又は複数のプロセッサー若しくは回路を有し、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために、分離した複数のコンピュータ又は分離した複数のプロセッサー若しくは回路のネットワークを含みうる。
【0066】
プロセッサー又は回路は、中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA)を含みうる。また、プロセッサー又は回路は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、データフロープロセッサ(DFP)、又はニューラルプロセッシングユニット(NPU)を含みうる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の実施例及び各変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
100:交換レンズ
L3: 第1の補正群
141:第1の駆動手段
L5: 第2の補正群
142:第2の駆動手段
L4: 第3の補正群
143:第3の駆動手段
L6: 第4の補正群
119:制御手段(制御部)
120:収差補正手段(収差取得部)
図1
図2
図3
図4