(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062836
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】接続構造、構造体、および、構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220414BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
E04B1/58 505L
E04B1/26 E
E04B1/58 503L
E04B1/58 504L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170992
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】山木戸 勇也
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 雅晴
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG13
2E125AG22
2E125BB09
2E125BB22
2E125BB33
2E125BD01
2E125BD02
2E125BE08
2E125CA82
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させた接続構造、該接続構造を有する構造体、該構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】木製構造部材11は、木製芯材21と、木製芯材21の外側の耐火材22と、耐火材22の外側の木製構造部材仕上げ材23と、を有する。PC製構造部材12は、PC製芯材31と、PC製芯材31の外側のPC製構造部材仕上げ材32と、を有する。木製構造部材11とPC製構造部材12との接続部分には、木製芯材21の端面である木製芯材端面24と、PC製芯材31の端面であるPC製芯材端面34との間に、セメント系充填材45が形成されている。木製構造部材仕上げ材23の端面である木製構造部材仕上げ端面30と、PC製構造部材仕上げ材32の端面であるPC製構造部材仕上げ端面40との間には、目地空間41が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製構造部材と、前記木製構造部材の仕口を構成するPC製構造部材と、を接続する接続構造であって、
前記木製構造部材は、木製芯材と、前記木製芯材の外側の耐火材と、前記耐火材の外側の木製構造部材仕上げ材と、を有し、
前記PC製構造部材は、PC製芯材を有し、
前記木製芯材の端面である木製芯材端面と、前記PC製芯材の端面であるPC製芯材端面との間に、セメント系充填材を有し、
前記木製構造部材仕上げ材の端面である木製構造部材仕上げ端面と、前記PC製構造部材の端面であるPC製構造部材端面との間に、目地空間を有する
接続構造。
【請求項2】
前記PC製構造部材は、前記PC製芯材の外側にPC製構造部材仕上げ材を有し、
前記木製構造部材仕上げ端面と、前記PC製構造部材仕上げ材の端面であるPC製構造部材仕上げ端面との間に、前記目地空間を有する
請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記セメント系充填材と前記目地空間との間に耐火充填材を有する
請求項1または2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記耐火充填材は、前記PC製芯材端面と前記耐火材の端面の間に設けられている
請求項3に記載の接続構造。
【請求項5】
前記耐火充填材と前記目地空間の間に耐火シールを有する
請求項3または4に記載の接続構造。
【請求項6】
木製構造部材と前記木製構造部材の仕口を構成するPC製構造部材とを接続する接続構造を有する構造体であって、
前記接続構造が請求項1~5のいずれか一項に記載の接続構造である
構造体。
【請求項7】
木製構造部材と前記木製構造部材の仕口を構成するPC製構造部材と接続することにより構築される構造体の施工方法であって、
前記木製構造部材は、木製芯材と、前記木製芯材の外側の耐火材と、前記耐火材の外側の木製構造部材仕上げ材と、を有し、
前記PC製構造部材は、PC製芯材を有し、
前記木製構造部材仕上げ材の端面である木製構造部材仕上げ端面と前記PC製構造部材の端面であるPC製構造部材端面との間に目地空間が形成されるように前記木製構造部材と前記PC製構造部材とを配置して、前記木製芯材の端面である木製芯材端面と前記PC製芯材の端面であるPC製芯材端面との間にセメント系充填材を注入して硬化させることにより、前記木製構造部材と前記PC製構造部材とを接続する
構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造、該接続構造を備えた構造体、および、該構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、木製構造部材を柱部材や梁部材に用いた構造体においては、柱部材と梁部材とを仕口部材を介して接続する接続構造が知られている。特許文献1において、柱部材は、両端部にベースプレートが設けられたH形鋼である接合用鉄骨部材を介して仕口部材に接続されている。梁部材は、仕口部材に固定された断面T字状の金物を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の接続構造は、柱部材に関しては、接合用鉄鋼部材のベースプレートを仕口部材や柱部材に対してねじ結合で連結する必要がある。一方、梁部材に関しては、仕口部材に対して金物のベースプレートをねじ結合で連結するとともに、梁部材に形成された凹溝部に金物のガセットプレートを挿入したのち、そのガセットプレートをドリフトピンなどの接合具を用いて梁部材に連結する必要がある。こうした作業の必要性から施工性が高いとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する接続構造は、木製構造部材と、前記木製構造部材の仕口を構成するPC製構造部材と、を接続する接続構造であって、前記木製構造部材は、木製芯材と、前記木製芯材の外側の耐火材と、前記耐火材の外側の木製構造部材仕上げ材と、を有し、前記PC製構造部材は、PC製芯材を有し、前記木製芯材の端面である木製芯材端面と、前記PC製芯材の端面であるPC製芯材端面との間に、セメント系充填材を有し、前記木製構造部材仕上げ材の端面である木製構造部材仕上げ端面と、前記PC製構造部材の端面であるPC製構造部材端面との間に、目地空間を有する。
【0006】
上記課題を解決する構造体は、上述した接続構造を有する。
上記課題を解決する構造体の施工方法は、木製構造部材と前記木製構造部材の仕口を構成するPC製構造部材と接続することにより構築される構造体の施工方法であって、前記木製構造部材は、木製芯材と、前記木製芯材の外側の耐火材と、前記耐火材の外側の木製構造部材仕上げ材と、を有し、前記PC製構造部材は、PC製芯材を有し、前記木製構造部材仕上げ材の端面である木製構造部材仕上げ端面と前記PC製構造部材の端面であるPC製構造部材端面との間に目地空間が形成されるように前記木製構造部材と前記PC製構造部材とを配置して、前記木製芯材の端面である木製芯材端面と前記PC製芯材の端面であるPC製芯材端面との間にセメント系充填材を注入して硬化させることにより、前記木製構造部材と前記PC製構造部材とを接続する。
【0007】
上述した接続構造、構造体、構造体の施工方法によれば、木製構造部材とPC製構造部材との接続構造の施工性を向上させることができる。
上記接続構造において、前記PC製構造部材は、前記PC製芯材の外側にPC製構造部材仕上げ材を有し、前記木製構造部材仕上げ端面と、前記PC製構造部材仕上げ材の端面であるPC製構造部材仕上げ端面との間に、前記目地空間を有することが好ましい。これにより、木製構造部材とPC製構造部材仕上げ材を有するPC製構造部材との接続構造の施工性を向上させることができる。
【0008】
上記接続構造は、前記セメント系充填材と前記目地空間との間に耐火充填材を有することが好ましい。これにより、木製構造部材とPC製構造部材との接続部分における耐火性を向上させることができる。
【0009】
上記接続構造において、前記耐火充填材は、前記PC製芯材端面と前記耐火材の端面の間に設けられていることが好ましい。これにより、木製構造部材とPC製構造部材との接続部分における耐火性をより向上させることができる。
【0010】
上記接続構造は、前記耐火充填材と前記目地空間の間に耐火シールを有することが好ましい。これにより、木製構造部材とPC製構造部材との接続部分における耐火性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】構造体の一実施形態の概略構成を示す斜視図であって、木製構造部材とPC製構造部材とが接続された部分に新たな木製構造部材とPC製構造部材とを接続する過程の一部を模式的に示す図。
【
図2】接続構造の一実施形態の概略構成を示す断面図であって、木製構造部材とPC製構造部材との接続部分を示す部分断面図。
【
図3】木製構造部材に対してPC製構造部材を接続する過程の一例を模式的に示す斜視図。
【
図4】第1棒状材が挿入された状態の一例を模式的に示す斜視図。
【
図5】PC製構造部材に対して木製構造部材を接続する過程の一例を模式的に示す斜視図。
【
図6】木製構造部材に対してPC製構造部材を接続する過程の一例を模式的に示す斜視図。
【
図7】第1棒状材が挿入された状態の一例を模式的に示す斜視図。
【
図8】PC製構造部材に対して木製構造部材を接続する過程の一例を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図8を参照して、接続構造、該接続構造を備えた構造体、該構造体の施工方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、構造体10は、柱あるいは梁として機能する木製構造部材11と仕口を構成するPC製構造部材12とを順次接続していくことにより構築される。PC製構造部材12は、プレキャストコンクリート製である。
【0013】
柱として機能する木製構造部材11は、複数の第1棒状材13を介してPC製構造部材12に接続される。梁として機能する木製構造部材11は、複数の第2棒状材14を介してPC製構造部材12に接続される。木製構造部材11は、第1棒状材13あるいは第2棒状材14が配設される木材側接続孔15を有している。PC製構造部材12は、第1棒状材13が配設される仕口側接続孔16を有している。PC製構造部材12には、第2棒状材14が固定されている。
【0014】
図2に示すように、木製構造部材11は、木製芯材21、耐火材22、木製構造部材仕上げ材23を有している。
木製芯材21は、木製構造部材11に作用する荷重に対して十分な強度を有する四角柱状の木材である。木製芯材21の端面である木製芯材端面24の中央部には、凹形状の木材側コッター25が形成されている。木製芯材端面24には、上述した複数の木材側接続孔15が開口している。複数の木材側接続孔15は、木材側コッター25を取り囲む位置に開口してもよいし、木材側コッター25に開口していてもよい。各木材側接続孔15は、木製芯材21の長手軸に沿って延びている。木材側接続孔15は、第1棒状材13あるいは第2棒状材14との間にミリメートルオーダーの隙間を形成する形状を有する。
【0015】
耐火材22は、木製芯材21を外側から覆っているとともに、木製構造部材11の端部において木製芯材端面24の外縁から突出するように設けられている。耐火材22は、本実施形態では3つの耐火層26で構成されている。各耐火層26は、例えば石膏ボードなど、軽量で耐火性に優れた複数のボード材で構成されている。各ボード材は、木製芯材21や内側のボード材に対して図示されないステープルなどの留め具によって固定されている。各耐火層26におけるボード材の繋ぎ目27は、内側、あるいは、外側に位置する他の耐火層26における繋ぎ目27と重なることのない位置に設けられる。これにより、木製芯材21が火災時に熱の影響を受けにくくなるため、木製構造部材11の耐火性を向上させることができる。耐火材22の端面である耐火材端面28は、各耐火層26の端面が面一となるように構成される。耐火材端面28は、木製芯材端面24よりもPC製構造部材12側に配置される。
【0016】
木製構造部材仕上げ材23は、耐火材22を外側から覆っている。木製構造部材仕上げ材23の端面である木製構造部材仕上げ端面30は、耐火材端面28と面一となる位置に配置される。木製構造部材仕上げ材23は、木製構造部材11の外観を木質状にするとともに火災時などに燃え代層として機能する。木製構造部材仕上げ材23は、耐火材22に対して図示されないビスなどによって固定されている。
【0017】
PC製構造部材12は、PC製芯材31とPC製構造部材仕上げ材32とを有している。PC製芯材31は、略直方体形状をなす芯材本体33を有している。芯材本体33は、木製構造部材11が接続される接続面34と、木製構造部材11が接続されない非接続面35を有している。
【0018】
柱として機能する木製構造部材11が接続される接続面34は、PC製芯材31の上面あるいは下面となる面である。当該接続面34には、第1棒状材13が配設される仕口側接続孔16が開口している。梁として機能する木製構造部材11が接続される接続面34は、PC製芯材31の側面となる面である。当該接続面34からは、第2棒状材14が外方に向かって延びている。各接続面34は、柱として機能する木製構造部材11の木製芯材端面24および耐火材端面28に対向配置される。
【0019】
各接続面34の中央部には、凹形状の仕口側コッター36が形成されている。仕口側コッター36は、木製構造部材11の木材側コッター25に対向配置される。なお、仕口側接続孔16は、仕口側コッター36を取り囲む領域に開口していてもよいし、仕口側コッター36の形成領域に開口していてもよい。また、第2棒状材14は、仕口側コッター36を取り囲む領域から延びていてもよいし、仕口側コッター36の形成領域から延びていてもよい。PC製芯材31は、芯材本体33の内部で仕口側接続孔16と第2棒状材14とが交わらないように形成されている。
【0020】
なお、棒状材13,14は、例えば、異形鉄筋、全ねじボルト、グラスファイバー筋など、木製構造部材11の木製芯材21よりも強度の高い部材で構成することができる。棒状材13,14は、木材側接続孔15の最奥部まで挿入された状態で、接続面34と耐火材端面28との間に10mm程度の隙間である内側空間37が形成可能となるように長さが規定される。
【0021】
非接続面35は、PC製芯材31の側面となる面であるとともにPC製構造部材仕上げ材32が組み付けられる面である。非接続面35の中央部には、仕上げ材凹部38が形成されている。仕上げ材凹部38には、複数の板材39が配設される。板材39は、PC製芯材31あるいは内側に位置する板材39に対して図示されないビスなどによって固定される。PC製芯材31に接する板材39は、PC製構造部材仕上げ材32の外表面と木製構造部材仕上げ材23の外表面とが面一となるようにPC製構造部材仕上げ材32の外表面の位置を調整する木材である。PC製構造部材仕上げ材32に接する板材39は、PC製構造部材仕上げ材32が固定される木材である。PC製構造部材仕上げ材32は、PC製構造部材仕上げ材32に接する板材39に対して図示されないビスなどによって固定される。PC製構造部材仕上げ材32は、非接続面35全体を覆っている。PC製構造部材仕上げ材32は、PC製構造部材12の外観を木質状にする。PC製構造部材仕上げ材32の端面であるPC製構造部材仕上げ端面40は、本実施形態において、PC製構造部材端面である。PC製構造部材仕上げ端面40と木製構造部材仕上げ端面30との間の隙間は、目地空間41である。なお、PC製構造部材12は、非接続面35が平面であり、その非接続面35にPC製構造部材仕上げ材32が固定される構成であってもよい。
【0022】
木製構造部材11の木製芯材21とPC製構造部材12のPC製芯材31とは、接続面34と木製芯材端面24との間に配設されるセメント系充填材45により連結される。セメント系充填材45は、第1棒状材13あるいは第2棒状材14の周囲を覆うように、また、木材側コッター25および仕口側コッター36を埋めるように注入されたセメント(例えばモルタルなど)が硬化することにより形成される。こうしたコッター25,36が形成されていることにより、接続部分における強度を高めることができる。
【0023】
接続面34と耐火材端面28との間の空間である内側空間37には、セメント系充填材45を外側から覆うように耐火充填材46が配設される。耐火充填材46は、例えばロックウールや耐火シートなどで構成される。また、内側空間37には、耐火充填材46を外側から覆うようにバックアップ材47が配設され、そのバックアップ材47を外側から覆うように耐火シール48が配設される。耐火シール48は、耐火充填材46と目地空間41との間に配設される。これら内側空間37に配設された各部材は、耐火性に優れた変形可能な材料で構成される。各部材は、火災時においては目地空間41および内側空間37を通じた木製芯材21への熱影響を抑えるとともに、地震時などにおいては木製構造部材11とPC製構造部材12との緩衝材として機能する。なお、目地空間41には、耐火充填材46や耐火シール48などが内側空間37から外れないように例えばゴムなどの弾性部材が配設されてもよい。
【0024】
(構造体の施工方法)
構造体10は、柱あるいは梁として機能する木製構造部材11を、PC製構造部材12を介して順次接続していくことにより構築される。木製構造部材11は、工場等において木製芯材21に対して耐火材22および木製構造部材仕上げ材23が取り付けられた状態で施工現場に搬入される。また、PC製構造部材12は、PC製芯材31にPC製構造部材仕上げ材32が取り付けられた状態で施工現場に搬入される。
【0025】
図3に示すように、まず、構造体10の基礎に対して、柱として機能する複数の木製構造部材11を所定の設置位置に設置する。次に、それらの木製構造部材11のなかで基準となる木製構造部材11aに対してPC製構造部材12aを接続する。
【0026】
木製構造部材11aとPC製構造部材12aとを接続する際には、木製構造部材11aの上方において仕口側接続孔16と木材側接続孔15とが連通するように位置を合わせたのち(位置合わせ工程)、仕口側接続孔16と木材側接続孔15とに上方から第1棒状材13を挿入する(棒状材挿入工程)。そして、内側空間37および目地空間41が形成されるようにPC製構造部材12aを配置する(目地空間形成工程)。
【0027】
次に、
図4に示すように、矢印のように内側空間37および目地空間41を通じて、木製芯材端面24とPC製芯材31の接続面34との間にセメントを注入して硬化させ、セメント系充填材45を形成する(セメント系充填材形成工程)。このとき、セメントは、その一部が木材側接続孔15および仕口側接続孔16へと流れ込んで硬化する。
【0028】
セメント系充填材45を形成したのち、内側空間37に対して、ロックウールや耐火シートなどを配設してセメント系充填材45を覆うように耐火充填材46を形成する(耐火充填材形成工程)。そして、耐火充填材46を覆うようにバックアップ材47を配設したのち、そのバックアップ材47を外側から覆うように耐火シール48を形成する(耐火シール形成工程)。こうして木製構造部材11aとPC製構造部材12aとが接続される。
【0029】
次に、
図5に示すように、PC製構造部材12aに対して梁として機能する木製構造部材11dを接続する。この場合、PC製構造部材12aの第2棒状材14と木製構造部材11dの木材側接続孔15との位置を合わせる(位置合わせ工程)。そして木製構造部材11dをPC製構造部材12aに近づけて木材側接続孔15に第2棒状材14を挿入する(棒状材挿入工程)。セメント系充填材形成工程では、内側空間37および目地空間41が形成されるように木製構造部材11dを配置し、それら内側空間37および目地空間41を通じて、木製芯材端面24とPC製芯材31の接続面34との間にセメントを注入して硬化させる。このとき、セメントは、その一部が木製構造部材11dの木材側接続孔15へと流れ込んで硬化する。そして、耐火充填材形成工程、耐火シール形成工程を経て、PC製構造部材12aに木製構造部材11dが接続される。
【0030】
次に、PC製構造部材12aに対して柱として機能する木製構造部材11eを接続する。この場合、位置合わせ工程では、PC製構造部材12aから突出している第1棒状材13と木材側接続孔15との位置を合わせる。棒状材挿入工程では、PC製構造部材12aに木製構造部材11eを近づけて木材側接続孔15に第1棒状材13を挿入する。第1棒状材13の先端部が木材側接続孔15の最奥部に到達すると、内側空間37および目地空間41が形成される位置に木製構造部材11eが配置される。そして、セメント系充填材形成工程、耐火充填材形成工程、耐火シール形成工程を経て、PC製構造部材12aに木製構造部材11eが接続される。
【0031】
図6に示すように、木製構造部材11bおよび木製構造部材11dに対してPC製構造部材12bを接続する際には、まず、木製構造部材11dとPC製構造部材12bとの位置合わせ工程を行ったのち、木製構造部材11dの木材側接続孔15に第2棒状材14を挿入する。
【0032】
次に、
図7に示すように、木製構造部材11bとPC製構造部材12bとの位置合わせ工程を行ったのち、PC製構造部材12bの仕口側接続孔16と木製構造部材11bの木材側接続孔15とに対して第1棒状材13を挿入する。
【0033】
そして、木製構造部材11b,11dの各々との間に内側空間37および目地空間41が形成されるようにPC製構造部材12bを配置したのち、木製構造部材11b,11dの各々についてセメント系充填材形成工程を行う。セメント系充填材形成工程のあと、木製構造部材11b,11dの各々について、耐火充填材形成工程、耐火シール形成工程を行うことで、木製構造部材11b,11dにPC製構造部材12bが接続される。
【0034】
図8に示すように、PC製構造部材12bに対しては、上述した各種工程を経て木製構造部材11f、11gが接続される。
以後、このようにして木製構造部材11とPC製構造部材12との接続が順次繰り返されることにより、構造体10が構築される。
【0035】
本実施形態の効果について説明する。
(1)上述した接続構造においては、木製構造部材11とPC製構造部材12との間に形成される内側空間37および目地空間41と通じてセメント系充填材45を形成することができる。これにより、木製構造部材11とPC製構造部材12との接続構造の施工性を向上させることができる。
【0036】
(2)セメント系充填材45と目地空間41との間である内側空間37に耐火充填材46が配設されている。これにより、火災時において、内側空間37を通じた熱影響を木製芯材21が受けにくくなる。その結果、木製構造部材11とPC製構造部材12との接続部分における耐火性能をより確実に確保することができる。
【0037】
(3)耐火充填材46は、木製構造部材11の耐火材端面28とPC製構造部材12の接続面34との間の内側空間37に配設されている。これにより、火災時における木製芯材21への熱影響を効果的に抑えることができる。その結果、接続部分における耐火性能を高めることができる。
【0038】
(4)耐火充填材46と目地空間41との間に耐火シール48が配設されている。これにより、火災時における木製芯材21への熱影響をさらに効果的に抑えることができる。その結果、接続部分における耐火性能をより高めることができる。
【0039】
(5)耐火材端面28が木製芯材端面24よりもPC製構造部材12側に配置されている。これにより、木製芯材端面24がより奥まった場所に配置されることから、接続部分における耐火性能をさらに高めることができる。また、耐火充填材46の形成に必要なロックウールや耐火シートなどの部材量も低減できる。
【0040】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・セメント系充填材45と目地空間41との間には、耐火充填材46および耐火シール48の一方が配設されている構成であってもよい。また、耐火充填材46および耐火シール48の双方が配設されていなくともよい。
【0041】
・耐火充填材46は、内側空間37のみならず目地空間41に配設されていてもよい。
・木製構造部材11は、木製芯材21に対する耐火材22に取付、耐火材22に対する木製構造部材仕上げ材23の取付が施工現場で行われてもよい。こうした構成においては、セメントを注入する注入孔が木製芯材21に形成されていることが好ましい。注入孔は、最奥部において木材側接続孔15に連通している。これにより、木材側接続孔15において棒状材13,14の周囲にセメントをより確実に注入することができる。
【0042】
・PC製構造部材12は、PC製芯材31に対するPC製構造部材仕上げ材32の組み付けを施工現場で行われてもよい。
・木材側コッター25および仕口側コッター36は、木製芯材端面24を凹凸面とするものであればよく、凹形状であってもよいし、凸形状であってもよい。
【0043】
・接続構造は、柱として機能する木製構造部材11とPC製構造部材12との接続部分にのみ適用されてもよいし、梁として機能する木製構造部材11とPC製構造部材12との接続部分にのみ適用されてもよい。
【0044】
・PC製構造部材12は、PC製構造部材仕上げ材32を有していなくともよい。この場合、PC製芯材31の非接続面35は、平面状であってもよい。また、接続面34がPC製構造部材端面として機能する。接続面34に木製構造部材仕上げ端面30が対向配置されることで木製構造部材仕上げ端面30と接続面34との間に目地空間が形成される。
【符号の説明】
【0045】
10…構造体、11,11a,11b,11d,11e,11f,11g…木製構造部材、12,12a,12b…PC製構造部材、13…第1棒状材、14…第2棒状材、15…木材側接続孔、16…仕口側接続孔、21…木製芯材、22…耐火材、23…木製構造部材仕上げ材、24…木製芯材端面、25…木材側コッター、26…耐火層、27…繋ぎ目、28…耐火材端面、30…木製構造部材仕上げ端面、31…PC製芯材、32…PC製構造部材仕上げ材、33…芯材本体、34…接続面、35…非接続面、36…仕口側コッター、37…内側空間、38…仕上げ材凹部、39…板材、40…PC製構造部材仕上げ端面、41…目地空間、45…セメント系充填材、46…耐火充填材、47…バックアップ材、48…耐火シール。