(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062870
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂材の成形品製造装置および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20220414BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220414BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/02
B29C70/46
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171042
(22)【出願日】2020-10-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】514154503
【氏名又は名称】株式会社The MOT Company
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲済▼藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】首藤 祥史
【テーマコード(参考)】
4F202
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AK02
4F202AK08
4F202CA09
4F202CB01
4F202CL02
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN13
4F202CN18
4F202CN20
4F205AC03
4F205AD16
4F205AK02
4F205AK11
4F205HA08
4F205HA22
4F205HA32
4F205HA35
4F205HA43
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
(57)【要約】
【課題】プレスによる繊維強化樹脂材の成形品製造におけるサイクルタイムを短縮してハイサイクルな量産化を促進可能とする。
【解決手段】上下一対の金型に熱エネルギーを供給する加熱手段を、加熱圧縮成形の処理後に前記一対の金型を冷却する冷却手段を介して当該上下の金型の各背面に接離可能に配置した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有する上金型とコアを有する下金型からなる上下一対の金型を用いたプレス成形による繊維強化樹脂材の成形品製造装置であって、
上下一対の金型に熱エネルギーを供給する加熱手段を前記一対の金型を冷却する冷却手段を介して当該一対の金型の各背面に設置すると共に、前記冷却手段とは接離可能に配置したことを特徴とする繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【請求項2】
前記上金型と前記下金型に熱エネルギーを供給する手段が、前記上下加熱プレートに設けた空洞に装填したカートリッジヒーター又は高周波電源であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【請求項3】
前記上冷却プレートと前記下冷却プレートとで前記上金型と前記下金型を冷却する冷却手段が、前記上冷却プレートと前記下冷却プレートに埋設した蛇管を流れる冷水又は油であることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【請求項4】
キャビティを有する上金型とコアを有する下金型を用いたプレス成形による繊維強化樹脂材の成形品製造方法であって、
前記上金型は、前記キャビティとは反対側である背面に接合配置された上冷却プレートと、前記上冷却プレートに対して接離可能に熱的接触配置された上加熱プレートとで上側ユニットを構成し、前記下金型は、前記コアとは反対側である背面に接合配置された下冷却プレートと、前記下冷却プレートに対して接離可能に熱的接触配置された下加熱プレートとで下側ユニットを構成してなり、
前記上側ユニットを構成する前記上金型のキャビティと前記下側ユニットを構成する前記下金型のコアの間で当該下金型の前記コアの上に繊維強化樹脂素材を挿置する素材挿置工程と、
前記上側ユニットを構成する前記上金型の背面に接合されている上冷却プレートに接して設けられた前記上加熱プレートおよび前記下金型の背面に接合されている前記下冷却プレートに接して設けられた下加熱プレートを介して、前記上金型と前記下金型に熱エネルギーを伝達・供給した状態で前記繊維強化樹脂素材を加圧して加熱・圧縮しながらプレス成形するヒート工程と、
所要の加熱・圧縮処理の時間経過後、前記上金型と前記下金型への熱エネルギーの供給を停止すると共に、前記上冷却プレートおよび前記下冷却プレートに冷却媒体を供給して前記上金型と前記下金型および前記繊維強化樹脂素材を所与の温度に冷却するクール工程と、
前記繊維強化樹脂素材が所要の温度に冷却された時点で前記上側ユニットと前記下側ユニットとの加圧を解除して前記上金型と前記下金型を開き、繊維強化樹脂材成形品を取り出す成形品取出す工程と、
を含むことを特徴とする繊維強化樹脂材の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記上金型と前記下金型への熱エネルギーの供給を停止する際に、前記上加熱プレートおよび前記下加熱プレートのそれぞれと前記上冷却プレートおよび前記下冷却プレートとの熱接合を解除する加熱プレート退避工程を含むことを特徴とする請求項に記載の繊維強化樹脂材の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維と組み合わせることで強度を高めた繊維強化樹脂材の成形品製造装置およびこの成形品製造装置を用いた繊維強化樹脂材の成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のガラス繊維、炭素繊維の他、使用される繊維としてはセルロース、ボロンやアラミド等の合成樹脂の繊維が知られている。これらの繊維を連続繊維あるいは不連続繊維(短繊維)として熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を含浸もしくは混合した素材は、プリプレグやシートモールディング・コンパウンド(SMC)、あるいはテープ状、シート状、マット状などの形態とした繊維強化樹脂素材(加工材)で提供される。
【0003】
上記の素材をプレスで所望の形状に成形して繊維強化樹脂材(FRP)成形品として製造され、建材や船舶あるいは航空機の構成材などの広い分野に供給されている。
プレス成形は、一対の金型(一般的には、一方:雌形状の上金型(キャビティ)、他方:雄形状の下金型(コア))を油圧シリンダあるいは電動モータで駆動されるスライドで上下させ、前記一対の金型の間(下金型の上)に挿置した加工素材(例えばプリプレグ)をプレスで加熱圧縮して所要の形状に成形し、冷却した後に上下の金型を開いて製品として取り出す。
【0004】
この種の先行技術を開示したものとしては、特許文献1を挙げることができる。特許文献1は入駒を使用したプレスでの加圧と加温の不均一による樹脂含浸のばらつきを入駒と加熱手段の間に弾性体を設けることで解消したプレス成形金型とそれを用いた成形方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プレスでプリプレグなどの成形素材を成形する際の金型による加熱圧縮の後に、製品を取り出すまでの形状安定に要する金型の冷却時間は生産時間(プロセスタイム、サイクルタイム)に大きく依存する。
特許文献1では、成型素材に所要の形状を付与するための一対の金型の一方の転写成型部と他方の転写成型部に加熱手段(ヒーター)が埋設されており、成型素材に直接的に熱エネルギーを供給するように隣接配置されている。一方、冷却手段としての冷水の流路は可動金型と固定金型の上記転写成型部とは反対側、すなわち、加熱手段の外側に設けられている。
【0007】
この構成では、加熱圧縮で所要の成型処理をした後に、冷却手段が金型(転写成型部)と成型品の温度を下げて金型を開いて成型品の取り出しができるまでにかなりの時間が必要となる。すなわち、ヒーターへの電力を停止して冷却手段に冷水を流しても金型(入駒)には相当量の余熱が残留しているので、冷却手段はこの余熱の吸い出しもしなければならず、金型の温度が成型品を取出し可能な値にさがるまでに長時間を必要とする。このことは、製造プロセスのサイクルタイム短縮の障害となり、所謂ハイサイクルを達成するために解決すべき課題となっている。
【0008】
本発明は、上記した先行技術の課題を解決し、プレスによる繊維強化樹脂材の成形品製造におけるサイクルタイムを短縮してハイサイクルな量産化を促進可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、上下一対の金型に熱エネルギーを供給する加熱手段を、加熱圧縮成形の処理後に前記一対の金型を冷却する冷却手段を介して当該金型の各背面に接離可能に配置した点を特徴とする。本発明は、以下を包含する。
【0010】
[1] キャビティを有する上金型とコアを有する下金型からなる上下一対の金型を用いたプレス成形による繊維強化樹脂材の成形品製造装置であって、
上下一対の金型に熱エネルギーを供給する加熱手段を前記一対の金型を冷却する冷却手段を介して当該一対の金型の各背面に設置すると共に、前記冷却手段とは接離可能に配置したことを特徴とする繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【0011】
[2] 前記上金型と前記下金型に熱エネルギーを供給する手段が、前記上下加熱プレートに設けた空洞に装填したカートリッジヒーター又は高周波電源であることを特徴とする[1]に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【0012】
[3] 前記上冷却プレートと前記下冷却プレートとで前記上金型と前記下金型を冷却する冷却手段が、前記上冷却プレートと前記下冷却プレートに埋設した蛇管を流れる冷水又は油であることを特徴とする[1]に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
【0013】
[4] キャビティを有する上金型とコアを有する下金型を用いたプレス成形による繊維強化樹脂材の成形品製造方法であって、
前記上金型は、前記キャビティとは反対側である背面に接合配置された上冷却プレートと、前記上冷却プレートに対して接離可能に熱的接触配置された上加熱プレートとで上側ユニットを構成し、前記下金型は、前記コアとは反対側である背面に接合配置された下冷却プレートと、前記下冷却プレートに対して接離可能に熱的接触配置された下加熱プレートとで下側ユニットを構成してなり、
前記上側ユニットを構成する前記上金型のキャビティと前記下側ユニットを構成する前記下金型のコアの間で当該下金型の前記コアの上に繊維強化樹脂素材を挿置する素材挿置工程と、
前記上側ユニットを構成する前記上金型の背面に接合されている上冷却プレートに接して設けられた前記上加熱プレートおよび前記下金型の背面に接合されている前記下冷却プレートに接して設けられた下加熱プレートを介して、前記上金型と前記下金型に熱エネルギーを伝達・供給した状態で前記繊維強化樹脂素材を加圧して加熱・圧縮しながらプレス成形するヒート工程と、
所要の加熱・圧縮処理の時間経過後、前記上金型と前記下金型への熱エネルギーの供給を停止すると共に、前記上冷却プレートおよび前記下冷却プレートに冷却媒体を供給して前記上金型と前記下金型および前記繊維強化樹脂素材を所与の温度に冷却するクール工程と、
前記繊維強化樹脂素材が所要の温度に冷却された時点で前記上側ユニットと前記下側ユニットとの加圧を解除して前記上金型と前記下金型を開き、繊維強化樹脂材成形品を取り出す成形品取出す工程と、
を含むことを特徴とする繊維強化樹脂材の成形品の製造方法。
【0014】
[5] 前記上金型と前記下金型への熱エネルギーの供給を停止する際に、前記上加熱プレートおよび前記下加熱プレートのそれぞれと前記上冷却プレートおよび前記下冷却プレートとの熱接合を解除する加熱プレート退避工程を含むことを特徴とする[4]に記載の繊維強化樹脂材の成形品の製造方法。
【0015】
上記構成における上下の金型に設けるキャビティ1aとコア2aは上下何れの金型に形成してもよい。また、本発明は入駒を用いる方式の金型にも適用できる。
【0016】
本発明は上記の構成及び後述する実施の形態で説明する実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱プレートを冷却プレートを備えた金型から退避させる構成としたことで、プレス加工における金型の冷却時間が大幅短縮され、ハイサイクルな量産化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の全体構成を説明する模式図
【
図2】
図1に示した本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の上面図
【
図3】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する上側ユニットの上金型を除いた構造の説明図
【
図4】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する下側ユニットの下金型を除いた構造の説明図
【
図5】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する冷却プレートの一例を説明する断面模式図
【
図6】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する加熱プレートの一例を説明する断面模式図
【
図7A】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造工程を説明する模式図
【
図7B】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造工程を説明する
図7Aに続く模式図
【
図8】本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造手順の一例を記述する流れ図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置と製造方法について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0020】
図1は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置(プレス機)の全体構成を説明する模式図、
図2は
図1に示した本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の上面図である。
図3は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する上側ユニットの上金型を除いた構造の説明図、そして
図4は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する下側ユニットの上金型を除いた構造の説明図である。
図1は、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の一実施例を示し、プレス機のベース13に設置されて、キャビティ1aを有する上金型1とコア2aを有する下金型2からなる上下一対の金型を用いたプレス成形装置である。なお、本実施例では、上金型1側に形成される雌(凹)形状をキャビティ1aとし、下金型2に形成される雄(凸)形状をコア2aとして説明しているが、キャビティ1a及びコア2aは、上下金型のいずれに形成されてもよく、特に限定するものではない。
【0021】
この成形品製造装置は、金型の加熱と冷却を行うヒートアンドクール成形に好適な装置であり、上下一対の金型(上金型1、下金型2)に熱エネルギーを供給する加熱手段(上加熱プレート5、下加熱プレート6)と冷却手段(上冷却プレート3、下冷却プレート4)を備える。
加熱手段(5、6)は金型(1、2)を冷却する冷却手段(3、4)を介して当該一対の金型(1、2)の各背面に設置すると共に、加熱手段(5、6)を冷却手段(3、4)とは接離可能に配置している。
【0022】
図2の上面図(上加熱プレート5の平面を示す)に示したように、本実施例の成形品製造装置は、矩形の上下金型に積層された矩形の上下冷却プレート(3、4)及び上下加熱プレート(5、6)を積層した構造である。
上加熱プレート5の四隅に穿設された上側ピン溝(ピン挿通穴)8a~8dには、
図3に詳しく示したように、上側ユニットピン7a~7d(7c~7dは不図示)が上下移動可能かつ抜け出しが制限された状態で挿通している(
図1参照)。
また、下加熱プレート6についても同様の構造となっていて、四隅に穿設された下側ピン溝(ピン挿通穴)10a~10dには、下側ユニットピン9a~9dが上下移動可能し、横ずれを抑制した状態で挿通している。下側ユニットピン9a~9dも、抜け出し可能になるように設置することができる。
なお、上下金型(1、2)は、それぞれ上下冷却プレート(3、4)と連結ネジ15で一体結合している。
【0023】
このように、上金型1は、キャビティ1aとは反対側である背面に接合配置された上冷却プレート3と、上冷却プレート3に対して接離可能に熱的接触配置された上加熱プレート5とで構成した上側ユニット100を有する。
また、下金型2は、コア2aとは反対側である背面に接合配置された下冷却プレート4と、下冷却プレート4に対して接離可能に熱的接触配置された下加熱プレート6とで構成した下側ユニット200を有する。
【0024】
上金型1のキャビティ1aと下金型2のコア2aの間に挿置した繊維強化樹脂素材14aを、上加熱プレート5と下加熱プレート6による加熱と、上金型1と下金型2との圧縮押圧でプレスし、上加熱プレート5と下加熱プレート6との接触を解除した状態で、かつ上下の金型はプレス状態を維持するようにロックした状態(中間ロック)で上冷却プレート3と下冷却プレート4とで上金型1と下金型2を冷却して繊維強化樹脂材を成形加工品とする。
【0025】
図3と
図4を参照して本実施例における繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する上側ユニット100と下側ユニット200を説明する。
なお、上側ユニット100と下側ユニット200は上下を反転した状態では同じ構造であるので、主として上側ユニット100について説明する。
【0026】
図1で説明したように、上側ユニット100は、
図1に示した上金型1のキャビティ1aとは反対側である背面に接合面16で熱的に接合配置された上冷却プレート3と、上冷却プレート3に対して接離可能に熱的接触配置される上加熱プレート5とで構成される。同様に、下金型2は、コア2aとは反対側である背面に接合面17で熱的に接合配置された下冷却プレート4と、下冷却プレート4に対して接離可能に熱的接触配置される下加熱プレート5とで構成される。
【0027】
上下の金型(1、2)と上下の冷却プレート(3、4)が“熱的接合で配置”されるとは、上下の金型(1、2)と上下の冷却プレート(3、4)とが良好な熱伝導するような一体的結合がなされていることを意味する。
通常、金型と冷却プレートは別部品として製作される。これをプレス装置に組み込むときに、金型と冷却プレートとを熱移動がスムーズとなるように接触配置する。
また、冷却プレート(3、4)と加熱プレート(5、6)が “熱的接触配置”されるとは、上記の“熱的接合で配置”の状態を作るが、その接触が解除可能とされるように構成されていることを意味する。
【0028】
プレスの開始時には、図示しないスライドによって上加熱プレート5は、上側ユニットバネ11a~11d(11c、11dの位置は
図2参照)に抗して上冷却プレート3に接触して上金型1と共に三者が一塊となって下側ユニット200に載置された繊維強化樹脂素材14aを圧縮するように下降する。
【0029】
上側ユニットバネ11a~11dは、上加熱プレート5が上冷却プレート3と圧接した状態ではバネ収容部18(上加熱プレートにのみ符号を付してある)に収容されるようになっている。
上加熱プレート5は、上側ユニットピン7a~7d(7c、7dは図示せず)が上下距離制限のための段差のある上側ピン溝8aを滑動することによって、上冷却プレート3と接離するようになっている。
なお、上加熱プレート5と上冷却プレート3との間隔をD1、上側ユニットピン7a~7dの上面と上加熱プレート5の背面(スライドで押される面)との距離d1は、D1≦d1で、例えば1mm≦D1≦30mmである(本実施例では5mm)。
【0030】
図5は、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する冷却プレートの一例を説明する断面模式図、
図6は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する加熱プレートの一例を説明する断面模式図である。
図5において、金属バルク材からなる上下冷却プレート(3、4)の内部には蛇管(冷却媒体流路)24、25が形成されており、本実施例ではこの中を冷却媒体として冷水を流す。なお、冷却媒体は冷却できるものであれば、特に限定されず、例えば、油であってもよい。
この冷却媒体は、冷却媒体源/開閉手段28から冷却媒体流路24、25を通り回収手段30に流通することで上下の金型(1、2)の温度を下げる。
【0031】
図6において、金属バルク材の上下の加熱プレート(5、6)には、複数本のカートリッジヒーター(26、27)が設置されて加熱プレート(5、6)を加熱している。
加熱プレート(5、6)が冷却プレート(3、4)を介して上下の金型(1、2)に熱エネルギーを供給している期間では、上下の冷却プレート(3、4)への冷却媒体の供給を停止する。
カートリッジヒーター(26、27)は、制御手段などで発熱コントロールとオン・オフが制御される。
【0032】
カートリッジヒーター(26、27)はジュール熱を熱源とするが、これに代えて高周波加熱コイルを用いた高周波電源等を用いることができる。すなわち、熱エネルギーを供給する手段は、加熱することができる加熱機器等、特に限定されるものではない。また、過熱蒸気を上記した冷却媒体流路と同様の蛇管に流して加熱をすることもできる。
【0033】
次に、上記した本発明にかかる成形品製造装置を用いた繊維強化樹脂素材からその成形品を製造する方法のプロセスの一実施例を説明する。
【0034】
図7Aは、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造工程を説明する模式図、
図7Bは
図7Aに続く成形品製造工程を説明する模式図である。そして、
図8は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造手順の一例を記述する流れ図である。
以下、
図7Aと
図7B及び
図8を参照して本発明に係る製造方法の1実施例を説明する。
【0035】
初期状態では、図示しないスライドは待機位置に停止しており、上側ユニット100と下側ユニット200は、
図1に示したように上金型1のキャビティ1aと下金型2のコア2aとが離間した状態となっている。
上金型1の背面には、上冷却プレート3が接合されており、この上冷却プレート3の背面に上加熱プレート5が上側ユニットバネ11a~11d(11c~11dは不図示)の伸張で離間された状態で設置されている。
【0036】
なお、下金型2についても同様に、下金型1の背面には下冷却プレート4が接合されており、この下冷却プレート4の背面に下加熱プレート6が下側ユニットバネ12a~12d(12c~12dは不図示)の伸張で離間した状態で設置されている。この状態で上下ユニット(100、200)がスタンバイしている(
図8のプロセス1(以下、P1のように記す))。
【0037】
そして、次のプロセスで、スタンバイ状態にある上下の金型(1、2)の間隙(キャビティ1aとコア2aの間)に加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を挿置する(
図8のP2)。
【0038】
次に、図示しないスライドを動作させ、スライドを全降下する。降下の途上は、一段降下で上下加熱プレート(5、6)を上下冷却プレート(3、4)に接触させ、最終的な降下で上下の金型(1、2)に対して互いに押圧する力を与える。これにより、加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を挟み、圧縮する(
図7Aの(a))。(
図8のP3)。
【0039】
そして、上下の加熱プレート(5、6)の加熱手段(カートリッジヒーター)に電流を流して加熱し、加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を高温処理する(
図7Aの(b):ヒート工程)。(
図8のP4)。
【0040】
なお、前記P3からP4のプロセスに入る時点で、加熱手段(カートリッジヒーター)の事前加熱を行って上下金型(1、2)の温度を予め上昇させておくのが望ましい。
【0041】
加工素材の成形に必要とされる所要の時間の経過後、スライドを一段戻して上下加熱プレート(5、6)への電流を遮断し、上下加熱プレート(5、6)を上下冷却プレート(3、4)との接触を断ち、上下冷却プレート(3、4)に冷却媒体(例えば、0℃~10℃の冷水)を流して加工素材(繊維強化樹脂素材14a)の温度を下げる(
図7Bの(c):クール工程)。(
図8のP5)。
【0042】
前記“スライドを一段戻す”とは、それによってユニットバネが伸びて上下の加熱プレート(5、6)は、上下の冷却プレート(3、4)との接触が解除されるが、上下の冷却プレート(3、4)は、それと一体結合した上下の金型(1、2)に圧縮力を保持している状態を意味する。
すなわち、上下の金型(1、2)は、依然として加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を圧縮状態に維持している状態を保持している。P5の段階では、上下の金型(1、2)による加工素材(繊維強化樹脂素材14a)への圧縮は維持される。
【0043】
上下の冷却プレート(3、4)による冷却により、上下の金型(1、2)の温度が所要値(例えば80℃等)に低下した時点で、上下冷却プレート(3、4)への冷却媒体の供給を遮断し、スライドを初期位置に戻す。
これにより、上下の金型(1、2)が開き、成形された加工品、すなわち繊維強化樹脂材14が取り出される(脱型される)(
図7Bの(d))。(
図8のP6)。
【0044】
上記したプロセスを経ることで、加熱圧縮して加工した繊維強化樹脂素材の熱処理(加熱→冷却)に要するサイクルタイムを大幅に短縮することができ、ハイサイクルの生産を実現できる。
これにより、成形品の単価を削減することが可能となり、全体のコスト低減に寄与することができる。
【0045】
上記の製造プロセスを工程の概念でさらに説明すると以下のようになる。すなわち、本実施例に係る繊維強化樹脂成形品の製造は、次の工程を含む。
【0046】
(1)上側ユニット100を構成する上金型1のキャビティ1aと下側ユニット200を構成する下金型2のコア2aの間で、当該下金型2のコア2aの上に繊維強化樹脂素材14aを挿置する素材挿置工程と、
(2)上側ユニット100を構成する上金型1の背面に接合されている上冷却プレート3に接して設けられた上加熱プレート5、及び下金型2の背面に接合されている下冷却プレート4に接して設けられた下加熱プレート6を介して、上金型1と下金型2に熱エネルギーを伝達・供給した状態で繊維強化樹脂素材を加熱・圧縮しながらプレス成形するヒート工程と、
(3)所要の加熱・圧縮処理の時間経過後、上金型1と下金型2への熱エネルギーの供給を停止すると共に、上冷却プレート3及び下冷却プレート4に冷却媒体(公的には冷水又は油)を供給して上金型1と下金型2及び繊維強化樹脂素材14aを所要の温度に冷却するクール工程と、
(4)繊維強化樹脂素材14aが所要の温度に冷却された時点で、上側ユニット100と下側ユニット200とを圧縮する加圧力を解除して、上金型1と前記下金型2を開き、繊維強化樹脂材成形品14を取り出す成形品取出す工程。
【0047】
また、上記の上金型1と下金型2に熱エネルギーを伝達・供給した状態には、繊維強化樹脂素材14aを上金型1と下金型2でのプレス工程前に、上金型1の温度を予備加熱する工程、あるいは必要により当該繊維強化樹脂素材に含浸される樹脂のガラス移転点又は溶融点温度より若干高く加熱する事前加熱工程を含ませることができる。
【0048】
さらに、上金型1と下金型2への熱エネルギーの供給を停止する際に、上加熱プレート5及び下加熱プレート6のそれぞれと上冷却プレート3及び下冷却プレート4とを離間させて熱的接合を解除する加熱プレート退避工程を含むことを特徴とする。
【0049】
以上説明した実施例によれば、冷却工程の開始前に加熱プレートを金型ユニットから退避させる構成としたことで、プレス加工における金型の冷却時間が大幅短縮され、ハイサイクルな量産化が実現できる。
前記上金型と前記下金型に熱エネルギーを供給する加熱手段が、前記上金型と前記下金型のそれぞれに設置された各加熱プレートに設けた空洞に装填したカートリッジヒーター又は高周波電源であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。
前記上金型と前記下金型のそれぞれを冷却する各冷却プレートの冷却手段が、各冷却プレートに埋設した蛇管を流れる冷水又は油であることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂材の成形品製造装置。