(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062881
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】多目的農作業機
(51)【国際特許分類】
B62D 55/10 20060101AFI20220414BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20220414BHJP
B62D 55/116 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B62D55/10 A
A01M7/00 D
B62D55/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171058
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000186784
【氏名又は名称】株式会社ショーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 福治
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121CB02
2B121CB20
2B121CB23
2B121CB33
2B121CB42
2B121CB48
2B121CB56
2B121CB61
2B121CB66
2B121CB69
(57)【要約】
【課題】 平坦地及び傾斜地に左右されることなく様々な圃場や走行場所で使用したいというユーザーの要求に応えるなど、使用範囲の拡大による汎用性を高める。
【解決手段】 荷台部2に配した回転駆動部6,この回転駆動部6から出力する回転運動を、各昇降部4,4における第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの一方の上端部に配した左右の各中間ギアユニットGm,Gmにそれぞれ伝達する回転分岐機構部7,及び各中間ギアユニットGs,Gsの回転運動を、各第一フレームFa,Fa及び各第二フレームFb,Fbに沿って各クローラ部3,3のスプロケットGs,Gsにそれぞれ伝達する左右に配した回転伝達機構部8,8を有してなる駆動機構部5を備えるとともに、各昇降部4,4をそれぞれ選択して制御することにより各クローラ部3,3をそれぞれ独立して相対昇降可能な制御部9を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台部と、左右に配したクローラ部と、前記荷台部と前記各クローラ部間に配し、かつ第一フレームと第二フレームの中間位置を回動部を介して結合したXリンク機構により前記荷台部を昇降させる左右に配した昇降部と、前記各クローラ部を駆動する駆動機構部とを少なくとも備えてなる多目的農作業機において、前記荷台部に配した回転駆動部,この回転駆動部から出力する回転運動を、前記各昇降部における第一フレーム又は前記第二フレームの一方の上端部に配した左右の各中間ギアユニットにそれぞれ伝達する回転分岐機構部,及び前記各中間ギアユニットの回転運動を、前記各第一フレーム及び前記各第二フレームに沿って前記各クローラ部のスプロケットにそれぞれ伝達する左右に配した回転伝達機構部を有してなる駆動機構部を備えるとともに、前記各昇降部をそれぞれ選択して制御することにより前記各クローラ部をそれぞれ独立して相対昇降可能な制御部を備えてなることを特徴とする多目的農作業機。
【請求項2】
前記昇降部は、前記第一フレーム又は前記第二フレームの傾斜角度を可変する駆動シリンダを備えることを特徴とする請求項1記載の多目的農作業機。
【請求項3】
前記各回転伝達機構部は、前記回動部に配した第一中継ギアユニットと前記中間ギアユニット間に架け渡したタイミングチェーンにより構成した左右の前段伝達部と、前記第一フレーム又は前記第二フレームの下端部に配した第二中継ギアユニットと前記第一中継ギアユニット間に架け渡したタイミングチェーンにより構成した左右の後段伝達部と、この第二中継ギアユニットの回転運動を、前記スプロケットに伝達する左右の中継伝達部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の多目的農作業機。
【請求項4】
前記荷台部は、左右に分割した荷台左部及び荷台右部と、前記荷台左部と前記荷台右部間に設けることによりスライド可能に連結する連結機構部とを備えてなることを特徴とする請求項1記載の多目的農作業機。
【請求項5】
前記荷台部は、前記荷台左部又は前記荷台右部の、一方の下面における前後に離間した位置に、一端を回動部を介して取付けることにより、前記下面から下方に突出する使用位置又は前記下面に対して重なる格納位置に変位可能な、少なくとも一つの支柱部を備えることを特徴とする請求項4記載の多目的農作業機。
【請求項6】
前記荷台部は、この荷台部に付属し、かつ薬液の散布を行う薬液散布装置を備え、この荷台部の上面の所定位置に、当該薬液散布装置を位置決めして設置可能な設置部を備えることを特徴とする請求項1記載の多目的農作業機。
【請求項7】
前記薬液散布装置は、内蔵する送液ポンプを回転させる回転入力部を備え、この回転入力部に対して、前記回転駆動部から出力する回転運動を伝達する回転伝達部材を備えることを特徴とする請求項6記載の多目的農作業機。
【請求項8】
前記薬液散布装置は、当該薬液散布装置の少なくとも一部のユニットに対して着脱し、装着時に、当該ユニットを所定の高さに保持可能な支持脚部を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の多目的農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業における農作物の運搬や農作物への薬液散布などの各種目的に使用できる多目的農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷台部,左右に配したクローラ部,荷台部と各クローラ部間に配して荷台部を昇降させる左右の昇降部,及び各クローラ部を駆動する駆動機構部を備えることにより、農作業における農作物の運搬等に使用する農作業機は知られており、この種の農作業機としては、特許文献1に開示される動力運搬車,特許文献2に開示される高床運搬車,及び特許文献3に開示される農業用運搬車が知られている。
【0003】
同文献1の動力運搬車は、車体が幅方向に拡縮可能になっている動力運搬車において、農作物の背丈や作業者の身長に対応して荷台を昇降させることができるようにした動力運搬車の提供を目的としたものであり、具体的には、左側車体と右側車体とが幅方向に拡縮可能に連結されており、左側荷台部が左側昇降装置を介して左側フレームに昇降可能に支持され、右側荷台部が右側昇降装置を介して右側フレームに昇降可能に支持されるとともに、左右の昇降装置に同期作動する左右の昇降手段として左右の油圧シリンダがそれぞれ設けられた構成を備えるものである。
【0004】
また、同文献2の高床運搬車は、運転作業者が、車体の左、右横側位置を随行しながら、收穫作業や、作物の管理作業等を行う際に、足先でクローラ接地辺部の内周転動面部を踏み付けたり、この接地辺部に接触し易くなり、この接地辺部の内周転動面部上を誤って踏付けた足先部が、走行回転するこのクローラの芯金突起を形成した転動面部と接地転輪との間に挟み込まれ易くなる課題の解消を目的としたものであり、具体的には、クローラの接地辺部に沿って配置する接地転輪の転輪軸部と、この接地転輪に案内されるクローラの転動面部の外側に張出形成される接地縁部の内周面との間の適宜高さに、前後方向に沿うクローラガードを設けて構成したものである。
【0005】
さらに、同文献3の農業用運搬車は、作業者が荷台の上に立っている状態のまま、クラッチの入切の操作を容易に行うことができるようにした農業用運搬車の提供を目的としたものであり、具体的には、車体上に配設される荷台と、駆動部から伝達される駆動力によって駆動される走行部と、車体の後方側に配設され、駆動部から走行部への駆動力の伝達を入切するためのリヤクラッチレバーと、車体の前方側に回動可能に配設されるフロントクラッチレバーと、リヤクラッチレバーとフロントクラッチレバーとが互いに連動して回動するように、一端がリヤクラッチレバーに連結され、他端がフロントクラッチレバーに連結されるワイヤーと、車体の前方側に配置され、踏み込み操作されるペダル部と、上部に前記ペダル部が固定され、フロントクラッチレバーと互いに連動して回動するアーム部とを有するクラッチ操作用ペダルとを備えて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-264217号公報
【特許文献2】特開2019-006178号公報
【特許文献3】特開2016-088472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1-3に開示される従来の農作業機は、次のような問題点があった。
【0008】
第一に、走行面、特に左右方向における走行面は傾斜のない平坦面を想定しているため、圃場や走行場所が傾斜面や段差面の場合、荷台も傾斜することになり荷台に載せた農産物や農業資材等を安定に搬送できないのみならず、安全性や作業性などの要求から事実上使用することができない問題も生じる。結局、使用できる圃場や走行場所が限られるなど、平坦地及び傾斜地に左右されることなく様々な圃場や走行場所で使用したいというユーザーの要求に応えることができず、汎用性の観点からは十分といえない。
【0009】
第二に、荷台部を左右に分割し、かつ連結機構部により左右方向へ伸縮可能に連結することにより、左右のクローラ間隔を調整して畝幅に合わせることを可能にしたタイプも存在するが、実際の使用現場でクローラ間隔を調整しようとする場合、左右のクローラが地面に圧接した状態で行う必要があり、容易な調整が困難である。このため、現実的には、クローラを少々動かしながら調整する必要があるなど、調整作業に大変な労力と時間が強いられる。
【0010】
第三に、主に運搬を専用とする運搬車として構成するため、多様性や多目的性に難がある。特に、他の機能装置、例えば、薬液散布装置を搭載しようとする場合、独立して機能する薬液散布装置を搭載する必要があるため、薬液散布装置を、薬液タンク,送液ポンプ及び動力装置等を含む完成した専用装置として構成する必要があり、コスト面で不利になるとともに、大型の重量装置となるため、運搬車への搭載や取外しを容易に行うことができない。
【0011】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した多目的農作業機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するため、荷台部2と、左右に配したクローラ部3,3と、荷台部2と各クローラ部3,3間に配し、かつ第一フレームFa,Faと第二フレームFb,Fbの中間位置を回動部R,Rを介して結合したXリンク機構4x,4xにより荷台部2を昇降させる左右に配した昇降部4,4と、各クローラ部3,3を駆動する駆動機構部と、を少なくとも備えてなる多目的農作業機1を構成するに際して、荷台部2に配した回転駆動部6,この回転駆動部6から出力する回転運動を、各昇降部4,4における第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの一方の上端部に配した左右の各中間ギアユニットGm,Gmにそれぞれ伝達する回転分岐機構部7,及び各中間ギアユニットGm,Gmの回転運動を、各第一フレームFa,Fa及び各第二フレームFb,Fbに沿って各クローラ部3,3のスプロケットGs,Gsにそれぞれ伝達する左右に配した回転伝達機構部8,8を有してなる駆動機構部5を備えるとともに、各昇降部4,4をそれぞれ選択して制御することにより各クローラ部3,3をそれぞれ独立して相対昇降可能な制御部9を備えてなることを特徴とする。
【0013】
この場合、発明の好適な態様により、昇降部4,4には、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの傾斜角度を可変する駆動シリンダ11,11を設けることができる。また、各回転伝達機構部8,8は、回動部R,Rに配した第一中継ギアユニット12,12と中間ギアユニットGm,Gm間に架け渡したタイミングチェーン13,13により構成した左右の前段伝達部8f,8fと、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの下端部に配した第二中継ギアユニット14,14と第一中継ギアユニット12,12間に架け渡したタイミングチェーン15,15により構成した左右の後段伝達部8r,8rと、この第二中継ギアユニット14,14の回転運動を、スプロケットGs,Gsに伝達する左右の中継伝達部8t,8tを設けて構成できる。一方、荷台部2は、左右に分割した荷台左部2m及び荷台右部2sと、荷台左部2mと荷台右部2s間に設けることによりスライド可能に連結する連結機構部16とを備えて構成できるとともに、この荷台部2には、荷台左部2m又は荷台右部2sの、一方の下面2mdにおける前後に離間した位置に、一端を回動部17s,17sを介して取付けることにより、下面2mdから下方に突出する使用位置Xu又は下面2mdに対して重なる格納位置Xrに変位可能な、少なくとも一つの支柱部17,17を設けることができる。他方、荷台部2には、この荷台部2に付属し、かつ薬液の散布を行う薬液散布装置18を備え、この荷台部2の上面2uの所定位置に、当該薬液散布装置18を位置決めして設置可能な設置部19を設けることができるとともに、この薬液散布装置18は、内蔵する送液ポンプ18pを回転させる回転入力部18iを設け、この回転入力部18iに対して、回転駆動部6から出力する回転運動を伝達する回転伝達部材20を設けることができる。さらに、この薬液散布装置18には、当該薬液散布装置18の少なくとも一部のユニット18mに対して着脱し、装着時に、当該ユニット18mを所定の高さに保持可能な支持脚部21…を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
このような構成を有する本発明に係る多目的農作業機1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0015】
(1) 基本構成として、左右に配したクローラ部3,3をそれぞれ独立して昇降可能に構成したため、平坦な通常の圃場のみならず、傾斜面に設けられた圃場や走行場所であっても、荷台部2の上面2uをほぼ水平に維持した状態で走行することができ、例えば、バケツ等に収容した液体肥料等であっても容易に搬送できるなど、安定した搬送及び作業を行うことができるとともに、安全性や作業性も、より高めることができる。これにより、平坦地及び傾斜地に左右されることなく様々な圃場や走行場所で使用したいというユーザーの要求に応えることができ、使用範囲の拡大による汎用性を高めることができる。
【0016】
(2) 好適な態様により、昇降部4,4を、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの傾き角度を可変する駆動シリンダ11,11を設けて構成すれば、制御部9により各駆動シリンダ11,11に対する独立した制御を容易かつ迅速に行うことができるとともに、Xリンク機構4x,4xと組合わせた際における全体の小型コンパクト化及び低コスト化に寄与できる。
【0017】
(3) 好適な態様により、各回転伝達機構部8,8を構成するに際し、回動部R,Rに配した第一中継ギアユニット12,12と中間ギアユニットGm,Gm間に架け渡したタイミングチェーン13,13により構成した左右の前段伝達部8f,8fと、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの下端部に配した第二中継ギアユニット14,14と第一中継ギアユニット12,12間に架け渡したタイミングチェーン15,15により構成した左右の後段伝達部8r,8rと、この第二中継ギアユニット14,14の回転運動を、スプロケットGs,Gsに伝達する左右の中継伝達部8t,8tを設けて構成すれば、各Xリンク機構4x,4xの上下方向における伸縮ストロークを異ならせる場合であっても、タイミングチェーン13…,15…の無用や弛みや張りの発生を排除できるため、各クローラ部3,3の独立した昇降を確実かつ安定に行うことができるとともに、動作の信頼性を高めることができる。
【0018】
(4) 好適な態様により、荷台部2を構成するに際し、左右に分割した荷台左部2m及び荷台右部2sと、荷台左部2mと荷台右部2s間に設けることによりスライド可能に連結する連結機構部16とを備えて構成すれば、荷台部2のサイズ変更とクローラ部3と3間の間隔調整が可能になるため、圃場の畝間隔等にマッチングさせることができるとともに、多目的農作業機1を使用する際の作業性向上及び安全性向上に寄与できる。
【0019】
(5) 好適な態様により、荷台部2に、荷台左部2m又は荷台右部2sの、一方の下面2mdにおける前後に離間した位置に、一端を回動部17s,17sを介して取付けることにより、下面2mdから下方に突出する使用位置Xu又は下面2mdに対して重なる格納位置Xrに変位可能な、少なくとも一つの支柱部17,17を設ければ、各クローラ部3,3の独立した相対昇降機能と組合わせることにより、左右方向へ移動調整する荷台左部2m又は荷台右部2sに備えるクローラ部3を上方へ浮かせることができるため、クローラ部3と3間の間隔調整及び荷台部2のサイズ変更を、クローラ部3,3を停止させた状態で無理なく容易に行うことができ、しかも、動力源を無駄に使用することなく行うことができる。
【0020】
(6) 好適な態様により、荷台部2に、この荷台部2に付属し、かつ薬液の散布を行う薬液散布装置18を設け、この荷台部2の上面2uの所定位置に、当該薬液散布装置18を位置決めして設置可能な設置部19を設けるようにすれば、搭載する薬液散布装置18に最適な設置部19を構築できるため、多目的農作業機1に対する薬液散布装置18の搭載を確実かつ安定に行うことができるとともに、運搬機能と共に多様性及び多目的性を高めることができる。
【0021】
(7) 好適な態様により、薬液散布装置18に、内蔵する送液ポンプ18pを回転させる回転入力部18iを設け、この回転入力部18iに対して、回転駆動部6から出力する回転運動を伝達する回転伝達部材20を設ければ、薬液散布装置18の動力源を、多目的農作業機1の回転駆動部6に共用できるため、薬液散布装置18の低コスト化,軽量化及び小型化に寄与できる。
【0022】
(8) 好適な態様により、薬液散布装置18に、当該薬液散布装置18の少なくとも一部のユニット18mに対して着脱し、装着時に、当該ユニット18mを所定の高さに保持可能な支持脚部21…を設ければ、大型で重量の大きいユニット18mであっても、一人の作業者により、荷台部2に対する搭載及び取り外しを容易かつ能率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る多目的農作業機の使用時における背面図、
【
図3】同多目的農作業機の荷台部の上昇時における側面図、
【
図4】同多目的農作業機の荷台部の下降時における側面図、
【
図5】同多目的農作業機に備える回転分岐機構部及び回転伝達機構部の側面視の構成図、
【
図6】同多目的農作業機の荷台部における下面の主要構成を示す底面図、
【
図7】同多目的農作業機の側面から見た荷台部の伸縮調整時の説明図、
【
図8】同多目的農作業機に薬液散布装置を搭載する際の説明図、
【
図9】同多目的農作業機に回転伝達部材を介して薬液散布装置を接続(連結)する際の説明図、
【
図10】同多目的農作業機への薬液散布装置の搭載時の平面図、
【
図11】同薬液散布装置に備えるノズルユニットの背面視の説明図、
【
図12】同薬液散布装置における支持脚部の使用説明図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
まず、本実施形態に係る多目的農作業機1の主要部の構成について、
図1-
図7を参照して説明する。
【0026】
多目的農作業機1は、主要部の基本的な構成として、荷台部2と、左右に配した一対のクローラ部3,3と、左右に配し、かつ第一フレームFa,Faと第二フレームFb,Fbの中間位置を回動部R,Rにより結合したXリンク機構4x,4xを有する一対の昇降部4,4と、一対のクローラ部3,3を駆動する駆動機構部5とを備える。
【0027】
この場合、荷台部2は、
図2に示すように、平面視を矩形に形成するとともに、
図1に示すように、上面2uを平坦面に形成する。なお、例示の場合、平面視は正方形に近い矩形を選定した。荷台部2を構成するに際しては、
図2に示すように、左右に分割した荷台左部2mと荷台右部2sを備えて構成するとともに、
図6に示すように、荷台左部2mと荷台右部2s間に、荷台左部2mと荷台右部2sを左右方向Dxへ伸縮可能にする連結機構部16を設けて連結した。例示の場合、荷台左部2mと荷台右部2sの左右方向Dxにおけるサイズの比率は、大凡4:1に選定した。なお、本明細書では、後方に位置する作業者から前方を見て左手側が左位置、右手側が右位置である。
【0028】
連結機構部16は、
図6に示すように、ガイド機構部16g及び伸縮調整部16aを備える。ガイド機構部16gは、例えば、荷台左部2mの下面2mdに、それぞれ前後方向Dyへ離間した位置に、長手方向を左右方向Dxへ平行に配して固定した複数(例示は三本)のパイプ部材21…と、荷台右部2sの下面2sdに一端を固定するとともに、他端側を荷台左部2m側に突出させることにより、対応するパイプ部材21…に挿通させたシャフト部材22…により構成することができる。また、伸縮調整部16aは、
図6に示すように、ガイド機構部16gの前後方向Dyにおける中央位置に配設し、荷台左部2mの下面2mdに、軸方向を左右方向Dxに配したナット部材23を固定するとともに、荷台右部2sの下面2sdに、軸方向変位が規制された操作部材24を軸受部25を用いて回動自在に取付ける。この操作部材24の右端には操作ハンドル24hを設けるとともに、左側を棒状のスクリュ部24sとしてナット部材23に螺合する。なお、操作ハンドル24hは、操作部材24に対して必要となる操作時のみ装着する着脱方式により構成してもよいし、その他、格納方式に構成してもよいし、一体型であってもよい。
【0029】
このように、荷台部2を構成するに際し、左右に分割した荷台左部2m及び荷台右部2sと、荷台左部2mと荷台右部2s間に設けることによりスライド可能に連結する連結機構部16とを備えて構成すれば、荷台部2のサイズ変更とクローラ部3と3間の間隔調整が可能になるため、圃場の畝間隔等にマッチングさせることができるとともに、多目的農作業機1を使用する際の作業性向上及び安全性向上に寄与できる。
【0030】
さらに、
図6及び
図7に示すように、荷台左部2mの下面2mdにおける前後方向Dyに離間した位置に、一端を回動部17s,17sを介して取付けることにより、下面2mdに対して下方に突出する使用位置Xu又は下面2mdに重なる格納位置Xrに変位可能な、少なくとも一つ(例示は二本)の支柱部17,17を設ける。なお、17c…は、格納位置Xrに変位させた支柱部17,17を保持するストッパピンを用いた保持部を示す。このような支柱部17,17を設ければ、各クローラ部3,3の独立した相対昇降機能と組合わせることにより、左右方向へ移動調整する荷台左部2m又は荷台右部2sに備えるクローラ部3を上方へ浮かせることができるため、クローラ部3と3間の間隔調整及び荷台部2のサイズ変更を、クローラ部3,3を停止させた状態で無理なく容易に行うことができ、しかも、動力源を無駄に使用することなく行うことができる。その他、図中、10は操舵グリップを示す。
【0031】
例示は、二つの支柱部17,17を設けた場合を示したが、一つであってもよいし、三つ以上設けることにより地面の凹凸等により選択により使い分けて使用することもできる。また、例示は、二本の支柱部17,17を同一方向に向けて配した場合を示したが、
図6中、仮想線で示す支柱部17eのように、直交方向に配してもよい。このように、支柱部17,17の配設方向は問わないが、特に、直交方向を含む同一方向でない場合には、前後方向Dyにおける同一直線上に起立させることができるため、支柱部17,17同士の干渉を避けることができるとともに、コンパクトに収納することができる。
【0032】
一方、一対のクローラ部3,3における、左側のクローラ部3は、
図3に示すように、機体フレーム26,この機体フレーム26の後端に配したスプロケットGs,機体フレーム26の前端に配したアイドラー27,スプロケットGsとアイドラー27間であって、スプロケットGsとアイドラー27に対して下方の位置に所定間隔置きに配した複数(例示は五つ)の転輪28…,スプロケットGsとアイドラー27と各転輪28…間に架け渡したゴム製のクローラベルト29を備える公知のクローラ走行部として構成する。また、右側のクローラ部3も、左右対称となる点を除いて、上述した左側のクローラ部3と同様に構成する。
【0033】
他方、一対の昇降部4,4における、左側の昇降部4は、
図3に示すように、主要部に、Xリンク機構4xを備えるとともに、このXリンク機構4xを変位させる駆動シリンダ11を備える。Xリンク機構4xは、第一フレームFaと第二フレームFbを備え、この第一フレームFaと第二フレームFbの中間位置を回動部Rにより結合して構成する。そして、第一フレームFaは、後側に位置する下端部を、機体フレーム26の上端における後部位置に、支軸部31を介して回動自在に結合し、かつ前側に位置する上端部を、荷台左部2mの下面2mdの前部位置に前後方向Dyへ変位可能に係合させる。前側の場合、荷台左部2mの下面2mdに設けた前後方向Dyが長手方向となるガイドレール32sを有するガイド部32に、第一フレームFaの上端部に設けた係合部33を係合させる。具体的には、第一フレームFaを貫通させて取付けたシャフトの両端にベアリング部材を取付け、このベアリング部材をガイドレール32sに係合させている。
【0034】
さらに、第二フレームFbは、後側に位置する上端部を、荷台左部2mの下面2mdの後寄り位置に、支軸部34を介して回動自在に結合し、かつ前側に位置する下端部を、機体フレーム26の上端における前寄り位置に、前後方向Dyへ変位可能に係合させる。前側の場合、機体フレーム26の上端における前寄り位置に設けた前後方向Dyが長手方向となるガイドレール35sを有するガイド部35に、第二フレームFbの下端部に設けた係合部36を係合させる構成となり、基本的な構成は、上述した上側に配したガイド部32及び係合部33の構成と同じである。
【0035】
一方、駆動シリンダ11は、シリンダ本体部11mの後端を機体フレーム26の後寄り位置に、回動自在に取付けるとともに、このシリンダ本体部11mの前端から突出するシリンダロッド11rを第二フレームFbの上端部(支軸部34)と回動部R間における第二フレームFbの中間位置に回動自在に取付ける。
【0036】
これにより、駆動シリンダ11を駆動制御すれば、シリンダロッド11rがシリンダ本体部11mに対して伸縮変位し、第二フレームFbの傾斜角度を可変することが可能となり、
図4に示すように、荷台部2を上下方向へ相対的に平行移動、即ち、左側のクローラ部3を独立して相対昇降制御することができる。なお、駆動シリンダ11は、電動式,空圧式,油圧式など、各種タイプを利用可能である。
【0037】
また、右側の昇降部4、即ち、右側のXリンク機構4x及び駆動シリンダ11も、左右対称となる点を除いて、上述した左側のXリンク機構4x及び駆動シリンダ11と同様に構成する。このように、昇降部4,4を、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの傾き角度を可変する駆動シリンダ11,11を設けて構成すれば、制御部9により各駆動シリンダ11,11に対する独立した制御を容易かつ迅速に行うことができるとともに、Xリンク機構4x,4xと組合わせた際における全体の小型コンパクト化及び低コスト化に寄与できる。
【0038】
さらに、荷台部2の後端部には、
図1及び
図2に示すように、回転駆動部6及び制御部9を配設する。例示の回転駆動部6は、エンジンを内蔵する駆動源ユニット6pと、この駆動源ユニット6pの回転を制御する操作ユニット6cを備える。したがって、この操作ユニット6cには、走行ミッションを内蔵するとともに、メインクラッチレバー,操舵用の左右サイドクラッチレバー,変速レバー等の各種操作機能を備えている。なお、アクセルレバーは、前述した操舵グリップ10に付設されている。
【0039】
この場合、操作ユニット6cは、二系統の回転出力系統を備えている。即ち、
図5及び
図9に示すように、制御された回転が出力する走行系の第一出力軸41と、
図3及び
図9に示すように、後述する薬液散布装置18(本体ユニット18m)を搭載した際に、この本体ユニット18mへ回転を伝達する第二出力軸42を備えている。
【0040】
例示は、各出力軸41,42を操作ユニット6cから取出す場合を示したが、第二出力軸42は、駆動源ユニット6pから直接取出してもよい。また、走行ミッションは独立したユニットとして構成し、操作ユニット6cの外部に配設してもよい。この場合には、駆動源ユニット6pの回転出力を、伝達機構を介して外部の走行ミッションに伝達するとともに、この走行ミッションの左右から突出した回転出力軸に、左右に分割した伝達シャフト44にそれぞれ結合して構成できるなど、他の同様の機能を有する各種構成により置換可能である。
【0041】
制御部9は、本発明に従って、少なくとも左右の昇降部4,4、即ち、左右の駆動シリンダ11,11をそれぞれ選択して制御することにより左右の各クローラ部3,3をそれぞれ独立して相対昇降可能な制御機能を備えているとともに、多目的農作業機1における全体制御を司る各種の制御機能を備える。
【0042】
また、回転駆動部6とクローラ部3,3間には、回転分岐機構部7と、左右に配する回転伝達機構部8,8を備え、これらの回転駆動部6,回転分岐機構部7,及び回転伝達機構部8,8は、本発明の要部となる駆動機構部5を構成する。
【0043】
図5に、駆動機構部5の構成図を示す。回転分岐機構部7は、回転駆動部6から出力する回転運動を、各昇降部4,4、即ち、左右に配したXリンク機構4x,4xにおける第二フレームFb,Fbの上端部の支軸部34の同軸上に配した左右の各中間ギアユニットGm,Gmにそれぞれ伝達する構造を備える。具体的には、上述した第一出力軸41に出力プーリ43を固定し、かつこの第一出力軸41の下方に回動自在に配設した左右方向の軸心を有する伝達シャフト44(
図1参照)の中間位置に被伝達プーリ45を固定し、この被伝達プーリ45と出力プーリ43間に、タイミングベルト46を架け渡す。これにより、メインクラッチ機能を構成することができる。また、伝達シャフト44の左右両端位置に、それぞれ第一ギア47,47を固定し、この第一ギア47,47と対応する中間ギアユニットGm,Gm間にそれぞれタイミングチェーン48,48を架け渡すことにより、回転分岐機構部7を構成する。なお、中間ギアユニットGmは、入力ギアGmiと出力ギアGmeを有する二重ギアユニットとして構成するとともに、後述する第一中継ギアユニット12及び第二中継ギアユニット14も同様の構成を有している。また、伝達シャフト44は、例えば、
図5に示すように、断面矩形のパイプ状の第一シャフト44fとこの第一シャフト44fに内部に挿通する断面矩形の第二シャフト44sにより左右方向Dxへ伸縮可能に構成し、第一シャフト44fを図示を省略した軸受部を介して荷台左部2mの下面2mdに取付けるとともに、第二シャフト44sを図示を省略した軸受部を介して荷台右部2sの下面2sdに取付けることができる。この結合方式は例示であり、スプライン結合方式など、同様の結合方式を利用できる。
【0044】
一方、一対の回転伝達機構部8,8における左側の回転伝達機構部8は、右側の中間ギアユニットGmの回転運動を、第二フレームFb及び第一フレームFaに沿って、右側のクローラ部3のスプロケットGsに伝達する構造を備えている。具体的には、中間ギアユニットGmの出力ギアGmeと回動部Rに対して同軸上に配した第一中継ギアユニット12の入力ギア12i間に架け渡したタイミングチェーン13により構成した前段伝達部8fと、この第一中継ギアユニット12の出力ギア12eと第一フレームFaの下端部における支軸部31に対して同軸上に配した第二中継ギアユニット14の入力ギア14i間に架け渡したタイミングチェーン15により構成した後段伝達部8rと、この第二中継ギアユニット14の出力ギア14eの回転運動を、スプロケットGsに伝達する中継伝達部8tを設けて構成する。この場合、中継伝達部8tは、スプロケットGsに対して同軸上に配したスプロケット入力ギア51,このスプロケット入力ギア51と出力ギア14e間に架け渡したタイミングチェーン52を備える。なお、53は中継伝達部8tを覆うカバーを示す。
【0045】
また、右側の回転伝達機構部8も、左右対称となる点を除いて、上述した左側の回転伝達機構部8と同様に構成する。回転伝達機構部8,8を構成するに際し、回動部R,Rに配した第一中継ギアユニット12,12と中間ギアユニットGm,Gm間に架け渡したタイミングチェーン13,13により構成した左右の前段伝達部8f,8fと、第一フレームFa,Fa又は第二フレームFb,Fbの下端部に配した第二中継ギアユニット14,14と第一中継ギアユニット12,12間に架け渡したタイミングチェーン15,15により構成した左右の後段伝達部8r,8rと、この第二中継ギアユニット14,14の回転運動を、スプロケットGs,Gsに伝達する左右の中継伝達部8t,8tを設けて構成すれば、各Xリンク機構4x,4xの上下方向における伸縮ストロークを異ならせる場合であっても、タイミングチェーン13…,15…の無用や弛みや張りの発生を排除できるため、各クローラ部3,3の独立した昇降を確実かつ安定に行うことができるとともに、動作の信頼性を高めることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る多目的農作業機1の主要部の動作(機能)について、
図1-
図7を参照して説明する。
【0047】
まず、多目的農作業機1の走行時には、エンジンを内蔵する駆動源ユニット6pが駆動することにより、走行系の第一出力軸41が回転する。この回転は、出力プーリ43→タイミングベルト46→被伝達プーリ45→伝達シャフト44を介して、左右両端に配した各第一ギア47,47の回転となる。即ち、駆動源ユニット6pから出力する回転運動は、左右の二方向に分配される。
【0048】
そして、左右の各第一ギア47,47の回転は、それぞれ対応するタイミングチェーン48,48を介して左右の各中間ギアユニットGm,Gmに伝達され、さらに、各中間ギアユニットGm,Gmの回転は、各中間ギアユニットGm,Gm→左右のタイミングチェーン13,13→左右の第一中継ギアユニット12,12→左右のタイミングチェーン15,15→左右の第二中継ギアユニット14,14→左右のタイミングチェーン52,52→左右の入力ギア51,51を介して左右のスプロケットGs,Gsに伝達される。これにより、左右のスプロケットGs,Gsが回転、即ち、左右のクローラ部3.3におけるクローラベルト29,29を旋回駆動し、多目的農作業機1は走行(自走)する。なお、走行時には、制御部9を含む操作ユニット6cを操作することにより、走行,停止,操舵(方向変更)等の走行に係わる各種操作を行うことができる。
【0049】
一方、制御部9により、左右の駆動シリンダ11,11を駆動制御することにより、
図4に示すように、各Xリンク機構4x,4xを上下方向に伸縮することができ、荷台部2の高さを、必要とする任意に高さにセッティングできる。また、左右の駆動シリンダ11,11をそれぞれ独立して駆動制御することにより、左右の各Xリンク機構4x,4xの上下方向の伸縮ストロークを異ならせることができる。この場合、各回転伝達機構部8,8は、支軸部34,34、回動部R,R、支軸部31,31を経由して回転伝達を行うため、左右の各Xリンク機構4x,4xの上下方向の伸縮ストロークを異ならせる場合であっても、タイミングチェーン13,13…の無用や弛みや張りの発生を排除でき、各クローラ部3,3の独立した相対昇降を確実かつ安定に行うことができるとともに、動作の信頼性を高めることができる。
【0050】
これにより、左右のクローラ部3,3のそれぞれの高さを相対的に異ならせることができるため、平坦な通常の圃場のみならず、
図1に示すように、傾斜面に設けられた圃場や走行場所であっても、荷台部2の上面2uをほぼ水平に維持した状態で走行することができ、例えば、バケツ等に収容した液体肥料等であっても容易に搬送できるなど、安定した搬送及び作業を行うことができるとともに、安全性や作業性も、より高めることができる。これにより、平坦地及び傾斜地に左右されることなく様々な圃場や走行場所で使用したいというユーザーの要求に応えることができ、使用範囲の拡大による汎用性を高めることができる。なお、
図1中、U…は高さの異なる畝、V…は畝U…により栽培される野菜、K…は畝U…間の通路を示している。
【0051】
また、荷台部2の左右方向Dxの幅サイズを任意に変更することができるとともに、変更場所を選ぶことなく容易に変更することができる。
【0052】
以下、この変更方法について、
図6及び
図7を参照して説明する。まず、制御部9により、左右の駆動シリンダ11,11を駆動制御し、荷台部2の高さを、サイズ変更を行うことができる所定位置まで変位させる。この場合の所定位置は、
図7に示すように、支柱部17,17を回動変位させ、荷台部2から下方に突出する使用位置Xuへ変位させることができる位置であり、支柱部17,17の下端と地面E間に所定の隙間が生じる位置となる。したがって、この所定位置は、予め設定することができ、この所定位置で停止するように、駆動シリンダ11,11を制御することができる。
【0053】
支柱部17,17を、使用位置Xuにセットしたなら、左右の駆動シリンダ11,11を同時に短縮させていく。そして、二本の支柱部17,17が接地したなら、右側の駆動シリンダ11を駆動制御して右側のXリンク機構4xのみを短縮させる。これにより、右側のクローラ部3が上昇するため、クローラ部3と地面E間に、所定の隙間Luが生じたなら、駆動シリンダ11の制御を停止する。
図7は、この状態を示している。
【0054】
そして、この状態で、伸縮調整部16aにおける操作ハンドル24hを回し操作すれば、荷台右部2sは、荷台左部2mに対して進退変位し、かつガイド機構部16gにより荷台左部2mに対して平行移動する。
図6は、仮想線で示す最もサイズダウンした位置にある荷台右部2sに対して、実線で示す所定のサイズアップした位置まで移動させた状態を示している。
【0055】
目標のサイズ位置まで移動させたなら、再度、右側の駆動シリンダ11を駆動制御し、右側のXリンク機構4xのみを伸長させる。これにより、右側のクローラ部3が下降して地面Eに当接するとともに、当接後は、荷台部2の右サイドが上昇するため、支柱部17,17の下端と地面E間に所定の隙間が生じたなら、駆動シリンダ11の駆動を停止する。この後、支柱部17,17を回動変位させ、荷台左部2mの下面部2mdに重ねるとともに、保持部17c…により格納位置Xrに保持する。
【0056】
このように、多目的農作業機1によれば、支柱部17,17を利用するとともに、各クローラ部3,3の独立した昇降機能と組合わせることにより、荷台部2のサイズ変更とクローラ部3と3間の間隔調整を無理なく容易に行うことができる。これにより、圃場の畝間隔等にマッチングさせることができるとともに、多目的農作業機1を使用する際の作業性向上及び安全性向上に寄与できる。
【0057】
次に、本実施形態に係る多目的農作業機1のアタッチメント構成について、
図2,
図8-
図12を参照して説明する。
【0058】
多目的農作業機1は、前述した運搬機としての基本的な構成に加え、各種のアタッチメントを取付けて使用することができる。一例として、本実施形態では、前述した第二出力軸42の駆動力を利用する薬液散布装置18を搭載する場合について説明する。
【0059】
薬液散布装置18は、本体ユニット18mとノズルユニット18nを備える。本体ユニット18mは、
図9に示す矩形のベースフレーム61を備え、このベースフレーム61の上面に、
図8に示すように、薬液タンク62,送液ポンプ63,操作制御部64等を配設して構成する。一方、ノズルユニット18nは、一般に、ブームと呼ばれるユニットであり、
図10及び
図11に示すように、左右方向Dxに長い支持フレーム65を備え、この支持フレーム65の両端に設けた左右一対の取付部67,67により、上下方向に長い支持ポスト66,66を上下位置を調整可能に支持する。また、支持ポスト66,66の下端には左右方向Dxに長い中間ノズルステー68mの中間位置を取付けるとともに、この中間ノズルステー68mの左端に、左ノズルステー68pの一端を上下方向へ旋回可能に取付け、かつ中間ノズルステー68mの右端に、右ノズルステー68qの一端を上下方向へ旋回可能に取付ける。そして、各ノズルステー68m,68p,68qの長手方向に、下方へ薬液を散布する散布ノズルn…を所定間隔おきに取付ける。さらに、各ノズルステー68m,68p,68qに沿って連続する薬液供給チューブ69を配設し、この薬液供給チューブ69の中途位置に、各散布ノズルn…を連通接続する。これにより、左ノズルステー68pは、
図11に示すように、中間ノズルステー68mに対して、仮想線で示す水平となる使用位置Wu又は上方へ略直角に回動変位させ、支持ポスト66の上端により保持する実線で示す非使用位置Wnに位置させることができる。また、右ノズルステー68qも、左ノズルステー68p側と同様に構成する。
【0060】
薬液散布装置18は、本体ユニット18mとノズルユニット18nを備えるため、荷台部2の上面2uの所定位置には、薬液散布装置18を位置決めして設置可能な設置部19を設ける。設置部19としては、
図2,
図8及び
図11に示すように、荷台部2の上面2uに、上下に貫通する複数(例示は七つ)の保持孔部Ha…,Hb…を設けて構成する。即ち、荷台部2における荷台左部2mの前端付近の上面2uに、ノズルユニット18nを設置する左右に離間した二つの保持孔部Ha,Haを設けるとともに、この孔部Ha…の後方における上面2uに、本体ユニット18mを搭載する計五つの保持孔部Hb,Hb…をそれぞれ分散させた所定位置に設ける。
【0061】
このため、ノズルユニット18nには、
図11に示すように、各保持孔部Ha,Haに挿入して保持される下方に突出した突起部Pa,Paを備えるとともに、本体ユニット18mには、
図8に示すように、各保持孔部Hb,Hb…に挿入して保持される下方に突出した突起部Pb,Pb…を備え、突起部Pa…及びPb…を保持孔部Ha及びHb…に挿入した際には、突起部Pa…及びPb…と保持孔部Ha及びHb…間に、ストッパピンを貫通装着することにより離脱を防止する。したがって、このような設置部19を設ければ、搭載する薬液散布装置18に最適な設置部19を構築できるため、多目的農作業機1に対する薬液散布装置18の搭載を確実かつ安定に行うことができるとともに、運搬機能と共に多様性及び多目的性を高めることができる。
【0062】
また、薬液散布装置18には、この薬液散布装置18の少なくとも一部のユニット、具体的には、本体ユニット18mに対して着脱し、装着時に、本体ユニット18mを所定の高さに保持可能な
図12に示す複数(例示は二つ)の支持脚部21…を備える。
図12に示した支持脚部21は、背面視で描いているため、後側の後脚部21rのみが現れているが、
図9に仮想線で示すように、前側にも同様に構成した前脚部21fが存在し、リンク部21m…により連結した構成を備えている。この場合、前脚部21fと後脚部21r間の間隔は、矩形のベースフレーム61を構成する前後のフレームメンバ61fと61rの間隔と同じである。したがって、支持脚部21におけるフレーム水平部21fh,21rhは、先端側から、断面矩形のパイプ部材により形成したベースフレーム61におけるフレームメンバ61f,61rの端部開口から内部へ挿入して装着し、又は引出して離脱すことができる。
図12は、本体ユニット18mが、左右に配した二つの支持脚部21,21により支持され、所定の保管場所に置かれている状態を示している。なお、ノズルユニット18nは、支持脚部21に設けたフック等に吊り下げて保管できる。その他、図中、71…は支持脚部21に備える移動用のキャスタを示す。
【0063】
薬液散布装置18には、このような支持脚部21…が付属するため、荷台部2に対する本体ユニット18mの搭載、又は取外しを容易に行うことができる。以下、具体的な搭載手順について各図を参照して説明する。
【0064】
まず、
図12に示すように、支持脚部21,21により支持された本体ユニット18mを移動させて、多目的農作業機1の荷台部2の上方に本体ユニット18mを位置させる。そして、多目的農作業機1の駆動シリンダ11,11を駆動制御し、荷台部2を上昇させるとともに、荷台部2が本体ユニット18mに接近なら、一旦、上昇を停止し、本体ユニット18mを、荷台部2の設置部19に対してより正確に位置決めする。したがって、ベースフレーム61と荷台部2間に接触部位による位置決め機能部を設けるなどにより、より容易に位置決めできるようにしてもよい。正確に位置決めしたなら、再度、荷台部2を上昇させる。そして、各突起部Pb…が各保持孔部Hb…に挿入し、さらに、荷台部2上に本体ユニット18mが搭載されることにより、支持脚部21,21が地面Eからやや離間した高さになったら上昇を停止させる。これにより、支持脚部21,21を本体ユニット18mから容易に取外すことができる。
【0065】
このように、薬液散布装置18に、当該薬液散布装置18の少なくとも一部のユニット18mに対して着脱し、装着時に、当該ユニット18mを所定の高さに保持可能な支持脚部21…を設ければ、大型で重量の大きいユニット18mであっても、一人の作業者により、荷台部2に対する搭載及び取り外しを容易かつ能率的に行うことができる。
【0066】
そして、荷台部2の上面2uに、本体ユニット18mを搭載したなら、本体ユニット18mに備える回転入力部18iを回転駆動部6に結合する。即ち、
図9に示すように、本体ユニット18mには、送液ポンプ18pを備えるとともに、この送液ポンプ18pを回転駆動する回転が入力する回転入力部18iを備えている。回転入力部18iは、回転伝達機構72を介して送液ポンプ18pに接続される。他方、回転駆動部6には、
図9に示すように、前述した第二出力軸42を備えている。この場合、本体ユニット18mを荷台部2に搭載した際には、第二出力軸42に対して、回転入力部18iが同軸上に位置し、かつ所定間隔を介して対向する。
【0067】
このため、回転伝達部材20を用いて第二出力軸42と回転入力部18iを回転伝達可能に結合する。この回転伝達部材20は、例えば、弾性伸縮可能なシャフト状に構成することができる。これにより、回転伝達部材20の一端を回転入力部18iに装着し、回転伝達部材20の他端を第二出力軸42に装着することができ、これにより、第二出力軸42の回転出力は、回転伝達部材20→回転入力部18i→回転伝達機構72→送液ポンプ18pの経路で伝達され、回転駆動部6により送液ポンプ18pが駆動される。なお、回転伝達部材20は、プロペラシャフト等の他の同様の機能を有する回転伝達手段により置換可能である。
【0068】
このように、薬液散布装置18(本体ユニット18m)に、内蔵する送液ポンプ18pを回転させる回転入力部18iを設け、この回転入力部18iに対して、回転駆動部6から出力する回転運動を伝達する回転伝達部材20を設ければ、薬液散布装置18の動力源を、多目的農作業機1の回転駆動部6に共用できるため、薬液散布装置18の低コスト化,軽量化及び小型化に寄与できる。
【0069】
また、ノズルユニット18nは、
図11に示すように、突起部Pa,Paを、保持孔部Ha,Haに挿入して設置する。
図10は、ノズルユニット18nを荷台部2に設置した状態を示す。そして、多目的農作業機1に対して、本体ユニット18mの配管系及び電気系における必要な接続を行うとともに、本体ユニット18mに対して、ノズルユニット18nにおける必要な配管系の接続を行うことにより、薬液散布装置18を使用することができる。
【0070】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0071】
例えば、回転駆動部6の構成として、タイミングチェーン13…,15…は、金属製の鎖状のチェーンが望ましいが、伝達ベルトであってもよく、伝達ベルトの場合には、ギアの代わりにプーリを用いることができる。また、左右に分割した荷台左部2m及び荷台右部2sと、荷台左部2mと荷台右部2s間に設けることにより荷台左部2mと荷台右部2sを左右方向Dxへサイズアップ又はサイズダウン可能にする連結機構部16とを備えて構成した場合を示したが、必須の構成要素ではなく、必要により、荷台部2のみをサイズアップ又はサイズダウン可能に構成してもよい。この場合、荷台部2を二枚重ね構造にし、上面側のプレートをスライドさせるなどにより実現することができる。さらに、二つの支柱部17,17を設けた場合を例示したが、一つであってもよいし、三つ以上設けることにより地面の凹凸等により選択により使い分けて使用することもできる。また、二つの支柱部17,17は、荷台部2の下面2mdに格納式に取付けた場合を例示したが、独立した別体の付属具として構成し、必要時に使用できる態様により構成してもよい。荷台部2の上面に搭載できる機能装置として薬液散布装置18を例示したが、その他、農作物収穫装置など、他の各種機能装置を搭載可能であり、各機能装置に最適な設置部19を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る多目的農作業機は、農作業における農作物の運搬や農作物への薬液散布などの各種用途に多目的に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1:多目的農作業機,2:荷台部,2m:荷台左部,2md:荷台左部の下面,2s:荷台右部,2u:荷台部の上面,3:クローラ部,4:昇降部,4x:Xリンク機構,5:駆動機構部,6:回転駆動部,7:回転分岐機構部,8:回転伝達機構部,8f:前段伝達部,8r:後段伝達部,8t:中継伝達部,9:制御部,11:駆動シリンダ,12:第一中継ギアユニット,13:タイミングチェーン,14:第二中継ギアユニット,15:タイミングチェーン,16:連結機構部,17:支柱部,17s:回動部,18:薬液散布装置,18p:送液ポンプ,18i:回転入力部,18m:一部のユニット(本体ユニット),19:設置部,20:回転伝達部材,21:支持脚部,Fa:第一フレーム,Fb:第二フレーム,R:回動部,Gm:中間ギアユニット,Gs:スプロケット,Dx:左右方向,Xu:使用位置,Xr:格納位置