(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062891
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に介在させる止水材の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
E04B1/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171072
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】520320457
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】平山 翊志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 則雄
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001EA02
2E001FA51
2E001FA71
2E001GA59
2E001HD11
2E001HF02
2E001MA02
2E001MA04
(57)【要約】
【課題】止水材を先打ちコンクリートの不陸の凹凸面すべてに接触(追従)させることができ、そして先打ちコンクリートの不陸に追従させる止水材と本体部としての止水材とを的確に一体化させることができ、更に作業の簡略化によって施工時間を短縮することができる、止水材の施工方法を提供する。更に、簡単な構成によって経年変化の可及的な抑制と止水性を向上させることの可能な止水材の施工方法を提供する。
【解決手段】止水材の施工方法は、経時硬化性を有する第1止水材1を硬化前の流動性を有する状態で先打ちコンクリート3の所定箇所に塗布する工程と、前記第1止水材1と主成分を同じくする固体状の第2止水材2を前記塗布された第1止水材1の表面に第1止水材1が硬化する前に密着設置する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に介在させる止水材の施工方法において、
経時硬化性を有する第1止水材を硬化前の流動性を有する状態で先打ちコンクリート表面の所定箇所に塗布する工程と、
前記第1止水材と主成分を同じくする固体状の第2止水材を前記塗布された第1止水材の表面に該第1止水材が硬化する前に密着設置する工程と、
を含むことを特徴とする止水材の施工方法。
【請求項2】
前記第1止水材及び前記第2止水材が同一の組成であることを特徴とする請求項1に記載の止水材の施工方法。
【請求項3】
前記第1止水材及び前記第2止水材のいずれもが、アクリル系止水材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の止水材の施工方法。
【請求項4】
前記第2止水材は、表面及び/又は裏面が非平滑面として構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の止水材の施工方法。
【請求項5】
前記第1止水材及び/又は第2止水材の内部には該止水材を補強するための内部補強部材が埋設されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の止水材の施工方法。
【請求項6】
前記第2止水材に埋設された内部補強部材は、前記第2止水材の外縁部の一部から外部にはみ出したはみ出し部を有しており、前記第2止水材を前記第1止水材に密着設置した後、前記先打ちコンクリート表面に前記はみ出し部を固着することで前記第2止水材を安定設置状態とすることを特徴とする請求項5に記載の止水材の施工方法。
【請求項7】
前記第1止水材に密着設置される第2止水材は、複数分割されて設置されており、前記各第2止水材同士の接続部分は、前記各第2止水材同士の対向する端面間に未硬化の状態の前記第1止水材を介在させて構成されたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の止水材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に介在させる止水材の施工方法、特に、先打ちコンクリートの硬化後、その上に後打ちコンクリートを打設する前に先打ちコンクリート上の所定箇所に止水材を設置する際の該止水材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物の打ち継ぎ部、すなわち、先打ちコンクリートの上に後打ちコンクリートを打設する構造における漏水防止処理として、その打ち継ぎ部に板状の金属系又は高分子系の止水板を挿入する施工法が存在している。
【0003】
しかしながら、コンクリートの経年変化によって、止水板とコンクリートとの間に徐々に隙間ができてしまい、この結果、漏水した水がこの隙間を通り抜けてしまう問題が発生する恐れがある。すなわち、止水板の漏水防止機能としての役割が、完全に発揮されない場合がある。
【0004】
そこで、止水板の漏水防止機能が完全ではないことを考慮して、コンクリートの打継ぎの際に、止水板と共に、様々な種類の止水材(例えば、粘土系の止水材、ゴム系の止水材、及び高吸水性ポリマー系の止水材)も使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、通水性を有する細長袋の中にベントナイト等の無機質の高膨潤性である高吸水性ゲル化物の乾燥粒体が充填され、更にその乾燥粒体が充填された細長袋の中央部に鉄線が挿設されている膨潤性止水材が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、固型のブチル系ゴム材料と酸化カルシウムとを含む帯状の止水材が開示されている。この止水材は、この止水材を硬化前のコンクリートと接触させた状態でこのコンクリートを硬化させることによって、硬化後のコンクリートと強固に接着される。
【0007】
なお、特許文献1に開示されている袋状の止水材は、釘止めによって先打ちコンクリートに取付けられるか、及び/又は、針金又は専用金具を使用して先打ちコンクリートから突出した鉄筋に締結させることによって先打ちコンクリートに取付けられている。
【0008】
また、特許文献2に開示されている帯状の止水材は、特許文献2に開示されている取付け方法の他に、釘止めによって先打ちコンクリートに取付けられるか、先打ちコンクリートに接着剤又はプライマーを塗布した後に止水材を接着剤又はプライマー上に載置することによって先打ちコンクリートに取付けるか、及び/又は、先打ちコンクリートにコーキング材を塗布した後にその止水材をそのコーキング材上に載置して更に釘止めすることによって先打ちコンクリートに取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2857961号公報
【特許文献2】特許第3732625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術である特許文献1又は2に開示されている止水材の使用では的確な止水性は確保できないという問題が有る。この一因として、先打ちコンクリートの打ち継ぎ面は、後打ちコンクリートとの接着性を良好にするために、先打ちコンクリートの表面に存在するレイタンスを除去して、更に目荒しを行う必要があることから、先打ちコンクリートの打ち継ぎ面は、必ずしも平滑な面ではなく、大小様々な凹凸を有する不陸の状態となっていることが挙げられる。この様な不陸の存在する先打ちコンクリートの打ち継ぎ面に対して上記の従来技術の止水材を使用した場合には、(1)止水材を不陸の凹凸面の全域に確実に接触(追従)させることができずに、これらの間に隙間ができてしまうという問題、及び(2)止水材と(その止水材と不陸との間に介在させる)接着剤、プライマー、又はコーキング材との間の界面が容易に破壊されてしまい、これらの間に隙間ができてしまうという問題が残ってしまう。また、この止水性が確保できない問題以外でも、上記の従来技術の止水材を使用した場合には、(3)作業の煩雑化及び作業の長期化などの問題が残ってしまう。
【0011】
すなわち、上記(1)の問題は、具体的には、固体状又は袋状の止水材が釘止めによって又は針金などを使用して鉄筋に締結させることによって取付けられるので、その止水材が不陸の凹凸面に追従されずに、止水材と不陸の凹凸面との間に隙間が生じてしまうことである。上記(2)の問題は、具体的には、止水材と接着剤、プライマー、又はコーキング材との間には十分な親和性は無く、それらを一体化させることができないことである。上記(3)の問題は、具体的には、接着剤、プライマー、又はコーキング材を使用した場合において、それらが固まるまでに時間がかかってしまい、実作業が長期化してしまうことである。更に、コーキング材を使用した場合には、コーキング材に載置させた止水材を釘止めする必要があり、作業が煩雑化してしまうことである。
【0012】
上記課題に鑑みてなされた本発明の目的は、簡単な構成によって経年変化の可及的な抑制と止水性を向上させることの可能な止水材の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため請求項1に記載の先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に介在させる止水材の施工方法は、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に介在させる止水材の施工方法において、経時硬化性を有する第1止水材を硬化前の流動性を有する状態で先打ちコンクリート表面の所定箇所に塗布する工程と、前記第1止水材と主成分を同じくする固体状の第2止水材を前記塗布された第1止水材の表面に該第1止水材が硬化する前に密着設置する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1止水材は硬化前の流動性を有する状態で先打ちコンクリートの表面に塗布されるので、この流動性によって、この第1止水材は既に硬化している先打ちコンクリートの不陸の凹凸面全域に的確に接触した状態となる。更に、第1止水材の表面に密着設置される第2止水材の主成分は第1止水材の主成分とが同じであるので、第1止水材と第2止水材との親和性は高く、硬化後は的確に一体化した状態となる。なお、第2止水材の外表面側に更に後打ちコンクリートは当然未硬化の状態で打設されるので第2止水材と後打ちコンクリートの密着性は的確に確保される。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、前記第1止水材及び前記第2止水材が同一の組成であることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、第1止水材及び第2止水材のいずれもがアクリル系止水材であることを特徴とする。
【0016】
これらの構成によれば、第1止水材と第2止水材とが同一の材料で構成されることから、すなわち、未硬化か硬化状態かの相違だけであり、硬化後の一体性はより一層高められる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、前記第2止水材は、表面及び/又は裏面が非平滑面として構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、非平滑面、すなわち、凹凸や湾曲などの表面形態を有していることから、前記第1止水材1と前記第2止水材との接触面積及び/又は前記第2止水材と前記後打ちコンクリートとの接触面積を大きくすることができるので、前記第1止水材1と前記第2止水材との硬化後の一体性及び/又は前記第2止水材と前記後打ちコンクリートとの硬化後の一体性をより一層高めることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、前記第1止水材及び/又は第2止水材の内部には該止水材を補強するための内部補強部材が埋設されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、内部補強部材によって、止水材の強度及び/又は剛性を高めることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、前記第2止水材に埋設された内部補強部材は、前記第2止水材の外縁部の一部から外部にはみ出したはみ出し部を有しており、前記第2止水材を前記第1止水材に密着設置した後、前記先打ちコンクリート表面に前記はみ出し部を固着することで前記第2止水材を安定設置状態とすることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、前記第1止水材の外表面に密着設置された前記第2止水材を前記先打ちコンクリートにしっかりと固定することができ、前記第1止水材と前記第2止水材との一体性も高めることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1の止水材の施行方法において、前記第1止水材に密着設置される第2止水材は、複数分割されて設置されており、前記各第2止水材同士の接続部分は、前記各第2止水材同士の対向する端面間に未硬化の状態の前記第1止水材を介在させて構成されたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、前記第1止水材と第2止水材の接続部分では、前記第1止水材が硬化して行く過程でしっかりとした連続状態が確保される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、止水材を先打ちコンクリートの不陸の凹凸面すべてに接触(追従)させることができ、そして先打ちコンクリートの不陸に追従させる止水材と本体部としての止水材とを的確に一体化させることができ、更に作業の簡略化によって施工時間を短縮することができる。これにより、施行後の止水材の経年変化による止水性能の劣化を極力抑制することが可能となり、止水の信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による止水材の施工方法によって先打ちコンクリート上に配置された第1止水材及び第2止水材の状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に用いる第2止水材の表面及び/又は裏面の形状が異なる別の実施態様を示す正面図である。
【
図3】本発明に用いる第2止水材の内部及び外縁部において補強部材が設けられた実施態様を示す斜視図及び断面図である。
【
図4】本発明に用いる第2止水材同士を接続させた実施態様を示す斜視図である。
【
図5】透水性試験に用いる作製途中の供試体を或る場所で仮想的に切断した断面図である。
【
図6】透水性試験が行われる完成後の供試体を或る場所で仮想的に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による止水材の施工方法によって先打ちコンクリート3表面の所定箇所に設置された第1止水材1及び第2止水材2の状態を示す斜視図である。
【0028】
まず、第1工程として、経時硬化性を有する第1止水材1を硬化前の流動性を有する状態で先打ちコンクリート表面の所定箇所に塗布する工程が行われる。第1止水材1は、経時硬化性を有しており、例えば、時間の経過によって打ち継ぎの周囲環境のみで硬化させることができる材料を使用することができる。第1止水材1の硬化時間は、実作業を考慮して(具体的には、第1止水材1に第2止水材2を密着設置する作業を完了する前に第1止水材1が硬化せずにかつ第1止水材1の硬化待ちの時間が極端に長くならないようにするために)、30秒間(特に、1分間)から3時間(特に、30分間)の範囲における任意の時間に設定することができる。この硬化時間は、当業者であれば、使用する止水材の化学情報を参照しながら適宜設定することができる。第1止水材1の流動性によって、第1止水材1は既に硬化している先打ちコンクリートの不陸の凹凸面全域に的確に接触した状態となる。なお、第2止水材2の外表面側に後打ちコンクリートは当然未硬化の状態で更に打設されるので第2止水材2と後打ちコンクリートの密着性は的確に確保される。
【0029】
本発明の実施に形態に係る施工方法に用いられる第1止水材1及び第2止水材2については、第1止水材1及び第2止水材2の主成分(又は、組成)が同じであり、そして第1止水材1が経時硬化性を有しており、更に第1止水材1が不陸の凹凸全面と接触可能な流動性を有している条件を満たす限り、いずれの種類の止水材も使用することができる。これらの条件を満たすことによって、本発明の目的を達成することができるからである。なお、これらの止水材の例としては、アクリル系止水材又はウレタン系止水材が挙げられ、特に、アクリル系止水材が好ましい。また、これらの止水材としては、一液型の止水材、又は主剤と硬化剤とを混ぜ合わせる二液型の止水材を使用することができる。第1止水材1と第2止水材2とが同一の材料で構成されることから、すなわち、未硬化か硬化状態かの相違だけであり、硬化後の一体性はより一層高められる。
【0030】
アクリル系止水材の例としては、例えば、ポリエチレングリコ-ルモノ(メタ)アクリレ-トとポリエチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-トと末端(メタ)アクリロイル基含有多価金属塩とを含む止水材が好ましい。
【0031】
また、第1止水材1は、硬化前には流動性を有する状態となっている。この流動性の状態は、止水すべき箇所の下地状態(具体的には、先打ちコンクリート3の不陸の状態及び水平性)を考慮して、適宜調整することができる。例えば、不陸の凹凸が小さい場合には、粘性を大きく(例えば、粘土状態又はそれに近似する状態に)設定して、一方、不陸の凹凸が大きい場合には、粘性を小さく(例えば、セルフレベリング性を有する状態に)設定することができる。流動性を有する第1止水材1が先打ちコンクリート3の表面に塗布されるので、第1止水材1が、この不陸の凹凸面すべてに沿って、隙間の無い状態で接触(密着)されることとなる。更に、第1止水材1の塗布量を調整することによって、不陸の凹凸面すべてに沿って第1止水材1を接触させることに加えて、不陸の凹凸の空間を埋めることができる。また、この塗布量を調整することによって、第2止水材2の底面の全てを第1止水材1と接触させることができる。
【0032】
第1止水材1の硬化後には、第1止水材1と先打ちコンクリート3との間に隙間が無くかつ凹凸の空間が埋められた状態で、その関係を維持することができる。なお、第1止水材の塗布位置や塗布の領域は、先打ちコンクリート3と後打ちコンクリートによって構築される構造物の形態に応じて止水の必要な箇所に設定される。
【0033】
次に、第1工程後に行われる第2工程は、第1止水材1と主成分が同じである固体状の第2止水材2を、塗布された第1止水材の表面に第1止水材が硬化する前に密着設置する工程である。第1止水材1の全体の中で占める割合が高い成分と第2止水材2の全体の中で占める割合が高い成分が同じであるので、第1止水材1と第2止水材2との結合(親和性)を高めることができる。これによって、第1止水材1と第2止水材2とを容易に一体化させることができる。更に、第1止水材1が流動性を有している状態で第2止水材2と接触させているので、止水材同士が固体である場合と比較して、第1止水材1と第2止水材2との密着性を更に高めることが、第1止水材1と第2止水材2との一体化を更に高めることができる。
【0034】
第2止水材2は、第1止水材1に容易に密着設置できるようにするために、硬化後の固体状態(成形品)であることが好ましい。第2止水材2は、一定の長手方向の長さ及び一定の断面積の大きさにすることができる。第2止水材2の大きさ(具体的には、長手方向の長さ及び断面積の大きさ)は、止水すべき箇所の作業面積及び第1止水材1への密着設置性を考慮して、適宜変更することができる。本発明の実施に形態に係る止水材の施工方法では、(本体部として機能する)第2止水材2を施工前に予め準備(例えば、工場生産)することができるので、施工の際には、先打ちコンクリート3の不陸に沿ってその不陸の凹凸の空間を埋めるように少量の第1止水材1を塗布する工程と、その第1止水材1に予め準備した第2止水材2を密着設置する工程とを行うだけである。この簡易な工程によって、施工時間を大幅に短縮することができる。
【0035】
第2止水材2の形状は、角柱(例えば、四角柱(例えば、立方体又は直方体)、五角柱、多角柱)、円柱(正円柱、楕円柱、半楕円柱)とすることができる。また、第2止水材2は、表面及び/又は裏面が非平滑面とすることができる。第2止水材2は、非平滑面、すなわち、凹凸や湾曲などの表面形態を有することができる。第1止水材1と前記第2止水材との接触面積及び/又は前記第2止水材と前記後打ちコンクリートとの接触面積を大きくすることができるので、前記第1止水材1と前記第2止水材との硬化後の一体性及び/又は前記第2止水材と前記後打ちコンクリートとの硬化後の一体性をより一層高めることができる。ここで、
図2は、本発明の実施に形態に係る止水材の施工方法に用いる第2止水材の表面及び/又は裏面の形状が異なる別の実施態様を示す正面図である。第2止水材の裏面とは、第1止水材1と接触させる側の面である。第2止水材の表面とは、裏面とは反対側の面である。特に、
図1に示すように表面及び裏面の両方が平滑面であること、
図2(a)に示すように表面が平滑面であり裏面が中心に向かって徐々に先打ちコンクリート3に近づく湾曲面形状であること、
図2(b)に示すように表面が半楕円形状の表面形状であり裏面が平滑面であること、又は、
図2(c)に示すように表面が平滑面であり裏面が波型形状であることが好ましい。
図2(a)及び
図2(c)に示す形状の第2止水材2を用いた場合には、第1止水材1との接触面積を大きくすることができるので、これらの密着性が高まり、一体化を更に向上させることができる。
図2(b)に示す形状の第2止水材2を用いた場合には、第2止水材2と後打ちコンクリートとの接触面積を大きくすることができるので、第2止水材2と後打ちコンクリートとの密着性を更に高めることができる。また、
図1~
図2(c)に示す形状を組み合わせることもできる。
【0036】
第1止水材1及び/又は第2止水材2は、膨潤性を有することが好ましい。止水材と先打ち又は後打ちコンクリートとの間に隙間が生じてしまい漏水した水がこの隙間を通り抜けようとする際に、この膨潤性の作用によって、この水の通り道を塞ぐことが可能となるからである。この膨潤性(止水材の水吸収量)については、短時間に水を吸収することが好ましく、更に、6時間後に止水材の重量が10%以上増えることが好ましい。
【0037】
第1止水材1及び第2止水材2の粘性及び強度は、当業者であれば、使用する止水材の化学情報を参照しながら適宜設定することができる。例えば、これらの粘性及び強度は、水硬材料(例えば、セメント、石膏、石灰、又は消石灰)及び/又は微粉末(例えば、フライアッシュ、スラグ、炭酸カルシウム、シリカヒューム、又は短繊維)を混合することによって、調整することができる。
【0038】
第1止水材1及び第2止水材2は、同一の組成であることが好ましい。同一の組成とすることによって、主成分が同じである場合と比較して、第1止水材1と第2止水材2との親和性をより一層高めることができる。より一層高められた親和性によって、第1止水材1と第2止水材2との一体化をより強固にすることができる。
【0039】
図3(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施に形態に係る止水材の施工方法に用いる第2止水材の内部及び外部において補強材が設けられた実施態様を示す斜視図及び断面図である。なお、
図3(b)では、各部材の位置関係を明確にすることを目的として、断面部分を示すための斜線は省略している。第1止水材1及び/又は第2止水材2の内部には、第2止水材2の強度及び/又は剛性を高めるために、これらの止水材を補強するための内部補強部材4を埋設することができる。内部補強部材4は、第1止水材1及び/又は第2止水材2の全面によって覆われるように設けることができる。内部補強部材4は、第1止水材1及び/又は第2止水材2の高さ方向の略中間地点において第1止水材1及び/又は第2止水材2の長手方向に沿って平滑面である表面又は裏面と平行させた状態で、第1止水材1及び/又は第2止水材2に設けることができる。
【0040】
第2止水材2に埋設された内部補強部材4は、第2止水材2の外縁部の一部から外部にはみ出したはみ出し部5を有することができる。第2止水材2を第1止水材1に密着設置した後、先打ちコンクリート3の表面にはみ出し部5を固着することで第2止水材2を安定設置状態とすることができる。これによって、第1止水材1の外表面に密着設置された第2止水材2を先打ちコンクリート3にしっかりと固定することができ、第1止水材1と第2止水材2との一体性も高めることができる。このはみ出し部5は、固定手段6(例えば、コンクリート用接着剤又はコンクリート用釘)によって固着することができる。はみ出し部5の位置は、第2止水材2を先打ちコンクリート3に安定可能に固定できるのであれば、その位置は限定されない。固定手段6による固定は、止水効果に影響を与えない範囲で行うことが好ましい。はみ出し部5の大きさは、適宜変更することができ、好ましくは、はみ出し部5を先打ちコンクリート3に固定した際にそのはみ出し部5が第2止水材2の近傍となるような大きさが好ましい。はみ出し部5は、
図3(a)に示すように、複数個使用することができる。はみ出し部5が第2止水材2の両方の側面に設けられる場合には、
図3(a)に示すように、それらのはみ出し部5は、第2止水材2の長手方向の中心軸を対称軸として、対称な位置に設けることが好ましい。
【0041】
特に先打ちコンクリート3の表面及び止水材の長手方向の面が地面に対して垂直に存在している場合において、このはみ出し部5を用いることによって、後打ちコンクリートを打設するまでの間に先打ちコンクリート3から第1止水材1及び第2止水材2が剥がれてしまうことを防止することができる。
【0042】
内部補強部材4の材質は、止水材の止水性能を損なわずに止水材の強度が向上するものである限り、その材質は限定されない。これらの材質は、耐久性を有するものが好ましい。はみ出し部5の材質は、第1止水材1及び第2止水材2を先打ちコンクリート3に安定させることのできる材質である限り、その材質は限定されない。これらの材質は、耐久性を有するものが好ましい。内部補強部材4及びはみ出し部5の材質としては、繊維(例えば、ポリエステル繊維、ガラス繊維、又はビニル基を有する高分子繊維)又は不織布が挙げられる。特に、これらの補強材としては、メッシュ形状の繊維が好ましい。このメッシュ形状の開き目は、1mm~5mmが好ましい。なお、1mm未満の場合には、止水材とメッシュ形状の繊維とが分離しやすくなる恐れがある。
【0043】
第1止水材1に密着設置される第2止水材2は、複数分割して設置することができる。各第2止水材2同士の接続部分は、各第2止水材2同士の対向する端面間に未硬化の状態の第1止水材1を介在させることができる。これによって、第1止水材1と第2止水材2の接続部分では、第1止水材1が硬化して行く過程でしっかりとした連続状態が確保させることができる。ここで、
図4(a)及び(b)は、本発明の実施に形態に係る止水材の施工方法に用いる第2止水材同士を接続部分させた実施態様を示す斜視図である。第2止水材2同士の継ぎ目における第2止水材2の端面の形状は、第1止水材1を介して第2止水材2同士がつながるのであれば、それらの形状は限定されない。例えば、
図4(a)に示すように、この継ぎ目において、一方の第2止水材2の端面を凹状にして、更に他方の第2止水材2の端面を凹状にすることによって、これらの端面をつなぎ合わせた際に形成される矩形状の空間に第1止水材1を充填することもできる。または、
図4(b)に示すように、この継ぎ目において、第2止水材2の対抗した端面同士を離間させて第1止水材1を充填することもできる。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
実施例1~3及び比較例1~5において、モルタルに対する止水材の密着性の評価を行った。
【0046】
[供試体の作成]
<実施例1>
市販のモルタル試験片(幅50mm×長さ50mm×高さ10mm;ISO基準砂:セメント:水=3:1:0.5)を2枚準備して、最初に、1枚目のモルタルの一方の平坦面(幅50mm×長さ50mmの面)に対して流動性のアクリル系止水材A(株式会社コーケン社製、商品名:リークストッパー、ゲルタイムが1分間となるように調整されている(硬化前の)2液型アクリル系止水材)を幅40mm×長さ40mm×高さ1mmの範囲で塗布して、その上にアクリル系止水材B(止水材Aの硬化体(成形品);直方体(幅40mm×長さ40mm×高さ10mm))の幅40mm×長さ40mmの面を張り付けた。次に、2枚目のモルタルの一方の平坦面(幅50mm×長さ50mmの面)に上記の流動性のアクリル系止水材Aを幅40mm×長さ40mm×高さ1mmの範囲で塗布して、(既にアクリル系止水材Aと接触させた側とは反対側の)止水材Bの平坦面に張り付けた。すなわち、モルタル試験片、止水材A、止水材B、止水材A、及びモルタル試験片の順に並んだ供試体を作成した。
【0047】
<実施例2>
両面が平坦である止水材Bの代わりに、一方の表面が波型であるアクリル系止水材Cを使用した以外は、実施例1と同様の方法で供試体を作成した。なお、この波型である止水材Bは、幅40mmの間に4個の山(長手方向のどの位置においても、それぞれの山の形状は略同じである)が存在しており、山の高さと谷の深さとの長さが3mmである。
【0048】
<比較例1>
アクリル系止水材Aの代わりに、ウレタン系止水材(早川ゴム株式会社社製、商品名:サンタックシーラントSH-100)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で供試体を作成した。
【0049】
<比較例2>
アクリル系止水材Aの代わりに、ゴム系接着剤(早川ゴム株式会社社製、商品名:サンタックボンドPB-50)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で供試体を作成した。
【0050】
<比較例3>
アクリル系止水材Aの代わりに、エポキシ系接着剤(コニシ株式会社社製、商品名:クイックメンダー)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で供試体を作成した。
【0051】
[密着性の評価]
実施例1~2及び比較例1~3について、材齢1日で建研式引張試験機(サンコーテクノ株式会社社製、商品名:R-10000ND)を用いて接着強度を測定した。これらの結果を下記の表1に示す。
【0052】
【0053】
[供試体の作成]
<実施例3>
最初に、型枠(幅50mm×長さ50mm×高さ20mm)の底部に滑り止めシート(シート全体の大きさは幅50mm×長さ50mm;このシートには、直方体形状の突起部(幅3mm×長さ4mm×高さ1mm)が市松模様のように全体に渡って交互に配されている)を張り付けて、無収縮モルタル(太平洋マテリアル株式会社社製、商品名:プレユーロックス)を混練した後にその型枠にそのモルタルを流し込んで7日間養生して、凹凸を有するモルタルブロック(幅50mm×長さ50mm×高さ20mm)を2枚作製した。次に、1枚目のモルタルブロックの一方の平坦面(幅50mm×長さ50mmの面)に対して流動性のアクリル系止水材A(株式会社コーケン社製、商品名:リークストッパー、ゲルタイムが1分間となるように調整されている(硬化前の)2液型アクリル系止水材)を幅40mm×長さ40mm×高さ1mmの範囲で塗布して、その上にアクリル系止水材B(止水材Aの硬化体(成形品);幅40mm×長さ40mm×高さ10mm)の幅40mm×長さ40mmの面を張り付けた。続いて、2枚目のモルタルブロックの凹凸面に上記の流動性のアクリル系止水材Aを幅40mm×長さ40mm×高さ1mmの範囲で塗布して、止水材Bの表面に張り付けた。すなわち、モルタルブロック、止水材A、止水材B、止水材A、及びモルタルブロックの順に並んだ供試体を作成した。
【0054】
<比較例4>
アクリル系止水材Aの代わりに、ウレタン系止水材(早川ゴム株式会社社製、商品名:サンタックシーラントSH-100)を使用した以外は、実施例3と同様の方法で供試体を作成した。
【0055】
<比較例5>
アクリル系止水材Aの代わりに、ゴム系接着剤(早川ゴム株式会社社製、商品名:サンタックボンドPB-50)を使用した以外は、実施例3と同様の方法で供試体を作成した。
【0056】
[密着性の評価]
実施例3及び比較例4~5について、材齢1日で建研式引張試験機(サンコーテクノ株式会社社製、商品名:R-10000ND)を用いて接着強度を測定した。これら結果を下記の表2に示す。
【0057】
【0058】
実施例4及び比較例6~9において、透水性の評価を行った。
【0059】
[透水性評価用供試体の作成]
<実施例4>
図5(a)は、透水性試験に用いる作製途中の供試体を或る場所で深さ方向に仮想的に切断した断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のA-A線に沿って仮想的に切断した断面図である。
図6(a)は、透水性試験が行われる完成後の供試体を或る場所で仮想的に切断した断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のB-B線に沿って仮想的に切断した断面図である。なお、
図5(a)~
図6(b)では、各部材の位置関係を明確にすることを目的として、断面部分を示すための斜線は省略した。
【0060】
(1)上部のみが開放された型枠10(幅70mm×長さ100mm×高さ40mm)を用いて、モルタル(株式会社MIYUKI社製、商品名:プレミックスモルタル、砂:セメント=3:1)を型枠10の上側から流し込み、その型枠10にモルタルを打設した。その際に、打設したモルタルの上部の周囲端部にポリエチレンフォーム11(幅10mm×深さ10mm)を深さ方向に半分埋没するように配置した。更にモルタル部(幅50mm×長さ80mm)の上部の4隅においてアンカー用としての長さ50mmのコンクリート用釘12を半分埋没させた。その後、7日間養生して、第1モルタルブロック13を作成した。
【0061】
(2)上記型枠10は脱型せずに、上記第1モルタルブロック13における上側中央部の表面のレイタンスをワイヤーブラシで取り除き、その上端中央部の中心に止水材14(幅30mm×長さ80mm×高さ10mm;実施例1で使用した流動性のアクリル系止水材A(幅30mm×長さ80mm×高さ1mm)と実施例1で使用したアクリル系止水材B(幅30mm×長さ80mm×高さ10mm)とを一体化させたもの)を取り付けた。更に、止水材14の幅方向における両側に濾紙15(アドバンテック東洋株式会社、商品名:定性濾紙No.2)を配置した。
【0062】
(3)(上部のみが開放された型枠10を含む)第1モルタルブロック13の上側において、第1モルタルブロック13と同寸法の第2モルタルブロック16が更に配置されるように、上部のみが開放された型枠10を配置した。その後、第1モルタルブロック13と第2モルタルブロック16との間に止水材14が挟まれるように、モルタル(株式会社MIYUKI社製、商品名:プレミックスモルタル、砂:セメント=3:1)を型枠10の上側から流し込み、その型枠10にモルタルを打設した。
【0063】
(4)7日間養生した後に、型枠10を脱型した。続いて、モルタルブロックからポリエチレンフォーム11を取り除いて、第1モルタルブロック13と第2モルタルブロック16との打ち継ぎ部の周囲に溝(幅10mm×深さ10mm)を形成した。
【0064】
(5)2枚配置した濾紙15のうちの一方の濾紙15の長手方向に隣接する溝以外の溝を、シール材17(エポキシ系接着剤;コニシ株式会社社製、商品名:クイックメンダー)でシールした。このシールの際に、加圧側(水が入る側)のシール部には、その中央において、給水金具18とそれに連結されるように配置されている(濾紙15の長さ方向の範囲にわたって配置されている)透水性ホース19(ボンドネットホースの半割)とを取り付けた。これによって、濾紙15の範囲の全体に水圧がかかるようにした。
【0065】
<比較例6>
アクリル系止水材Aの代わりに、ゴム系接着剤(早川ゴム株式会社社製、商品名:サンタックボンドPB-50)を使用した以外は、実施例4と同様の方法で透水性評価用供試体を作成した。
【0066】
<比較例7>
アクリル系止水材A及びBの組み合わせの代わりに、アクリル系止水材B(幅30mm×長さ80mm×高さ10mm)のみを使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で透水性評価用供試体を作成した。
【0067】
<比較例8>
アクリル系止水材A及びBの組み合わせの代わりに、水膨潤ブチル系(ゴム系)止水材(アオイ化学工業株式会社社製、商品名:キッスシーラーW)(幅30mm×長さ80mm×高さ10mm)を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で透水性評価用供試体を作成した。
【0068】
[透水性試験]
上記の7日間養生した後の翌日に、透水性評価用供試体に0.05MPaの水圧(X:入水の方向;Y:出水の方向)をかけて単位時間当たりの透水量を測定して、止水材14の止水効果を確認した。これら結果を下記の表3に示す。
【0069】