(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062896
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】中空ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220414BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220414BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171082
(22)【出願日】2020-10-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月8日(韓国)において、アドレス(https://www.prgrkorea.com/community/topic.php?category=&id=236&page=1&mode=read)の株式会社プロギアのウェブサイトで公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月6日(日本)において、アドレス(https://www.prgr-golf.com)の株式会社プロギアのウェブサイトで公開
(71)【出願人】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】北崎 剛史
(72)【発明者】
【氏名】中原 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康守
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH02
2C002CH06
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】反発性能の向上を図りつつ、打ち出し角を高く確保し、かつ、耐久性の向上を図る。
【解決手段】第1平面Pr1と第2平面Pr2とで挟まれるヘッド本体12の領域を第1領域A1とする。第1領域A1においてフェース中心基準断面Pfcと平行する任意のフェース基準断面Pfで、前壁外面34Aの延長線αと後壁外面36Aの延長線βとの交点γを通り水平面HPと直交する直線を第1基準線Lr1とする。第1領域A1におけるフェース基準断面Pfで前壁外面34Aの延長線αと第1基準線Lr1とがなす角度を第1角度θ1とする。第1領域A1におけるフェース基準断面Pfで後壁外面36Aの延長線βと第1基準線Lr1とがなす角度を第2角度θ2とする。第1角度θ1<第2角度θ2としている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の高さを有して左右に延在するフェース部と、前記フェース部の下部から後方に延在するソール部とを含むヘッド本体を備え、前記ヘッド本体の内部が中空部であり、前記ソール部の前記フェース部寄りの箇所に上方に窪みつつトウヒール方向に延在する溝部が形成された中空ゴルフクラブヘッドであって、
前記溝部は、前記フェース部寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出する前壁部と、前記前壁部よりもフェースバック寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出し前記前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部の上端と前記後壁部の上端とを接続する接続壁部とを備え、
前記中空ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に10mm離間した箇所に位置する第1平面と、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に10mm離間した箇所に位置する第2平面とで挟まれる前記ヘッド本体の領域を第1領域とし、
前記第1領域において前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面で、前記前壁部のフェースバック側に位置する面である前壁外面の延長線と前記後壁部の前記フェース部側に位置する面である後壁外面の延長線との交点を通り前記水平面と直交する直線を第1基準線とし、
前記任意の断面で前記前壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第1角度θ1とし、
前記任意の断面で前記後壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第2角度θ2としたとき、
前記第1角度θ1よりも前記第2角度θ2が大である、
ことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記後壁部は上方に至るにつれて前記フェース部側に変位し、
前記第2角度θ2は15°以上30°以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記前壁部は、前記第1基準線上を上方に延在しまたは上方に至るにつれてフェースバック側に変位し、
前記第1角度θ1は0°以上30°未満である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
以下の式(1)、式(2)が満たされる、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
0.5L0≦Lt≦1.5L0 (1)
0.5L0≦Lh≦1.5L0 (2)
【請求項5】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第3距離Lhが前記第1距離L0および前記第2距離Ltよりも大である、または、前記第2距離Ltが前記第1距離L0および前記第3距離Lhよりも大である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第3距離Lhが前記第1距離L0および前記第2距離Ltよりも小である、または、前記第2距離Ltが前記第1距離L0および前記第3距離Lhよりも小である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第1距離L0が前記第2距離Ltおよび前記第3距離Lhよりも大である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第1距離L0が前記第2距離Ltおよび前記第3距離Lhよりも小である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1よりも前記後壁部の肉厚t4が大である、
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ソール部は前記前壁部の下端とリーディングエッジとを接続する前端ソール壁を有し、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1よりも前記前端ソール壁の最大肉厚t2が大である、
ことを特徴とする請求項1から9の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記ソール部は前記前壁部の下端とリーディングエッジとを接続する前端ソール壁を有し、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記前壁部の肉厚t3は、前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1以上であり、かつ、前記前端ソール壁の最大肉厚t2以下である、
ことを特徴とする請求項1から9の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1は1.0mm以上1.5mm以下である、
ことを特徴とする請求項10または11記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記前端ソール壁の最大肉厚t2は1.2mm以上2.5mm以下である、
ことを特徴とする請求項10から12の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記最深部の前記水平面からの高さを最深部距離Lxとしたとき、
前記最深部距離Lxは3mm以上20mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から13の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記溝部のトウヒール方向に沿った溝長さWは40mm以上80mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から14の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記フェース部の前記中空部に向いた面をフェース内面とし、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記任意の断面において前記最深部と前記フェース内面とを結ぶ最短距離Lfが4mm以上10mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から15の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記ヘッド本体の体積が100cc以上200cc以下である、
ことを特徴とする請求項1から16の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドでボールを打球した際の初速を向上させることが飛距離の向上を図る上で重要である。そのため、ゴルフクラブヘッドの反発性能の向上を図ることが必要となる。
特許文献1、2には、中空ゴルフクラブヘッドにおいて、フェース部寄りのソール部の部分にトウヒール方向に延在する溝部を形成することが開示されている。
上記技術によれば、打球時における溝部の変形を促進してフェース部をたわみ易くして反発性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6080916号公報
【特許文献2】特許第5793545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、反発性能の向上を図る上で一定の効果があるものの以下の点で改善の余地がある。
第1に、打球時に溝部が弾性変形することでフェース部のソール部寄りの箇所がフェースバック側に変位してフェース面が傾き、打球の打ち出し角が低下してしまうことから、飛距離の向上を図る上で改善の余地がある。
第2に、打球時に溝部が弾性変形した際に溝部の部分に応力が集中し、耐久性の向上を図る上で改善の余地がある。
第3に、打球時における弾性変形を確保しつつ耐久性の向上を図るために、溝部全体の肉厚を厚くすることも考えられるが、その場合は、ゴルフクラブヘッドの重量増となり、設計の自由度を確保する上で改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴルフクラブヘッドの重量増を招くことなく、反発性能の向上を図りつつ、打ち出し角を高く確保し、かつ、耐久性の向上を図る上で有利なゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、上下の高さを有して左右に延在するフェース部と、前記フェース部の下部から後方に延在するソール部とを含むヘッド本体を備え、前記ヘッド本体の内部が中空部であり、前記ソール部の前記フェース部寄りの箇所に上方に窪みつつトウヒール方向に延在する溝部が形成された中空ゴルフクラブヘッドであって、前記溝部は、前記フェース部寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出する前壁部と、前記前壁部よりもフェースバック寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出し前記前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部の上端と前記後壁部の上端とを接続する接続壁部とを備え、前記中空ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に10mm離間した箇所に位置する第1平面と、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に10mm離間した箇所に位置する第2平面とで挟まれる前記ヘッド本体の領域を第1領域とし、前記第1領域において前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面で、前記前壁部のフェースバック側に位置する面である前壁外面の延長線と前記後壁部の前記フェース部側に位置する面である後壁外面の延長線との交点を通り前記水平面と直交する直線を第1基準線とし、前記任意の断面で前記前壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第1角度θ1とし、前記任意の断面で前記後壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第2角度θ2としたとき、前記第1角度θ1よりも前記第2角度θ2が大であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たすことによって、打球時におけるフェース部のソール部寄りの箇所のたわみ量が過剰となることを抑制しつつたわみ量を適切に確保できるため、反発性能の向上を図ることができ、かつ、打球時におけるソール部寄りのフェース面の変位が過剰となることを抑制できるため、打ち上げ角を高く確保でき、打球の初速、飛距離の向上を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たすことによって、溝部およびフェース部のソール部寄りの箇所における応力集中が緩和されているので、耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、打球時における弾性変形を確保しつつ耐久性の向上を図るために、溝部全体の肉厚を厚くした場合は、中空ゴルフクラブヘッドの重量増となり、設計の自由度が低下する不利が生じるのに対して、本発明では、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たせばよいため、中空ゴルフクラブヘッドの重量増を回避でき、設計の自由度を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドをフェース面の前方から見た正面図である。
【
図5】
図1の平面Xで破断したフェース中心基準断面Pfcの断面図である。
【
図6】
図1の平面Xで破断したフェース中心基準断面Pfcの断面図であり、フェース部の下部およびソール部の前部を描いている。
【
図7】(A)は第1角度θ1>第2角度θ2である比較例のゴルフクラブヘッドの変形状態を示す断面図、(B)は打球時におけるゴルフクラブヘッドの断面における応力の分布を示すコンター図である。
【
図8】(A)は第1角度θ1<第2角度θ2である本発明のゴルフクラブヘッドの変形状態を示す断面図、(B)は打球時におけるゴルフクラブヘッドの断面における応力の分布を示すコンター図である。
【
図9】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第1の説明図である。
【
図10】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第2の説明図である。
【
図11】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第3の説明図である。
【
図12】フェース面の中心点Pcの規定方法を示す第4の説明図である。
【
図13】ゴルフクラブヘッドの重心点G0とフェース面上重心点FGとの関係を示すゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図14】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図15】フェース面の輪郭線Iの定義を説明するゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図16】フェース面の中心点Pcの定義を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図17】条件1における実験例の評価結果を示す図である。
【
図18】条件2における実験例の評価結果を示す図である。
【
図19】条件3における実験例の評価結果を示す図である。
【
図20】条件4における実験例の評価結果を示す図である。
【
図21】条件5における実験例の評価結果を示す図である。
【
図22】条件6における実験例の評価結果を示す図である。
【
図23】条件7における実験例の評価結果を示す図である。
【
図24】条件8における実験例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1~
図5に示すように、本実施の形態では、中空ゴルフクラブヘッド10が、地面に置かれたボールを打球するユーティリティあるいはフェアウェイウッドである場合について説明するが、本発明は、中空のウッド型ゴルフクラブヘッド(ドライバー)あるいは中空アイアンにも無論適用可能である。
中空ゴルフクラブヘッド10は、ヘッド本体12を含んで構成されている
ヘッド本体12は、主に金属材料により構成される。
前記金属材料としては、例えばステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金又はアルミニウム合金等の1種又は2種以上が用いられる。
なお、ヘッド本体12は、クラウン部16および/またはソール部18を炭素繊維強化樹脂(CFRP)で構成すると共に、残りの部分を上記金属材料で構成した複合構造であってもよいことは無論である。
ヘッド本体12は、フェース部14と、クラウン部16と、ソール部18と、サイド部20とを備えている。
フェース部14は、上下の高さを有して左右に延在している。
クラウン部16は、フェース部14よりも小さい肉厚でフェース部14の上部から後方に延在している。
【0009】
ソール部18は、フェース部14の下部から後方に延在している。
サイド部20は、クラウン部16とソール部18の間でフェース部14のトウ22側縁とヒール24側縁との間をフェースバック26を通って延在している。
図5に示すように、ヘッド本体12は、それらフェース部14とクラウン部16とソール部18とサイド部20とで囲まれた内部が中空部28とされた中空構造を呈している。
フェース部14の外側に露出する外面がボールを打撃するフェース面14Aであり、フェース部14の中空部28に面した内面がフェース内面14Bとなっている。
クラウン部16の外側に露出する外面がクラウン面16Aであり、クラウン部16の中空部28に面した内面がクラウン内面16Bである。
図1に示すように、クラウン部16には、フェース面14A側でかつヒール24寄りの位置にシャフトSに接続するホーゼル30が設けられ、ホーゼル30にシャフトSが接続されることでゴルフクラブ100が構成される。
ソール部18の外側に露出する外面がソール面18Aであり、ソール部18の中空部28に面した内面がソール内面18Bとなっている。
図2~
図5において、符号19はフェース部14(フェース面14A)とソール部18(ソール面)との境界であるリーディングエッジを示す。
【0010】
次に、フェース面14Aの中心点Pcの規定方法について説明する。
フェース面14Aの中心点Pcは、フェース面14Aの幾何学的中心であり、中心点Pcの規定方法としては以下に例示する第1の規定方法、第2の規定方法を含め従来公知のさまざまな方法が採用可能である。
【0011】
[A]フェース面14Aの中心点Pcの第1の規定方法:
フェース面14Aと他の中空ゴルフクラブヘッド10の部分との境目が明確である場合、言い換えると、フェース面14Aの周縁が稜線によって特定される場合における中心点Pcの規定方法である。この場合はフェース面14Aが明瞭に定義されることになる。
図9~
図12はフェース面14Aの中心点Pcの規定方法を示す説明図である。
【0012】
(1)まず、
図9に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平面HP上に中空ゴルフクラブヘッド10を載置する。このときの中空ゴルフクラブヘッド10の状態を基準状態とする。なお、ライ角およびフェース角の設定値は、例えば製品カタログに記載された値である。
【0013】
(2)次にクラウン部16及びソール部18を結ぶ方向における仮中心点c0を求める。
すなわち、
図9に示すように、トウ22およびヒール24を結ぶ水平面HPと平行な線(以下水平線という)の概略中心点と交差する垂線f0を引く。
この垂線f0とフェース面14Aの上縁とが交差するa0点と、垂線f0とフェース面14Aの下縁とが交差するb0点の中点を仮中心点c0とする。
【0014】
(3)次に
図10に示すように仮中心点c0を通る水平線g0を引く。
(4)次に
図11に示すように水平線g0とフェース面14Aのトウ22側の縁とが交差するd0点と、水平線g0とフェース面14Aのヒール24側の縁とが交差するe0点の中点を仮中心点c1とする。
【0015】
(5)次に
図12に示すように仮中心点c1を通る垂線f1を引き、この垂線f1とフェース面14Aの上縁とが交差するa1点と、垂線f1とフェース面14Aの下縁とが交差するb1点の中点を仮中心点c2とする。
ここで、仮中心点c1とc2とが合致したならばその点をフェース面14Aの中心点Pcとして規定する。
仮中心点c1とc2が合致しなければ、(2)乃至(5)の手順を繰り返す。
なお、フェース面14Aは曲面を呈しているため、水平線g0の中点、垂線f0、f1の中点を求める場合の水平線g0の長さ、垂線f0、f1の長さはフェース面14Aの曲面に沿った長さを用いるものとする。
そして、フェースセンターラインCLは、中心点Pcを通りかつトウヒール方向と直交する方向に延在する直線で定義される。
【0016】
[B]フェース面14Aの中心点Pcの第2の規定方法:
次に、フェース面14Aの周縁と他の中空ゴルフクラブヘッド10の部分との間が曲面で接続されておりフェース面14Aが明瞭に定義できない場合の中心点Pcの定義を説明する。
【0017】
図13に示すように、中空ゴルフクラブヘッド10は中空であり、符号G0は中空ゴルフクラブヘッド10の重心点を示し、符号Lpは重心点G0とフェース面14A上重心点FGとを結ぶ直線であり、言い換えると、直線Lpは重心点G0を通るフェース面14Aの垂線である。
すなわち、中空ゴルフクラブヘッド10の重心点G0をフェース面14Aに投影した点がフェース面14A上重心点FGである。
ここで、
図14に示すように、重心点G0とフェース面14A上重心点FGとを結ぶ直線Lpを含む多数の平面H1、H2、H3、…、Hnを考える。
【0018】
中空ゴルフクラブヘッド10を各平面H1、H2、H3、…、Hnに沿って破断したときの断面において、
図15に示されるように、中空ゴルフクラブヘッド10の外面の曲率半径r0を測定する。
曲率半径r0の測定に際して、フェース面14A上のフェースライン、パンチマーク等が無いものとして扱う。
曲率半径r0は、フェース面14Aの中心点Pcから外方向(
図15における上方向、下方向)に向かって連続的に測定される。
そして、測定において曲率半径r0が最初に所定の値以下となる部分をフェース面14Aの周縁を表わす輪郭線Iとして定義する。
所定の値は例えば200mmである。
多数の平面H1、H2、H3、…、Hnに基づいて決定された輪郭線Iによって囲まれた領域が、
図14、
図15に示すように、フェース面14Aとして定義される。
【0019】
次に、
図16に示すように、ライ角およびフェース角が規定値となるように水平な地面上(水平面HP)に中空ゴルフクラブヘッド10を載置する。
直線LTは、フェース面14Aのトウ22側点PTを通過して鉛直方向に延在する。
直線LHは、フェース面14Aのヒール24側点PHを通過して鉛直方向に延在する。
直線LCは、直線LTおよび直線LHと平行である。直線LCと直線LTとの距離は、直線LCと直線LHとの距離と等しい。
符号Puは、フェース面14Aの上側点を示し、符号Pdはフェース面14Aの下側点である。上側点Puおよび下側点Pdは、いずれも直線LCと輪郭線Iとの交点である。
中心点Pcは、上側点Puと下側点Pdとを結ぶ線分の中点で定義される。
【0020】
次に、中空ゴルフクラブヘッド10の各部の規定について詳細に説明する。
図1~
図5に示すように、中空ゴルフクラブヘッド10を水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とする。なお、以下では、中空ゴルフクラブヘッド10の基準状態を単に「基準状態」という。
図1、
図5に示すように、基準状態において、フェース面14Aの中心点Pcを通る法線を含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面をフェース中心基準断面Pfcとする。言い換えると、フェース中心基準断面Pfcは、基準状態において、フェースセンターラインCLを含みかつ水平面HPと直交する平面Xでヘッド本体12を破断した断面である。
また、フェース中心基準断面Pfcと平行な任意の平面でヘッド本体12を破断した断面をフェース基準断面Pfとする。したがって、フェース基準断面Pfはフェース中心基準断面Pfcを含む。
【0021】
(溝部)
図3、
図5、
図6に示すように、ソール部18のフェース部14寄りの箇所に上方に窪みつつトウヒール方向に延在する溝部32が形成され、溝部32を構成する壁部は中空部28側に突出している。
溝部32は、フェース面14Aでボールを打球した際に、弾性変形が促進されることでフェース部14のたわみ量を確保するものであり、溝部32を設けることで中空ゴルフクラブヘッド10の反発性能を高めることができる。
【0022】
図5、
図6に示すように、本実施の形態では、溝部32を構成する壁部は、前壁部34と、後壁部36と、接続壁部38とを含んで構成されている。
前壁部34は、フェース部14寄りのソール部18の箇所から上方に突出している。
本実施の形態では、前壁部34は、
図6に示すように後述する第1基準線Lr1上を上方に延在しまたは上方に至るにつれてフェースバック26側に変位している。
ここで、前壁部34のフェースバック26側に位置する面を前壁外面34Aとする。
【0023】
後壁部36は、前壁部34よりもフェースバック26寄りのソール部18の箇所から上方に突出し前壁部34と対向している。
本実施の形態では、後壁部36は、上方に至るにつれてフェース部14側に変位している。
ここで、後壁部36のフェース部14側に位置する面を後壁外面36Aとする。
【0024】
接続壁部38は、前壁部34の上端と後壁部36の上端とを接続している。
ここで、接続壁部38の下方を向いた面を接続壁外面38Aとする。
また、任意のフェース基準断面Pfにおいて、接続壁外面38Aが水平面HPから最も上方に離間した箇所を溝部32の最深部40とする。
また、接続壁部38の形状は、打球時に応力が集中しないように、前壁部34の上端と後壁部36の上端とをなめらかに接続する形状であればよく、
図6に示すように、接続壁部38(接続壁外面38A)が湾曲面状を呈していても良いし、接続壁部38(接続壁外面38A)が前壁部34の上端と後壁部36の上端とに対してなめらかに接続された平面状を呈していても良い。
【0025】
また、前壁部34の下端とリーディングエッジ19とを接続するソール部18の部分を前端ソール壁1802とする。
なお、本実施の形態では、後壁部36が
図5に実線で示すような形状である場合について説明するが、
図5に想像線で示すように、後壁部36の後部にソール部18と一体にウェイト部39が設けられていても本発明は無論適用可能である。
【0026】
(第1角度θ1、第2角度θ2)
図3に示すように、フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからトウ22側に10mm離間した箇所に位置する平面を第1平面Pr1とし、フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからヒール側に10mm離間した箇所に位置する平面を第2平面Pr2とする。
第1平面Pr1と第2平面Pr2とで挟まれるヘッド本体12の領域を第1領域A1とする。
図6に示すように、第1領域A1においてフェース中心基準断面Pfcと平行する任意のフェース基準断面Pfで、前壁外面34Aの延長線αと後壁外面36Aの延長線βとの交点γを通り水平面HPと直交する直線を第1基準線Lr1とする。
第1領域A1におけるフェース基準断面Pfで前壁外面34Aの延長線αと第1基準線Lr1とがなす角度を第1角度θ1とする。
第1領域A1におけるフェース基準断面Pfで後壁外面36Aの延長線βと第1基準線Lr1とがなす角度を第2角度θ2とする。
本実施の形態では、第1角度θ1<第2角度θ2としている。
なお、以下では、「第1領域A1における任意のフェース基準断面Pf」と、「第1領域A1以外の部分における任意のフェース基準断面Pf」との双方を含めて「任意のフェース基準断面Pf」ということにする。
なお、「任意のフェース基準断面Pf」のうち「第1領域A1」に該当する「フェース基準断面Pf」を特定する場合は、「第1領域A1における任意のフェース基準断面Pf」と記載するものとする。
【0027】
ここで、
図7、
図8を参照して、溝部32の第1角度θ1、第2角度θ2の大小関係が、打球時における溝部32の変形量および応力分布に与える影響について説明する。
以下では、第1角度θ1<第2角度θ2という本発明の規定を満たさない中空ゴルフクラブヘッドを比較例の中空ゴルフクラブヘッド10′とし、この比較例の中空ゴルフクラブヘッド10′と、第1角度θ1<第2角度θ2という本発明の規定を満たす中空ゴルフクラブヘッド10とについて説明する。
図7(A)は比較例の中空ゴルフクラブヘッド10′の打球時の変形量を示し、想像線が打球前の状態、実線が打球時の状態を示している。
図7(B)は上記比較例における打球時の応力分布を簡略化して示すコンター図であり、ハッチングの細かい部分が応力の最も高い部分を示し、ハッチングの粗い部分が次に応力の高い部分を示している。
図8(A)は、本実施の形態の中空ゴルフクラブヘッド10の打球時の変形量を示し、
図8(B)は本実施の形態における打球時の応力分布を示している。
なお、
図7(B)、
図8(B)は図面の簡略化を図るために、応力分布を2段階で示しているが、実際のコンター図は、応力が高くなるほど表示する色を寒色系から暖色系にわたって変化させることで多段階にわたって応力分布を表現している。
【0028】
図7(A)、
図8(A)を比較して明らかなように、比較例(第1角度θ1>第2角度θ2)に比べて、本実施の形態(第1角度θ1<第2角度θ2)では、打球時における前壁部34のフェースバック26側への弾性変形の変形量が抑制され、したがって、フェース部14のソール部18寄りの箇所のフェースバック26側への変形量が抑制されていることがわかる。
図7(B)、
図8(B)を比較して明らかなように、比較例(第1角度θ1>第2角度θ2)に比べて、本実施の形態(第1角度θ1<第2角度θ2)では、フェース部14の下部から前壁部34にわたる部分と、接続部の部分とにおいて、高い応力が分布する面積が少なく、したがって、溝部32およびフェース部14のソール部18寄りの箇所における応力集中が緩和されていることがわかる。
【0029】
したがって、比較例の中空ゴルフクラブヘッド10′に比べて本実施の形態の中空ゴルフクラブヘッド10では、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たすことによって、打球時におけるフェース部14のソール部18寄りの箇所のたわみ量が過剰となることを抑制しつつたわみ量を適切に確保できるため、反発性能の向上を図ることができ、かつ、打球時におけるソール部18寄りのフェース面14Aの変位が過剰となることを抑制できるため、打ち上げ角を高く確保でき、打球の初速、飛距離の向上を図る上で有利となる。
また、比較例の中空ゴルフクラブヘッド10′に比べて本実施の形態の中空ゴルフクラブヘッド10では、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たすことによって、溝部32およびフェース部14のソール部18寄りの箇所における応力集中が緩和されているので、耐久性の向上を図る上で有利となる。
また、打球時における弾性変形を確保しつつ耐久性の向上を図るために、溝部32全体の肉厚を厚くした場合は、中空ゴルフクラブヘッド10の重量増となり、設計の自由度が低下する不利が生じるのに対して、本実施の形態では、第1角度θ1<第2角度θ2という条件を満たせばよいため、中空ゴルフクラブヘッド10の重量増を回避でき、設計の自由度を確保する上で有利となる。
【0030】
また、
図6に示すように、本実施の形態では、前壁部34は、第1基準線Lr1上を上方に延在しまたは上方に至るにつれてフェースバック26側に変位し、第1角度θ1は、0°以上30°未満である。
第1角度θ1が上記範囲内であると、反発性能、打ち出し角を確保しつつ耐久性を確保する上でより有利となる。
第1角度θ1が上記範囲を下回ると、溝部32の変形が大きくなりすぎるため、反発性能を確保できる一方、打ち出し角を確保する効果が低下し、耐久性を確保する効果が低下する。
第1角度θ1が上記範囲を上回ると、溝部32の変形が小さくなりすぎるため、打ち出し角を確保する効果と耐久性を確保する効果が得られる一方、反発性能を確保する効果が低下する。
【0031】
また、
図6に示すように、本実施の形態では、後壁部36は、上方に至るにつれてフェース部14側に変位し、第2角度θ2は15°以上30°以下である。
第2角度θ2が上記範囲内であると、反発性能、打ち出し角を確保しつつ耐久性を確保する上でより有利となる。
第2角度θ2が上記範囲を下回ると、溝部32の変形が大きくなりすぎるため、反発性能を確保できる一方、打ち出し角を確保する効果が低下し、耐久性を確保する効果が低下する。
第2角度θ2が上記範囲を上回ると、溝部32の変形が小さくなりすぎるため、打ち出し角を確保する効果と耐久性を確保する効果が得られる一方、反発性能を確保する効果が低下する。
【0032】
(第1距離L、第2距離Lt、第3距離Lhの範囲)
また、
図6に示すように、フェース中心基準断面Pfcにおける溝部32の最深部40を第1最深部40Aとし、この第1最深部40Aの水平面HPからの高さを第1距離L0とする。
図3に示すように、フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからトウ22側に20mm離間した箇所に位置する第3平面Pr3で破断した断面における最深部40を第2最深部40Bとして、第3平面Pr3で破断した断面におけるソール面18Aの最下端を通り水平面HPと平行する平面からの第2最深部40Bを高さを第2距離Ltとする。
図3に示すように、フェース中心基準断面Pfcと平行しフェース中心基準断面Pfcからヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面Pr4で破断した断面における最深部40を第3最深部40Cとして、第4平面Pr4で破断した断面におけるソール面18Aの最下端を通り水平面HPと平行する平面からの第3最深部40Cを高さを第3距離Lhとする。
このとき、以下の式(1)、式(2)が満たされるようにした。
0.5L0≦Lt≦1.5L0 (1)
0.5L0≦Lh≦1.5L0 (2)
第2距離Lt、第3距離Lhが上記式(1)、式(2)の範囲を満たすと、反発性能を確保しつつ、耐久性の向上を図る上で有利となる。
第2距離Lt、第3距離Lhが上記式(1)、式(2)の範囲を下回ると、打球時における溝部32の弾性変形が小さくなるため、反発性能を確保する効果が低下する。
第2距離Lt、第3距離Lhが上記式(1)、式(2)の範囲を上回ると、打球時における溝部32の弾性変形が過剰となるため、反発性能を確保できるものの、耐久性を確保する効果が低下する。
【0033】
(第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの大小関係)
また、以下のように第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの大小関係を規定する以下の条件A~Fの何れかを満たす。
条件A:第3距離Lhが第1距離L0および第2距離Ltよりも大である。
条件B:第2距離Ltが第1距離L0および第3距離Lhよりも大である。
条件C:第3距離Lhが第1距離L0および第2距離Ltよりも小である。
条件D:第2距離Ltが第1距離L0および第3距離Lhよりも小である。
条件E:第1距離L0が第2距離Ltおよび第3距離Lhよりも大である。
条件F:第1距離L0が第2距離Ltおよび第3距離Lhよりも小である。
上記条件A~Fの何れかを満たすと、溝部32全体の最深部40の水平面HPからの距離を最適化することができ、反発性能と耐久性の両立を図る上でより有利となる。
すなわち、条件Aは、例えば、第1距離L0と第2距離Ltをほぼ同じ値とし、その同じ値よりも第3距離Lhを大とする場合に対応している。
条件Bは、例えば、第1距離L0と第3距離Lhをほぼ同じ値とし、その同じ値よりも第2距離Ltを大とする場合に対応している。
条件Cは、第1距離L0と第2距離Ltをほぼ同じ値とし、その同じ値よりも第3距離Lhを小とする場合に対応している。
条件Dは、第1距離L0と第3距離Ltをほぼ同じ値とし、その同じ値よりも第2距離Lhを小とする場合に対応している。
条件Eは、第2距離Lt、第3距離Lhよりも第1距離L0を大とする場合に対応している。
条件Fは、第2距離Lt、第3距離Lhよりも第1距離L0を小とする場合に対応している。
これに対して、条件A~Fの何れも満たさず、第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの全てを一様に大きくした場合は、溝部32全体の剛性が下がることから、打球時の溝部32の弾性変形が過剰となるため、反発性能を確保できる一方、耐久性を確保する効果が低下する。
また、条件A~Fの何れも満たさず、第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの全てを一様に小さくした場合は、溝部32全体の剛性が上がることから、打球時の溝部32の弾性変形が過小となるため、耐久性を確保できる一方、反発性能を確保する効果が低下する。
【0034】
(最深部40における接続壁部38の肉厚t1、後壁部36の肉厚t4)
また、
図6に示すように、任意のフェース基準断面Pfにおいて、最深部40における接続壁部38の肉厚t1よりも後壁部36の肉厚t4が大である。
上記条件を満たすと、打球時に最深部40における接続壁部38に応力が集中するため、最深部40における接続壁部38の弾性変形を促進でき、反発性能を向上させる上でより有利となる。
上記条件を満たさないと、打球時に最深部40における接続壁部38に応力が集中する効果が低下し、最深部40における接続壁部38の弾性変形を促進する効果が低下し、反発性能を向上させる効果が低下する。
【0035】
(前端ソール壁1802の最大肉厚t2)
また、
図6に示すように、任意のフェース基準断面Pfにおいて、前端ソール壁1802の最大肉厚をt2とする。
最深部40における接続壁部38の肉厚t1よりも前端ソール壁1802の最大肉厚t2が大である。
肉厚t1<最大肉厚t2であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
肉厚t1>最大肉厚t2であると、打球時に前端ソール壁1802に応力が集中して耐久性を確保する効果が低下する。
肉厚t1=最大肉厚t2であると、耐久性を確保するために肉厚t1、最大肉厚t2を大きくする必要があり、剛性が高くなることから、打球時に溝部32の弾性変形を促進する効果が低下し、反発性能を向上させる効果が低下する。
【0036】
(前壁部34の肉厚t3)
また、
図6に示すように、任意のフェース基準断面Pfにおいて、前壁部34の肉厚t3は、最深部40における接続壁部38の肉厚t1以上であり、かつ、前端ソール壁1802の最大肉厚t2以下である。
すなわち、t1≦t3≦t2である。
前壁部34の肉厚t3が上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
前壁部34の肉厚t3が上記範囲を下回ると、打球時に前壁部34に応力が集中して耐久性の向上を図る効果が低下する。
前壁部34の肉厚t3が上記範囲を上回ると、剛性が高くなることから、打球時に溝部32の弾性変形を促進する効果が低下し、反発性能を向上させる効果が低下する。
【0037】
(最深部40における接続壁部38の肉厚t1)
任意のフェース基準断面Pfにおいて、最深部40における接続壁部38の肉厚t1は1.0mm以上1.5mm以下である。
最深部40における接続壁部38の肉厚t1が上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
最深部40における接続壁部38の肉厚t1が上記範囲を下回ると、打球時に最深部40における接続壁部38の弾性変形が過大となるため、耐久性の向上を図る効果が低下する。
最深部40における接続壁部38の肉厚t1が上記範囲を上回ると、打球時に最深部40における接続壁部38の弾性変形が過小となるため、反発性能を向上する効果が低下する。
【0038】
(前端ソール壁1802の最大肉厚t2)
任意のフェース基準断面Pfにおいて、前端ソール壁1802の最大肉厚t2は1.2mm以上2.5mm以下である。
前端ソール壁1802の最大肉厚t2が上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
前端ソール壁1802の最大肉厚t2が上記範囲を下回ると、打球時に前端ソール壁1802に応力が集中し過ぎて耐久性の向上を図る効果が低下する。
前端ソール壁1802の最大肉厚t2が上記範囲を上回ると、前端ソール壁1802に接続する前壁部34に応力が集中し過ぎて耐久性の向上を図る効果が低下する。
【0039】
(最深部距離Lx)
任意のフェース基準断面Pfにおいて、最深部40の水平面HPからの高さを最深部距離Lxとしたとき、最深部距離Lxは3mm以上20mm以下である。
最深部距離Lxが上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
最深部距離Lxが上記範囲を下回ると、打球時に溝部32の深さが過小となるため、溝部32の弾性変形が小さくなり反発性能を向上する効果が低下する。
最深部距離Lxが上記範囲を上回ると、打球時に溝部32の深さが過大となるため、打出し角を確保する効果が低下し、また、耐久性を確保する効果が低下する。
【0040】
(溝長さW)
図3に示すように、溝部32のトウヒール方向に沿った溝長さWは40mm以上80mm以下である。
溝長さWが上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
溝長さWが上記範囲を下回ると、打球時に溝部32の弾性変形が小さく反発性能を向上させる効果が低下する。
溝長さWが上記範囲を上回ると、溝部32の剛性が低くなりすぎることから、打球時に溝部32の弾性変形が過剰となり打出し角を確保する効果が低下し、耐久性を確保する効果が低下する。
【0041】
(最深部40と前記フェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lf)
図6に示すように、任意のフェース基準断面Pfにおいて、最深部40とフェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lfが4mm以上10mm以下である。
最深部40とフェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lfが上記範囲内であると、反発性能を向上させつつ、耐久性を確保する上でより有利となる。
最深部40とフェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lfが上記範囲を下回ると、溝部32とフェース部14の距離が短すぎることから、打球時に溝部32に加わる衝撃力が過剰となり、耐久性を確保する効果が低下する。
最深部40とフェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lfが上記範囲を上回ると、溝部32とフェース部14の距離が長すぎることから、打球時に溝部32の弾性変形が小さくなり反発性能を確保する効果が低下する。
【0042】
また、本発明は、主にヘッド本体12の体積が100cc以上200cc以下の、特に地面に置かれたボールを打球するユーティリティ、フェアウェイウッドに適用されるが、本発明は、ヘッド本体12の体積が200ccを上回るドライバーやヘッド本体12の体積が100ccを下回る中空アイアンにも無論適用可能である。
【0043】
以下、本発明の実験例について説明する。
図17~
図24は、本発明に係る中空ゴルフクラブヘッド10の実験結果を示す図である。
試料となる中空ゴルフクラブヘッド10を各実験例毎に作成し、以下の3つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、3つの指数の合計点を求めた。
【0044】
(1)反発性能(初速)
反発性能は初速で評価した。
中空ゴルフクラブヘッド10を備えたゴルフクラブをスイングロボットに設置し、以下の条件で実打試験を行い9打点における初速の平均値を指数で評価した。比較例に相当する実験例Aの指数を100とし指数が大きいほど初速が速く、評価が良いことを示す。
ヘッドスピード:40m/s
打点位置は、以下の合計9打点とし、各打点で5回ずつボールを打撃した。
フェース面14Aの中心点Pcと、中心点Pcを通りフェースセンターラインCLと直交する直線上で中心点Pcからトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからクラウン部16方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する上5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからソール部18方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する下5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
【0045】
(2)打ち出し角
上記打点位置での実打試験で得られた打ち出し角を測定した。
実験例Aの指数を100とし指数が大きいほど打ち出し角が大きく、評価が良いことを示す。
【0046】
(3)耐久性
シャフトに固定した中空ゴルフクラブヘッド10のフェース面14Aにエアキャノンにてゴルフボールを繰り返して当て、フェース部14の変形や破損が生じるまでに要した打撃回数を計測し、打撃回数を指数化した。ボールスピードは50m/sとした。打点位置はフェース面14Aの中心点Pcとした。
この場合、実験例Aの中空ゴルフクラブヘッド10の測定結果を100とした指数で示した。指数が大きいほど評価が良いことを示す。
(4)合計点
上述した初速、打ち出し角、耐久性の3つの指数を合計したものを合計点とした。
実験例Aの合計点を300とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0047】
以下実験例の中空ゴルフクラブヘッド10について説明する。
なお、実験例で使用した中空ゴルフクラブヘッド10は、フェアウェイウッドであり、各実験例で規定したパラメータを除き以下の条件を共通としている。
ヘッド本体12の材料:マルエージング鋼(AM355P)
フェース部14の材料:マルエージング鋼(C300)
クラウン部16の材料:カーボン(CFRP)
ロフト角15°
ライ角57.5°
ヘッド体積180cc
【0048】
(条件1)
実験例1~4について、
図17に示すように、請求項1、2、3で規定する条件、すなわち、第1角度θ1<第2角度θ2、15°≦第2角度θ2≦30°、0°≦第1角度θ1<30°について変更した。
なお、請求項4~16で規定する条件は、一定条件とし、請求項4~16を満たさないものとした。
また、条件1~条件8の全ての実験例において、ヘッド体積を180cc一定として請求項17を満たすものとしたので、以下の説明では請求項17の条件についての記載を省略する。
【0049】
実験例Aは、比較例に相当するものであり、第1角度θ1(15°)>第2角度θ2(10°)であり、請求項1で規定する第1角度θ1<第2角度θ2を満たさないものであり、本発明の範囲外である。
実験例1は、第1角度θ1(32°)<第2角度θ2(34°)であり、請求項1を満たすが、請求項2、3は満たさないものであり、本発明の範囲内である。
実験例2は、第1角度θ1(-2°)<第2角度θ2(25°)であり、請求項1、2を満たすが請求項3を満たさないものであり、本発明の範囲内である。
なお、第1角度θ1が-2°と負の値となっているが、これは、前壁外面34Aの延長線αが上方に至るにつれてフェース部14に近接する方向に変位している場合に相当する。
実験例3は、第1角度θ1(10°)<第2角度θ2(12°)であり、請求項1、3を満たすが請求項2を満たさないものでものであり、本発明の範囲内である。
実験例4は、第1角度θ1(15°)<第2角度θ2(30°)であり、請求項1、2、3を満たすものでものであり、本発明の範囲内である。
【0050】
したがって、
図17に示すように、請求項1の規定を全て満たす実験例1~4は、初速、打ち出し角、耐久性、合計点が本発明の範囲外である実験例Aを上回っている。
また、本発明の範囲内であり請求項2、3の双方を満たす実験例4は、初速、打ち出し角、耐久性、合計点が、本発明の範囲内であるが請求項2、3の一方を満たさない実験例2、3を上回っている。
【0051】
(条件2)
実験例5~14について、
図18に示すように、請求項4~8で規定する条件を変更した。
すなわち、請求項4は以下の式(1)、式(2)を満たすことである。
0.5L0≦Lt≦1.5L0 (1)
0.5L0≦Lh≦1.5L0 (2)
また、請求項5は、第3距離Lhが第1距離L0および第2距離Ltよりも大、または第2距離Ltが第1距離L0および第3距離Lhよりも大であることである。
また、請求項6は、第3距離Lhが第1距離L0および第2距離Ltよりも小、または第2距離Ltが第1距離L0および第3距離Lhよりも小であることである。
また、請求項7は、第1距離L0が第2距離Ltおよび第3距離Lhよりも大であることである。
また、請求項8は、第1距離L0が第2距離Ltおよび第3距離Lhよりも小であることである。
なお、請求項1~3で規定する条件は、一定条件とし、請求項1~3を満たすものとし、請求項9~17で規定する条件は、請求項14で規定する条件を除き一定条件とし、請求項9~13、15、16を満たさないものとした。
【0052】
実験例5、6、7、8は、請求項4で規定する条件を満たさないが、請求項5~8の何れかで規定する条件を満たすものである。
実験例9~14は、請求項4で規定する条件を満たし、請求項5~8の何れかで規定する条件を満たすものである。
【0053】
したがって、
図18に示すように、請求項4を満たすか、あるいは、請求項5~8の何れかを満たす実験例5~14は、請求項4の規定を満たさない実験例4(
図17)に比較して初速、打ち出し角、耐久性が概ね同等以上であり、また、初速、打ち出し角、耐久性のバランスがよく、合計点が実験例4を上回っている。
【0054】
(条件3)
実験例15~17について、
図19に示すように、請求項9で規定する条件を変更した。
すなわち、請求項9は、最深部40における接続壁部38の肉厚t1よりも後壁部36の肉厚t4が大であることである。
なお、請求項1~4で規定する条件は一定条件として条件を満たすものとし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項10~16で規定する条件は、一定条件とし、請求項10~16を満たさないものとした。
【0055】
実験例15、17は、請求項9で規定する条件を満たさず、実験例16は、請求項9で規定する条件を満たす。
【0056】
したがって、
図19に示すように、請求項9の規定を満たす実験例16は、請求項9の規定を満たさない実験例15、17に比較して初速、打ち出し角、耐久性のバランスがとれており、合計点が優れている。
【0057】
(条件4)
実験例17、18について、
図20に示すように、請求項10で規定する条件を変更した。
なお、
図20の実験例17は、前述した条件3(
図19)で示した実験例17と同一である。
すなわち、請求項10は、最深部40における接続壁部38の肉厚t1<前端ソール壁1802の最大肉厚t2である。
なお、請求項1~4で規定する条件は一定条件として条件を満たすものとし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項9、11~16で規定する条件は、一定条件とし、請求項9、11~16を満たさないものとした。
【0058】
実験例17は、請求項10で規定する条件を満たさず、実験例18は、請求項10で規定する条件を満たす。
【0059】
したがって、
図20に示すように、請求項10の規定を満たす実験例18は、請求項10の規定を満たさない実験例17に比較して特に初速が高いことで合計点が優れている。
【0060】
(条件5)
実験例19、20、21について、
図21に示すように、請求項11で規定する条件を変更した。
すなわち、請求項11は、最深部40における接続壁部38の肉厚t1≦前壁部34の肉厚t3≦前端ソール壁1802の最大肉厚t2である。
なお、請求項1~4で規定する条件は一定条件として条件を満たすものとし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項9、10で規定する条件は、一定条件とし条件を満たすものとし、請求項11~16で規定する条件は、一定条件とし条件を満たさないものとした。
【0061】
実験例19、20は、請求項11で規定する条件を満たさず、実験例21は、請求項11で規定する条件を満たす。
【0062】
したがって、
図21に示すように、請求項11の規定を満たす実験例21は、請求項11の規定を満たさない実験例19、20に比較して初速、打ち出し角、耐久性、合計点が同等以上であり、合計点が優れている。
【0063】
(条件6)
実験例22~27について、
図22に示すように、請求項12、13で規定する条件を変更した。
すなわち、請求項12は、1.0mm≦最深部40における接続壁部38の肉厚t1≦1.5mmである。
また、請求項13は、1.2mm≦前端ソール壁1802の最大肉厚t2≦2.5mmである。
なお、請求項1~4で規定する条件は一定条件として条件を満たすものとし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項9、10で規定する条件は、一定条件とし条件を満たすものとし、請求項14~16で規定する条件は、一定条件とし条件を満たさないものとした。
また、請求項11で規定する条件は、実験例22、23、26では条件を満たさず、実験例24、25、27では条件を満たすものとした。
【0064】
実験例22、24は、請求項12で規定する条件を満たし、請求項13で規定する条件を満たしていない。
実験例23、25は、請求項12で規定する条件を満たさず、請求項13で規定する条件を満たす。
実験例26、27は、請求項12、13で規定する条件を満たす。
【0065】
したがって、
図22に示すように、請求項12、13で規定する条件を満たす実験例26、27は、請求項12、あるいは、請求項13の何れか一方の規定を満たさない実験例22~25に比較して初速、打ち出し角、耐久性がほぼ同等以上でバランスがとれており、合計点が優れている。
【0066】
(条件7)
実験例28~36について、
図23に示すように、請求項14、15、16で規定する条件を変更した。
すなわち、請求項14は、3mm≦溝部32の最深部40の最深部距離Lx≦20mmである。
なお、最深部距離Lxは、第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの3つの距離のうちの最大値の距離とほぼ一致するため、
図23に示す条件7の実験例28~36においては、最深部距離Lxは、便宜上、第1距離L0、第2距離Lt、第3距離Lhの3つの距離のうちの最大値の距離とする。
また、請求項15は、40mm≦溝長さW≦80mmである。
また、請求項16は、4mm≦最深部40とフェース内面14Bとを結ぶ最短距離Lf≦10mm以下である。
なお、請求項1~4で規定する条件は一定条件として条件を満たすものとし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項9~12で規定する条件は、一定条件とし条件を満たすものとした。
【0067】
実験例28は、請求項14で規定する条件を満たし、請求項15、16で規定する条件を満たさない。
実験例29は、請求項15で規定する条件を満たし、請求項14、16で規定する条件を満たさない。
実験例30は、請求項16で規定する条件を満たし、請求項14、15で規定する条件を満たさない。
実験例31は、請求項14、15で規定する条件を満たし、請求項16で規定する条件を満たさない。
実験例32は、請求項14、15で規定する条件を満たし、請求項16で規定する条件を満たさない。
実験例33は、請求項15、16で規定する条件を満たし、請求項14で規定する条件を満たさない。
実験例34は、請求項15、16で規定する条件を満たし、請求項14で規定する条件を満たさない。
実験例35は、請求項14、16で規定する条件を満たし、請求項15で規定する条件を満たさない。
実験例36は、請求項14、16で規定する条件を満たし、請求項15で規定する条件を満たさない。
【0068】
したがって、
図23に示すように、請求項14、15、16のうち、2つの請求項の条件を満たす実験例31~36は、請求項14、15、16のうち、1つの請求項の条件を満たし残りの2つの請求項の条件を満たさない実験例28~30に比較して初速、打ち出し角、耐久性がほぼ同等以上であり、合計点が優れている。
【0069】
(条件8)
実験例37、38、39について、
図24に示すように、請求項1~16で規定する条件をそれらの条件内で好適な値に設定した。
すなわち、請求項1~4で規定する条件を満たし、かつ、請求項5~8で規定する条件の何れかを満たすものとし、請求項9~16で規定する条件を満たすものとした。
したがって、
図24に示すように、実験例37、38、39は、他の実験例1~36に比較して初速、打ち出し角、耐久性がほぼ同等以上であり、合計点が優れている。
【符号の説明】
【0070】
10 中空ゴルフクラブヘッド
12 ヘッド本体
14 フェース部
14A フェース面
14B フェース内面
16 クラウン部
16A クラウン面
16B クラウン内面
18 ソール部
18A ソール面
18B ソール内面
1802 前端ソール壁
19 リーディングエッジ
20 サイド部
22 トウ
24 ヒール
26 フェースバック
28 中空部
HP 水平面
Pc フェース面の中心点
CL フェースセンターライン
X 平面
Pfc フェース中心基準断面
Pf フェース基準断面
32 溝部
34 前壁部
34A 前壁外面
36 後壁部
36A 後壁外面
38 接続壁部
38A 接続壁外面
39 ウェイト部
40 最深部
40A 第1最深部
40B 第2最深部
40C 第3最深部
Pr1 第1平面
Pr2 第2平面
Pr3 第3平面
Pr4 第4平面
Lr1 第1基準線
α 前壁外面の延長線
β 後壁外面の延長線
γ 交点
L0 第1距離(フェース中心基準面)
Lt 第2距離(トウ側)
Lh 第3距離(ヒール側)
Lx 最深部距離
t1 最深部における接続壁部の肉厚
t2 前端ソール壁の最大肉厚
t3 前壁部の肉厚
t4 後壁部の肉厚
W 溝長さ
Lf 最深部とフェース内面とを結ぶ最短距離
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の高さを有して左右に延在するフェース部と、前記フェース部の下部から後方に延在するソール部とを含むヘッド本体を備え、前記ヘッド本体の内部が中空部であり、前記ソール部の前記フェース部寄りの箇所に上方に窪みつつトウヒール方向に延在する溝部が形成された中空ゴルフクラブヘッドであって、
前記溝部は、前記フェース部寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出する前壁部と、前記前壁部よりもフェースバック寄りの前記ソール部の箇所から上方に突出し前記前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部の上端と前記後壁部の上端とを接続する接続壁部とを備え、
前記中空ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において、フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に10mm離間した箇所に位置する第1平面と、前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に10mm離間した箇所に位置する第2平面とで挟まれる前記ヘッド本体の領域を第1領域とし、
前記第1領域において前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面で、前記前壁部のフェースバック側に位置する面である前壁外面の延長線と前記後壁部の前記フェース部側に位置する面である後壁外面の延長線との交点を通り前記水平面と直交する直線を第1基準線とし、
前記任意の断面で前記前壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第1角度θ1とし、
前記任意の断面で前記後壁外面の延長線と前記第1基準線とがなす角度を第2角度θ2としたとき、
前記第1角度θ1よりも前記第2角度θ2が大である、
ことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記後壁部は上方に至るにつれて前記フェース部側に変位し、
前記第2角度θ2は15°以上30°以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記前壁部は、前記第1基準線上を上方に延在しまたは上方に至るにつれてフェースバック側に変位し、
前記第1角度θ1は0°以上30°未満である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
以下の式(1)、式(2)が満たされる、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
0.5L0≦Lt≦1.5L0 (1)
0.5L0≦Lh≦1.5L0 (2)
【請求項5】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第3距離Lhが前記第1距離L0および前記第2距離Ltよりも大である、または、前記第2距離Ltが前記第1距離L0および前記第3距離Lhよりも大である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第3距離Lhが前記第1距離L0および前記第2距離Ltよりも小である、または、前記第2距離Ltが前記第1距離L0および前記第3距離Lhよりも小である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第1距離L0が前記第2距離Ltおよび前記第3距離Lhよりも大である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁部の下方を向いた面である接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記フェース中心基準断面における前記最深部を第1最深部とし、この第1最深部の前記水平面からの高さを第1距離L0とし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ側に20mm離間した箇所に位置する第3平面で破断した断面における前記最深部を第2最深部として、前記第3平面で破断した断面におけるソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第2最深部の高さを第2距離Ltとし、
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール側に20mm離間した箇所に位置する第4平面で破断した断面における前記最深部を第3最深部として、前記第4平面で破断した断面における前記ソール面の最下端を通り前記水平面と平行する平面からの前記第3最深部の高さを第3距離Lhとしたとき、
前記第1距離L0が前記第2距離Ltおよび前記第3距離Lhよりも小である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1よりも前記後壁部の肉厚t4が大である、
ことを特徴とする請求項4から8の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ソール部は前記前壁部の下端とリーディングエッジとを接続する前端ソール壁を有し、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1よりも前記前端ソール壁の最大肉厚t2が大である、
ことを特徴とする請求項4から9の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記ソール部は前記前壁部の下端とリーディングエッジとを接続する前端ソール壁を有し、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記前壁部の肉厚t3は、前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1以上であり、かつ、前記前端ソール壁の最大肉厚t2以下である、
ことを特徴とする請求項4から9の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記最深部における前記接続壁部の肉厚t1は1.0mm以上1.5mm以下である、
ことを特徴とする請求項10または11記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記前端ソール壁の最大肉厚t2は1.2mm以上2.5mm以下である、
ことを特徴とする請求項10から12の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部とし、
前記最深部の前記水平面からの高さを最深部距離Lxとしたとき、
前記最深部距離Lxは3mm以上20mm以下である、
ことを特徴とする請求項4から13の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記溝部のトウヒール方向に沿った溝長さWは40mm以上80mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から14の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記フェース部の前記中空部に向いた面をフェース内面とし、
前記フェース中心基準断面と平行する任意の断面において、前記接続壁外面が前記水平面から最も上方に離間した箇所を前記溝部の最深部としたとき、
前記任意の断面において前記最深部と前記フェース内面とを結ぶ最短距離Lfが4mm以上10mm以下である、
ことを特徴とする請求項4から14の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記ヘッド本体の体積が100cc以上200cc以下である、
ことを特徴とする請求項1から16の何れか1項記載の中空ゴルフクラブヘッド。