(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062905
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】断熱材、梱包容器、及び梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
B65D81/38 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171097
(22)【出願日】2020-10-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】520393613
【氏名又は名称】平尾 英三
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】平尾 英三
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB03
3E067AB08
3E067AB16
3E067BA01A
3E067BB01A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067EE26
3E067FC01
3E067GA14
(57)【要約】
【課題】断熱性能に優れるとともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することが可能な断熱材、梱包容器及び梱包体を提供すること。
【解決手段】断熱材10Aは、セルロース繊維を含む解繊物20が収納された収納体11Aを備える。解繊物20は古紙を解繊して得られるものである。解繊物20は、収納体11Aに形成される閉鎖空間に収納される。梱包容器は、被梱包物を収容する収容部と、断熱材10Aと、を備える。梱包体は、梱包容器と、収容部に収容された被梱包物と、被梱包物を冷却する冷却材と、冷却材の冷気を封止する樹脂フィルムと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含む解繊物が収納された収納体を備える断熱材。
【請求項2】
前記解繊物は古紙を解繊して得られるものである、請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記解繊物は、前記収納体に形成される閉鎖空間に収納される、請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記閉鎖空間における前記解繊物の充填密度は、0.02g/cm3以上である、請求項3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記閉鎖空間は複数に区画されている、請求項3又は4に記載の断熱材。
【請求項6】
前記収納体は冷凍食品又は冷菓が収容される梱包容器内に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項7】
前記収納体が紙で構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項8】
前記収納体は少なくとも一方面に樹脂フィルムを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項9】
被梱包物を収容する収容部と、請求項1~8のいずれか一項に記載の断熱材と、を備える梱包容器。
【請求項10】
前記収容部と外装をなす箱体との間に前記断熱材を備える、請求項9に記載の梱包容器。
【請求項11】
前記箱体は、樹脂で構成されるラミネート層を備える、請求項10に記載の梱包容器。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の梱包容器と、前記収容部に収容された被梱包物と、前記被梱包物を冷却する冷却材と、前記冷却材の冷気を封止する樹脂フィルムと、を備える、梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱材、梱包容器、及び梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効利用を図るため、古紙を再生する方法が種々検討されている。古紙を再利用する場合、古紙を解繊機でほぐして繊維状にする技術が知られている。例えば、特許文献1では、古紙を乾式解繊した後、スクリーンを設けた篩機で紙片を除去して古紙解繊物を製造する技術が提案されている。特許文献2では、古紙から新しい紙を製造するに際し、古紙を解繊処理して解繊物を得る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-147772号公報
【特許文献2】特開2020-84393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙を解繊して得られる解繊物は、再生紙、紙箱及び段ボール箱等の原料、及び建築材等として用いることが考えられる。このような紙箱及び段ボール箱等は、種々の被梱包物の梱包材として用いられている。一方で、生鮮食品、アイスクリーム等の冷菓及び冷凍食品等の梱包には、紙箱及び段ボール箱ではなく、発泡スチロール製の箱が用いられることが多い。これは、発泡スチロールが、軽量で、紙箱及び段ボール箱よりも優れた断熱効果があるためと考えられる。
【0005】
一方で、使用済みの発泡スチロールは、再生してリサイクルすることが難しい。このため、資源の有効利用の観点から、優れた断熱性を有するとともに、容易にリサイクルすることが可能な技術を確立することが求められている。そこで、本開示は、断熱性能に優れるとともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することが可能な断熱材を提供する。また、本開示は、断熱性能に優れるともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することが可能な梱包容器及び梱包体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、セルロース繊維を含む解繊物が収納された収納体を備える断熱材を提供する。この断熱材は、セルロース繊維を含む解繊物が収納された収納体を用いている。セルロース繊維を含む解繊物は、発泡スチロール等の従来の断熱材に比べて断熱性能に優れるとともにリサイクルが容易である。したがって、上記断熱材は、断熱性能に優れるとともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することができる。このような断熱材は、軽量であることから梱包体用として有用である。
【0007】
上記解繊物は古紙を解繊して得られるものであることが好ましい。これによって、資源の有効利用を一層促進することができる。また、断熱材の製造コストを十分に低減することができる。
【0008】
上記解繊物は、上記収納体に形成される閉鎖空間に収納されることが好ましい。これによって、解繊物が収納体から漏れ出すことを抑制することができる。この閉鎖空間における解繊物の充填密度は、0.02g/cm3以上であることが好ましい。これによって、断熱性能を十分に高くすることができる。この充填密度は、解繊物の質量を閉鎖空間の容積で除することによって算出される。閉鎖空間は複数に区画されていることが好ましい。これによって、一つの閉鎖空間の容積が小さくなるため、閉鎖空間に収納される解繊物の局所的な偏りが低減され、断熱性能を一層高くすることができる。
【0009】
上記収納体は冷凍食品又は冷菓が収容される梱包容器内に配置されることが好ましい。これによって、冷凍食品又は冷菓の品質を長時間に亘って維持することができる。
【0010】
上記収納体は紙で構成されることが好ましい。これによって、断熱材及びこれを含む梱包容器を廃棄する際の分別作業が軽減され、リサイクルを促進して資源の一層の有効活用を図ることができる。
【0011】
上記収納体は、少なくとも一方面に樹脂フィルムを備えることが好ましい。これによって、ガスの流通を抑制して、保冷効果又は保温効果を一層向上することができる。
【0012】
本開示は、被梱包物を収容する収容部と、上述のいずれかの断熱材と、を備える梱包容器を提供する。この梱包容器は、上述のいずれかの断熱材を備えることから、断熱性能に優れる。このため、被包装物の保冷性及び保温性に優れる。また、リサイクルが容易であることから資源の有効利用を図ることができる。
【0013】
上記梱包容器は、収容部と外装をなす箱体との間に上記断熱材を備えることが好ましい。これによって、梱包容器の強度を十分に維持しつつ被梱包物の収容スペースを十分に大きくすることができる。
【0014】
上記箱体は、樹脂で構成されるラミネート層を備えることが好ましい。これによって、ガスの流通を抑制して、保冷効果又は保温効果を一層向上することができる。また、収容部が室温よりも低温であったり、冷蔵室又は冷凍室に保管された梱包容器を常温に戻したりしたときに、露の付着によって紙製の箱の強度が低下したり、変形したりする場合がある。しかしながら、紙の表面にラミネート層を有することによって、露が付着しても箱体の強度を維持することができる。これによって、露の付着による強度低下及び変形を十分に抑制することができる。
【0015】
本開示は、上記梱包容器と、その収容部に収容された被梱包物と、被梱包物を冷却する冷却材と、冷却材の冷気を封止する樹脂フィルム層と、を備える、梱包体を提供する。この梱包体は、上述のいずれかの梱包材を備えることから、断熱性能に優れる。また、冷却材の冷気を封止する樹脂フィルム層を備えることから、ガスの流通を抑制して、保冷効果又は保温効果を十分に高くすることができる。このような梱包体は、リサイクルが容易であることから資源の有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
断熱性能に優れるとともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することが可能な断熱材を提供することができる。また、断熱性能に優れるともに、リサイクルが容易であって資源を有効利用することが可能な梱包容器及び梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】一実施形態に係る梱包容器(梱包体)の斜視図である。
【
図5】(A)は、梱包容器を構成する蓋部の斜視図である。(B)は、梱包容器を構成する本体部の外装をなす箱体の斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る梱包体の内部を示す斜視図である。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿って切断したときの梱包体の断面図である。
【
図8】
図4のVIII-VIII線に沿って切断したときの梱包体(梱包容器)の断面図である。
【
図9】各実施例で用いた段ボールの解繊物の写真である。
【
図11】(A)は作製した梱包容器の本体部の内面を樹脂フィルムで覆ったときの写真であり、(B)は作製した蓋部の内側を示す写真である。
【
図12】(A)は、実施例1で作製した梱包容器の本体部内に容器に入ったアイスクリームとドライアイスを収容したときの写真である。(B)は、実施例1で作製した梱包体を樹脂製の袋で包装したときの写真である。
【
図13】実施例1の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図14】実施例2の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図15】実施例3で作製した梱包容器の本体部内に容器に入ったアイスクリームとドライアイスを収容したときの写真である。
【
図16】実施例3の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図17】実施例4の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図18】(A)は、比較例1で用いた発泡スチロール製の梱包容器の内部を示す写真である。(B)は、比較例1の梱包体の外観を示す写真である。
【
図19】比較例1の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図20】(A)は比較例2で用いた段ボール箱を示す写真である。(B)は、比較例2で作製した梱包容器内に容器に入ったアイスクリームとドライアイスを収容したときの写真である。
【
図21】比較例2の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【
図22】比較例3の断熱性能の評価結果(温度の経時変化)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1は、一実施形態に係る断熱材の斜視図である。断熱材10は、箱型の外形を有する収納体11で構成される。収納体11は、板体13、枠体12及び蓋体14が、この順に積み重ねられて構成される。収納体11の内部には後述する解繊物が収容されている。板体13、及び枠体12は、例えば、段ボール、及び/又は、コートボール等の紙器用板紙で構成されていてもよい。例えば、製造コストを低減するために段ボールを切り取って板体13、及び枠体12を作製してもよい。
【0020】
枠体12は、第一枠体12a及び第二枠体12bの二層構造となっている。このように枠体12を複数の層構成とすることによって、セルロース繊維を含む解繊物の収納部を大きくすることができる。枠体12は、二層構造に限定されず、1層構造であってもよいし、3層以上の構造であってもよい。蓋体14は、和紙等の紙で構成されていてもよいし、段ボール、紙器用板紙、不織布、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の樹脂フィルムで構成されていてもよい。蓋体14が樹脂フィルムであることによって、収納体11は一方面に樹脂フィルムを備えることとなる。これによって、収納体11はガスの流通を抑制し、断熱性能を一層高くすることができる。収納体11は、両方の主面に樹脂フィルムを備えていてもよい。樹脂フィルムは接着剤又はテープで枠体12及び板体13に取り付けられてよい。
【0021】
収納体11(板体13、枠体12及び蓋体14)は紙で構成されてもよい。これによって、断熱材を廃棄する際の分別作業を軽減することができる。また、リサイクルを促進して資源の一層の有効活用を図ることができる。
【0022】
本開示における「紙」とは、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造したものであり、表面処理が施されたものも含む。具体的には、段ボール、樹脂を含む表面コートを有するコートボールを含む紙器用板紙、印刷用紙、及び雑種紙等が挙げられる。
【0023】
図2は、
図1の断熱材の変形例を示す斜視図である。
図2の断熱材10Aは、収納体11Aで構成される。断熱材10Aは、蓋体を有しない点で
図1の断熱材10と異なっている。すなわち、断熱材10Aに蓋体14を取り付けると、
図1の断熱材10となる。
図2に示すように、枠体12は、例えば平板状の紙の中央部を切り抜いて形成される貫通穴を有する。この貫通穴が収納体11Aに形成される収納部15の側壁をなしている。収納部15は、枠体12を縦断する帯部16によって2つに区画されている。すなわち、断熱材10Aは、2つの収納部15A,15Bを有している。収納部15を複数に区画することは必須ではなく、収納部15は1つであってよいし、3つ以上に区画されていてもよい。
【0024】
収納部15(15A,15B)には、セルロース繊維を含む解繊物20が収納されている。解繊物20としては、紙を解繊して得られるものが挙げられる。原料として用いられる紙としては、例えば、新聞、書籍、雑誌、カタログ類、上質紙、包装用箱、段ボール箱、パルプモールド、紙製緩衝材等の古紙であってよい。このような原料から解繊物20を得る設備としては、市販の乾式の解繊装置(解繊機)、又は、湿式解繊機等を適宜用いることができる。また、家庭で調理用として使用されるミルを用いて解繊物20を得てもよい。解繊物20は、解きほぐされたセルロース繊維の他に、紙粉及び古紙に付着していたインキ及びトナー等の色材、にじみ防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。解繊されたセルロース繊維は互いに絡み合っていてもよい。
【0025】
図3は、
図1のIII-III線断面図である。枠体12、蓋体14及び板体13で構成される2つの収納部15A,15Bは、それぞれ閉鎖空間となっている。このため、収納部15(15A,15B)から、解繊物20が収納体11の外部に漏れ出すことを抑制することができる。なお、閉鎖空間は、ガスの流通まで遮断する必要はなく、固形分が漏れ出さない程度の密閉性を有していればよい。収納体11の閉鎖空間は、枠体12の帯部16によって2つに区画されている。これによって、例えば、運搬に伴う振動等によって生じ得る解繊物20の閉鎖空間内における局所的な偏りを低減することができる。したがって、断熱材10は、例えば運搬される梱包容器用に用いられた場合等に、断熱性能を十分に高く維持することができる。
【0026】
収納体11(11A)の厚みは1~100mmであってよく、5~80mmであってよく、10~60mmであってもよい。収納体11に形成される閉鎖空間(収納部15)における解繊物20の充填密度は、断熱性能を向上する観点から、好ましくは0.02g/cm3以上であり、より好ましくは0.05g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.07g/cm3以上であり、特に好ましくは0.08g/cm3以上である。上記充填密度の上限は、収納部の膨らみを抑制する観点から、例えば0.2g/cm3以下であってよく、0.1g/cm3以下であってもよい。
【0027】
図4は、一実施形態に係る梱包容器100(梱包体110)の斜視図である。梱包容器100は、被梱包物を収容する収容部を有する本体部40と、本体部40の上部の開口を覆い収容部を密閉空間とする蓋部60とを有する。本体部40と蓋部60を組み合わせることによって、梱包容器100が得られる。蓋部60は、本体部40の底部と対向する天板部62と、天板部62の外縁に立設し、本体部40の外側面の上部を取り囲む立設部64を有する。梱包容器100の内部に被梱包物を収容することによって梱包体が得られる。
【0028】
図5(A)は、梱包容器100を構成する蓋部60を、本体部40に被せる方を上側にして示す斜視図である。蓋部60の天板部の裏側には、断熱材18が配置されている。断熱材18は、例えば、箱状の収納体19と、その内部(閉鎖空間)に収納されたセルロース繊維を含む解繊物とを備える。収納体19は紙で構成されていてもよいし、表面に樹脂で構成されるラミネート層を有していてもよい。収納体19に収納される解繊物は、収納体11,11Aに収納されるものと同じであってよく、異なっていてもよい。このように蓋部60に断熱材18を配置することによって、蓋部60からの熱の流出入を抑制することができる。収納体19は、
図1~
図3に示す収納体11(11A)と同様の構造を有していてもよい。
【0029】
図5(B)は、
図4に示す本体部40の外装をなす箱体42の斜視図である。箱体42は、紙のみで構成されていてよい。具体的には、段ボール、及び/又は、紙器用板紙で構成されることが好ましい。紙器用板紙は、樹脂を含む表面コートを有するコートボールであってもよい。箱体42及び蓋部60は、外側表面及び内側表面の少なくとも一方に、樹脂で構成されるラミネート層を有することが好ましい。すなわち、紙とラミネート層の積層構造を有することが好ましい。これによって、軽量でありつつも箱体42の内部からの冷気の流出を抑制して、保冷効果を一層向上することができる。また、露等に起因する水分が付着しても、強度を維持することができる。ラミネート層は、樹脂フィルムを板紙等にラミネートすることによって設けてもよい。ラミネートされる樹脂フィルムは、汎用樹脂フィルムであってよく、例えば、ポリエチレン(高密度及び低密度)、ポリプロピレン、並びにポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0030】
図6は、梱包容器100に被梱包物70が収容されている梱包体110において、蓋部を60取り外して梱包体110の内部を示す斜視図である。
図7は、
図4の梱包体110をVII-VII線に沿って切断したときの本体部40の断面図である。すなわち、
図7は、梱包体110を水平方向に沿って切断したときの断面を示している。梱包体110は、梱包容器100と、梱包容器100の収容部72に収容された被梱包物70と、を備える。梱包容器100の本体部40は、外側から内側に向かって、外装をなす箱体42、断熱材10及び内箱45をこの順に有する。内箱も紙で構成されていてよい。具体的には、強度向上及び断熱効果向上の観点から、段ボール、及び/又は、紙器用板紙で構成されることが好ましい。内箱45も、内側表面及び外側表面の少なくとも一方にラミネート層を有していてもよい。これによって、例えば収容部72に被梱包物70を冷却する冷却材を収容した場合に、冷気を収容部72内に封止することができる。
【0031】
梱包容器100には、箱体42の内側面に沿って、各側面に対向するように合計で4つの断熱材10がそれぞれ配置されている。内箱45は、断熱材10の内側に、内箱45の側面が断熱材10に対向するようにして配置されている。蓋部60を本体部40に被せると、蓋部60に設けられた断熱材18を構成する収納体19の外側面が内箱45の内側面に当接しながら、収納体19が内箱45の上部に嵌合する。これによって、収容部72が外気と遮断され、被梱包物70を十分に保冷及び保温することができる。
【0032】
図8は、
図4の梱包体110をVIII-VIII線に沿って切断したときの断面図である。すなわち、
図8は、梱包体110を鉛直方向に沿って切断したときの断面を示している。
図8に示すように、本体部40の底部にも断熱材10が配置されている。すなわち、断熱材10は収容部72を取り囲むように配置されている。収容部72は、区画板75によって上下に2つに区画されている。区画板75は、資源の有効利用を図る観点から、段ボール又は紙器用板紙を用いることができる。変形例では、より高い断熱効果を得る観点から、収容部72を断熱材10(10A)で区画してもよい。
【0033】
上側の収容部72A及び下側の収容部72Bには、被梱包物70がそれぞれ6個ずつ収容されている。隣り合う被梱包物70の隙間、及び被梱包物70と内箱45との隙間には紙等の充填材を充填してもよいし、隙間が生じないように被梱包物70の形状を調整してもよい。また、被梱包物70を冷却する冷却材を配置してもよい。
【0034】
被梱包物70としては、冷凍食品及び冷菓が挙げられる。このような被梱包物70を収容する場合、収容部72には、被梱包物70を冷却する冷却材を収容してよい。冷却材としては、例えば氷、及びドライアイスが挙げられる。
【0035】
変形例では、梱包体は、梱包容器100を包装(収容)する樹脂製(例えば、高密度ポリエチレン製)の袋体を備えてもよい。これによって、ガスの流通を遮断して、保冷効果又は保温効果を一層高くすることができる。また、内箱45の内側表面に沿って樹脂フィルムを配置してもよいし、断熱材10と内箱45の間、及び/又は、断熱材10と箱体42との間に樹脂フィルムを挟んでもよい。樹脂フィルムは、汎用樹脂フィルムであってよく、例えば、ポリエチレン(高密度及び低密度)、ポリプロピレン、並びにポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。このような封止用の樹脂フィルムを備えることによって、収容部72に冷気を封止して、断熱性能を一層向上することができる。断熱性能の向上の観点から、封止用の樹脂フィルムの厚みは好ましくは5μm以上であり、より好ましくは9μm以上である。取り扱い性向上の観点から、封止用の樹脂フィルムの厚みは、50μm以下であってよく、30μm以下であってもよい。
【0036】
被梱包物70は、冷凍食品及び冷菓に限定されず、加熱された食飲料であってもよい。梱包容器100は、全て紙のみで構成されてもよい。この場合の紙には、表面に樹脂で構成されるラミネート層が設けられていてもよい。このような梱包容器は、軽量であるうえに、使用後に再生してリサイクルすることが容易である。このため、リサイクルを促進して資源の一層の有効活用を図ることができる。
【0037】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、断熱材10,10A,18は直方体形状を有する収納体11,11A,19で構成されていたが、このような形状に限定されない。例えば、角が面取りされた収納体で構成されていてもよいし、円柱形状の収納体で構成されていてもよい。また、収納体は例えば紙袋又は樹脂製の袋であってもよい。断熱材は、梱包容器及び梱包体の上面、下面(底面)、及び側面の全てに設けられる必要はなく、一部の面のみに設けられてもよい。また、断熱材を複数積層して一層大きな断熱効果を得るようにしてもよい。梱包容器100及び梱包体110は、四角柱形状であったが、このような形状に限定されず、例えば円柱形状であってもよい。梱包容器は、段ボールと紙器用板紙とを組み合わせて構成してもよい。梱包容器における収容部は、2つに区画されていなくてもよく、3つ以上に区画されていてもよい。
【実施例0038】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
<収納体の作製>
一般的に流通している段ボールを、家庭用ミキサーを用いて解繊し、セルロース繊維を含む解繊物を得た。
図9は、得られた解繊物の写真である。また、一般的に流通している別の段ボール(厚み:約5mm)を所定のサイズに切り取って加工し、
図2に示すような枠体12及び板体13を作製した。1枚の段ボールで構成される板体13の上に、2枚又は4枚の段ボールを重ねて構成される枠体12を積層した。そして、収納部15に
図9の解繊物を充填した。このようにして、
図2及び
図3に示すような収納体を作製した。その後、蓋体14を枠体12の上側表面に貼り合わせて、
図1に示すような収納体を作製した。
【0040】
図10は、作製した収納体の例を示す写真である。
図10の右側の収納体は、蓋体14として樹脂フィルムを枠体12の上に貼り合わせて閉鎖空間を形成して作製したものである。
図10の左側の収納体は、蓋体14として洋紙を枠体12の上に貼り合わせて閉鎖空間を形成して作製したものである。
図10の左側に示すような収納体を5つ作製し、これらを以下の梱包容器の作製に使用した。
【0041】
梱包容器の本体部の側壁部、及び底部にそれぞれ配置される収納体の厚み、閉鎖空間(収納部)の厚み、充填した解繊物の質量、閉鎖空間(収納部)における解繊物の充填密度(解繊物の質量/密閉空間の体積)は、表1に示すとおりであった。
【0042】
<梱包容器及び梱包体の作製>
市販のコートボール(310g/m
2)にポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)をラミネートして外装材を得た。この外装材を所定の形状に切り取って、
図5(A)に示すような蓋部60と、
図5(B)に示すような箱体42とを作製した。蓋部60における断熱材18は、段ボールで作製した箱体を収納体(断熱材)とし、これに、上述の解繊物を充填することによって作製した。蓋部60における収納体の厚み、閉鎖空間(収納部)の厚み、充填した解繊物の質量、閉鎖空間(収納部)における解繊物の充填密度(解繊物の質量/密閉空間の体積)は表1に示すとおりであった。
【0043】
箱体42の底面上と、4つの側面の内側に、上述のとおり作製した収納体を断熱材として配置した。なお、箱体42の側壁を断熱材の高さよりも予め高くなるようにサイズ調整していたので、断熱材を配置した後、側壁の上端を内部に折り込んで、断熱材10の上端部と内側面の上部を覆うように、側壁の上端を内部に折り込み、接着剤で固定した。その後、市販のコートボールで作製した内箱を箱体42の内部に収容した。このようにして、収納容器の本体部を作製した。その後、内箱の中に内装材として高密度ポリエチレン製のフィルム(厚み:12μm)を載置した。また、蓋部の内側にも内装材として高密度ポリエチレン製のフィルム(厚み:12μm)を接着剤で貼り付けた。
【0044】
図11(A)は、作製した梱包容器の本体部の内面上に高密度ポリエチレン製のフィルムを配置したときの写真であり、
図11(B)は、作製した蓋部の内側を示す写真である。このようにして作製した梱包容器の本体部の収容部に、
図12(A)に示すように容器に入ったアイスクリームを上段と下段に分けて、各段に4個ずつ(計8個)収容した。各段の4つのアイスクリーム容器の中から一つを選択し、選択したアイスクリーム容器の内部に温度計(T&D製のTR-71nw、商品名)のセンサを固定した。上段のアイスクリーム容器の上に
図12(A)に示すようにドライアイス1kgを載置した後、蓋部を本体部に被せて収容部を密閉して梱包体を得た。作製した梱包体を、
図12(B)に示すように高密度ポリエチレン製の袋(厚み:30μm)で包装し、断熱性能を評価した。
【0045】
<断熱性能の評価>
密閉後、収容部に収容された上段及び下段のアイスクリーム容器内の温度の経時変化を測定した。なお、外気温は16℃で一定に調節した。測定は24時間継続して行った。
【0046】
図13は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。測定開始直後は、ドライアイスによる冷却効果によって温度が低下し、7~11時間経過後に最低温度に到達した。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は表1に示すとおりであった。
【0047】
(実施例2)
内装材として、高密度ポリエチレン製のフィルム(厚み:12μm)に変えて、高密度ポリエチレン製のフィルム(厚み:8μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして収納体、梱包容器及び梱包体を作製し、断熱性能の評価を行った。梱包容器の本体部の側壁部、底部、及び蓋部にそれぞれ配置した収納体の厚み、閉鎖空間(収納部)の厚み、充填した解繊物の質量、閉鎖空間(収納部)における解繊物の充填密度(解繊物の質量/密閉空間の体積)は、表1に示すとおりであった。
【0048】
図14は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。測定開始直後は、ドライアイスによる冷却効果によって温度が低下し、6~9時間経過後に最低温度に到達した。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は表1に示すとおりであった。最低温度及び1日間経過後の温度は、実施例1の梱包容器よりも高くなっていたものの、実施例2の梱包容器も十分な断熱性能を有していた。
【0049】
(実施例3)
内装材として、高密度ポリエチレン製のフィルム(厚み:12μm)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして収納体、梱包容器及び梱包体を作製し、断熱性能の評価を行った。
図15は、容器に入ったアイスクリームを上段と下段に分けて、各段に4個ずつ(計8個)収容し、その上にドライアイスを載置したときの写真である。梱包容器の本体部の側壁部、底部、及び蓋部にそれぞれ配置した収納体の厚み、閉鎖空間(収納部)の厚み、充填した解繊物の質量、閉鎖空間(収納部)における解繊物の充填密度(解繊物の質量/密閉空間の体積)は、表1に示すとおりであった。
【0050】
図16は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。測定開始直後は、ドライアイスによる冷却効果によって温度が低下し、5~7時間経過後に最低温度に到達した。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は表1に示すとおりであった。1日間経過後の温度は、実施例1の梱包容器よりも高くなっていたものの、実施例3の梱包容器も十分な断熱性能を有していた。1日間経過後に残存していたドライアイスが、実施例1に比べて少なかった。これは、実施例3では、内装材としてHDPEフィルムを設けなかったため、冷気(CO
2ガス)のシール性が低下したことによるものと考えられる。
【0051】
(実施例4)
梱包容器の側壁部、底部及び蓋部に配置した収納体のサイズを表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、収納体、梱包容器及び梱包体を作製し、断熱性能の評価を行った。梱包容器の本体部の側壁部、底部、及び蓋部にそれぞれ配置した収納体の厚み、閉鎖空間(収納部)の厚み、充填した解繊物の質量、閉鎖空間(収納部)における解繊物の充填密度(解繊物の質量/密閉空間の体積)は、表1に示すとおりであった。
【0052】
図17は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。測定開始直後は、ドライアイスによる冷却効果によって温度が低下し、6~7時間経過後に最低温度に到達した。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は表1に示すとおりであった。実施例1よりも、断熱材として用いた収納体に収納される解繊物の量が少ないため、最低温度及び1日間経過後の温度は、実施例1の梱包容器よりも高くなっていた。ただし、実施例4の梱包容器も十分な断熱性能を有していた。
【0053】
(比較例1)
図18(A)に示すような発泡スチロール製の梱包容器を準備した。梱包容器の側壁部、底部及び蓋部の各厚みは、表1に示すとおりであった。この発泡体に、容器に入ったアイスクリームを収容して
図18(B)の写真に示すように梱包し、実施例1と同様にして断熱性能を評価した。
【0054】
図19は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は、表1に示すとおりであった。梱包容器の側壁部及び蓋部の厚みがほぼ同じである実施例4と比べても、断熱性能が低いことが確認された。
【0055】
(比較例2)
サイズの異なる段ボール箱(Aフルート、厚み:5mm)を2つ準備した。
図20(A)に示すように、一方を外箱、他方を内箱として外箱に内箱を収容した。
図20(B)に示すように、内箱の中に、容器に入ったアイスクリームを上段と下段に分けて、各段に4個ずつ(計8個)収容し、その上にドライアイスを載置した。各段の4つのアイスクリーム容器の中から一つを選択し、選択したアイスクリーム容器の内部に温度計のセンサを固定した。その後、ガムテープを用いて、内箱及び外箱を封止して梱包体を作製した。そして、実施例1と同様にして、断熱性能の評価を行った。
【0056】
図21は、測定結果を示すグラフである。下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は、表1に示すとおりであった。時間の経過とともに被梱包物の温度が上昇する傾向が確認された。15時間経過時点で、ドライアイスが全て昇華してしまったと考えられる。これらの結果から、断熱性能は明らかに低いことが確認された。
【0057】
(比較例3)
比較例2で用いた内箱と外箱の間(側壁部と底部のみ)に段ボール(Aフルート、厚さ:5mm)をそれぞれ1枚ずつ挟んだこと、被梱包物及びドライアイスを、高密度ポリエチレン製の袋(厚み:12μm)に入れて内箱内に載置したこと以外は、比較例2と同様にして梱包体を作製し、断熱性能の評価を行った。
【0058】
図22は、測定結果を示すグラフである。1~18時間経過時における下側の曲線は上段のアイスクリーム容器内の温度を、上側の曲線は下段のアイスクリーム容器内の温度を示している。上段のアイスクリーム容器と下段のアイスクリーム容器内の最低温度、及び1日(24時間)経過後の温度は、表1に示すとおりであった。比較例3でも時間の経過とともに被梱包物の温度が上昇する傾向が確認された。1日間経過後もドライアイスが残存していた。これは、高密度ポリエチレン製の袋を用いたことによってシール性が向上したためと考えられる。ただし、断熱性能は低かった。
【0059】
10,10A,18…断熱材、11,11A…収納体、12…枠体、12a…第一枠体、12b…第二枠体、13…板体、14…蓋体、15,15A,15B…収納部、16…帯部、18…断熱材、19…収納体、20…解繊物、40…本体部、42…箱体、45…内箱、60…蓋部、62…天板部、64…立設部、70…被梱包物、72,72A,72B…収容部、75…区画板、100…梱包容器、110…梱包体。