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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062937
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】射出成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20220414BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B29C45/14
H05K1/03 670
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171152
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀧西 徳勲
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD05
4F206AD19
4F206AH36
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】スルーホール上に封止材を形成することで、樹脂射出時の熱や樹脂圧によって、封止材がスルーホールに充填された導電材料を流すことを抑制し、基体シートの両面に形成した導電層の断線を防ぐことを目的とする。
【解決手段】射出成形品10は、扁平な直方体形状であり、射出成形樹脂で構成された扁平な成形樹脂体11と成形樹脂体11の表面に固着された基体シート40とを備えている。基体シート40は、第1面41に第1導電層44と、第1面41から第2面42に貫通するスルーホール43が形成されている。スルーホール43には導電材料が充填されており、充填された導電材料を介して、第1導電層44と電気的に接続するように第2導電層45が形成されている。又、スルーホール43を覆うように第1導電層44の上に封止材46が形成されている。成形樹脂体11は、封止材46を覆うように基体シート40の第1面41側と固着している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層が第1面に形成され、前記第1面から第2面に貫通するスルーホールに充填された導電材料を介して、前記第1導電層に電気的に接続した第2導電層が前記第2面に形成された基体シートと、
前記スルーホールを覆うように、少なくとも前記第1導電層の上に形成された封止材と、
前記封止材を覆うように前記基体シートの上に形成された、射出成形樹脂で構成された成形樹脂体とを備えた、射出成型品。
【請求項2】
前記封止材が前記スルーホールに向かって突出した、請求項1に記載の射出成形品。
【請求項3】
前記封止材は、前記第1導電層の上から前記基体シートの第1面の上にかけて跨ぐように形成された、請求項1又は請求項2に記載の射出成形品。
【請求項4】
前記封止材は、前記導電材料と同じ材料で構成された、請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項5】
前記第2導電層は導電接着剤であり、
前記導電接着剤に電気的に接続するように固定されたフレキシブルプリント配線基板を更に備えた、請求項1から請求項4のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項6】
前記第1導電層に電気的に接続され、タッチ入力位置を検出する、前記第1面に形成された第1検出電極を更に備え、
前記第1導電層は、前記第1検出電極によって検出された信号を伝送する第1引回し配線であり、
前記第2導電層は、前記導電材料を介して、前記第1引回し配線から伝送された前記信号を更に伝送する第2引回し配線である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の射出成型品。
【請求項7】
第1導電層が第1面に形成され、前記第1面から第2面に貫通するスルーホールに充填された導電材料を介して、前記第1導電層に電気的に接続した第2導電層が前記第2面に形成され、封止材が前記スルーホールを覆うように、少なくとも前記第1導電層の上に形成された基体シートを、射出成型用金型のキャビティに、前記第2面がキャビティ面に接するように配置する工程と、
前記導電材料が流れないように、前記キャビティに溶融樹脂を射出し、充填する工程と、
前記溶融樹脂を冷却し、固化させ、成形樹脂体を形成すると同時に、その成形樹脂体の表面に前記基体シートを固着する工程とを備えた、射出成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電層及びスルーホールを有する基体シートを備えた射出成型品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面に導電層が形成された基体シートが表面に固着した射出成型品がある。それぞれの導電層は、基体シートを貫通するスルーホールに充填された導電材料を介して電気的に接続している。例えば特許文献1には、両面に回路パターンが形成された基体シートを成形樹脂と一体化したプリント配線板成形体が開示されている。それぞれの回路パターンは、基体シートを貫通するスルーホールに形成された銅メッキ層によって電気的に接続している。このプリント配線板成形体は、樹脂射出時の熱や樹脂圧によりスルーホール部の導通が破壊されることを防ぐために、基体シートの射出樹脂と接着する面にカバーフィルムが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-142817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のプリント配線板成形体は、カバーフィルムを用いるため、基材両面の導通に関わるスルーホール上のみに部分的に形成することはできず、基体シート全面にカバーフィルムを形成する必要があった。又、フォーミングを行うとカバーフィルム及びカバーフィルムと基体シートの間に別の層がある場合にはその層で泡や皺が発生する場合があり、3次元形状の成形体に適用できない可能性があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基体シート全面を覆うカバーフィルムを用いることなく、樹脂射出時の熱や樹脂圧によって、スルーホールに充填された導電材料を流すことを抑制し、導電層同士の断線を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、第1導電層が第1面に形成され、第1面から第2面に貫通するスルーホールに充填された導電材料を介して、第1導電層に電気的に接続した第2導電層が第2面に形成された基体シートと、スルーホールを覆うように、少なくとも第1導電層の上に形成された封止材と、封止材を覆うように基体シートの上に形成された、射出成形樹脂で構成された成形樹脂体とを備えた、射出成型品である。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、封止材が前記スルーホールに向かって突出した射出成型品である。
【0008】
このように構成すると、射出成形樹脂がスルーホール内の導電材料を流さないため、第1導電層と第2導電層の断線を防止することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、封止材は、第1導電層の上から基体シートの第1面の上にかけて跨ぐように形成された、射出成形品である。
【0010】
このように構成すると、封止材が第1導電層に加えて基体シートにも固着するため、射出成形樹脂によって封止材を流されにくくすることができる。
【0011】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、封止材は導電材料と同じ材料で構成された、射出成形品である。
【0012】
このように構成すると、スルーホールに侵入する封止材が導電材料となるため、第1導電層と第2導電層の導通部分の抵抗値が高くなることをより確実に防ぐことができる。
【0013】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、第2導電層は導電接着剤であり、導電接着剤に電気的に接続するように固定されたフレキシブルプリント配線基板を更に備えた、射出成形品である。
【0014】
このように構成すると、フレキシブルプリント配線基板と接続するための端子を設ける必要がないため、射出成形品の材料を少なくでき、構成を簡単にすることができる。
【0015】
第6の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、第1導電層に電気的に接続され、タッチ入力位置を検出する、第1面に形成された第1検出電極を更に備え、第1導電層は、第1検出電極によって検出された信号を伝送する第1引回し配線であり、第2導電層は、導電材料を介して、第1引回し配線から伝送された信号を更に伝送する第2引回し配線である、射出成型品である。
【0016】
このように構成すると、スルーホールを通して第1面から第2面へ引回し配線を取り出すタッチパネルにおいても射出成形樹脂がスルーホール内の導電材料を流さないため、第1引回し配線と第2引回し配線の断線を防止することができる。
【0017】
第7の発明は、第1導電層が第1面に形成され、第1面から第2面に貫通するスルーホールに充填された導電材料を介して、第1導電層に電気的に接続した第2導電層が第2面に形成され、封止材がスルーホールを覆うように、少なくとも第1導電層の上に形成された基体シートを、射出成型用金型のキャビティに、第2面がキャビティ面に接するように配置する工程と、導電材料が流れないように、キャビティに溶融樹脂を射出し、充填する工程と、溶融樹脂を冷却し、固化させ、成形樹脂体を形成すると同時に、その成形樹脂体の表面に基体シートを固着する工程とを備えた、射出成型品の製造方法である。
【0018】
このように構成すると、封止材によって溶融樹脂がスルーホールに侵入することを抑制するため、第1導電層と第2導電層が導通した射出成形品を製造できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、第1導電層と第2導電層の断線が防止された射出成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1実施形態による射出成型品の概略断面図である。
図2図1で示した射出成型品のA部拡大図である。
図3図1で示した射出成型品のA部平面図である。
図4】この発明の第1実施形態による射出成型品に用いる基体シートの概略断面図である。
図5図5で示した基体シートのB部拡大図である。
図6図5で示した基体シートのB部平面図である。
図7図1で示した射出成型品の製造工程を示す概略断面図である。
図8】この発明の基体シートの変形例を示す、図5に対応するC部拡大図である。
図9】この発明の基体シートの変形例を示す、図6に対応するC部平面図である。
図10】この発明の第2実施形態による射出成型品に用いる基体シートの概略断面図である。
図11】この発明の第3実施形態による射出成型品に用いる基体シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0022】
図1を参照して、この発明の第1実施形態による射出成形品10は、扁平な直方体形状であり、射出成形樹脂で構成された扁平な成形樹脂体11と成形樹脂体11の表面に固着された基体シート40とを備えている。基体シート40は、第1面41に左右に伸びる帯状の第1導電層44と、第1面41から第2面42に貫通するスルーホール43が形成されている。スルーホール43には導電材料が充填されており、充填された導電材料を介して、第1導電層44と電気的に接続するように、左右に伸びる帯状の第2導電層45が第2面42に形成されている。又、スルーホール43を覆うように第1導電層44の上に封止材46が形成されている。ここで、スルーホール43を覆うようにとは、封止材46によって完全にスルーホール43を覆うだけでなく、封止材46によってスルーホール43を部分的に覆い、スルーホール43の一部が露出してることも含む。成形樹脂体11は、封止材46を覆うように基体シート40の第1面41側と固着している。
【0023】
換言すれば、基体シート40は、第1面41から第2面42に貫通し、導電材料が充填されたスルーホール43と、第1面41に、平面視で少なくともスルーホール43の開口と重なる位置に形成された第1導電層44と、第1導電層44の上に、平面視で少なくともスルーホール43の開口と重なる位置に形成された封止材46と、スルーホール43に充填された導電材料によって第1導電層44と電気的に接続するように、平面視で少なくともスルーホール43の開口と重なる位置に形成された第2導電層45とを有し、基体シート40の第1面の上に、成形樹脂体11を備えた射出成型品10である。
【0024】
本発明で用いる「スルーホールに充填された導電材料」とは、スルーホール43内に完全に満たされていることに限られず、第1導電材料44と第2導電材料45を電気的に接続できれば、スルーホール43の壁面のみに導電材料を形成しスルーホール43内は中空となっていても良い。スルーホール43内が中空となっていても、封止材46によって、成形樹脂体11を形成する際の射出圧からスルーホール43内の導電材料を保護できるため、第1導電層44と第2導電層45の断線を防止することができる。ただし、スルーホール43内に導電材料が完全に満たされている方が、射出圧で導電材料が押し出されにくくなるため好ましい。
【0025】
図2を参照して、封止材46の詳細な形状について説明する。図2図1の破線で示したA部の拡大図である。封止材46は、成形樹脂体11を形成する射出圧によって第1導電層44の上からスルーホール43に向かって突出し、封止材46の一部がスルーホール43内に侵入している。第1導電層44は、封止材46が貫通する穴が開いているが、第1導電層44とスルーホール43内の導電材料は接しているため、第1導電層44と第2導電層45は断線していない。図3は、基体シート40の第1面41側から見た、拡大部Aの平面図である。尚、成形樹脂体11は省略し、封止材46によって隠れるスルーホール43と第2面側42に形成されている第2導電層45は、破線で示す。第1導電層44及び第2導電層45は、スルーホール43の開口を覆うようにスルーホール43上では円形形状となっており、第1導電層44はスルーホール43から左側へ、第2導電層45はスルーホール43から右側へと反対方向に帯状に伸びている。スルーホール43の開口の面積とスルーホール開口の上の第1導電層44と封止材46の底面の面積は、スルーホール43<封止材46<第1導電層44の順になっており、スルーホール43の開口を覆うことが可能な大きさの封止材46を形成するだけで、成形体11を形成する際の射出圧から保護することができる。又、スルーホール43の開口の面積に対して、封止材46の底面の面積は1.2倍~2倍が好ましい。1.2倍よりも大きければ、射出圧から十分に保護でき、2倍よりも小さければ、材料の無駄を少なくしつつ効果的に射出圧から保護できる大きさとなる。
【0026】
第1導電層44は、例えば、タッチパネル、ヒータ、サーミスタ、LED、無線通信の送受信用アンテナの電極や配線であり、第2導電層45は、第1導電層44の電気信号をスルーホール43を通して、第1面41から第2面42に取り出すために形成されている。第1導電層44及び第2導電層45を備えた基体シート40を成形樹脂体11と一体化することで、第1導電層44の機能に対応するタッチパネル、ヒータ、サーミスタ、LED、無線通信の送受信用のアンテナなどの機能を備えた筐体として用いることができる。第2導電層45は、図示しない端子によって射出成型品10の外部に取り出し、タッチパネル、ヒータ、サーミスタ、LED、無線通信の送受信用アンテナなどの機能を制御する制御基板に接続される。端子は、例えばフレキシブルプリント配線基板(FPC)や接点ピンである。接点ピンは、導電材料からなる、例えば円柱状の部材である。第2導電層45の下方に接点ピンを備えた制御基板を配置し、導電接着剤を介して第2導電層45に接点ピンを固着することで、第2導電層45と制御基板とを接続することができる。
【0027】
基体シート40は、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂などの熱可塑性樹脂およびこれらの積層品である。又、基体シート40の厚みは、例えば、12μm~200μmが好ましい。基体シート40の厚みが12μm以上であれば、ハンドリング性に優れた厚みを有し、厚みが200μm以下であれば、適度な剛性となるため良好な屈曲性を有する。
【0028】
第1導電層44及び第2導電層45を構成する材料、スルーホール43に充填する導電材料は、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属や、ITO、ZnO、IGO、IGZO、CuOなどの金属酸化物、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PSS(ポリスチレンスルホン酸)などの導電性高分子、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェンなどの炭素材料である。上記記載の材料は、ペーストやナノファイバーとして用いても良い。これらの材料の中で、特に銀ペーストを用いることが好ましい。銀ペーストは伸びやすい性質をもつため、基体シート40を取り扱う際に変形させても断線しにくくなる。又、第1導電層44、第2導電層45及びスルーホール43に充填する導電材料には同じ材料を用いても良く、異なる材料を用いても良い。
【0029】
第1導電層44及び第2導電層45の厚みは、例えば、1μm~15μmが好ましい。第1導電層44及び第2導電層45の厚みが1μm以上であれば、断線しにくい厚みとなり、厚みが15μm以下であれば、良好な屈曲性となり基体シート40を取り扱う際に変形させても断線しにくくなる。
【0030】
封止材46を構成する材料は、第1導電層44、第2導電層45及びスルーホール43に充填する導電材料で挙げた材料から選択して用いることができる。これらの材料の中でも、スルーホール43に充填された導電材料と同じ材料で構成することが好ましい。スルーホール43に充填された導電材料と同じ材料で構成すると、封止材46に侵入する封止材46が導電材料となるため、第1導電層44と第2導電層の導通部分の抵抗値が高くなることをより確実に防ぐことができる。又、展延性のある導電性高分子(第一導電層に挙げられたもの、カーボンインクなど)を使用することもできる。更に、樹脂材料を用いて封止材46を形成してもよい。樹脂材料としては、例えば紫外線硬化樹脂、2液硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂には、アクリレート系、エポキシ系樹脂を用いることができる。また2液硬化樹脂には、ポリウレタン系、シリコン系、エポキシ系、アクリル系樹脂である。
【0031】
封止材46の厚みは、2μm~500μmが好ましい。厚みが2μm以上であれば、成形樹脂体11を形成する際の射出圧からスルーホール43に充填された導電材料をより効果的に保護することができ、厚みが500μm以下であれば、封止材46を形成する材料の無駄を抑制しつつスルーホール43に充填された導電材料が流されることを防ぐことができる大きさとなる。封止材46は、例えばディスペンサによって第1導電層44の上に形成することができる。
【0032】
成形樹脂体11は、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリウレタンなどの汎用エンジニアリング樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂である。又、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂を使用することもできる。成形樹脂体11の厚みは、特に限定されず、製造する製品の筐体の厚みに合わせて選択される。
【0033】
次に、図4を参照して、成形樹脂体11を固着する前の基体シート40は、封止材46の形状を除き、図1で示した射出成型品10の成形樹脂体11に固着した状態の基体シート40と同じである。又、二点鎖線で後に射出成形によって形成する成形樹脂体11を示している。図5を参照して、封止材46の詳細な形状について説明する。図5は、図4に破線で示したB部の拡大図である。封止材46は、図2で示した射出成型後の封止材46の形状とは異なり、第1導電層44の上に、スルーホール43とは反対側に凸となる半球状に形成されている。この基体シート40の第1面41側に射出成形により成形樹脂体11を形成し固着する過程で、射出圧力により図2で示すように、封止材46はスルーホール43に向かって突出した形状へと変形する。図6は、基体シート40の第1面側41から見た拡大部Bの平面図であり、第1導電層44、第2導電層45、封止材46の位置関係は、成形樹脂体11と固着した後の図3で示した位置関係と同じである。
【0034】
次に、射出成形品10の製造方法を示す。
【0035】
第1面41に第1導電層44と、第1面41から第2面42に貫通するスルーホール43と、スルーホール43に充填された導電材料を介して、第1導電層44に電気的に接続した第2導電層45が第2面42に形成され、封止材46がスルーホール43を覆うように第1導電層44の上に形成された基体シート40を準備する。
次に、図7(a)を参照して、樹脂の射出口82が形成された第1金型80と凹部が形成された第2金型81からなる射出成形金型を準備し、基体シート40の第2面42を第2金型81に接するように配置する。次に、図7(b)を参照して、第1金型80と第2金型81を型閉じする。第1金型80と第2金型81を型閉じして形成された空間をキャビティ83、キャビティ83を形成する第2金型81の面をキャビティ面84という。基体シート40はこのキャビティ面84に、第2面が接するようにして配置されている。次に、第1金型80の射出口82からキャビティ83に溶融樹脂を射出する。この時、基体シート40の第1導電層44の上に形成された封止材46が溶融樹脂の射出圧からスルーホール43内の導電材料を流すことを抑制し、封止材46はスルーホール43に向かって突出する。次に、溶融樹脂が固化するまで冷却することで、成形樹脂体11を形成する。この溶融樹脂を固化し成形樹脂体11を形成する過程で、成形樹脂体11の表面に基体シート40が固着する。次に、図7(c)を参照して、射出成形金型を開き、図示しない取出し用アームを用いて、射出成型品10を取り出すことで、射出成型品10を得る。
【0036】
以上から、上記のように製造される射出成形品10は、封止材46によって、溶融樹脂がスルーホール43に侵入することを抑制するため、溶融樹脂がスルーホール43に充填された導電材料を流さず、第1導電層44と第2導電層45が導通した射出成型品を製造することができる。
【0037】
次にこの発明の変形例について、図を参照しながら先の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0038】
この発明の変形例である射出成形品10Aは、先の実施形態で示した射出成形品10と同じ材料、同じ製造方法で得ることができる。一方、射出成形品10Aに用いる基体シート40Aの封止材46Aの形成位置が異なっている。図8は、射出成型品10Aに用いる基体シート40Aのスルーホール周辺を示すC部拡大図であり、図5に対応する図である。図9は、C部平面図であり、図6に対応する図である。これらの図を参照して変形例について説明する。
【0039】
図8を参照して、基体シート10Aに形成されているスルーホール43A、第1導電層44A、第2導電層45Aは、第1実施形態による基体シート10と同じように形成されている。封止材46Aは、スルーホール43Aを覆うように、少なくとも第1導電層44Aの上に形成されている点は第1実施形態による基体シート10と同じであるが、更に、第1導電層44Aの上から基体シート10Aの第1面41Aの上に跨って形成されている。図9を参照して、スルーホール43Aの開口の面積とスルーホール43Aの開口上の第1導電層44Aと封止材46Aの底面の面積は、スルーホール43A<第1導電層44A<封止材46Aの順になっており、スルーホール43Aを封止材46Aによって保護することができる。このように構成すると、基体シート10Aを射出成型用金型に設置し、第1面41Aの上に射出成形樹脂を射出して成形樹脂体11Aを形成する際に、封止材46Aは、第1導電層44Aに加え、基体シート40Aの第1面41Aに対しても固着しているため、射出成形樹脂によって封止材46Aを流されにくくすることができる。
【0040】
次に、この発明の第2実施形態について、図を参照しながら先の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0041】
図10を参照して、射出成形品20は、扁平な直方体形状である点、基体シート50の第1面51が二点鎖線で示す成形樹脂体21に固着する点、射出成形品20の製造方法は第1実施形態で示した射出成型品10と同じであるが、基体シート50の第2面52に形成された第2導電層55が異なっている。基体シート50の第1面51には、第1面から第2面に貫通するスルーホール53の上に第1導電層54が形成され、スルーホール53を覆うように、第1導電層54の上に、封止材56が形成されている。スルーホール53には導電材料が充填されている。基体シート50の第2面52の上に、スルーホール53の導電材料を介して第2導電層54と電気的に接続するように、導電接着剤57が形成されており、この導電接着剤57が第2導電層55である。又、導電接着剤57と電気的に接続するように、フレキシブルプリント配線基板58が固定されている。フレキシブルプリント配線基板58は、下方に折れ曲がり、図示しない制御基板に接続される。
【0042】
この基体シート50を射出成形金型に設置して、第1面51に成形樹脂体21を形成することで、射出成型品20を得ることができる。このように構成すると、フレキシブルプリント配線基板58と接続するための端子を設ける必要がないため、射出成型品20の材料を少なくでき、構成を簡単にすることができる。
【0043】
次に、この発明の第3実施形態について、図を参照しながら先の実施形態とは異なる点を中心に説明する。射出成形品30は、扁平な直方体形状である点、基体シート60の第1面61が二点鎖線で示す成形樹脂体31に固着する点、射出成形品30の製造方法は、第1実施形態で示した射出成型品10と同じであるが、基体シート60の第1面61に形成された第1導電層64と第2面62に形成された第2導電層65が異なっている。又、射出成型品30はタッチパネルとして用いることができる。
【0044】
図11を参照して、基体シート60にはスルーホール63が形成され、スルーホール63には導電材料が充填されており、基体シート60の第1面61のスルーホール63が形成されていない位置に、左右に伸びる帯状の第1検出電極71が形成されている。図11では、第1検出電極71が一本のみに見えるが、実際には、基体シート60の断面に対して前後方向に複数の第1検出電極71が左右に伸びるように平行に形成されている。第2面62には、スルーホール63が形成されていない位置に、複数の第1検出電極71と垂直に、前後に伸びる複数の第2検出電極72が平行に形成されている。又、第1検出電極71と電気的に接続するように、第1検出電極71の少なくとも一部の上から、基体シート60の第1面61に跨って、スルーホール63を覆うようにして第1引回し配線73が形成されている。この第1引回し配線73が第1導電層64である。更に、第1引回し配線73を第2面62に取り出すように、スルーホール63内の導電材料を介して第1引回し配線73と電気的に接続するように、第2面62の上に第2引回し配線74が形成されている。この第2引回し配線74が第2導電層65である。第1検出電極71によって検出されたタッチ入力位置を示す信号は、第1引回し配線73によって伝送され、スルーホール63に充填された導電材料を介して、第2面62に取り出され第2引回し配線74に伝送される。第2検出電極72によって検出されたタッチ入力位置を示す信号は図示しない第2検出電極72用の引回し配線によって伝送される。第2引回し配線74と図示しない第2検出電極72用の引回し配線は、図示しない端子によって射出成型品30の外部に取り出し、制御基板に接続される。端子は、例えばフレキシブルプリント配線基板(FPC)や接点ピンである。封止材66は、スルーホール63を覆うように、第1引回し配線73の上に形成されている。
【0045】
この基体シート60を射出成形金型に設置して、第1面61に成形樹脂体31を形成することで、射出成型品30を得ることができる。このように構成すると、スルーホール63を通して第1面から第2面へ引回し配線を取り出すタッチパネルにおいても射出成形樹脂がスルーホール63内の導電材料を流さないため、第1引回し配線73と第2引回し配線74の断線を防止することができる。
【0046】
第1引回し配線73及び第2引回し配線74は、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属や、ITO、ZnO、IGO、IGZO、CuOなどの金属酸化物、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PSS(ポリスチレンスルホン酸)などの導電性高分子、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェンなどの炭素材料である。
【0047】
第1引回し配線73及び第2引回し配線74の厚みは、例えば、1μm~15μmが好ましい。第1引回し配線73及び第2引回し配線74の厚みが1μm以上であれば、断線しにくい厚みとなり、厚みが15μm以下であれば、良好な屈曲性となり基体シート60を取り扱う際に変形させても断線しにくくなる。
【0048】
尚、上記の各実施形態では、扁平な射出成形体であり、基体シートが固着される面は平面であったが、曲面に基体シートを固着しても良い。本発明に用いる基体シートは、成形樹脂の射出圧から保護するためのカバーフィルムを用いておらず、基体シートを立体形状にフォーミングする際に、カバーフィルムや基体シートとカバーフィルムとの間の層での泡や皺の発生を考慮する必要がないため、固着面が曲面の射出成形体に適用しやすい。
【0049】
又、上記の各実施形態では、基体シートに第1導電層、封止材、第2導電層が形成されているが、基体シートの第2面に、更に保護フィルムを形成しても良い。基体シートの第2面がキャビティ面に接するように配置する工程は、基体シートの第2面が保護フィルムを介してキャビティ面に接することを包含する。
【0050】
更に、上記の各実施形態では、基体シートにスルーホールが1つ形成されているが、スルーホールの数は1つに限られず、複数形成しても良い。
【0051】
更に、上記の各実施形態では、封止材がスルーホールに向かって突出し、スルーホール内に侵入していたが、封止材が成形樹脂の射出圧からスルーホールに充填された導電材料を流すことを抑制していれば良く、スルーホール内に侵入せずに封止材の上部が凹んだ形状や、封止材の上部が凹まず成形樹脂を射出する前の半球状の形状でも良い。
【0052】
更に、上記の各実施形態では、第1導電層は、封止材が貫通する穴が開いている構成について説明したが、第1導電層に穴が開かずに、成形樹脂の射出圧によって押された封止材の圧力によって第1導電層がスルーホールに向かって凹んだ形状となっていても良い。
【0053】
更に、上記の各実施形態では、基体シートの第1面と成形樹脂体が直接固着しているが、基体シートの第1面に接着層を形成して、基体シートが接着層を介して成形樹脂体と固着していても良い。
【0054】
更に、上記の各実施形態では、基体シートの全面が成形樹脂体に固着している構成について説明したが、基体シートが成形樹脂体と接着しない面があっても良く、基体シートが成形樹脂体の外側に延長していても良い。又、第2導電層が基体シートと共に成形樹脂体の外側に延長され、第2導電層の成形樹脂体から外側に延長された部分で制御基板と接続しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10,10A,20,30 回路付立体成形品
11,11A,21,31 成形樹脂体
40,40A,50,60 基体シート
41,41A,51,61 第1面
42,42A,52,62 第2面
43,43A,53,63 スルーホール
44,44A,54,64 第1導電層
45,45A,55,65 第2導電層
46,46A,56,66 封止材
57 導電接着剤
58 フレキシブル配線基板
71 第1検出電極
73 第1引回し配線
74 第2引回し配線
83 キャビティ
84 キャビティ面


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11