(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062958
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】結合構造
(51)【国際特許分類】
F16L 37/244 20060101AFI20220414BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F16L37/244
F16J15/10 T
F16J15/10 L
F16J15/10 C
F16J15/10 N
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171187
(22)【出願日】2020-10-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲治
(72)【発明者】
【氏名】玉田 和之
【テーマコード(参考)】
3J040
3J106
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA17
3J040BA02
3J040BA03
3J040BA05
3J040CA02
3J040EA02
3J040EA16
3J040EA25
3J040FA05
3J040HA05
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE12
3J106BE13
3J106EA03
3J106EB12
3J106ED01
3J106EF12
(57)【要約】
【課題】 流路内が負圧であっても流路の結合箇所を良好にシールでき、かつ汎用性に優れた結合構造を提供する。
【解決手段】 第1結合金具は、第1本体と、第1本体の第1端部の周囲に配列された複数の第1突起を有する第1結合部と、第1端部の外周面に設けられた第1シール材とを備える。第2結合金具は、第1端部の外径よりも大きい径の流路を有する第2本体と、第2端部の周囲に配列された複数の第2突起を有する第2結合部と、第2本体の第2端部において軸方向に突出する第2シール材とを備える。上記外周面と複数の第1突起の間には、第2端部の厚さよりも大きい隙間が形成されている。第1結合金具と第2結合金具の結合時において、第2端部および第2シール材が上記隙間に挿入されるとともに第1突起と第2突起のフックが係合し、第1シール材が第2本体の内周面に接触する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1結合金具と第2結合金具の結合構造であって、
前記第1結合金具は、
第1端部を有する円筒形状の第1本体と、
前記第1端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第1突起を有する第1結合部と、
前記第1端部の外周面に設けられた第1シール材と、
を備え、
前記第2結合金具は、
第2端部と、前記第1端部の外径よりも大きい径の流路とを有する円筒形状の第2本体と、
前記第2端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第2突起を有する第2結合部と、
前記第2端部において軸方向に突出する第2シール材と、
を備え、
前記外周面と前記複数の第1突起の間には、前記第2端部の厚さよりも大きい隙間が形成され、
前記第1結合金具と前記第2結合金具の結合時において、前記第2端部および前記第2シール材が前記隙間に挿入されるとともに前記複数の第1突起の前記フックと前記複数の第2突起の前記フックが係合し、前記第1シール材が前記第2本体の内周面に接触する、
結合構造。
【請求項2】
前記第1本体は、前記外周面に設けられた環状の溝を有し、
前記第1シール材は、前記環状の溝に嵌められたパッキンである、
請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記第1本体の流路の径は、前記第2本体の流路の径よりも小さい、
請求項1または2に記載の結合構造。
【請求項4】
前記第1端部は、前記軸方向において前記第1突起よりも突出している、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の結合構造。
【請求項5】
第1端部を有する円筒形状の第1本体と、
前記第1端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第1突起を有する第1結合部と、
前記第1端部の外周面に設けられた第1シール材と、
を備え、
前記外周面と前記複数の第1突起の間には、一定の大きさの隙間が形成され、
前記外周面よりも大きい内周面を有する第2本体に前記第1結合部と同形状の第2結合部が設けられ、かつ前記第2本体の第2端部に第2シール材が設けられた結合対象金具との結合時において、前記第2端部および前記第2シール材が前記隙間に挿入されるとともに、前記複数の第1突起の前記フックと前記第2結合部が有する複数の第2突起のフックとが係合し、前記第1シール材が前記結合対象金具の本体の内周面に接触する、
結合金具。
【請求項6】
前記第1本体は、前記外周面に設けられた環状の溝を有し、
前記第1シール材は、前記環状の溝に嵌められたパッキンである、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項7】
前記第1端部は、軸方向において前記第1突起よりも突出している、
請求項5または6に記載の結合金具。
【請求項8】
前記第1本体をポンプの吸水口に接続する接続口をさらに備える、
請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの流路を結合するための結合構造および結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、雌雄の区別なく結合可能な結合金具を開発し、製造および販売している。この結合金具は、例えば特許文献1に開示されたように、円筒形状の本体と、この本体の周囲に配置された複数の突起(嵌合突部)と、本体の先端に設けられたゴムパッキン等のシール材とを備えている。結合金具の結合時には、両金具のシール材が同文献の
図6A,6Bに示されたように接触する。これらシール材は、移送流体の圧力が高まると互いに強く押し当てられる構造を有している。したがって、流体の漏れが効果的に抑制される。
【0003】
また、シールに関する他の例として、特許文献2の
図1においては、一方の結合金具の本体端部に内径が拡がった部分を形成するとともに、他方の結合金具の本体端部の外周面にOリングを配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-31150号公報
【特許文献2】特開2007-333107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大雨や台風による水害が多発しており、排水ポンプを使用する機会が増えている。排水ポンプの排水口側におけるホースの連結には、特許文献1に開示されたような構造の結合金具を利用することができる。しかしながら、排水ポンプの吸水口側においては流路内が負圧であるため、当該吸水口側でのホースの連結に当該構造の結合金具を用いると、シール材が十分に機能せずに周囲の空気を吸い込む可能性がある。
【0006】
特許文献2に開示されたシール構造であれば、流路内が負圧でもシール材が機能し得る。しかしながら、双方の金具に特殊な構造を設ける必要があり、結合金具の汎用性が乏しくなる。
【0007】
そこで、本発明は、流路内が負圧であっても流路の結合箇所を良好にシールでき、かつ汎用性に優れた結合構造および結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る結合構造は、第1結合金具と第2結合金具を結合する。前記第1結合金具は、第1端部を有する円筒形状の第1本体と、前記第1端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第1突起を有する第1結合部と、前記第1端部の外周面に設けられた第1シール材と、を備えている。前記第2結合金具は、第2端部と、前記第1端部の外径よりも大きい径の流路とを有する円筒形状の第2本体と、前記第2端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第2突起を有する第2結合部と、前記第2端部において軸方向に突出する第2シール材と、を備えている。前記外周面と前記複数の第1突起の間には、前記第2端部の厚さよりも大きい隙間が形成されている。前記第1結合金具と前記第2結合金具の結合時において、前記第2端部および前記第2シール材が前記隙間に挿入されるとともに前記複数の第1突起の前記フックと前記複数の第2突起の前記フックが係合し、前記第1シール材が前記第2本体の内周面に接触する。
【0009】
一実施形態に係る結合金具は、第1端部を有する円筒形状の第1本体と、前記第1端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第1突起を有する第1結合部と、前記第1端部の外周面に設けられた第1シール材と、を備えている。前記外周面と前記複数の第1突起の間には、一定の大きさの隙間が形成されている。前記外周面よりも大きい内周面を有する第2本体に前記第1結合部と同形状の第2結合部が設けられ、かつ前記第2本体の第2端部に第2シール材が設けられた結合対象金具との結合時において、前記第2端部および前記第2シール材が前記隙間に挿入されるとともに、前記複数の第1突起の前記フックと前記第2結合部が有する複数の第2突起のフックとが係合し、前記第1シール材が前記結合対象金具の本体の内周面に接触する。
【0010】
前記第1本体は、前記外周面に設けられた環状の溝を有してもよい。この場合において、前記第1シール材は、前記環状の溝に嵌められたパッキンであってもよい。
【0011】
一例として、前記第1本体の流路の径は、前記第2本体の流路の径よりも小さい。また、前記第1端部は、前記軸方向において前記第1突起よりも突出している。
【0012】
例えば、前記結合構造および前記結合金具は、ポンプの吸水口側における流路の結合に用いることができる。この場合において、前記第1結合金具または前記結合金具は、前記第1本体をポンプの吸水口に接続する接続口をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流路内が負圧であっても流路の結合箇所を良好にシールでき、かつ汎用性に優れた結合構造およびこの結合構造に用いられる結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る結合金具を含む送水システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る第1結合金具の概略的な部分断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る第2結合金具の概略的な部分断面図である。
【
図4】
図4は、結合された第1結合金具と第2結合金具の概略的な部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した第1結合金具および第2結合金具の一部を拡大して示す概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、第2結合金具が同形状の他の結合金具と結合された状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態につき図面を参照して説明する。
本実施形態に係る結合構造および結合金具は、例えば水害発生時の排水における流路の結合に用いることができる。その他にも、消防分野、農業分野、あるいは工場における流路の結合など、種々の場面で本実施形態に係る結合構造および結合金具を利用することができる。
【0016】
図1は、本実施形態に係る結合金具を含む送水システムWSの構成例を示す図である。この送水システムWSは、排水用のポンプPを備えている。ポンプPは、吸水口S1と、排水口S2と、送水機構Wとを備えている。送水機構Wは、吸水口S1から排水口S2に向けた水(液体)の流れを発生させる。
【0017】
送水システムWSは、吸水口S1側に配置される要素として、第1結合部1を有する第1結合金具C1(吸水側媒介)と、第2結合部2を有する第2結合金具C2とを備えている。第1結合部1と第2結合部2は、例えば同一形状を有し、雌雄の区別なく互いに結合可能である。
【0018】
第1結合金具C1は、吸水口S1に接続可能な接続口N1をさらに有している。例えば、吸水口S1の外周面には雄ねじが形成されており、接続口N1はこの雄ねじと連結可能な雌ねじを有している。ただし、吸水口S1と接続口N1の構造はこの例に限られない。
【0019】
第2結合金具C2は、吸水管T1の一端に設けられている。吸水管T1の他端には、吸い込まれる水から異物を除去するためのストレーナSTが取り付けられている。
【0020】
送水システムWSは、排水口S2側に配置される要素として、第3結合部3を有する第3結合金具C3(排水側媒介)と、第4結合部4を有する第4結合金具C4と、第5結合部5を有する第5結合金具C5とを備えている。第3結合部3、第4結合部4および第5結合部5は、例えば同一形状を有し、雌雄の区別なく互いに連結可能である。これら結合部3~5の形状は、第1結合部1および第2結合部2と同一であってもよい。
【0021】
第3結合金具C3は、排水口S2に接続可能な接続口N2をさらに有している。例えば、排水口S2の外周面には雄ねじが形成されており、接続口N2はこの雄ねじと連結可能な雌ねじを有している。ただし、排水口S2と接続口N2の構造はこの例に限られない。
【0022】
第4結合金具C4は送水ホースT2の一端に設けられ、第5結合金具C5は当該送水ホースT2の他端に設けられている。送水ホースT2は、例えばたて糸とよこ糸で織成されたジャケットの内側にライナーが内張りされた構造を有している。
【0023】
第1結合金具C1を介して吸水口S1と吸水管T1を接続し、第3結合金具C3を介して排水口S2と送水ホースT2を接続した状態において、送水機構Wが作動すると、矢印A1で示すようにストレーナST側から水が吸い込まれ、この水が矢印A2で示すように送水ホースT2から排水される。
【0024】
例えば第3結合金具C3と第4結合金具C4を結合する場合において、第5結合金具C5に他の送水ホースの端部に設けられた結合金具が結合されてもよい。これにより、排水側の流路を延長することができる。
【0025】
図2は、第1結合金具C1の概略的な部分断面図である。第1結合金具C1は、金属製の円筒形状の第1本体10を備えている。
図2の例において、第1本体10は、軸AX1を中心とした半径r1の第1流路F1を有している。半径r1は、軸AX1から第1本体10の内周面10aまでの距離に相当する。軸AX1と直交する平面における第1流路F1の形状は、例えば第1本体10の全体にわたり一様である。
【0026】
第1本体10は、軸AX1と平行な軸方向において第1端部11を有している。第1端部11は、
図2において第1本体10の厚さ(外径)が減少した部分に相当する。軸AX1を中心とした周方向のいずれの位置においても、第1端部11は
図2に示す断面形状を有している。第1端部11と反対側の第1本体10の端部には、上述の接続口N1が設けられている。この接続口N1を介して、第1本体10がポンプPの吸水口S1に接続される。
【0027】
第1端部11の周りには、第1結合部1が設けられている。第1結合部1は、例えば金属製の環状の部材であり、第1本体10の外周面に設けられた係合部12に取り付けられている。
【0028】
第1結合部1は、第1端部11の周囲に配列された複数の第1突起13を有している。これら第1突起13は、いずれも同一の形状を有し、周方向において一定の間隔で並んでいる。隣り合う第1突起13の間には、第1凹部14が形成されている。
【0029】
周方向における第1突起13の一方の側面には、フック13aが形成されている。また、周方向における第1突起13の他方の側面には、ボールプランジャ13bが設けられている。このボールプランジャ13bは、第1突起13の内部に大部分が埋められた球体と、この球体を外側に向けて付勢する付勢部材とを含む。
【0030】
第1端部11は、各第1突起13よりも軸方向に突出している。第1端部11の外周面11aには、その全周にわたる環状の溝11bが形成されている。第1端部11の根本には、半径方向と平行な壁面11cが形成されている。
【0031】
溝11bには、第1シール材15が嵌められている。第1シール材15は、例えばゴムで形成された環状のパッキン(Oリング)である。第1シール材15の断面形状は、例えば
図2に示すような楕円形または円形であるが、U字型やX字型であってもよい。
【0032】
外周面11aと各第1突起13との間には、半径方向の隙間Gが形成されている。第1シール材15の大部分は溝11b内に位置しているが、残りの部分は外周面11aから隙間Gに突出している。
【0033】
図3は、第2結合金具C2の概略的な部分断面図である。第2結合金具C2は、金属製の円筒形状の第2本体20を備えている。
図3の例において、第2本体20は、軸AX2を中心とした半径r2の第2流路F2を有している。半径r2は、軸AX2から第2本体20の内周面20aまでの距離に相当する。半径r2は、
図2に示した半径r1や第1端部11の外径(外周面11aの半径)よりも大きい。軸AX2と直交する平面における第2流路F2の形状は、例えば第2本体20の全体にわたり一様である。
【0034】
第2本体20は、軸AX2と平行な軸方向において第2端部21を有している。第2端部21の周りには、第2結合部2が設けられている。第2結合部2は、例えば金属製の環状の部材であり、第2本体20の外周面に設けられた係合部22に取り付けられている。
【0035】
第2結合部2は、第2端部21の周囲に配列された複数の第2突起23を有している。これら第2突起23は、軸AX2を中心とした周方向において一定の間隔で並んでいる。隣り合う第2突起23の間には、第2凹部24が形成されている。
【0036】
周方向における第2突起23の一方の側面には、フック23aが形成されている。また、周方向における第2突起23の他方の側面には、ボールプランジャ23bが設けられている。
【0037】
第2突起23、フック23a、ボールプランジャ23bおよび第2凹部24の形状は、第1突起13、フック13a、ボールプランジャ13bおよび第1凹部14と同一である。
【0038】
各第2突起23は、第2端部21よりも軸方向に突出している。第2端部21の先端面には、その全周にわたる環状の溝21bが形成されている。溝21bには、第2シール材25が嵌められている。第2シール材25は、例えばゴムで形成され、第2端部21の先端面から軸方向に突出している。
【0039】
例えば、第2端部21の外周面21aと各第2突起23との間には隙間が形成されていない。ただし、外周面21aと各第2突起23の間に上述の隙間Gよりも小さい隙間が形成されてもよい。
【0040】
第2本体20の外周面には、軸方向に並ぶ複数の段差で構成される装着部26が設けられている。上述の吸水管T1は、装着部26に装着される。
【0041】
上述の第3結合金具C3のうち第3結合部3側の部分、第4結合金具C4および第5結合金具C5には、第2結合金具C2と同様の構造を適用し得る。
【0042】
図4は、結合された第1結合金具C1と第2結合金具C2の概略的な部分断面図である。第1結合金具C1と第2結合金具C2(結合対象金具)を結合する際には、軸AX1,AX2を一致させるとともに、第1突起13と第2凹部24を対向させた状態で両者を軸方向に押し合わせる。これにより、第1突起13が第2凹部24に、第2突起23が第1凹部14にそれぞれ挿入されて、フック13a,23aが係合する。さらに、ボールプランジャ13b,23bが接触し、これにより生じる周方向への付勢力によりフック13a,23aの係合状態が維持される。
【0043】
図5は、
図4に示した第1結合金具C1および第2結合金具C2のうち、第1端部11および第2端部21の近傍を拡大して示す概略的な断面図である。半径方向において、第1端部11の外周面11aと第1突起13の間の隙間Gは、第2端部21の厚さよりも大きい。
【0044】
第1結合金具C1と第2結合金具C2の結合時には、第2端部21および第2シール材25が隙間Gに挿入される。このとき、第2本体20の内周面20aに第1シール材15が接触する。
図5の例においては、第1本体10の壁面11cに第2シール材25が接触している。ただし、結合時において第2シール材25と壁面11cの間に隙間が形成されてもよい。
【0045】
第1シール材15は、内周面20aに押されることにより、第1結合金具C1と第2結合金具C2が結合されていないときに比べ半径方向に圧縮されている。これにより、第1シール材15が内周面20aに密着し、外周面11aと内周面20aの隙間がシールされる。
【0046】
第2結合金具C2は、第1結合金具C1だけでなく、自身と同じ形状を有する他の結合金具とも結合可能である。
図6は、第2結合金具C2が同形状の他の結合金具と結合された状態を概略的に示す断面図である。ここでは、当該他の結合金具にC2’の符号を付し、その各部に第2結合金具C2と同様の符号を付す。
【0047】
第2結合金具C2と結合金具C2’の結合時には、これら金具の一方の第2突起23が他方の第2凹部24にそれぞれ挿入される。このとき、
図4に示した第1結合金具C1と第2結合金具C2の結合時と同じく、各第2突起23のフック23aが係合し、各第2突起23のボールプランジャ23bが接触する。
【0048】
第2シール材25は、第2端部21から第2本体20の内側に向けて突出する環状のリップ25aと、このリップ25aの根本付近に形成された環状の凹部25bとを有している。第2結合金具C2と結合金具C2’の結合時には、各第2シール材25のリップ25aが軸方向に押し当てられる。
【0049】
結合された第2結合金具C2および結合金具C2’の内部に大気圧より大きい圧力(正圧)の水が流れると、各凹部25bには、これらを広げる方向の力が作用する。これにより、各リップ25aがより強固に押し当てられるため、第2結合金具C2と結合金具C2’の第2本体20の境界が良好にシールされる。
【0050】
したがって、例えば
図1に示した第3結合金具C3と第4結合金具C4の結合構造が
図6の例と同様の場合、ポンプPの排水口S2からは正圧の水が送り出されるので、良好なシール性能が発揮される。
【0051】
図6の結合構造において内部を流れる水が大気圧より小さい圧力(負圧)であると、押し当てられた各リップ25aの境界から外部の空気を吸い込む力が作用する。この場合、シール性能が十分に発揮されず、外部の空気が流路内に取り込まれる可能性がある。
【0052】
例えば、
図1に示したポンプPの吸水口S1側においては、水を吸い上げる負圧が作用する。したがって、仮に吸水口S1側における流路の結合に
図6の例と同様の結合構造を適用した場合、ポンプPに空気が取り込まれ、排水性能が低下し得る。
【0053】
一方、
図4および
図5に示した結合構造においては、主に第1シール材15と内周面20aの接触により第1本体10と第2本体20の境界がシールされる。この構造においては、流路F1,F2に負圧の水が流れても良好なシール性能が発揮される。当該結合構造は、正圧の水が流れる場合も同様に良好なシール性能を発揮する。
【0054】
本実施形態に係る第2結合金具C2は、
図5に示したように第1結合金具C1と結合可能なだけでなく、
図6に示したように同形状の他の結合金具とも結合可能である。すなわち、
図5に示した結合構造を実現するにあたっては、第1結合金具C1が第1端部11および第1シール材15などからなる負圧用のシール構造を備えればよく、第2結合金具C2には特別な構造が不要である。これにより、第1結合金具C1および第2結合金具C2の汎用性が高まる。
【0055】
仮に第2結合金具C2のように第2端部21の先端にシール材が配置された構造において負圧での使用を可能とするためには、特殊な形状の負圧用シール材を用いる必要がある。特殊な形状の負圧用シール材を用いても、各結合金具の負圧用シール材の接続部に曲げ力が加わると空気が吸い込まれる可能性がある。この対策のために、流路において曲げ力が加わり得る箇所に特殊な媒介を配置する必要がある。
【0056】
これに対し、
図5に示したように第2本体20の内側に第1本体10の第1端部11が挿入され、この第1端部11と第2本体20の内周面20aの間を第1シール材15によりシールする構造であれば、曲げ力が加わっても第1本体10と第2本体20の間に隙間が生じにくい。
【0057】
第1結合部1や第2結合部2のような構造を有した結合金具は、消防分野において消防ホース同士の連結に用いられることが多い。また、近年では、大雨や台風などによる洪水の発生が増えており、その排水用として100mm、150mm、200mm、300mmの大径のホースや吸水管が使用されている。このような大径のホースや吸水管を含む流路の構築に第1結合部1や第2結合部2のような構造を有した結合金具を使用したいとの要望がある。本実施形態に係る第1結合金具C1および第2結合金具C2は、これらホースや吸水管と同様に大径化して内部に負圧の水を流す場合であっても、良好なシール性能を発揮する。
【0058】
なお、本実施形態においては、第1結合金具C1がポンプPの吸水口S1に接続される吸水側媒介である場合を想定し、その構造を例示した。この第1結合金具C1が備える負圧用のシール構造は、吸水側媒介以外にも種々の結合金具に適用し得る。例えば、吸水側媒介と吸水管T1の間に延長用の他の吸水管を配置する場合において、この吸水管の両端のうち吸水管T1の第2結合金具C2と結合される一端に
図2に示した負圧用のシール構造を有する結合金具を設け、他端に
図3に示した正圧用のシール構造を有する結合金具を設けてもよい。
【0059】
また、
図1に示した送水システムWSにおいて、吸水管T1に
図2に示した負圧用のシール構造を有する結合金具(第1結合金具)を設け、この結合金具に結合される吸水側媒介として
図3に示した正圧用のシール構造を有する結合金具を用いてもよい。
【0060】
第1シール材15は、高粘度のグリースのような液状のものであってもよい。このような液状の第1シール材15が外周面11aと内周面20aの間に配置される場合であっても、第1本体10と第2本体20の境界を良好にシールすることができる。
【0061】
以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の改良を結合構造および結合金具に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
WS…送水システム、P…ポンプ、C1…第1結合金具(吸水側媒介)、C2…第2結合金具、T1…吸水管、S1…吸水口、1…第1結合部、2…第2結合部、10…第1本体、11…第1端部、15…第1シール材、20…第2本体、21…第2端部、25…第2シール材。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1結合金具と第2結合金具の結合構造であって、
前記第1結合金具は、
第1端部を有する円筒形状の第1本体と、
前記第1端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第1突起を有する第1結合部と、
前記第1端部の外周面に設けられた第1シール材と、
を備え、
前記第2結合金具は、
第2端部と、前記第1端部の外径よりも大きい径の流路とを有する円筒形状の第2本体と、
前記第2端部の周囲に配列されるとともにフックが形成された複数の第2突起を有する第2結合部と、
前記第2端部において軸方向に突出する第2シール材と、
を備え、
前記外周面と前記複数の第1突起の間には、前記第2端部の厚さよりも大きい隙間が形成され、
前記第1結合金具と前記第2結合金具の結合時において、前記第2端部および前記第2シール材が前記隙間に挿入されるとともに前記複数の第1突起の前記フックと前記複数の第2突起の前記フックが係合し、前記第1シール材が前記第2本体の内周面に接触する、
結合構造。
【請求項2】
前記第1本体は、前記外周面に設けられた環状の溝を有し、
前記第1シール材は、前記環状の溝に嵌められたパッキンである、
請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記第1本体の流路の径は、前記第2本体の流路の径よりも小さい、
請求項1または2に記載の結合構造。
【請求項4】
前記第1端部は、前記軸方向において前記第1突起よりも突出している、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の結合構造。
【請求項5】
前記第1結合金具は、前記第1本体をポンプの吸水口に接続する接続口をさらに備える、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の結合構造。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、2つの流路を結合するための結合構造に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そこで、本発明は、流路内が負圧であっても流路の結合箇所を良好にシールでき、かつ汎用性に優れた結合構造を提供することを目的の一つとする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明によれば、流路内が負圧であっても流路の結合箇所を良好にシールでき、かつ汎用性に優れた結合構造を提供することができる。