(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063034
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ビタミンC吸収促進剤及びビタミンC補給用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220414BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220414BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220414BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P3/02 107
A61K31/375
A61K47/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171337
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595156665
【氏名又は名称】株式会社 ポーラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川原 正喜
(72)【発明者】
【氏名】黒野 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 瑞枝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博隆
(72)【発明者】
【氏名】野田 幸宏
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD25
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C076BB31
4C076CC24
4C076EE58N
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA11
4C086ZC28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物の抽出物を利用して、生体に利用可能なビタミンCの吸収を助ける、新たな機能性素材を提供する。
【解決手段】ドラゴンヘッドの抽出物を有効成分とするビタミンC吸収促進剤である。また、ドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCを含有するビタミンC補給用組成物である。この組成物に含有されるビタミンCは、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩から選ばれた少なくとも1種の形態で提供されてもよい。この組成物は、飲食品であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラゴンヘッドの抽出物を有効成分とするビタミンC吸収促進剤。
【請求項2】
ビタミンCトランスポーターの発現量を増加させる作用を有する請求項1記載のビタミンC吸収促進剤。
【請求項3】
前記ビタミンCトランスポーターはSVCT2である請求項2記載のビタミンC吸収促進剤。
【請求項4】
Caco-2細胞層を用いた吸収性評価系においてビタミンC透過量を増加させる作用を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のビタミンC吸収促進剤。
【請求項5】
ドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCを含有することを特徴とするビタミンC補給用組成物。
【請求項6】
前記ビタミンCは、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩から選ばれた少なくとも1種の形態で提供される請求項5記載のビタミンC補給用組成物。
【請求項7】
前記ビタミンCは、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、及び(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩の形態で提供される請求項5記載のビタミンC補給用組成物。
【請求項8】
前記ドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量の1質量部に対して、前記ビタミンCをアスコルビン酸量換算で5~2000質量部の割合で含有する請求項5~7のいずれか1項に記載のビタミンC補給用組成物。
【請求項9】
1回の摂取量として、前記ビタミンCをアスコルビン酸量換算で100~2000mg含み、前記ドラゴンヘッドの抽出物を乾燥分換算で1~20mg含む請求項5~8のいずれか1項に記載のビタミンC補給用組成物。
【請求項10】
飲食品である請求項5~9のいずれか1項に記載のビタミンC補給用組成物。
【請求項11】
ビタミンC吸収促進剤の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物の使用。
【請求項12】
ビタミンC補給用組成物の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物及びビタミンCの使用。
【請求項13】
ドラゴンヘッドの抽出物をビタミンCとともに投与することを特徴とするビタミンC吸収促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に利用可能なビタミンCの吸収を助ける、ビタミンC吸収促進剤及びビタミンC補給用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンCは、歴史的には壊血病予防因子として見出された水溶性ビタミンで、近年までの研究により免疫力増強、抗ストレス、抗酸化、抗ガン、抗アレルギー、抗ウイルス、抗菌作用等の生体機能性があることが報告されている(非特許文献1、2参照)。また、皮膚、骨、腱などの結合組織や各組織や器官に広く分布するコラーゲンの生合成には、ビタミンCが重要な役割を担っていることが知られている(非特許文献3参照)。更には、メラニン生成を抑制する効果があることも知られている(非特許文献3参照)。ビタミンCは栄養機能食品にかかる栄養成分にも掲げられており、その機能表示として、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素、などの表示が認められている(食品表示法に基づく食品表示基準)。
【0003】
一方、このようなビタミンCの重要な役割に着眼して、特許文献1には、ビタミンCのバイオアベイラビリティを調節するための栄養組成物が開示されている。また、特許文献2には、ビタミンCトランスポーター産生促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】村田 晃、「ビタミンCの多様な作用と作用機作」Nippon Nogeikagaku Kaishi (1990) Vol.64, No.12, pp.1843-1845.
【非特許文献2】「ナチュラルメディシン・データベース」(http://jahfic.or.jp/news/new-book-nmcdj-2017)
【非特許文献3】J. M. Pullar, et al.、「The Roles of Vitamin C in Skin Health」Nutrients 2017, 9, 866; doi:10.3390/nu9080866.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-533078号公報
【特許文献2】国際公開第2007/094312号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体に利用可能なビタミンCの吸収を助ける新たな機能性素材が提供されれば、需要者の選択の幅が広がる。また、天然産物もしくはその一次的な処理物が有効成分であれば、副作用のリスクも少ないと考えられる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、植物の抽出物を利用して、生体に利用可能なビタミンCの吸収を助ける、新たな機能性素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、種々研究した結果、ドラゴンヘッドの抽出物には、ビタミンCの吸収を促す作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、その第1の観点では、ドラゴンヘッドの抽出物を有効成分とするビタミンC吸収促進剤を提供するものである。
【0010】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤においては、ビタミンCトランスポーターの発現量を増加させる作用を有するものであることか好ましい。
【0011】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤においては、前記ビタミンCトランスポーターはSVCT2であることが好ましい。
【0012】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤においては、Caco-2細胞層を用いた吸収性評価系においてビタミンC透過量を増加させる作用を有することが好ましい。
【0013】
本発明は、その第2の観点では、ドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCを含有することを特徴とするビタミンC補給用組成物を提供するものである。
【0014】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物においては、前記ビタミンCは、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩から選ばれた少なくとも1種の形態で提供されることが好ましい。
【0015】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物においては、前記ビタミンCは、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、及び(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩の形態で提供されることが好ましい。
【0016】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物においては、前記ドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量の1質量部に対して、前記ビタミンCをアスコルビン酸量換算で5~2000質量部の割合で含有することが好ましい。
【0017】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物においては、1回の摂取量として、前記ビタミンCをアスコルビン酸量換算で100~2000mg含み、前記ドラゴンヘッドの抽出物を乾燥分換算で1~20mg含むことが好ましい。
【0018】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物においては、その組成物は飲食品であることが好ましい。
【0019】
本発明は、その第3の観点では、ビタミンC吸収促進剤の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物の使用を提供するものである。
【0020】
本発明は、その第4の観点では、ビタミンC補給用組成物の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物及びビタミンCの使用を提供するものである。
【0021】
本発明は、その第5の観点では、ドラゴンヘッドの抽出物をビタミンCとともに投与することを特徴とするビタミンC吸収促進方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドラゴンヘッドの抽出物を利用して、生体に利用可能なビタミンCの吸収を助ける、新たな機能性素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】試験例1において、各被験試料をCacо-2細胞に適用したときの、その細胞におけるビタミンCトランスポーター(SVCT2)のmRNA発現量を調べた結果を示す図表である。
【
図2】試験例2において、各被験試料をCacо-2細胞層に適用したときの、その細胞層を透過したアスコルビン酸の透過量を調べた結果を示す図表である。
【
図3】試験例3において、各試験食を摂取したときの血中ビタミンC量の推移を調べた結果を示す図表であり、試験開始前又は試験開始4週間後に各試験食を摂取して0、1、2、3、4、6、8、又は10時間後に血清アスコルビン酸濃度を測定してグラフ化した結果を示す図表である。
【
図4】試験例3において、各試験食を摂取したときの血中ビタミンC量の推移を調べた結果を示す図表であり、
図3の結果から濃度-時間曲線下面積(AUC)を求めた結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において「ドラゴンヘッド」とは、通常当業者に理解される意義と同義であり、具体的には、シソ科ムシャリンドウ属の植物(学名:Dracocephalum moldavica、別名としてホザキムシャリンドウとも呼ばれる。)を含む意味である。ドラゴンヘッドは、初夏から夏にかけてブルーの花を段状に咲かせるアジア・ヨーロッパ原産の一年草であり、ハーブや鑑賞用としても広く栽培されており、容易に入手可能である。
【0025】
本明細書において「ビタミンC」とは、通常当業者に理解される意義と同義であり、具体的には、アスコルビン酸やその塩を含む意味である。アスコルビン酸は生理活性の高いことが知られるL体であり得、あるいはまた、それを含むDL混合体であってもよい。アスコルビン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。アスコルビン酸及び/又はその塩は油脂被覆化されていてもよく、もしくは、リポソーム化されていてもよい。油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩としては、例えば、特開2001-17093号公報、特開2004-123636号公報等に調製方法が開示されているので、これらの方法もしくはこれらの方法に準じた方法で得られた形態のものを用いることができる。あるいは市販品としても「VC-80R」(日油製)、「アスコルビン酸-95R」(日油製)、「ビタコートC-95」(横浜油脂工業製)などがあるので、そのような市販品を用いてもよい。リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩としては、例えば、特表2004-529163号公報、特開2012-140395号公報等に調製方法が開示されているので、これらの方法もしくはこれらの方法に準じた方法で得られた形態のものを用いることができる。あるいは市販品としても「Vitamin C Zeal」(Aurea Biolabs製)、「Lypo-C[リポカプセル]ビタミンC」(スピック製)などがあるので、そのような市販品を用いてもよい。
【0026】
本明細書において「ビタミンCトランスポーター」とは、通常当業者に理解される意義と同義であり、具体的には、生体組織の細胞の脂質二重膜に貫通して配されて、細胞外のビタミンCの細胞内への輸送を担う蛋白質であり、ヒトではSVCT1(遺伝子名:SLC23Al)とSVCT2(遺伝子名:SLC23A2)の2つのサブタイプが知られている。一般に、SVCT1は、主に肝臓、肺、腎臓、腸、皮膚などに発現が認められ、ビタミンCの最大取り込み速度がSVCT2よりも高いため、どちらかといえば、体内のビタミンC濃度を恒常的に維持する役割を担うと考えられている。一方、SVCT2は、主に脳、眼、肝臓などに発現が認められ、SVCT1よりもビタミンCに親和性が高いため、どちらかといえば、低濃度のビタミンCを効率的に取り込む役割を担うと考えられている。
【0027】
本発明に用いるドラゴンヘッドの抽出物としては、ドラゴンヘッドの植物体の成分が含まれていればよく、その抽出物の形態に特に制限はない。また、原料として使用するドラゴンヘッドの栽培株の種類、栽培地域、栽培時期等に特に制限はない。簡便な調製のためには、原料に溶媒を加えて一定時間処置して得られる、その一次的な抽出物を用いることができる。得られた一次抽出物には、必要に応じてろ過や濃縮、イオン交換樹脂や液体クロマトグラフィーなどを用いた精製・分離、凍結乾燥等の加工処理を施してもよい。原料として使用する植物体の部位としては、葉部、茎部、花部、根部、又はこれらの2種以上の部位の混合物、根以外の全草、根を含む全草等が挙げられる。これらの部位のうちドラゴンヘッド成分の含有量や収量の観点からは、根以外の全草を使用することが好ましい。
【0028】
抽出は、従来公知の手法によって行うことができる。例えば、原料植物体としてドラゴンヘッドの1種又は2種以上の部位、あるいはその搾汁液や、これを濃縮、乾燥、粉末化等してなる加工物を、適宜適当な溶媒中において、低温ないし加温下で所定時間浸漬したり加熱還流したりすることによって行い得る。
【0029】
抽出に使用する溶媒としては、特に制限はなく、通常植物抽出に用いられる溶媒を選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類等が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭素類としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。抽出に使用する溶媒は、これら溶媒のうちの2種以上を混合して用いてもよく、2種以上の溶媒による抽出を行って得られる結果物を混合して抽出物としたり、2種以上の溶媒による抽出を順次的に行ったりしてもよい。
【0030】
抽出物は、液状、懸濁液状、ペースト状、ゲル状、油状、エマルジョン状等いずれの形態に調製してもよい。あるいは乾固させて固体状としてもよく、凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末状としてもよい。この場合、デキストリン等の乾燥助剤やショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を添加してもよい。また、抽出物は、ドラゴンヘッドエキス末の形態であってもよい。
【0031】
上記のようにして調製することができるドラゴンヘッドの抽出物について、その品質の規格化を図るための成分としては、植物フラボノイドが挙げられる。例えば、文献1(Chao Wu et al.,「Phytochemical composition profile and space-time accumulation of secondary metabolites for Dracocephalum moldavica Linn. via UPLC-Q/TOF-MS and HPLC-DAD method」 Biomedical Chromatography, 2020, DOI: 10.1002/bmc.4865.)、及び文献2(Ozek G, et al.,「Preparative Capillary GC for Characterization of Five Dracocephalum Essential Oils from Mongolia, and their Mosquito Larvicidal Activity.」Nat Prod Commun, 2016, PMID: 30549618)によれば、ドラゴンヘッドの抽出物には、(E)-Nerolidol、(Z)-γ-Curcumyl 2-methyl butyrate、1,8-Cineole、1-Octen-3-ol、4,7-(endo)-Dimethylbicyclo(3.2.1)-oct-3-en-6(exo)-ol、8-Hydroxy-salvigenin、Acacetin、Acacetin-7-O-β-D-glucuronide、Agastachoside、Apigenin、Apigenin-7-O-β-D-glucuronide、Carvacrol、Carvone、Caryophyllene oxide、Chrysoeriol、Cirsimartin、cis-Dihydrocarveol、cis-p-Mentha-2,8-dien-1-ol、Diosmetin-7-O-β-D-glucuronide、Disometin、Esculetin、Eudesma-4(15),7-dien-1-β-ol、Gardenin B、Geranial、Geranic acid、Geraniol、Geranyl acetate、Geranyl formate、Hexahydrofarnesyl acetone、Homoplantaginin、Humulene epoxide-II、Isorhamnetin、Kaempferol、Limonene、Limonene glycol、Luteolin、Luteolin-7-O-β-D-glucuronide、Methyl eugenol、Neral、p-Menth-1-en-9-al(isomer 1)、p-Mentha-1,8-dien-10-al(=Limonen-10-al)、p-Mentha-1,8-dien-10-ol、p-Mentha-1,8-dien-10-yl acetate、Quercetin、Rosmarinic acid、Spathulenol、Takakin-8-O-β-D-glucoside、Terpinen-4-ol、Thymol、Tilianin、Torilenol、trans-Carveol、trans-p-Mentha-2,8-dien-1-ol、α-Pinene、α-Terpineol、β-Caryophylleneなどが含まれている。
【0032】
ただし、一般に植物抽出物には、その植物に由来する多種多様な成分が複合的に含まれていることは勿論であり、上記のようにして調製することができるドラゴンヘッドの抽出物について、本発明に用いるにあたって個々の成分が同定されることは必要的ではない。
【0033】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤は、上記のようにして調製することができるドラゴンヘッドの抽出物を有効成分として用いて、これをビタミンCとともにヒト又はヒト以外の動物に投与することで、生体に利用可能なビタミンCの吸収を促進しようとするものである。そのための投与方法は、特に制限はないが、例えば、経口的に投与することが好ましい。経口的な投与によれば、腸管上皮に発現しているビタミンCトランスポーターを介したビタミンCの吸収を促進させることができる。また、経皮的に投与することもできる。経皮的な投与によれば、皮膚上皮に発現しているビタミンCトランスポーターを介したビタミンCの吸収を促進させることができる。投与に際して、ドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCとが合一に含まれる組成物を調製して投与することは必ずしも必要的ではなく、各々別の形態中に含まれるドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCとを用いて、それらを各別に、ただし時間をおかずに投与するようにしてもよい。
【0034】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤は、必要に応じて薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、ドリンク剤、ゼリー状剤、トローチ剤、口腔内崩壊剤等の形態にして、これを経口剤として利用することができる。また、同様に、公知の製剤方法によって、例えば、クリーム剤、ローション剤、パック剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、チック剤、リニメント剤、スプレー剤等の形態にして、これを皮膚外用剤として利用することができる。
【0035】
本発明にかかるビタミンC吸収促進剤において、上記ドラゴンヘッドの抽出物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよい。典型的には、上記ドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量にして、0.01~10質量%の範囲であってよく、0.01~5質量%の範囲であってよく、0.01~2質量%の範囲であってよい。
【0036】
一方、本発明においては、上記のように提供されるビタミンC吸収促進剤を利用して、ビタミンC補給用組成物が提供されてもよい。すなわち、上記ドラゴンヘッドの抽出物をビタミンCと組み合わせて組成物とすることにより、飲食品の形態としても使用可能なビタミンC補給用組成物と成すことができる。
【0037】
本発明にかかるビタミン補給用組成物に含有せしめるビタミンCとしては、上述した形態、すなわち(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩など、いずれの形態であってもよい。
【0038】
本発明の限定されない任意の態様においては、上記のビタミンCの3種の形態をすべて含有せしめてもよい。一般に、ビタミンCの経口摂取後の体内挙動については、例えば、文献(村田ら、「1000mgおよび2000mgのビタミンCを経口投与したときのビタミンCの血漿濃度と尿中排泄量」(1995)ビタミン69巻3号(3月)、p175-182.)によると、1000mgのアスコルビン酸経口投与後の最高濃度到達時間(Tmax)が3.0時間程度であることが記載されている。また、文献(M. Levine et al.,「Vitamin C pharmacokinetics in healthy volunteers: evidence for a recommended dietary allowance」Proc Natl Acad Sci USA (1996) Apr 16;93(8):p3704-9.)によると、経口的に摂取したアスコルビン酸の血中濃度は、アスコルビン酸が高投与量になると飽和が生じることが記載されている。このような投与量に依存したアスコルビン酸の血中濃度の飽和は、吸収挙動の異なるビタミンCを用いることにより回避することができると考えられる。具体的には、例えば、リポソーム化されたアスコルビン酸は、アスコルビン酸の吸収量を促進する効果があるが、通常のアスコルビン酸よりも若干Tmaxが遅くなる。油脂被覆化されたアスコルビン酸は、その被覆からのアスコルビン酸の放出に時間がかかるため、Tmaxがさらに遅くなる。したがって、これら吸収挙動の異なる形態のビタミンCを併用することにより、ビタミンCの生体利用率を向上させることができる。
【0039】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物は、必要に応じて薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、ドリンク剤、ゼリー状剤、トローチ剤、口腔内崩壊剤等の形態にして、これを経口用組成物として利用することができる。また、同様に、公知の製剤方法によって、例えば、クリーム剤、ローション剤、パック剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、チック剤、リニメント剤、スプレー剤等の形態にして、これを皮膚外用組成物として利用することができる。
【0040】
本発明にかかるビタミンC補給用組成物において、上記ドラゴンヘッドの抽出物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよい。典型的には、上記ドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量にして、0.01~10質量%の範囲であってよく、0.01~5質量%の範囲であってよく、0.01~2質量%の範囲であってよい。また、上記ビタミンCの含有量は、アスコルビン酸量換算の含有量にして、1~99.9質量%の範囲であってよく、10~80質量%の範囲であってよく、20~60質量%の範囲であってよい。
【0041】
本発明の限定されない任意の態様においては、当該ビタミンC補給用組成物は、上記したドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量の1質量部に対して、上記したビタミンCの含有量が、アスコルビン酸量換算で5~2000質量部の割合であることが好ましい。ドラゴンヘッドの抽出物の乾燥分換算の含有量の1質量部に対するビタミンCの含有量の割合は、アスコルビン酸量換算で20~2000質量部の範囲であってもよく、50~2000質量部の範囲であってもよい。
【0042】
本発明の限定されない任意の態様においては、1回の摂取量としては、上記したビタミンCをアスコルビン酸量換算で100~2000mg含み、上記したドラゴンヘッドの抽出物を乾燥分換算で1~20mg含むことが好ましい。1回の摂取量としては、上記したビタミンCをアスコルビン酸量換算で300~2000mg含み、上記したドラゴンヘッドの抽出物を乾燥分換算で1~15mg含むようにしてもよく、上記したビタミンCをアスコルビン酸量換算で500~2000mg含み、上記したドラゴンヘッドの抽出物を乾燥分換算で1~10mg含むようにしてもよい。
【0043】
本発明の限定されない任意の態様においては、当該ビタミン補給用組成物に含有せしめるビタミンCとして、(1)アスコルビン酸及び/又はその塩、(2)油脂被覆化されたアスコルビン酸及び/又はその塩、及び(3)リポソーム化されたアスコルビン酸及び/又はその塩の3種の形態をすべて用いる場合、それぞれの形態に由来するビタミンCが、アスコルビン酸量換算で1~10:1~10:0.01~1(上記(1)の形態の量:上記(2)の形態の量:上記(3)の形態の量の比)の範囲であることが好ましい。3種の形態の比としては、それぞれの形態に由来するビタミンCが、アスコルビン酸量換算で、1~10:1~10:0.01~0.5(上記(1)の形態の量:上記(2)の形態の量:上記(3)の形態の量の比)の範囲であってもよく、1~10:1~10:0.01~0.1の範囲であってもよい。
【0044】
本発明の限定されない任意の態様においては、当該ビタミンC補給用組成物は、必要に応じて他の飲食品用原料を組み合わせて、飲食品と成してもよい。組み合わせる飲食品用原料としては、例えば、ドレッシング、ソース、ふりかけ、シロップ、粉末状の果実、野菜ジュース、スポーツドリンク、シリアル食品等が挙げられる。
【0045】
なお、飲食品用原料としては、キウイ、柿、イチゴ、オレンジ、レモン、マンゴー、パパイヤ、アセロラ、バナナ、ゆず、スダチ、グレープフルーツ、パプリカ、キャベツ、菜の花、ゴーヤー、ピーマン、ブロッコリー、モロヘイヤ、カブ、カリフラワー、豆苗、ケール、カボチャ、パセリ、ジャガイモ、サツマイモ、のり、わかめ、昆布等のビタミンCを含有する食品素材を用いても構わない。この場合、当該食品素材は、上述したビタミンCの供給源としてビタミンCを所定量含有する組成物となっており、素材中ビタミンCは、主に上記(1)アスコルビン酸及び/又はその塩の形態で含まれている。この場合、上述したビタミンCの組成物中の含有量の好ましい範囲やドラゴンヘッドの抽出物に対する割合の好ましい範囲は、アスコルビン酸量換算でそのまま適用することができる。
【0046】
以上のとおり、本発明によれば、ドラゴンヘッドの抽出物を有効成分とするビタミンC吸収促進剤やドラゴンヘッドの抽出物とビタミンCを含有するビタミンC補給用組成物が提供される。ただし、本発明にかかる技術的思想は、剤や組成物の構成に限られるものでなく、本発明は、他の観点では、ビタミンC吸収促進剤の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物の使用を提供するものでもある。また、別の観点では、ビタミンC補給用組成物の製造のためのドラゴンヘッドの抽出物及びビタミンCの使用を提供するものでもある。更に他の観点では、ドラゴンヘッドの抽出物をビタミンCとともに投与するビタミンC吸収促進方法を提供するものでもある。
【実施例0047】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
<試験例1>
ヒト小腸様細胞株であるCacо-2細胞を使用し、ビタミンCトランスポーターであるSVCT2の発現量を調べた。具体的には、以下に示すようにして、各被験試料を適用したときのSVCT2のmRNA発現量を調べた。
【0049】
〔1.細胞培養〕
液体培地E-MEM(20%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを各々含有)を2mL入れた6ウェルプレート型培養容器を用意し、これにCacо-2細胞の2×105個を播種して37℃、5%CO2の条件で静置培養し、細胞が容器内底面に定着した後に、被験試料の適用に供した。
【0050】
〔2.被験試料〕
・アスコルビン酸(富士フィルム和光純薬製)(以下、「VC」という場合がある。):あらかじめ液体培地E-MEMに所定濃度で溶解しておき、適用時の濃度がアスコルビン酸として8.8μg/mL又は88μg/mLとなるように、Cacо-2細胞への適用時の培地に添加した。
・ドラゴンヘッドエキス末(商品名「ドラコベル Nu」、エイチ・ホルスタイン製):あらかじめ液体培地E-MEMに所定濃度で溶解しておき、適用時の濃度がドラゴンヘッドの抽出物(以下、「DH」という場合がある。)として1.8μg/mLとなるように、Cacо-2細胞への適用時の培地に添加した。
【0051】
〔3.適用〕
被験試料の添加前に順化のため、培地を液体培地E-MEMに交換して1時間培養し、その後に被験試料を適用して30分後又は60分後に細胞を回収した。
【0052】
〔4.PCR〕
細胞からRNAを回収し、リアルタイムPCR法によりSVCT2のmRNA発現量を測定した。具体的には、回収した細胞にRNA抽出試薬(商品名「RNAiso Plus」、タカラバイオ製)を適用して総RNAを抽出し、これに逆転写試薬(商品名「PrimeScript RT reagent Kit」、タカラバイオ製)を適用してcDNA合成を行った。得られたcDNAを鋳型にし、SVCT2に特異的なプライマーを使用して、リアルタイムPCR試薬(商品名「TB GreenPremix Ex Taq」、タカラバイオ製)を使用して、リアルタイムPCR法によりmRNA発現量を測定した。
【0053】
結果は、同じcDNAを鋳型にしてβ-actinに特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRを行ったときのβ-actin値で除することで規格化したうえ、被験試料を適用しない対照群を1としたときの相対値を算出することで、SVCT2のmRNA発現量を求めた。
【0054】
その結果、
図1に示されるように、以下のことが明らかとなった。
【0055】
(1)
図1検討1に示されるように、アスコルビン酸を濃度8.8μg/mLで60分間適用した場合、Cacо-2細胞におけるSVCT2のmRNA発現量の相対値は0.89であった。それに対して、更にドラゴンヘッドエキス末をドラゴンヘッドの抽出物として濃度1.8μg/mLで併用して適用すると、その相対値が1.14に増加した。
(2)
図1検討2に示されるように、アスコルビン酸を濃度88μg/mLで30分間適用した場合、Cacо-2細胞におけるSVCT2のmRNA発現量の相対値は0.66であった。それに対して、更にドラゴンヘッドエキス末をドラゴンヘッドの抽出物として濃度1.8μg/mLで併用して適用すると、その相対値が0.81に増加した。
(3)
図1検討3に示されるように、アスコルビン酸を濃度88μg/mLで60分間適用した場合、Cacо-2細胞におけるSVCT2のmRNA発現量の相対値は0.67であった。また、更にドラゴンヘッドエキス末をドラゴンヘッドの抽出物として濃度1.8μg/mLで併用して適用した場合は、その相対値が0.70であった。
【0056】
以上から、Cacо-2細胞にアスコルビン酸を適用すると、ビタミンCトランスポーターの発現量が相対的に低下することが明らかとなった。これは、アスコルビン酸に対する負の制御が働いているためと考えられた。一方、Cacо-2細胞にアスコルビン酸とともにドラゴンヘッドの抽出物を適用すると、上記負の制御が緩和された。これは、ドラゴンヘッドの抽出物には、ビタミンCトランスポーターの発現量を増加させる作用効果があるためと考えられた。
【0057】
<試験例2>
ヒト小腸様細胞株であるCacо-2細胞を使用し、アスコルビン酸の吸収性評価試験を行った。具体的には、以下に示すようにして、Cacо-2細胞の単層膜をトランスウェルの内側(apical側)に形成させたうえ、各被験試料を適用したときのアスコルビン酸のトランスウェルの外側(basal側)への透過量を調べた。
【0058】
〔1.細胞培養〕
液体培地E-MEM(20%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを各々含有)をトランスウェルのapical側へ0.5mL、basal側へ1.5mL入れ、これにCacо-2細胞6.6×104個を播種して37℃、5%CO2の条件で静置培養し、細胞が容器内底面に定着した後に、更に21日間以上培養してCacо-2細胞層を形成させ、被験試料の適用に供した。
【0059】
〔2.被験試料〕
・アスコルビン酸(富士フィルム和光純薬製):あらかじめハンクス液(HBSS)に所定濃度で溶解しておき、適用時の濃度がアスコルビン酸として880μg/mLとなるように、Cacо-2細胞層への適用時のHBSSに添加した。
・リポソーム化されたアスコルビン酸(商品名「Vitamin C Zeal」、Aurea Biolabs製):あらかじめハンクス液(HBSS)に所定濃度で溶解しておき、適用時の濃度がアスコルビン酸として880μg/mLとなるように、Cacо-2細胞層への適用時のHBSSに添加した。
・ドラゴンヘッドエキス末(商品名「ドラコベル Nu」、エイチ・ホルスタイン製):あらかじめハンクス液(HBSS)に所定濃度で溶解しておき、適用時の濃度がドラゴンヘッドの抽出物として18μg/mLとなるように、Cacо-2細胞層への適用時のHBSSに添加した。
【0060】
〔3.適用〕
トランスウェルに形成させた後、内側(apical側)及び外側(basal側)の培地をハンクス液(HBSS)に交換し、更にトランスウェル内側(apical側)に被験試料を添加し、37℃、5%CO2の条件で2時間静置し、その後に透過液を分取した。なお、透過試験の試験前及び試験後に、ミリセル(Millicell)ERS-2抵抗値測定システム(MERCK製)を使用して細胞層の電気抵抗値を測定し、いずれも250Ω・cm2以上であることを確認した。
【0061】
〔4.定量〕
回収した透過液中に含まれるアスコルビン酸含量は、ビタミンC定量キット(コスモバイオ製)を使用して測定した。
【0062】
その結果、
図2に示されるように、以下のことが明らかとなった。
【0063】
(1)
図2に示されるように、アスコルビン酸を濃度880μg/mLで2時間適用した場合、Cacо-2細胞層を透過したアスコルビン酸の透過量は1.07μgであった。それに対して、更にドラゴンヘッドエキス末をドラゴンヘッドの抽出物として濃度18μg/mLで併用して適用すると、その透過量が1.53μgに増加した。
(2)
図2に示されるように、リポソーム化されたアスコルビン酸を濃度880μg/mLで2時間適用した場合、Cacо-2細胞層を透過したアスコルビン酸の透過量は2.22μgであった。それに対して、更にドラゴンヘッドエキス末をドラゴンヘッドの抽出物として濃度18μg/mLで併用して適用すると、その透過量が2.59μgに増加した。
【0064】
以上から、ドラゴンヘッドの抽出物には、Caco-2細胞層を用いた吸収性評価系においてアスコルビン酸の透過量を増加させる作用効果があることが明らかとなった。また、アスコルビン酸をリポソーム化することによってもその吸収性は向上するが、ドラゴンヘッドの抽出物の併用適用により、アスコルビン酸の透過量は更なる増加を示した。よって、ドラゴンヘッドの抽出物には、リポソーム化したことによる吸収機構とは異なる、おそらくはビタミンCトランスポーターの発現量の調整により、そのような吸収性の増加が起こると考えられた。
【0065】
<試験例3>
ドラゴンヘッドの抽出物がビタミンCの吸収性にどのような影響を与えるかを調べた。具体的には、以下に示すようにして、成人ボランティア男性にビタミンCとドラゴンヘッドの抽出物を含む顆粒を摂取してもらったときの血清アスコルビン酸濃度の推移を調べた。
【0066】
〔1.試験方法〕
本試験では、社外倫理委員会で審議及び承認を得たうえで、プラセボ対象ランダム化並行群間単盲検比較試験を実施した。具体的には、ビタミン製剤やビタミン高配合の食品、嗜好品を常用しておらず、20歳以上55歳以下の健康な日本人の男性ボランティアのうち、試験責任医師が本試験を実施するにあたり適格と判断した男性11名に対して、年齢を指標に無作為法にて2群(試験食A群5名、試験食B群6名)に割り付け、表1に示すそれぞれの試験食を1日1回朝に、1包(2.3g)を水なしで摂取してもらった。
【0067】
【0068】
〔2.検査項目〕
血中のビタミンC量の測定は、試験食摂取前、摂取1、2、3、4、6、8、又は10時間後の8ポイントで血清9mL各1本を採取し、常法に従いHPLC法により、血清アスコルビン酸濃度を測定することにより行った。なお、試験食摂取前の採血は8時間以上の絶食にて実施した。
【0069】
〔3.結果〕
図3には、試験開始前と4週間経過後に、試験食A又は試験食Bを摂取した両被験者群のそれぞれについて、血清アスコルビン酸濃度推移を測定して平均してグラフ化した結果を示す。また、
図4には、
図3のグラフから濃度-時間曲線面積(AUC
0-10(μg・h/ml))を求めた結果を示す。
【0070】
図3、4に示されるように、試験開始前の状態においては、ドラゴンヘッドの抽出物を配合した試験食Aを摂取した場合のほうが、それを配合しない試験食Bを摂取した場合よりも、ビタミンCの血中への吸収性に増加がみられた。更に、試験食の摂取を4週間継続すると、試験食A又は試験食Bを摂取した両被験者群においてもビタミンCの血中濃度の増加傾向がみられた。その増加傾向は、ドラゴンヘッドの抽出物を配合した試験食Aを摂取した被験者群のほうが、ドラゴンヘッドの抽出物を配合しない試験食Bを摂取した被験者群に比べて、より顕著であった。
【0071】
以上から、ヒトにおいても、ドラゴンヘッドの抽出物にはビタミンCの吸収を促す作用効果があることが明らかとなった。
【0072】
[製造例1]
表2に示す原料のうち、香料及び甘味料を除く各原料を流動層造粒機(大川原製作所社製)に投入して、給気温度60℃、排気温度35℃の条件で精製水を均一に噴霧しながら造粒し、更に香料及び甘味料を加えて造粒して顆粒を調製し、本発明にかかるビタミンC補給用組成物を得た。
【0073】
【0074】
[製造例2]
表3に示す原料のうち、香料、甘味料、及びステアリン酸カルシウムを除く各原料を流動層造粒機(大川原製作所社製)に投入して、吸気温度70℃、排気温度35℃の条件で精製水を均一に噴霧しながら造粒し、香料、甘味料、及びステアリン酸カルシウム加えて混合した後、打錠機(菊水社製)用いて打錠圧力1000kg/cm2で打錠して、直径10mm、1500mg/錠の錠剤を調製し、本発明にかかるビタミンC補給用組成物を得た。
【0075】
【0076】
[製造例3]
表4に示す原料を混合し、精製水を加えて全量を1Lとした後、UHT殺菌処理を施した飲料を調製し、本発明のビタミンC補給用組成物を得た。
【0077】