(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063036
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】歯科治療ユニット
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
A61C19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171339
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 香音
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA01
4C052AA10
4C052LL06
4C052LL09
(57)【要約】
【課題】歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品を簡便かつ確実で安全に殺菌あるいは不活性化する歯科治療ユニットを提供すること。
【解決手段】歯科施療時に歯科治療椅子120に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱110が歯科治療椅子120に隣接配置したスピットン130に設けられた歯科治療ユニット100であって、殺菌不活化用物品箱110が、歯科治療椅子120の起倒動作に連動して所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構114を備えている歯科治療ユニット100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱が前記歯科治療椅子に隣接配置したスピットンに設けられた歯科治療ユニットであって、
前記殺菌不活化用物品箱が、前記歯科治療椅子の起倒動作と連動して前記所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構を備えていることを特徴とする歯科治療ユニット。
【請求項2】
前記殺菌不活化用物品箱が、前記歯科治療椅子の起倒動作と連動して前記所持物品に対する給気・吸気によって洗浄するエア洗浄機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療ユニット。
【請求項3】
前記エア洗浄機構が、前記スピットンに設けた歯科用インスツルメントのエア源を共有していることを特徴とする請求項2記載の歯科治療ユニット。
【請求項4】
前記紫外線照射機構と前記エア洗浄機構とを操作する操作スイッチが、前記歯科治療椅子または前記スピットンに設けられた施術者のワークテーブルに設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の歯科治療ユニット。
【請求項5】
前記紫外線照射機構と前記エア洗浄機構が、前記所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させる制御部に接続されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯科治療ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療ユニットに関するものであって、特に、歯科施療時に患者の所持物品を殺菌することが可能な歯科治療ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科治療ユニットとして、歯科用器具を介した病原菌、あるいはウイルス等の病原体の感染を防止するために、歯科用器具に付着した病原体を紫外線の照射によって殺菌する殺菌装置を備えたものがある。
例えば、特許文献1には、ハンドピース2などの歯科用器具をドクターテーブルBに着脱自在な取付可動ホルダー1によって支持した状態で紫外線照射位置に自動で移動して紫外線を照射することによりハンドピース2などの歯科用器具に付着した病原体を殺菌する殺菌装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-154300号公報(特に、特許請求の範囲、
図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した歯科治療ユニットに組み込まれた殺菌装置は、歯科医師、歯科衛生士など施術者が使用するハンドピース2などの歯科用器具に付着した病原菌、あるいはウイルス等の病原体を殺菌あるいは不活性化するためのものであり、このような殺菌装置では、患者が所持する眼鏡、マスク等の物品に付着している虞のある病原体を殺菌あるいは不活性化することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品を簡便かつ確実で安全に殺菌あるいは不活性化する歯科治療ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱が前記歯科治療椅子に隣接配置したスピットンに設けられた歯科治療ユニットであって、前記殺菌不活化用物品箱が、前記歯科治療椅子の起倒動作と連動して前記所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構を備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載された歯科治療ユニットの構成に加えて、前記殺菌不活化用物品箱が、前記歯科治療椅子の起倒動作と連動して前記所持物品に対する給気・吸気によって洗浄するエア洗浄機構を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載された歯科治療ユニットの構成に加えて、前記エア洗浄機構が、前記スピットンに設けた歯科用インスツルメントのエア源を共有していることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3に記載された歯科治療ユニットの構成に加えて、前記紫外線照射機構と前記エア洗浄機構とを操作する操作スイッチが、前記歯科治療椅子または前記スピットンに設けられた施術者のワークテーブルに設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載された歯科治療ユニットの構成に加えて、前記紫外線照射機構と前記エア洗浄機構が、前記所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させる制御部に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の歯科治療ユニットによれば、歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱が歯科治療椅子に隣接配置したスピットンに設けられていることにより、歯科施療時に患者が歯科治療椅子に着座したままで患者が所持する眼鏡、マスク、小物等の物品を最も手の届く身近な場所で殺菌あるいは不活性化処理するため、歯科施療時に同時並行して他の患者の所持物品と取り違えることなく保管したままで患者の所持する眼鏡、マスク、小物等の物品を簡便に殺菌あるいは不活性化することができる。
また、殺菌不活化用物品箱が、歯科治療椅子の起倒動作と連動して所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構を備えていることにより、患者の所持物品に付着した病原体を歯科診療室内に拡散させることなく殺菌不活化用物品箱内に封じ込んだ状態で殺菌あるいは不活性化処理するため、患者の所持物品に付着している虞のある病原体を歯科施療時に患者に付着させることなく患者の所持物品を確実かつ安全に殺菌あるいは不活性化することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の歯科治療ユニットによれば、殺菌不活化用物品箱が、歯科治療椅子の起倒動作と連動して所持物品に対する給気・吸気によって洗浄するエア洗浄機構を備えていることにより、患者の所持物品に付着した病原体を歯科診療室内に拡散させることなく殺菌不活化用物品箱内に封じ込んだ状態で給気・吸気によって所持物品から除去すると共に殺菌あるいは不活性化処理するため、患者の所持物品に付着している虞のある病原体を歯科施療時に患者に付着させることなく患者の所持物品を確実かつ安全に殺菌あるいは不活性化することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の歯科治療ユニットによれば、請求項2記載の歯科治療用ユニットが奏する効果に加えて、エア洗浄機構が、歯科治療椅子またはスピットンに設けた歯科用インスツルメントのエア源を共有していることにより、エア洗浄機構に必要となるエア源を別途設ける必要がないため、歯科治療ユニットに既設のエア源を活用することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の歯科治療ユニットによれば、請求項2または請求項3記載の歯科治療用ユニットが奏する効果に加えて、紫外線照射機構とエア洗浄機構とを操作する操作スイッチが、歯科治療椅子またはスピットンに設けた施術者のワークテーブルに設けられていることにより、歯科施療時に患者が歯科治療椅子に着座した後、施術者が歯科治療椅子またはスピットンに設けたワークテーブルの操作スイッチにより歯科治療椅子の起倒動作に連動させて操作可能となるため、別途の余分な操作スイッチを操作することなく簡便に殺菌あるいは不活性化処理を開始させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明の歯科治療ユニットによれば、請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯科治療用ユニットが奏する効果に加えて、紫外線照射機構とエア洗浄機構が、所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させる制御部に接続されていることにより、この制御部が、歯科治療椅子の起倒動作と連動して紫外線照射機構とエア洗浄機構との処理タイミングを制御するため、所持物品に付着2している虞のある病原体を確実に殺菌あるいは不活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である歯科治療ユニットの概要を示す斜視図。
【
図2】
図1に示す歯科治療ユニットのシステム構成図。
【
図3】
図1に示す歯科治療ユニットに用いた殺菌不活化用物品箱を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の歯科治療ユニットは、歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱が歯科治療椅子に隣接配置したスピットンに設けられ、殺菌不活化用物品箱が歯科治療椅子の起倒動作と連動して所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構を備え、歯科施療時に歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を簡便かつ確実で安全に殺菌あるいは不活性化するものであれば、その具体的な実施形態は、如何なるものであっても良い。
なお、ここで本発明で意味するところの「不活化」、「不活性化」とは、コロナウイルス等のウイルスの毒性を失わせることである。
【0018】
まず、本発明の歯科治療ユニットは、歯科治療椅子とこの隣接配置したスピットンと、このスピットンに設けた歯科治療椅子に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱とを備えていれば、如何なるユニット形態であっても何ら構わない。
【0019】
たとえば、本発明の歯科治療ユニットに用いる歯科治療椅子としては、歯科診療室内に設置したスピットンと別体または一体に隣接配置されていれば良く、患者の臀部を支持するコンターシートと、このコンターシートの後端に連結され患者の背中を支持するバックレストとを備えているが、コンターシートの前端に連結され患者のふくらはぎを支持するレッグレストと、このレッグレストの下端に連結され患者の足の足置きとなるステップとをさらに備えていても良いし、歯科医師、歯科衛生士など施術者が使用するハンドピースなどの歯科用インスツルメントを備えたワークテーブルが付設されたもの、あるいは、コンターシートが床面に載置した昇降自在な基台に設けられたもの、移動自在な車輪を有してスピットンを設けた床面と合体自在に組み付けられるものなどであって良い。
【0020】
そして、本発明の歯科治療ユニットに用いるスピットンとしては、歯科施療時に患者自身が洗浄水で口腔内を洗浄可能なスピットン鉢、患者の口腔内を照明する照明器具、歯科医師、歯科衛生士など施術者が使用するハンドピースなどの歯科用インスツルメントを備えたワークテーブルが付設されたもの以外に、前述した歯科治療椅子を昇降自在に組付けられたものであっても良い。
【0021】
さらに、本発明の歯科治療ユニットに用いる歯科治療椅子の起倒操作、および、スピットンの洗浄水供給操作、照明操作、殺菌不活化用物品箱の殺菌あるいは不活化操作などを制御する制御部は、ワークテーブル以外に、歯科治療椅子およびスピットンのいずれに組み込まれていても良く、特に、殺菌不活化用物品箱の紫外線照射操作については、歯科医師、歯科衛生士など施術者が使用するハンドピースなどの歯科用インスツルメントを備えたワークテーブルから操作可能であれば、さらに利便性を発揮することができる。
【0022】
本発明の歯科治療ユニットに用いる殺菌不活化用物品箱は、基本的には、歯科施療の開始時の歯科治療椅子の起倒動作と連動して作動するように制御するが、歯科施療時に患者自身が洗浄水で口腔内を洗浄する洗浄動作に伴う歯科治療椅子の起倒動作と連動して制御しても良いし、歯科治療の開始時から終了時まで洗浄動作と無関係に紫外線照射操作可能に制御しても何ら構わない。
【0023】
また、殺菌不活化用物品箱の具体的な装置構成については、蓋体で開閉自在なる箱本体内に所持物品を殺菌する紫外線照射機構が組み込まれていれば良いが、箱本体内に所持物品に対する給気・吸気によって洗浄するエア洗浄機構をさらに組み込み、このエア洗浄機構を所持物品に対して上方部位から下方部位に給気して洗浄できるように配置した場合には所持物品の全周囲に亘って殺菌・不活性化が可能となる。
【0024】
さらに、殺菌不活化用物品箱の具体的な装置構成については、箱本体内に所持物品を収容係止する物品係止フックを付設したり、さらに、蓋体に歯科治療の開始時から終了時まで殺菌中であることを表示する殺菌作動光源を設けた場合には、殺菌動作状況を簡便に視認することができる。
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の歯科治療ユニットに係る実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0026】
<1.歯科治療ユニットの概要>
図1は、本発明の一実施形態である歯科治療ユニット100の概要を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す歯科治療ユニット100のシステム構成図であり、
図3は、
図1に示す歯科治療ユニット100に用いた殺菌不活化用物品箱110を説明する断面図である。
まず、
図1乃至
図3に基づいて、本発明の一実施例である歯科治療ユニット100について説明する。
図1および
図2に示すように、本発明の一実施例である歯科治療ユニット100は、殺菌不活化用物品箱110と歯科治療椅子120とスピットン130とワークテーブル140から構成されている。
【0027】
<殺菌不活化用物品箱110の具体的構成について>
本実施例の歯科治療ユニット100に設置する殺菌不活化用物品箱110は、箱本体111と紫外線照射機構114とエア洗浄機構115とを備えている。
【0028】
そして、この殺菌不活化用物品箱110の箱本体111には、患者の所持物品(図示しない)が収容される物品収容部に蝶番を介してこの物品収容部の上部に開閉可能な蓋体112が連結されている(
図3参照)。
【0029】
また、この箱本体111の物品収容部は、内面側の壁を構成する光透過性の内壁と外面側の壁を構成する外壁とからなる2重の壁構造により囲繞して構成され、これらの内壁と外壁との間の空間に紫外線照射機構114の後述する紫外線光源114a、エア洗浄機構115の給気分岐配管が配置されている。
【0030】
さらに、この箱本体111の物品収容部を構成する内壁には、複数の物品係止フック113が設けられている。
例えば、内壁に対向配置された一対の物品係止フック113を設けた場合、その一対の物品係止フック113をマスクの一対の耳掛け用ゴムをそれぞれ係止するフックとして用いることができる。
【0031】
<紫外線照射機構114>
本実施例において殺菌不活化用物品箱110に配置する紫外線照射機構114は、後述する制御部141に接続された複数の紫外線光源114aを有している。
そして、この複数の紫外線光源114aは、箱本体111の内壁と外壁との間に形成された側面側および底面側の壁面空間にそれぞれ設けられている。
なお、紫外線光源114aは、前述したスピットン130に供給される電力を利用して駆動される。
また、紫外線光源114aは、例えば、特定のウイルスを不活性化したい場合、特定のウイルスを不活性化するのに任意の波長の紫外線を照射するものを用いるとよい。
【0032】
<エア洗浄機構115>
本実施例において殺菌不活化用物品箱110に配置するエア洗浄機構115は、患者の所持物品を給気によって洗浄するブロア洗浄機構115aと、患者の所持物品を吸気によって洗浄するバキューム洗浄機構115bと、を有している。
【0033】
すなわち、前者のブロア洗浄機構115aは、歯科用インスツルメント143の給気エア源ACから分岐した給気分岐配管が電磁弁を介して箱本体111内に接続されたものである。
【0034】
他方、後者のバキューム洗浄機構115bは、歯科用バキューム151の吸気エア源VPから分岐した吸気分岐配管が電磁弁を介して箱本体111内に接続されたものである。
【0035】
<歯科治療椅子120の具体的構成について>
本実施例の歯科治療ユニットにおける歯科治療椅子120は、スピットン130の側方に隣接して配置されている。
なお、この歯科治療ユニット100における歯科治療椅子120を中心とした施療領域には、無影灯や、種々の歯科用インスツルメント143を着脱自在に保持するワークテーブル140、歯科用バキューム151を着脱自在に保持するアシスタントホルダー、フットスイッチ(図示しない)等が配備されている。
【0036】
また、上述した歯科治療椅子120は、患者の臀部を支持するコンターシート121と、このコンターシート121の後端に連結され患者の背中を支持するバックレスト122と、コンターシート121に対してバックレスト122を起倒動作させる椅子起倒機構123とを備えている。
【0037】
さらに、この椅子起倒機構123は、例えば、モータ(不図示)を駆動源としてバックレスト122を起倒動作させるものであり、モータを介して制御部141に接続されている。
【0038】
<スピットン130の具体的構成について>
本実施例の歯科治療ユニットにおけるスピットン130には、内部に不図示の給排水機構を備え、給排水機構の給水管に接続された吐水栓131と、患者のうがい水などを受けるスピットン鉢132が上部に設けられている。
そして、本実施例では、このスピットン130の上部、さらに具体的には、スピットン鉢132の近傍に、前述した殺菌不活化用物品箱110が設けられている(
図1参照)。
これにより、殺菌不活化用物品箱110が、歯科施療時に患者が歯科治療椅子120に着座したままで患者が所持する眼鏡、マスク、小物等の物品を最も手の届く身近な場所で殺菌あるいは不活性化処理することができるようになっている。
なお、本実施例では、この殺菌不活化用物品箱110をスピットン130の上部に設けたが、スピットン130の患者側の側壁部組み込むなどして配置しても良い。
<ワークテーブル140の具体的構成について>
【0039】
本実施例の歯科治療ユニットにおけるワークテーブル140は、前述したスピットン130から間接アームを介して歯科治療椅子120を跨ぐように取り付けられ、歯科治療ユニット100の全体を制御する制御部141と、複数の操作スイッチ142と、複数の歯科用インスツルメント143とを備えている。
なお、本実施例では、このワークテーブル140がスピットン130に取り付けられているが、前述した歯科治療椅子120に取り付けられていても何ら差し支えない。
【0040】
<制御部141>
本実施例の歯科治療ユニットにおける制御部141は、前述したワークテーブル140の内部に組み込まれた状態で設置され、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および、制御プログラムあるいは各種設定内容等を記憶するメモリを有して構成される。
この制御部141は、歯科治療椅子120の動作、歯科用インスツルメント143の動作に加えて、紫外線光源114aの動作、紫外線照射機構114の動作、さらにはエア洗浄機構115の動作を制御する。
なお、本実施例では、この制御部141がワークテーブル140に取り付けられているが、前述したスピットン130に取り付けられていても何ら差し支えない。
【0041】
前述した制御部141のメモリには、紫外線照射機構114とエア洗浄機構115によって、所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させる制御プログラムが記憶されている。
なお、所定の順序とはここでは例えば、紫外線照射機構114とエア洗浄機構115が、所持物品に対して最初に紫外線照射処理を実行し、次いで給気処理を実行し、その後吸気処理を実行する順序がある。このような順序によれば、毒性が失われていない病原体をエア洗浄によって殺菌不活化用物品箱110内に拡散させることなく紫外線によって殺菌あるいは不活性化された病原体をエア洗浄によって除去することができる。
他の順序としては例えば、所持物品に対して最初に給気処理を実行し、次いで吸気処理を実行し、その後紫外線照射処理を実行する順序がある。このような順序によれば、付着している病原体をエア洗浄によって減らされた状態の所持物品に対して紫外線を照射することができ、所持物品に付着している少ない数の病原体に対して紫外線を確実に照射することができる。
【0042】
<操作スイッチ142>
ワークテーブル140に設けられた操作スイッチ142は、歯科治療椅子120、または、歯科用インスツルメント143を操作するためのものであり、制御部141に接続されている。
例えば、施術者によって歯科治療椅子120の起倒動作に対応した操作スイッチ142を操作されると、制御部141が、操作スイッチ142の操作内容に応じた信号を椅子起倒機構123のモータに出力し、歯科治療椅子120の起倒動作が実行される。
なお、本実施例では、施術者によってバックレスト122を倒す操作スイッチ142が操作されると、バックレスト122が倒れるように歯科治療椅子120が動作されると共に、この操作スイッチ142の操作をトリガとして紫外線照射機構114とエア洗浄機構115が動作される。
【0043】
<所持物品の殺菌あるいは不活性化処理の流れについて>
ここで、歯科治療ユニット100による患者の所持物品に対する殺菌または不活性化処理の流れについて説明する。
【0044】
バックレスト122が起こされた状態の歯科治療椅子120に着座した患者によって殺菌不活化用物品箱110内に例えばマスク等の歯科施療のために外す必要があると共に病原体が付着している虞がある所持物品が収容されると、施療を開始するため、施術者によって起こされた状態のバックレスト122を倒す操作スイッチ142が操作され、制御部141のメモリに記憶された制御プログラムによって以下の一連の処理が実行開始される。
なお、ここで説明する処理の流れは一例である。
すなわち、紫外線照射機構114とエア洗浄機構115が、所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させることができれば如何なる順序であってもよい。
【0045】
また、この説明では、紫外線照射機構114およびエア洗浄機構115によって実行される各処理の処理時間を30秒間としているが、各処理の処理時間はこの時間に限らない。
例えば、20秒間でもよいし、処理ごとに異なる時間にしてもよい。
なお、各処理の処理時間は、病原体を殺菌あるいは不活性化するのに有効な時間であり、歯科施療時間内に一連の処理が完了できる時間に設定するとよい。
【0046】
施術者によってバックレスト122を倒す操作スイッチ142が操作されると、まず、制御部141は、椅子起倒機構123の不図示のモータを駆動し、バックレスト122を倒す。
このようにして、起こされた状態のバックレスト122が倒されると、倒されたバックレスト122にもたれた患者がスピットン130の上部に設けられた殺菌不活化用物品箱110に対して低い姿勢になる。
このため、殺菌不活化用物品箱110に患者の手が届きにくくなり、患者が蓋体112を開けることが難しくなる。
【0047】
次に、制御部141は、エア洗浄機構115による給気処理を30秒間実行させる。
この給気処理では、制御部141がエア洗浄機構115の電磁弁を開状態にし、30秒経過後に電磁弁を閉状態にする。
この給気処理によって、所持物品に付着しているごみあるいは病原体が所持物品から落とされる。
なお、この給気処理によって、箱本体111の内壁と外壁との間の空間にエアが流れることによって、空間に設置された紫外線光源114aが冷却される。
【0048】
次に、制御部141は、エア洗浄機構115による吸気処理を30秒間実行させる。
この吸気処理によって、所持物品に付着したごみあるいは病原体または所持物品から落とされたごみあるいは病原体が吸気される。
【0049】
次に、制御部141は、紫外線照射機構114の紫外線光源114aよる紫外線照射処理を30秒間実行させる。
この紫外線照射処理によって、所持物品に残る病原体が殺菌あるいは不活性化される。
【0050】
次に、制御部141は、再び、エア洗浄機構115による給気処理、吸気処理をそれぞれ30秒間ずつ実行させた後、一連の処理を終了する。
この再度の給気処理および吸気処理によって、所持物品に付着している殺菌あるいは不活性化された病原体が所持物品から除去される。
【0051】
<本実施例の奏する効果>
上述したような本実施例の歯科治療ユニット100は、歯科施療時に歯科治療椅子120に着座した患者の所持物品に付着した病原体を殺菌あるいは不活性化する殺菌不活化用物品箱110が歯科治療椅子120に隣接配置したスピットン130に設けられていることにより、歯科施療時に同時並行して他の患者の所持物品と取り違えることなく保管したままで患者の所持する眼鏡、マスク、小物等の物品を簡便に殺菌あるいは不活性化することができる。
また、殺菌不活化用物品箱110が、歯科治療椅子120の起倒動作に連動して所持物品に紫外線を照射する紫外線照射機構114を備えていることにより、患者の所持物品に付着している虞のある病原体を歯科施療時に患者に付着させることなく患者の所持物品を確実かつ安全に殺菌あるいは不活性化することができる。
【0052】
また、上述したような本実施例の歯科治療ユニット100は、殺菌不活化用物品箱110が、歯科治療椅子120の起倒動作と連動して所持物品を給気・吸気によって洗浄するエア洗浄機構115を備えていることにより、患者の所持物品に付着している虞のある病原体を歯科施療時に患者に付着させることなく患者の所持物品を確実かつ安全に殺菌あるいは不活性化することができる。
【0053】
また、上述したような本実施例の歯科治療ユニット100は、エア洗浄機構115が、歯科治療椅子120またはスピットン130に設けた歯科用インスツルメント143の給気用の給気エア源ACおよび吸気用の吸気エア源VPを共有していることにより、歯科治療ユニット100に既設の給気エア源ACまたは吸気エア源VPを活用することができる。
【0054】
また、上述したような本実施例の歯科治療ユニット100は、紫外線照射機構114とエア洗浄機構115とを操作する操作スイッチ142が、歯科治療椅子120またはスピットン130に設けた施術者のワークテーブル140に設けられていることにより、歯科施療時に患者が歯科治療椅子120に着座した後、施術者がワークテーブル140の操作スイッチ142により歯科治療椅子120の起倒動作に連動させて操作可能となるため、別途の余分な操作スイッチを操作することなく簡便に殺菌あるいは不活性化処理を開始させることができる。
【0055】
また、上述したような本実施例の歯科治療ユニット100は、紫外線照射機構114とエア洗浄機構115が、所持物品に対する紫外線照射とエア洗浄とを所定の順序で実行させる制御部141に接続されていることにより、所持物品に付着している虞のある病原体を確実に殺菌あるいは不活性化することができる。
【0056】
以上、本発明に係る歯科治療ユニットについて実施例を用いて説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0057】
100 ・・・歯科治療ユニット
110 ・・・殺菌不活化用物品箱
111 ・・・箱本体
112 ・・・蓋体
113 ・・・物品係止フック
114 ・・・紫外線照射機構
114a・・・紫外線光源
115 ・・・エア洗浄機構
115a・・・ブロア洗浄機構
115b・・・バキューム洗浄機構
120 ・・・歯科治療椅子
121 ・・・コンターシート
122 ・・・バックレスト
123 ・・・椅子起倒機構
130 ・・・スピットン
131 ・・・吐水栓
132 ・・・スピットン鉢
140 ・・・ワークテーブル
141 ・・・制御部
142 ・・・操作スイッチ
143 ・・・歯科用インスツルメント
151 ・・・歯科用バキューム