(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063096
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】気泡シールド工法用起泡材、気泡シールド工法
(51)【国際特許分類】
C09K 8/02 20060101AFI20220414BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20220414BHJP
C09K 8/035 20060101ALI20220414BHJP
C09K 23/16 20220101ALI20220414BHJP
【FI】
C09K8/02
E21D9/06 301L
E21D9/06 301M
C09K8/035
B01F17/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171458
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 厚
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 明
【テーマコード(参考)】
2D054
4D077
【Fターム(参考)】
2D054AC06
2D054DA33
4D077AA07
4D077AB20
4D077AC07
4D077BA01
4D077BA07
4D077DB06Y
4D077DB07Y
4D077DC12Y
4D077DC14Y
4D077DC15Y
4D077DC19Y
4D077DC42Y
(57)【要約】
【課題】良好な曳糸性及び発泡性を有する気泡シールド工法用起泡材を提供する。
【解決手段】(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種と、(B)アニオン性界面活性剤と、(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類と、を含む気泡シールド工法用起泡材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
(B)アニオン性界面活性剤と、
(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類と、
を含む気泡シールド工法用起泡材。
【請求項2】
前記(A)及び前記(B)のモル比は、10/90~90/10であることを特徴とする請求項1記載の気泡シールド工法用起泡材。
【請求項3】
(D)水溶性溶剤を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の気泡シールド工法用起泡材。
【請求項4】
前記(D)の含有量は、前記気泡シールド工法用起泡材全体の50重量%以下であることを特徴とする請求項3記載の気泡シールド工法用起泡材。
【請求項5】
(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、(B)アニオン性界面活性剤、(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類、及び(D)水溶性溶剤を含む気泡シールド工法用起泡材を希釈した希釈液を発泡させて気泡を生成し、
前記気泡を、シールド機のカッター及びチャンバー内の少なくとも一方に注入しながら当該シールド機を掘進する、気泡シールド工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡シールド工法用起泡材、及び気泡シールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡シールド工法は、起泡材の発泡により得られた気泡を、シールド機のカッターやチャンバー内に注入しながら掘進する工法である。気泡シールド工法では、カッター等に注入される気泡が掘削土の流動性と止水性を向上させ、かつ、チャンバー内での掘削土の付着を抑制する。これにより、カッターの安定性を保持しつつ掘進をスムーズに行うことができる。
【0003】
注入する気泡は、対象土の粒度によって使用する材を使い分けている(非特許文献1参照)。たとえば、一般的に細粒分が一定量ある場合、陰イオン界面活性剤を主成分とするAタイプ気泡の材を用いる。また、細粒分が少ない砂質~砂礫質土については、カルボキシメチルセルロース(CMC)に代表される粉体の増粘剤を溶解させた液に、Aタイプで使用される起泡材原液を混合して発泡させることで粘性の高い気泡を生成し、粘性により細粒分不足を補うBタイプ気泡の材を用いる。或いは、粗粒な礫質土に対しては、増粘剤に対して、ゲル化作用のある薬剤を発泡時に散布することで、固く非常に強い気泡を作成し、礫を強固にまとめることができるCタイプ気泡の材を用いる。なお、Bタイプ気泡及びCタイプ気泡については、起泡材溶液を調製する際、Aタイプ気泡で必要となる設備に加え、粉体を溶解する設備が別途必要となる。更には、発泡性を確保するため、別途添加材を必要とする場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】気泡シールド工法 技術資料 シールド工法技術協会 (http://shield-method.gr.jp/wp/wp-content/uploads/doc_tec_rf.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な曳糸性及び発泡性を有する気泡シールド工法用起泡材、及び当該気泡シールド工法用起泡材を用いた気泡シールド工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様は、(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種と、(B)アニオン性界面活性剤と、(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類と、を含む気泡シールド工法用起泡材である。
本発明の他の実施態様は、前記(A)及び前記(B)のモル比が、10/90~90/10である気泡シールド工法用起泡材である。
本発明の他の実施態様は、(D)水溶性溶剤を更に含む気泡シールド工法用起泡材である。
本発明の他の実施態様は、前記(D)の含有量が、前記気泡シールド工法用起泡材全体の50重量%以下である気泡シールド工法用起泡材である。
更に、本発明の他の実施態様は、(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、(B)アニオン性界面活性剤、(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類、及び(D)水溶性溶剤を含む気泡シールド工法用起泡材を希釈した希釈液を発泡させて気泡を生成し、前記気泡を、シールド機のカッター及びチャンバー内の少なくとも一方に注入しながら当該シールド機を掘進する、気泡シールド工法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、良好な曳糸性及び発泡性を有する気泡シールド工法用起泡材、及び当該気泡シールド工法用起泡材を用いた気泡シールド工法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0011】
==シールド機==
本実施形態におけるシールド機は、気泡シールド工法に用いられる一般的な機械である。たとえば、
図1に示すように、シールド機1は、スキンプレート2、隔壁3、カッター4、カッターモーター5、気泡注入管6、スクリューコンベア7、土圧センサ8、チャンバー9、及び支持アーム10を備えている。
【0012】
スキンプレート2は、シールド機1の外殻部となる鋼製の筒状部材である。隔壁3は、スキンプレート2に設けられており、スキンプレート2の前側部分においてチャンバー9を区画する。カッター4は、回転によって地中を掘削する部分であり、スキンプレート2よりも前方に配設されている。カッターモーター5は、カッター4を回転させるための駆動源であり、隔壁3の後側に設けられている。支持アーム10は、カッターモーター5の駆動力をカッター4に伝達するための部材である。カッター4を回転させながら、シールド機1を掘進することで、土壌を掘削することができる。
【0013】
気泡注入管6は、発泡装置(図示なし)で起泡材を発泡して得られたシェービングクリーム状の気泡を注入するための部材である。
図1の例において、気泡注入管6の先端はカッター4の前方に位置しているため、気泡はカッター4に向けて注入される。カッター4で掘削された掘削土は、カッター4の回転により気泡と混合され、流動性が高まった状態(いわゆる、気泡混合土の状態)でチャンバー9に流入する。なお、気泡注入管の配置や構造を変更することにより、気泡をチャンバー9内のみに注入させることも可能であるし、カッター4及びチャンバー9内の両方に注入させることも可能である。
【0014】
スクリューコンベア7は、チャンバー9内に流入した掘削土をシールド機1の後側に排出する装置である。土圧センサ8は、チャンバー9内に流入した掘削土の圧力を測定する部材である。土圧センサ8で測定された掘削土の圧力に応じて、シールド機1の推進力やスクリューコンベア7による掘削土の排出量が調整される。
【0015】
==気泡シールド工法用起泡材==
本実施形態に係る気泡シールド工法用起泡材は、(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種と、(B)アニオン性界面活性剤と、(C)水溶性無機金属塩類と、を含む。
【0016】
[両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤]
両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤は、気泡シールド工法用起泡材に起泡性を付与するための剤である。また、両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤は、(B)アニオン性界面活性剤との相互作用により紐状ミセルを形成することで、増粘作用を発揮し、気泡シールド工法用起泡材に曳糸性を付与するための剤である。両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤は、環境毒性が低いため、取り扱いが容易である。
【0017】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型、リン酸型等が挙げられる。両性界面活性剤は、ベタイン型が好ましい。ベタイン型の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。ベタイン型としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)がより好ましい。両性界面活性剤は、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
アミンオキシド型界面活性剤としては、ドデシルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。アミンオキシド型界面活性剤は、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本実施形態において、(A)成分は、両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種である。曳糸性の観点からは、両性界面活性剤がより好ましい。なお、両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤を併用してもよい。
【0020】
(A)成分は、気泡シールド工法用起泡材全体の重量に対して3~40重量%であることが好ましく、5~30重量%がより好ましい。また、(A)成分は、気泡シールド工法用起泡材の希釈液全体の重量に対して0.05~4.00重量%であることが好ましく、0.20~1.60重量%がより好ましく、0.30~1.00重量%が更に好ましい。希釈液とは、気泡シールド工法用起泡材(原液)を水で希釈したものでる。たとえば、希釈液濃度1%とは、溶液1容積中に原液が0.01容積、希釈水が0.99容積である。
【0021】
(A)成分及び(B)成分のモル比は、10/90~90/10であり、好ましくは20/80~80/20であり、より好ましくは30/70~70/30である。また、(A)成分及び(B)成分の重量比は、10/90~90/10であり、好ましくは20/80~80/20であり、より好ましくは30/70~70/30である。
【0022】
[アニオン性界面活性剤]
(B)成分であるアニオン性界面活性剤は、(A)成分と同様、気泡シールド工法用起泡材に起泡性を付与するための剤であり、且つ気泡シールド工法用起泡材に曳糸性を付与するための剤である。上述の通り、アニオン性界面活性剤は、(A)成分との相互作用により紐状ミセルを形成することで、増粘作用を発揮する。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤における塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、上記のアニオン性界面活性剤のうちアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均1~10モルのエチレンオキシドを付加したものがより好ましく、炭素数12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均2モルのエチレンオキシドを付加したものが更に好ましい。
【0025】
(B)成分は、気泡シールド工法用起泡材全体の重量に対して3~40重量%であることが好ましく、5~30重量%がより好ましい。また、(B)成分は、気泡シールド工法用起泡材の希釈液全体の重量に対して0.05~4.00重量%であることが好ましく、0.20~1.60重量%がより好ましく、0.30~1.00重量%が更に好ましい。
【0026】
[水溶性無機金属塩類]
(C)成分である水溶性無機金属塩類は、希釈後の低濃度下においても増粘作用を発揮させるための剤である。水溶性無機金属塩類は、少なくとも1種類の多価金属塩を含む。
【0027】
多価金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、鉄塩などが挙げられる。これらのうち、マグネシウム塩がより好ましい。水溶性無機金属塩類は、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、水溶性無機金属塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩など1価の金属塩を含んでいてもよい。
【0028】
(C)成分は、気泡シールド工法用起泡材全体の重量に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。また、(C)成分は、気泡シールド工法用起泡材の希釈液全体の重量に対して0.01~2.20重量%であることが好ましく、0.04~0.88重量%がより好ましく、0.06~0.55重量%が更に好ましい。
【0029】
また、(C)成分と、(A)成分及び(B)成分の合計とのモル比は、((A)成分+(B)成分)/(C)成分=10/90~90/10であり、好ましくは20/80~80/20であり、より好ましくは30/70~70/30である。また、(C)成分と、(A)成分及び(B)成分の合計との重量比は、((A)成分+(B)成分)/(C)成分=95/5~50/50であり、好ましくは93/7~60/40であり、より好ましくは90/10~65/35である。
【0030】
[水溶性溶剤]
本実施形態に係る気泡シールド工法用起泡材は、(D)成分である水溶性溶剤を含んでもよい。(A)成分~(C)成分を含む気泡シールド工法用起泡材の原液は、ゲル化や凝集物が発生する可能性がある。水溶性溶剤は、このようなゲル化や凝集物の発生を抑制し、均一性を維持するための剤である。一方、水溶性溶剤は、気泡シールド工法用起泡材の曳糸性及び発泡性には影響を与えることが無い。すなわち本実施形態に係る気泡シールド工法用起泡材においては、任意成分である。
【0031】
水溶性溶剤としては、炭素数2~4の一価アルコール、炭素数2~6の多価アルコール、グリコールエーテル系溶剤等、有機溶剤が挙げられる。具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等である。これらのうち、エタノール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。水溶性溶剤は、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(D)成分は、気泡シールド工法用起泡材全体の重量に対して50重量%以下であることが好ましく、0.1~30重量%であることがより好ましく、0.3~20重量%であることが更に好ましい。
【0033】
[その他の添加剤]
気泡シールド工法用起泡材は、その機能に影響を及ぼさない範囲で適宜の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、たとえば長鎖アルコールがある。長鎖アルコールは、気泡の安定性(たとえば泡の均一性や連続性)を高めることができる。長鎖アルコールとしては、炭素数8~30の炭化水素基をもつ脂肪族アルコールが挙げられ、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール及びノニルシクロヘキシルアルコール等の一価アルコールが挙げられる。これらの脂肪族アルコールは直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0034】
==気泡シールド工法==
本実施形態に係る方法は、(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、(B)アニオン性界面活性剤、(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類、及び(D)水溶性溶剤を含む気泡シールド工法用起泡材を希釈した希釈液を発泡させて気泡を生成し、気泡を、シールド機のカッター及びチャンバー内の少なくとも一方に注入しながら当該シールド機を掘進する。
【0035】
たとえば、(A)成分~(D)成分を含む気泡シールド工法用起泡材の原液と水を混合した希釈液を発泡装置に投入する。発泡装置は、希釈液を発泡させて気泡を生成し、
図1に示したシールド機1の気泡注入管6に注入する。気泡は、気泡注入管6を介してカッター4に注入される。この状態でシールド機1を掘進することにより、掘削土と気泡が混合された気泡混合土が生成される。なお、気泡シールド工法用起泡材の原液と水とは発泡装置内で混合されてもよい。また、上述の通り、シールド機(気泡注入管)は、気泡がチャンバー内に注入されるような構成となっていてもよい。また、希釈液にあらかじめ不溶化材を混合して発泡してもよいし、気泡混合土に対して不溶化材を添加してもよい。不溶化材は、掘削土に含まれる重金属類を不溶化するものである。また、本実施形態に係る方法において、希釈液の発泡倍率は50倍以下が好ましく、2~25倍の範囲がより好ましい。
【実施例0036】
==気泡シールド工法用起泡材の曳糸性及び発泡性==
本実施例では、本明細書に開示された気泡シールド工法用起泡材が、優れた曳糸性及び発泡性を有することを示す。
【0037】
[起泡材の製造]
表1に記載の所定の割合で、水と(A)成分を混合し(工程1)、次いで(B)成分を添加工合した(工程2)。この時、必要に応じて(B)成分が融解するよう加温しながら混合した。そして(C)成分を添加混合すること(工程3)により起泡材を作製した。
【0038】
[評価方法]
(曳糸性)
起泡材の希釈液100mLを、200mLビーカーに入れ、直径約6mmのガラス棒をビーカー底中央に垂直に立てた。その状態からガラス棒を約1秒間で引き抜き、ガラス棒先端が液面から出た後の糸引きの有無を目視で評価した。なお、一の実施例または一の比較例において、希釈濃度が異なる3種類の希釈液(1%、5%、10%)を準備し、曳糸性の評価を行った。評価は、希釈濃度1%、5%、10%の希釈液のうち、一つでも糸引きが見られた場合を「〇」と評価し、全てにおいて糸引きが見られなかった場合を「×」と評価した。
【0039】
(発泡性)
コンプレッサーにて圧縮した空気と、その空気と同じ圧力の起泡材の3%希釈液を、セラミックボールが充填された筒内で二流体混合することで発泡させ気泡を得た。得られた気泡の重量Agと、体積Bmlを測定し、式1で発泡倍率を算出した。
発泡倍率(倍)=(気泡の体積Bml)/(気泡の重量Ag)・・・式1
【0040】
発泡倍率が6倍以上でも安定した発泡が可能であった場合を「○」と評価し、発泡倍率が6倍以上の場合に安定した発泡が不可能であった場合を「×」と評価した。なお、安定した発泡とは、連続して発泡し、且つ気泡が均一な状態をいう。
【0041】
【0042】
表1から明らかなように、実施例1の起泡材は、曳糸性及び発泡性のいずれの評価も「〇」となった。一方、比較例1~3の起泡材は、曳糸性または発泡性のいずれかの評価が「×」となった。すなわち、これらの実験結果から、(A)両性界面活性剤、(B)アニオン性界面活性剤、及び(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類を含む起泡材は、曳糸性及び発泡性に優れることが明らかとなった。
【0043】
==(D)成分を含む場合の均一性==
本実施例では、本明細書に開示された気泡シールド工法用起泡材が、優れた曳糸性、発泡性、及び均一性を有することを示す。
【0044】
[起泡材の製造]
表2に記載の所定の割合で、水と(D)成分を混合し(工程1)、(A)成分を添加混合し(工程2)、次いで(B)成分を添加工合した(工程3)。この時、必要に応じて(B)成分が融解するよう加温しながら混合した。そして(C)成分を添加混合すること(工程4)により起泡材を作製した。
【0045】
[評価方法]
(曳糸性及び発泡性)
実施例1、比較例1~3と同様の方法により評価を行った。
【0046】
(均一性)
希釈前の原液が1剤であり、25℃で分離せず安定しているか否かを目視で評価した。1剤であり安定している場合は、「○」と評価し、1剤でない、あるいは分離している場合は、「×」と評価した。なお、「安定している」状態は、原液中にゲルや凝集物が生じていない状態である。
【0047】
【0048】
表2から明らかなように、実施例2~25の起泡材は、曳糸性、発泡性、及び均一性のいずれの評価も「〇」となった。一方、比較例4~6の起泡材は、(D)成分を含むことから均一性の評価は「〇」となったが、いずれも曳糸性の評価が「×」となった。すなわち、これらの実験結果から、(A)両性界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、(B)アニオン性界面活性剤、及び(C)少なくとも1種類の多価金属塩を含む水溶性無機金属塩類を含む起泡材は、曳糸性及び発泡性に優れることが明らかとなった。また、(A)成分~(C)成分を含む気泡シールド工法用起泡材が、原液の状態で(D)水溶性溶剤を更に含むことで、均一性も得られることが明らかとなった。