(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063125
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】バッテリパックの支持装置、及び電動トラック
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20220414BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20220414BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220414BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 Z
H01M2/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171501
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA06
3D203BA07
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA21
3D203DB02
3D203DB05
3D203DB06
3D235AA06
3D235BB06
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD37
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF02
3D235FF03
3D235FF06
3D235FF21
3D235HH26
5H040AA06
5H040AS07
5H040AT06
5H040CC59
(57)【要約】
【課題】側突時におけるバッテリパックの保護性能を高めつつ、車載機器の搭載性を確保する。
【解決手段】車両3のラダーフレーム2を構成するサイドレール21の下方に搭載され、車幅方向D2の外側にそれぞれ向く一対の側面41を有し、側面41がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に位置するバッテリパック4の支持装置1は、バッテリ側ブラケット5とフレーム側ブラケット6とを含む。バッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の側面41と対向する対向面を有し、バッテリパック4を収容する。フレーム側ブラケット6は、バッテリ側ブラケット5とサイドレール21とを連結する。バッテリ側ブラケット5は、対向面と反対側の面である外側面52において車載機器10を搭載する機器搭載部9を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラダーフレームを構成するサイドレールの下方に搭載され、車幅方向外側にそれぞれ向く一対の側面を有し、前記側面が前記サイドレールよりも車幅方向外側に位置するバッテリパックの支持装置であって、
前記側面と対向する対向面を有し、前記バッテリパックを収容するバッテリ側ブラケットと、
前記バッテリ側ブラケットと前記サイドレールとを連結するフレーム側ブラケットと、を含み、
前記バッテリ側ブラケットは、前記対向面と反対側の面である外側面において車載機器を搭載する機器搭載部を備える
ことを特徴とする、バッテリパックの支持装置。
【請求項2】
前記機器搭載部は、前記対向面に溶接された頭部と前記頭部から前記外側面よりも車幅方向外側に突出するネジ部とを有する溶接ボルトを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のバッテリパックの支持装置。
【請求項3】
前記機器搭載部は、前記対向面に溶接された溶接ナットを含む
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリパックの支持装置。
【請求項4】
前記バッテリ側ブラケットは、前記外側面と連続して設けられて前記外側面と角部をなす連続面を有し、
前記機器搭載部は、前記外側面から前記連続面にかけての前記角部に設けられた
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリパックの支持装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリパックの支持装置を含む
ことを特徴とする、電動トラック。
【請求項6】
前記車載機器は、前記バッテリパックに外部から給電するための充電口が設けられた筐体を含む
ことを特徴とする、請求項5に記載の電動トラック。
【請求項7】
前記車載機器は、車幅方向外側の物体を検知するセンサを含む
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の電動トラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両駆動用のバッテリパックを支持する支持装置、及びこの支持装置を含む電動トラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷を低減する観点から、駆動用のバッテリの電力をモータに供給することで走行する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両の開発が進んでいる。近年では、トラック等の商用車の分野においても、電動車両の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。このような電動の商用車においては、コスト低減の観点から、乗用車に用いられる汎用バッテリパックを適用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗用車向けのバッテリパックは、車体の内部に搭載されることを前提としているため、その筐体自体の耐荷重強度が比較的低いという課題がある。一方で、トラック等の商用車において、ラダーフレームの下方に配置されるバッテリパックには側突時に高い衝撃荷重が印加されうることから、バッテリパックを支持する支持装置に高い耐荷重強度が要求される。
【0005】
また、一般にラダーフレームを備えた車両では、ホイールベース間におけるラダーフレームの側方(車幅方向外側)のスペースが、低電圧バッテリや側方センサ等の様々な車載機器の搭載スペースとして利用される。これに対し、ラダーフレームの下方にバッテリパックが配置された場合は、バッテリパックによって車載機器の搭載スペースが減少するため、車載機器の搭載性が悪化する虞もある。
【0006】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、側突時におけるバッテリパックの保護性能を高めつつ、車載機器の搭載性を確保することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
(1)本適用例に係るバッテリパックの支持装置は、車両のラダーフレームを構成するサイドレールの下方に搭載され、車幅方向外側にそれぞれ向く一対の側面を有し、前記側面が前記サイドレールよりも車幅方向外側に位置するバッテリパックの支持装置であって、前記側面と対向する対向面を有し、前記バッテリパックを収容するバッテリ側ブラケットと、前記バッテリ側ブラケットと前記サイドレールとを連結するフレーム側ブラケットと、を含み、前記バッテリ側ブラケットは、前記対向面と反対側の面である外側面において車載機器を搭載する機器搭載部を備えることを特徴としている。
【0008】
このようなバッテリパックの支持装置によれば、側突時に車幅方向外側から入力される衝撃荷重が、バッテリ側ブラケットに入力されるよりも前に車載機器に入力されるため、衝撃荷重の初期入力が車載機器で吸収される。これにより、バッテリ側ブラケットに伝達される衝撃荷重が低減されることから、バッテリ側ブラケットを通じてバッテリパックに伝達される衝撃荷重も低減される。よって、側突時におけるバッテリパックの保護性能を高められる。
また、機器搭載部により、バッテリ側ブラケットの外側面に車載機器が搭載されるため、車載機器の搭載性を確保できる。
【0009】
(2)本適用例に係るバッテリパックの支持装置において、前記機器搭載部は、前記対向面に溶接された頭部と前記頭部から前記外側面よりも車幅方向外側に突出するネジ部とを有する溶接ボルトを含んでもよい。
溶接ボルトを含む機器搭載部によれば、車幅方向外側から溶接ボルトにナットを締結するだけで、車載機器を機器搭載部に搭載できる。このため、車載機器の搭載性を一層高められる。
また、対向面に溶接された頭部から外側面よりも車幅方向外側に突出するネジ部は、その突出端が車幅方向外側に向くため、バッテリパックとの干渉が防止される。よって、側突時におけるバッテリパックの保護性能を更に高められる。
【0010】
(3)本適用例に係るバッテリパックの支持装置において、前記機器搭載部は、前記対向面に溶接された溶接ナットを含んでもよい。
溶接ナットを含む機器搭載部によれば、車幅方向外側から溶接ナットにボルトを締結するだけで、車載機器を機器搭載部に搭載できる。このため、車載機器の搭載性を一層高められる。
【0011】
(4)本適用例に係るバッテリパックの支持装置において、前記バッテリ側ブラケットは、前記外側面と連続して設けられて前記外側面と角部をなす連続面を有してもよく、前記機器搭載部は、前記外側面から前記連続面にかけての前記角部に設けられてもよい。
バッテリ側ブラケットの外側面から連続面にかけての角部に設けられた機器搭載部によれば、バッテリ側ブラケットにおいて比較的剛性が高い角部に車載機器が搭載されるため、機器搭載部に車載機器を取り付けるための構造を簡素化しつつも、機器搭載部に対する車載機器の取付強度を確保できる。
また、バッテリ側ブラケットの外側面だけでなく連続面にも車載機器が搭載されることで、側突時に車載機器に入力された衝撃荷重が連続面にも伝達されやすくなる。これにより、バッテリ側ブラケットにおける衝突側の外側面の変形が抑制されるため、側突時におけるバッテリパックの保護性能を更に高められる。
【0012】
(5)本適用例に係る電動トラックは、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載のバッテリパックの支持装置を含むことを特徴としている。
これにより、上記(1)と同様に、側突時におけるバッテリパックの保護性能を高めつつ、車載機器の搭載性を確保できる。
【0013】
(6)本適用例に係る電動トラックにおいて、前記車載機器は、前記バッテリパックに外部から給電するための充電口が設けられた筐体を含んでもよい。
このような筐体が機器搭載部に搭載された電動トラックによれば、筐体がサイドレールに搭載される場合と比べて、筐体の充電口を車幅方向外側に容易に配置できる。これにより、所定位置に筐体を配置するための専用のブラケットをサイドレールから延設しなくても、筐体を所定位置に配置することが可能となるため、部品点数の削減や構造の簡素化を図りつつ、充電口への給電作業性を確保できる。
【0014】
(7)本適用例に係る電動トラックにおいて、前記車載機器は、車幅方向外側の物体を検知するセンサを含んでもよい。
このようなセンサが機器搭載部に搭載された電動トラックによれば、センサがサイドレールに搭載される場合と比べて、センサを車幅方向外側に容易に配置できる。これにより、所定位置にセンサを配置するための専用のブラケットをサイドレールから延設しなくても、センサを所定位置に配置することが可能となるため、部品点数の削減や構造の簡素化を図りつつ、センサの検知範囲を適切に設定できる。
【発明の効果】
【0015】
本件によれば、側突時におけるバッテリパックの保護性能を高めつつ、車載機器の搭載性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るバッテリパックの支持装置が適用された電動トラックの要部上面図である。
【
図2】
図1の電動トラックに適用されるバッテリパック及びバッテリ側ブラケットの分解斜視図である。
【
図3】
図1の支持装置における機器搭載部の一例を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図1の支持装置における機器搭載部の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図1の支持装置における機器搭載部の構成とその作用を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0018】
[1.構成]
[1-1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係るバッテリパックの支持装置1(以下、単に支持装置1ともいう)は、ラダーフレーム2を備えた電動トラック(車両)3に搭載されている。電動トラック3は、駆動用のバッテリパック4の電力を図示しないモータに供給することで走行する電動車両(電気自動車、ハイブリッド車)である。
【0019】
以下、電動トラック3の前後方向を車長方向D1ともいい、電動トラック3の左右方向を車幅方向D2ともいう。また、前後方向と左右方向とのいずれにも直交する上下方向を車高方向D3ともいう。図面では、前方を「FR」で示し、右方を「RH」で示し、上方を「UP」で示す。なお、
図1には、電動トラック3の下部構造を示しており、ラダーフレーム2の上方に配置される上部構造(ボデー)は省略している。
【0020】
ラダーフレーム2は、電動トラック3の骨格をなす部材であって、高い剛性及び強度を有する。ラダーフレーム2は、車長方向D1に延びる一対のサイドレール21と、車幅方向D2に延びてサイドレール21同士を連結する複数のクロスメンバ22とを含む。
一対のサイドレール21は、車幅方向D2に互いに離間して配置される。各サイドレール21は、車長方向D1及び車高方向D3に沿う板状のウェブ部の上縁及び下縁から、一対の板状のフランジ部が車幅方向D2の内側に向けて延出するチャネル形状(断面U字状)をなす。
複数のクロスメンバ22は、車長方向D1に互いに離間して配置される。ここでは、バッテリパック4と車高方向D3において重なる位置、及びバッテリパック4よりも後方の位置の二か所にそれぞれ配置された二つのクロスメンバ22を例示する。
【0021】
バッテリパック4は、例えば、乗用車に用いられる汎用の高電圧バッテリパックである。電動トラック3において、バッテリパック4は、一対のサイドレール21の下方に搭載され、各サイドレール21よりも車幅方向D2の外側に突出している。ここでは、車高方向D3の寸法が車長方向D1及び車幅方向D2の各寸法よりも小さい(薄い)箱型のバッテリパック4を例示する。ただし、バッテリパック4の形状は特に限定されない。
【0022】
バッテリパック4は、車幅方向D2の外側にそれぞれ向く一対の側面41(以下、バッテリ側面41ともいう)を有する。一対のバッテリ側面41は、一対のサイドレール21よりも車幅方向D2の外側にそれぞれ位置する。より具体的にいえば、右のバッテリ側面41は右のサイドレール21よりも右側に位置し、左のバッテリ側面41は左のサイドレール21よりも左側に位置する。
【0023】
バッテリパック4は、上記のように側面41がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に配置されることから、車幅方向D2の寸法がサイドレール21のウェブ部間の距離よりも大きく確保されている。これにより、バッテリパック4は大容量化が図られている。
また、バッテリパック4は、電動トラック3の航続距離を確保するうえでは、ホイールベース(前輪軸と後輪軸との間の距離)の広範囲にわたって配置されることが好ましい。本実施形態では、比較的小型な(ホイールベースが比較的短い)電動トラック3に対し、一つのバッテリパック4がホイールベースのほぼ全域にわたって配置された例を示す。したがって、バッテリパック4の前方には前輪31が近接して配置されており、バッテリパック4の後方には後輪32が近接して配置されている。
【0024】
なお、電動トラック3のサイズ及びバッテリパック4の個数は、本実施形態の例示に限定されない。比較的大型の(ホイールベースが比較的長い)電動トラック3には、複数のバッテリパック4が車長方向D1に並んで設けられてもよい。この場合も、ホイールベースの広範囲にわたって複数のバッテリパック4が配置されることで、バッテリパック4全体としての大容量化が図られ、航続距離を確保できる。
【0025】
支持装置1は、バッテリパック4をサイドレール21に連結し、バッテリパック4を支持する。換言すれば、バッテリパック4は、支持装置1を介してサイドレール21に支持されている。本実施形態では、後述の機器搭載部9を除いて左右対称に構成された支持装置1を例示する。
【0026】
支持装置1は、バッテリパック4を収容するバッテリ側ブラケット5と、バッテリ側ブラケット5及びサイドレール21を連結するフレーム側ブラケット6とを含む。バッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の外周に配置される外壁体であって、バッテリパック4を衝撃荷重から保護する機能をもつ。一方、フレーム側ブラケット6は、サイドレール21から車幅方向D2の外側かつ下方へ延びており、バッテリ側ブラケット5に収容されたバッテリパック4をサイドレール21から吊り下げる機能をもつ。
【0027】
本実施形態のバッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の車幅方向D2の外側(左右)に配置される一対のエンドクロスメンバ7と、バッテリパック4の車長方向D1の外側(前後)に配置される一対のメインメンバ8とを有する。バッテリ側ブラケット5は、これらのエンドクロスメンバ7及びメインメンバ8により、バッテリパック4の四方を囲むように配置される。
【0028】
一対のエンドクロスメンバ7は、機器搭載部9を除いて互いに同様(左右対称)に形成される。一対のメインメンバ8も、互いに同様(前後対称)に形成される。
図2に示すように、本実施形態のエンドクロスメンバ7及びメインメンバ8はいずれも、鋼板で形成されており、チャネル形状をなす。なお、
図2では機器搭載部9を省略している。
【0029】
エンドクロスメンバ7は、バッテリ側面41に沿って配置されるウェブ部71と、ウェブ部71の上縁及び下縁からバッテリパック4側(車幅方向D2の内側)へそれぞれ突設された一対のフランジ部72とを有する。本実施形態のエンドクロスメンバ7は、ウェブ部71がバッテリ側面41と離間して(隙間をあけて)配置されることで、衝突時の変形代(衝撃荷重の吸収代)が確保されている。
【0030】
エンドクロスメンバ7のウェブ部71は、バッテリ側ブラケット5において、バッテリ側面41と対向する対向面51、及び、対向面51と反対側の面である外側面52をなす。より具体的にいえば、対向面51は、エンドクロスメンバ7のウェブ部71の内面(車幅方向D2の内側を向く面)であり、外側面52は、エンドクロスメンバ7のウェブ部71の外面(車幅方向D2の外側を向く面)である。
本実施形態では、上記のとおりエンドクロスメンバ7のウェブ部71がバッテリ側面41と離間しているため、対向面51がバッテリ側面41と非接触である。ただし、対向面51(エンドクロスメンバ7のウェブ部71)は、バッテリ側面41に接触した状態で配置されてもよい。
【0031】
エンドクロスメンバ7の各フランジ部72は、バッテリ側ブラケット5において、外側面52と連続して設けられた連続面53をなす。より具体的にいえば、連続面53は、エンドクロスメンバ7のフランジ部72の外面(車高方向D3の外側を向く面)である。連続面53は、外側面52と角部54をなす。本実施形態では、外側面52の上縁と下縁とにそれぞれ対応する位置において、ほぼ直角の角部54をなす上下の連続面53を例示する。
【0032】
メインメンバ8は、バッテリパック4の前面42又は後面43に沿って配置されるウェブ部81と、ウェブ部81の上縁及び下縁からバッテリパック4側(車長方向D1の内側)へそれぞれ突設された一対のフランジ部82とを有する。メインメンバ8のフランジ部82は、エンドクロスメンバ7のフランジ部72よりもバッテリパック4側(車高方向D3の内側)に重ねられ、図示しない固定具でエンドクロスメンバ7のフランジ部72と結合される。
【0033】
図1に示すように、フレーム側ブラケット6は、エンドクロスメンバ7及びメインメンバ8の上側のフランジ部72、82同士が重なる部分に固定される。また、フレーム側ブラケット6は、サイドレール21のウェブ部にも固定される。ここでは、フレーム側ブラケット6が、電動トラック3の左右(各サイドレール21の車幅方向D2の外側)に二つずつ(合計四つ)設けられた例を示す。
【0034】
[1-2.要部構成]
バッテリ側ブラケット5は、外側面52において車載機器10を搭載する機器搭載部9を備えている。機器搭載部9は、車載機器10の取付先となる部位であって、車載機器10を取付可能な構造を有する。
機器搭載部9は、バッテリ側ブラケット5の少なくとも外側面52の一部に設定される。本実施形態では、左右の外側面52の一部を含む領域にそれぞれ設定された二つの機器搭載部9を例示する。ただし、機器搭載部9の具体的な位置や個数は、本実施形態の例示に限定されない。
【0035】
図3、4にそれぞれ示すように、機器搭載部9は、バッテリ側ブラケット5の外側面52に車載機器10を取り付けるための溶接ボルト91や溶接ナット94を含んでもよい。
図3に示すように、溶接ボルト91は、対向面51に溶接された頭部92と、頭部92から外側面52よりも車幅方向D2の外側に突出したネジ部93とを有する。詳細にいえば、溶接ボルト91は、バッテリ側ブラケット5の対向面51と外側面52との間(本実施形態ではエンドクロスメンバ7のウェブ部71)を貫通する孔部55に対し、ネジ部93が車幅方向D2の内側から挿通された状態で、対向面51に固定されている。
溶接ボルト91のネジ部93は、車載機器10(又はそのブラケット等)に形成された貫通孔(図示略)に挿通されたうえで、ナット14と締結される。これにより、溶接ボルト91を含む機器搭載部9に車載機器10が取り付けられる。
【0036】
図4に示すように、溶接ナット94は、対向面51に溶接される。詳細にいえば、溶接ナット94は、孔部55と同軸上に配置された状態で対向面51に固定されている。
溶接ナット94は、車載機器10(又はそのブラケット等)に形成された貫通孔(図示略)に車幅方向D2の外側から挿通されたボルト15と締結される。これにより、溶接ナット94を含む機器搭載部9に車載機器10が取り付けられる。なお、溶接ナット94に締結されるボルト15は、バッテリパック4との干渉防止のために、ネジ部の長さ寸法Lがバッテリ側面41と対向面51との距離(隙間)Sよりも十分に短く設定される(L<S)。
【0037】
機器搭載部9に車載機器10を搭載する手法は、上記の溶接ボルト91及び溶接ナット94を用いた手法に限定されず、公知の種々の手法を適用できる。例えば、車載機器10は、対向面51に溶接されていない通常のボルトやナット(図示略)により、機器搭載部9に搭載されてもよい。あるいは、車載機器10は、機器搭載部9に直接溶接されてもよい。
【0038】
図5に示すように、本実施形態の機器搭載部9は、バッテリ側ブラケット5の外側面52から連続面53にかけての角部54に設けられている。換言すれば、機器搭載部9は、外側面52の一部と連続面53の一部とにわたって設定されている。ここでは、上側の角部54に設けられた機器搭載部9を例示する。
角部54に設けられた機器搭載部9に搭載される車載機器10(又はそのブラケット等)は、角部54を覆うように角部54の外側に配置される。なお、
図5では、機器搭載部9の具体的な構造(溶接ボルト91や溶接ナット94等)を省略すると共に、車載機器10を簡略化して示す。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の車載機器10は、バッテリパック4に外部から給電するための充電口11が設けられた筐体12と、車幅方向D2の外側の物体を検知するセンサ13とを含む。ここでは、右側の機器搭載部9に筐体12が搭載され、左側の機器搭載部9にセンサ13が搭載された例を示す。筐体12及びセンサ13はいずれも、バッテリ側ブラケット5の外側面52よりも車幅方向D2の外側に突出して設けられる。
【0040】
筐体12は、CIB(Charge Inlet Box)とも呼ばれ、充電口11が電動トラック3の外部からアクセス可能となる所定位置に設けられる。筐体12において充電口11は、車幅方向D2の外側に向けて配置される。
センサ13は、例えば、電動トラック3のブラインドスポット内に存在する物体を検知してドライバに知らせる技術(いわゆるブラインドスポットアシスト)に適用されるレーダやカメラである。センサ13は、ブラインドスポットが検知範囲となる所定位置に設けられる。
【0041】
[2.作用及び効果]
(1)支持装置1によれば、バッテリ側ブラケット5の外側面52において車載機器10を搭載する機器搭載部9が設けられるため、
図5に示すように、側突時に車幅方向D2の外側から入力される衝撃荷重Fが、バッテリ側ブラケット5に入力されるよりも前に車載機器10に入力される。これにより、衝撃荷重Fの初期入力を、バッテリ側ブラケット5で吸収するよりも前に車載機器10で吸収できる。この結果、バッテリ側ブラケット5に伝達される衝撃荷重Fを低減できるため、バッテリ側ブラケット5を通じてバッテリパック4に伝達される衝撃荷重Fも低減できる。よって、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を高められる。
【0042】
また、電動トラック3では、バッテリパック4がサイドレール21の下方に搭載され、バッテリ側面41がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に位置するため、バッテリパック4の大容量化を図れる。この反面、バッテリパック4がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に突出するため、サイドレール21への車載機器10の搭載性が低下しうる。これに対し、上記の機器搭載部9によれば、バッテリ側ブラケット5の外側面52に車載機器10が搭載されるため、車載機器10の搭載性を確保できる。
【0043】
(2)
図3に示すように、溶接ボルト91を含む機器搭載部9によれば、車幅方向D2の外側から溶接ボルト91にナット14を締結するだけで、車載機器10を機器搭載部9に搭載できる。このため、車載機器10の搭載性を一層高められる。
また、対向面51に溶接された頭部92から外側面52よりも車幅方向D2の外側に突出するネジ部93は、その突出端が車幅方向D2の外側に向くため、バッテリパック4との干渉が防止される。したがって、たとえ側突時に溶接ボルト91が車幅方向D2の内側(バッテリパック4側)に変位したとしても、溶接ボルト91のネジ部93とバッテリパック4との接触を防止できる。よって、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を更に高められる。
【0044】
(3)
図4に示すように、溶接ナット94を含む機器搭載部9によれば、車幅方向D2の外側からボルト15を溶接ナット94に締結するだけで、車載機器10を機器搭載部9に搭載できる。このため、車載機器10の搭載性を一層高められる。
また、溶接ナット94に締結されるボルト15のネジ部の長さ寸法Lが、バッテリ側面41と対向面51との距離Sよりも十分に短く設定されていれば、たとえ側突時にボルト15が車幅方向D2の内側(バッテリパック4側)に変位したとしても、ボルト15とバッテリパック4との接触を回避しやすくなる。よって、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を確保できる。
【0045】
(4)
図5に示すように、バッテリ側ブラケット5の外側面52から連続面53にかけての角部54に設けられた機器搭載部9によれば、バッテリ側ブラケット5において比較的剛性が高い角部54に車載機器10を搭載できる。このため、機器搭載部9に車載機器10を取り付けるための構造を簡素化しつつも、機器搭載部9に対する車載機器10の取付強度を確保できる。例えば、機器搭載部9に車載機器10を取り付けるためのボルトの本数を抑えながらも、機器搭載部9に車載機器10を安定して固定することが可能となる。
【0046】
また、上記の角部54に設けられた機器搭載部9によれば、連続面53にも車載機器10が搭載されるため、側突時に車載機器10に入力された衝撃荷重Fが外側面52だけでなく連続面53にも伝達されやすくなる。これにより、連続面52を通じて衝撃荷重Fを車幅方向D2に伝達できるため(
図5中の矢印F′参照)、バッテリ側ブラケット5の側突側と反対側(例えば右側突時には左側)のフレーム側ブラケット6及びサイドレール21でも効率的に衝撃荷重Fを吸収できる。この結果、バッテリ側ブラケット5における衝突側の外側面52(例えば右側突時には右側の外側面52)の変形が抑制されることから、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を更に高められる。
【0047】
(5)支持装置1を含む電動トラック3によれば、上記のとおり、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を高めつつ、車載機器10の搭載性を確保できる。
【0048】
(6)
図1に示すように、充電口11の設けられた筐体12が機器搭載部9に搭載された電動トラック3によれば、筐体12がサイドレール21に搭載される場合と比べて、充電口11を車幅方向D2の外側に容易に配置できる。これにより、所定位置に筐体12を配置するための専用のブラケットをサイドレール21から延設しなくても、筐体12を所定位置に配置することが可能となる。よって、部品点数の削減や構造の簡素化を図りつつ、充電口11への給電作業性を確保できる。
【0049】
(7)車幅方向D2の外側の物体を検知するセンサ13が機器搭載部9に搭載された電動トラック3によれば、センサ13がサイドレール21に搭載される場合と比べて、センサ13を車幅方向D2の外側に容易に配置できる。これにより、所定位置にセンサ13を配置するための専用のブラケットをサイドレール21から延設しなくても、センサ13を所定位置に配置することが可能となる。よって、部品点数の削減や構造の簡素化を図りつつ、センサ13の検知範囲を適切に設定できる。
【0050】
[3.変形例]
上記のバッテリ側ブラケット5の構成は一例である。バッテリ側ブラケット5は、少なくとも、バッテリ側面41と対向する対向面51を有すると共にバッテリパック4を収容する形状であればよく、上記のエンドクロスメンバ7及びメインメンバ8以外の部材で形成されてもよい。
フレーム側ブラケット6の構成、配置及び個数も、上記の例示に限定されない。
【0051】
図5に二点鎖線で示すように、機器搭載部9は、バッテリ側ブラケット5の上下の角部54のうち、下側の角部54に設けられてもよい。このような機器搭載部9に搭載される車載機器10(又はそのブラケット等)は、下側の角部54を覆うように下側の角部54の外側に配置される。この構成であっても、上記の実施形態と同様に、バッテリ側ブラケット5において比較的剛性が高い角部54に車載機器10を搭載できるため、機器搭載部9に車載機器10を取り付けるための構造を簡素化しつつも、機器搭載部9に対する車載機器10の取付強度を確保できる。
【0052】
機器搭載部9の具体的な構造は、上記の例示に限定されない。機器搭載部9は、溶接ボルト91及び溶接ナット94の双方を含んでもよいし、溶接ボルト91及び溶接ナット94以外の構造を含んでもよい。
機器搭載部9に搭載される車載機器10としては、上記の筐体12及びセンサ13に限らず、電動トラック3に搭載される様々な機器を採用できる。例えば、車載機器10は、電動トラック3の補機用の低電圧バッテリ(図示略)を含んでもよい。車載機器10がこのような低電圧バッテリを含む場合も、支持装置1及び電動トラック3によれば、上記の実施形態と同様に、側突時におけるバッテリパック4の保護性能を高めつつ、車載機器10の搭載性を確保できる。
なお、支持装置1の適用対象は、上記の電動トラック3に限定されない。支持装置1は、ラダーフレーム2を備える様々な車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 支持装置(バッテリパックの支持装置)
2 ラダーフレーム
3 電動トラック(車両)
4 バッテリパック
5 バッテリ側ブラケット
6 フレーム側ブラケット
7 エンドクロスメンバ
8 メインメンバ
9 機器搭載部
10 車載機器
11 充電口
12 筐体
13 センサ
14 ナット
15 ボルト
21 サイドレール
22 クロスメンバ
31 前輪
32 後輪
41 バッテリ側面
42 前面
43 後面
51 対向面
52 外側面
53 連続面
54 角部
55 孔部
71 ウェブ部
72 フランジ部
81 ウェブ部
82 フランジ部
91 溶接ボルト
92 頭部
93 ネジ部
94 溶接ナット
F、F′ 衝撃荷重
L ボルト15のネジ部の長さ寸法
S バッテリ側面41と対向面51との距離(隙間)