(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063136
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/33 20170101AFI20220414BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220414BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20220414BHJP
G06T 3/40 20060101ALI20220414BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G06T7/33
B21C51/00 B
B21C51/00 P
B21B38/00 F
G06T3/40 720
G06T1/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171521
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄翔
(72)【発明者】
【氏名】愛川 匡将
【テーマコード(参考)】
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
5B057AA01
5B057BA13
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057CE10
5B057CE12
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB09
5L096CA05
5L096CA17
5L096EA05
5L096EA43
5L096FA66
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】長手方向に延びる鋼材を被写体とし、2つの撮像装置を用いて撮像して得た、長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、ワーキングディスタンスに応じて適切に長手方向に重ね合わせることができる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法を提供する。
【解決手段】鋼材の撮像画像重ね合わせ方法では、被写体となる鋼材Sの寸法に応じて2つの撮像装置3a,3bの各々と鋼材Sとの間の距離であるワーキングディスタンスWD1,WD2を算出し(ステップS23)、算出したワーキングディスタンスWD1,WD2に応じて2つの撮像画像E3a,E3bの重ね合わせ位置Tを2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定し(ステップS24)、2つの撮像画像E3a,E3bの各々を、2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定された重ね位置T(T3a)、T(T3b)で重ね合わせる(ステップS25)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる鋼材を被写体とし、少なくとも2つの撮像装置を用いて撮像して得た、前記長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、前記長手方向に重ね合わせる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法であって、
前記被写体となる鋼材の寸法に応じて前記2つの撮像装置の各々と前記被写体となる鋼材との間の距離であるワーキングディスタンスを算出し、
算出したワーキングディスタンスに応じて前記2つの撮像画像の重ね合わせ位置を前記2つの撮像画像の各々上に設定し、
前記2つの撮像画像の各々を、該2つの撮像画像の各々上に設定された重ね位置で重ね合わせることを特徴とする鋼材の撮像画像重ね合わせ方法。
【請求項2】
前記鋼材は丸鋼材であり、前記2つの撮像装置の各々はラインセンサカメラであり、前記2つの撮像装置は、撮像ラインが前記長手方向に沿うように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の撮像画像重ね合わせ方法。
【請求項3】
前記2つの撮像画像の各々を、前記ラインセンサカメラがターニングローラ上を周方向に回転する丸鋼材の周方向の特定位置を所定周期で撮像した複数の特定位置の撮像画像を周方向に繋ぎ合わせて得ることを特徴とする請求項2に記載の鋼材の撮像画像重ね合わせ方法。
【請求項4】
前記被写体となる鋼材は、疵の位置にマーキングを塗布してなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の鋼材の撮像画像重ね合わせ方法。
【請求項5】
長手方向に延びる鋼材の表面に形成された疵の位置に塗布されたマーキングを検出する鋼材のマーキング検出方法であって、
少なくとも2つの撮像装置を用いて前記鋼材の表面を撮像して、前記長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を得て、
請求項4に記載の鋼材の撮像画像重ね合わせ方法により、前記2つの撮像装置から得られた2つの撮像画像を長手方向に重ね合わせ、
重ね合わされた鋼材の撮像画像からマーキングを抽出することを特徴とする鋼材のマーキング検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延びる鋼材を被写体とし、少なくとも2つの撮像装置を用いて撮像して得た、長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、長手方向に重ね合わせる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、断面が円形の丸鋼材(丸ビレットという)は、直接製造されたり、あるいは分塊圧延によって製造される。そして、丸鋼材は、その製造工程で表面に何らかの疵(鋳造疵、孔、線状疵、切り疵等)が生じていることが多い。これらの疵は、後工程で障害となるため、後工程へ丸鋼材を送る前に、表面疵を研削してなくす所謂「手入れ作業」が行われている。また、丸棒鋼のような条鋼製品や製品鋼管も製造工程で表面疵を生じることがあるため、手入れ作業が行われている。
【0003】
従来の丸鋼材の表面疵手入れ装置として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示す丸鋼材の表面疵手入れ装置は、回転している丸鋼材の軸線方向に沿い往復移動自在で、丸鋼材と接触して表面疵を検出する表面疵検査装置と、検出された表面疵の位置にマーキング液を噴射して印を付けるマーキング装置と、マーキングされた表面疵を手入れする作業デッキとを備えている。
この特許文献1に示す丸鋼材の表面疵手入れ装置によれば、検出された表面疵の位置をマーキングするようにしたので、作業者の研削位置判断を正確にし、研削作業を迅速に行うことができる。
【0004】
しかし、特許文献1に示す丸鋼材の表面疵手入れ装置の場合、検出された表面疵の位置に塗布されたマーキングを作業者が目視により見つけ、その箇所を研削するようにしている。
ここで、丸鋼材の表面疵の位置に塗布されるマーキングは、マーキング液の吹付け具合によりその大きさや形が変わることがあり、作業者が目視で見つけにくい場合がある。従って、作業者の目視によってマーキングを見つける方法では、マーキングを見逃すリスクが大きく、研削能率が低いという問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、自動でマーキングを検出するようにするようにすることが望ましい。
自動でマーキングを検出するためには、1台の撮像装置を丸鋼材の表面が視野範囲となる位置(例えば、丸鋼材の直上位置)に設置し、丸鋼材を回転させることで丸鋼材の全周の測定を行う。その後、丸鋼材を丸鋼材の軸線方法をなす長手方向に移動させ、再度、全周の測定を行う。そして、全周の測定と長手方向の移動を繰り返し、丸鋼材の長手方向の測定を行うことが考えられる。この理由は、1台の撮像装置における丸鋼材の長手方向の視野は、丸鋼材の長手方向において撮像したい範囲の全体をカバーするものではないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1台の撮像装置を用いて丸鋼材の長手方向の測定を行うことにすると、前述したように、丸鋼材の全周の測定と長手方向の移動を繰り返す必要があるため、マーキングの検出に時間が多くかかるという問題がある。
一方、鋼材の長手方向に沿って撮像装置を複数台設置して、各撮像装置で撮像された撮像画像を画像処理により結合する方法が考えられる。
しかし、測定対象の丸鋼材毎にその径が異なった場合などではワーキングディスタンス(丸鋼材の表面と撮像装置との間の距離)が変化することから、その場合に、2つの撮像装置を用いて、長手方向に沿って異なる領域で、かつ重複する領域を撮像して得た2つの撮像画像を重ね合わせる方法が確立されていない。
【0008】
従って、本発明は、この従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、長手方向に延びる鋼材を被写体とし、少なくとも2つの撮像装置を用いて撮像して得た、長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、ワーキングディスタンスに応じて適切に長手方向に重ね合わせることができる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る鋼材の撮像画像重ね合わせ方法は、長手方向に延びる鋼材を被写体とし、少なくとも2つの撮像装置を用いて撮像して得た、前記長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、前記長手方向に重ね合わせる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法であって、前記被写体となる鋼材の寸法に応じて前記2つの撮像装置の各々と前記被写体となる鋼材との間の距離であるワーキングディスタンスを算出し、算出したワーキングディスタンスに応じて前記2つの撮像画像の重ね合わせ位置を前記2つの撮像画像の各々上に設定し、前記2つの撮像画像の各々を、該2つの撮像画像の各々上に設定された重ね位置で重ね合わせることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の別の態様に係る鋼材のマーキング検出方法は、長手方向に延びる鋼材の表面に形成された疵の位置に塗布されたマーキングを検出する鋼材のマーキング検出方法であって、少なくとも2つの撮像装置を用いて前記鋼材の表面を撮像して、前記長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を得て、前述の鋼材の撮像画像重ね合わせ方法により、前記2つの撮像装置から得られた2つの撮像画像を長手方向に重ね合わせ、重ね合わされた鋼材の撮像画像からマーキングを抽出することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法によれば、長手方向に延びる鋼材を被写体とし、少なくとも2つの撮像装置を用いて撮像して得た、長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像を、ワーキングディスタンスに応じて適切に長手方向に重ね合わせることができる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法が適用される鋼材のマーキング検出装置の概略構成を正面側から見た図である。
【
図2】
図1に示す鋼材のマーキング検出装置の概略構成を右側面側から見た図である。
【
図3】
図1に示す鋼材のマーキング検出装置を用いた鋼材のマーキング検出方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示すフローチャートにおける撮像画像の重ね合わせ処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】隣り合う撮像装置を1つとして丸鋼材(鋼材)を撮像したときの実物の撮像画像(a)、隣り合う撮像装置の各々による撮像画像(b)、隣り合う撮像装置による撮像画像の重ね合わせがずれたパターン1(c)、隣り合う撮像装置による撮像画像の重ね合わせがずれたパターン2(d)、隣り合う撮像装置による撮像画像の重ね合わせが成功したパターン(e)を説明するための図である。
【
図6】
図3に示すフローチャートにおける撮像画像の重ね合わせ処理に際しての重ね合わせ原理を説明するための図である。
【
図7】撮像装置と丸鋼材(鋼材)との間の距離であるワーキングディスタンスを算出するための説明図である。
【
図8】マーキング検出の対象となる鋼材が角ビレットの場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法が適用される鋼材のマーキング検出装置の概略構成が示されている。
図1に示す鋼材のマーキング検出装置1は、鋼材としての丸鋼材(丸ビレット)Sの表面疵の位置にマーキングするマーキング装置(図示せず)の下流側に設置される。マーキング装置は、丸鋼材Sを下流工程へ搬送する搬送ラインの途中に設けられており、マーキング装置で丸鋼材Sの表面疵の位置にマーキングを塗布し、マーキングを塗布された丸鋼材Sがトランスファー(図示せず)によってマーキング検出装置1に移送される。マーキングされる丸鋼材Sの大きさは、本実施形態にあっては最小径φ90mmから最大径φ450mmまでの間の任意の大きさであり、
図1及び
図2において、最大径の丸鋼材をS1、最小径の丸鋼材をS2で示している。
【0015】
マーキング検出装置1は、丸鋼材Sの表面疵の位置に塗布されたマーキングM(
図5(a)参照)を検出するものであり、トランスファーによって移送された丸鋼材Sを、その長手方向が水平方向に維持されるように支持し、且つ、所定の回転速度(本実施形態にあっては、例えば1500mm/s程度で周方向)に回転させる複数のターニングローラ2を備えている。ターニングローラ2には、丸鋼材Sの回転角度を検出する回転角度検出装置としてのパルスジェネレータ18が設置されている。後述するマーキング抽出部9には、パルスジェネレータ18からターニングローラ2の回転数が入力され、マーキング抽出部9は、入力されたターニングローラ2の回転数から丸鋼材Sの撮像開始点からの回転角度を検出する。ターニングローラ2は、図示しない台車上に設置されており、台車が長手方向に移動することでターニングローラ2上に載置されている丸鋼材Sを長手方向に移動可能となっている。
【0016】
そして、マーキング検出装置1は、ターニングローラ2上を周方向に回転する丸鋼材Sの表面を撮像する複数(本実施形態にあっては2つ)の撮像装置3a,3bと、コンピュータシステム7と、表示装置10とを備えている。
丸鋼材Sは、長手方向(軸方向)に延びる断面を円形とした丸ビレットと呼ばれる鋼材である。複数(2つ)の撮像装置3a,3bは、
図2に示すように、丸鋼材Sの長手方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0017】
マーキング検出装置1において、
図1及び
図2に示すように、台座部12上に立設された複数の支持脚13に複数の第1支持部材14が支持脚13に対して直交するように取り付けられている。そして、これら第1支持部材14には、第2支持部材15が第1支持部材14に直交するように取り付けられている。また、複数の支持脚13の第1支持部材14を取り付けた部分より上方の位置には、複数の第3支持部材16が支持脚13に直交するように取り付けられている。また、これら第3支持部材16には、第4支持部材17が第3支持部材16に直交するように取り付けられている。
第4支持部材17の先端は、
図2に示すように、丸鋼材Sの長手方向に沿って延び、第4支持部材17の先端に、複数(2つ)の撮像装置3a,3bが所定間隔で支持されている。
【0018】
そして、隣り合う撮像装置3a,3bの各々は、ラインセンサカメラで構成され、
図2に示すように2つの撮像装置3a,3bは撮像ラインが丸鋼材Sの長手方向に沿うように設置されている。各撮像装置3a,3bは、各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの撮像ラインが延びる方向と丸鋼材Sの軸方向とが一致し、且つ、ラインセンサカメラの光軸L3と丸鋼材Sの長手方向とが直角をなし、さらに、且つ
図1に示すようにラインセンサカメラの光軸L3と丸鋼材Sの最上位置Pに接する接線TLとの成す角度δが90度となるように設置される。つまり、ラインセンサカメラの光軸L3は、鉛直方向をなすとともに、光軸L3が長手方向の水平にして保持された丸鋼材Sの頂点を通るように設定されている。
【0019】
各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの設置高さは、
図6及び
図7に示すように、各々のラインセンサカメラのレンズと丸鋼材Sとの間のワーキングディスタンスWD1,WD2が所定の距離(最大径の丸鋼材S1の場合の前記ワーキングディスタンスWD1(Φmax)=WD2(Φmax):900mm、最小径の丸鋼材S2の場合の前記ワーキングディスタンスWD1(Φmin)=WD2(Φmin):1270mmに設定される。
各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの選定に際しては、被写界深度を計算し、被写体である最大径の丸鋼材S1の表面の最上位置P1と最小径の丸鋼材S2の表面の最上位置P2の場合でもピントが合うレンズを有するカメラを選定する。本実施形態の場合、被写界深度を771mmとし、最大径の丸鋼材S1の径がΦ450mm、最小径の丸鋼材S2の径がΦ90mmのいずれ場合でもピントが合うレンズを選定している。
【0020】
そして、各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラは、ターニングローラ2上を周方向に回転する丸鋼材Sの表面の周方向の最上位置(特定位置)Pを所定周期で丸鋼材Sの一周分撮像する。各撮像装置3は、周方向に回転する丸鋼材Sの表面の最上位置P(最大径の丸鋼材S1の表面の最上位置はP1、最小径の丸鋼材S2の表面の最上位置はP2)の位置を所定周期で丸鋼材Sの一周分撮像する。ラインセンサカメラで撮像する周期は、本実施形態の場合、丸鋼材Sの回転速度が1500mm/sであり、丸鋼材Sの周方向の全面を隙間なく撮像できるように、1/2381sとなっている。
【0021】
また、各撮像装置3a,3bの撮像範囲L3a,L3b(
図6参照)は、丸鋼材Sの径によって、即ち各撮像装置3a,3bと丸鋼材Sの表面との間の距離であるワーキングディスタンスWD1,WD2(
図6及び
図7参照)によって変化する。最大径の丸鋼材S1の場合の撮像装置3a,3bの撮像範囲は、
図2に示すように、L3a(Φmax),L3b(Φmax)、最小径の丸鋼材S2の場合の撮像装置3a,3bの撮像範囲はL3a(Φmin),L3b(Φmin)(L3b(Φmin)のみ図示)となる。
そして、2つの撮像装置3a,3b間の長手方向に沿った距離(2つの撮像装置3a,3bの中心線間の距離)Hは、各撮像装置3a,3bの撮像範囲L3a,L3bが丸鋼材Sの長手方向において丸鋼材Sの径に係らず(最大径の丸鋼材S1の場合と最小径の丸鋼材S2の場合の双方の場合に)異なり、かつ常に重複するような大きさに設定される。
【0022】
ここで、撮像装置3a,3bをラインセンサカメラとしたのは、丸鋼材Sの表面は円形となっているため、撮像装置3a,3bをエリアセンサカメラとした場合、エリアセンサカメラから丸鋼材Sの表面までの距離が周方向に沿って異なり、丸鋼材Sの表面に塗布されたマーキングの形状の見え方が変化するからである。撮像装置3a,3bを、ラインセンサカメラで構成し、周方向に回転する丸鋼材Sの表面の最上位置Pの位置を軸方向に沿って撮像するようにすれば、ラインセンサカメラから丸鋼材Sの表面の最上位置Pの位置までの距離に変化はなく、このような不都合はない。従って、撮像装置3a,3bをラインセンサカメラとすることにより、撮像対象である丸鋼材Sの表面に塗布されたマーキングの形状を適切に検出することができる。
各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラは、図示しない電源及び撮像周期等を制御するカメラ制御装置4に接続されている。
【0023】
また、マーキング検出装置1は、
図1及び
図2に示すように、撮像装置3a,3b毎に照明装置5を備えている。
各照明装置5は、前述した第1支持部材14の先端に回転可能に取り付けられている。
この各照明装置5は、丸鋼材Sの表面、特に撮像される最上位置Pの近傍を連続的に点灯する2列のバー照明で構成されている。照明の色は白色に近似した色である。そして、
図1に示すように、照明装置5の光軸L5と垂直線VLとのなす角度θは、最小径の丸鋼材S2の最上位置P2の近傍から最大径の丸鋼材S1の最上位置P1の近傍に至るまですべての場合に照射できるように、調節可能となっている。
【0024】
各照明装置5には、図示しない照明電源及び照明の輝度等を制御する照明制御装置6に接続されている。
また、コンピュータシステム7は、各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々で撮像された複数の最上位置(特定位置)Pの撮像画像を周方向に繋ぎ合わせて得られた2つの撮像画像の各々を、長手方向に重ね合わせる撮像画像重ね合わせ部8と、撮像画像重ね合わせ部8で重ね合わされた撮像画像からマーキングMを抽出するマーキング抽出部9とを備えている。各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々、パルスジェネレータ18及び上位計算機11は、コンピュータシステム7に接続されている。上位計算機11からコンピュータシステム7に、2つの撮像装置3a,3b間の距離H(
図6(a)参照)や検出対象となるマーキングMが塗布された丸鋼材Sの径などの情報が入力される。
【0025】
このコンピュータシステム7は、撮像画像重ね合わせ部8及びマーキング抽出部9の各機能をコンピュータソフトウェア上でプログラムを実行することで実現するための演算処理機能を有するコンピュータシステムである。そして、このコンピュータシステムは、ROM,RAM,CPU等を備えて構成され、ROM等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、前述した各機能をソフトウェア上で実現する。
また、表示装置10は、マーキング抽出部9で抽出されたマーキングM、及びマーキングMの周方向位置及び長手方向位置等を表示する。
【0026】
次に、
図3及び
図4を参照して丸鋼材Sのマーキング検出装置1を用いた鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法を説明する。
先ず、
図3に示すステップS1において、丸鋼材Sの長手方向に沿って配置された複数(本実施形態にあっては2つ)の撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々が丸鋼材Sの表面を撮像する(撮像ステップ)。
【0027】
この撮像ステップでは、丸鋼材Sの長手方向に沿って配置された撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々が、ターニングローラ2上を周方向に回転する丸鋼材Sの表面の周方向の最上位置(特定位置)Pを所定周期で丸鋼材Sの一周分撮像する。その際の撮像装置3aの撮像範囲は、
図6(a)に示すように、L3a、撮像装置3bの撮像範囲はL3bである。2つの撮像装置3a、3bを用いて撮像した2つの撮像画像E3a,E3b(
図6(b)、(c)参照)は、丸鋼材Sの長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する。
【0028】
次いで、ステップS2において、コンピュータシステム7の撮像画像重ね合わせ部8は、丸鋼材Sの長手方向に沿って配置された撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々から得られる撮像された丸鋼材Sの2つの撮像画像E3a,E3bを長手方向に重ね合わせる(撮像画像重ね合わせステップ)。
この撮像画像重ね合わせステップでは、撮像画像重ね合わせ部8は、具体的に、各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々で撮像された複数の最上位置(特定位置)Pの撮像画像を周方向に繋ぎ合わせて得られた2つの撮像画像E3a,E3bの各々を、長手方向に重ね合わせる。
【0029】
ここで、
図5に示すように、隣り合う撮像装置3a,3bを1つとして丸鋼材Sを撮像したときの実物の撮像画像E(
図5(a)参照)としたとき、一方の撮像装置3aの撮像画像(周方向に繋ぎ合わせた画像)E3aと、他方の撮像装置3bの撮像画像(周方向に繋ぎ合わせた画像)E3bとを重ね合わせたとき、その重ね合わせが成功した時(
図5e)参照)には、実物の撮像画像Eと、撮像画像E3aと撮像画像E3bとを重ね合わせせた画像が同一となる。
【0030】
一方、一方の撮像装置3aの撮像画像E3aと他方の撮像画像E3bとを重ね合わせたとき、各撮像画像E3a、E3b上に設定された重ね合わせ位置が不適切でその重ね合わせが失敗すると、
図5(c)や
図5(d)に示すように、実物の撮像画像Eと、撮像画像E3aと撮像画像E3bとを重ね合わせせた画像が不一致となる。この理由は、各撮像装置3a,3bのワーキングディスタンスWD1,WD2に応じて各撮像画像E3a、E3b上に重ね合わせ位置を設定しなければならないが、そうすることなく一律に重ね合わせ位置を各撮像画像E3a、E3b上に設定しているからである。
【0031】
従って、本実施形態における撮像画像重ね合わせステップ、つまり撮像画像重ね合わせ方法では、撮像画像重ね合わせ部8は
図4に示すステップS21~ステップS28を実行する。
先ず、ステップS21において、撮像画像重ね合わせ部8は、隣り合う2つの撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々で撮像された丸鋼材Sの2つの撮像画像E3a,E3b(
図6(b)、(c)参照)を取り込む(画像取込ステップ)。
この画像取込ステップでは、撮像画像重ね合わせ部8は、具体的に、各ラインセンサカメラがターニングローラ2上を周方向に回転する丸鋼材Sの周方向の特定位置Pを所定周期で撮像した複数の特定位置Pの撮像画像を取り込むとともに、取りこんだ各ラインセンサカメラによる複数の特定位置Pの撮像画像を周方向に繋ぎ合わせて撮像画像E3a,E3bを得る。
【0032】
次いで、ステップS22において、撮像画像重ね合わせ部8は、2つの撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの各々間の長手方向に沿った距離Hに基づいて、取り込んだ各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラによる丸鋼材Sの2つの撮像画像E3a,E3bの長手方向の重ね合わせ位置Tを決定する(重ね合わせ位置決定ステップ)。2つの撮像装置3a,3b間の長手方向に沿った距離Hは、2つの撮像装置3a,3bの中心線CL3a,CL3b間の距離H(
図6(a)参照)である。
【0033】
この重ね合わせ位置決定ステップでは、撮像画像重ね合わせ部8は、具体的に、それぞれの撮像画像E3a,E3bにおける、2つのラインセンサカメラ間の長手方向の中間位置の真下に相当する位置を、周方向に繋ぎ合わされた各ラインセンサカメラによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の長手方向の重ね合わせ位置Tに決定する。2つのラインセンサ間の長手方向の中間位置とは、撮像装置3aの位置から長手方向に沿って距離Hの1/2だけ撮像装置3b側へ寄った位置である。本実施形態においては、2つのラインセンサカメラ間の長手方向に沿った距離Hが例えば800(mm)に設定されており、それぞれのラインセンサカメラからの、距離Hの1/2=400(mm)だけ互いのラインセンサカメラ側に寄った位置が中間位置であり、撮像画像E3a,E3bにおけるこの中間位置の真下に相当する位置が丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の長手方向の重ね合わせ位置Tに決定される。
【0034】
ここで、
図6(a)、(b)、(c)に示すように、撮像装置3aを構成するラインセンサカメラによる丸鋼材Sの撮像画像E3aと、撮像装置3bを構成するラインセンサカメラによる丸鋼材Sの撮像画像E3bとは、丸鋼材Sの長手方向で重複している。各撮像画像E3a,E3bを重ね合わせるために前述で決定した重ね合わせ位置Tが各撮像画像E3a,E3b上でどこにくるのかを設定する必要がある。そして、この重ね合わせ位置Tの各撮像画像E3a,E3b上での設定に際し、各ラインセンサカメラと丸鋼材Sとの間のワーキングディスタンスWD1,WD2(
図7参照)によって各ラインセンサカメラの画素分解能が変化することから、ワーキングディスタンスWD1,WD2及び各ラインセンサカメラの画素分解能を考慮して設定する必要がある。
【0035】
このため、ステップS22が終了したらステップS23に移行し、撮像画像重ね合わせ部8は、先ず、被写体となる丸鋼材Sの寸法に応じて2つの撮像装置3a,3bの各々と被写体となる丸鋼材Sとの間の距離であるワーキングディスタンスWD1,WD2を算出する(ワーキングディスタンス算出ステップ)。
このワーキングディスタンスWD1,WD2の算出について、
図7を参照して説明する。ここで、ワーキングディスタンスWD1,WD2の算出方法は同様であるため、単にワーキングディスタンスWDの算出方法として説明する。ワーキングディスタンスWDは次の(1)式により算出される。
WD=W-φ-Δw ・・・(1)
ここで、Wはターニングローラ2の頂点と各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラとの間の距離、Φは検出対象となる丸鋼材Sの直径、Δwはターニングローラ設置による誤差量である。
【0036】
また、ターニングローラ設置による誤差量Δwは次の(2)式により算出される。
Δw=r-(h-t) ・・・(2)
ここで、rは丸鋼材Sの半径、hは丸鋼材Sの中心からターニングローラ2の中心の垂直高さ、tはターニングローラ2の半径である。
また、丸鋼材Sの中心からターニングローラ2の中心の垂直高さhは次の(3)式により算出される。
h=sinβ×(r+t) ・・・(3)
ここで、βはターニングローラ2の中心と丸鋼材Sの中心とを結んだ直線と水平軸とのなす角である。
更に、このβは次の(4)式により算出される。
β=arccos((p/2)/(r+t)) ・・・(4)
ここで、pはターニングローラ2の配置ピッチである。
【0037】
そして、W、Φ、r、t、及びpの各値が上位計算機11より撮像画像重ね合わせ部8に入力され、撮像画像重ね合わせ部8は、入力されたW、Φ、r、t、及びpの各値を(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式に導入してワーキングディスタンスWDを算出する。ワーキングディスタンスWDは、撮像装置3aと撮像装置3bとで同じ値になるように、撮像装置3a,3bともにWが同じ値になるようにして撮像装置3a,3bを設置しておいてもよいし、撮像装置3a,3bでWが異なるように設置されている場合は、それぞれの撮像装置3a,3bについてのワーキングディスタンスを個別に求める。
【0038】
次いで、撮像画像重ね合わせ部8は、ステップS24において、ステップS22で決定された2つの撮像画像E3a,E3bの長手方向の重ね合わせ位置Tを、ステップS23で算出したワーキングディスタンスWD1,WD2に応じて、ステップS21で取り込んだ2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定する(重ね合わせ位置設定ステップ)。
ステップS24において、撮像装置重ね合わせ部8は、先ず、ステップS23で算出したワーキングディスタンスWD1,WD2に基づいて、各撮像装置3a,3bを構成するラインセンサカメラの画素分解能(mm/pix)を算出する。
【0039】
この算出に際し、各ラインセンサカメラの画素分解能(mm/pix)について、ワーキングディスタンス(mm)毎にその値が決められており、コンピュータシステム7の図示しない記憶部に、ワーキングディスタンス(mm)に対する各ラインセンサカメラの画素分解能(mm/pix)が記憶されている。本実施形態では、表1に示すように、ワーキングディスタンス(mm)に対応する丸鋼材Sの径ごとに画素分解能(mm/pix)の値が決められている。例えば、丸鋼材Sの径が200mmである場合、各ラインセンサカメラの画素分解能は0.805(mm/pix)となる。
【0040】
【0041】
次いで、撮像画像重ね合わせ部8は、ステップS24において、
図6(b)、(c)に示すように、各ラインセンカメラサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の端部E3ae,E3beから算出した画素数napix,nabpixだけずらした位置を、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の重ね合わせ位置T3a,T3bに設定する。
【0042】
具体的には、
図6(b)に示すように、撮像画像E3aにおけるラインセンサカメラ間の長手方向の中間位置の真下に相当する位置を重ね合わせ位置T(T3a)とし、撮像画像E3aの撮像装置3b側の端部E3aeから重ね合わせ位置T(T3a)までの長手方向に沿った画素数napixを求める。この画素数napixは、2つの撮像装置3a、3b間の距離H、ステップS23で算出した撮像装置3aのワーキングディスタンスWD1、画角αa、及び前記で算出した撮像装置3aの画素分解能(mm/pix)から次の(5)式により求められる。
napix=[WD1×tan(αa/2)-H/2]/画素分解能(WD1)・・・(5)
【0043】
同様にして、
図6(c)に示すように、撮像画像E3bにおけるラインセンサカメラ間の長手方向の中間位置の真下に相当する位置を重ね合わせ位置T(T3b)とし、撮像画像E3bの撮像装置3a側の端部E3beから重ね合わせ位置T(T3b)までの長手方向に沿った画素数nbpixを求める。この画素数nbpixは、2つの撮像装置3a、3b間の距離H、ステップS23で算出した撮像装置3bのワーキングディスタンスWD2、画角αb、及び前記で算出した撮像装置3bの画素分解能(mm/pix)から次の(6)式により求められる。
nbpix=[WD2×tan(αb/2)-H/2]/画素分解能(WD2)・・・(6)
これにより、ステップS24は終了し、ステップS25に移行する。
【0044】
そして、ステップS25において、撮像画像重ね合わせ部8は、
図6(d)に示すように、各ラインセンサカメラによる丸鋼材Sの2つの撮像画像E3a,E3bの各々を、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定された重ね合わせ位置T3a,T3bが互いに重ね合わされるように、重ね合わせる(重ね合わせステップ)。これにより、2つの撮像画像E3a,E3bは、重ね合わせ位置Tで重ね合わされることになる。
【0045】
ここで、前述のステップS24(重ね合わせ位置設定ステップ)において、ワーキングディスタンスWD1,WD2に基づいて、各ラインセンサカメラの画素分解能(mm/pix)を算出せずに、一律の画素分解能(mm/pix)とし、この一律の画素分解能(mm/pix)に基づいて各ラインセンサカメラによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bにおける画素数napix,nabpixを算出したとする。そうすると、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の端部から算出した画素数napix,nabpixだけずらした位置を、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の重ね合わせ位置T3a,T3bに設定した際に、撮像画像E3a,E3bの各々の重ね合わせ位置T3a,T3bが不適切な位置となる。
【0046】
このため、ステップS24において、ワーキングディスタンスWD1,WD2に基づいて、各ラインセンサカメラの画素分解能(mm/pix)を算出するようにすることで、画素分解能の変化に確実に対応し、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の重ね合わせ位置T3a,T3bを適切に設定することができる。
次いで、ステップS26において、撮像画像重ね合わせ部8は、重ね合わされた撮像画像E3a,E3bに対しマーキングM(M3a+M3bを含む)以外のノイズ除去処理を行う。
次いで、ステップS27において、撮像画像重ね合わせ部8は、ノイズを除去した重ね合わせ撮像画像E3a,E3bに2値化処理を行う。
【0047】
その後、ステップS28において、撮像画像重ね合わせ部8は、ノイズを除去した2値化画像をマーキング抽出部9に対し出力する。これにより、ステップS2(撮像画像重ね合わせステップ)は終了する。
そして、ステップS2が終了した後、
図3に示すように、ステップS3に移行する。
ステップS3では、マーキング抽出部9は、重ね合わされた丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bからマーキングMを抽出する(マーキング抽出ステップ)。
このマーキング抽出ステップでは、マーキングM、及びマーキングMの周方向位置及び長手方向位置が抽出される。
【0048】
最後に、ステップS4において、表示装置10は、コンピュータシステム7のマーキング抽出部9から出力されたマーキング抽出結果、即ち、マーキングM、及びマーキングMの周方向位置及び長手方向位置を表示する。
また、ステップS1~ステップS4が終了した後、台車を長手方向に移動させて、撮像装置3bで撮像された撮像範囲L3bが撮像装置3aで撮像された撮像範囲L3aとなるまでターニングローラ2上に載置されている丸鋼材Sを長手方向に移動させ、ステップS1~ステップS4を行い、鋼材Sの全長のマーキングMを検出するまで、ステップS1~ステップS4と丸鋼材Sの長手方向の移動を繰り返せばよい。
【0049】
このように、本実施形態に係る撮像画像重ね合わせ方法及びマーキン検出方法によれば、被写体となる丸鋼材Sの寸法に応じて2つの撮像装置3a,3bの各々と被写体となる丸鋼材Sとの間の距離であるワーキングディスタンスWD1,WD2を算出する(ステップS23)。そして、算出したワーキングディスタンスWD1,WD2に応じて2つの撮像画像E3a,E3bの重ね合わせ位置Tを2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定する(ステップS24)。更に、2つの撮像画像E3a,E3bの各々を、2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定された重ね位置T(T3a)、T(T3b)で重ね合わせる(ステップS25)。
【0050】
これにより、長手方向に延びる丸鋼材Sを被写体とし、長手方向に隣り合う2つの撮像装置3a,3bを用いて撮像して得た、長手方向に沿って異なる範囲かつ重複する範囲を有する2つの撮像画像E3a,E3bを、ワーキングディスタンスWDに応じて適切に長手方向に重ね合わせることができる鋼材の撮像画像重ね合わせ方法及び鋼材のマーキング検出方法を提供できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、本実施形態では、丸鋼材Sの長手方向に沿って2台の撮像装置3a,3bを配置してあるが、2台以上の複数台の撮像装置を配置するようにしてもよい。
この場合、任意の2つの撮像装置から得られる丸鋼材Sの長手方向に同一部分を含む2つの撮像画像を長手方向に重ね合わせるに際し、ステップS1~S4を実行すればよく、例えば、全ての長手方向に隣り合う2つの撮像画像を長手方向に重ね合わせるに際し、ステップS1~S4を実行するようにしてもよい。
また、本実施形態では、鋼材を丸鋼材S、各撮像装置3a,3bをラインセンサカメラとしてあるが、丸鋼材S以外の鋼材、ラインセンサカメラ以外の撮像装置としてもよい。
【0052】
この場合、画像取込ステップにおいて、2つの撮像装置3a,3bで撮像された鋼材の撮像画像E3a,E3bの各々を取り込み、重ね合わせ位置決定ステップにおいて、2つの撮像装置3a,3b間の長手方向に沿った距離Hに基づいて、取り込んだ各撮像装置3a,3bによる鋼材の撮像画像E3a,E3bの各々の長手方向の重ね合わせ位置Tを決定する。また、ワーキングディスタンス算出ステップにおいて、被写体となる丸鋼材Sの寸法に応じて2つの撮像装置3a,3bの各々と被写体となる丸鋼材Sとの間の距離であるワーキングディスタンスWD1,WD2を算出する。そして、重ね合わせ位置設定ステップにおいて、決定された2つの撮像画像E3a,E3bの長手方向の重ね合わせ位置Tを、ステップS23で算出したワーキングディスタンスWD1,WD2に応じて、ステップS21で取り込んだ2つの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定する。更に、重ね合わせステップにおいて、各ラインセンサカメラによる丸鋼材Sの2つの撮像画像E3a,E3bの各々を、各ラインセンサによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々上に設定された重ね合わせ位置T3a,T3bが互いに重ね合わされるように、重ね合わせる。
【0053】
なお、鋼材を丸鋼材S以外とする例として、
図8に示すような断面正方形の角ビレットSとする例が挙げられ、この場合、各撮像装置3a,3bを角ビレットSの表面を撮像するエリアセンサカメラとすることが好ましい。
また、撮像対象となる鋼材は、その表面に形成された疵の位置にマーキングを塗布してないものであってもよい。
また、重ね合わせ位置決定ステップにおいて、取り込んだ各撮像装置3a,3bによる鋼材の撮像画像E3a,E3bの各々の長手方向の重ね合わせ位置Tを決定するに際し、2つの撮像装置3a,3b間の長手方向に沿った距離Hに基づく必要は必ずしもない。
【0054】
また、重ね合わせ位置決定ステップにおいて、それぞれの撮像画像E3a,E3bにおける、2つのラインセンサカメラ間の長手方向の中間位置の真下に相当する位置を、周方向に繋ぎ合わされた各ラインセンサカメラによる丸鋼材Sの撮像画像E3a,E3bの各々の長手方向の重ね合わせ位置Tに決定しているが、2つのラインセンサカメラ間の長手方向の中間位置の真下に相当する位置を重ね合わせ位置Tに決定する必要は必ずしもない。
また、2つの撮像装置3a,3bは、撮像ラインが丸鋼材Sの長手方向に沿うように設置されている必要は必ずしもない。
【符号の説明】
【0055】
1 マーキング検出装置
2 ターニングローラ
3a,3b 撮像装置
4 カメラ制御装置
5 照明装置
6 照明制御装置
7 コンピュータシステム
8 撮像画像重ね合わせ部
9 マーキング抽出部
10 表示装置
11 上位計算機
12 台座部
13 支持脚
14 第1支持部材
15 第2支持部材
16 第3支持部材
17 第4支持部材
18 パルスジェネレータ
P 最上位置(特定位置)
S 丸鋼材(鋼材)