(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063146
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】マスク及びマスク用原反
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220414BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 A
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171537
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】515315325
【氏名又は名称】株式会社ジャルコ
(72)【発明者】
【氏名】青山 博司
(72)【発明者】
【氏名】市本 真也
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、平面視において複数の機能を発揮しうるマスクを提供することにある。
【解決手段】本発明の一態様に係るマスクは、装着者の口を覆うマスクであって、積層状態の複数の不織布層を有し、外部からの異物の前記装着者の口への侵入を抑制する本体部と、本体部の両側方に位置し、装着時において前記本体部の装着者に対する相対位置を保持する装着部とを備え、前記複数の不織布層の少なくとも一層が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の口を覆うマスクであって、
積層状態の複数の不織布層を有し、外部からの異物の前記装着者の口への侵入を抑制する本体部と、
前記本体部の両側方に位置し、装着時において前記本体部の装着者に対する相対位置を保持する装着部とを備え、
前記複数の不織布層の少なくとも一層が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する多機能層であるマスク。
【請求項2】
前記多機能層が、質の異なる材料からなる複数のシート材を結合した複合材から構成されている請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記多機能層が、隣接する前記複数のシート材の端部に両シート材を接合する超音波溶着部を有する請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記多機能層が、隣接する前記複数のシート材の端部に両シート材を接合するホットメルト溶着部を有する請求項2に記載のマスク。
【請求項5】
前記多機能層が、前記複数のシート材として、不織布を主体とする不織布部と、前記不織布部よりも高度の高い硬質部とを有する請求項2、請求項3又は請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記複数の不織布層のうち前記装着者の肌と接する内層が、前記多機能層であり、
装着時に、前記内層が、中央部において前記装着者の口との間に隙間が形成され、両側部において前記装着者の肌と接するように設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項7】
前記両側部が、前記異機能領域として、前記中央部よりも肌に優しい材料から構成される領域を有する請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
前記両側部が、冷感材料を含む請求項6又は請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記両側部が、温感材料を含む請求項6、請求項7又は請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記本体部が、前記装着者の肌と接する内層と、前記内層よりも外側に積層され前記異物の侵入を抑制するフィルタ層と、前記フィルタ層よりも外側に積層される外層とを有する請求項1から請求項5の何れか1項に記載のマスク。
【請求項11】
前記フィルタ層が、メルトブローン不織布を主体とするメルトブローン不織布部を有する請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
前記フィルタ層と前記外層とが前記多機能層であり、
前記フィルタ層が、前記異機能領域として、中央部における第一通過領域と、前記第一通過領域よりも通気性が低い両側のフィルタ領域とを有し、
前記外層が、前記異機能領域として、平面視前記第一通過領域を覆うように配されるとともに前記フィルタ領域よりも通気性が低い遮蔽領域と、前記遮蔽領域の側方に配され遮蔽領域よりも通気性が高い第二通過領域とを有し、
前記フィルタ層と前記外層とが他の層を介さずに直接積層され、
前記本体部が、少なくとも前記遮蔽領域の周縁と前記フィルタ領域との間において前記フィルタ層と外層との未接合の積層部位を有する請求項10又は請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
不織布を主体とする不織布部を有するとともに、マスクの外部からの異物の装着者の口への侵入を抑制する本体部を構成するためのシート状のマスク用原反であって、
平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する多機能層を備えるマスク用原反。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク及びマスク用原反に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマスクとして、積層状態の複数の不織布層を有し、外部からの異物の装着者の口への侵入を抑制する本体部と、本体部の両側方に位置し、装着時において前記本体部の装着者に対する相対位置を保持すべく装着者の耳に掛けられる装着部とを備える衛生マスクが公知である(特開2003-135612号公報参照)。
衛生マスクは、少なくとも装着者の口の前を覆い異物の装着者の口への侵入を抑制することを目的とするものであるが、装着時には口前に限らずにより広い領域を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマスクにあっては、異物の侵入の抑制を目的とする領域と異なる領域においても、上述の抑制を目的とする領域と同様の機能を有するものである。つまり、マスクの本体部を構成する不織布層は、平面視において同一機能を有するものであった。このため、不織布層が平面視において多様の用途に対応することは困難である。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、平面視において複数の機能を発揮しうるマスク、及びそのようなマスクを構成するためのマスク用原反を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係るマスクは、
装着者の口を覆うマスクであって、
積層状態の複数の不織布層を有し、外部からの異物の前記装着者の口への侵入を抑制する本体部と、
本体部の両側方に位置し、装着時において前記本体部の装着者に対する相対位置を保持する装着部とを備え、
前記複数の不織布層の少なくとも一層が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する。
【0007】
前記構成からなるマスクは、前記複数の不織布層の少なくとも一層が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有するため、複数の異機能領域が異なる機能を発揮することで、平面視において異なる機能を発揮することができる。ここで、機能には、少なくとも、通気性能、色彩、保湿性能、吸水性、抗ウィルス性能、抗菌性能、肌触り、ウィルスやバクテリア飛沫の捕集性、帯電性、微粒子やウィルスやバクテリアのろ過効率、厚み、目付、臭い、防臭性能、伸縮性能等が含まれる。ここで、「平面視において」とは、プリーツ型マスクでは、マスクを正面から見た状態を言い、立体型マスク、いわゆる3Dマスクにおいては、マスクを開いた状態にしたものを正面から見た状態を言う。
【0008】
前記多機能層が、質の異なる材料からなる複数のシート材を結合した複合材から構成されていることが好ましい。複合材を用いることで、容易に当該マスクを製造することができる。
【0009】
前記多機能層が、隣接する前記複数のシート材の端部に両シート材を接合する超音波溶着部を有することが好ましい。これにより、超音波溶着によって隣接するシート材を容易かつ確実に接合することができる。
【0010】
前記多機能層が、隣接する前記複数のシート材の端部に両シート材を接合するホットメルト溶着部を有することが好ましい。これにより、ホットメルト法によって隣接するシート材を容易かつ確実に接合することができる。
【0011】
前記多機能層が、前記複数のシート材として、不織布を主体とする不織布部と、前記不織布部よりも高度の高い硬質部とを有することが好ましい。これにより、不織布部と硬質部とによって平面視において異なる機能を発揮することができる。
【0012】
当該マスクは、
前記複数の不織布層のうち前記装着者の肌と接する内層が、前記多機能層であり、
装着時に、前記内層が、中央部において前記装着者の口との間に隙間が形成され、両側部において前記装着者の肌と接するように設けられているとよい。これにより、肌に接する両側部と接しない中央部とで機能を異ならしめることができる。
【0013】
前記両側部が、前記異機能領域として、前記中央部よりも肌に優しい材料から構成される領域を有することが好ましい。
【0014】
当該マスクは、装着者の肌と接する両側部が、前記異機能領域として、前記中央部よりも肌に優しい材料から構成される領域を有することで、装着者の肌あれ等を抑制することができる。ここで、肌に優しいには、肌荒れやアレルギー反応を示すような化学物質が含まれていない、例えば、シルクやコットンのような天然素材が含まれる。
【0015】
前記両側部が、冷感材料を含むことが好ましい。これにより、装着者が涼感を感じることができる。
【0016】
前記両側部が、温感材料を含むことが好ましい。これにより、装着者が温感を感じることができる。
【0017】
当該マスクは、前記本体部が、前記装着者の肌と接する内層と、前記内層よりも外側に積層され前記異物の侵入を抑制するフィルタ層と、前記フィルタ層よりも外側に積層される外層とを有することが好ましい。これにより、内層とフィルタ層と外層とを有する少なくとも三層の本体部を構成することができる。なお、この構成を採用する際に、内層とフィルタ層との間に他の層を介在させてもよく、フィルタ層と外層との間に他の層との間に他の層を介在させてもよい。
【0018】
前記フィルタ層が、メルトブローン不織布を主体とするメルトブローン不織布部を有することが好ましい。これにより、フィルタ層が、スパンボンド不織布よりも通気性の低いメルトブローン不織布部を有するため、異物の侵入の抑制効果の向上が図られる。
【0019】
当該マスクにあっては、
前記フィルタ層と前記外層とが前記多機能層であり、
前記フィルタ層が、前記異機能領域として、中央部における第一通過領域と、前記第一通過領域よりも通気性が低い両側のフィルタ領域とを有し、
前記外層が、前記異機能領域として、平面視前記第一通過領域を覆うように配されるとともに前記フィルタ領域よりも通気性が低い遮蔽領域と、前記遮蔽領域の側方に配され遮蔽領域よりも通気性が高い第二通過領域とを有し、
前記フィルタ層と前記外層とが他の層を介さずに直接積層され、
前記本体部が、少なくとも前記遮蔽領域の周縁と前記フィルタ領域との間において前記フィルタ層と外層との未接合の積層部位を有することが好ましい。
【0020】
前記構成を採用することで、装着者の吸気及び排気が容易に行い得る。つまり、吸気時には、外気が外層の第二通過領域、フィルタ層のフィルタ領域、フィルタ層の第一通過領域、内層の順に通って、装着者の口に吸いこまれる。このように各層において外気の異物の侵入の抑制が図られるうえに、特に、外気が通気性の低いフィルタ領域を通過することで異物侵入抑制の効果の向上が図られる。一方、排気時には、内層とフィルタ層の第一通過領域とを通過した排気が、外層の遮蔽領域に衝突する。この衝突によって、フィルタ層と外層とは、未接合の積層部位との間において隙間が形成されやすく、前記衝突した排気がこの隙間を介して外層の通過領域を通過する。このため、排気がフィルタ領域を通過することを抑制されることによって、装着者の排気が容易になる。
【0021】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係るマスク用原反は、
不織布を主体とする不織布部を有するとともに、マスクの外部からの異物の装着者の口への侵入を抑制する本体部を構成するためのシート状のマスク用原反であって、
平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する多機能層を備える。
【0022】
前記構成からなる当該マスク用原反を用いて製造されたマスクは、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有するため、複数の異機能領域が異なる機能を発揮することで、平面視において異なる機能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係るマスク及びマスク用原反は、平面視において複数の機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るマスクの模式的正面図(前面図)である。
【
図2】
図2は、
図1のマスクの本体部の模式的縦断面図(平面方向)である。
【
図3】
図3は、
図1のマスクの本体部の内層の概略的正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第二実施形態のマスクの模式的縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のマスクの本体部のフィルタ層の概略正面図である。
【
図6】
図6は、
図4のマスクの本体部の外層の概略正面図である。
【
図7】
図7は、
図4のマスクの本体部の概略的断面図であって、吸気時の状況を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、
図4のマスクの本体部の概略的断面図であって、排気時の状況を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態のマスク用原反の概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の一形態として、まず
図1~
図3のマスクを詳説する。なお、実施形態においては、プリーツ型のマスクについて説明するが、立体型のマスクについて本発明を適用することも可能である。
【0026】
[第一実施形態]
<マスク>
図1~
図3のマスク1は、本体部2と装着部4とを備える。本体部2は、積層状態の複数の不織布層を有し、外部からの異物の装着者の口への侵入を抑制する。
図1は、マスク1の平面視における図である。本体部2は、変形することで装着者の鼻の形状に沿って変形可能なノーズワイヤ3を有している。装着部4は、本体部2の両側方に位置し、装着時において本体部2の装着者に対する相対位置を保持する。当該マスク1は、装着者の口に外部にある埃や菌等の異物が侵入することを防止するための衛生マスクである。当該マスク1は、装着時に、本体部2の内面(装着者側の面)が、中央部において装着者の口との間に隙間が形成され、両側部において装着者の肌と接するように設けられている。
【0027】
(本体部)
本体部2を構成する複数の不織布層の少なくとも一層が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する多機能層である。これについては、後に詳述する。
【0028】
本体部2は、
図1に示すように、上下複数回(2回)織り込まれたプリーツ24が形成されている。このため、上下方向に本体部2を開くと、装着時に装着者の口とともに鼻と顎とを覆うことができる。本体部2は、装着時に、内層23が、中央部において装着者の口との間に隙間が形成され、両側部において装着者の肌と接するように設けられている。
【0029】
本体部2は、上述した複数の不織布層として、
図2に示すように、装着者の肌と接する内層23と、内層23よりも外側に積層され異物の侵入を抑制するフィルタ層22と、フィルタ層22の外側に積層される外層21とを有する三層構造からなる。内層23、フィルタ層22及び外層21は、不織布を主体とするシート部材から構成されている。本体部2は、内層23、フィルタ層22及び外層21の各シート部材が、周縁部において接合されている。この接合手段は、例えば、ヒートシール、超音波溶接、縫製、接着剤などの手段が採用される。内層23、フィルタ層22及び外層21は、上述した接合部位以外は、未接合の状態で積層されている。
【0030】
外層21は、スパンポンド法によって作成されるスパンポンド不織布からなる。外層21は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、コットン等の合成樹脂素材等からなる素材によって形成されている。外層21は、防水加工処理等の処理がなされていてもよい。
【0031】
フィルタ層22は、メルトブローン法によって作成されるメルトブローン不織布からなる。フィルタ層22は、外層21よりも通気性が低い。フィルタ層22は、他の層よりも、埃、細菌、ウィルス等の侵入抑制効果の高い層である。フィルタ層22は、エレクトリック帯電処理が施されていることが好ましく、これにより、電気的な作用によって異物を吸着でき異物侵入抑制効果を向上できる。
【0032】
内層23は、上述した多機能層である。内層23は、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有する多機能層を備えるマスク用原反7(
図9参照)から形成される。マスク用原反は、長尺のシート部材であり、短手方向の中央部と両側部とが異なる素材から構成されている。
【0033】
内層23は、
図3に示すように、上述のように、装着時に、装着者の口との間に隙間が形成される中央部(以下、口前部232ということがある)と、装着者の肌と接する両側部(以下、接触部231ということがある)とに区画されている。内層23の接触部231が、上述のような異機能領域として、口前部232よりも肌に優しい材料から構成される領域を有している。なお、装着者によってマスク1との接触面積等が異なることは、自明である。つまり、内層23の両側部にマスク1と装着者と接触する領域として接触部231が設けられ、内層23の中央部にマスク1と装着者と接触しない領域として口前部232が設けられているが、装着者によっては、接触部231の一部が装着者に接触しない場合(接触部231の全面にわたっては装着者に接触しない場合)や、口前部232の一部が装着者の肌に接触する場合があることは言うまでもない。そして、内層23の両側部には、上述のように肌に優しい材料から構成される領域が形成されている。
【0034】
内層23は、上述のように異機能性領域を構成すべく、質の異なる材料からなる複数のシート材を結合した複合材から構成されている。複合材は異なる原材料によって形成された2つ以上の領域を有している1枚のシート状部材を含んでいる。
【0035】
口前部232のシート材は、不織布を主体とするシート材から構成されている。なお、主体とするとは、不織布がシート材の骨格を形成することを意味する。具体的には、口前部232のシート材は、スパンポンド法により形成されたスパンポンド不織布から構成されている。口前部232のシート材の不織布は、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等を素材としている。口前部232は、接触部231よりも通気性が高い。
【0036】
接触部231のシート材は、不織布を主体とするシート材から構成されている。具体的には、接触部231のシート材は、スパンポンド法により形成されたスパンポンド不織布から構成されている。接触部231のシート材の不織布は、レーヨン、キュプラ等を素材とし、口前部232の不織布の素材よりも、繊維中に含まれる水分量が多い素材であり、速乾性のある冷感材料を含む素材によって形成されている。
【0037】
多機能層は、隣接する複数のシート材の端部に両シート材を接合する接合部23Aを有している。具体的には、口前部232の一方の端部と、口前部232の一方側の接触部231の他方の端部とが、一の接合部23Aによって接合され、口前部232の他方の端部と、口前部232の他方側の接触部231の一方の端部とが、他の接合部23Aによって接合されている。接合部としては、超音波溶着によって両シート材を接合する超音波溶着部、ホットメルトによって両シート材を接合するホットメルト溶着部等を採用することができる。
【0038】
ノーズワイヤ3は、本体部2の上部に配置されている。ノーズワイヤ3は、マスク1を装着者が装着した状態で装着者の鼻の周囲とマスク1との間に隙間が設けられるのを防止するためのものである。ノーズワイヤ3は、装着者の鼻の形状に沿って湾曲させることができる。ノーズワイヤ3は、主に樹脂によって形成されているが、金属製のものや、樹脂の内部に金属線が配されているものであってもよい。ノーズワイヤ3は、外層21とフィルタ層22との間に配されている。ノーズワイヤ3が配置された箇所の周囲は、ヒートシールや超音波溶着によってシールされており、ノーズワイヤ3の所定の範囲以外への移動が規制されている。
【0039】
(装着部)
装着部4は、本体部2の両側方の端部にそれぞれ設けられる耳かけ紐から構成され、装着時に装着者の耳にかけられる。装着部4は、伸縮可能な紐から構成されている。装着部4の両端は、本体部2の側方の端部に所定の間隔をあけて固定されている。この固定手段としては、例えば超音波溶着等が採用される。
【0040】
<動作及び利点>
マスク1の装着の際には、装着者の鼻の部分の形状にあわせてノーズワイヤ3の形状を変形させる。その後に、ノーズワイヤ3の部分を鼻に接触させつつ、装着部4を装着者の耳にかける。そして、プリーツ24を上下に広げて本体部2の下部を装着者の顎のあたりまで覆うように移動させる。
【0041】
当該マスク1は、内層23が、平面視において機能の異なる複数の異機能領域を有するため、複数の異機能領域が異なる機能を発揮することで、平面視において異なる機能を発揮することができる。つまり、当該マスク1は、装着者の肌と接する内層23の接触部231が異機能領域として口前部232よりも肌に優しい材料から構成される領域を有することで、装着者の肌あれ等を抑制することができる。
【0042】
特に、装着者の顔に接する部分(接触部231)は冷感材料を用いつつ、その他の部分(口前部232)は一般の不織布マスク1と同様の素材から構成することができるため、マスク1としての性能を落とすことなく、装着者に涼しさを感じさせることができる。
【0043】
マスク1に用いられる内層23は、中央部(口前部232)と両側部(接触部231)の間には長手方向に直交する短手方向(
図1の矢印Aで示す方向)に沿って接続部が設けられているため、複合材料を製造しやすい。より詳細には、中央部と両側部を含む原反を製造することができる。なお、その原反を用いて自動的かつ連続的にマスク1の製造を行うことができる。仮にマスクの長手方向に沿って接続部分が設けられている場合には、長尺方向に沿って中央部と両端部が交互に配置されることとなり、原反の製造が本件の場合に比べると難しい。
【0044】
[第二実施形態]
第二実施形態のマスク5は、本体部6のフィルタ層62と、外層63とが多機能層であり、内層61が多機能層でない点で第一実施形態と異なっている。ノーズワイヤや装着部は、第一実施形態と同様の構成であるため説明を省略し、第一実施形態と異なる部分を主に説明する。なお、第二実施形態においても、内層を第一実施形態のような多機能層とすることも可能である。
【0045】
当該マスク5は、装着者の吸気及び排気が容易に行うことができるものである。従来の三層の不織布層から構成される衛生マスクは、適切に装着すると呼吸が苦しいという問題があつた。この問題を解決するために、排気弁を取り付けたマスクが知られている。しかしながら、排気弁を取り付けると、構造が複雑になったり、製造コストが高くなる。そこで、排気弁を取り付けることなく、簡単な構成で吸気及び排気が容易な当該マスク5を提供する。
【0046】
当該マスク5は、
図4に示すように外層63、フィルタ層62及び内層61を有する本体部6と、装着部とを備えている。本体部6は、吸気の際に空気通過量を減少させ、排気の際には空気通過量を増加させる空気通過量変更機構を備えている。
【0047】
内層61は、スパンポンド法によって形成されたスパンポンド不織布から構成され、この不織布は、ポリプロピレンやポリエチレン等から形成されている。
【0048】
フィルタ層62は、上述したように多機能層である。フィルタ層62は、
図5に示すように、異機能領域として、中央部における第一通過領域622と、第一通過領域622よりも通気性が低い両側のフィルタ領域621とを有している。第一通過領域622とフィルタ領域621とは、質の異なる材料からなる複数のシート材を結合した複合材から構成されている。隣接するシート材は、第一実施形態の多機能層と同様に接合部62Aによって接合されている(
図5参照)。
【0049】
フィルタ領域621のシート材は、メルトブローン法によって形成されたメルトブローン不織布から構成されている。第一通過領域622のシート材は、スパンポンド法によって形成されたスパンポンド不織布から構成されている。このため、第一通過領域622は、フィルタ領域621よりも密度が低く、通気性が良い。
【0050】
外層63は、上述したように多機能層である。フィルタ層22は、
図6に示すように、異機能領域として、平面視第一通過領域622を覆うように配されるとともにフィルタ領域621よりも通気性が低い遮蔽領域631と、遮蔽領域631の側方に配され遮蔽領域631よりも通気性が高い第二通過領域632とを有している。遮蔽領域631と第二通過領域632とは、質の異なる材料からなる複数のシート材を結合した複合材から構成されている。外層63は、不織布を主体とする不織布部(第二通過領域632)と、不織布部よりも高度の高い硬質部(遮蔽領域631)とを有する。隣接するシート材は、第一実施形態の多機能層と同様に接合部63Aによって接合されている(
図5参照)。
【0051】
遮蔽領域631は、空気を遮断する。言い換えると、吸気時に、遮蔽領域631から空気は流入することができない。遮蔽領域631は、ビニール等の合成樹脂シートから構成される。第二通過領域632は、空気が通過可能な部分である。第二通過領域632は、スパンポンド法によって形成されたスパンポンド不織布から構成されている。第二通過領域632は、フィルタ領域621よりも通気性が高い。
【0052】
<動作及び利点>
当該マスク5は、吸気時には、外気が外層63の第二通過領域631、フィルタ層62のフィルタ領域621、フィルタ層62の第一通過領域622、内層61の順に通って、装着者の口に吸いこまれる(
図7参照)。このように各層において外気の異物の侵入の抑制が図られるうえに、特に、外気が通気性の低いフィルタ領域を通過することで異物侵入抑制の効果の向上が図られる。
【0053】
一方、当該マスク5は、排気時には、内層61とフィルタ層62の第一通過領域622とを通過した排気が、外層63の遮蔽領域632に衝突し、この衝突によって、フィルタ層62と外層63とは、未接合の積層部位との間において隙間が形成され、上述の衝突した排気がこの隙間を介して外層63の第二通過領域631を通過する(
図8参照)。このため、排気がフィルタ領域621を通過することを抑制されることによって、装着者の排気が容易になる。つまり、当該マスク5は、遮蔽領域632とフィルタ領域621との間(フィルタ層62と外層63との未接合の積層部位)が、吸気時には
図7のように密着し、排気時には
図8のように離間することで、弁として機能する。これにより、当該マスク5は、吸気及び排気が好適に行われる。
【0054】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0055】
前記実施形態にあっては、装着部4が耳に紐をかけて装着するタイプのものについて説明したが、本発明はこれに限定されない。天塩儀、頭の後ろで紐を結ぶタイプであってもよい。さらには、本体部が側方に延出し、その延出部に開口が設けられ、この開口を耳にかけるタイプであってもよい。また、耳かけ紐を採用する場合であっても、紐の素材は種々のものを採用できる。
【0056】
第一実施形態にあっては、装着者の顔に接触する部分(接触部231)に冷感材料を用いたが、本発明はこれに限定されない。冷感材料に代えて温感材料を採用したり、コットン等の肌に優しい柔らかい素材であったり、通気性のない材料等を用いることも可能である。接触部231に肌に優しい素材を用い、且つ口前部232に抗菌剤が塗布された不織布をもちいることもできる。この場合には、肌荒れ等を抑制しつつ、装着者のつば等で不織布に異臭が付着したりするのを防止できる。
【0057】
前記実施形態にあっては、中央部と両側方とで異なる機能を有するものについて説明したが、上下で別の機能を有する領域としたり、角部に別の素材を用いたり、目的や用途に応じて別の機能を有する領域の数、領域の素材等を変更することができる。
【0058】
中央部(口前部232)の箇所に透明なビニルや樹脂などの素材を用いて、マスク装着者の口が外部から視認できるようにしても良い。
【0059】
前記実施形態にあっては、ノーズワイヤ3を有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されない。また、ノーズワイヤ3を有する場合にあっても、アルミ等の別の素材を採用することも可能であり、また長さや幅は適宜設計変更可能である。
【0060】
前記実施形態では、プリーツ型のマスクを例としたため、多機能層は1枚のシートから形成されていたが、本発明はこれに限らず、いわゆる3Dなどと称される立体型マスクであっても適応可能である。この立体型マスクにおいては1つの層を2枚のシートを接合して形成される場合もある。この場合においては、本発明は、2枚のシートを接合して形成されたシートにおいて、平面視において異なる複数の機能を奏する領域が含まれていればよい。
【0061】
前記実施形態にあっては、本体部が三層構造のものについて説明したが、各層の間にさらなる層を追加することも可能であり、例えば、各層の間に、抗菌剤、抗ウィルス剤、防臭剤等を塗布した不織布層を介在させたり、綿、コットン等の層を介在させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、種々のマスクに適し、特に衛生マスクに適している。
【符号の説明】
【0063】
1、5 マスク
2、6 本体部
4 装着部
21、63 外層
22、62 フィルタ層
23、61 内層
23A 62A 63A 接合部
231 接触部(内層の両側部)
232 口前部(内層の中央部)
621 フィルタ領域
622 第一通過領域
631 第二通過領域
632 通過領域
7 マスク用原反