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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063151
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ベルト引寄せ治具
(51)【国際特許分類】
   F16G 3/16 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
F16G3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171544
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 武士
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 暁彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量化に有利なベルト引寄せ治具を提供する。
【解決手段】ベルトBの一方のベルト端部Baをクランプする第1クランプ14に対して他方のベルト端部Bbをクランプする第2クランプ16は、スライドプレート15、ガイド溝等からなるガイド機構によって、それらを互いに離した第1スライド位置と、近づけた第2スライド位置との間でスライド自在にされている。第2スライド位置に向けて第2クランプ16をスライドした際にスライドプレート15の先端部に設けた係合突起24が第2クランプ16側の可動プレートに設けた係合孔25に係合し、第2クランプ16が第2スライド位置に保持される。レバー部材を操作することで可動プレートが回動して、係合突起24と係合孔25の係合が解除される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの一方のベルト端部をクランプする第1クランプと、
前記ベルトの他方のベルト端部をクランプする第2クランプと、
前記第1クランプに一体に設けられ、前記一方のベルト端部と前記他方のベルト端部の引き寄せ方向に延びたスライドプレートと、前記第2クランプに一体に設けられ、前記スライドプレートを前記引き寄せ方向にガイドするガイド溝とを有し、前記第1クランプと前記第2クランプとを相互に離した第1スライド位置と、前記第1クランプと前記第2クランプとを近づけた第2スライド位置との間でスライド移動させるガイド機構と、
前記スライドプレートの先端部に設けた第1係合部と、
前記第1係合部と係合する第2係合部を有し、前記第2係合部が前記第1係合部と係合する係合位置と、前記第2係合部の前記第1係合部との係合を解除する係合解除位置との間で回動自在に前記第2クランプに設けられ、前記第1クランプの前記第2スライド位置への移動の際に、前記第1係合部と当接して前記係合解除位置に向けて回動する可動プレートと、
前記可動プレートを前記係合位置に向けて付勢する付勢部材と
を備えるベルト引寄せ治具。
【請求項2】
前記可動プレートに取り付けられ、前記可動プレートを前記係合解除位置に向けて回動するためのレバー部材を備える、請求項1に記載のベルト引寄せ治具。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記可動プレートまたは前記可動プレートに取り付けられた金属に磁力が作用する磁石である、請求項1または2に記載のベルト引寄せ治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの端部同士を引き寄せた状態にするためのベルト引寄せ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば搬送装置に用いられるベルト(搬送ベルト)を交換する場合に、プーリーに新規な搬送ベルトをかけ渡した状態にしてから、搬送ベルトを無端帯状に接合加工することがある。このような場合の接合手法としては、両ベルト端部を例えばジグザグ状にそれぞれ加工し、その両端部を引き寄せて突き合わせた状態で接合装置にセットする。接合装置では、搬送ベルトの両ベルト端部を加熱加圧することにより、両ベルト端部を融着して一体化する。
【0003】
上記のような接合では、搬送ベルトの両端部を引き寄せて突き合わせた状態にするベルト引寄せ治具が用いられる。ベルト引寄せ治具は、ベルト端部をクランプ等で保持する機能、両ベルト端部を引き寄せて突き合わせた状態に保持する機能を有する。後者の機能は、例えばリードスクリューを用いたものが知られている。
【0004】
また、接合装置の一部として設けられ、突き合わせた両ベルト端部の下側を支持する下型に、一方のベルト端部をクランプする第1のクランプと他方のベルト端部を固定した第2のクランプとをそれぞれ係合させることで、両ベルト端部を突き合わせて保持する構成も知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-171888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにリードスクリューを用いてベルト端部を引き寄せる機構では、重量が大きくなる他、ねじのリードによりベルト端部を引き寄せ、引き寄せ状態の解除を行うには、レンチ等の工具でねじの回転操作を行うが、これらを短時間で行うにはねじの回転操作を高速で行う必要があり、手間がかかる。電動工具を用いることも可能であるが、ベルト引寄せ治具以外に電動工具を携行する必要があり携行品の重量がかさんでしまうことからも、これら電動工具等を用いずに、簡単に操作を行える簡素化した構成とし、軽量化に有利なベルト引寄せ治具の開発が望まれている。
【0007】
上記事情を鑑み、軽量化に有利なベルト引寄せ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベルト引寄せ治具は、ベルトの一方のベルト端部をクランプする第1クランプと、前記ベルトの他方のベルト端部をクランプする第2クランプと、前記第1クランプに一体に設けられ、前記一方のベルト端部と前記他方のベルト端部の引き寄せ方向に延びたスライドプレートと、前記第2クランプに一体に設けられ、前記スライドプレートを前記引き寄せ方向にガイドするガイド溝とを有し、前記第1クランプと前記第2クランプとを相互に離した第1スライド位置と、前記第1クランプと前記第2クランプとを近づけた第2スライド位置との間でスライド移動させるガイド機構と、前記スライドプレートの先端部に設けた第1係合部と、前記第1係合部と係合する第2係合部を有し、前記第2係合部が前記第1係合部と係合する係合位置と、前記第2係合部の前記第1係合部との係合を解除する係合解除位置との間で回動自在に前記第2クランプに設けられ、前記第1クランプの前記第2スライド位置への移動の際に、前記第1係合部と当接して前記係合解除位置に向けて回動する可動プレートと、前記可動プレートを前記係合位置に向けて付勢する付勢部材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1クランプに一体に設けたスライドプレートと、第2クランプに設けたガイド溝とで、第1クランプと第2クランプとについて、第1スライド位置と第2スライド位置との間でスライドをガイドするガイド機構を構成する。また、スライドプレートに設けた第1係合部と、第2クランプに係合位置と係合解除位置との間で回動自在に設けた可動プレートに設けた第2係合部と、の係合によって、第2スライド位置に保持する構成であるため、構成が簡単になり軽量化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るベルト引寄せ治具の構成を示す斜視図である。
図2】ベルト端部を引き寄せた状態のベルト引寄せ治具を示す斜視図である。
図3】第1ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図4】第2ユニットの構成を示す斜視図である。
図5】可動機構の構成を下方から見た状態で示す分解斜視図である。
図6】係合突起の傾斜面により可動プレートが係合解除位置に向けて回動されている状態を示す要部断面図である。
図7】係合突起と係合孔とが係合した状態を示す要部断面図である。
図8】レバー部材の操作により係合突起と係合孔との係合を解除した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、ベルト引寄せ治具10は、ベルトBの一方のベルト端部Baと他方のベルト端部Bbを接合して無端加工する際に、ベルト端部Baとベルト端部BbをベルトBの走行方向(図中X方向)に沿って引き寄せて突き合わせるための治具である。ベルト引寄せ治具10は、第1ユニット11と第2ユニット12とに大別される。第1ユニット11は、第1クランプ14、スライドプレート15等で構成される。第2ユニット12は、第2クランプ16、ガイドユニット17、支持プレート18、可動機構部21等で構成されている。
【0012】
以下の説明では、ベルト引寄せ治具10について、ベルトBの走行方向が水平方向、ベルトBの厚み方向(Y方向)が上下方向となる姿勢であるとして説明するが、ベルト引寄せ治具10の使用時の姿勢は、これに限られない。なお、ベルトBの幅方向(Z方向)は、ベルトBの走行方向、厚み方向に対して直交する方向である。また、以下では、ベルトBの走行方向、厚み方向及び幅方向を、単に走行方向、厚み方向、幅方向と称する。さらに、走行方向がベルト端部Ba、Bbを引き寄せる引き寄せ方向である。
【0013】
第1ユニット11と第2ユニット12は、相互にスライド自在に組み付けられている。ここで、第1ユニット11を基準にすると、第2ユニット12は、図1に示されるように、第1ユニット11の係合突起24と第2ユニット12の係合孔25との係合を解除して、第2クランプ16を第1クランプ14から走行方向に引き離した第1スライド位置と、図2に示すように、第2クランプ16を第1クランプ14に近づけて係合突起24と係合孔25とを係合させた第2スライド位置との間でスライド移動する。なお、便宜的に第1ユニット11を基準にして、この第1ユニット11に対して第2ユニット12がスライド移動して、第1スライド位置、第2スライド位置に変位するものとして説明しているが、そのスライド移動は相対的なスライドであり、また第1スライド位置、第2スライド位置についても第1ユニット11と第2ユニット12との相対的なスライド位置である。
【0014】
第1スライド位置において、第1クランプ14にベルト端部Baを、第2クランプ16にベルト端部Bbをそれぞれクランプする。第1クランプ14と第2クランプ16にベルト端部Ba、ベルト端部Bbをクランプした状態で、第2ユニット12を第1ユニット11に対してスライド移動して第2スライド位置にすることで、ベルト端部Baとベルト端部Bbを突き合わせる。
【0015】
図3において、第1ユニット11の第1クランプ14は、略直方体の基台27、クランプ板28、一対のクランプねじ29を有している。基台27の上面の中央に走行方向に沿ったセット溝27aが形成されている。セット溝27aは、その幅は、ベルトBの幅と同じないしその幅よりも僅かに大きくされている。クランプ板28は、基台27の上面よりも小さなサイズの板状部材であり、孔28aと切欠き28bとが形成されている。一対の
クランプねじ29は、基台27の上面に設けたねじ穴にそれぞれ螺合している。この内の一方のクランプねじ29は、クランプ板28の孔28aを通してねじ穴に螺合している。
【0016】
一対のクランプねじ29を緩めることにより、クランプ板28は、一方のクランプねじ29を中心に回動させることができる。これにより、クランプ板28は、図3に実線で示されるように、切欠き28b内に他方のクランプねじ29が入り込み、セット溝27aを跨いだクランプ位置と、図3に二点鎖線で示されるように、他方のクランプねじ29が切欠き28b内から脱し、セット溝27aの上方から退避した退避位置との間で回動自在である。
【0017】
クランプ板28を退避位置とすることにより、セット溝27a内にベルト端部Baをセットし、またセット溝27aからベルト端部Baを取り外すことができる。また、セット溝27a内にベルト端部Baをセットした状態で、クランプ板28をクランプ位置に回動してから一対のクランプねじ29をそれぞれ締め込むことにより、基台27と(セット溝27aの底面)とクランプ板28との間に、セットされているベルト端部Baがクランプ(挟持)されて固定される。
【0018】
スライドプレート15は、断面L字状であって、第1クランプ14から第2クランプ16に向かって水平に延びたスライドプレート本体15aと、このスライドプレート本体15aの後端(第1クランプ14側の端部)から上方に向かって延びた取付部15bとを有している。このスライドプレート15は、その取付部15bが基台27の第2クランプ16側の面にボルト31で取り付けられて、第1クランプ14に固定されている。第1ユニット11では、上記のように断面L字状のスライドプレート15を第1クランプ14の基台27に取り付けることで、セット溝27aよりもスライドプレート本体15aの位置を低くしている。
【0019】
スライドプレート本体15aの第2クランプ16側の端部である先端部33は、その厚みが他の部分の厚みよりも薄くされている。このため先端部33は、他の部分よりも下面が高くなっている。この先端部33の下面には、第1係合部としての係合突起24が一体に形成されている。係合突起24は、スライドプレート本体15aの下面から下方に突出し、幅方向に延びている。係合突起24を含めた先端部33の厚みは、スライドプレート本体15aの他の厚みと同じかそれよりも小さい。また、係合突起24の先端部分には、斜め下方に向いた傾斜面24a(図6参照)、すなわち先端に向かうほど下方への突出量が連続的に漸減する傾斜面24aが形成されている。この傾斜面24aは、係合突起24と係合孔25との係合を円滑にするためのものである。
【0020】
スライドプレート本体15aは、その下面の係合突起24よりも後端側にずれた位置に、スライドストッパ34が設けられている。この例では、スライドストッパ34は円柱形状である。スライドストッパ34は、スライドプレート本体15aの下面に植設されて下方に突出している。このスライドストッパ34は、第2クランプ16を第1クランプ14から離す方向にスライド移動させた際に、第2ユニット12のガイド本体部17a(図4参照)に当接して、それ以上の第1ユニット11に対する第2ユニット12のスライド量を規制する。このスライドストッパ34により、第1ユニット11と第2ユニット12との分離が防止される。なお、スライドストッパ34は、その上端に一体に設けたねじをスライドプレート本体15aのねじ孔に螺合することで、スライドプレート本体15aに組み付けられており、第1ユニット11と第2ユニット12との組み付け及び分離の際には、スライドプレート本体15aから取り外すことができる。
【0021】
図4において、第2ユニット12の第2クランプ16は、上面にセット溝37aが形成された基台37、クランプ板38、一対のクランプねじ39を有している。この第2クランプ16の構成は、第1クランプ14と同様であるので、その詳細な説明を省略する。第2クランプ16は、セット溝37a内にセットされるベルト端部Bbをクランプする。
【0022】
ガイドユニット17は、ガイド本体部17aと、一対の連結部材17bとを有している。このガイドユニット17は、スライドプレート15とともにガイド機構を構成する。一対の連結部材17bは、基台37の幅方向に向く両側面に取り付けられており、それぞれ走行方向に平行に第1ユニット11に向かって延びている。一対の連結部材17bの先端の間にガイド本体部17aが固定されている。ガイド本体部17aには、スライドプレート本体15aすなわち第1ユニット11の移動を走行方向に案内するガイド溝40が形成されている。
【0023】
ガイドユニット17は、ガイド溝40にスライドプレート本体15aを通して第1ユニット11と第2ユニット12とを互いに組み付けたときに、第2クランプ16のセット溝37aの高さが第1クランプ14のセット溝27aの高さと同じになるように、基台37に対する一対の連結部材17bの取り付け位置が調整されている。これにより、引き寄せられるベルト端部Baとベルト端部Bbとの高さを同じにする。
【0024】
ガイド本体部17aは、この例では、下部プレート41と一対の上部プレート42とから構成される。下部プレート41は、基台37と同じ幅を有する板状であり、その両端が一対の連結部材17bに固定されている。この下部プレート41の上面には、ベルトBの走行方向に延びた溝41aが形成されている。溝41aは、その幅がスライドプレート本体15aの幅と同じないし僅かに大きい程度であり、この溝41a内にスライドプレート本体15aを配することで、スライドプレート本体15aの水平面における移動を走行方向に規制する。
【0025】
下部プレート41の両端の上面には、それぞれ上部プレート42が取り付けられている。上部プレート42は、平板状であって溝41aの上方に庇状にせり出している。溝41aの底面と上部プレート42の下面との間隔は、スライドプレート本体15aの厚みと同じないし僅かに大きい程度である。下部プレート41(溝41a)と上部プレート42との間にスライドプレート本体15aの両端を通すことで、スライドプレート本体15aの上下方向への移動を規制する。このように、溝41aと上部プレート42とにより、スライドプレート本体15aの移動を走行方向にのみに規制するガイド溝40が形成される。
【0026】
支持プレート18は、断面L字状であって、第2クランプ16から第1クランプ14に向かって水平に延びた支持プレート本体18aと、この支持プレート本体18aの後端(第2クランプ16側の端部)から上方に向かって延びた取付部18bとを有している。この支持プレート18は、基台37の第1クランプ14側の面に取付部18bがボルト43で取り付けられることで、第2クランプ16に固定されている。
【0027】
可動機構部21は、係合孔25を含み、第1ユニット11側の係合突起24と係合し、またそれらの係合を解除する機構である。この可動機構部21は、支持プレート本体18aの下面に取り付けられている。したがって、支持プレート本体18a、可動機構部21、上述のガイドユニット17及び第1ユニット11のスライドプレート本体15aは、セット溝27a、37aよりも低い位置に配される。これにより、引き寄せたベルト端部Baとベルト端部Bbの下側にこれらを接合する接合装置(図示省略)を挿入することができる。
【0028】
図5に可動機構部21を分解した状態を示す。図5は、可動機構部21を下方から見た状態を描いてある。支持プレート本体18aの先端部(第1クランプ14側の部分)の下部には、後端部(第2クランプ16側の部分)よりも下面が高くなるように切欠き部45が形成されている。切欠き部45の上面(支持プレート本体18aの先端部の下面)には、幅方向に延びた溝46が形成されている。
【0029】
可動機構部21は、可動プレート51、蝶番52、レバー部材53、磁石54、一対の規制ピン55等で構成される。可動プレート51は、略矩形の板状であり、幅が支持プレート本体18aの幅と同じであり、厚みが切欠き部45の厚みすなわち支持プレート本体18aの先端部と後端部の厚みとの差と同じである。
【0030】
可動プレート51の第1クランプ14側の先端部には、スライドプレート15の先端の係合突起24が入り込む係合孔25が形成されている。また、可動プレート51の先端部分には、先端に向かって高さが連続的に漸減する傾斜面56(図6参照)が形成されている。すなわち、傾斜面56は、斜め上方を向いている。この傾斜面56は、前述の係合突起24の形状と相俟って係合孔25との係合を円滑にする。この例では、係合孔25が第2係合部である。
【0031】
なお、係合突起24に代えて第1係合部としての係合孔をスライドプレート15に設け、係合孔25に代えて第2係合部としての係合突起を可動プレート51に設けて、これらを係合させてもよい。また、スライドプレート15及び可動プレート51にそれぞれ係合突起を設けて、これらを係合させてもよい。さらに、係合孔に代えて係合凹部としてもよい。
【0032】
可動プレート51の第2クランプ16側の基端部には、幅方向の中央に磁石54の下端が入り込む孔51aが、また幅方向の両端に規制ピン55の軸部55aが通る一対の孔51bがそれぞれ設けられている。孔51aの内径は、磁石54の外径よりも大きい。孔51bの内径は、規制ピン55の軸部55aの外径よりも大きく、規制ピン55の規制部55bの外径よりも小さい。
【0033】
蝶番52は、磁石54につく金属(強磁性体)製の平螺蝶番が用いられている。レバー部材53は、係合突起24と係合孔25との係合を解除操作するためのものである。このレバー部材53は、断面L字状であり、上下方向に延びた板状の操作片53aと、この操作片53aの上端から後方(第2クランプ16側)に向かって延びた板状の取付片53bとを有している。取付片53bには、幅方向の両端に規制ピン55が通る孔58が形成されている。孔58は、その内径が規制ピン55の規制部55bの外径よりも大きい。
【0034】
上記蝶番52は、その軸が幅方向に平行に配され、一方の蝶番片52aが支持プレート本体18aの後端部の下面にねじ止めされている。蝶番52の他方の蝶番片52bは、その下側にレバー部材53の取付片53bを、上側に可動プレート51の基端部をそれぞれ重ねた状態で、取付片53bとともに可動プレート51の基端部にねじ止めされている。これにより、可動プレート51は、支持プレート本体18aの下側で、その基端部が切欠き部45内に収まり、係合突起24と係合孔25とが係合する係合位置と、係合突起24と係合孔25との係合を解除する係合解除位置との間で回動自在である。係合位置では、可動プレート51は、その基端部が切欠き部45内に入って、走行方向と平行な姿勢になる。
【0035】
磁石54は、ドーナッツ状であり、その上端面が溝46の底面に密着した状態で、磁石54の中心を通した皿ねじ54aにより支持プレート本体18aに固定されている。磁石54の高さは、切欠き部45と溝46の深さとの和とに等しく、磁石54の下端が切欠き部45から突出せず、支持プレート本体18aの後端部の下面と同じ高さになっている。皿ねじ54aについても切欠き部45から突出しない。磁石54は、可動プレート51が係合位置であるときに、孔51aに入り込み、蝶番52の蝶番片52bを磁力で吸着することで、可動プレート51を係合位置に保持する。磁石54の磁力に抗して、可動プレート51の先端を押し下げることにより、可動プレート51は磁石54から離れ、係合解除位置に向けて回動する。
【0036】
なお、溝46の深さは、上述のように磁石54の下端(下面)と支持プレート本体18aの後端部の下面との高さが同じになるように決められている。すなわち、溝46は、磁石54の下面と支持プレート本体18aの後端部の下面との高さを揃えるように、磁石54が取り付けられる支持プレート本体18aの取り付け面の高さを調整するものである。したがって、溝46に代えて窪み、例えば断面円形の窪みを支持プレート本体18aの先端部の下面に形成し、その窪み内に磁石54を取り付けることで、磁石54の下面と支持プレート本体18aの後端部の下面との高さを揃えてもよい。さらに、支持プレート本体18aの先端部と後端部との厚みの差よりも薄い磁石54を用いる場合には、支持プレート本体18aの磁石54の取り付け面を下方に突出させればよい。さらに、溝46や窪みを設けることなく、支持プレート本体18aの先端部と後端部との厚みの差と同じ厚みを有する磁石54を用いることで、磁石54の下面と支持プレート本体18aの後端部の下面との高さを揃えてもよい。
【0037】
この例では、上記のように磁石54の磁力で可動プレート51を係合解除位置に向けて付勢しており、この磁石54が付勢部材となっている。また、可動プレート51を強磁性体で構成した場合、磁石54の磁力を可動プレート51に作用させてもよい。付勢部材としては、ねじりコイルバネや板バネ等のバネなど用いてもよい。この場合、例えば蝶番52としてバネ蝶番を用いることもできる。
【0038】
規制ピン55は、軸部55aの下端に規制部55bが一体に設けられ、上端に外周にねじがきられたねじ部55cが一体に設けられている。規制部55bの外径は、軸部55aよりも大きい。規制ピン55は、レバー部材53に設けた孔58、可動プレート51に設けた孔51bを通した状態で、そのねじ部55cが溝46の底面に設けたねじ穴に螺合して、支持プレート本体18aに取り付けられている。規制ピン55は、係合位置から可動プレート51が回動した際に、規制部55bが可動プレート51の孔51bの周縁部に当接することで、可動プレート51の傾斜角度を規制する。
【0039】
ベルト引寄せ治具10では、上記のようにガイド機構が簡素な構成であり、またスライドプレート15の先端に設けた係合突起24と可動プレート51の係合孔25との係合によって、ベルトBの張力に抗して第1ユニット11と第2ユニット12とを第2スライド位置に保持するという簡単な構成であるため軽量化に有利である。
【0040】
次に上記構成の作用について説明する。ベルト端部Ba、Bbを接合する場合には、ベルト端部Ba、Bbを例えばフィンガージョイント用にジグザグ状に予め打ち抜いておく。第1ユニット11に対して、第2ユニット12を引き離すようにスライド移動させて、図1に示されるように、第2ユニット12を第1スライド位置にする。
【0041】
第1クランプ14のクランプねじ29を緩め、一方のクランプねじ29を中心にクランプ板28を回動して退避位置とする。クランプ板28を退避位置とした状態で、基台27の上面のセット溝27aにベルト端部Baをセットする。このときに、ベルト端部Baのジグザグ状に打ち抜かれた部分が、セット溝27aよりも第2クランプ16側になるようにセットする。この後、クランプ板28をクランプ位置に戻してから、一対のクランプねじ29を締める。これにより、ベルト端部Baが第1クランプ14にクランプされる。
【0042】
同様にして、第2クランプ16のクランプねじ39を緩め、クランプ板38を退避位置とし、ジグザグ状に打ち抜かれた部分がセット溝37aよりも第1クランプ14側になるようにベルト端部Bbをセット溝37aにセットする。この後、クランプ板38をクランプ位置に戻してから、一対のクランプねじ39を締める。これにより、ベルト端部Bbが第2クランプ16にクランプされる。
【0043】
上記のようにベルト端部Ba、Bbをそれぞれクランプしてから、例えば第1クランプ14の基台27と、第2クランプ16の基台37とをそれぞれ把持して、第1クランプ14と第2クランプ16とが互いに近づくように、第1ユニット11と第2ユニット12とを相互にスライド移動し、第2ユニット12を第2スライド位置にする。このスライド移動の過程で、係合突起24が可動プレート51に達すると、係合突起24の傾斜面24aに可動プレート51の先端が当接する。このときに、可動プレート51は、それに固定されている蝶番52の蝶番片52bが磁石54に吸着されて係合位置に保持されている。
【0044】
上記のような第1ユニット11と第2ユニット12との第2スライド位置へ向けての相対的なスライド移動がさらに進むと、可動プレート51は、その先端が傾斜面24aで押圧されて、その先端を下げる向きの力が作用する。この結果、蝶番片52bに作用する磁石54の磁力に抗して、可動プレート51が蝶番片52bとレバー部材53とともに、その先端を下げるように蝶番52の軸を中心に回動する。そして、図6に示すように、係合突起24の傾斜面24aと可動プレート51の傾斜面56とが当接した状態になり、傾斜面24aと傾斜面56とが摺動しながらスライド移動し、これにともない可動プレート51の先端がさらに押し下げられるようにして、可動プレート51がさらに回動する。
【0045】
係合突起24の後端(第1クランプ14側の端部)が係合孔25に達すると、蝶番片52bに作用する磁石54の磁力により、可動プレート51は、蝶番片52bとレバー部材53とともに蝶番52の軸を中心に回動して、係合位置に戻る。この結果、図7に示すように、第1ユニット11側の係合突起24が第2ユニット側の係合孔25に入り込み、係合突起24が係合孔25に係合した状態になる。可動プレート51は、磁石54によって係合位置に保持されているから、例えば第1クランプ14と第2クランプ16との距離が近づくような力が加わっても、係合突起24と係合孔25の係合が解除されることはない。
【0046】
係合突起24と係合孔25とが係合した状態、すなわち第1ユニット11に対して第2ユニット12が第2スライド位置にまで移動された状態では、図2に示されるように、第1クランプ14にクランプされたベルト端部Baと第2クランプ16にクランプされたベルト端部Bbとが突き合わせられる。この状態で、ベルト端部Ba、Bbを上下方向から接合装置に挟み込んで加圧加熱し、ベルト端部Baとベルト端部Bbを接合する。
【0047】
上記のように第1クランプ14と、第2クランプ16とを互いに近づくようにスライド移動すればよいので、素早くベルト端部Baとベルト端部Bbとを突き合わせた状態にして、接合することができる。
【0048】
ベルト端部Baとベルト端部Bbとの接合後、第1クランプ14のクランプねじ29及び第2クランプ16のクランプねじ39をそれぞれ緩め、各クランプ板28、38をそれぞれ退避位置にする。そして、セット溝27a、37aからベルトBを外す。以上のようにして、ベルトBの接合を行うことができる。
【0049】
さらに、他のベルトBの接合を行う場合には、レバー部材53の操作片53aを第2クランプ16側に倒すように操作する。これにより、図8に示すように、可動プレート51は、レバー部材53とともに係合位置から係合解除位置に向けて蝶番52の軸を中心に回動する。可動プレート51が係合解除位置になると、係合突起24が係合孔25から抜け出て、これらの係合が解除される。この状態で、第1ユニット11に対して第2ユニット12を第1スライド位置に向けて移動する。第2ユニット12をスライド移動してからレバー部材53の操作を解除する。可動プレート51は、磁石54に蝶番片52bが吸着されることで係合位置に復帰する。このときに、可動プレート51の回動は、規制ピン55の規制部55bが可動プレート51の孔51bの周縁部に当接して規制されるため、磁石54の磁力が十分に作用して可動プレート51は係合位置に復帰することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 引寄せ治具
14 第1クランプ
15 スライドプレート
16 第2クランプ
17 ガイドユニット
21 可動機構部
24 係合突起
25 係合孔
51 可動プレート
53 レバー部材
54 磁石
B ベルト
Ba、Bb ベルト端部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8