(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063393
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】収穫物把持装置
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171643
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】519404090
【氏名又は名称】inaho株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸一
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JE15
2B075JF05
2B075JF06
2B075JF08
2B075JF10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めることが可能な収穫物把持装置を提供する。
【解決手段】一対の把持部材11、12の間に収穫物を把持する収穫物把持装置であって、一対の把持部材11、12の先端側から基端側に収穫物を誘導する過程で収穫物が接触するように設けられた動作伝達部13、14と、収穫物の基端側への進入範囲を規制するストッパー部15と、を備え、ストッパー部15は、動作伝達部13、14と連動する移動抑制部によって基端側への移動を抑制されており、収穫物が動作伝達部13、14に接触することによってストッパー部15に対する移動抑制部の係合が解除されている間のみ、ストッパー部15の基端側への移動が許容されるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の把持部材の間に収穫物を把持する収穫物把持装置であって、
前記一対の把持部材の先端側から基端側に前記収穫物を誘導する過程で前記収穫物が接触するように設けられた動作伝達部と、
前記収穫物の前記基端側への進入範囲を規制するストッパー部と、を備え、
前記ストッパー部は、前記動作伝達部と連動する移動抑制部によって前記基端側への移動を抑制されており、
前記収穫物が前記動作伝達部に接触することによって前記ストッパー部に対する前記移動抑制部の係合が解除されている間のみ、前記ストッパー部の前記基端側への移動が許容されるように構成されていることを特徴とする収穫物把持装置。
【請求項2】
前記基端側に移動した前記ストッパー部を前記先端側に付勢する付勢部材をさらに備える、請求項1に記載の収穫物把持装置。
【請求項3】
前記移動抑制部は、前記ストッパー部に設けられた係止歯に係合する係止突起で構成されている、請求項1又は2に記載の収穫物把持装置。
【請求項4】
前記移動抑制部は、該移動抑制部が前記ストッパー部の前記基端側への移動を抑制している状態で、該ストッパー部の前記先端側への移動を許容するように構成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の収穫物把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収穫物把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスパラガス等の農作物を自動的に収穫するために、農作物を把持して切断する機能を備えた収穫装置が知られている。特許文献1には、所定の長さに成長したアスパラガスを把持する挟持手段と、把持したアスパラガスを切断する切断手段と、を備えたハンド装置が開示されている。このハンド装置の挟持手段は、収穫物を挟持するための2本の挟持部材と、2本の挟持部材を開いた状態で保持する保持部材とを備えている。そして、保持部材にアスパラガスが接触すると、保持部材の係止が解除されて、2本の挟持部材が閉じてアスパラガスを把持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のハンド装置においては、収穫対象のアスパラガスを把持する際に、2本の挟持部材の間に近接する他のアスパラガスも誤って同時に挟み込んでしまう虞があり、把持精度に改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めることが可能な収穫物把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、一対の把持部材の間に収穫物を把持する収穫物把持装置であって、
前記一対の把持部材の先端側から基端側に前記収穫物を誘導する過程で前記収穫物が接触するように設けられた動作伝達部と、
前記収穫物の前記基端側への進入範囲を規制するストッパー部と、を備え、
前記ストッパー部は、前記動作伝達部と連動する移動抑制部によって前記基端側への移動を抑制されており、
前記収穫物が前記動作伝達部に接触することによって前記ストッパー部に対する前記移動抑制部の係合が解除されている間のみ、前記ストッパー部の前記基端側への移動が許容されるように構成されていることを特徴とする収穫物把持装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めることが可能な収穫物把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る収穫物把持装置の構成例を示す底面図である。
【
図2】同実施形態に係る収穫物把持装置の平面図である。
【
図3】同実施形態に係る収穫物把持装置の一部を断面で示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る収穫物把持装置を用いて収穫物を把持する過程の様子を示す平面図である。
【
図5】同実施形態に係る収穫物把持装置を用いて収穫物を把持した状態を示す平面図である。
【
図6】同実施形態に係る収穫物把持装置の平面図において、一部を透過表示した図ある。
【
図7】同実施形態に係る収穫物把持装置の一部を示す斜視図であり、ストッパー部の基端側への移動が抑制された状態を示している。
【
図8】同実施形態に係る収穫物把持装置の一部を示す斜視図であり、ストッパー部の基端側への移動が許容された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の収穫物把持装置1の底面図であり、
図2は平面図であり、
図3は、一部を断面で示す斜視図である。収穫物把持装置1は、農作物等の収穫物を自動的に収穫するための自動収穫装置の一部を構成する。
【0011】
自動収穫装置としては、例えば、収穫物を把持し切断する収穫物把持装置1に加えて、圃場等を走行可能なクローラまたはタイヤ等を備えた走行装置と、収穫対象となる農作物(収穫物)を選定する際に撮像するカメラ等の撮像装置と、収穫物把持装置1を収穫対象に向けて移動させる可動アームと、を備える。可動アームは、基端側が自動収穫装置の走行装置に連結され、先端側に収穫物把持装置1が設けられている。また、可動アームは、任意の方向に揺動、回転可能な関節部を有する構成とすることができる。可動アームによって、収穫物把持装置1は前後方向、左右方向、上下方向の3次元の移動が可能となる。また、自動収穫装置は、例えば、GPS衛星から送信された信号に基づいて自動収穫装置の位置を検出するGPSセンサと、自動収穫装置が実行する各処理に必要な情報を記録する記録装置と、携帯端末及び農作業管理サーバと各種情報を送受信する通信装置と、自動収穫装置が予め定められた経路に沿って移動するように制御する駆動装置と、上記各構成要素と接続された中央処理装置等を備えていてもよい。なお上記各構成要素は、それぞれが単一の構成要素であってもよいし、複数の構成要素を含む構成要素であってもよい。自動収穫装置は、所定の通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続されたスマートフォン等の各種の情報処理端末、及び農作業管理サーバ等によって、制御するようにしてもよい。
【0012】
図1、
図2、
図3、
図6に示すように、収穫物把持装置1は、対向する一対の把持部材11、12と、一対の動作伝達部13、14と、ストッパー部15とを有する把持部10を備える。また、本例の収穫物把持装置1は、駆動部30と、カッター部50(切断部)と、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する把持駆動伝達部40と、駆動部30からの駆動力をカッター部50に伝達する切断駆動伝達部70と、を備える。また、収穫物把持装置1は、ベース部60を備える。ベース部60は、把持部10、駆動部30、把持駆動伝達部40、カッター部50、切断駆動伝達部70等を支持する。
【0013】
把持部10は、把持部材11、12の少なくとも一方が揺動することにより開閉する。本例では、一対の把持部材11、12の両方が、揺動中心としての揺動軸部16、17を支点に揺動可能に構成されているが、何れか一方のみが揺動可能であってもよい。その場合、揺動不可能に構成された一方の把持部材に、他方の把持部材が揺動して接近、離間することにより把持部が開閉することとなる。なお、本例では一対の把持部材11、12の形状が互いに共通であるが、これに限られず、互いに異なる形状を有していてもよい。また、本例では一対の把持部材11、12が互いに対称となるように配置されているが、これに限られず、非対称であってもよい。
【0014】
把持部10は、一対の把持部材11、12の間に収穫物を誘導する誘導姿勢あるいは収穫物を一対の把持部材11、12で把持する把持姿勢(閉じた姿勢)と、収穫物を解放する解放姿勢(開いた姿勢)と、の間で開閉可能に構成されている。なお
図1、
図2、
図3、
図4は、誘導姿勢の把持部10を示している。
【0015】
図3に示すように、それぞれの把持部材11、12は、基端側に揺動軸部16、17を有し、先端側が自由端となっている。一対の揺動軸部16、17の軸線方向は、互いに平行になっている。一対の把持部材11、12はそれぞれ、把持駆動伝達部40と共にベース部60に連結され、ベース部60によって支持されている。ベース部60は、板状の支持プレート61を有し、
図2に示すように、支持プレート61にはカバー部材62が取り付けられている。
【0016】
一対の把持部材11、12は、アスパラガス等の略鉛直方向に延びる農産物の茎部分を左右両側から挟み込むことにより、当該農産物(収穫物)を把持することができるように構成されている。なお、一対の把持部材11、12は、収穫物の形態に応じて、上下方向から挟み込むことができるように上下に開閉するように設けてもよい。また、収穫物に応じて開閉方向が変更できるように、ベース部60に対して把持部10が回転可能であってもよい。
【0017】
図1、2に示すように、一対の把持部材11、12の内側には、収穫物を把持するための把持空間S1が形成される。把持空間S1は、把持部材11、12の基端側に形成される。把持空間S1を把持部材11、12の先端側ではなく基端側に形成することで、把持部材11、12で収穫物を把持する力を高め易くなる。
【0018】
図3に示すように、把持部材11、12の内側面には、把持空間S1に位置する収穫物の滑りを抑制するための滑り止め部18が設けられていることが好ましい。滑り止め部18は、摩擦抵抗が大きく柔軟なゴム製の部材等を接着すること等により形成することができる。このような滑り止め部18を設けることより、把持した収穫物の脱落をより確実に抑制することができる。
【0019】
本例の各把持部材11、12の先端部には、従動コロ19が設けられている。従動コロ19は、把持部材11、12の先端部に設けられた回転軸を中心として、自由に回転可能に構成されている。収穫物を把持する際に、収穫物が従動コロ19の外周面に接触すると、従動コロ19が把持部材11、12の基端側に向けて回転する。これにより、一対の把持部材11、12の間に、スムーズに収穫物を誘導することができ、また、把持部材11、12の先端部(従動コロ19)が収穫物に接触しても当該収穫物が損傷し難くなる。
【0020】
また、本例の従動コロ19の外周面は、軸線方向における中央部が膨出するように湾曲している。このような構成により、収穫物に対する従動コロ19の接触面積が小さくなり、より収穫物が損傷し難くなる。
【0021】
把持部材11、12は、切断方向とは逆の方向に付勢された刃部材51、52を支持する支持壁(支持部)21、22を有する。それぞれの支持壁21、22は、各把持部材11、12の下面から下向きに突出した壁であり、各把持部材11、12の外縁に沿って延在している。また、各支持壁21、22は、把持部材11、12の長手方向の中間部から基端部側にわたって設けられている。
【0022】
収穫物把持装置1は、揺動可能な把持部材11、12を閉じ方向に付勢する弾性部材を備える。本例では、一対の把持部材11、12をそれぞれ付勢する弾性部材としてのねじりコイルバネ20を有する。誘導姿勢において、揺動可能に構成された把持部材11、12は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている。本例では、ねじりコイルバネ20の一端部が、把持部材11、12の外側面に当接し、把持部材11、12を内側に向けて押圧する。ねじりコイルバネ20の他端部は、板状部材42、43の第2係合凸部46、47に係合している。
【0023】
このように、把持部材11、12を弾性部材で閉じ方向に付勢することによって、収穫物を誘導する際に、把持部10が必要以上に大きく開くことを抑制することができる。これにより、対象とする収穫物のみを一対の把持部材11、12の間により誘導し易くなる。
【0024】
把持部10は、誘導姿勢において、開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の揺動が把持駆動伝達部40によって抑制される。本例では、一対の把持部材11、12がともに、開き方向の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の揺動が把持駆動伝達部40(の係合凸部44、45)によって抑制される。本例では直径が一対の把持部材11、12の先端部の間隔D(
図1参照)よりも大きい収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導する際には、収穫物が一対の把持部材11、12を内側から押し広げるように進入することにより、一対の把持部材11、12が(駆動部30からの駆動力によらずに)開き方向に揺動する。なお、一対の把持部材11、12は弾性部材によって閉じ方向に付勢されているため、必要以上に開く(外側に揺動する)ことがない。よって、本例の把持部10によれば、最小限の開き量で収穫物を把持空間S1に向けて誘導することができる。
【0025】
駆動部30は、把持部10を開閉させるための駆動力を付与する。本例の駆動部30は、1つのサーボモータで構成することができるが、駆動力を付与可能であれば、これに限られるものではない。例えば、それぞれの把持部材11、12に対応する一対のモータ等で駆動部30を構成してもよい。本例では、サーボモータの回転方向が変更可能、回転トルクが調整可能に構成されている。そのため、駆動部30から出力される出力方向及び駆動力の大きさ等は適宜調整可能であり、把持部10の把持力、把持部材11、12の揺動方向(開き方向又は閉じ方向)等を調整することができる。このような駆動部30の制御、出力調整は、例えば中央処理装置によって行うことができる。また、本例の駆動部30は、収穫物の切断時に刃部材51、52を揺動させるための駆動力を付与する。
【0026】
把持駆動伝達部40は、駆動部30と把持部10との間に設けられており、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する。なお、駆動部30とは別のモータ等を設けて把持部10を駆動するようにしてもよい。本例の把持駆動伝達部40は、複数の歯車41及び歯車41に連結された板状部材42、43を有する。本例では、1つのサーボモータの駆動力が、一対の把持部材11、12のそれぞれに同時に伝達されるように、複数の歯車41及び一対の板状部材42、43が設けられている。一対の板状部材42、43は、一対の把持部材11、12に対応している。各板状部材42、43は、対応する把持部材11、12の揺動軸部16、17と軸線が一致する軸部を中心に揺動可能に構成されている。駆動部30からの駆動力を受けて板状部材42、43が回転すると、当該板状部材42、43に同軸配置されたねじりコイルバネ20を介して間接的に、または直接的に、回転方向の力が把持部材11、12に伝達される。本例では、閉じ方向の力は、ねじりコイルバネ20を介して間接的に板状部材42、43から把持部材11、12に伝達される。また、開き方向には直接的に、板状部材42、43の係合凸部44、45から把持部材11、12に力が伝達される。
【0027】
把持駆動伝達部40は、誘導姿勢において、把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する揺動抑制部を有する。本例の揺動抑制部は、板状部材42、43に設けられた係合凸部44、45で構成されている。係合凸部44、45はそれぞれ、対応する把持部材11、12に内側から係合して把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する。本例では、駆動部30からの駆動力を利用して板状部材42、43を回転(軸部を中心とした揺動)させることにより、係合凸部44、45の位置を変更することができる。
【0028】
本例では、一対の把持部材11、12にそれぞれ対応する一対の板状部材42、43を有し、それぞれの板状部材42、43に、各把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する係合凸部44、45が設けられている。このように、揺動抑制部で把持部材11、12の閉じ方向の揺動角度を規制することで、誘導姿勢において一対の把持部材11、12を適度に開いておくことができる。これにより、収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導し易くなる。
【0029】
ここで、本例では、それぞれの板状部材42、43は、駆動部30からの駆動力によって回転可能に構成されている。また、一対の把持部材11、12はそれぞれ、対応する板状部材42、43の回転に応じて回転することができる。
【0030】
本例では、サーボモータからの駆動力が複数の歯車41及び板状部材42、43を介して把持部材11、12に伝達され、把持部材11、12が揺動することで、把持部10が開閉する。
【0031】
図5に示す把持姿勢においては、少なくとも収穫物Aが脱落しない程度の把持力が付与される。具体的に、一対の把持部材11、12が内側に、つまり互いに接近する方向(閉じ方向)に向けて、(駆動部30からの駆動力によって)付勢される。
【0032】
カッター部50は、把持部10で把持した農作物を切断可能に構成されている。カッター部50は、収穫物を切断する際に、切断方向(閉じ方向)に揺動し、切断後に、開き方向(解除方向)に揺動し、元の位置に戻る。カッター部50は、一対の把持部材11、12の下方に位置しているが、これに限られるものではない。例えば、収穫対象の農作物が、枝等から下方に垂れ下がる果実等である場合、カッター部50は把持部10の上方に位置することが好ましい。また、本例のカッター部50は、ハサミように左右一対の刃部材51、52で収穫物を両側から挟み込んで切断するものであるが、これに限られず、1本の刃部材のみが揺動することで収穫物を切断するように構成されていてもよい。また、本例のカッター部50は、把持部10を開閉させる駆動部30からの駆動力を利用して動作するように構成されているが、これに限られず、カッター部50を駆動するためのモータ等の駆動部を別に有していてもよい。
【0033】
切断駆動伝達部70は、駆動部30とカッター部50との間に設けられており、駆動部30からの駆動力をカッター部50に伝達する。切断駆動伝達部70は、把持駆動伝達部40と一部または全体が共通していてもよい。本例の切断駆動伝達部70は、把持駆動伝達部40としても機能する複数の歯車41(
図1参照)を有する。また、切断駆動伝達部70は、歯車41に連結されたディスク部材71、72を有する。本例では、左右一対の刃部材51、52にそれぞれ対応する一対のディスク部材71、72を有する。各ディスク部材71、72は、対応する歯車41とともに揺動可能に構成されている。つまり、各ディスク部材71、72の揺動中心75、76は、それぞれに対応する歯車41の揺動中心(回動中心)と一致している。
【0034】
各ディスク部材71、72には、突起部73、74が設けられている。各突起部73、74は、把持部10で把持した収穫物を切断する際に、それぞれ刃部材51、52の被係合部57、58に係合してディスク部材71、72に対する刃部材51、52の揺動を抑制する。各突起部73、74と被係合部57、58とは、刃部材51、52の揺動中心53、54を中心軸として周方向に係合する。突起部73、74と被係合部57、58とが係合することにより、ディスク部材71、72と共に刃部材51、52が揺動する。なお、
図1に示すように、把持部10の誘導姿勢において、突起部73、74と被係合部57、58とは係合しておらず、離間している。そのため、刃部材51、52は、突起部73、74と被係合部57、58が接触するまでは開き方向に揺動可能となっている。そして、(把持姿勢の)把持部10が把持する収穫物を切断する際に、駆動部30からの駆動力を受けたディスク部材71、72が揺動中心75、76を支点にそれぞれ内側に揺動すると、突起部73、74と被係合部57、58とが係合する。これにより、ディスク部材71、72の内側への揺動に応じて刃部材51、52が揺動中心75、76を支点に、ディスク部材71、72とともに閉じ方向に揺動し、収穫物を切断することができる。
【0035】
それぞれの刃部材51、52は、各ディスク部材71、72に対して揺動中心53、54を支点に揺動可能に設けられている。ディスク部材71、72に対する刃部材51、52の揺動中心53、54は、ディスク部材71、72の揺動中心75、76とは異なる位置に設けられているが、これに限られず、揺動中心53、54の位置がそれぞれ揺動中心75、76の位置と一致していてもよい。
【0036】
一対の刃部材51、52はそれぞれ、ディスク部材71、72の揺動(回動)によって、揺動可能に構成されている。具体的に、収穫物を切断する際、刃部材51、52はそれぞれ、ディスク部材71、72の内向きの揺動に応じて閉じ方向に揺動し、刃部材51、52は徐々に接近、最終的に交差する。また、収穫物の切断後は、刃部材51、52がそれぞれ、ディスク部材71、72の外向きの揺動に応じて開き方向に揺動し、刃部材51、52は互いに離間して
図1の状態に戻る。カッター部50は、一対の刃部材51、52がハサミのように揺動し、互いに接近、離間して開閉するよう構成されている。
【0037】
一対の刃部材51、52は、把持部10が誘導姿勢にある際、開き方向(切断方向と逆の方向)に揺動可能に構成されている。本例の弾性部材55、56は、引きばねで構成されており、一端がディスク部材71、72に連結され、他端が刃部材51、52に連結されている。刃部材51、52を付勢する弾性部材55、56は、引きばねに限られず、例えば、ねじりコイルバネ、圧縮ばね等であってもよい。また、本例の弾性部材55、56は、刃部材51、52の揺動中心53、54の外側に位置するが、これに限られず、例えば圧縮ばね等の弾性部材が揺動中心53、54の内側に位置していてもよい。
【0038】
刃部材51、52は、刃(刃線)が互いに対向するように配置されている。刃部材51、52は、揺動中心53、54の外側に配置された弾性部材55、56によって、切断方向とは逆方向に、つまり外向き(開き方向)に付勢されている(引っ張られている)。各刃部材51、52の峰部51a、52aは、把持部材11、12に設けられた支持壁(支持部)21、22に当接し、支持されている。そして、把持部材11、12が誘導姿勢において収穫物を誘導するために開き方向に揺動すると、把持部材11、12に合わせて各刃部材51、52も揺動する。この時、各刃部材51、52の峰部51a、52aは、把持部材11、12の支持壁21、22の内側面に当接したまま、支持壁21、22に沿って摺動する。
【0039】
各刃部材51、52の刃元側には揺動中心53、54が設けられている。本例では、一方の刃部材51の揺動中心53と他方の刃部材52の揺動中心54が互いに離間している(異なる位置にある)が、これに限られず、一対の刃部材51、52の揺動中心53、54が一致していてもよい。各刃部材51、52の刃先部はそれぞれ、把持部10の誘導姿勢において、把持部材11、12の中間部付近に重なるように配置されている。本例では、平面視で刃部材51、52の刃先部が把持部材11、12に重なるように配置されているため、刃先部が収穫物に接触し難くなっている。
【0040】
刃部材51、52は、把持空間S1に誘導した収穫物を切断可能に構成され、導入空間S2側を通過しないように構成されている。つまり、本例では、刃部材51、52の先端が把持部材11、12の中間部付近までしか到達しない。このような構成により、仮に収穫対象以外の農作物が導入空間S2に入りこんだ状態でカッター部50が動作し刃部材51、52が切断方向に揺動したとしても、当該農作物を刃部材51、52で傷付けてしまう虞がない。
【0041】
動作伝達部13、14は、一対の把持部材11、12の先端側から基端側に収穫物を誘導する過程で、当該収穫物が動作伝達部13、14に接触するように設けられている。なお、本例では、一対の把持部材11、12に対応する一対の動作伝達部13、14が設けられているが、何れか一方の動作伝達部のみであってもよい。また、3つ以上の動作伝達部があってもよい。また、本例では一対の動作伝達部13、14が共通の形状を有しているが、これに限られず、互いに異なる形状であってもよい。
【0042】
動作伝達部13、14は、ストッパー部15の移動を抑制する移動抑制部に連動するように構成されている。収穫物が動作伝達部13、14に接触すると、動作伝達部13、14の動きに連動して移動抑制部が動き、ストッパー部15に対する移動抑制部の係合が解除される。これにより、ストッパー部15が基端側に移動可能となる。
【0043】
つまり、本実施形態では、収穫物が動作伝達部13、14に接触して移動抑制部のストッパー部15に対する係合が解除されている間のみ、ストッパー部15の基端側への移動が許容されるように構成されている。収穫物は、動作伝達部13、14に接触して動作伝達部13、14を揺動させるとともに、ストッパー部15を基端側に押し込みながら把持空間S1に進入することができる。
【0044】
そして、最終的に収穫物が把持空間S1に到達すると動作伝達部13、14が元の位置に戻り、再び移動抑制部がストッパー部15に係合することにより、それ以上のストッパー部15の基端側への移動が抑制される。
【0045】
図6は、一対の把持部材11、12を略透明に表示して、動作伝達部13、14の構造を明確に示した図である。本例の動作伝達部13、14はそれぞれ、一対の把持部材11、12の内側面よりも内側に突出する先端部材131と、先端部材131を揺動可能に支持する先端側揺動部材132と、先端側揺動部材132に連動する基端側揺動部材133と、基端側揺動部材133に連動するカム部材137と、を有する。なお、動作伝達部13、14は、一対の把持部材11、12の先端側から基端側に収穫物を誘導する過程で収穫物が接触することによってストッパー部15に対する移動抑制部の係合が解除されるものであればよく、図示例の構造に限定されるものではない。
【0046】
先端部材131は、先端側揺動部材132の先端部に設けた軸部134を中心に揺動可能に保持されている。先端側揺動部材132は、長手方向の中間領域に設けられた軸部135を中心に揺動可能に保持されている。基端側揺動部材133は、長手方向の中間領域に設けられた軸部136を中心に揺動可能に保持されている。軸部134、135、136の軸線方向は、把持部材11、12の揺動軸部16、17の軸線方向と平行である。先端側揺動部材132の基端部は、基端側揺動部材133の先端部に対して揺動可能に連結されている。基端側揺動部材133の先端部には長穴133aが形成され、先端側揺動部材132の基端部には、当該長穴133aに挿入される円柱状の係合軸132aが設けられている。
【0047】
ここで、本例において、軸部135を構成する軸芯もしくは軸受は、一対の把持部材11、12のそれぞれに設けられている。したがって、先端側揺動部材132は、一対の把持部材11、12の動きに追従して動くこととなる。また、本例では同様に、軸部136を構成する軸芯もしくは軸受が、一対の把持部材11、12のそれぞれに設けられている。したがって、先端側揺動部材132は、一対の把持部材11、12の動きに追従して動くこととなる。このような構成により、収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導する際に、一対の把持部材11、12が開く方向に揺動すると、これに追従して動作伝達部13、14も揺動することができる。これによれば、様々な太さの収穫物に対応して一対の把持部材11、12及び動作伝達部13、14が適度に開くため、よりスムーズに収穫物を把持空間に誘導することができる。
【0048】
一対の先端部材131は、
図6に示す平面視で、軸部134から先端に向けて徐々に幅が細くなっている。また、一対の先端部材131は、
図6に示す平面視で、軸部134側から先端に向けて徐々に、把持空間S1側に向かうように斜めに延在している。このような構成により、収穫物を把持空間S1側に誘導し易くなっている。また、一対の先端部材131は、厚さ方向(軸部134の延在方向に平行な方向)の位置がずれるように配置されている。また、一対の先端部材131は、
図6に示すように、軸部134の延在方向から見て、先端部同士が重なるように配置されている。
【0049】
動作伝達部13、14の先端部材131は、把持部材11、12の長手方向の中間領域に設けられている。本例では、先端部材131よりも先端側(把持部10における先端側)を導入空間S2とし、先端部材131よりも基端側(把持部10における基端側)を把持空間S1としている。
【0050】
動作伝達部13、14の先端部材131は、収穫物を導入空間S2側から把持空間S1に誘導する過程で収穫物が動作伝達部13、14に接触すると、軸部134を揺動中心として基端側に揺動する。そして、先端部材131は、収穫物が把持空間S1まで移動すると、例えば弾性部材(ねじりコイルバネ、圧縮ばね等)の復元力等により元に戻るように構成されている。動作伝達部13、14の先端部材131が元の位置に戻ることで、対象の収穫物が把持空間S1に到達したことが明確となり、誘導姿勢から把持姿勢へと移行する判断を容易に行うことができる。また、動作伝達部13、14の先端部材131が元の位置に戻ることで、収穫対象でない農作物が把持空間S1に到達することをより確実に防止することができる。
【0051】
また、収穫物が一対の把持部材11、12の内側に進入する過程で動作伝達部13、14に接触すると、先端側揺動部材132は、軸部135を中心に先端部が外側に開く方向に揺動する。これにより、基端側揺動部材133は、軸部136を中心に、先端部(長穴133aが形成された部分)が内側に向かい、基端部133b(長穴133aとは逆側の端部)が外側に開く方向に揺動する。基端側揺動部材133の基端部133bが外側に揺動すると、カム部材137の円錐カム部138の傾斜面に摺動し、円錐カム部138を押し下げる。これにより、カム部材137は、軸部(左右方向に延びる軸部)を支点に円錐カム部138は下向きに揺動し、円錐カム部138の逆側の端部139(他端部)が上向きに揺動する。当該カム部材137の他端部139は、係止部材154に連動しており、他端部139が上向きに揺動すると、係止部材154の係止突起155側の端部も上向きに揺動する。これにより、係止突起155と係止歯153との係合が解除される。これにより、ストッパー部15が基端側(奥側)に移動可能となる。
【0052】
ストッパー部15は、動作伝達部13、14の先端部材131よりも把持部材11、12の基端側に位置し、収穫物の基端側への進入範囲を規制する。ストッパー部15は、収穫物が動作伝達部13、14に接触していない通常状態では、移動抑制部によって奥側(把持部材11、12の基端側)への移動(後退)が抑制されている。
【0053】
図3、
図6に示すように、ストッパー部15は、直線状に延びるラック部151と、ラック部151の先端に設けられたヘッド部152を有する。ヘッド部152は、ラック部151よりも幅が大きくなっており、収穫物の移動を抑制するために、収穫物に接触し易いようにしている。ラック部151の上面には、複数の係止歯153が一直線状に配列されている。ラック部151は、一対の把持部材11、12の間の中心線と平行となるように、ベース部60の支持プレート61上に支持されている。また、ストッパー部15は、ラック部151の延在方向に沿って、ベース部60に対して所定の範囲内で進退移動可能に設けられている。
図6等に示す通常状態において、ストッパー部15は最も先端側に前進した状態で保持されており、収穫物が把持空間S1に進入する過程でストッパー部15は基端側に押し込まれて後退する。また、ストッパー部15は、前進方向に(把持部材11、12の先端側に)不正されている。本例では、引きばね156によって付勢されている。引きばね156の一端はベース部60のフック部63に係合して支持され、他端はストッパー部15のフック部157に係合して支持されている。ストッパー部15が収穫物に押し込まれて後退すると、引きばね156が伸びて復元力がストッパー部15を前進方向に付勢する。これにより、把持空間S1に収穫物が存在しなくなると、自動的にストッパー部15は元の位置に戻る。
【0054】
図7、
図8は、移動抑制部の構造を示すための斜視図である。なお、
図7、
図8においては、ストッパー部15、ベース部60等の半部を切断した状態で示しており、また、係止部材154を略透明(半透明)に示している。移動抑制部は、ラック部151の係止歯153に係合する係止突起155で構成されている。係止突起155は、ベース部60に対して揺動可能に支持された係止部材154の端部の下面から下向きに突出している。係止部材154は、ベース部60に設けられた左右方向に延在する軸部を中心として、係止突起155側の端部が上下に揺動できるように設けられている。移動抑制部の係止歯153と、ラック部151の係止突起155とは、所謂「ラチェット機構」を構成しており、ストッパー部15の一方側(把持部10の先端側)への移動を許容し、他方側(基端側)への移動を抑制する。なお、移動抑制部の構成は、ストッパー部15の一方側への移動を許容し、他方側への移動を抑制するものに限られず、両側への移動を共に抑制するものであってもよい。その場合、収穫物が動作伝達部13、14に接触してするストッパー部15に対する移動抑制部の係合が解除された時点で、引きばね156の付勢力によりストッパー部15は把持部材11、12の先端側に移動する。
【0055】
収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導する際には、誘導姿勢の把持部材11、12の先端側から基端側に向けて収穫物を誘導し、収穫物が所定の位置(把持空間S1)に移動するまで、把持部10を前進させる。この時、一対の把持部材11、12の先端側から基端側に収穫物を誘導する過程で、収穫物が動作伝達部13、14の先端部材131に接触し、動作伝達部13、14を揺動させる。このとき、動作伝達部13、14に連動してストッパー部15に対する移動抑制部の係合が解除され、ストッパー部15は基端側に移動可能となる。収穫物が動作伝達部13、14に接触して移動抑制部の係合が解除されている間は、収穫物がストッパー部15を押し込みながら基端側に進入し、収穫物が把持空間S1に到達すると、移動抑制部が再びストッパー部15に係合して、ストッパー部15は基端側への移動が抑制される。このような構成により、収穫物は、把持空間S1における適切な位置で停止される。これによれば、収穫物が把持空間S1において基端側に移動し過ぎることがないので、収穫対象でない他の農作物が把持空間S1に入り込むことを抑制することができる。よって、収穫対象でない他の農作物がカッター部50に接触する可能性が低減し、当該他の農作物の損傷を抑制することができる。
【0056】
そして、収穫物が把持空間S1に配置された状態で、駆動部30からの駆動力を付与することにより、一対の把持部材11、12を閉じ方向に付勢して揺動させ、把持姿勢において収穫物を把持する。
【0057】
以下に、
図4、
図5を参照しつつ、本実施形態の収穫物把持装置1を用いて収穫物Aを収穫する際の、把持部10及びカッター部50の動作について説明する。収穫物Aとしては、圃場の土の表面から上方に向けて延びるアスパラガスとすることができるが、これに限られるものではない。
【0058】
先ず、カメラで撮像された画像等に基づいて、収穫対象の農作物を選定する。そして、
図4に示すように収穫物把持装置1を誘導姿勢とした状態で、可動アームを制御し、対象の収穫物Aに収穫物把持装置1の把持部10を近づけていく。そして、対象の収穫物Aが一対の把持部材11、12の間に誘導されるように、把持部10をさらに移動(前進)させる。
【0059】
このように収穫物Aが一対の把持部材11、12の間に誘導される過程において、一対の把持部材11、12の一方又は両方は、収穫物Aの太さ(直径)に応じて、必要な分だけ開き方向に揺動する。この時、把持部材11、12の開き方向の揺動に追従して、各動作伝達部13、14及び各刃部材51、52も開き方向(切断方向とは逆の方向)に揺動する。なお、その際、刃部材51、52の峰部51a、52aは、支持壁21、22に当接し続け、支持壁21、22に沿って摺動する。なお、収穫物Aの直径が一対の把持部材11、12の先端部の間隔Dよりも小さい場合には、一対の把持部材11、12は開き方向に揺動しなくてもよい。収穫物Aは、一対の把持部材11、12の先端から進入し、導入空間S2を通過して把持空間S1へと移動する(誘導される)。また、動作伝達部13、14と移動抑制部との連動により適度な位置まで押し込まれるストッパー部15によって収穫物Aの基端側への移動範囲を規制することで、収穫物Aは、その太さに応じて、把持空間S1における適切な位置で停止される。つまり、ストッパー部15は、収穫物Aが一対の把持部材11、12の基端側に移動し過ぎることを抑制する。これにより、対象の収穫物A以外の農作物(収穫物B)が把持空間S1に進入することをより確実に抑制することができる。その結果、収穫対象の農作物の(アプローチ方向)奥側にある農作物を傷つけないようにする精度を高めることができる。
【0060】
図5に示すように、収穫物Aが把持空間S1まで到達した状態で、把持部10を閉じて把持姿勢にする。把持姿勢における一対の把持部材11、12の間隔は、収穫物Aの太さに応じて異なる。つまり、収穫物Aが細い場合には一対の把持部材11、12の間隔は小さく、太い場合には一対の把持部材11、12の間隔は大きくなる。誘導姿勢から把持姿勢に移行する際には、駆動部30から把持駆動伝達部40を介して伝達される駆動力を利用して、一対の把持部材11、12を閉じ方向に揺動させる。この時、一対の把持部材11、12の閉じ方向の揺動に追従して、刃部材51、52も閉じ方向(切断方向)に揺動する。なお、収穫物Aの直径が大きい場合、収穫物Aの被把持部が硬い場合などにおいては、誘導姿勢から把持姿勢に移行する際に一対の把持部材11、12が閉じ方向に揺動しないことがあってもよい。その場合であっても、駆動部30からの駆動力によって所定の閉じ方向の力(把持力)が一対の把持部材11、12に付加される。このように、把持姿勢とすることで、収穫物Aが把持部10によってしっかりと把持され、把持空間S1から下方に脱落したり、一対の把持部材11、12の先端側に抜け出してしまったりすることを防ぐことができる。
【0061】
上記のように、対象の収穫物Aを把持した状態(把持姿勢)で、カッター部50を動作させて、収穫物Aを切断する。カッター部50は、切断駆動伝達部70を介して伝達された駆動部30の駆動力によりハサミのように動作する。
図5に示すように、刃部材51、52が切断方向に揺動する前の状態では、把持部10が把持した収穫物Aに刃部材51、52が接触しないように構成されている。
【0062】
具体的に、駆動部30の駆動力は複数の歯車41を介して各ディスク部材71、72に伝達され、各ディスク部材71、72が内向きに揺動する。そして、各ディスク部材71、72が所定の角度だけ、内側に揺動すると、突起部73、74がそれぞれ刃部材51、52の被係合部57、58に係合する。これにより、ディスク部材71、72に追従して刃部材51、52が内向き(切断方向)に揺動し、刃部材51、52の刃は徐々に接近し、収穫物Aを切断する。なお、ディスク部材71、72に追従して刃部材51、52が内向き(切断方向)に揺動すると、刃部材51、52の峰部51a、52aは、支持壁21、22から離間する。切断後は、駆動部30からの駆動力によりディスク部材71、72を外向きに揺動させる。刃部材51、52は、弾性部材55、56によって外向きに付勢されているため、ディスク部材71、72に追従して開き方向(切断方向とは逆方向)に揺動し、刃部材51、52は互いに離間して最終的に
図1の状態に戻る。この過程で突起部73、74と被係合部57、58との係合は解除される。
【0063】
このようにしてカッター部50を用いて収穫物Aを切断した後、可動アームを使って収穫した収穫物Aを所定の位置まで移動させる。この時、把持部10は把持姿勢であり、所定の位置まで把持部10を移動させてから、把持部10を把持姿勢から開放姿勢に移行する。把持部10が把持姿勢から開放姿勢に移行する際には、駆動部30から把持駆動伝達部40を介して伝達される駆動力を用いて、一対の把持部材11、12を開き方向に揺動させる。把持部10が解放姿勢となることで、収穫物Aは把持部10から開放されて、所定の容器等に収容される。収穫物Aは把持部10から開放されると、ストッパー部15は把持部材11、12の先端側に移動(前進)し、元の位置に戻る。このようにして、所定の農作物のみを収穫することができる。
【0064】
上述の通り、本実施形態の収穫物把持装置1は、一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを把持する収穫物把持装置であって、一対の把持部材11、12の先端側から基端側に収穫物Aを誘導する過程で収穫物Aが接触するように設けられた動作伝達部13、14と、収穫物Aの基端側への進入範囲を規制するストッパー部15と、を備え、ストッパー部15は、動作伝達部13、14と連動する移動抑制部(係止突起155)によって基端側への移動を抑制されており、収穫物Aが動作伝達部13、14に接触することによってストッパー部15に対する移動抑制部(係止突起155)の係合が解除されている間のみ、ストッパー部15の基端側への移動が許容されるように構成されている。
【0065】
よって、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、収穫物Aの太さに応じて、適切に収穫物Aの進入範囲を規制することができる。これにより、収穫対象の収穫物Aのみを把持する把持精度を高めることが可能となる。その結果、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、収穫物A以外の農作物がカッター部50に接触すること等による損傷を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、基端側に移動したストッパー部15を先端側に付勢する付勢部材(本例では引きばね156)をさらに備えている。このような構成により、ストッパー部15が基端側に押し込まれ過ぎるのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、移動抑制部が、ストッパー部15に設けられた係止歯153に係合する係止突起155で構成されている。このような構成により、簡易な構成で、ストッパー部15の基端側への移動を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、移動抑制部は、移動抑制部がストッパー部15の基端側への移動を抑制している状態で、ストッパー部15の先端側への移動を許容するように構成されている。このような構成により、収穫物把持装置1が収穫物を把持していない状態において、ストッパー部15が先端側に移動し易くなり、新たな収穫物を把持空間S1に誘導するための操作が容易となる。
【0069】
また、本実施形態の収穫物把持装置1は、収穫物Aを把持し切断する収穫物把持装置1であって、対向する一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導する誘導姿勢あるいは収穫物Aを把持する把持姿勢と、収穫物Aを解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、一対の把持部材11、12の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部10と、把持部10で把持した収穫物Aを切断する少なくとも1つの刃部材51、52と、収穫物Aの切断時に刃部材51、52を切断方向に揺動させるための駆動力を付与する駆動部30と、を備え、刃部材51、52は、誘導姿勢における把持部材11、12の揺動に追従して揺動可能に構成されている。
【0070】
よって、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢における把持部材11、12の揺動に追従して刃部材51、52が揺動するため、切断前の収穫物Aに意図せず刃部材51、52が接触することを防止することができる。したがって、本実施形態によれば、収穫過程における収穫物Aの損傷を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態の収穫物把持装置1は、揺動可能に構成された刃部材51、52は、弾性部材55、56によって切断方向とは逆の方向に付勢されており、把持部材11、12は、切断方向とは逆の方向に付勢された刃部材51、52を支持する支持部(支持壁21、22)を有する。このような構成により、簡易な構成で、刃部材51、52を把持部材11、12の揺動に追従して揺動させることができる。
【0072】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、弾性部材55、56は、刃部材51、52の揺動中心53、54の外側に位置する引きばねで構成されている。このような構成により、一対の刃部材51、52の内側に、収穫物Aを導入する空間を確保し易くなる。
【0073】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、刃部材51、52を支持する支持部は、把持部材11、12の外縁に沿って延在する支持壁21、22である構成されている。このような構成により、刃部材51、52が平面視で把持部材11、12と重なるように配置し易くなる。つまり、刃部材51、52の刃が収穫物Aに接触し難いように刃部材51、52を配置し易くなる。また、支持壁21、22の内側に刃部材51、52を配置することにより、刃部材51、52が平面視で把持部材11、12の外側に突出しないようにすることができる。これにより、刃部材51、52が把持部材11、12の外側に位置する農作物等に接触することも抑制することができる。なお、刃部材51、52を支持する支持部は、本例のような支持壁21、22に限定されず、例えば円柱状の突起等でもよく、その位置も図示例のような把持部材11、12の外縁部に限られず、適宜変更可能である。
【0074】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、カッター部50(切断部)は、一対の刃部材51、52で収穫物Aを両側から挟み込んで切断するように構成されている。このように一対の刃部材51、52をハサミのように用いることにより、切断部が1本の刃部材のみで構成されている場合に比べて、収穫物Aの切断性能を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、カッター部50、刃部材51、52の刃先部が、平面視で把持部材11、12に重なるように配置されている。このような構成により、刃部材51、52の刃先部が収穫物Aに接触し難くなるため、収穫物Aの損傷を抑制する効果を高めることができる。
【0076】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、刃部材51、52は、駆動部30からの駆動力を伝達するディスク部材71、72に対して揺動可能に構成されている。このような構成により、駆動部30からの駆動力の影響を受けずに、把持部材11、12の揺動に追従して刃部材51、52を揺動させることができる。また、収穫物Aの切断時には、ディスク部材71、72を介して伝達される駆動部30からの駆動力で刃部材51、52を切断方向に揺動させることができる。
【0077】
また、本実施形態の収穫物把持装置1において、把持部10は、誘導姿勢において、開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の把持部材11、12の揺動が抑制されるように構成されている。このような構成により、収穫対象の収穫物Aのみを一対の把持部材11、12の間に誘導しつつ、当該収穫物Aの太さに応じて開き方向に揺動する把持部材11、12に追従して刃部材51、52を揺動させることができる。その結果、一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導する際の、当該収穫物Aの損傷を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢において、揺動可能に構成された把持部材11、12は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている。このような構成により、必要以上に把持部10が開くことを抑制することができるため、収穫対象の収穫物Aのみを把持する把持精度をさらに高めることができ、近接する他の収穫物Bの損傷を抑制する効果を高めることができる。
【0079】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢において、一対の把持部材11、12の先端部は、間隔Dを空けて配置されている。このような構成により、一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導し易くなる。間隔Dは、収穫物Aの1本の直径と同等か、当該直径よりも僅かに小さくなる程度に設定することが好ましい。例えば、収穫物Aがアスパラガスである場合の間隔Dは、5mm以上、15mm以下であることが好ましい。これによれば、収穫対象の1本のアスパラガスのみを、より確実に把持空間S1に誘導することができる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0082】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
一対の把持部材の間に収穫物を把持する収穫物把持装置であって、
前記一対の把持部材の先端側から基端側に前記収穫物を誘導する過程で前記収穫物が接触するように設けられた動作伝達部と、
前記収穫物の前記基端側への進入範囲を規制するストッパー部と、を備え、
前記ストッパー部は、前記動作伝達部と連動する移動抑制部によって前記基端側への移動を抑制されており、
前記収穫物が前記動作伝達部に接触することによって前記ストッパー部に対する前記移動抑制部の係合が解除されている間のみ、前記ストッパー部の前記基端側への移動が許容されるように構成されていることを特徴とする収穫物把持装置。
(項目2)
前記基端側に移動した前記ストッパー部を前記先端側に付勢する付勢部材をさらに備える、項目1に記載の収穫物把持装置。
(項目3)
前記移動抑制部は、前記ストッパー部に設けられた係止歯に係合する係止突起で構成されている、項目1又は2に記載の収穫物把持装置。
(項目4)
前記移動抑制部は、該移動抑制部が前記ストッパー部の前記基端側への移動を抑制している状態で、該ストッパー部の前記先端側への移動を許容するように構成されている、項目1~3の何れか一項に記載の収穫物把持装置。
【符号の説明】
【0083】
1:収穫物把持装置
10:把持部
11、12:把持部材
13、14:動作伝達部
15:ストッパー部
30:駆動部
40:把持駆動伝達部
50:カッター部
60:ベース部
A:収穫物
R:移動抑制部
S1:把持空間
S2:導入空間