(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063497
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】電位治療器及び高圧交流波形の生成方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/10 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A61N1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171792
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】502247927
【氏名又は名称】コスモヘルス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520396544
【氏名又は名称】コスモ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】南雲 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岳村 英之
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053EE03
4C053EE04
(57)【要約】
【課題】被治療者に電位を印加する電位治療器であって、出力波形がなまってしまい、振幅が低下することを抑制することが可能な電位治療器の提供。
【解決手段】被治療者に電位を印加する電位治療器1であって、制御部(11)と、被治療者に電位を印加するための、波形及び電圧を生成する、波形生成昇圧回路部(12a、12b)と、波形生成昇圧回路部(12a、12b)からの出力を整流する整流回路部(13a、13b)と、整流回路部(13a、13b)によって得られた出力を導子へ出力する出力部(14)と、整流回路部(13a、13b)に備えられるコンデンサを放電させるための放電回路部(15a、15b)と、制御部(11)からの制御信号を電気的に絶縁しつつ放電回路部(15a、15b)へ伝える通信回路部(16a、16b)と、を備える電位治療器1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者に電位を印加する電位治療器であって、
制御部と、
被治療者に電位を印加するための、波形及び電圧を生成する、波形生成昇圧回路部と、
前記波形生成昇圧回路部からの出力を整流する整流回路部と、
前記整流回路部によって得られた出力を導子へ出力する出力部と、
前記整流回路部に備えられるコンデンサを放電させるための放電回路部と、
前記制御部からの制御信号を電気的に絶縁しつつ前記放電回路部へ伝える通信回路部と、
を備えることを特徴とする電位治療器。
【請求項2】
前記通信回路部が、光通信回路部または電波通信回路部であることを特徴とする請求項1に記載の電位治療器。
【請求項3】
前記通信回路部が、光通信回路部であり、発光部と、受光部と、当該発光部と受光部の間を絶縁しつつ光学的に結合する絶縁性光伝導体と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の電位治療器。
【請求項4】
前記波形生成昇圧回路部からの出力が減少していく期間において、当該出力の減少程度に応じて前記放電回路部による放電量を増加させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電位治療器。
【請求項5】
前記波形生成昇圧回路部からの出力がゼロである期間において、前記放電回路部による放電を最大化させることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の電位治療器。
【請求項6】
昇圧された第1のパルス状の波形を第1整流回路によって整流した正側の高圧出力波形と、昇圧された第2のパルス状の波形を第2整流回路によって整流した負側の高圧出力波形を得た後に、前記正側の高圧出力波形と負側の高圧出力波形を合成することで、高圧交流波形を得る電位治療器における高圧交流波形の生成方法であって、
前記第1のパルス状の波形の振幅が減少していく期間において、当該振幅の減少程度に応じて、前記第1整流回路のコンデンサの放電量を増加させるステップと、
前記第2のパルス状の波形の振幅が減少していく期間において、当該振幅の減少程度に応じて、前記第2整流回路のコンデンサの放電量を増加させるステップと、
を有することを特徴とする高圧交流波形の生成方法。
【請求項7】
前記第1のパルス状の波形の振幅がゼロである期間において、前記第1整流回路のコンデンサの放電量を最大化するステップと、
前記第2のパルス状の波形の振幅がゼロである期間において、前記第2整流回路のコンデンサの放電量を最大化するステップと、
を有することを特徴とする請求項6に記載の高圧交流波形の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被治療者に電位を印加する電位治療器、及び電位治療器における高圧交流波形の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被治療者に対して電位を印加することで、肩こり、頭痛、不眠症、慢性便秘等の症状についてこれを改善する効能があることが知られており、被治療者に電位を印加する電位治療器が利用されている。このような電位治療器に関する従来技術が特許文献1によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電位治療器では、低い電位での印加が行われるものもあるが、数千ボルトの高電位を被治療者に対して印加するものもある。
このような高電位を、家庭用電源から生成するための昇圧の手法の一つとして、特許文献1の
図6に示されるようなパルス状の波形を生成し、これを整流回路で整流するものがある。パルス状の波形を平滑するために、整流回路には平滑コンデンサが備えられる。
このように、特許文献1の
図6に示されるようなパルス状の波形に基づいて、被治療者に印加する高圧の交流波形を生成する際に、整流回路のコンデンサにチャージされた電圧が十分に放電されないことにより、出力波形がなまってしまい、振幅が低下する(所望の出力波形が得られない)という問題があった。この問題は、特に周波数を高くした場合に顕著となる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、被治療者に電位を印加する電位治療器であって、出力波形がなまってしまい、振幅が低下することを抑制することが可能な電位治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
被治療者に電位を印加する電位治療器であって、制御部と、被治療者に電位を印加するための、波形及び電圧を生成する、波形生成昇圧回路部と、前記波形生成昇圧回路部からの出力を整流する整流回路部と、前記整流回路部によって得られた出力を導子へ出力する出力部と、前記整流回路部に備えられるコンデンサを放電させるための放電回路部と、前記制御部からの制御信号を電気的に絶縁しつつ前記放電回路部へ伝える通信回路部と、を備えることを特徴とする電位治療器。
【0007】
(構成2)
前記通信回路部が、光通信回路部または電波通信回路部であることを特徴とする構成1に記載の電位治療器。
【0008】
(構成3)
前記通信回路部が、光通信回路部であり、発光部と、受光部と、当該発光部と受光部の間を絶縁しつつ光学的に結合する絶縁性光伝導体と、を備えることを特徴とする構成2に記載の電位治療器。
【0009】
(構成4)
前記波形生成昇圧回路部からの出力が減少していく期間において、当該出力の減少程度に応じて前記放電回路部による放電量を増加させることを特徴とする構成1から3の何れかに記載の電位治療器。
【0010】
(構成5)
前記波形生成昇圧回路部からの出力がゼロである期間において、前記放電回路部による放電を最大化させることを特徴とする構成1から4の何れかに記載の電位治療器。
【0011】
(構成6)
昇圧された第1のパルス状の波形を第1整流回路によって整流した正側の高圧出力波形と、昇圧された第2のパルス状の波形を第2整流回路によって整流した負側の高圧出力波形を得た後に、前記正側の高圧出力波形と負側の高圧出力波形を合成することで、高圧交流波形を得る電位治療器における高圧交流波形の生成方法であって、前記第1のパルス状の波形の振幅が減少していく期間において、当該振幅の減少程度に応じて、前記第1整流回路のコンデンサの放電量を増加させるステップと、前記第2のパルス状の波形の振幅が減少していく期間において、当該振幅の減少程度に応じて、前記第2整流回路のコンデンサの放電量を増加させるステップと、を有することを特徴とする高圧交流波形の生成方法。
【0012】
(構成7)
前記第1のパルス状の波形の振幅がゼロである期間において、前記第1整流回路のコンデンサの放電量を最大化するステップと、前記第2のパルス状の波形の振幅がゼロである期間において、前記第2整流回路のコンデンサの放電量を最大化するステップと、を有することを特徴とする請求項6に記載の高圧交流波形の生成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電位治療器及び高圧交流波形の生成方法によれば、出力波形がなまってしまい、振幅が低下することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の電位治療器の構成の概略を示すブロック図
【
図2】第1パルス昇圧回路(波形生成昇圧回路部)を示す回路図
【
図3】第1、第2パルス昇圧回路の出力波形の一例を示す図
【
図8】第1、第2整流回路、出力回路からの出力波形の一例を示す図
【
図9】放電回路が無い場合における、第1、第2整流回路、出力回路からの出力波形の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0016】
電位治療器の一般的な構成は、家庭用電源に接続されて高電圧を発生させる本体部と、当該本体部で発生された電圧が入力され、これに基づく電界を発生させて被治療者に電位を印加する通電シートや通電マットなどの導子を備えるものとなっている。
図1は、本実施形態の電位治療器の本体部における本発明に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。
本実施形態の電位治療器1は、
装置全体の制御や各種の演算処理などを行う制御部である制御マイコン11と、
被治療者に電位を印加するための波形及び電圧を生成する波形生成昇圧回路部である第1パルス昇圧回路12a、第2パルス昇圧回路12bと、
第1パルス昇圧回路12a、第2パルス昇圧回路12b(波形生成昇圧回路部)からの出力を整流する整流回路部である第1整流回路13a、第2整流回路13bと、
第1整流回路13a、第2整流回路13b(整流回路部)によって得られた出力を導子へ出力する出力部である出力回路14と、
第1整流回路13a、第2整流回路13b(整流回路部)に備えられるコンデンサを放電させるための放電回路部である第1放電回路部15a、第2放電回路部15bと、
制御マイコン11(制御部)からの制御信号を電気的に絶縁しつつ第1放電回路部15a、第2放電回路部15bへ伝える通信回路部である第1光通信回路16a、第2光通信回路16bと、
家庭用電源に接続されて装置内に電源を供給する電源部である電源回路17と、
第1パルス昇圧回路12a、第2パルス昇圧回路12b(波形生成昇圧回路部)に所定の直流電圧(本実施形態では114V)を供給する所定電圧供給部である電圧制御回路18と、
第1放電回路部15a、第2放電回路部15bへ電源を供給する放電用電源回路19と、
を有している。
【0017】
本実施形態の電位治療器1は、制御マイコン11の制御に基づいて、第1パルス昇圧回路12a、第1整流回路13a、第1放電回路部15a、第1光通信回路16aによって、正側の高圧出力波形(
図8(a))を生成し、第2パルス昇圧回路12b、第2整流回路13b、第2放電回路部15b、第2光通信回路16bによって、負側の高圧出力波形(
図8(b))を生成する。この正側の高圧出力波形と負側の高圧出力波形を、出力回路14において合成することで、高圧交流波形(
図8(c))を得て、これを通電シートや通電マットなどの導子へと出力するものである。
正側の高圧出力波形を生成する第1パルス昇圧回路12a、第1整流回路13a、第1放電回路部15a、第1光通信回路16aと、負側の高圧出力波形を生成する第2パルス昇圧回路12b、第2整流回路13b、第2放電回路部15b、第2光通信回路16bは、正負の違いによる相違部分があるものの、基本的に同様の概念であるため、以下、第1パルス昇圧回路12a、第1整流回路13a、第1放電回路部15a、第1光通信回路16aに関して、即ち正側について主に説明を行い、負側については説明を簡略化若しくは省略する。
【0018】
図2は、第1パルス昇圧回路12aを示す回路図である。
第1パルス昇圧回路12aは、制御マイコン11から出力される波形制御用PWM信号から、出力に発生させる波形に対応した変動電圧を作り出す第1パルスSW回路121aと、昇圧トランスTrとこれを一定の周期でプッシュプル動作にてスイッチング駆動する為のスイッチング回路を有する第1昇圧回路122aと、を備える。
なお、昇圧トランスTrはパルストランスを用いて小型化を図っている。本実施形態では入力電圧70Vのパルスをプッシュプル動作により入力し、出力に±7,000Vの電圧を発生させる約100倍の昇圧パルストランスを用いている。
第1パルス昇圧回路12aは、電圧制御回路18からの直流電圧をもとにハーフブリッジ動作の電界効果トランジスタ(以下単に「FET」)のスイッチ回路により希望する出力波形の半波を生成し、昇圧トランスTrのコモン端子に供給する。
制御マイコン11からのPWM信号は、本実施形態では約50kHzの搬送周波数の信号が出力されて2個のFET1211、1212を交互にスイッチング動作させることによって半波の信号を昇圧トランスTrのコモン端子に生成させている。
昇圧トランスTrの1次側は2つの巻き線が直列に巻いてあり、それぞれの片側にはスイッチ動作を行う2つのFET1221、1222が接続され、FET1221とFET1222は本実施形態では約18kHzの周波数で交互にスイッチされる。
このように1次側の巻き線に交互に電流を流すことにより、コアの磁束も交互に変化するので2次側には約18kHzの周波数で極性が交互に入れ替わり、かつ振幅は希望する出力波形の半波の出力(昇圧された第1のパルス状の波形)が発生する。
なお、第2パルス昇圧回路12bは、第1パルス昇圧回路12aと同様の構成であり、2次側に約18kHzの周波数で極性が交互に入れ替わり、かつ振幅は希望する出力波形の半波の出力(昇圧された第2のパルス状の波形)を発生させる。
図3は、パルス昇圧回路の出力波形の一例を示す図(パルスがわかるように、パルスの数を減らして模式的に示した図)であり、
図3(a)は第1パルス昇圧回路12aの出力波形(第1のパルス状の波形)、
図3(b)は第2パルス昇圧回路12bの出力波形(第2のパルス状の波形)である。
【0019】
図4は、第1整流回路13aを示す回路図である。
第1整流回路13aは、整流ダイオード133、134と平滑コンデンサ131、132による一般的な整流回路である。昇圧トランスTrからのパルス出力電圧(
図3)に応じた高耐圧の整流ダイオードと高耐圧の平滑コンデンサを用いる。本実施形態では、ダイオード2個と平滑コンデンサ2系統で構成される倍電圧整流回路を用いている。なお、第2整流回路13bは、ダイオード133、134の方向性が逆になったものである。
第1整流回路13aでは、第1パルス昇圧回路12aの昇圧トランスTrに発生したプラス側のパルスと、マイナス側のパルスが、それぞれコンデンサ131、132にチャージされ、これらを足したプラスの電圧が出力電圧になる。なお、第2整流回路13bは、ダイオード133、134の方向性が逆になったものであり、第2パルス昇圧回路12bの昇圧トランスTrに発生したプラス側のパルスと、マイナス側のパルスが、それぞれコンデンサ132、131にチャージされ、これらを足したマイナスの電圧が出力電圧になる。
コンデンサ131、132にチャージされた電圧は放電しなければ直流の出力となるが、実際には放電回路によってある程度の電流は流れて放電されることになるので直流とはならず、出力に高圧の半波の波形が発生される。
【0020】
図5は、第1放電回路部15aを示す回路図である。
第1放電回路部15aは、半導体素子を用いて構成される定電流回路を用いている。放電回路には整流回路から得られた高電圧が印加されるため、本実施形態では、コレクタ-エミッタ間を多段に接続したダーリントントランジスタで構成し、それぞれのベース端子間を高抵抗で接続した高耐圧スイッチ素子群によって第1放電回路151aを構成している。また、第1放電回路部15aは、第1光通信回路16aからの出力信号を電圧信号に変換し、第1放電回路151aの高耐圧スイッチ素子群に加える電圧に応じてコレクタ電流を定電流制御する第1放電制御回路152aを備えている。
第1放電回路部15aは、制御マイコン11からのPWM信号に基づく電流制御を可能とし、後述する光通信回路が用いられていることによって所望する波形に応じて細やかな電流制御が可能である。
第1光通信回路16aから入力されたPWM信号は抵抗1521とコンデンサ1522による復調回路によって電圧変化信号に変換される。
抵抗1521とコンデンサ1522による復調回路のカットオフ周波数は、PWM信号の1/10倍くらいの周波数にすることができ、PWM信号の搬送周波数を50kHz程度に設定すればカットオフ周波数は5kHz程度まで高くすることができ、数kHzで変化する信号をオペアンプ1523によるバッファ回路に入力することができる。
バッファ回路の出力は、次段のオペアンプ1524と第1放電回路151aを構成するダーリントントランジスタ群の最下段のダーリントントランジスタのベースに加えられる。ダーリントントランジスタのエミッタには抵抗Reが接続され、かつ、エミッタはオペアンプ1524の作動増幅マイナス側端子に接続されているので、入力の電圧変化に応じて抵抗Reに流れる電流を制御できる定電流回路を構成している。即ち、制御マイコン11からのPWM信号に基づいて、抵抗Reに流れる電流(=放電電流)が制御されるものである。
また、1段目のオペアンプ1523の出力が一定の電圧(ツェナーダイオード1525のツェナー電圧)を超えた場合には、強制放電用トランジスタ1526にベース電流を流し第1放電回路151aに流れる放電電流を最大化することができるようになっている。即ち、制御マイコン11からのPWM信号のデューティー比が一定値を超えた場合には、放電電流が最大化される。
なお、第2放電回路部15bは、第1放電回路部15aと同様の構成である。
【0021】
第1放電回路部15aは、制御マイコン11からのPWM信号に基づいて、第1パルス昇圧回路12a(波形生成昇圧回路部)からの出力(振幅)がゼロである期間、即ち、
図3(a)における期間Ta2において、第1放電回路151aに流れる放電電流を最大化させる。
また、第1放電回路部15aは、制御マイコン11からのPWM信号に基づいて、第1パルス昇圧回路12a(波形生成昇圧回路部)からの出力(振幅)が減少していく期間、即ち、
図3(a)における期間Ta1において、当該出力(振幅)の減少程度に応じて放電回路による放電量を増加させる。
図6は、第1放電回路部15aにおける放電電流制御の概念を説明する図である。
図6の上段側は第1パルス昇圧回路12aからの出力波形、下段側は第1放電回路部15aにおける放電電流の大きさを示す概念図である。
図6に示されるように、第1パルス昇圧回路12aからの出力(振幅)が減少していく期間Ta1において、出力(振幅)の減少スピードが大きくなるに従い、放電電流も大きくしており、出力(振幅)がゼロである期間Ta2では、放電電流が最大化される。これにより第1整流回路13aの平滑コンデンサ131、132のチャージ量が制御される。
当該制御が制御マイコン11からのPWM信号に基づいて行われるものであるが、本実施形態の電位治療器1では、次に説明する通信回路を備えることにより、マイコン側と高圧回路側とを絶縁しつつ、高速且つ細やかな制御で整流回路13のコンデンサの放電を行うことができる。
なお、上記説明は負側の第2放電回路部15bについても同様であり、
図3(b)の期間Tb1において出力(振幅)の減少程度に応じて放電回路による放電量が増加され、期間Tb2において放電量が最大化される。
【0022】
図7は、第1光通信回路16aを示す回路図である。
第1光通信回路16aは、制御マイコン11からのPWM信号を光に変換する発光素子(本実施形態では赤外線発光ダイオード)162と、発光素子162から出力される光を受光して電気信号に変換する受光素子(本実施形態ではフォトダイオード)164とで構成される通信ユニットを有する。通信ユニットは、耐圧の高いフォトカプラなどの一般部品で構成することも考えられるが、高圧電位治療器の最高ピーク電圧である14,000Vに対応したフォトカプラを一般市販品として入手することは困難であり、本実施形態では、赤外線発光ダイオードとフォトダイオードを充分な絶縁距離を保った上で透明な樹脂(絶縁性光伝導体163)にてモールドした構成としている。即ち、第1光通信回路16aは、発光素子(発光部)162と、受光素子(受光部)164と、これらを絶縁しつつ光学的に結合する絶縁性光伝導体163と、を備えている。
制御マイコン11から出力されるPWM信号は、スイッチングトランジスタ161のベースに供給され、コレクタに接続されている赤外線発光ダイオード162をPWM動作(発光)させる。
PWM信号に基づいて点滅する赤外光は絶縁性光伝導体(本実施形態で使用しているのはエポキシ樹脂)163を通り、相手側の逆バイアスをかけたフォトダイオード164に届き、フォトダイオード164に電流が流れる。
この電流に基づいて、トランジスタ165、166をスイッチングすることによって、高電圧でも安全に絶縁された回路に対し応答速度の速いPWM出力を得る(第1放電回路部15aへ入力する)ことが出来る。応答速度の速いPWM信号を伝達できることにより、細やかな制御を行うことができるものである。
なお、第2光通信回路16bは、第1光通信回路16aと同様の構成である。
【0023】
図8は、第1、第2整流回路、出力回路からの出力波形の一例を示す図であり、
図8(a)は第1整流回路13aの出力波形(正側の高圧出力波形)、
図8(b)は第2整流回路13bの出力波形(負側の高圧出力波形)、
図8(c)は、出力回路14の出力波形(高圧交流波形)をそれぞれ示す。
一方、
図9(a)~(c)は、放電回路のダーリントントランジスタ群による放電が行われない場合の出力波形を示す図であり、
図8(a)~(c)にそれぞれ対応する図である。
放電回路のダーリントントランジスタ群による放電がされない場合、周波数がある程度高くなってくると、
図9(a)~(c)に示されるように、整流回路のコンデンサのチャージ電圧が下がりきらないことによって、求める波形(ここの例では正弦波)に対して、波形がなまった状態となり、振幅が低下する問題がある。正側の高圧出力波形(
図9(a))、負側の高圧出力波形(
図9(b))の何れについても、昇圧回路からの出力が減少していく際に整流回路のコンデンサのチャージ電圧が下がりきらず、結果として所望の波形より出力が大きくなってしまっている。このような正側の高圧出力波形(
図9(a))、負側の高圧出力波形(
図9(b))が、出力回路で足し合わされる結果、
図9(c)に示されるような、なまった波形となり、振幅が低下するものである。
これに対し、本実施形態の電位治療器1では、上記の各回路機能部を備えることにより、
図6で説明したように、昇圧回路からの出力の振幅が減少していく期間Ta1において、振幅の減少スピードが大きくなるに従い、放電電流を徐々に大きくする制御が行われるため、
図8(a)~(c)に示されるように、波形のなまりと振幅の低下を抑制することができる。即ち、整流回路のコンデンサのチャージ電圧を適切に制御することが可能であるため、正側の高圧出力波形(
図8(a))、負側の高圧出力波形(
図8(b))の何れについても、所望の波形が得られ、その結果、出力回路からの出力波形(
図8(c))においても所望の波形(ここの例では正弦波)が得られるものである。
【0024】
以上のごとく、本実施形態の電位治療器1によれば、出力波形の周波数が高いような場合においても、出力波形がなまってしまい、振幅が低下することを抑制することができる。さらに言えば、出力波形の周波数が変動しても、これに合わせて波形のなまりと振幅の低下を抑制するように放電電流を細かく調整するといった細やかな制御が可能である。これにより、出力波形の周波数の変動幅を大きくしても所望の波形を得ることが可能となる。
【0025】
なお、マイコン側との絶縁をしつつ、放電回路の制御を行うものとして、絶縁トランスを用いるものも考えられる。
図10に、そのような例を示した。
図10の回路例では、絶縁トランス1528の1次側に、制御マイコン11からの信号によって入力信号の振幅を増減させることが可能なトランス駆動回路1527を設けており、これによって2次側の出力電圧を変化させることが出来る。
2次側に発生した交流電圧は、整流回路1529によってコンデンサにチャージされて直流になるが、この電圧が放電回路151a´を構成するダーリントントランジスタ群の最下段のダーリントントランジスタのベースに加えられることにより、エミッタに接続された抵抗Reを介して電流が流れる。
抵抗Reに流れる電流が増加すると、最下段トランジスタのエミッタ電圧が上昇し、ベースに加えられた電圧で電流が制御される定電流回路として機能する。これにより、放電電流を制御し、出力波形のなまりと振幅の低下を抑制するこができる。
この定電流回路は、最下段トランジスタのベースに加える電圧を変化させることによって電流を変化させることが出来るようになるが、整流回路のコンデンサは小さくするとリプルが発生するため一定以上の容量が必要となる。このため、コンデンサにチャージされた電圧は一定の時定数で変化せざるをえなく、急峻に変化をさせることが出来ない。
このため、絶縁トランスを用いた
図10の放電回路では、回路の仕様として低い周波数においては出力波形のなまりと振幅の低下を抑制するこができるが、出力波形の周波数が高い周波数になると、出力波形のなまりと振幅の低下が生じてしまうという問題がある。即ち、回路特性によって、波形のなまりと振幅の低下を抑制可能な出力波形の周波数の範囲が決まってしまい、多様な周波数に対応させることが難しいという問題がある。
これに対し、上記実施形態で説明した電位治療器1では、実施形態で説明した各回路機能部を備えることにより、高速且つ細やかな制御で整流回路のコンデンサの放電を行うことができ、広い範囲の周波数において出力波形がなまってしまい、振幅が低下することを抑制することができる。
【0026】
なお、実施形態では、“制御部からの制御信号を電気的に絶縁しつつ前記放電回路部へ伝える通信回路部”の例として、応答性の高い光通信回路を用いているが、同等の応答性が可能な電波を用いた通信回路(電波通信回路部)を用いることもできる。たとえば、昨今携帯機器に多く用いられているBluetooth(登録商標)技術を用いた通信などでも構成が可能である。
【0027】
また、実施形態では、出力波形の例として正弦波を用いて説明をしているが、本発明は、直流波形(出力が一定で変化が無いもの)を除き、任意の出力波形に対して用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1...電位治療器
11...制御マイコン(制御部)
12a...第1パルス昇圧回路(波形生成昇圧回路部)
12b...第2パルス昇圧回路(波形生成昇圧回路部)
13a...第1整流回路(整流回路部)
13b...第2整流回路(整流回路部)
14...出力回路(出力部)
15a...第1放電回路部
15b...第2放電回路部
16a...第1光通信回路(通信回路部)
16b...第2光通信回路(通信回路部)
162...発光素子(発光部)
163...絶縁性光伝導体
164...受光素子(受光部)