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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063513
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】パルス印加制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
H02M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171819
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】596009788
【氏名又は名称】株式会社末松電子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】末松 謙一
(72)【発明者】
【氏名】甲田 忠
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS02
5H730FF09
5H730ZZ18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1台のパルス電源で複数の負荷へ高繰り返しでパルス電流を印加することができるパルス印加制御回路を提供する。
【解決手段】制御回路10により複数の負荷L1~Lnから印加する負荷を選択して印加制御するパルス印加制御回路1であって、リセット回路1~nは、可飽和インダクタSl1~Slnが飽和又は未飽和となる方向に流れるリセット電流の向きを切り替える機能を有する。制御回路10は、パルス電源20から一定時間間隔で出力されるパルス電流Ioの間に、パルス電流を印加する負荷に接続された可飽和インダクタが飽和する方向にリセット回路のリセット電流の向きを制御することにより、1台のパルス電源により複数の負荷毎に、高繰り返しでパルス電流を印加する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台のパルス電源と複数の負荷との間をそれぞれ可飽和インダクタとリセット回路を1セットとして介在させて並列に接続し、制御回路により複数の負荷から印加する負荷を選択して印加制御するパルス印加制御回路であって、
前記リセット回路は、前記可飽和インダクタが飽和又は未飽和となる方向に流れるリセット電流の向きを切り替える機能を有し、
前記制御回路は、前記パルス電源から一定時間間隔で出力されるパルス電流の間に、パルス電流を印加する負荷に接続された前記可飽和インダクタが飽和する方向に前記リセット回路のリセット電流の向きを制御することにより、1台のパルス電源により複数の負荷毎に、高繰り返しでパルス電流を印加することを特徴とするパルス印加制御回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記複数の負荷に対してパルス電流の印加パターン及び印加回数を複数種類備えていることを特徴とする請求項1に記載のパルス印加制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス印加制御回路に関し、詳しくは、1台のパルス電源で複数の負荷へ時系列でパルス高電圧とパルス大電流を印加するためのパルス印加制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電源は、低電力でコンデンサやインダクタにエネルギーを蓄え、マイクロ秒やナノ秒という短時間に、パルス高電圧とパルス大電流(以下、単にパルス電流という)を瞬間的に取り出して出力するため、コンデンサ、インダクタ、半導体スイッチ、磁気パルス圧縮回路(可飽和リアクトル)等でパルス発生回路を構成し、高精度で安定的な高繰り返しのパルス電流を発生させることができるようにしている。
【0003】
また、このようなパルス電源を用いて負荷にパルス電流を印加するための制御回路としては、可飽和インダクタとリセット回路を組み合わせて制御回路を構成し、リセット回路の電流を可飽和インダクタの磁界を飽和させる方向に通電することで負荷にパルス電流を印加している。
【0004】
高繰り返しのパルス電流を発生するために、充電器と、この充電器で充電されるコンデンサを備えた初段コンデンサ部と、この初段コンデンサ部の放電によって生じるパルス電流を磁気パルス圧縮して出力する磁気パルス圧縮回路とを備えたパルス電源のスループットを向上させて、高繰り返し可能としたパルス電源及びこのパルス電源を備えた露光装置が開示されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009-507477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1開示されている高繰り返し可能なパルス電源を備えた露光装置は、1台の高繰り返し可能としたパルス電源を用いて1個のEUVランプ(つまり、負荷)にしかパルス電流を印加することしかできない。また、複数の負荷に対してパルス電流を印加するためには、高繰り返し可能なパルス電源を備えた露光装置をそれぞれ複数の負荷の数に応じて用意する必要がある。
【0007】
つまり、1つの負荷に対して1台のパルス電源のパルス電流を印加する装置(回路)では、1つの負荷に対してパルス電源の能力限界のパルス電流を負荷に印加することはできるが、複数の負荷の数だけパルス電源が必要なため、高コストとなり複数台のパルス電源や装置の設置スペース等の確保が必要となる。
【0008】
そこで、1台のパルス電源と複数の負荷との間を、それぞれ複数の高電圧リレーで並列に接続し、この高電圧リレーを制御することにより、1台のパルス電源によりパルス電流を複数の負荷に印加する方法も考えられる。しかしながら、高電圧リレーは接点寿命があるため交換(メンテナンス)が必要となる。また、高電圧リレーはスイッチング速度に限界があるため、パルス電流1回毎に、複数の負荷に対して順次切り替えてパルス電流を印加するような高繰り返しには対応できない。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために、1台のパルス電源と複数の負荷との間を、それぞれ可飽和インダクタとリセット回路を1セットとして並列に接続し、リセット回路の電流を可飽和インダクタの磁界を飽和させる向きと可飽和インダクタの磁界を未飽和させる向きとの異なる向きに流れるように制御することで、1台のパルス電源で複数の負荷へ高繰り返してパルス電流を印加することができるパルス印加制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、1台のパルス電源と複数の負荷との間をそれぞれ可飽和インダクタとリセット回路を1セットとして介在させて並列に接続し、制御回路により複数の負荷から印加する負荷を選択して印加制御するパルス印加制御回路であって、前記リセット回路は、前記可飽和インダクタが飽和又は未飽和となる方向に流れるリセット電流の向きを切り替える機能を有し、前記制御回路は、前記パルス電源から一定時間間隔で出力されるパルス電流の間に、パルス電流を印加する負荷に接続された前記可飽和インダクタが飽和する方向に前記リセット回路のリセット電流の向きを制御することにより、1台のパルス電源により複数の負荷毎に、高繰り返しでパルス電流を印加することを特徴とするパルス印加制御回路とした。
【0011】
また、前記制御回路は、前記複数の負荷に対してパルス電流の印加パターン及び印加回数を複数種類備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パルス電源から一定時間間隔で出力されるパルス電流の間に、1台のパルス電源に接続された複数の負荷のうち、パルス電流を印加する負荷を選択して、パルス電流を印加する負荷に接続された可飽和インダクタが飽和する方向にリセット回路によりリセット電流の向きを制御することで、高電圧リレー等の消耗品を用いることなく、可飽和インダクタを磁気リレーとして機能させることが可能となる。
【0013】
また、パルス電流が印加される複数の負荷の印加パターン及び印加回数を複数備えているため、複数の負荷に対して様々な印加パターン及び印加回数を選択的に用いることができ、複数の負荷に対して用途に応じた最適なパルス電流の印加を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のパルス印加制御回路の構成の概略を示す図である。
図2】本実施形態のパルス印加制御回路のリセット回路の詳細を説明する回路図である。
図3】本実施形態のパルス印加制御回路のパルス電源及びリセット回路を制御するための各種信号のタイムチャートを説明する図である。
図4】本実施形態のパルス印加制御回路におけるパルス電流の負荷パターン及び印加回数を説明する図である。
図5】本実施形態のパルス印加制御回路におけるパルス電流の印加制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、1台のパルス電源と複数の負荷との間をそれぞれ可飽和インダクタとリセット回路を1セットとして介在させて並列に接続し、制御回路により複数の負荷から印加する負荷を選択して印加制御するパルス印加制御回路であって、前記リセット回路は、前記可飽和インダクタが飽和又は未飽和となる方向に流れるリセット電流の向きを切り替える機能を有し、前記制御回路は、前記パルス電源から一定時間間隔で出力されるパルス電流の間に、パルス電流を印加する負荷に接続された前記可飽和インダクタが飽和する方向に前記リセット回路のリセット電流の向きを制御することにより、1台のパルス電源により複数の負荷毎に、高繰り返しでパルス電流を印加することを特徴とするパルス印加制御回路に関するものである。
【0016】
以下、本実施形態に係るパルス印加制御回路の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のパルス印加制御回路の構成の概略を示す図である。図2は、本実施形態のパルス印加制御回路のリセット回路の詳細を説明する回路図である。図3は、本実施形態のパルス印加制御回路のパルス電源及びリセット回路を制御するための各種信号のタイムチャートを説明する図である。図4は、本実施形態のパルス印加制御回路におけるパルス電流の負荷パターン及び印加回数を説明する図である。図5は、本実施形態のパルス印加制御回路におけるパルス電流の印加制御処理を説明するフローチャートである。
【0017】
[1.パルス印加制御回路の構成の概要]
図1に示すように、パルス印加制御回路1は、1台のパルス電源20に複数の負荷L1~Ln(nは整数)が並列に接続されて構成される。パルス電源20としては、負荷L1~Lnに印加に必要な高電圧、大電流のパルス電流を発生させる周知のパルス電源が好適に用いられる。
【0018】
パルス電源20と複数の負荷L1~Lnとの間には、それぞれ複数の可飽和インダクタSI1~SIn(nは整数)が介在して接続されている。可飽和インダクタSI1~SInには、それぞれリセット回路R1~Rn(nは整数)が接続されている。すなわち、本実施形態においては、パルス電源20と複数の負荷L1~Lnとの間には、可飽和インダクタSI1~SInとリセット回路R1~Rnとが1セットで介在することになる。
【0019】
パルス印加制御回路1には制御回路10が配設されている。制御回路10としては、例えば、演算・制御装置(CPU)、メモリ装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ)、入出力回路、タイマー回路などを一つの集積回路に実装したマイクロコンピュータが好適に用いられる。そして、ROMにはパルス印加制御回路1において、複数の負荷L1~Lnにパルス電流を印加する制御を行うための複数のプログラム(後述の印加制御処理等)や複数の負荷L1~Lnに対する印加パターン(負荷順序)や印加回数等を記憶した各種データテーブルなどが記憶されている。制御回路10の入出力回路には、パルス電源20がパルス電流を出力する際に一定時間(例えば、0.1s)間隔でオン/オフされるトリガ信号Trや複数の可飽和インダクタSI1~SInに接続されている複数のリセット回路R1~Rnに流れるリセット電流Ir1~Irnの流れる向きを制御する信号(B1~Bn、F1~Fn)が接続されている。
【0020】
この構成により、パルス印加制御回路1の制御回路10は、メモリ装置(例えば、ROM)に記憶されている複数の負荷L1~Lnに対する印加パターンや印加回数に基づいて、同じくメモリ装置に記憶されているプログラムを実行することで、複数の負荷L1~Lnのうちの一つの負荷を選択してパルス電流Ioを印加する制御を実行する。すなわち、制御回路10は、ROMに記憶されているプログラムを実行することで、パルス電源20によるパルス電流を印加する負荷L1~Lnに接続されているリセット回路R1~Rnのリセット電流Ir1~Irn(nは整数)が流れる向き(図中では上下方向)を制御する。このリセット電流Ir1~Irnの流れる向きは、可飽和インダクタSI1~SInが飽和する方向(図中は下矢印)と飽和しない(以下、未飽和という)方向(図中は上矢印)である。
【0021】
例えば、制御回路10により負荷L1にパルス電流を印加するように制御する場合は、可飽和インダクタSI1に接続されているリセット回路R1のリセット電流Ir1を可飽和インダクタSI1が飽和する向き(図中は下矢印)に流れるように制御し、他の負荷L2~Lnの可飽和インダクタSI2~SInに接続されているリセット回路R2~Rnのリセット電流Ir2~Irnは、可飽和インダクタSI2~SInが未飽和する向き(図中は上矢印)に流れるように制御する。そして、この状態でパルス電源20によるパルス電流を生起させるように制御することで、負荷L1にのみパルス電流が印加される。
【0022】
本実施形態のパルス印加制御回路1は、1台のパルス電源20に接続された複数の負荷L1~Lnのうち、パルス電流を印加する負荷L1~Lnに接続された可飽和インダクタSI1~SInにのみ飽和する向きにリセット電流Ir1~Irnの向き(図中は下矢印)を制御することで、高電圧リレー等の消耗品を用いることなく、可飽和インダクタSI1~SInを磁気リレーとして機能させることを可能としている。
【0023】
[2.パルス印加制御回路の構成の詳細]
以下、図2を参照して、本実施形態のパルス印加制御回路1の構成を詳説する。図2に示すように、パルス印加制御回路1は、1台のパルス電源20の出力端子20aに複数の負荷L1~Ln(nは整数)が並列に接続されている。このとき、整数nを5とすると、5台の負荷(負荷L1~L5)が並列に接続されることになる。なお、本実施形態のパルス印加制御回路1で接続される負荷の台数(つまり、整数nの数値)は特に限定されるものではないが、1台のパルス電源20により複数の負荷L1~Lnに個別にパルス電流を印加するため、接続される負荷L1~Lnの台数が多すぎると、1台当たりのパルス電流の印加頻度が低下する。このため、接続される負荷L1~Ln(整数nの数値)の台数は、上限(例えば、10台)を設けてもよい。
【0024】
図2に示すように、パルス電源20と負荷L1は、可飽和インダクタSI1を介在して接続されるとともに、可飽和インダクタSI1にはリセット回路R1が接続されている。同様にして、パルス電源20と負荷L2は、可飽和インダクタSI2を介在して接続されるとともに、可飽和インダクタSI2にはリセット回路R2が接続されている。そして、パルス電源20と負荷Ln(nは整数)は、可飽和インダクタSInを介在して接続されるとともに、可飽和インダクタSInにはリセット回路Rnが接続されている。すなわち、パルス電源20と負荷L1~Lnとの間には、可飽和インダクタSI1~SInとリセット回路R1~Rnとがそれぞれ1セットで介在して接続されている。
【0025】
以下、リセット回路R1~Rnの構成を説明する。なお、リセット回路R1~Rnは同じ回路のため、以下の説明ではリセット回路R1のみを説明する。リセット回路R1は、1個の直流電源、4個のドライブ回路、4個の絶縁ゲート型ハイポーラトランジスタ(以下、IGBTという)Q1-1~Q1-4、リセット電流Ir1を安定させるための抵抗Rr1、鉄心入りインダクタンスLr1により回路が構成されている。リセット回路R1は、制御回路10と2本の信号B1及び信号F1により接続されており、制御回路10は、2本の信号B1及び信号F1の出力(High or Low)を制御することにより、リセット回路R1のリセット電流Ir1の流れる向きが、当該リセット回路R1が接続される可飽和インダクタSI1が飽和又は未飽和する向きに制御される。
【0026】
上記構成において、パルス印加制御回路1の制御回路10は、以下のようにパルス電流Io1~Ionを負荷L1~Lnにそれぞれ印加する。すなわち、制御回路10は、パルス電源20と複数の負荷L1~Lnとの間にそれぞれ介在する可飽和インダクタSI1~SInのうち、パルス電流Io1~Ionを印加する負荷L1~Lnを決定する。次に、パルス電源20とパルス電流Io1~Ionを印加する負荷L1~Lnとの間に介在する可飽和インダクタSI1~SInに接続されているリセット回路R1~Rnのリセット電流Ir1~Irnの流れる向きを制御する。
【0027】
制御回路10が負荷L1にパルス電流Io1を印加する制御を具体的に説明すると、制御回路10は、信号B1をLowに信号F1をHighに制御する。これにより、リセット回路R1のリセット電流Ir1は、接続されている可飽和インダクタSI1が飽和する向き(図中下矢印)に流れる。このとき、制御回路10は、他のリセット回路R2~Rnは、信号B2~BnをHighに信号F2~FnをLowに制御する。これにより、リセット回路R2~Rnのリセット電流Ir2~Irnの流れる向きは、接続されている可飽和インダクタSI2~SInが未飽和する向き(図中上矢印)に流れる。
【0028】
制御回路10とパルス電源20はトリガ信号Tr(図3参照)が接続されており、パルス電源20はパルス電流を出力する際にトリガ信号Trを一定時間間隔でオンとする。パルス電源20は、トリガ信号Trをオンした後、一定の遅延時間(パルス形成時間)を経てパルス電源20の出力端子20aからパルス電流Ioを出力する。パルス電源20は、パルス電流Ioを出力すると、トリガ信号Trをオフする。パルス電源20の出力端子20aから出力されたパルス電流Ioは、リセット回路R1のリセット電流Ir1が、接続されている可飽和インダクタSI1が飽和する向き(図中下矢印)に流れているため、可飽和インダクタSI1が飽和して負荷L1にパルス電流Io1が印加される。
【0029】
上述してきたように、本実施形態においては、制御回路10において、複数の負荷L1~Lnの中から1台の負荷にパルス電流Ioを印加するように制御する。つまり、制御回路10は、リセット回路R1~Rnのリセット電流Ir1~Irnの流れる向きを制御することで、可飽和インダクタSI1~SInを磁気リレーとして機能させる。
【0030】
[3.パルス印加制御回路における制御回路による各種信号のタイムチャート]
以下、図3を参照して、本実施形態のパルス印加制御回路1において、制御回路10による各種信号の出力制御のタイムチャートを説明する。なお、以下の説明では、負荷L1~Lnの順序でパルス電流Ioを印加する制御を一例として説明する。
【0031】
制御回路10は、リセット回路R1に接続されている信号B1をLowに、信号F1をHighに制御する。これにより、リセット回路R1のリセット電流Ir1を下矢印(図2参照)の向きに流して可飽和インダクタSI1を飽和(磁気スイッチ的にオン)させておく。このとき、他の可飽和インダクタSI2~SInは、リセット回路R2~Rnのリセット電流Ir2~Irnを上矢印(図2参照)の向き流し未飽和(磁気スイッチ的にオフ)の状態にしておく。このため、リセット回路R2~Rnに接続されている信号B2~BnをHighに、信号F2~FnをLowに制御する。これにより、パルス電流Ioを印加したい負荷L1に直列に接続された可飽和インダクタSI1のみが飽和(磁気スイッチ的にオン)、その他は未飽和(磁気スイッチ的にオフ)の状態となる。
【0032】
パルス電源20は、パルス電流Ioを出力する際にトリガ信号Trをオンとする。これにより、一定の遅延時間(パルス形成時間)を経てパルス電源20の出力端子20aからパルス電流Ioが出力される。このとき、パルス電流Ioは可飽和インダクタSI1~SInのうち飽和(磁気スイッチがオン)している可飽和インダクタSI1を通り負荷L1へパルス電流Io1が印加される。また、他の負荷L2~Lnへは、可飽和インダクタSI2~SInが未飽和(磁気スイッチがオフ)しているためパルス電流Ioがブロックされてパルス電流Io2~Ionは印加されない。
【0033】
1回目のパルス電流を印加した後、制御回路10は、パルス電源20からのトリガ信号Trのオフを検出すると同時に、パルス電流を印加した負荷L1のリセット回路R1の信号B1をHighに信号F1をLowに切り替える(負荷L2へパルスを印加するための準備)。これにより、可飽和インダクタSI1に接続されているリセット回路R1のリセット電流Ir1を上矢印(図2参照)の方向に流して可飽和インダクタSI1を未飽和(磁気スイッチ的にオフ)の状態にする。
【0034】
制御回路10は、リセット回路R2に接続されている信号B2をLowに信号F2をHighに制御する。これにより、リセット回路R2のリセット電流Ir2を下矢印(図2参照)の方向に流して可飽和インダクタSI2を飽和(磁気スイッチ的にオン)させておく。その他の可飽和インダクタSI1、SI3~SInは未飽和(磁気スイッチ的にオフ)の状態を維持する。
【0035】
パルス電源20は、パルス電流を出力する際にトリガ信号Trをオンとする。これにより、一定の遅延時間(パルス形成時間)を経てパルス電源20の出力端子20aからパルス電流Ioが出力される。このとき、パルス電流Ioは可飽和インダクタSI1~SInのうち飽和(磁気スイッチがオン)している可飽和インダクタSI2を通り負荷L2へパルス電流Io2が印加される。他の負荷L1、L3~Lnへは、可飽和インダクタSI1、SI3~SInが未飽和(磁気スイッチがオフ)の状態のためパルス電流Ioがブロックされてパルス電流Io1、Io3~Ionは印加されない。
【0036】
負荷L2に2回目のパルス電流を印加した後、制御回路10は、パルス電源20からのトリガ信号Trのオフを検出すると同時に、リセット回路R2の信号B2をHighに信号F2をLowに切り替える(次の負荷L3へパルスを印加するための準備)。
【0037】
制御回路10は、2回目のパルス電流を出力した後も同様に、可飽和インダクタSI1~SInに接続されているリセット回路R1~Rnに流れるリセット電流Ir1~Irnの向きを制御(パルス電流を印加する負荷に接続されている可飽和インダクタのリセット回路に流れるリセット電流のみを飽和(磁気スイッチがオン)する向きに、それ以外のリセット回路に流れるリセット電流を未飽和(磁気スイッチがオフ)する向きに制御)し、最終的にn番目の負荷Lnへパルス電流を印加した後は、負荷L1へのパルス電流の印加に戻り、順に1回ずつ負荷L1~Lnへ繰り返し印加するように制御する。
【0038】
上述してきたように、本実施形態においては、制御回路10は、パルス電源20から制御回路10に一定時間(例えば、0.1S)毎にオン/オフされるトリガ信号Trのオフからオンの間に、パルス電流Ioを印加する負荷L1~Lnを決定し、印加する負荷L1~Lnの可飽和インダクタSI1~SInのみを飽和(磁気スイッチをオン)させ、それ以外の負荷L1~Lnへは、可飽和インダクタSI1~SInが未飽和(磁気スイッチがオフ)とする制御を行う。
【0039】
以下、図4を参照して、本実施形態のパルス印加制御回路1において、制御回路10による複数の負荷L1~Lnに対するパルス電流の複数種類の印加パターン及び印加回数を説明する。なお、以下の説明では理解を容易とするために、複数の負荷を5台(負荷L1~L5、つまりn=5)として説明する。制御回路10は、上述したように演算・制御装置(CPU)、メモリ装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ)、入出力回路、タイマー回路などからなるマイクロコンピュータ等である。そして、メモリ装置には、複数の負荷L1~L5に対する印加パターン(負荷順序)や印加回数等が設定された複数種類の負荷パターンテーブルが予めデータテーブルとして記憶されている。
【0040】
図4(a)に示す負荷パターンテーブルは、最上段に複数の負荷L1~L5に対する負荷順序が、その下段には、負荷順序に応じてパルス電流が印加される複数の負荷L1~L5のうちの印加負荷が、さらに、その下段には、パルス電流の印加回数が設定されている。つまり、複数の負荷L1~L5に、負荷L1→負荷L2→負荷L3→負荷L4→負荷L5の順序で1回ずつパルス電流を印加することが設定されている。
【0041】
図4(b)に示す負荷パターンテーブルは、最上段に複数の負荷L1~L5に対する負荷順序が、その下段には、負荷順序に応じてパルス電流が印加される複数の負荷L1~L5のうちの印加負荷が、さらに、その下段には、パルス電流の印加回数が設定されている。つまり、複数の負荷L1~L5に、負荷L5→負荷L4→負荷L3→負荷L2→負荷L1の順序(つまり、図4(a)に示す負荷パターンとは逆の順序)で5回ずつパルス電流を印加することが設定されている。
【0042】
図4(c)に示す負荷パターンテーブルは、最上段に複数の負荷L1~L5に対する負荷順序が、その下段には、負荷順序に応じてパルス電流が印加される複数の負荷L1~L5のうちの印加負荷が、さらに、その下段には、パルス電流の印加回数が設定されている。つまり、複数の負荷L1~L5に、負荷L1→負荷L2→負荷L3→負荷L4→負荷L5の順序で、複数の負荷L1~L5に対してそれぞれ異なる印加回数(L1には5回、L2には10回、L3には8回、L4には3回、L5には7回)でパルス電流を印加することが設定されている。
【0043】
図4(d)に示す負荷パターンテーブルは、最上段に複数の負荷L1~L5に対する負荷順序が、その下段には、負荷順序に応じてパルス電流が印加される複数の負荷L1~L5のうちの印加負荷が、さらに、その下段には、パルス電流の印加回数が設定されている。つまり、複数の負荷L1~L5のうち、負荷L1→負荷L3→負荷L5→負荷L2→負荷L4の順序で、負荷L1、負荷L3、負荷L5には3回ずつ、負荷L2、負荷L4には2回ずつのパルス電流を印加することが設定されている。
【0044】
このように、本実施形態の負荷パターンテーブルによれば、制御回路10でリセット回路R1~R5におけるリセット電流Ir1~Ir5の向きを制御することで、上述したように、複数の負荷L1→負荷L5へ1回ずつの印加回数で順番にパルス電流を印加(図4(a))することができる。また、複数の負荷L5→負荷L1の順番で5回ずつの印加回数でパルス電流を印加(図4(b))することもできる。
【0045】
また、複数の負荷L1~L5に対して、それぞれ異なる印加回数(5、10、8、3、7回)で負荷L1→負荷L5の順番にパルス電流を印加(図4(c))することもできる。また、複数の負荷L1~L5に対して、異なる順序(負荷L1→負荷L3→負荷L5→負荷L2→負荷L4の順序)で、異なる印加回数(3回又は2回)でパルス電流を印加(図4(d))することもできる。なお、この図4に示す複数種類の負荷パターンテーブルは、あくまで一例であり、これに限定されるものではなく、様々な印加パターンや印加回数を適宜設定して用いることができる。また、負荷パターンテーブルは一種類を繰り返し使用してもよいし、複数種類組み合わせて使用してもよい。これにより、さらにバリエーションの多い複数の負荷L1~L5に対するパルス電流の印加が可能となる。
【0046】
このように、本実施形態のパルス印加制御回路1は、複数の負荷L1~L5の設置位置(並び)に応じて、パルス電流を印加する印加する複数の負荷L1~L5の順番や印加するパルス電流の印加回数を適宜設定できるので、パルス印加制御回路1が用いられる各種機器(装置)の用途に応じて効率の良いパルス電流の印加が可能となる。
【0047】
以下、図5を参照して、本実施形態のパルス印加制御回路1において、制御回路10による複数の負荷L1~Lnに対するパルス電流の印加制御処理を説明する。この処理は、制御回路10を構成するメモリ装置(ROM、RAM)に記憶されているプログラムであり、制御回路10を構成する演算・制御装置(CPU)によりメモリ装置(ROM、RAM)から読み出されて実行される処理である。
【0048】
制御回路10の演算・制御装置(以下単に制御回路10という。)は、メモリ装置に記憶されている複数種類の負荷パターンテーブル(図4参照)から、パルス電流の印加を実行する負荷パターンを決定する(ステップS10)。つまり、複数種類の負荷パターンテーブルから使用する負荷パターンテーブル(複数パターン選択可)を選択し、選択した負荷パターンテーブルの実行回数と併せて、パルス電流を印加する負荷L1~Lnの順番や印加回数を決定して、メモリ装置(RAM)に一時記憶する。
【0049】
制御回路10は、メモリ装置(RAM)に記憶された負荷L1~Lnの順番や回数に応じて、リセット回路R1~Rnのリセット電流Ir1~Irnの向きを制御し、パルス電流を印加する負荷L1~Lnに直列に接続された可飽和インダクタSI1~SInのみを飽和状態(磁気スイッチオン)とし、その他の可飽和インダクタSI1~SInは未飽和状態(磁気スイッチオフ)とする(ステップS11)。
【0050】
制御回路10は、パルス電源20からのトリガ信号Trのオンを検出する(ステップS12)。これにより、一定の遅延時間(パルス形成時間)を経てパルス電源20からパルス電流が出力され、印加する負荷L1~Lnに直列に接続された可飽和インダクタSI1~SIn(磁気スイッチ)のうちから飽和状態(磁気スイッチオン)に制御されている負荷L1~Lnにのみパルス電流が印加される。
【0051】
制御回路10は、パルス電源20からのトリガ信号Trのオフを検出すると、パルス電流を印加した可飽和インダクタSI1~SInを未飽和状態(磁気スイッチオフ)とする(ステップS13)。これにより、全ての負荷L1~Lnに直列に接続された可飽和インダクタSI1~SInは全て未飽和(磁気スイッチオフ)となり、パルス電流が負荷L1~Lnに印加されることはない。
【0052】
制御回路10は、パルス電流を印加する制御が終了したか否かを判断(ステップS14)し、終了したと判別(ステップS14:Yes)した場合は印加制御処理を終了する。一方、終了していないと判別した場合(ステップS14:No)は、ステップS11へ処理を移行し、次のパルス電流を印加する負荷L1~Lnに対するパルス電流の印加を繰り返す。このステップ14におけるパルス電流を印加する制御の終了の判断は、上記ステップS10において、メモリ装置(RAM)に一時記憶された負荷パターンテーブルの実行回数が全て終了したか否かである。
【0053】
上述してきたように、パルス印加制御回路1の制御回路10は、メモリ装置(RAM)に記憶された負荷L1~Lnへのパルス電流の印加の順番や回数に応じて、リセット回路R1~Rnのリセット電流Ir1~Irnの流れる向きを制御し、パルス電流を印加する負荷L1~Lnに直列に接続された可飽和インダクタSI1~SInのみ飽和状態(磁気スイッチオン)とし、その他の可飽和インダクタSI1~SInは未飽和状態(磁気スイッチオフ)とすることで、複数の負荷L1~Lnのうちから一台の負荷にパルス電流を印加する制御を繰り返し実行する。このように、可飽和インダクタSI1~SInを磁気スイッチとして機能させることで、複数の負荷L1~Lnに対して高速で順次切り替えてパルス電流を印加することができるパルス印加制御回路1とすることができる。
【0054】
以上、上記実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 パルス印加制御回路
10 制御回路
20 パルス電源
R1~Rn リセット回路
SI1~SIn 可飽和インダクタ
L1~Ln 負荷
Io1~Ion 印加電流
図1
図2
図3
図4
図5