(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063518
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】通蒸型パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171825
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BA19
3E013BA26
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BD15
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF26
3E013BF32
3E013BF36
3E013BG15
(57)【要約】
【課題】安全に内容物を加熱可能で、開封をスムーズに行え、かつ美粧性の高い両面印刷が可能な通蒸型パウチを提供する。
【解決手段】対向する第1シートおよび第2シートを含むシート20と、内容物を収容可能な収容空間が第1シートと第2シートとの間に形成されるようにシートをシールするシール部30と、内容物の取り出しのために収容空間を開口する開口部40と、加熱時の収容空間の内圧の上昇によって開口するようにシートに設けられた通蒸部50とを備える通蒸型パウチであって、
シートは、少なくとも、最内層となるシーラント層20E、シーラント層に隣接し、シーラント層と反対側の面に印刷層20Hを有するポリエステル層20D、無機顔料を含む有色ボリエステル層20C、最外層となる印刷基材20A、がこの順で積層された積層体からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部と、内容物の取り出しのために前記収容空間を開口する開口部と、加熱時の前記収容空間の内圧の上昇によって開口するように前記シートに設けられた通蒸部とを備える通蒸型パウチであって、
前記シートは、少なくとも、最内層となるシーラント層、該シーラント層に隣接し、シーラント層と反対側の面に印刷層を有するポリエステル層、無機顔料を含む有色ボリエステル層、最外層となる印刷基材、がこの順で積層された積層体からなることを特徴とする通蒸型パウチ。
【請求項2】
前記印刷基材は透明蒸着PETフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の通蒸型パウチ。
【請求項3】
前記ポリエステル層は易カット性または直線カット性を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の通蒸型パウチ。
【請求項4】
前記通蒸部は、前記シール部から前記収容空間側に張り出した蒸気抜きシール部と、前記蒸気抜きシール部の外側に形成され外部に連通した未シール部を有し、
前記未シール部に、前記第1シートおよび前記第2シートを厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通蒸型パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を収納する電子レンジ加熱用通蒸型パウチに関するもので、特にレンジ調理後の開封性と両面印刷の美粧性を両立させた通蒸型パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱される内容物を収容する通蒸型パウチが知られている。通蒸型パウチは、内容物を収容可能な収容空間が形成されるようにシールされたシート、収容空間の圧力の上昇にともない開口するようにシートの一部がシールされた通蒸部、および、内容物を収容空間に充填できるように設けられた開口部を含む。通蒸型パウチの収容空間に内容物が収容された状態では、開口部がシールされることによって収容空間が閉じられる。
【0003】
内容物を収容した通蒸型パウチが電子レンジ等の加熱手段によって加熱された場合、内容物から水蒸気が発生し、収容空間の圧力が上昇し、シートの各部分に応力が生じる。収容空間の圧力がある程度の圧力まで上昇した場合、通蒸部を構成するシールが剥離し、収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられることで、袋が破裂するのを防止する。
【0004】
特許文献1には、内容物を加熱した際に生じる蒸気を逃がすための構造を有するパウチが記載されている。具体的には、パウチにおける側部シール部(サイドシール部)が収容空間側に張り出した張出部分を有する。張出部分の内側は未シール領域である。内容物が加熱され蒸気が発生すると、張出部分のシールが剥離される。これにより、内容物を収容している空間と未シール領域とが繋がり、未シール領域を蒸気抜き口として蒸気が未シール領域から排出される。
【0005】
また、通蒸型パウチには、他のパウチ等と同様に商品名その他の情報をパウチ外部側に表示し、また商品性を訴求するための美麗なデザインなどを表出する印刷層が設けられる。通蒸型パウチにはまた、電子レンジ等での加熱調理後に切り裂いて開封したパウチを、そのまま内容物を摂取するための容器として使用するタイプのパウチも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通蒸型パウチを加熱する場合、たとえば、業務用の電子レンジを用いて高出力(たとえば1000W以上)のマイクロ波で通蒸型パウチが加熱される場合がある。このように通蒸型パウチが高出力下で加熱されると、内容物が急激に加熱されることから、収容空間の内圧の上昇スピードが速くなる。そのため、特許文献1に記載されているように、蒸気を抜くための張出部分が設けられていても、内圧の急激な上昇に伴って通蒸型パウチも急激に膨張し、正常に通蒸が行われてもパウチが大きく膨らんだ状態となり、開封のために引き裂くときにカットしにくく、またカットが直線的に綺麗に進行せず、内容物をこぼしたり、周辺を汚したりしてしまうおそれがある。
【0008】
また、開封したパウチを、内容物を摂取するための容器として使用するタイプの通蒸型パウチでは、パウチの内部側にも情報などを表出したいという要望があり、そのため内部
側に情報などを表出する印刷層を設けた場合、パウチの外部側に向けた印刷層の画像などが内部側に透けてしまい、内部側に向けた印刷層の情報などと重なって見え、見にくく、また美粧性が損なわれてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、業務用などの高出力(たとえば1000W以上)の電子レンジで加熱される利用状況下においても、安全に内容物を加熱可能で、開封をスムーズに行え、かつ美粧性の高い両面印刷が可能な通蒸型パウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る通蒸型パウチは、対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部と、内容物の取り出しのために前記収容空間を開口する開口部と、加熱時の前記収容空間の内圧の上昇によって開口するように前記シートに設けられた通蒸部とを備える通蒸型パウチであって、
前記シートは、少なくとも、最内層となるシーラント層、該シーラント層に隣接し、シーラント層と反対側の面に印刷層を有するポリエステル層、無機顔料を含む有色ポリエステル層、最外層となる印刷基材、がこの順で積層された積層体からなることを特徴とする通蒸型パウチである。
【0011】
電子レンジ等で加熱された場合、蒸気抜きシール部が剥離して収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成され、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の内圧の上昇が抑えられる。また、ポリエステル層が、内容物を収納空間から取り出すために開口部でシートをカットする際に、袋が膨らんだ状態であっても容易に直線的にカットすることができる切り裂き性を付与する。このため、開口部から内容物を零したりすることなく容易に取り出すことができる。
【0012】
また無機顔料を含む有色ポリエステル層が、ポリエステル層の印刷層の印刷画像と印刷基材層に設けられる印刷画像を互いに遮蔽し、内部側および外部側に向けた印刷画像それぞれを、他方の側に向けた印刷画像が透けて重なることなく見ることができ、見やすく、美粧性が損なわれることがない。
【0013】
上記通蒸型パウチにおいて、前記印刷基材は透明蒸着PETフィルムであると好ましい。バリア性を有し、かつ印刷をパウチの外部側に美麗に表出できる。
【0014】
上記通蒸型パウチにおいて、前記ポリエステル層は易カット性または直線カット性を有していると好ましい。袋の直線的なカットがより容易に行える。
【0015】
上記通蒸型パウチにおいて、前記通蒸部は、前記シール部から前記収容空間側に張り出した蒸気抜きシール部と、前記蒸気抜きシール部の外側に形成され外部に連通した未シール部を有し、
前記未シール部に、前記第1シートおよび前記第2シートを厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていると好ましい。
貫通孔が設けられていることで、電子レンジが業務用など高出力(たとえば1000W以上)のものであっても貫通孔の部分から水蒸気がスムーズに排出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の通蒸型パウチによれば、電子レンジでの加熱調理後でも直線カット性が良く、外部側、内部側それぞれに向けて印刷された画像が透けて重なることなく見ることができ、美粧性にも優れる通蒸型パウチが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】開口部が閉じられる前の通蒸型パウチの正面図。
【
図6】開封された状態の従来の通蒸型パウチの正面図。
【
図7】従来の通蒸型パウチのシートの層構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。また同等の部材等には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0019】
図1は、加熱に適した内容物Cの収容、および、内容物Cから発生した蒸気の排出が可能な通蒸型パウチ10の一例を示している。内容物Cは加熱されることによって、水蒸気を発生する被加熱物である。内容物Cの一例は食品である。食品の一例はシチューおよびスープ等のように流動性を有する食品である。通蒸型パウチ10は内容物Cの品質を保ちながら長期間保存できるように構成されている。通蒸型パウチ10は種々の形状を取り得る。通蒸型パウチ10が取り得る形状の例は、スタンディングタイプ、平袋タイプ、ガゼットタイプ、および、ピラータイプである。
図1に例示される通蒸型パウチ10の形状はスタンディングタイプである。以下では、通蒸型パウチ10の正面視における通蒸型パウチ10の左右方向を標準幅方向と称し、標準幅方向と直交する方向を標準高さ方向と称する。
【0020】
通蒸型パウチ10はシート20、シール部30、開口部40、および通蒸部50を含む。
図1等の網掛けはシール部30を表している。シート20は第1シート21、第2シート22、および底シート23を含む。第1シート21および第2シート22は内容物Cを収容する収容空間11が各シート21、22の間に形成されるように対向している。底シート23は第1シート21の底部21Aと第2シート22の底部22Aとの間を閉じるように各シート21、22の底部21A、22Aに配置されている。シート20の形状は任意に選択できる。第1例では、1枚のシートが折り曲げられることによって、対向する各シート21、22、および、各シート21、22の底部21A、22Aに配置された底シート23が形成される。第2例では、各シート21~23は個別に形成された3枚のシートである。
【0021】
シート20は複数の層が積層された層構造を備えている。第1例では、各シート21~23は同じ層構造を備える。第2例では、第1シート21と第2シート22とが同じ層構造を備え、底シート23が各シート21、22と異なる層構造を備える。第3例では、各シート21~23がそれぞれ異なる層構造を備える。
図1等では第1例の層構造を備える通蒸型パウチ10を示している。なお以下では、各シート21、22を構成する材料の樹脂の流れ方向をMD(Machine Direction)方向と称し、MD方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。各シート21、22のMD方向は標準幅方向に沿う方向である。各シート21、22のTD方向は標準高さ方向に沿う方向である。
【0022】
図2はシート20の層構造の一例を示す断面図である。シート20は印刷基材層20A、有色ポリエステル層20C、ポリエステル層20D、シーラント層20Eを含む。ポリエステル層20Dはシーラント層20Eに隣接して設けられる。またこれ以外の層を設けても良く、必要に応じ、接着剤層20Fを適宜設けても良い。シート20の製造方法の一例はドライラミネートである。
【0023】
印刷基材層20Aは主にガス遮断性、印刷適性、および、耐熱性に優れる。印刷基材層20Aは例えば透明蒸着フィルムである。印刷基材層20Aを構成する材料の一例は無機薄膜が蒸着されて透明バリア層20Bが形成されたポリエチレンテレフタレート(以下では、「透明蒸着PET」という)である。印刷基材層20Aに印刷層20Gを形成する場合は、シート20の内層側となる面に設けることで、摩擦などによる印刷画像の損傷を防ぐことができる。形成された印刷層20Gは、通蒸型パウチ10の外部側向けの画像35として表出される。
【0024】
有色ポリエステル層20Cは主に遮蔽性、隠蔽性に優れる。有色ポリエステル層20Cを構成する材料の一例は無機顔料を含むポリエチレンテレフタレート(PET)である。無機顔料の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられるが、これに限定されない。無機顔料が酸化チタンまたは酸化亜鉛である場合は、有色ポリエステル層20Cは白色を呈するが、白色以外の色を呈する様にしても良い。また有色ポリエステル層20Cが無機顔料を含むことで、無機顔料を含まない材料に比べコシが出て硬くなるため、シート20の直線カット性が向上し、パウチの開封が容易になる。また、直線カット性をさらに向上させるために、ミシン目加工を設けるなどしても良い。
【0025】
ポリエステル層20Dは主にガス遮断性、耐熱性、カット性に優れる。ポリエステル層20Dを構成する材料の一例はポリエチレンテレフタレート(PET)である。あるいは透明蒸着PETである。より好ましい例では、ポリエステル層20Dを構成する材料は樹脂の流れ方向のカット性に優れたポリエチレンテレフタレート(以下では、「易カット性PET」という)である。ガス遮断性は印刷基材層20A、ポリエステル層20Dのうち少なくともどちらか一方が有していればよい。ポリエステル層20Dに印刷層20Hを形成する場合は、シーラント層20Eと接着される面と反対側の面に設ける。
【0026】
印刷基材層20Aに形成された印刷層20Gとポリエステル層20Dに形成された印刷層20Hは、間に設けられる有色ポリエステル層20Cにより互いに遮蔽されるため互いに干渉せず、通蒸型パウチ10の外部側からは印刷基材層20Aに形成された印刷層20Gのみが画像として見え、内部側から見たときはポリエステル層20Dに形成された印刷層20Hのみが画像として見える態様となる。印刷層20Gおよび印刷層20Hは、いずれも公知の印刷方法、例えばグラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法などを適宜適用して形成することができる。
【0027】
シーラント層20Eは耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる。シーラント層20Eを構成する材料の一例はMD方向のカット性に優れた無延伸ポリプロピレン(以下では、「易カット性CPP」という)である。MD方向のカット性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。トラウザー引裂法では、TD方向の長さが50mm、MD方向の長さが150mmの長方形の試験片の中央に75mmの切り込みを入れ、23℃の恒温室内において、速度200mm/分でMD方向への引裂き力を測定した。易カット性CPPは例えば、100重量部のプロピレン・エチレンブロック共重合体に対して、低結晶性エチレン系エラストマーを3~10重量部の割合で含む。低結晶性エチレン系エラストマーは例えば、密度が0.865~0.890g/cm3の範囲に含まれ、かつ、JIS規格のK7122に規定される融解時の吸熱量が5~30J/gの範囲に含まれる。
【0028】
接着剤層20Fを設ける場合、接着剤層20Fを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。
【0029】
図1に示されるシール部30は、各シート21~23が分離しないように各シート21~23を接合している。一例では、シール部30は第1シート21のシーラント層20E、第2シート22のシーラント層20E、および、底シート23のシーラント層20Eを接合している。シール部30を形成する方法の一例はヒートシールである。正面視における通蒸型パウチ10の外郭形状は任意に選択できる。
図1に示される例では、通蒸型パウチ10の外郭形状は長方形である。シート20はシール部30に囲まれた部分(以下では、「内方部24」という)とシール部30とに区分できる。収容空間11は第1シート21の内方部24と第2シート22の内方部24と底シート23の内方部24とに囲まれた空間であり、通蒸型パウチ10の外部と連通しないようにシール部30によって閉じられている。
【0030】
シール部30は開口部40を閉鎖する閉鎖シール部31(以下では、「第1シール部31」という)を含む。一例では、シール部30は第2シール部32、第3シール部33、および、第4シール部34をさらに含む。第1シール部31は標準高さ方向において内方部24の上側に設けられている。第2シール部32は標準高さ方向において内方部24の下側に設けられている。第3シール部33は標準幅方向において内方部24の左側または右側に設けられている。第4シール部34は標準幅方向において内方部24の右側または左側に設けられている。
【0031】
第1シール部31における内方部24側の縁である内縁31A、第2シール部32における内方部24側の縁である内縁32A、第3シール部33における内方部24側の縁である内縁33A、および第4シール部34における内方部24側の縁である内縁34Aは、内方部24の外郭を規定している。第1シール部31における内縁31Aとは反対側の縁である外縁31B、第2シール部32における内縁32Aとは反対側の縁である外縁32B、第3シール部33における内縁33Aとは反対側の縁である外縁33B、および、第4シール部34における内縁34Aとは反対側の縁である外縁34Bは、通蒸型パウチ10の外郭を規定している。
【0032】
各シール部31~34の幅は任意に選択できる。各シール部31~34の幅は各シール部31~34の中心線の法線における内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間の長さである。各シール部31~34の中心線は内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間を通過する仮想の線分である。各シール部31~34の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各シール部31~34のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。
【0033】
通蒸型パウチ10の幅および高さは、例えば、収容される内容物Cの量、および、持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。通蒸型パウチ10の幅は標準高さ方向に直交する線分における第3シール部33の外縁33Bと第4シール部34の外縁34Bとの間の長さである。通蒸型パウチ10の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、複数の部位の幅の平均が通蒸型パウチ10の幅を代表する。通蒸型パウチ10の高さは標準幅方向に直交する線分における第1シール部31の外縁31Bと第2シール部32の外縁32Bとの間の長さである。通蒸型パウチ10の高さが部位毎に異なる場合、例えば最大の高さ、または、複数の部位の高さの平均が通蒸型パウチ10の高さを代表する。
【0034】
開口部40は内容物Cを収容空間11に充填できるように第1シート21の上部21Bと第2シート22の上部22Bとの間に形成されている。
図1に示される通蒸型パウチ10では、内容物Cが収納され、開口部40が第1シール部31によって閉鎖されている。
【0035】
第4シール部34には、通蒸部50が形成されている。通蒸部50は、通蒸型パウチ10を加熱した際に生じる蒸気を外部に逃がすために設けられた部分である。通蒸部50は第3シール部33に設けられても良い。通蒸部50は、収容空間11のうち内容物Cで満たされる領域より開口部40寄りに設けられている。通蒸部50は、収容空間11側に張り出している蒸気抜きシール部51を有している。蒸気抜きシール部51は、蒸気抜きシール部51の形状に第1シート21、第2シート22をヒートシールすることによって形成されている。本実施形態において、蒸気抜きシール部51から蒸気が抜けやすいように、蒸気抜きシール部51のシール強度は、各シール部31~34のシール強度より小さい。
【0036】
蒸気抜きシール部51の外側に、第1シート21と第2シート22がシールされていない未シール部53が形成され、未シール部53は袋の外部と連通している。未シール部53には第1シート21と第2シート22を貫通する貫通孔52が設けられている。貫通孔52は、たとえば切り込み部、切り抜き部、切れ目部等である。一実施形態において、貫通孔52の平面視形状は、たとえば、通蒸型パウチ10の内側(たとえば、収容空間11の中心側)に湾曲した弧状(たとえば、円弧、三日月状等)である。貫通孔52の弧状に沿った長さは、例えば7.5mm以上とすると好ましい。
【0037】
貫通孔52は、たとえば、貫通孔52の形状を有する刃で第1シート21および第2シート22に切り込み(または切れ目)を入れたり、切り抜いたりすることによって形成され得る。貫通孔52が設けられていることにより以下の様な効果が得られる。高出力(たとえば1000W以上の出力)の電子レンジで通蒸型パウチ10を加熱する場合、蒸気が急激に生じて収容空間11の内圧が急激に上昇し、蒸気抜きシール部51の剥離が一気に進む。この結果、未シール部53(特に、未シール部53の外縁34B側)が塞がることがある。未シール部53が塞がると蒸気が抜けずに通蒸型パウチ10が破裂するおそれや、他のシール部の剥離が生じる恐れが生じ、内容物Cが通蒸型パウチ10から飛び出すおそれ等が生じる。未シール部53に貫通孔52を有する場合、高出力で加熱された通蒸型パウチ10の内圧が急激に高くなっても、貫通孔52が蒸気を抜くための蒸気抜き口として機能するため、上記の様な不具合を解消できる。
【0038】
本実施形態において、第3シール部33および第4シール部34には、
図1に示したように、少なくとも一つの一対のノッチが形成されていてもよい。少なくとも一つ一対のノッチは、内容物Cを加熱した後、通蒸型パウチ10を開封するための切欠きである。
図1では、通蒸型パウチ10が2組の一対のノッチ41、42を有する例を示している。
図1を参照して2組の一対のノッチ41、42を説明する。
【0039】
一対のノッチ41は、第1シール部31寄りに形成されている。
図1に示した例では、一対のノッチ41の一方が第3シール部33に位置するように、他方が第4シール部34に位置するように形成されている。一対のノッチ41は、加熱された内容物Cを通蒸型パウチ10から、たとえば別の容器(たとえば皿など)に取り出すために、エンドユーザーが通蒸型パウチ10を開けるための切欠きである。一対のノッチ41は、一対のノッチ41の一方から他方に向けて通蒸型パウチ10をカットした際に、第1シール部31側が切り取られて通蒸型パウチ10が開放されるように形成されていればよい。
【0040】
次に、一対のノッチ42は、通蒸型パウチ10の収容空間11のうち内容物Cが収容される領域と、一対のノッチ41との間に形成されている。
図1に示した例では、一対のノッチ42の一方が第3シール部33に位置するように、他方が第4シール部34に位置するように、また、通蒸部50よりも第2シール部32寄りに位置するように形成されている。一対のノッチ42は、たとえば、一対のノッチ42の一方から他方に向けて通蒸型パウチ10をカットした際に、通蒸型パウチ10における一対のノッチ42より第2シール
部32側を内容物Cの容器としてエンドユーザーが使用可能に設けられたノッチである。
【0041】
図1に示した例のように、一対のノッチ42のうち第3シール部33側に位置するノッチ42に対して標準高さ方向における両側には隆起部(あるいタブ)が設けられてもよい。これにより、一対のノッチ42のうち第3シール部33側のノッチ42から他方のノッチ42に向けて通蒸型パウチ10をカットし易い。このような隆起部は、第4シール部34側に設けられても良く、両方に設けられても良い。またこのような隆起部は、たとえば、一対のノッチ41に対して設けられていてもよい。
【0042】
図3は、
図1のX-X´の部分で切断したときの断面図である。
図3(a)は加熱手段で加熱前の状態である。
図3(b)は通蒸型パウチ10が内容物Cを加熱するために加熱手段によって加熱されたときの状態である。加熱手段の一例は電子レンジである。通蒸型パウチ10が加熱されることにともない内容物Cから水蒸気が発生する。密封後の通蒸型パウチ10では、収容空間11がシール部30によって閉じられているため、水蒸気の発生にともない収容空間11の内圧が上昇する。通蒸部50は収容空間11の圧力の上昇にともない開口し、収容空間11の水蒸気を通蒸型パウチ10の外部に排出できるように構成されている。好ましい例では、通蒸部50は収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。通蒸部50は種々の形態を取り得る。第1例では、通蒸部50はシール部30の一部を構成する。第1例の具体例では、通蒸部50は第3シール部33および第4シール部34の少なくとも一方に設けられる。第2例では、通蒸部50はシール部30とは独立し、各シート21、22の内方部24に設けられる。第2例の具体例では、各シート21、22の内方部24に各シート21、22を貫通する孔(図示略)が形成される。収容空間11と孔とが連通しないように孔の周囲をシールする通蒸部50が各シート21、22の内方部24に形成される。
【0043】
図1および
図3では、通蒸部50が第4シール部34だけに設けられた第1例を示している。通蒸部50の形状は、蒸気抜きシール部51が収納空間11に張り出した形状であり、収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合、通蒸部50が開口する。具体的には、収容空間11の内圧の上昇にともない通蒸部50の蒸気抜きシール部51において接合されている第1シート21と第2シート22とが剥離し、
図4(b)に示されるように収容空間11から未シール部53を通って通蒸型パウチ10の外部とを連通する蒸気抜き通路54が通蒸部50に形成される。通蒸部50が剥離する範囲は収容空間11の圧力の大きさに応じて異なる。収容空間11の圧力が高い場合、蒸気抜きシール部51の根元の部分まで剥離が進行することもある。蒸気抜き通路54の通路面積は蒸気抜きシール部51の剥離が進行するにつれて広くなる。通蒸部50が開口した場合、収容空間11の水蒸気55が蒸気抜き通路54を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出される。水蒸気55が排出されることによって、収容空間11の圧力の上昇が抑えられ、通蒸型パウチ10の破裂が回避される。
【0044】
なお、加熱手段が業務用など高出力(たとえば1000W以上の出力)の電子レンジである場合、通蒸型パウチ10が急激に膨らんで、通蒸部50の未シール部53(特に、未シール部53の外縁34B側)が閉塞してしまうことがあるが、その場合でも貫通孔52から蒸気抜きが行われて圧力の上昇が抑えられるため、通蒸型パウチ10の破裂が回避される。
【0045】
図4は開口部40が閉じられる前の通蒸型パウチ10である。この状態の通蒸型パウチ10の開口部40から収容空間11に内容物Cが投入される。内容物Cが投入された後に第1シール部31の形成が予定されたシール予定部70にヒートシールが施されることによって、第1シール部31が形成され、
図1に示される閉鎖後の通蒸型パウチ10が得られる。
【0046】
図5は、内容物Cが充填された通蒸型パウチ10を一対のノッチ42からカットした状態を示している。一対のノッチ42でカットすることで、内容物Cを取り出すための取出口80が形成される。ユーザは一対のノッチ42よりも第2シール部32側の部分を器として利用し、内容物Cを食すことができる。ここで、通蒸型パウチ10の外部側に印刷基材層20Aに形成された印刷層20Gの画像35、36が表出されている。一方、通蒸型パウチ10の内面にはポリエステル層20Dに形成された印刷層20Hの内部側向けの画像37が表出されている。
図5において画像36を点線で示しているのは説明のためであって、実際には画像36は有色ポリエステル層20Cにより遮蔽されているため見えない態様となっている。従って、通蒸型パウチ10の内部側から見たとき、画像37は画像36と干渉せず、重なって見えることはなく、明瞭に視認できる。
【0047】
これに対し、遮蔽効果のある有色ポリエステル層を有していない、例えば
図7に例示した様な印刷基材層60A、ポリエステル層60D、シーラント層60E、接着剤層60Fを含む構成の積層体を使用して同様の構造のパウチを作製した場合は、
図6に例示する様に、通蒸型パウチの内部側から見たとき、ポリエステル層60Dに形成された印刷層60Hの内部側向けの画像67は、印刷基材層60Aに形成された印刷層60Gの画像66と重なって見えてしまい、干渉して見にくく、美粧性に欠けたものとなってしまう。
【0048】
本実施形態の通蒸型パウチ10によれば、次のような作用および効果が得られる。内容物Cが収容空間11に収容され、閉鎖された通蒸型パウチ10が加熱された場合、収容空間11の圧力の上昇にともない収容空間11と外部の空間とを連通する蒸気抜き通路54が通蒸部50に形成される。このため、収容空間11の水蒸気が蒸気抜き通路54を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出され、収容空間11の圧力の上昇が抑えられる。
【0049】
また、シート20のシーラント層20Eに隣接するポリエステル層20Dが直線カット性に優れた材料によって構成されるため、通蒸型パウチ10が加熱されて膨らんだ状態であっても、シート20をカットする力がシート20に加えられた場合、シート20のうちの第3シール部33、第4シール部34を含む部分を容易にカットすることができる。このため、シート20が、ノッチ41の部位でカットされたとき、およびノッチ42の部位でカットされたときに、カットされた部分に形成される取出口80などから内容物Cを容易に取り出すことができる。このときポリエステル層20DをMD方向に直線カット性を有するものとするとさらに引き裂きが容易にできる。
【0050】
また、シート20に有色ポリエステル層20Cが積層されることで、パウチの外部側向けの印刷画像と内部側向けの印刷画像が互いに遮蔽されて見やすく、美粧性が損なわれない。また有色ポリエステル層20Cが無機顔料を含むため、層の硬さが増し直線的なカットがしやすくなる。
【実施例0051】
以下に実施例で本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
<実施例1>
(試料作製)
・下記の構成の積層体のシートから、標準幅方向が150mm、標準高さ方向が158mmで
図4と同等の形状のスタンディングパウチ形状の通蒸型パウチを作製した。カット方向は標準幅方向とする。
・作製したパウチにスープを150g封入し、出力1000Wの電子レンジで加熱し、通蒸させた。
(シート構成)
・印刷基材層:透明蒸着PET(厚み12μm、GL-ARH)/印刷
・有色ポリエステル層:白色PET(厚み25μm、ルミラーE315)
・ポリエステル層:印刷/易カットPET(厚み12μm、エンブレットPCBC)
・シーラント層:耐熱易カットCPP(厚み60μm、東レフィルム加工製ZK500R)
(評価)
(1)カット性
・加熱後のパウチを電子レンジから取り出し、ノッチ42の部分からカットし、カットの可否を確認した。カットし易さに応じて◎、〇、△、×の段階で評価した。
(2)美粧性
・外部側向けの印刷(印刷基材層)と内部側向けの印刷(ポリエステル層)が、重なって干渉して見えるか否かを目視で確認した。干渉の程度に応じて〇、△、×の段階で評価した。
【0052】
<実施例2>
シートの構成を以下の様にした以外は実施例1と同様に試料を作成し、評価を行った。
(シート構成)
・印刷基材層:透明蒸着PET(厚み12μm、GL-ARH)/印刷
・有色ポリエステル層:白色PETにミシン目加工(厚み25μm、ルミラーE315)・ポリエステル層:印刷/易カットPET(厚み12μm、エンブレットPCBC)
・シーラント層:耐熱易カットCPP(厚み60μm、東レフィルム加工製ZK500R)
【0053】
<実施例3>
シートの構成を以下の様にした以外は実施例1と同様に試料を作成し、評価を行った。
(シート構成)
・印刷基材層:PET(厚み12μm)/印刷
・有色ポリエステル層:白色PETにミシン目加工(厚み25μm、ルミラーE315)・ポリエステル層:印刷/PET(厚み12μm、汎用グレード)
・シーラント層:耐熱易カットCPP(厚み60μm、東レフィルム加工製ZK500R)
【0054】
<比較例1>
シートの構成を以下の様にした以外は実施例1と同様に試料を作成し、評価を行った。
(シート構成)
・印刷基材層:透明蒸着PET(厚み12μm、GL-ARH)/印刷
・印刷/易カットナイロン(厚み15μm、TB1010)
・シーラント層:耐熱易カットCPP(厚み60μm、東レフィルム加工製ZK500R)
【0055】
<比較例2>
シートの構成を以下の様にした以外は実施例1と同様に試料を作成し、評価を行った。
(シート構成)
・印刷基材層:透明蒸着PET(厚み12μm、GL-ARH)/印刷
・白色ポリプロピレン(厚み25μm、ルミラーE315)
・ポリエステル層:印刷/PET(厚み12μm)
・シーラント層:耐熱易カットCPP(厚み60μm、東レフィルム加工製ZK500R)
以上の結果を表1にまとめる。
【0056】
【0057】
結果から、本発明の実施例の通蒸型パウチにおいては、いずれの試料でもカット性、美粧性共に優れた結果であったが、比較例1では外部側向けの印刷と内部側向けの印刷が干渉して見えてしまった。またカットもし難かった。比較例2では、印刷の干渉はなかったが、カットができなかった。