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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063519
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20220415BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220415BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20220415BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220415BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B9/00 A
B32B7/12
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171826
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉永 遼
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
(72)【発明者】
【氏名】盧 和敬
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AA19
4F100AA19B
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00C
4F100EH66
4F100EH66B
4F100EJ37
4F100EJ37A
4F100GB15
4F100JD03
4F100JD04
4F100JL11
4F100JL11C
4J004AB05
4J004BA02
4J004FA04
(57)【要約】
【課題】ポリオレフィン系樹脂フィルムを蒸着基材とする蒸着フィルム10に、その他のフィルム(積層対象フィルム)を、ドライラミネーション法によって積層して積層フィルムを製造する方法であって、その蒸着膜にクラックを生じることがない積層フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】前記積層対象フィルム20にドライラミネート用接着剤を塗布し、加熱乾燥した後、この接着剤皮膜30が接着力を有する間に前記蒸着フィルム10を重ねて積層する。蒸着フィルムを加熱することなく積層することができるため、蒸着膜にクラックを生じるおそれがない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着フィルムにその他のフィルム(積層対象フィルム)を積層して積層フィルムを製造する方法において、
前記蒸着フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムを蒸着基材として、この蒸着基材上に蒸着膜を形成したフィルムであり、
前記積層対象フィルムにドライラミネート用接着剤を塗布し、加熱乾燥した後、この接着剤皮膜が接着力を有する間に前記蒸着フィルムを重ねて積層することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記蒸着フィルムが蒸着膜の上に保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記蒸着基材が延伸したポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤皮膜と蒸着膜とが対面する向きに蒸着フィルムを積層対象フィルムに重ねて積層することを特徴とする請求項1~3のいずれに記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルムにその他のフィルム(積層対象フィルム)を積層して積層フィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム上に金属蒸着膜や無機蒸着膜を形成した蒸着フィルムは、包装袋を始めとしてさまざまな用途に利用されている。この蒸着フィルムの蒸着基材となるプラスチックフィルムとしては、耐熱性、耐水性あるいは強度に優れた二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムが使用されることが多い(特許文献1)。
【0003】
ところで、これら蒸着フィルムは、それ単独で使用されることは稀である。例えば蒸着フィルムを包装袋の包装材料として使用するためには、その製袋のため、シーラント層を積層する必要がある。また、蒸着フィルムとシーラント層との間に中間フィルムを介在させ、蒸着フィルム、中間フィルム及びシーラント層をこの順に積層して包装フィルムとすることがある。シーラント層としては、低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が使用することが多い。なお、これら各フィルム及び各層は、例えば、ドライラミネーション法によって積層接着される。すなわち、一方のフィルムにドライラミネート用接着剤を塗布し、加熱乾燥した後、この接着剤皮膜が接着力を有する間に他方のフィルムを重ねて積層し、その後エージングして接着する方法である。
【0004】
そこで、蒸着基材が二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの場合には、この蒸着基材を構成するポリエステル樹脂とシーラント層を構成するポリオレフィン樹脂と互いに異なる種類の樹脂であり、しかも、その相溶性も低い。このため、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを蒸着基材とする蒸着フィルムにポリオレフィンから成るシーラント層を積層した包装材料は、使用の後不要となったものを再生してその樹脂を再利用しようとすると、蒸着フィルムとシーラント層とを分離して、それぞれの樹脂を別個に回収しなくてはならない。しかし、もちろん、このような分離は事実上、不可能である。
【0005】
一方、蒸着基材として、ポリプロピレン樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルムを利用した蒸着フィルムも知られている(特許文献2)。このように蒸着基材とシーラント層とがいずれもポリオレフィン樹脂である場合には、この包装材料は各層に分離することなく、全体として再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用することができる。この包装材料には蒸着膜が含まれているが、この蒸着膜は極めて薄く、したがって微量であるため、この蒸着膜ごと再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用できるのである。なお、包装材料が中間フィルムを有する場合であっても、この中間フィルムも含めて、蒸着基材、中間フィルム及びシーラント層のいずれもポリオレフィン樹脂で構成されている場合には同様に全体として再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-218173号公報
【特許文献2】特開2020-059512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂フィルムは、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムに比較して、耐熱性や強度に劣り、このため、ポリオレフィン樹脂フィルムを蒸着基材とす
る蒸着フィルムにドライラミネート用接着剤を塗布した後乾燥すると、この乾燥時の熱によってポリオレフィン樹脂フィルムが伸縮し、この結果、蒸着膜にクラックが生じるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを蒸着基材とする蒸着フィルムに、その他のフィルムを、ドライラミネーション法によって積層して積層フィルムを製造する方法であって、その蒸着膜にクラックを生じることがない積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、蒸着フィルムにその他のフィルム(積層対象フィルム)を積層して積層フィルムを製造する方法において、
前記蒸着フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムを蒸着基材として、この蒸着基材上に蒸着膜を形成したフィルムであり、
前記積層対象フィルムにドライラミネート用接着剤を塗布し、加熱乾燥した後、この接着剤皮膜が接着力を有する間に前記蒸着フィルムを重ねて積層することを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
【0010】
次に、請求項2に記載の発明は、前記蒸着フィルムが蒸着膜の上に保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法である。
【0011】
次に、請求項3に記載の発明は、前記蒸着基材が延伸したポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルムの製造方法である。
【0012】
次に、請求項4に記載の発明は、前記接着剤皮膜と蒸着膜とが対面する向きに蒸着フィルムを積層対象フィルムに重ねて積層することを特徴とする請求項1~3のいずれに記載の積層フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積層対象フィルムにドライラミネート用接着剤を塗布して、これを加熱乾燥した後、この接着剤皮膜が接着力を有する間に蒸着フィルムを重ねて積層する。このように蒸着フィルムを加熱することなく積層することができるため、蒸着膜にクラックを生じるおそれがないのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の第1の具体例に係り、図1(a)は蒸着フィルムの断面説明図、図1(b)は積層対象フィルムの断面説明図である。
図2図2は本発明の第1の具体例に係り、積層対象フィルムに接着剤を塗布した中間製品の断面説明図である。
図3図3は本発明の第1の具体例に係る積層フィルムの断面説明図である。
図4図4は本発明の第1の具体例に係る製造方法の説明図である。
図5図5は本発明の第2の具体例に係る蒸着フィルムの断面説明図である。
図6図6は本発明の第2の具体例に係る積層フィルムの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の具体例を説明する。
【0016】
本発明は蒸着フィルムにその他のフィルム(積層対象フィルム)を積層して積層フィルムを製造する方法に関するもので、図1(a)は蒸着フィルムの具体例を示す断面説明図、図1(b)は積層対象フィルムの具体例を示す断面説明図である。また、図2は積層対象フィルムに接着剤を塗布した中間製品の断面説明図であり、図3は蒸着フィルムに積層対象フィルムを積層して製造した積層フィルムの断面説明図である。
【0017】
この例では、蒸着フィルム10Aは蒸着基材11上に蒸着膜12を形成して構成されている。
【0018】
蒸着基材11はポリオレフィン系樹脂フィルムで構成されている必要がある。例えば、低密度ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム等である。未延伸フィルムと延伸フィルムのいずれでもよいが、延伸したフィルムが好適である。
【0019】
一方、蒸着膜12は金属の蒸着膜あるいは酸化物等の無機物の蒸着膜でよいが、好ましくは無機物の蒸着膜である。無機物としては、例えば、酸化珪素や酸化アルミニウムを例示できる。この蒸着膜12を蒸着基材11上に蒸着する方法としては、真空蒸着法の他に、スパッタリング法、PVD法等を使用することができる。
【0020】
なお、蒸着膜12を蒸着基材11上に蒸着形成するに先立ち、蒸着基材11表面にアンカーコート層を形成することも可能である。このアンカーコート層としては、例えば、ウレタン系のアンカーコート剤を塗布して硬化させたものが例示できる。あるいは、金属アルコキシドを含むアンカーコート剤を塗布し、硬化させたものをアンカーコート層とすることもできる。また、金属アルコキシドに加えて、イソシアネート化合物、ヒドロキシ基を有する樹脂を混合したアンカーコート剤を塗布し、硬化させてアンカーコート層とすることも可能である。ヒドロキシ基を有する樹脂としては、その代表例として、ポリビニルアルコールやアクリルポリオールを例示できる。
【0021】
積層対象フィルム20は任意のフィルムでよい。単層構造のフィルムでもよいし、多層構造のフィルムでもよい。
【0022】
単層構造の積層対象フィルム20としては、例えば、包装フィルムのシーラント層として利用できるフィルム(シーラントフィルム)を好適なものとして例示できる。このようなシーラントフィルムは、一般に、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂で構成されている。このように単層構造のポリオレフィン樹脂製積層対象フィルム20を蒸着フィルム10Aに積層して得られた積層フィルムは、これを各層に分離することなく、全体として再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用することができる。
【0023】
また、多層構造の積層対象フィルム20としては、例えば、中間フィルムとシーラントフィルムとを積層して構成された多層フィルムを使用することができる。前述のように、シーラントフィルムは、一般に、ポリオレフィン樹脂で構成されているが、これに加えて、中間フィルムもポリオレフィン樹脂で構成されている場合には、この多層フィルムを蒸着フィルム10Aに積層して得られた積層フィルムも、これを各層に分離することなく、全体として再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用することができる。なお、この中間フィルムは、中間フィルムとシーラントフィルムとの間に接着剤層を介在させることなくこれらを直接積層したものであってもよいが、中間フィルムとシーラントフィルムとの間に薄い接着剤層を介在させたものであってもよい。
【0024】
これら蒸着フィルム10Aと積層対象フィルム20とを積層する場合には、まず、積層対象フィルム20に接着剤を塗布し、加熱乾燥する。接着剤はドライラミネート用接着剤である必要がある。接着剤としてドライラミネート用接着剤を使用するのは、これを加熱乾燥して溶剤を除去した後にも接着力を維持しているからである。
【0025】
ドライラミネート用接着剤は積層対象フィルム20に塗布する必要がある。仮に蒸着フィルム10Aにドライラミネート用接着剤を塗布すると、その加熱乾燥時の熱により蒸着基材11が伸縮し、この結果、蒸着膜12にクラックが生じるおそれがある。図2は、このように積層対象フィルム20にドライラミネート用接着剤を塗布して製造された中間製品を示しており、図中、30は接着剤の皮膜を示している。
【0026】
そして、次に、この接着剤皮膜30の接着力を利用して、この上に蒸着フィルム10Aを重ねて圧着し、エージングして接着剤皮膜30を硬化させることにより、積層フィルム100Aを製造することができる。なお、この際、接着剤皮膜30と蒸着膜12とが対面する向きに蒸着フィルム10Aを積層対象フィルム20に重ねて積層することが望ましい。図3は、こうして製造された積層フィルム100Aを示している。
【0027】
なお、念のために付言すると、積層対象フィルム20として前記中間フィルムを使用して、この中間フィルムを蒸着フィルム10Aに積層した後、この中間フィルム側にシーラントフィルムを積層することもできる。この場合にも、積層対象フィルム20(中間フィルム)を蒸着フィルム10Aに積層する際には、ドライラミネート用接着剤を積層対象フィルム20(中間フィルム)に塗布し、加熱乾燥した後に、蒸着フィルム10Aと接着する必要がある。
【0028】
積層フィルム100Aは、ロール状に巻き取られた蒸着フィルム10Aと、これもロール状に巻き取られた積層対象フィルム20とを使用して、連続的に製造することもできる。図4は、このように積層フィルム100Aを連続的に製造する方法の説明図である。
【0029】
すなわち、まず、積層対象フィルム20のロール20aから積層対象フィルム20を巻き出し、ガイドロール60,60,‥を介して走行させる。そして、まず、この積層対象フィルム20を接着剤塗布ロール30aとバックロール30bの間を通して、その片面に接着剤を塗布する。次に、乾燥ゾーン40を通過させて接着剤を加熱乾燥する。
【0030】
一方、蒸着フィルム10Aのロール10aから蒸着フィルム10Aを巻き出す。そして、このように巻き出された蒸着フィルム10Aと、接着剤を加熱乾燥して接着剤皮膜30を形成した積層対象フィルム20とを重ねた状態で、両圧着ロール50a,50bの間を通して、両フィルム10A,20を圧着する。そして、次にロール状に巻き取ってエージングすればよい。なお、積層対象フィルム20と蒸着フィルム10Aとは、積層対象フィルム20に塗布形成された接着剤皮膜30と蒸着フィルム10Aの蒸着膜とが対面する向きに蒸着フィルムを積層対象フィルムに重ねて積層することが望ましい。
【0031】
また、図から分かるように、蒸着フィルム10Aは、その蒸着膜12がガイドロール60,60,‥に触れることなく走行させることが望ましい。この場合には、ガイドロール60,60,‥による蒸着膜12の損傷を防ぐことが可能である。
【0032】
以上、蒸着膜12が露出している蒸着フィルム10Aを使用する場合を例として説明したが、蒸着膜12の上に保護層を有し、この保護層で保護されている蒸着フィルム10Bを使用することもできる。図5は、このように蒸着膜12の上に保護層13を有する蒸着フィルム10Bの断面説明図であり、図6はこの蒸着フィルム10Bを使用して製造した積層フィルム100Bの断面説明図である。
【0033】
保護層13は任意の塗布膜でよく、例えば、ポリウレタン樹脂を塗布して保護層13とすることができる。また、金属アルコキシドを含む塗料を塗布し、加熱乾燥と共に硬化させて保護層13とすることもできる。このように金属アルコキシドの硬化物で保護層13を構成した場合には、この保護層13自体が酸素バリア性や水蒸気バリア性等のガスバリ
ア性を有するため、得られた積層フィルム100Bも優れたガスバリア性を発揮する。なお、金属アルコキシドに加えてシランカップリング剤、イソシアネート化合物、あるいはヒドロキシ基を有する樹脂を混合した塗料を塗布し、加熱乾燥と共に硬化させて保護層13とすることも可能である。金属アルコキシドとしてはテトラエトキシシランをその代表例として例示できる。シランカップリング剤としては、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを使用することができる。イソシアネート化合物は周知のものでよく、例えばトルエンジイソシアネート等を使用できる。ヒドロキシ基を有する樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルポリオール樹脂等である。
【0034】
この積層フィルム100Bも、積層フィルム100Aと同様に、連続的に製造することができるが、積層対象フィルム20に塗布形成された接着剤皮膜30と蒸着フィルム10Bの保護層13とが対面する向きに蒸着フィルムを積層対象フィルムに重ねて積層することが望ましい。
【実施例0035】
(実施例1)
蒸着フィルム10Bとして、アンカーコート層と保護層とを有するフィルムを使用した。
【0036】
まず、蒸着基材11は厚さ20μmの一軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである。
【0037】
そして、この蒸着基材11の片面にアンカーコート層を形成した。このアンカーコート層は、金属アルコキシド、イソシアネート化合物及びアクリルポリオールを含むアンカーコート剤を塗布し、硬化させたものである。
【0038】
次に、このアンカーコート層の上に蒸着膜12を形成した。蒸着膜12は酸化アルミニウムを材質とする無機透明蒸着膜である。
【0039】
次に、この蒸着膜12上に、金属アルコキシドを含む塗料を塗布し、加熱乾燥と共に硬化させて保護層13を形成した。
【0040】
次に、積層対象フィルム20は、中間フィルムとシーラントフィルムとを積層して構成された二層構造のフィルムを使用した。中間フィルムは厚さ20μmの延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである。また、シーラントフィルムは厚さ70μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである。なお、これら中間フィルムとシーラントフィルムとはドライラミネート法によって積層した。
【0041】
これら蒸着フィルム10と積層対象フィルム20とは、図4に示すような方法で積層した。すなわち、積層対象フィルム20を巻き出し、テンションをかけて走行させながら、その片面にドライラミネート用接着剤を塗布し、次に、乾燥ゾーン40で接着剤を加熱乾燥した。一方、蒸着フィルム10Aを巻き出し、このように巻き出した蒸着フィルム10Aと、接着剤を加熱乾燥して接着剤皮膜30を形成した積層対象フィルム20とを圧着し、ロール状に巻き取ってエージングした。
【0042】
[酸素透過度(等圧法)の測定]
酸素透過度測定装置MOCON(OX-TRAN2/21,モダンコントロール社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下で測定を行った。
【0043】
[水蒸気透過度の測定]
40℃、90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m/day)を、水蒸気透過度測定装置PERMATRAN W-3/33 MG(モダンコントロール社製)を用いて測定した。
【0044】
こうして製造された積層フィルムの酸素透過度(cc/m/day/Pa)と水蒸気透過度(g/m/day)を表1に示す。
【0045】
(比較例1-1)
蒸着フィルムは、実施例1の蒸着フィルム10Bと同じ蒸着フィルムを使用した。
【0046】
そして、この蒸着フィルム10Bを巻き出し、テンションをかけて走行させながら、その蒸着膜12面にドライラミネート用接着剤を塗布し、次に、乾燥ゾーンで接着剤を加熱乾燥した。一方、厚さ20μmの延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを巻き出し、このように巻き出した延伸ポリプロピレン樹脂フィルムと、接着剤を加熱乾燥して接着剤皮膜30を形成した蒸着フィルム10Bとを圧着し、ロール状に巻き取ってエージングした。なお、蒸着フィルム10Bにかけたテンションは150~300Nである。
【0047】
こうして製造された積層フィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を表1に示す。
【0048】
(比較例1-2)
表1から分かるように、比較例1-1で製造された積層フィルムの酸素透過度があまりにも高いため、蒸着フィルム10Bにかけるテンションを小さくした。そのテンションは80~150Nである。なお、その他の点については、比較例1-1と同様に積層フィルムを製造した。こうして製造された積層フィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例2)
蒸着フィルム10Bとして、アンカーコート層はないが、保護層を有するフィルムを使用した。
【0051】
まず、蒸着基材11は厚さ18μmの一軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである。
【0052】
そして、この蒸着基材11の上に蒸着膜12を形成した。蒸着膜12は酸化アルミニウムを材質とする無機透明蒸着膜である。
【0053】
次に、この蒸着膜12上に、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びポリビニルアルコール樹脂を含む塗料を塗布し、加熱乾燥と共に硬化させて保護層13を形成した。
【0054】
積層対象フィルム20としては、実施例1の積層対象フィルム20と同じ積層対象フィルム20を使用した。
【0055】
そして、実施例1と同様に蒸着フィルム10Bと積層対象フィルム20とを積層して、積層フィルムを製造した。この積層フィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を表2に示す。
【0056】
(比較例2-1)
この例は、蒸着フィルムとして実施例2の蒸着フィルムを使用して、比較例1-1と同様に積層フィルムを製造したものである。
【0057】
すなわち、蒸着フィルムは、実施例2の蒸着フィルム10Bと同じ蒸着フィルムを使用
した。
【0058】
そして、この蒸着フィルム10Bを巻き出し、テンションをかけて走行させながら、その蒸着膜12面にドライラミネート用接着剤を塗布し、次に、乾燥ゾーンで接着剤を加熱乾燥した。一方、厚さ20μmの延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを巻き出し、このように巻き出した延伸ポリプロピレン樹脂フィルムと、接着剤を加熱乾燥して接着剤皮膜30を形成した蒸着フィルム10Bとを圧着し、ロール状に巻き取ってエージングした。なお、蒸着フィルム10Bにかけたテンションは150~300Nである。
【0059】
こうして製造された積層フィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を表2に示す。
【0060】
(比較例2-2)
この例は、蒸着フィルムとして実施例2の蒸着フィルムを使用して、比較例1-2と同様に積層フィルムを製造したものである。
【0061】
すなわち、蒸着フィルム10Bにかけるテンションを小さくした他の点については、比較例2-1と同様に積層フィルムを製造した。そのテンションは80~150Nである。こうして製造された積層フィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
(考察)
実施例1,2及び比較例1-1~2,比較例2-1~2の結果から、ドライラミネート用接着剤を蒸着フィルムに塗布乾燥した場合に比較して、積層対象フィルムに塗布乾燥した場合には、その酸素バリア性や水蒸気バリア性が極めて高いことが理解できる。しかも、この結果はアンカーコート層や保護層の有無や材質とは無関係であることも分かる。
【符号の説明】
【0064】
100A,100B:積層フィルム
10,10A,10B:蒸着フィルム 11:蒸着基材 12:蒸着膜 13:保護層
10a:蒸着フィルムのロール
20:積層対象フィルム 20a:積層対象フィルムのロール
30:接着剤皮膜 30a:接着剤塗布ロール 30b:バックロール
40:乾燥ゾーン
50a,50b:圧着ロール
60:ガイドロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6