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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063520
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20220415BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20220415BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/387
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171827
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 実紀
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HA19
2C005JB13
2C005JB14
2C005JB22
2C005JB25
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA23
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA32
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA44
2H113CA45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通常の観察条件下ではセキュリティインキである蛍光インキの印刷領域が視認し難く、紫外線照射時には蛍光インキの発光強度が十分得られ、偽造防止効果が高く、さらに製造コストも抑えられる偽造防止印刷物を提供する。
【解決手段】基材の少なくとも片面上に通常環境下で目視可能な絵柄文字印刷部と通常環境下で目視不可能な不可視セキュリティ印刷部13が設けられ、前記不可視セキュリティ印刷部は、複数色の蛍光インキの細線13R、13G、13Bが所定の間隔および幅で配列されて形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面上に通常環境下で目視可能な絵柄文字印刷部と通常環境下で目視不可能な不可視セキュリティ印刷部が設けられ、前記不可視セキュリティ印刷部は、複数色の蛍光インキの細線が所定の間隔および幅で配列されて形成されていることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記細線が前記不可視セキュリティ印刷部内で一定方向に伸びる線であることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記不可視セキュリティ印刷部が線状パターンであり、前記細線が該線状パターンの太さ方向に伸びる線であることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止印刷物。
【請求項4】
前記不可視セキュリティ印刷部が、赤色蛍光インキで形成された細線と緑色蛍光インキで形成された細線を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記不可視セキュリティ印刷部が、赤色蛍光インキで形成された細線と緑色蛍光インキで形成された細線と青色蛍光インキで形成された細線を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記細線はオフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法のいずれかで印刷されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記細線の太さが0.03~0.17mmの範囲で設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
前記細線の間隔が0.03~0.17mmの範囲で設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【請求項9】
前記絵柄文字印刷部と前記不可視セキュリティ印刷部の上層全面に網点面積率100%~40%のオーバーコートニス層が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の偽造防止印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を施した印刷物に関するもので、通常では不可視の印刷が設けられた偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券等のセキュリティ性を高めるため、紫外線ライトや赤外線等、特定の波長の光を照射すると発光する不可視インキなどの利用は一般的である。不可視インキにおける一般的なものとして蛍光インキがある。蛍光インキを用いることにより、有価証券などに特定の波長領域の不可視光が照射されたときにのみ現れる発光部を形成することが可能となる。また、このような発光部を利用することにより、有価証券等が正規のものかどうかを判定することが可能となる。
【0003】
一方で、通常の可視光下では無色透明な不可視インキが、インキの含侵、インキや媒体自身の光沢によって、印刷されたパターンが目視で視認出来てしまう場合がある。例えば、コート紙等へ不可視インキをオフセット印刷で印刷すると、基材の特性上インキが染み込まず、印刷部の光沢や凹凸の違いにより不可視印刷部が視認出来てしまう。
【0004】
上記の様にセキュリティインキの印刷部が分かりやすいと、偽造者にとっては偽造するための材料情報が入手しやすい状況となってしまうため好ましくない。そこでセキュリティ付与部を分かりにくくするため、特許文献1に開示されているように、基材の内部にセキュリティ特性を漉き込む方法や、特許文献2のように、保護フイルムを施すことでセキュリティ特性を視認し難くしたりする方法が提案されているが、基材の生産工程が増えるため高価となってしまうという問題があった。
【0005】
最も簡易な方法は、印刷デザイン部とニス部の印刷版をネガ/ポジの関係となる版にすることである。特許文献3では、網点パターンを用いることで、蛍光インキの印刷領域の境目をより目立たなく印刷することが出来るとしている。しかし、そうすると発光印刷部の総面積が小さくなり発光強度が低くなってしまう、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4517109号公報
【特許文献2】特許第4028851号公報
【特許文献3】特許第5262961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、通常の観察条件下ではセキュリティインキである蛍光インキの印刷領域が視認し難く、紫外線照射時には蛍光インキの発光強度が十分得られ、偽造防止効果が高く、さらに製造コストも抑えられる偽造防止印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、
基材の少なくとも片面上に通常環境下で目視可能な絵柄文字印刷部と通常環境下で目視不可能な不可視セキュリティ印刷部が設けられ、前記不可視セキュリティ印刷部は、複数色の蛍光インキの細線が所定の間隔および幅で配列されて形成されていることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0009】
上記偽造防止印刷物において、前記細線が前記不可視セキュリティ印刷部内で一定方向に伸びる線であって良い。
【0010】
上記偽造防止印刷物において、前記不可視セキュリティ印刷部が線状パターンであり、前記細線が該線状パターンの太さ方向に伸びる線であって良い。
【0011】
上記偽造防止印刷物において、前記不可視セキュリティ印刷部が、赤色蛍光インキで形成された細線と緑色蛍光インキで形成された細線を含んでいて良い。
【0012】
上記偽造防止印刷物において、前記不可視セキュリティ印刷部が、赤色蛍光インキで形成された細線と緑色蛍光インキで形成された細線と青色蛍光インキで形成された細線を含んでいて良い。
【0013】
上記偽造防止印刷物において、前記細線はオフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法のいずれかで印刷されていて良い。
【0014】
上記偽造防止印刷物において、前記細線の太さが0.03~0.17mmの範囲で設けられていて良い。
【0015】
上記偽造防止印刷物において、前記細線の間隔が0.03~0.17mmの範囲で設けられていて良い。
【0016】
上記偽造防止印刷物において、前記絵柄文字印刷部と前記不可視セキュリティ印刷部の上層全面に網点面積率100%~40%のオーバーコートニス層が設けられていて良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の偽造防止印刷物によれば、不可視セキュリティ印刷部を蛍光インキの細線の集合のセキュリティパターンとすることで、蛍光発光強度をベタ印刷の場合と同様の強さにできる。さらに、セキュリティパターンを複数の蛍光インキの細線の集合として刷り分けることで、紫外線を照射した場合、通常の目視で見た限りは単色の蛍光インキで設けられているように見えるが、ルーペ等で拡大してみると、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)など複数の蛍光インキで刷り分けられていることが観察できることにより、偽造防止効果が高い印刷物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の偽造防止印刷物を示す概略図。
図2図1の偽造防止印刷物にブラックライトを照射した際の見え方を示す概略図。
図3】不可視セキュリティ印刷部を拡大した概略図。
図4】セキュリティパターンの例を示す概略図。
図5】蛍光インキの細線の配列例1
図6】蛍光インキの細線の配列例2
図7】蛍光インキの細線の配列例3
図8】目視した際の偽造防止印刷物の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0020】
図1に、本発明の実施形態の概略図を示す。偽造防止印刷物1は、基材11、絵柄文字印刷部12、不可視セキュリティ印刷部13から構成されている。
【0021】
本発明の偽造防止印刷物1に使用される基材11は、コート紙、アート紙、サーマル紙、プラスチック基材等の、表面の平滑性が高く光沢があるものである。この基材11の少なくとも片面上には、絵柄文字印刷部12が印刷されており、この絵柄文字印刷部12は、偽造防止印刷物1の使用目的に応じた絵柄及び注意事項等が印刷されている。不可視セキュリティ印刷部13は、紫外線を照射すると蛍光を発する蛍光顔料を含んだインキで印刷された領域であり、通常環境下での目視では視認出来ないが、紫外線照射装置等の検証機を用いることで、蛍光が発光することで不可視であった印刷パターンが目視可能となって出現し、偽造防止印刷物1の真贋判定が可能となる。
【0022】
絵柄文字印刷部12は、通常の印刷法であるオフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、もしくはインクジェット法およびサーマル熱転写リボンによる印字等にて設けられる。不可視セキュリティ印刷部13は、通常の印刷法であるオフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法にて印刷される。
【0023】
図2は、図1の偽造防止印刷物1にブラックライト2を照射した場合の見え方を示した概略図である。ブラックライト2は、いわゆるUV-A波(波長315~400nm)の紫外線を発光するライトで、ブラックライト2を照射した際、偽造防止印刷物1の不可視セキュリティ印刷部13が蛍光発光して、セキュリティパターン13´が出現する。
【0024】
図3に、不可視セキュリティ印刷部13の拡大図を示した。不可視セキュリティ印刷部13の一部14を拡大すると、拡大部14´、再拡大図14´´に示す様に、赤色蛍光インキ13R、緑色蛍光インキ13G、青色蛍光インキ13Bの細線から構成されており、この細線が一定の太さと間隔で配列されている。なお作図の簡略化のため、細線はその一部のみ示している。ブラックライト2を照射することで、赤色蛍光インキ13Rは赤色に発光し、緑色蛍光インキ13Gは緑色に発光、青色蛍光インキ13Bは青色に発光する。各蛍光インキの細線は、それぞれの線幅が0.03~0.17mmの範囲で、同様に0.03~0.17mmのスペースが設けられていると好ましい。
【0025】
蛍光インキで印刷された細線の線幅は、0.17mm以下の間隔で配列されている場合、ひと固まりの線として認識される。一般に、印刷におけるカラー画像は150線のYMC(黄色、紅色、藍色)網点で構成されていると、個々の網点が認識できないとされ、0.17mmの間隔は、ほぼ150線に相当することより、この様な間隔とすることで通常の目視では細線の1本1本が個別に視認されず、全体として固まりのように見える。また、細線を0.03mm以下の線幅すなわち太さとして蛍光インキを印刷した場合、蛍光発光が弱くなり、セキュリティ印刷としての効果が低下してしまう。一方、0.17mmより太くしてしまうと、前述の様に固まりとして見える効果が薄れるため好ましくない。
【0026】
不可視セキュリティ印刷部13の形状は特に限定されず、図1に示したような線状パターンや、図4(a)の星形パターン13aなど、任意の形状パターンであって良い。また不可視セキュリティ印刷部13を形成している蛍光インキの細線の伸びる方向は、図4(a)の例の細線23aの様にパターン内で一定の方向に伸びる配置として良いが、部分的に異なる方向に伸びたものを組み合わせても良く、図4(b)の例の様に不可視セキュリティ印刷部13が線状パターン13bである場合、細線23b、23c、23dの様に線状パターン13bの線幅方向すなわち太さ方向に伸びる配置などとすることもできる。
【0027】
各色の蛍光インキの印刷配列は、図3に示した以外に、図5に示したように、赤色蛍光
インキ43R、緑色蛍光インキ43G、青色蛍光インキ43Bをほぼ隙間なく順番に配列させた蛍光配列43のようにも出来、この場合にブラックライト2を照射すると全体として白色の蛍光発光の様に見える。この不可視セキュリティ印刷をブラックライト照射してみると、図2と同様にセキュリティパターン13´が発光して白色に見えるが、ルーペ等で拡大すると細線で構成された蛍光発光の色を分かれて見ることが出来、これにより偽造防止効果が高まる。また白色以外の特定の発光色にする場合は、赤色蛍光インキ43R、緑色蛍光インキ43G、青色蛍光インキ43Bの線幅を各々適宜変えることで、所定の発光色とすることができる。
【0028】
赤色蛍光インキ、緑色蛍光インキ、青色蛍光インキの配列順は、これ以外に、図6で示した印刷配列5のように、赤色蛍光インキ53R、緑色蛍光インキ53G、青色蛍光インキ53Bがこの順で配列された蛍光配列53で構成されている配置の一部に、緑色蛍光インキ54G、赤色蛍光インキ54R、青色蛍光インキ54Bがこの順で配列された配列順が異なる蛍光配列54を設けると、通常の目視では図5の例と同様に白色の蛍光発光が見えるが、ルーペ等で見ると配列が異なっていることが見えることで、更なる偽造防止効果が得られる。
【0029】
また造防止印刷物1の基材11がコート紙である場合、紙をより白く見せるために蛍光増白剤が入っている場合が多い。そのため、青色蛍光インキを印刷する必要がなく、図7に示したように、赤色蛍光インキ63Rと緑色蛍光インキ63Gのみ印刷し、青色蛍光部63Bは印刷せずに基材11に含まれる蛍光増白剤の効果を利用する様にした蛍光配列63でも良く、同様の効果が得られる。
【0030】
図8は、通常環境下で目視した際の偽造防止印刷物7の概略図を示したもので、通常環境下の目視では不可視セキュリティ印刷を見ることが出来ない。また偽造防止印刷物7の表面の上層全面に網点面積率100%~40%でオーバーコートニスを設けることで、不可視セキュリティ印刷部13と絵柄文字印刷部12や基材11との段差がより目立たなくなり、さらに視認が困難になる。
【0031】
各色の蛍光インキに分散させる蛍光体としては、例えば、ペリレン、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3ブタジエン、及びポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)等の青色蛍光体、クマリン系色素、キナクリドン系色素、ポリ(p-フェニレンビニレン)、及びポリ(フルオレン)等の緑色蛍光体、4-ジシアノメチレン-4H-ピラン誘導体、2,3-ジフェニルフマロニトリル誘導体、及びクマリン系色素等の赤色蛍光体などが例示できるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明によると、イベントチケット等に使用されている基材は、意匠性や即時発行が必要な点から、コート紙およびサーマル紙のような表面が平滑な基材を用いることが多いが、これらの印刷物に対する偽造防止策として、蛍光インキによる細線の集合としたセキュリティパターンである不可視セキュリティ印刷部を設けることで、光沢差および凹凸差が生じ難く、一般の人には知られることなく、偽造防止策を盛り込むことが出来る。その際に不可視セキュリティ印刷部を蛍光インキによる細線の集合とすることで、不可視セキュリティ印刷部を視認し難くするとともに、蛍光発光強度をベタ印刷の場合と同様の強さにできる。
【0033】
さらに、不可視セキュリティ印刷部に赤(R)、緑(G)、青(B)などの複数色の蛍光発光インキを使用し、これを細線の集合として刷り分けることで、目視で見た限りは蛍光印刷部が均一に発光するパターンに見えるが、そのパターンをルーペ等で拡大してみると、複数色の蛍光発光色で刷り分けられていることが観察できることより、偽造防止効果が高い媒体となる。
【符号の説明】
【0034】
1、7・・・・・・・・・・偽造防止印刷物
11・・・・・・・・・・・基材
12・・・・・・・・・・・絵柄文字印刷部
13・・・・・・・・・・・不可視セキュリティ印刷部
13´・・・・・・・・・・セキュリティパターン
13R・・・・・・・・・・赤色蛍光インキ
13G・・・・・・・・・・緑色蛍光インキ
13B・・・・・・・・・・青色蛍光インキ
14´・・・・・・・・・・・拡大部
2・・・・・・・・・・・・ブラックライト
4、5、6・・・・・・・・印刷配列
43R、53R、63R・・赤色蛍光インキ
43G、53G、63G・・緑色蛍光インキ
43B、53B・・・・・・青色蛍光インキ
63B・・・・・・・・・・青色蛍光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8