(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063546
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/02 20060101AFI20220415BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20220415BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20220415BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220415BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20220415BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20220415BHJP
B60K 17/356 20060101ALI20220415BHJP
B60W 10/101 20120101ALI20220415BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220415BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220415BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220415BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220415BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W10/08 900
B60W20/00 900
B60W10/06 900
B60K17/356 B
B60W10/00 102
B60W10/08
B60W10/101
B60L50/16
B60L15/20 S
B60L7/14
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171863
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】弓削 勝忠
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓也
【テーマコード(参考)】
3D043
3D202
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D043AA05
3D043AB17
3D043EA03
3D043EA05
3D043EA16
3D043EA36
3D043EA45
3D043EB03
3D043EB12
3D043EE03
3D043EE06
3D043EF09
3D043EF12
3D043EF19
3D043EF21
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB15
3D202BB19
3D202BB37
3D202BB64
3D202BB65
3D202BB66
3D202CC03
3D202CC04
3D202CC51
3D202CC59
3D202DD01
3D202DD02
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD26
3D202DD39
3D202DD45
3D202DD46
3D202FF02
3D202FF05
3D202FF12
3D202FF14
3D241AA21
3D241AE16
3D241BA47
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BC15
5H125BE05
5H125CB02
5H125EE27
5H125EE44
5H125EE52
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】モータの連れ回り損失を低減して効率良く電力を回生することができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】前後一方の車輪2b側の第1モータ4と、第1駆動軸10と第1モータ4との間の接続状態と切断状態の切り替えが可能な第1クラッチ5と、前後他方の車輪2a側の第2モータ6と、第2駆動軸12と第2モータ6との間の接続状態と切断状態の切り替えが可能な第2クラッチ7と、第1クラッチ5と第2クラッチ7の切り替え動作と、第1クラッチ5の同期動作を制御する制御部8と、を備え、制御部8が、第1クラッチ5の切断状態での走行中に減速を検出した際に、前記同期動作を開始するとともに第2クラッチ7を接続状態として第2モータ6で回生を行い、前記同期動作の完了後に、第2クラッチ7を切断状態とするとともに第1クラッチ5を接続状態として第1モータ4で回生を行うように、第1クラッチ5と第2クラッチ7をそれぞれ制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一方の車輪に接続された第1駆動軸を駆動する一方で、前記第1駆動軸の回転力から回生電力を回収する第1モータと、
前記第1駆動軸と前記第1モータとの間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えが可能な第1クラッチと、
前後他方の車輪に接続されエンジンによって駆動される第2駆動軸側に設けられ、前記第2駆動軸の回転力から回生電力を回収する第2モータと、
前記第2駆動軸と前記第2モータとの間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えが可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチと前記第2クラッチの接続状態と切断状態の切り替え動作と、前記第1クラッチの前記第1駆動軸側と前記第1モータ側の回転数を同期させる同期動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記第1クラッチの切断状態での走行中に減速を検出した際に、前記同期動作を開始するとともに前記第2クラッチを接続状態として前記第2モータで回生を行い、前記同期動作の完了後に、前記第2クラッチを切断状態とするとともに前記第1クラッチを接続状態として前記第1モータで回生を行うように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御するハイブリッド車両。
【請求項2】
前記第2クラッチが前記エンジンと前記第2駆動軸の間に配置されており、
前記制御部が、発進時に、第1クラッチを接続状態とする一方で前記第2クラッチを切断状態として、前記第1モータの駆動力で前記第1駆動軸を駆動し、車速が所定の車速に到達したら、前記第1クラッチを切断状態に前記第2クラッチを接続状態にそれぞれ切り替えて、前記エンジンの駆動力で前記第2駆動軸を駆動する制御を行う
請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
バッテリの充電量が予め定めた基準充電量よりも小さいときに、前記制御部が、前記所定の車速よりも低い車速で、前記第1クラッチを切断状態とするとともに前記第2クラッチを接続状態として前記エンジンの駆動力で前記第2駆動軸を駆動するように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御する
請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御部が、前記第1クラッチの切断状態での走行中に減速を検出した際に、その減速度が予め定めた基準減速度よりも小さいときに前記第1クラッチの切断状態を維持しつつ前記第2クラッチを接続状態として前記第2モータで回生を行う一方で、前記減速度が前記基準減速度以上のときに前記第1クラッチを接続状態に前記第2クラッチを切断状態にそれぞれ切り替えて前記第1モータで回生を行うように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御する
請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御部が、車速と前記基準減速度の間の関係を示すマップを有しており、前記マップにおいて、前記車速が大きいほど前記基準減速度が小さくなっている
請求項4に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記制御部が、前記第1モータに許容される上限回転数に車速が到達したときに前記第1クラッチを切断状態とするよう前記第1クラッチを制御する
請求項1から5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータの駆動力を併用した、いわゆるマイルドハイブリッドシステムを備えたハイブリッド車両においては、例えば下記特許文献1、2に示すように、前後一方の駆動軸(車輪)をエンジンで、前後他方の駆動軸(車輪)をモータ(ここではリアモータと称する。)で、それぞれディファレンシャルを介して駆動する構成を採用することがある。この構成においては、特許文献1に示すように、エンジンにモータ(ここではフロントモータと称する。)が併設されることが多い(特許文献1の
図1等、特許文献2の
図2を参照)。
【0003】
主に、フロントモータはエンジンの始動や発電を、リアモータは電力の回生、走行アシスト、及び、モータ走行をそれぞれ担っているが、車両の状態(例えば、車速がリアモータの許容上限回転数を超えているときや、リアモータの温度が高温のとき等)によっては、フロントモータで電力の回生や走行アシストを行うこともある。但し、フロントモータは、エンジンや連続可変トランスミッション等の連れ回り損失が生じやすい。このため、電力の回生は、フロントモータと比較して回生効率が高いリアモータで極力行うのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-126869号公報
【特許文献2】特開2006-50767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアモータは、フロントモータと比較して回生効率は相対的に高いが、リアモータを駆動に使用しない間はリアモータが駆動軸と連れ回されることによって駆動軸の負荷となる。リアモータに負荷に相当する逆位相の補正電流を通電することで駆動軸の負荷を解消することができるが、通電に伴う電力消費が問題となる。この消費電力は、モータ回転数(車速)の増加に比例して大きくなるため、特に高車速域においてこの問題が顕著となる。
【0006】
リアモータと駆動軸との間に設けられたクラッチを切断状態としてリアモータの連れ回りをなくすこともできるが、この切断状態ではリアモータによる電力の回生ができず、相対的に回生効率の低いフロントモータで電力の回生を行わなければならない。
【0007】
そこで、この発明は、モータの連れ回り損失を低減して効率良く電力を回生することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
前後一方の車輪に接続された第1駆動軸を駆動する一方で、前記第1駆動軸の回転力から回生電力を回収する第1モータと、
前記第1駆動軸と前記第1モータとの間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えが可能な第1クラッチと、
前後他方の車輪に接続されエンジンによって駆動される第2駆動軸側に設けられ、前記第2駆動軸の回転力から回生電力を回収する第2モータと、
前記第2駆動軸と前記第2モータとの間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えが可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチと前記第2クラッチの接続状態と切断状態の切り替え動作と、前記第1クラッチの前記第1駆動軸側と前記第1モータ側の回転数を同期させる同期動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記第1クラッチの切断状態での走行中に減速を検出した際に、前記同期動作を開始するとともに前記第2クラッチを接続状態として前記第2モータで回生を行い、前記同期動作の完了後に、前記第2クラッチを切断状態とするとともに前記第1クラッチを接続状態として前記第1モータで回生を行うように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御するハイブリッド車両を構成した。
【0009】
前記構成においては、
前記第2クラッチが前記エンジンと前記第2駆動軸の間に配置されており、
前記制御部が、発進時に、第1クラッチを接続状態とする一方で前記第2クラッチを切断状態として、前記第1モータの駆動力で前記第1駆動軸を駆動し、車速が所定の車速に到達したら、前記第1クラッチを切断状態に前記第2クラッチを接続状態にそれぞれ切り替えて、前記エンジンの駆動力で前記第2駆動軸を駆動する制御を行う構成とすることができる。
【0010】
発進時に第1クラッチを接続状態とする構成においては、
バッテリの充電量が予め定めた基準充電量よりも小さいときに、前記制御部が、前記所定の車速よりも低い車速で、前記第1クラッチを切断状態とするとともに前記第2クラッチを接続状態として前記エンジンの駆動力で前記第2駆動軸を駆動するように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御する構成とすることができる。
【0011】
前記各構成においては、
前記制御部が、前記第1クラッチの切断状態での走行中に減速を検出した際に、その減速度が予め定めた基準減速度よりも小さいときに前記第1クラッチの切断状態を維持しつつ前記第2クラッチを接続状態として前記第2モータで回生を行う一方で、前記減速度が前記基準減速度以上のときに前記第1クラッチを接続状態に前記第2クラッチを切断状態にそれぞれ切り替えて前記第1モータで回生を行うように、前記第1クラッチと前記第2クラッチをそれぞれ制御する構成とすることができる。
【0012】
基準減速度を予め定める構成においては、
前記制御部が、車速と前記基準減速度の間の関係を示すマップを有しており、前記マップにおいて、前記車速が大きいほど前記基準減速度が小さくなっている構成とすることができる。
【0013】
前記各構成においては、
前記制御部が、前記第1モータに許容される上限回転数に車速が到達したときに前記第1クラッチを切断状態とするよう前記第1クラッチを制御する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、制御部で第1クラッチの接続状態と切断状態の切り替えを制御することによって、車両の走行中における駆動軸と第1モータの連れ回りを抑制すること、第1モータで効率良く電力を回生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係るハイブリッド車両の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示すハイブリッド車両の制御の第一例を示す図である。
【
図3】
図1に示すハイブリッド車両の制御の第二例を示す図である。
【
図4】
図1に示すハイブリッド車両の制御の第三例を示す図である。
【
図5】
図1に示すハイブリッド車両の制御の第四例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係るハイブリッド車両1の一例を
図1に示す。このハイブリッド車両1は、前輪2aをエンジン3の駆動力で駆動し、後輪2bをリアモータ4(第1モータ)の駆動力で駆動する、4輪駆動のマイルドハイブリッド車である。このハイブリッド車両は、リアモータ4、リアクラッチ5(第1クラッチ)、フロントモータ6(第2モータ)、フロントクラッチ7(第2クラッチ)、及び、制御部8を備えている。
【0017】
リアモータ4は、後輪2b側に設けられている。このリアモータ4は、バッテリ9からの給電によって後輪2bに接続されたリア駆動軸10(第1駆動軸)を駆動する一方で、リア駆動軸10の回転力から回生電力を回収してバッテリ9を充電する機能を有する。このリアモータ4は、エンジン3の駆動力で走行する際に駆動力を補助する走行アシストや、エンジン3の駆動力がない状態でリアモータ4の駆動力のみで走行するモータ走行の機能も有している。
【0018】
リアクラッチ5は、リア駆動軸10に取り付けられたリアディファレンシャル11とリアモータ4との間に設けられている。このリアクラッチ5は、リア駆動軸10とリアモータ4との間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えることができる。
【0019】
フロントモータ6は、前輪2aに接続されエンジン3によって駆動されるフロント駆動軸12(第2駆動軸)側に設けられている。このフロントモータ6は、バッテリ9からの給電によってエンジン3を始動したりエンジン3の回転によって発電を行ったりするとともに、車速がリアモータ4の許容上限回転数を超えているときや、リアモータ4の温度が高温のとき等のように、リアモータ4で電力の回生や走行アシストを行うことができないときに、このリアモータ4に代わって電力の回生や走行アシストを行う機能を有している。
【0020】
フロントクラッチ7は、フロント駆動軸12に取り付けられたフロントディファレンシャル13と、エンジン3にトルクコンバータ14を介して接続された連続可変トランスミッション15との間に設けられている。このフロントクラッチ7は、フロント駆動軸12とフロントモータ6との間の回転力の伝達が可能な接続状態と、その伝達をすることができない切断状態との間で切り替えることができる。
【0021】
制御部8は、リアクラッチ5とフロントクラッチ7の接続状態と切断状態の切り替え動作と、リアクラッチ5のリア駆動軸10側とリアモータ4側の回転数を同期して接続状態への切り替え時に接続ショックを抑制する同期動作を制御する。この制御部8の基本制御として、リアクラッチ5の切断状態での走行中に減速を検出した際に同期動作を開始するとともに、フロントクラッチ7を接続状態としてフロントモータ6で電力の回生を行う。そして、同期動作の完了後に、フロントクラッチ7を切断状態とするとともにリアクラッチ5を接続状態としてリアモータ4で電力の回生を行うように、リアクラッチ5とフロントクラッチ7をそれぞれ制御する。
【0022】
このハイブリッド車両1においては、リアモータ4及びフロントモータ6のいずれによっても電力の回生が可能であるが、リアモータ4による回生を優先するのが好ましい。リアモータ4は、リアディファレンシャル11を介してリア駆動軸10に接続されているため回転力の伝達ロスが小さいのに対して、フロントモータ6は、フロントディファレンシャル13との間にエンジン3、トルクコンバータ14、連続可変トランスミッション15が介在するためこれらの連れ回り損失によって一定の大きさの伝達ロスが生じるためである。
【0023】
このハイブリッド車両1には、車速を検出する車速センサ16、ブレーキペダルの踏力を検出するブレーキセンサ17、及び、アクセルペダルの踏力を検出するアクセルセンサ18がさらに設けられている。この車速センサ16、ブレーキセンサ17、及び、アクセルセンサ18は、それぞれ制御部8に接続されている。
【0024】
図1に示すハイブリッド車両1の制御の第一例を
図2に示す。この第一例は、この発明に係るハイブリッド車両1の基本制御に対応している。本図(以下において説明する
図3から
図5も同様)の横軸は時間を、縦軸は車速(リアモータ4の回転数)又はリアクラッチ5の状態を示している。本図中の実線は車速がリアモータ4の許容上限回転数に対応する車速以下のとき、破線は車速がリアモータ4の許容上限回転数を上回るときを示している。
【0025】
この一連の制御においては、制御部8によって、車速センサ16、ブレーキセンサ17、及び、アクセルセンサ18からの信号が監視される。そして、車速センサ16によって停車状態(
図2中の丸数字1の範囲)が検出されると、制御部8によってリアクラッチ5は切断状態とされる。この切断状態は、加速中及び定速走行中も維持される(
図2中の丸数字2の範囲)。
【0026】
ブレーキセンサ17によって減速が検出されると、車速センサ16によって検出された車速とリアモータ4の許容上限回転数の大小が比較される。この車速が許容上限回転数以下のときは、制御部8によって、リアクラッチ5のリア駆動軸10側とリアモータ4側の回転数を同期させる同期動作が開始される(
図2中の丸数字3の範囲)。この同期動作の間は、フロントクラッチ7の接続状態が維持されて、フロントモータ6によって電力の回生が行われる。
【0027】
リアクラッチ5の同期動作が完了すると(
図2中のA1)、制御部8によってリアクラッチ5が接続状態に、フロントクラッチ7が切断状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図2中の丸数字4の範囲)。そして、車速センサ16によって停車状態が検出されると、制御部8によってリアクラッチ5は切断状態に切り替えられる(
図2中の丸数字5の範囲)。このように、リアクラッチ5とフロントクラッチ7の切り替え制御を行うことにより、ハイブリッド車両1の走行中におけるリア駆動軸10とリアモータ4の連れ回り損失を低減することができる。
【0028】
この一方で、車速がリアモータ4の許容上限回転数を超えるときは、同期動作の開始が保留される(
図2中の丸数字3’-1の範囲)。そして、車速がこの許容上限回転数以下となったタイミング(
図2中のP)で同期動作が開始される(
図2中の丸数字3’-2の範囲)。この同期動作の間(保留の間も含む)は、フロントクラッチ7の接続状態が維持されて、フロントモータ6によって電力の回生が行われる。
【0029】
リアクラッチ5の同期動作が完了すると(
図2中のA2)、制御部8によってリアクラッチ5が接続状態に、フロントクラッチ7が切断状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図2中の丸数字4’の範囲)。車両の停車後の制御は、車速が許容上限回転数以下のときの制御と同じである。このように、車速がリアモータ4の許容上限回転数を超えているときに、同期動作を保留するように制御することにより、リアモータ4の過回転を防止することができる。
【0030】
図1に示すハイブリッド車両1の制御の第二例を
図3に示す。この第二例は、このハイブリッド車両1において、発進時にリアモータ4の駆動力のみで駆動させる際の制御に対応している。この一連の制御においては、制御部8によって、車速センサ16、ブレーキセンサ17、及び、アクセルセンサ18からの信号とともに、バッテリ9の充電状態が監視される。そして、初めにその充電状態がリアモータ4のみで発進させるのに十分な充電状態(以下、アシスト可能充電状態と称する。)であるかどうかが判断される。アシスト可能充電状態は、バッテリ9の残充電量が予め定めた基準充電量を上回っているか、バッテリ9の温度が予め定めた基準温度以下であるか等によって評価される。
【0031】
バッテリ9の充電状態がアシスト可能充電状態を満たすときは、車速センサ16によって停車状態が検出されている時点で、制御部8によってリアクラッチ5を切断状態から接続状態に切り替える(
図3の丸数字1の範囲)とともに、フロントクラッチ7を切断状態とする。そして、アクセルペダルを踏みこむことによって、リアモータ4の駆動力のみによってリア駆動軸10を駆動する(
図3の丸数字2の範囲)。このように、エンジン効率が低い発進から低車速の車速領域でモータ走行することにより、燃費の向上を図ることができる。
【0032】
なお、バッテリ9の充電状態がアシスト可能充電状態を満たさないときは、リアモータ4のみで発進のための駆動力を得ることが難しいため、上記の第一例で説明したように、リアクラッチ5を切断状態、フロントクラッチ7を接続状態とした上で、エンジン3によって駆動力を得る。
【0033】
リアモータ4での加速中に予め定めたバッテリ走行上限車速に到達すると(
図3中のP)、制御部8によってリアクラッチ5が切断状態に、フロントクラッチ7が接続状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4による走行からエンジン3による走行に移行し、この走行中はリアクラッチ5の切断状態が維持される(
図3中の丸数字3の範囲)。また、バッテリ9の充電状態がアシスト可能充電状態を満たさなくなったときは、車速がバッテリ走行上限車速に到達する前であっても、リアモータ4による走行からエンジン3による走行に移行する。
【0034】
ブレーキセンサ17によって減速が検出されると、車速センサ16によって検出された車速とリアモータ4の許容上限回転数の大小が比較される。この車速が許容上限回転数以下のときは、制御部8によって、リアクラッチ5のリア駆動軸10側とリアモータ4側の回転数を同期させる同期動作が開始される(
図3中の丸数字4の範囲)。この同期動作の間は、フロントクラッチ7の接続状態が維持されて、フロントモータ6によって電力の回生が行われる。
【0035】
リアクラッチ5の同期動作が完了すると(
図3中のA)、制御部8によってリアクラッチ5が接続状態に、フロントクラッチ7が切断状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図2中の丸数字5の範囲)。そして、車速センサ16によって停車状態が検出されると、バッテリ9の充電状態がアシスト可能充電状態であるかどうか判断される。そして、アシスト可能と判断されるときは、リアモータ4による発進に備えて、リアクラッチ5の接続状態を維持する(
図3中の丸数字6の範囲)。その一方で、アシスト不可と判断されるときは、エンジン3による発進に備えて、制御部8が、リアクラッチ5を切断状態に、フロントクラッチ7を接続状態にそれぞれ切り替える。
【0036】
図1に示すハイブリッド車両1の制御の第三例を
図4に示す。この第三例は、このハイブリッド車両1において、走行中に加減速を繰り返す際の制御に対応している。この一連の制御においては、制御部8によって、車速センサ16、ブレーキセンサ17、及び、アクセルセンサ18からの信号とともに、バッテリ9の充電状態が監視される。
【0037】
走行中(
図4中の丸数字1の範囲)にブレーキセンサ17によって減速が検出されると、車速センサ16によって検出された車速とリアモータ4の許容上限回転数の大小が比較される。この車速が許容上限回転数以下のときは、制御部8によって、リアクラッチ5のリア駆動軸10側とリアモータ4側の回転数を同期させる同期動作が開始される(
図4中の丸数字2の範囲)。この同期動作の間は、フロントクラッチ7の接続状態が維持されて、フロントモータ6によって電力の回生が行われる。
【0038】
リアクラッチ5の同期動作が完了すると(
図4中のA1)、制御部8によってリアクラッチ5が接続状態に、フロントクラッチ7が切断状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図4中の丸数字3の範囲)。この減速中にアクセルセンサ18によって再加速が検出されると(
図4中のA2)、(a)リアモータ4によるアシストが要求されているかどうか(アクセルペダルの踏み込み量等から判定)、(b)車速がリアモータ4の許容上限回転数以下(又はリアモータ4のみによる走行上限車速以下)であるかどうか、(c)バッテリ9がアシスト可能充電状態であるかどうか、の3点が判断される。
【0039】
上記(a)~(c)の全てを満たす場合は、リアクラッチ5の接続状態が維持されて、リアモータ4による加速アシスト(又はリアモータ4のみによる走行)が行われる(
図4中の丸数字4の範囲)。この加速中に上記(a)~(c)の条件を1点でも満たさなくなったときは、リアクラッチ5を切断状態に切り替えて(
図4中のA3)、エンジン3の駆動力による加速に移行する(
図4中の丸数字5の範囲)。また、リアモータ4による加速中にブレーキセンサ17によって減速が検出されると、リアクラッチ5の接続状態が維持されて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図4中の丸数字5’の範囲)。
【0040】
このようにリアクラッチ5を制御することにより、再加速時におけるリアモータ4による加速アシスト(又はリアモータ4の駆動力のみによる走行)と、再減速時におけるリアモータ4による電力の回生をスムーズに行うことができる。
【0041】
図1に示すハイブリッド車両1の制御の第四例を
図5に示す。この第四例は、このハイブリッド車両1において、減速時に減速度が変動する際の制御に対応している。この一連の制御においては、制御部8によって、車速センサ16、及び、ブレーキセンサ17からの信号が監視される。
【0042】
走行中(
図5中の丸数字1の範囲)にブレーキセンサ17によってブレーキペダルの踏み込みが検出されると、車速センサ16によって検出された車速とリアモータ4の許容上限回転数の大小が比較される。この車速が許容上限回転数以下のときは、ブレーキセンサ17によって検出されたブレーキペダルの踏み込み量と、予め定めた踏み込み閾値の大小が比較される。この踏み込み量が踏み込み閾値よりも小さい緩減速(予め定めた基準減速度よりも小さい減速度)のときは、リアクラッチ5の切断状態が維持されてフロントモータ6による電力の回生が行われる(
図5中の丸数字2の範囲)。
【0043】
ブレーキペダルの踏み込み量が小さく減速度が小さいときは、リアモータ4によって回生される回生量よりも、リアクラッチ5の同期動作のために消費される電力量の方が大きいことがある。そこで、ブレーキペダルの踏み込み量が踏み込み閾値よりも小さい場合にリアクラッチ5の切断状態を維持することにより、同期動作に伴う電力消費を抑制することができる。
【0044】
緩減速中にブレーキペダルがさらに強く踏み込まれて、その踏み込み量が踏み込み閾値以上の急減速となると(
図5中のA1)、制御部8によって、リアクラッチ5のリア駆動軸10側とリアモータ4側の回転数を同期させる同期動作が開始される(
図5中の丸数字3の範囲)。この同期動作の間は、フロントクラッチ7の接続状態が維持されて、フロントモータ6による電力の回生が引き続き行われる。
【0045】
リアクラッチ5の同期動作が完了すると(
図5中のA2)、制御部8によってリアクラッチ5が接続状態に、フロントクラッチ7が切断状態にそれぞれ切り替えられて、リアモータ4によって電力の回生が行われる(
図5中の丸数字4の範囲)。この急減速中にブレーキペダルの踏み込み量が小さくなって、その踏み込み量が踏み込み閾値を下回る緩減速となったときでも(
図5中のA3)、リアクラッチ5の接続状態が維持されて、リアモータ4による電力の回生が引き続き行われる(
図5中の丸数字5の範囲)。そして、車速センサ16によって停車状態が検出されると、制御部8によってリアクラッチ5は切断状態に切り替えられる。
【0046】
踏み込み閾値(又は基準減速度)は一定の値としてもよいが、車速が大きくなるほど小さい値とすることもできる。このようにすると、回生効率の高い高車速域において小さいブレーキ踏み込み量でリアモータ4による回生を速やかに開始することができ、回生効率をさらに向上できる可能性がある。この踏み込み閾値と車速の対応関係は、マップとして制御部8に予め格納しておくことができる。
【0047】
なお、上記においては、ブレーキペダルの踏み込み量で減速度の大きさを判断したが、アクセルペダルの踏み込みオフ状態に基づいて、又は、別途設けられた加速度センサによる検出値に基づいて、減速度の大きさを判断できる可能性もある。
【0048】
図1において説明したハイブリッド車両1の構成や、
図2~
図5において説明した制御パターンは、この発明を説明するための単なる例示に過ぎず、モータの連れ回り損失を低減して効率良く電力を回生する、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、車両の構成や制御パターン等に適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ハイブリッド車両
2a 前輪
2b 後輪
3 エンジン
4 リアモータ
5 リアクラッチ
6 フロントモータ
7 フロントクラッチ
8 制御部
9 バッテリ
10 リア駆動軸
11 リアディファレンシャル
12 フロント駆動軸
13 フロントディファレンシャル
14 トルクコンバータ
15 連続可変トランスミッション
16 車速センサ
17 ブレーキセンサ
18 アクセルセンサ