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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063585
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 161/28 20060101AFI20220415BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220415BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220415BHJP
【FI】
C09D161/28
C09D7/61
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171923
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】勝野 聖世
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DA161
4J038JC23
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA15
4J038PA18
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】可燃性基材を難燃化することができるとともに、透明性が高い塗膜を形成する塗料組成物を提供すること。
【解決手段】塗料組成物は、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、を含有する。塗料組成物は、100質量部の前記(a)成分に対し、100質量部以上500質量部以下の前記(b)成分を含有する。塗料組成物は、透明な塗膜を形成する。塗料組成物は、例えば、100質量部の前記(a)成分に対し、25質量部以上100質量部以下の前記(c)成分を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、を含有し、
100質量部の前記(a)成分に対し、100質量部以上500質量部以下の前記(b)成分を含有し、
透明な塗膜を形成する塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料組成物であって、
100質量部の前記(a)成分に対し、25質量部以上100質量部以下の前記(c)成分を含有する塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗料組成物であって、
前記(a)成分を含む第1剤と、
前記(b)成分及び前記(c)成分を含む第2剤と、
により構成される塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を難燃化する方法として、難燃剤を木材に浸透させる方法がある。難燃剤を木材に浸透させる方法は、特許文献1に開示されている。プラスチックを難燃化する方法として、プラスチックの組成を変更する方法がある。プラスチックの組成を変更する方法は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137805号公報
【特許文献2】特開2000-273298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
難燃剤を木材に浸透させるためには特殊な装置が必要である。また、難燃剤を木材に浸透させるためには、多くの時間とエネルギーとを要する。プラスチックの組成を変更する方法の場合、プラスチックの組成が限定される。
【0005】
塗料組成物を、木材やプラスチック等の可燃性基材に塗布し、塗膜を形成することで、可燃性基材を難燃化することが考えられる。塗膜の透明性が高いと、塗膜の形成後でも、塗膜を通して可燃性基材の表面を視認することができる。
【0006】
従来の塗料組成物を用いても、可燃性基材を難燃化するともに、透明性が高い塗膜を形成することは困難であった。本開示の1つの局面では、可燃性基材を難燃化することができるとともに、透明性が高い塗膜を形成する塗料組成物を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、を含有し、100質量部の前記(a)成分に対し、100質量部以上500質量部以下の前記(b)成分を含有し、透明な塗膜を形成する塗料組成物である。
【0008】
本開示の1つの局面である塗料組成物を可燃性基材に塗布し、塗膜を形成すれば、可燃性基材を難燃化することができる。また、本開示の1つの局面である塗料組成物は、透明な塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の例示的な実施形態について説明する。
1.塗料組成物の構成
(1-1)(a)水溶性メラミン樹脂
本開示の塗料組成物は水溶性メラミン樹脂を含む。水溶性メラミン樹脂は、例えば、アルデヒド類とメラミンとをアルカリ触媒存在下で反応させることにより製造することができる。水溶性メラミン樹脂の製造方法は、例えば、特許第257115号公報、特開昭51-114492号公報、特開2006-124457号公報等に開示されている。
【0010】
水溶性メラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、アルコキシ化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。メチロールメラミン樹脂として、例えば、モノメチロールメラミン樹脂、ジメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。アルコキシ化メチロールメラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。
【0011】
アルコキシ化メチロールメラミン樹脂は完全にアルコキシ化されていてもよいし、メチロール基が残存していてもよいし、イミノ基が残存していてもよい。また、本開示の塗料組成物は、水溶性メラミン樹脂とフェノール樹脂等との共重合体を含んでいてもよい。水溶性メラミン樹脂のうち、メチロールメラミン樹脂が一層好ましい。塗料組成物がメチロールメラミン樹脂を含む場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。なお、本明細書において透明とは、完全な透明には限定されず、例えば、半透明であってもよい。
【0012】
(1-2)(b)縮重合リン酸エステル
本開示の塗料組成物は縮重合リン酸エステルを含む。縮重合リン酸エステルは、ポリリン酸とアルコールとの縮合反応により得られるエステルである。アルコールとして、例えば、脂肪族アルコール、グリコール、多価アルコール、グリセリン等が挙げられる。
【0013】
脂肪族アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0014】
縮重合リン酸エステルとして、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが好ましい。塗料組成物が、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。縮重合リン酸エステルとして、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが一層好ましい。塗料組成物が、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0015】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは100質量部以上500質量部以下であり、より好ましくは150質量部以上400質量部以下であり、最も好ましくは200質量部以上300質量部以下である。
【0016】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が100質量部以上500質量部以下である場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0017】
(1-3)(c)成分
本開示の塗料組成物は(c)成分を含む。(c)成分は、リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上を含む。(c)成分は、例えば、リン酸とホウ酸との両方を含む。アンモニウム塩として、例えば、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0018】
アンモニウム塩及びアンモニア水から、アンモニアが徐々に揮発する。揮発したアンモニアは水溶性メラミン樹脂の硬化を遅らせる。
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合は、好ましくは25質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは30質量部以上70質量部以下であり、最も好ましくは40質量部以上60質量部以下である。
【0019】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合が25質量部以上100質量部以下である場合、可燃性基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0020】
また、(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が可燃性基材の水酸基と化学結合し、塗膜と可燃性基材との密着性が向上する。可燃性基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、可燃性基材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0021】
(1-4)他の成分
本開示の塗料組成物は、難燃性及び塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、通常の塗料に使用される添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、pH調整剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0022】
増粘剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン変性ポリエーテル、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、アンモニア水、アミン等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質含量として、例えば、シリカ、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0023】
本開示の塗料組成物は、例えば、酸を含む。酸は、水溶性メラミン樹脂の硬化を促進する。酸として、例えば、スルホン酸、カルボン酸等が挙げられる。スルホン酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸として、例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0024】
本開示の塗料組成物は、例えば、塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、発泡性耐火被覆の成分を含む。発泡性耐火被覆の成分として、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0025】
(1-5)塗料組成物の形態
本開示の塗料組成物の形態は、例えば、第1剤と第2剤とにより構成される2液の形態である。第1剤は水溶性メラミン樹脂を含む。第2剤は、縮重合リン酸エステルと、(c)成分とを含む。第1剤と第2剤とは、使用前に混合される。本開示の塗料組成物の形態が2液の形態である場合、塗料組成物の貯蔵安定性が高い。
【0026】
第1剤の組成の例は以下のとおりである。
(第1剤)
トリメチロールメラミン樹脂:125質量部
消泡剤:0.5質量部
湿潤剤:1質量部
なお、トリメチロールメラミン樹脂は水溶性メラミン樹脂に対応する。トリメチロールメラミン樹脂における不揮発分の質量比は75質量%である。
【0027】
第2剤の組成の例は以下のとおりである。
(第2剤)
縮重合リン酸エステル:270質量部
リン酸:50質量部
水:20質量部
消泡剤:0.5質量部
本開示の塗料組成物の形態は、例えば、1液の形態である。塗料組成物の形態が1液の形態である場合、例えば、塗料組成物の製造時から時間が経過するほど、無機酸により水溶性メラミン樹脂のゲル化が進行する。そのため、製造後すぐに塗料組成物を使用するか、塗料組成物を低温で貯蔵することが好ましい。塗料組成物を貯蔵する温度は5℃以下であることが好ましい。
【0028】
2.塗料組成物の使用方法
本開示の塗料組成物は、例えば、以下のように使用される。塗料組成物の形態が2液の形態である場合、第1剤と第2剤とを攪拌機を用いて混合する。次に、木材の表面に塗料組成物を塗布する。この塗布を1回目の塗布とする。木材は可燃性基材に対応する。木材として、例えば、厚さ12mm、幅100mm、長さ2000mmのスギ製材等が挙げられる。塗料組成物を塗布する方法として、例えば、ローラーを用いる方法等が挙げられる。塗料組成物の塗布量は、例えば、300g/mである。
【0029】
1回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。次に、塗料組成物を再度塗布する。この塗布を2回目の塗布とする。2回目の塗布における塗布方法及び塗布量は、1回目の塗布と同じである。2回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。
【0030】
次に、アクリル樹脂エマルジョンを含有するつや消し塗料を、エアスプレーを用いて塗布する。つや消し塗料の塗付量は、例えば、100g/mである。次に、50℃で10分間乾燥させる。以上の工程により、難燃性木材を得ることができる。
【0031】
可燃性基材は木材に限定されず、任意に選択できる。可燃性基材として、例えば、プラスチック、木質建材、紙、布等が挙げられる。プラスチックとして、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、発泡ポリスチレン樹脂等が挙げられる。木質建材として、例えば、製材、集成材、合板、単板積層材(LVL)、直交集成板(CLT)、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。可燃性基材の形態は特に限定されない。可燃性基材の形態として、例えば、板状、シート状、布状等が挙げられる。
【0032】
塗料組成物の塗布に使用する器具はローラー以外の器具であってもよい。塗料組成物の塗布に使用する器具として、通常の塗料を塗布するための器具を使用することができる。塗料組成物の塗布に使用する器具として、例えば、ハケ、ヘラ、スプレー、ロールコータ等が挙げられる。
【0033】
塗料組成物の塗付量は、必要とされる難燃性能に応じて任意に設定することができる。例えば、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/mの輻射強度でスギ製材を10分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m以下にするためには、塗付量が300g/m~1000g/mであることが好ましく、400g/m~600g/mであることがより好ましい。上記の条件で5分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m以下にするためには、塗付量が100g/m~400g/mであることが好ましい。
【0034】
塗料組成物の塗布後、乾燥させるときの乾燥温度は80℃以下であることが好ましい。強制乾燥を行う場合、乾燥温度は35℃~70℃、より好ましくは45~60℃である。強制乾燥に代えて、自然乾燥を行ってもよい。
【0035】
塗料組成物の塗布後における乾燥時間は必要に応じて短縮又は延長することができる。強制乾燥を行う前の室温での放置時間は好ましくは30分~24時間であり、より好ましくは1時間~16時間である。強制乾燥での乾燥温度が60℃以下である場合は、室温での放置を行わず、塗布後すぐに強制乾燥を行ってもよい。
【0036】
つや消し塗料を塗布する目的は、意匠性を付与することである。意匠性を付与することを目的とする塗装を意匠性塗装とする。意匠性塗装では、つや消し塗料に代えてつやあり塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、アクリル樹脂エマルジョンを含有する塗料に限らず、可燃性基材の視認性を著しく妨げない塗料を適宜選択して用いることができる。
【0037】
意匠性塗装で使用する塗料は、合成樹脂エマルジョンに代えて、合成樹脂溶液や合成樹脂水溶液を含む塗料であってもよい。意匠性塗装で使用する塗料は、アクリル樹脂に限らず、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の任意の合成樹脂を含む塗料であってもよい。意匠性塗装では、市販のクリヤー塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、オレフィン樹脂溶液を含む塗料を用いることが好ましい。意匠性塗装は行わなくてもよい。
【0038】
3.塗料組成物が奏する効果
(3-1)本開示の塗料組成物は、可燃性基材の表面に透明性が高い塗膜を形成する。塗膜の透明性が高いため、塗膜の形成後でも、塗膜を通して可燃性基材の表面を視認することができる。
【0039】
(3-2)本開示の塗料組成物を可燃性基材の表面に塗布すると、可燃性基材の難燃性が高くなる。その理由は以下のように推測される。ここでは、本開示の塗料組成物が(c)成分としてリン酸を含む事例について説明する。
【0040】
本開示の塗料組成物を塗布し、さらに意匠性塗装を行った可燃性基材が火災時の燃焼熱を受けると、最表面の意匠性塗装の塗膜が数秒から数十秒で燃焼する。次に、本開示の塗料組成物の塗膜の発泡が始まり、縮重合リン酸エステルとリン酸との縮重合反応が生じて黒色の発泡断熱層を形成する。可燃性基材が木材である場合、リン酸は、木材の主成分であるセルロースの水酸基とも縮重合反応を生ずると考えられる。発泡断熱層は火災時の燃焼熱の伝導を抑制して、木材表面が発火温度に到達する時間を遅延させる。木材の発火温度は250~270℃である。その結果、可燃性基材の難燃性が向上する。
【0041】
4.実施例
(4-1)塗料組成物の製造
表1おける「塗料組成物」の行のうち、「組成(不揮発分)」の行に記載された成分をディゾルバーにより混合溶解することで各実施例及び各比較例の塗料組成物を製造した。表1における配合量の単位は質量部である。表1における配合量は、不揮発分の質量である。各実施例及び各比較例において分散媒は水であった。
【0042】
また、表1おける「意匠性塗装」の行のうち、「組成(不揮発分)」の行に記載された成分をディゾルバーにより混合溶解することで各実施例及び各比較例の意匠性塗料を製造した。意匠性塗料とは、意匠性塗装に使用する塗料である。ただし、実施例1、6、比較例1、2では意匠性塗料を製造しなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
(4-2)試験体の作成
各実施例及び各比較例のそれぞれについて、可燃性基材の表面に塗料組成物を刷毛塗りした。可燃性基材の種類及び厚さは、表1おける「可燃性基材」の行に記載されたものであった。塗料組成物の塗布量は、表1おける「塗料組成物」の行のうち、「塗布量(不揮発分)g/m」の行に記載された値とした。
【0045】
次に、各実施例及び各比較例のそれぞれについて、意匠性塗料を塗布した。意匠性塗料の塗布量は、表1おける「意匠性塗装」の行のうち、「塗布量(不揮発分)g/m」の行に記載された値とした。ただし、実施例1、6、比較例1、2では意匠性塗料を塗布しなかった。以上の工程により、各実施例及び各比較例の試験体が完成した。
【0046】
(4-3)試験体の評価
各実施例及び各比較例の試験体について、以下の評価を行った。
(i)塗膜の状態の評価
塗膜の状態を目視により観察した。塗膜の硬化不良やひび割れ等がなければ、塗膜の状態は良好であると判断した。塗膜の硬化不良やひび割れ等があれば、塗膜の状態は不良であると判断した。評価結果を表1における「塗膜の状態」の行に示す。「〇」は良好を意味し、「×」は不良を意味する。また、各実施例の塗膜は透明性が高かった。そのため、塗膜を通して、木材の表面を視認することができた。
【0047】
(ii)総発熱量の測定
ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/mの輻射強度で10分間加熱した場合の総発熱量及び最大発熱速度の測定を行った。総発熱量の測定結果を表1における「総発熱量」の行に示す。「〇」は総発熱量が7MJ/m未満であったことを意味する。「△」は総発熱量が7MJ/m以上8MJ/m以下であったことを意味する。「×」は総発熱量が8MJ/mを超えたことを意味する。
【0048】
最大発熱速度の測定結果を表1における「最大発熱速度」の行に示す。「〇」は200kW/mを超える時間が8秒未満であったことを意味する。「△」は200kW/mを超える時間が8秒以上10秒以下であったことを意味する。「×」は200kW/mを超える時間が10秒を超えたことを意味する。
【0049】
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0050】
(5-1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0051】
(5-2)上述した塗料組成物の他、当該塗料組成物を構成要素とする製品、塗料組成物の製造方法、塗料組成物の塗布方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。