(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063592
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220415BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20220415BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20220415BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20220415BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
C02F1/32
F24F7/00 A
F24F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171932
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】516017444
【氏名又は名称】株式会社カルテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】平塚 勝朗
【テーマコード(参考)】
3L080
4C058
4C180
4D037
【Fターム(参考)】
3L080AA03
3L080AE05
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK25
4C058KK28
4C058KK33
4C058KK42
4C058KK46
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180DD09
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
4D037CA02
(57)【要約】
【課題】
流体に対し効率よく紫外線照射を行うことを可能とし、これにより紫外線照射作用の効果が十分に発揮可能な流体殺菌装置を提供する流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】
流体殺菌装置100は、外部から流体を取り込むための流入口10と、流入口10から流入した流体を排出するための排出口20とを有する筐体30を備え、筐体30内には、紫外線照射装置42と、紫外線照射装置42より照射された紫外線が到達可能であるとともに、流入口10から流入した流体が排出口20に向かって移動可能な紫外線照射領域40とが設けられており、紫外線照射領域40において、流体が排出口20に向かう最短距離Lよりも流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構(第一整流面12、第二整流面52)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から流体を取り込むための流入口と、前記流入口から流入した流体を排出するための排出口とを有する筐体を備え、
前記筐体内には、紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置より照射された紫外線が到達可能であるとともに、前記流入口から流入した流体が前記排出口に向かって移動可能な紫外線照射領域とが設けられており、
前記紫外線照射領域において、前記流体が前記排出口に向かう最短距離よりも前記流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構を有することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
前記流路規制機構が、
前記流入口から流入した流体を、前記紫外線照射領域において旋回させながら流動させる旋回機構または前記紫外線照射領域において蛇行させながら流動させる蛇行機構である請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記旋回機構が、前記流体を旋回方向に誘導する整流面を有するとともに、
前記紫外線照射装置として設けられた長尺の紫外線ランプが、前記紫外線照射領域を旋回しながら移動する前記流体の旋回流の中心と略平行に配置されている請求項2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記流路規制機構が、前記旋回機構であり、
旋回する前記流体にかかる遠心力によって当該流体から分離された夾雑物を受容する受容部を備える請求項2または3に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記筐体は、少なくとも内壁面が円筒状の筐体本体を有し、
前記筐体本体の内部には、前記筐体本体の内壁面側の空間である外側空間と、軸中心側の空間である内側空間とを仕切る内筒体を有し、
前記内筒体の一端側には、前記外側空間と、前記内側空間とを連通させる連通部が設けられ、
前記流入口から流入した前記流体を、前記外側空間において旋回または蛇行させながら前記連通部に向かって移動させ前記内筒体に流入させ、当該内筒体を介して前記排出口から排出させる請求項2から4のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記内筒体が紫外線透過性部材により構成されており、
前記紫外線照射装置が、当該内筒体の内部に配置されている請求項5に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
前記蛇行機構が、前記紫外線照射装置として設けられた長尺の紫外線ランプの長軸方向に対し交差方向に延在する邪魔板を有し、
前記邪魔板が、前記軸方向に対し複数設けられており、
前記流体が、前記邪魔板に沿って前記軸方向に対し交差方向に蛇行する請求項2に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を紫外線により殺菌するための流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活における衛生への意識が高まり、また感染症などの伝染防止のために、室内の空気を清浄に維持する空気洗浄機の利用率が高まっている。またこのような衛生管理は、日常生活だけでなく、業務上あるいは医療上でも重要であり、気体あるいは液体などの流体を清浄に保つことが様々な分野で望まれている。
【0003】
たとえば気体を清浄に保つための装置としては、以下のような技術が提案されている。
即ち、下記特許文献1には、フィルタと、フィルム集塵電極との間において、フィルム面に平行に殺菌灯が配置されてなる空気清浄機(以下、従来技術1ともいう)が開示されている。同文献には、従来技術1は、フィルタにより空気中の塵芥を捕集するとともに、フィルタに付着した細菌類を殺菌灯により殺菌可能であることが説明されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、プリーツ状に構成した集塵フィルタと、当該集塵フィルタの前後両面において、フィルタのプリーツ方向に対して直交して紫外線ランプが配置された空気清浄器(以下、従来技術2ともいう)が提案さている。ここでいうプリーツ方向に対して直交とは、プリーツとして形成された複数の山または谷それぞれの連続方向に対して直交する方向を指しており、換言すると、当該フィルタのプリーツを伸ばした状態におけるフィルタの面方向と平行な一方向を指している。同文献には、従来技術2は、集塵フィルタで空気中の集塵を捕集するとともに、紫外線ランプによる紫外線の照射によって、細菌類を殺菌して空気を清浄とすることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-121278号公報
【特許文献2】特開2003-190269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線は、殺菌効果あるいは抗ウイルス効果があり、流体に対し紫外線を照射することで当該流体中に混入した細菌およびウイルスを死滅させ、あるいは活性を低下させる等の紫外線照射作用が期待される。
しかしながら従来技術1、2はいずれも、装置内を流通する気体が紫外線ランプの周辺を通過する際のごく短時間だけ紫外線に晒される構造となっており、実際には、気体に対する紫外線照射作用の効果は非常に低いものであった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、流体に対し効率よく紫外線照射を行うことを可能とし、これにより紫外線照射作用の効果が十分に発揮可能な流体殺菌装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流体殺菌装置は、外部から流体を取り込むための流入口と、前記流入口から流入した流体を排出するための排出口とを有する筐体を備え、
上記筐体内には、紫外線照射装置と、上記紫外線照射装置より照射された紫外線が到達可能であるとともに、上記流入口から流入した流体が上記排出口に向かって移動可能な紫外線照射領域とが設けられており、
上記紫外線照射領域において、上記流体が上記排出口に向かう最短距離よりも上記流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体殺菌装置は、内部に紫外線照射装置が配置され、上記紫外線照射装置より照射された紫外線が到達可能であるとともに、流入口から流入した流体が排出口に向かって移動可能な紫外線照射領域を有する。ここで本発明は、当該紫外線照射領域において流体が排出口に向かう最短距離よりも流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構を有する。そのため、本発明では、流体は、紫外線照射領域を何ら規制なく通過する場合に比べ、流体に対し紫外線を照射する時間を長く確保することができ、これによって流体を十分に紫外線殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態である流体殺菌装置の概略側面図である。
【
図2】(2A)は、
図1に示す流体殺菌装置のII-II断面図であり、(2B)は、(2A)の変形例における筐体の断面図である。
【
図3】(3A)は、本発明の第一実施形態の流体殺菌装置の概略上面図であり、(3B)~(3D)は、第一実施形態の流体殺菌装置の変形例の概略上面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態の流体殺菌装置の変形例を示した概略側面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態である流体殺菌装置の概略断面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態である流体殺菌装置の概略断面図である。
【
図7】本発明の第四実施形態である流体殺菌装置の概略断面図である。
【
図8】(8A)は、
図7に示す流体殺菌装置のVII-VII断面図であり、(8B)は
図1に示す流体殺菌装置のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。図示する本発明の実施形態は、理解容易のために、特定の部材を全体において比較的大きく図示する場合、または小さく図示する場合などがあるが、いずれも本発明の各構成の寸法比率を何ら限定するものではない。
【0012】
本発明の流体殺菌装置は、流体中に混入した細菌やウイルスを紫外線照射により死滅させ、あるいは活性を低下させる等の紫外線照射作用を有効に発揮させることを趣旨とする装置である。したがって、本発明は、便宜的に「殺菌」なる用語を使用するが、本発明の紫外線照射の対象として、流体中の細菌だけに限定するものではなく、たとえばウイルスも包含する。また本発明に関し、「流体」とは、気体および液体を含み、旋回流や蛇行流などの流動可能な物質を広く包含する。以下の説明では、流体の例として、適宜、気体を例に本発明を説明する。
本発明または本明細書の記載に関し、特段の断りなく上下という場合には、任意の地点から天方向を上方向とし、上記天方向に対し相対的に下向きの方向を下方という。
【0013】
本発明の流体殺菌装置は、例えば
図1に示される流体殺菌装置100のように、外部から流体を取り込むための流入口10と、流入口10から流入した流体を排出するための排出口20とを有する筐体30を備える。筐体30内には、紫外線照射装置42と、紫外線照射装置42より照射された紫外線が到達可能であるとともに、流入口10から流入した流体が排出口20に向かって移動可能な紫外線照射領域40とが設けられる。本発明は、紫外線照射領域40において、流体が排出口20に向かう最短距離Lよりも流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構が設けられていることを特徴とする。
尚、
図1に示す流体殺菌装置100では、筐体30の内部に配置された紫外線照射装置42(紫外線ランプ)から照射された紫外線は筐体30の内部全体を照射可能であることから、かかる筐体30の内部全体が紫外線照射領域40を構成する。最短距離Lとは、筐体30に設けられた紫外線照射領域40の流入口10に最も近い位置から、紫外線照射領域40に最も近い位置までの最短の距離を意味する。したがって本実施形態では、最短距離Lは、流入口10から排出口20までを直線的に結ぶことで示される距離となる。便宜上、
図1には、最短距離Lとして流入口10の一点と、排出口20の一点を結ぶ一直線を示しているが、本発明における最短距離Lは、流入口10の任意の箇所から排出口20の任意の箇所までの距離を含む。
つまり、流入口10から筐体30に流入した流体は、紫外線照射領域40において流路の規制を受けない場合、その多くが排出口20に向けて最短距離Lで移動(流動)する。かかる場合、流体は、短時間で紫外線照射領域40を通過してしまい紫外線照射を受ける時間が短い。そのため、最短距離Lを通過する流体は、十分に殺菌がなされないまま排出口20から排出される可能性が高い。これに対し、本発明は、上記流路規制機構を備えることによって、紫外線照射領域40において、流体が最短距離Lで紫外線照射領域40を流動することを規制し、当該最短距離Lよりも長い距離を移動させることによって、流体に対する紫外線照射時間を多く確保することができる。その結果、本発明では、流体に対し紫外線照射作用を有効に発揮させうる。
【0014】
本発明における流路規制機構は、流体が、紫外線照射領域40において最短距離Lよりも長い距離を移動(流動)させるための機構であればよく、たとえば流路規制機構として、流入口10から流入した流体を、紫外線照射領域40において旋回させながら流動させる旋回機構または紫外線照射領域40において蛇行させながら流動させる蛇行機構を挙げることができる。
以下では、流路規制機構として、主として旋回機構または蛇行機構を例に本発明の実施形態を説明するが、当該説明は、本発明を限定するものではない。異なる流路規制機構として多重管構造についても、後段において併せて説明する。
【0015】
<第一実施形態>
以下に、本発明の第一実施形態として、流体殺菌装置100について
図1から
図4を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態である流体殺菌装置100の概略側面図であり、紙面手前側の筐体30を図示省略し筐体30内までを図示している。
図2Aは、
図1に示す流体殺菌装置100のII-II断面図であり、
図2Bは、
図2Aの変形例における筐体30の断面図である。
図3Aは、本発明の第一実施形態の概略上面図であり、
図3B~
図3Dは、第一実施形態の変形例の概略上面図である。
図4は、本発明の第一実施形態の流体殺菌装置100の変形例の概略側面図であり、紙面手前側の筐体30を図示省略し筐体30内までを図示している。なお、本明細書において説明する図面は、図示される紫外線ランプやファンなどに対し電流を付与するための電気系統の図示が適宜省略されている。
【0016】
図1に示すとおり流体殺菌装置100は、外部から流体(たとえば気体)を取り込むための流入口10と、流入口10から流入した流体を排出するための排出口20とを有する筐体30を備える。流体殺菌装置100は、筐体30の内部にはファン58が設けられており、ファン58が回転することで生じる吸引力により流入口10から気体が流入し、当該気体が排出口20から排出される。本実施形態では、ファン58は排出口20の近傍に設けられている。なお、流入口10から気体を流入させ、これを排出口20に向けて流動させる動力を発生させる機構として、ファン58の変わりに、流入口10の外側に送風機を配置してもよいし、あるいは、排出口20に吸引装置を配置してもよく、またこれらをファン58と組み合わせて配置してもよい。
尚、ファン58の取り付け位置は排出口20近傍に限定されず、たとえば、筐体30の下方、筐体30の上下方向中間部、流入口10の近傍など、筐体30内の任意の位置に適宜決定することができ、また異なる位置に複数のファン58を取り付けてもよい。たとえば筐体30の下方に設けられたファン58(図示省略)により、気体を旋回させながら上方に押し上げるよう流動させるとともに、筐体30の上方に設けられたファン58により、気体を吸引するよう流動させることで、意図した旋回をより良好に発生させうる。
【0017】
本実施形態の流体殺菌装置100は、流路規制機構として、流入口10から流入した流体(気体)を紫外線照射領域42において旋回させながら流動させる旋回機構を有している。そのため、
図1に示すとおり、流体殺菌装置100では、紫外線照射領域40において、流体(気体)が旋回してなる旋回流56が発生する。本実施形態における旋回流56は、流入口10から流入した流体が筐体30の内壁面に沿って流動(旋回)しつつ上方(下流)に流動する。
以下に紫外線照射装置100をさらに詳細に説明する。その際、適宜、流体として気体を例に説明する。
【0018】
(筐体)
筐体30は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特にその形状や構成部材が限定されるものではないが、内部において効率よく旋回流56を発生させるという観点からは、少なくとも内壁面は曲面状であることが好ましく、本実施形態では、円筒形状の筐体本体32を備える。筐体30の底部は、筐体30よりも大径の基板部36が設けられ、設置安定性が図られている。
図2に示す筐体本体32の横断面における内壁面は円状をなしているが、たとえば楕円状などの他の形状であってもかまわない。筐体30の内部には紫外線照射領域40が設けられるため、一般的には、筐体30は、外部に紫外線が露出しないよう、紫外線非透過性部材により構成されることが好ましく、具体的には、鉄、アルミ、ステンレスなどから構成されることがより好ましい。
【0019】
筐体30の任意の側面には流入口10と排出口20が設けられる。流入口10は、旋回流56の上流側に設けられており、排出口20は筐体30内における気体の流路の下流側に設けられている。ここでいう上流および下流とは、物理的な上下関係ではなく、流体の流れの始まり側および、流れの終わり側を指す。
本実施形態では、具体的には
図1に示すとおり、筐体30の横側面下方に流入口10が設けられるとともに、筐体30の上側面(天井部)に排出口20が設けられており、円筒形状の筐体本体32の下方から流入した気体が、筐体30内部(紫外線照射領域40)を旋回しながら上方に移動し、排出口20から排出可能な構造となっている。筐体30、ならびに流入口10および排出口20の形状および寸法は特に限定されない。
たとえば、流体殺菌装置100が8畳程度の空間における気体(当該空間を占める空気)の殺菌に用いられる場合、筐体30は、一例として、直径200mm~400mm程度であって、高さが50cm~150cm程度の円筒形状であることが好ましい。またこのとき、流入口10および排出口20の寸法および形状は、たとえば縦50mm~100mm、横50mm~100mm程度の四辺形、あるいは直径50mm~150mmの円形などが好ましい。ただし上記数値範囲は本発明を限定するものではない。
【0020】
業務用で本発明の装置を用いる場合、あるいは液体の流路に本発明の装置を組み込む場合など、使用環境や使用条件に応じて、上述する寸法や形状は適宜変更することができる。また流入口10および排出口20は1か所ずつに設けられる態様に限定されず、任意の箇所に複数設けられても良い。たとえば
図2Bに示すとおり、筐体30の周方向において互いに対向する位置に流入口10が2か所設けられても良く、また図示省略するが、筐体30の周方向において配列する3つ以上の流入口10が設けられても良い。
【0021】
流入口10および排出口20は、気体などの流体が通過可能に構成されていればよく、単なる開口であってもよいし、格子状の窓部材がはめ込まれてもよいし、あるいは、フィルタが配置されてもよい。流入口10および/または排出口20に、フィルタが配置されることによって、当該フィルタの目の粗さにもよるが、気体に含有される夾雑物を除去することが可能であり好ましい。かかるフィルタは、交換可能あるいは洗浄可能であることがより好ましい。
【0022】
(紫外線照射装置、紫外線照射領域)
次に、筐体30の内部に設けられた紫外線照射装置42および紫外線照射領域40について説明する。
紫外線照射装置42は、筐体30の所定空間において紫外線を照射可能な装置である。ここでいう紫外線とは、波長が10nm以上400nm以下の電磁波を指し、中でも、細菌やウイルスを死滅させ、あるいは活性を低下させる効果が高いという観点からは、10nm以上280nm以下の波長の紫外線が好ましく、100nm以上280nm以下の紫外線がより好ましく、200nm以上280nm以下の紫外線であることがさらに好ましい。
【0023】
紫外線照射装置42としては、一般的には、紫外線ランプが挙げられる。本実施形態では、紫外線照射装置42として、長尺の紫外線ランプが筐体30の内部に配置されている。
図1では、円筒形の筐体30の上下方向に延びる中心軸またはその近傍に、長尺の紫外線ランプの中心軸が配置された態様を示している。
本実施形態では、上記紫外線ランプは、筐体30内に設けられたランプフォルダ44によって支持されている。本実施形態におけるランプフォルダ44は、紫外線ランプの両端に設けられた端子と接続されるコネクタが内蔵された2つの端部取付部46と、これらに亘り設けられた柱部45を備える。2つの端部取付部46のうちの一方が、筐体30の底面に設置され固定されており、これによって紫外線ランプは、上下方向に伸長する姿勢で保持されている。たとえば図示するように円筒形状の筐体30の軸方向と当該紫外線ランプの伸長方向を揃えるとよい。紫外線ランプは、紫外線を照射可能な光源であればよく、たとえば蛍光灯型の紫外線ランプ、LED型の紫外線ランプなどを含む。
尚、ランプフォルダ44は上述の態様に限定されず、筐体30の内部において紫外線ランプを支持することができればよい。たとえば図示省略する別の態様として、上端側の端部取付部46を備える上端フォルダおよび下端側の端部取付部46を備える下端フォルダが、それぞれ筐体30の内側面から軸中心方向に延在する支持バーによって支持されたランプフォルダ44であってもよい。かかる態様では、バランスをとるために、たとえば、下端フォルダの支持バーと、上端フォルダの支持バーは、上面視において180度対向する位置に設けられるとよい。またかかる態様では、紫外線ランプの下端(下端フォルダの下面)と筐体30の下面とには空間を設けることが可能であり、当該空間に、空気を旋回させつつ上方に押し上げるためのファンを設置することもできる。
本発明の紫外線照射装置42は長尺の紫外線ランプに限定されず、たとえば
図1に示す長尺の紫外線ランプの変わりに、図示省略する球状の紫外線ランプを複数配列させて構成することもできる。
【0024】
図1では筐体30内に一本の長尺の紫外線ランプが配置された態様を示しているが、紫外線ランプの本数は、複数でもよく、たとえば3本の長尺の紫外線ランプを1束にして筐体30内に配置してもよい。このように複数本の長尺の紫外線ランプを配置することによって、装置の高さ(長尺)は変えずに殺菌力を高めることができる。また別の態様として、筐体30の上下方向(長尺方向)の寸法を大きくし、紫外線照射装置42として、より長尺の紫外線ランプを配置してもよいし、長さ方向に直列的に紫外線ランプを2本以上配列してもよく、この場合には筐体30の形状を、断面積が小さくスリムに構成することができる。
【0025】
紫外線照射装置42が筐体30内に配置されることで紫外線照射領域40が構成される。本発明において、紫外線照射領域40とは、筐体30の内部において、紫外線照射装置42から照射された紫外線が到達可能な領域をさす。流体殺菌装置100は、
図1に示すとおり、筐体30の内部において紫外線照射装置42である紫外線ランプが配置されるとともに、当該内部において、紫外線ランプから筐体30の内壁面まで、紫外線を遮る構成が実質的にないため、筐体30の内部略全体(少なくとも、紫外線ランプの表面から筐体30の内壁面までの空間)が、紫外線照射領域40となっている。
【0026】
図1に示すとおり本実施形態は、長尺の紫外線ランプが紫外線照射領域40を旋回しながら移動する気体の旋回流56の旋回の中心と同軸または平行若しくは略平行になるよう配置されている。ここでいう中心とは、旋回しながら排出口20の方向に移動する気体の旋回流56の渦の中心を指し、略平行とは完全に平行ではないが互いの交差角度が0度を超えて10度以下の範囲を指し、好ましくは5度以下の範囲である。換言すると、旋回流56は、紫外線ランプの長軸方向に沿って移動するよう構成されている。このように旋回流56の連続方向と紫外線ランプの連続方向とが同方向となることで、気体に対し効率よく紫外線が照射されるため好ましい。
紫外線ランプが旋回流56の旋回の中心と平行または略平行になるよう配置される態様としては、
図2または
図3Aに示すように、旋回流56の中心に長尺の紫外線ランプ42aが配置される態様(以下、態様1ともいう)だけでなく、たとえば、
図3Bに示すとおり、旋回流56の中心を外れた任意の位置であって当該中心と平行または略平行となるように紫外線ランプ42bが配置される態様(以下、態様2ともいう)を含む。
図3Bは、具体的には、旋回流56の旋回の中心を外れ、筐体30の内壁面に沿って長尺の紫外線ランプ42bを複数本配置した態様を示している。
【0027】
図3Cには、上述する態様1と態様2とを組み合わせた態様3を示す。つまり、旋回流56の中心に配置された長尺の紫外線ランプ42aおよび、当該中心を外れ筐体30の内壁面に沿った位置に複数本配置された長尺の紫外線ランプ42bの両方を有する態様を本発明は包含する。
なお、態様2を採用する場合、
図3Dに示すとおり、当該紫外線ランプ42bが旋回流56の流れを乱さないように、上記中心を外れた位置に配置された紫外線ランプ42bと、旋回流56とを空間的に仕切る仕切り壁43を設けてもよい。具体的には、たとえば、紫外線透過性部材で構成され、筐体本体32の内径よりも小さい内径の筒状体である仕切り壁43を、筐体本体32の内部に配置し、仕切り壁43の外側に紫外線ランプ42bを配置するとともに、仕切り壁43の内側において気体を旋回させてもよい。
【0028】
ここで紫外線透過性部材とは、紫外線と透過させる部材を広く包含し、たとえば、無アルカリガラス、石英ガラス、透明性のポリオレフィン系樹脂(たとえばポリエチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂)などが挙げられるが、これらに限定されない。
また異なる紫外線透過性部材として、任意の部材で構成されたメッシュシートを用いることもできる。メッシュシートで仕切り壁43を構成することによって、当該メッシュシートの目から、紫外線を透過させることができる。紫外線耐性が高いという観点からは、上記メッシュシートとして、金属製のメッシュシートを用いるとよい。
【0029】
(旋回機構)
次に、旋回機構について説明する。
本発明において旋回機構は、流入口10から流入した気体を紫外線照射領域40の少なくとも一部領域において旋回させて移動可能とする機構であればよく、具体的な構成に限定されるものではない。たとえば本実施形態では、旋回機構として、流入口10から取り込まれた気体を筐体30の内壁面の円周方向に整流するための第一整流面12が流入口10に設けられるとともに、筐体30内に流入した気体の流れを所定の旋回方向に規制するために、筐体30の内部には第二整流面52が設けられている。
図1には、筐体30の下方から上下方向に2つの第二整流面52を設けた例を示したが、第二整流面52の数は1つ、あるいは3つ以上であってもよい。また旋回機構として上述する第一整流面12または第二整流面52のいずれか一方だけを備える態様を本発明は包含する。
【0030】
本実施形態における第一整流面12は、流入口10から流入した気体を速やかに旋回させるために、流入口10に設けられる旋回機構の1つである。本実施形態では、第一整流面12は、例えば
図2A、
図2Bに示すように、板状体の一方面である。第一整流面12は、流入口10から流入した気体が筐体30の内周面に沿って旋回するようガイド可能な角度に調整されている。本実施形態では第一整流面12は平板面であるが、本発明はかかる態様に限定されず、たとえば第一整流面12が、筐体30の内周面に沿った方向に湾曲する曲面であってもよい。
【0031】
本実施形態における第二整流面52は、筐体30の内壁面のカーブに沿って当該内壁面に対し固定されており、所定方向(気体を旋回させたい方向)に傾斜する板状体の板面である。より具体的には、本実施形態では、気体を、流入口10から相対的に上方に設けられる排出口20に向けて移動させつつ筐体30の内周面に沿って旋回させるため、第二整流面52は、上り傾斜するよう配置されている。
流入口10から流入し、流入口10近傍に配置された第二整流面52に当たった気体は、第二整流面52の表面に沿って斜め上方向にガイドされるとともに、筐体30の内壁面に沿って旋回するようガイドされ、これによって旋回流56が構成される。本実施形態では、流入口10の近傍に設けられた第二整流面52と、これより上方(下流側)に配置された第二整流面52が一以上設けられている。複数の第二整流面52の傾斜角度は、特に限定されないが、互いに同じ角度に傾斜するよう配置されることが好ましい。
【0032】
第一整流面12および第二整流面52は、いずれも、所謂旋回翼であり、これに当接した流体を所定方向にガイドすることで旋回を促すものである。したがって、本実施形態において具体的に示す第一整流面12および第二整流面52は、旋回機構の一例に過ぎない。また、第一整流面12および第二整流面52は、板状体の板面であることに限定されず、非板状体物の任意の一面を第一整流面12または第二整流面52とすることもできる。
【0033】
(変形例)
図4に、本実施形態の変形例を示す。
図4に示す流体殺菌装置110は、上述する流体殺菌装置100に対し、紫外線照射装置42である長尺の紫外線ランプがケース48の内部に配置されている点、および所定長さの板状面であった第二整流面52の変わりに螺旋状に連続する第二整流面53が配置されている点が変更されている。
図4では、紙面手前側の筐体30およびケース48を図示省略し、これらの内部までを図示している。
【0034】
ケース48は、紫外線ランプの両端に設けられた端子と接続されるコネクタが内蔵された2つの端部取付部46と、これらに亘り設けられた筒状ケース本体49を備える。筒状ケース本体49は、紫外線透過性部材で構成された筒状体であって、内部に紫外線ランプが配置される。筒状ケース本体49と、端部取付部46とで、紫外線ランプ全体が被覆されているので、当該紫外線ランプは旋回流56と直接に接触することがなく、安定した配置姿勢を維持することができる。尚、ケース本体49を構成する紫外線透過性部材については、上述する仕切り壁43を構成する紫外線透過性部材の記載が適宜参照される。
【0035】
上記変形例における第二整流面53は、円筒形の筐体30の内部において螺旋状に連続して延在するスロープであり、途切れなく、気体を旋回方向にガイドすることができる点で好ましい。上記スロープ状の第二整流面53の幅寸法は、筒状ケース本体49の外周面から筐体本体32の内壁面までの距離以下であればよい。なかでも
図4に示すように、筒状ケース本体49の外周面から筐体本体32の内壁面までを亘る幅寸法であるスロープ状の第二整流面53は、旋回方向へ確実に気体をガイドすることができ好ましい。第二整流面53は、筒状ケース本体49の外壁面および/または筐体30の内壁面に対し固定されて配置される。
また、スロープ状の第二整流面53は、上述するランプフォルダ44を備える態様の本発明にも適用することができる。この場合に、スロープ状の第二整流面53は、たとえば、ランプフォルダ44の柱部45および/または筐体30の内壁面に対し固定して配置される。
【0036】
本変形例では、ファン58に加え、流入口10と排出口20との中間部において、旋回する流体の流路に直交する向きで旋回補助用のファン59が1つ以上設置されている。これによって、流入口10から排出口20までの間において、気体の流れを乱すことなく良好に旋回させやすく、また気体の風量または速度を調整することが可能である。
【0037】
(他の使用態様)
ところで、本発明は流体殺菌装置であるが、筐体30を取り外して、紫外線照射装置42(紫外線ランプ)をむき出しにし、人間のいない部屋などの空間あるいは当該空間に設置された家具などの物体の殺菌に使用することも可能である。
かかる使用態様を可能とするために、筐体30から少なくとも紫外線ランプを保持した状態のランプフォルダ44またはケース48を取り外し可能に構成する態様Iまたは、紫外線ランプを保持した状態のランプフォルダ44またはケース48を筐体30の天井側または底面側に設置固定するとともに、筐体30の、横側面部とランプフォルダ44が設置固定されていない天井部または底面部とを着脱可能に構成する態様IIを本発明は包含する。これによって、本発明は、通常の状態では流体殺菌装置として用いられ、別の使用態様(態様I、態様II)として、筐体30から紫外線ランプを分離させて任意の空間に設置し、当該空間や当該空間に配置された物体を殺菌する殺菌装置として使用しうる。上記態様Iまたは態様IIとして使用する際に、厳密に人間がいない時間だけ照射可能とするため、タイマー付きのスイッチ機能を持たせておくとよく、あるいは人間や動物の動きを感知した場合に照射をオフ状態にする赤外線センサーなどの動作感知装置を設置しておくとよい。
【0038】
また、上記態様Iまたは態様IIを可能とする構成を備えた本発明において、さらに筐体30よりも容量の大きい第二の筐体を準備し、当該第二の筐体内に携帯電話などの小物などを配置するとともに、紫外線ランプが設置されたランプフォルダ44またはケース48(以下、ランプフォルダ44等ともいう)を取り付けることによって、小物殺菌装置としても使用することも可能である。すなわち、本発明は、筐体30よりも容量が大きく、かつランプフォルダ44等を着脱可能に保持することができる第二の筐体を有する殺菌装置セットを構成しうる。第二の筐体は、外部に紫外線が透過することのない容器であればよく、ファンや旋回機構等は不要である。上記殺菌装置セットでは、ランプフォルダ44等を筐体30に設置しているときは流体の殺菌装置として機能させ、ランプフォルダ44等を第二の筐体に付け替えるとともに、当該第二の筐体内に被紫外線殺菌物である小物等を収容することによって、当該小物を殺菌する殺菌装置として機能させることができる。
【0039】
<第二実施形態>
以下に、第二実施形態として本発明の流体殺菌装置200について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第二実施形態である流体殺菌装置200の概略縦断面図である。
本実施形態は、流体に混入した粉体を分離可能な分離装置(所謂、サイクロン装置)の機構を利用するサイクロン型の流体殺菌装置である。流体殺菌装置200は、旋回機構として、サイクロン装置内において気体を旋回させる技術を利用し、確実に気体を旋回させるとともに、当該旋回する気体に対し紫外線が照射可能となるように構成される。
【0040】
流体殺菌装置200は、外部から流体を取り込むための流入口10と、流入口10から流入した流体(気体)を排出するための排出口20とを有する筐体30を備える。筐体30は、少なくとも内壁面が円筒状の筐体本体32を有し、筐体本体32の内部には、筐体本体32の内壁面側の空間である外側空間80と、軸中心側の空間である内側空間82とを仕切る内筒体90が設けられている。したがって流体殺菌装置200は、筐体本体32と、内筒体90とからなる二重管構造となっており、内筒体90の内側に、内筒体90の軸方向に沿って長尺の紫外線ランプである紫外線照射装置42が配置されている。
【0041】
内筒体90の内部に配置される紫外線ランプは、図示するとおりランプフォルダ44に取り付けられている。本実施形態ではランプフォルダ44は、上端側に設けられ天井部38の内壁面に固定された上端支持部47により、筐体30の内部に設置されている。
【0042】
上記二重管構造において、内筒体90の一端側(
図5では下端側)には、外側空間80と、内側空間82とを連通させる連通部92が設けられており、これによって気体が外側空間80から内側空間82に移動可能に構成されている。内筒体90は筐体30の上方まで連続しており、その上端は、筐体30の内壁面に到達するよう拡径されている。これによって、外側空間80と内側空間82とは連通部92のみで連通するよう構成されている。したがって、流入口10から流入した気体は、外側空間80を通過し、連通部92において流動方向を折り返しつつ内筒体90の内側である内側空間82に流入し、当該内側空間82を通じて排出口20から排出される。
【0043】
本実施形態において、内筒体90は、紫外線透過性部材により構成されており、紫外線透過可能である。そのため内筒体90の内側に配置された紫外線照射装置42から照射された紫外線は、内側空間82だけでなく、外側空間80まで到達する。つまり、流体殺菌装置200における紫外線照射領域40は、内側空間82および外側空間80を含んで構成されている。
かかる紫外線照射領域40において、気体は、上述するとおり連通部92において折り返して筐体30内を流動するため、内筒体90を有しない態様に比べて紫外線照射領域40における気体の移動距離が長くなっている。つまり本実施形態において、内筒体90は流路規制機構をなしている。このように本発明は、筐体30の内部に1以上の筒体を有する多重管構造であって、筒(あるいは筐体)と筒との間を気体が移動可能に構成された多重管構造を流体規制機構として包含する。
尚、内筒体90を構成する紫外線透過性部材は、上述する第一実施形態において説明した紫外線透過性部材と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0044】
本実施形態は、サイクロン型の流体殺菌装置であり、サイクロン装置と同様の原理を用いて、筐体30に流入した気体を旋回させることができる。つまり、本実施形態では、流体規制機構として、上述する多重管構造に加え、旋回機構を備える。
たとえば、サイクロン型の流体殺菌装置200は、旋回機構として、流入口10に設けられた第一整流面12を備えており、これによって、外側空間80において筐体本体32の内壁面に沿って気体を旋回させ得る。これにより、外側空間80における気体の移動距離は、流入口10から連通部92までを直線的に移動する場合に比べて長くなる。尚、第一整流面12の詳細については、第一実施形態の説明が適宜参照されるため、ここでは詳細な説明は割愛する。
【0045】
ところで、筐体30(筐体本体32)の内壁面に沿って旋回する気体には遠心力がかかる。そのため、一般的なサイクロン装置と同様の原理により、気体に混入する夾雑物のうち相対的に比重の重いものが当該内壁面側に寄る。この比重の重い夾雑物は、流入口10から流入し、外側空間80を旋回しながら下降する気体とともに、上記内壁面に沿って下降し、連通部92から内筒体90に流入し排出口20に向かって上昇する気体とは分離される。そこで、流体殺菌装置200は、かかる比重の重い夾雑物710を受容する受容部70が設けられている。これによって、筐体30に流入した気体から夾雑物710を分離し、気体を清浄化することができるとともに、分離された夾雑物710の廃棄が容易である。
【0046】
具体的には、
図5に示すとおり、内筒体90の下方には、円錐形状であって頂点およびその近傍が内筒体90の下端側に入り込んだ位置に配置された傘部72と、傘部72を支持する軸部74を備える収集部76が設けられている。内筒体90の下端と、傘部72の表面との間には、適度な隙間が確保されており、当該隙間により連通部92が構成されている。
傘部72の下端と筐体30(筐体本体32)の内壁面との間には、数mm~数10mm程度の隙間が確保されており、当該隙間が、気体から分離された夾雑物710を下方に配置された受容部70に落下させるための落下口720をなしている。
遠心力により筐体本体32の内壁面側に寄りながら下降した夾雑物710は、傘部72の表面に当接し自重により傘部72の表面を滑り落ちて落下口720から落下し、受容空間730を有する受容部70に受容される。受容部70に受容された夾雑物710を廃棄しやすいように、受容部70は、筐体本体32に対し、着脱可能に取り付けられていることが好ましい。あるいは、図示省略するが受容部70の底面が開閉可能に構成されていてもよい。
【0047】
さらに、気体の清浄化を良好に図るために、受容部70に受容されなかった小さい(または軽量の)ダストを除去するために、排出口20またはその近傍にダスト分離用のフィルタを配置してもよい。このように受容部70とダスト分離用のフィルタを組み合わせて設置することによって、受容部70がない場合にくらべ、当該フィルタに捕獲されるダスト料を減量することができるため、フィルタの交換や洗浄の回数を減らすことができる。
【0048】
本実施形態では、紫外線照射装置42から照射された紫外線をより有効に活用するために、筐体30内において、紫外線照射装置42から照射された紫外線を反射可能な鏡面部60が設けられている。
鏡面部60の配置位置は、特に限定されず、筐体30において紫外線が反射可能な位置であればよい。たとえば
図5に示すように筐体30の内壁面に沿って鏡面部60を設けることで、紫外線照射装置42から照射され紫外線照射領域40を通過した紫外線を、鏡面部60によって反射させ、再度、紫外線照射領域40を通過させることができるため、紫外線照射効率が高い。
鏡面部60は、筐体30の内壁面において断続的に設けられていてもよいが、周方向に連続して設けられていることが好ましい。本実施形態では、鏡面部60は、旋回流56を介して、紫外線照射装置42と対向する位置に配置されている。
【0049】
上述する流体殺菌装置200は、第一整流面12の変わりに、後述する邪魔板(第四実施形態における第一邪魔板62、第二邪魔板64参照)を、筐体本体32の内壁面と、内筒体90の外壁面に設けることで、蛇行機構を備える流体殺菌装置に変更することもできる。かかる場合には、流入口10から流入した気体を、外側空間80において長尺の紫外線ランプの長軸方向と交差方向に蛇行させながら連通部92まで流動させうる。
【0050】
<第三実施形態>
以下に、第三実施形態として本発明の流体殺菌装置300について
図6を用いて説明する。
図6は、流体殺菌装置300の概略縦断面図である。本実施形態の流体殺菌装置300は、筐体30の内部に、二重の内筒体90(第一内筒体90A、第二内筒体90B)が設けられている点で、上述する第二実施形態の流体殺菌装置200と相違し、他の構成は略同様である。したがって、以下では、流体殺菌装置300について、主として二重の内筒体90に関わる構成に関し説明し、他の構成は、流体殺菌装置200の説明を適宜参照するものとする。
【0051】
図6に示すとおり、流体殺菌装置300は、流体殺菌装置200と同様に、流入口10と、流入口10から流入した流体(気体)を排出するための排出口20とを有する筐体30を備える。
流体殺菌装置300において、筐体30は、少なくとも内壁面が円筒状の筐体本体32を有し、筐体本体32の内部には、筐体本体32の内壁面側の空間である外側空間80と、軸中心側の空間である内側空間82とを仕切る第一内筒体90Aと、外側空間80を、第一外側空間80Aと第二外側空間80Bとに仕切る第二内筒体90Bを有する。第一外側空間80Aと第二外側空間80Bとは、第二内筒体90Bの一端側で連通している。尚、第一内筒体90Aと、第二内筒体90Bとは、同軸中心となるよう配置されることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
かかる流体殺菌装置300は、筐体本体32と、第一内筒体90Aと、第二内筒体90Bとからなる三重管構造となっている。
【0052】
上記第一内筒体90Aおよび第二内筒体90Bは、いずれも紫外線透過性部材で構成されているとともに、第一内筒体90Aの内側に紫外線照射装置42(紫外線ランプ)が配置されていることから、内側空間82、第一外側空間80Aおよび第二外側空間80Bは紫外線照射領域40を構成する。
【0053】
上述のとおり、同軸中心となるよう配置された複数の内筒体90が設けられた流体殺菌装置300は、筐体30と複数の内筒体90とで三重以上の多重管構造を構成する。当該多重管構造は、第二実施形態と同様、流路規制機構をなす。つまり、本実施形態では、三重管構造によって外側空間80が二層に区画されているため、2つの内筒体を有しない態様に比べ、紫外線照射領域42を気体が通過する距離が長くなっている。これにより気体は、紫外線照射領域40に滞在する時間が長くなり、紫外線により長く晒されることとなり、結果として十分に紫外線殺菌がなされる。
【0054】
さらに気体の移動距離を長くするために、本実施形態では、流路規制機構として、三重管構造に加え、第一整流面12および第二整流面54を備える。
第一整流面12は、流入口10付近に設けられており、これによって第二外側空間80Bを流動する気体を第二内筒体90Bの周面および筐体30の周面に沿って旋回させる。
また第一外側空間80Aにおいても気体を良好に旋回させるために、第二内筒体90Bと、第一内筒体90Aとが互いに対向する側面に、複数の第二整流面54が設けられている。第二整流面54は下流側に傾斜しつつ、第一内筒体90Aの外側面と第二内筒体90Bの内側面とに沿って気体を旋回させるようガイドする面である。
【0055】
次に、流体殺菌装置300における気体の流れを、より具体的に説明する。
本実施形態では、第二内筒体90Bの下端付近に対向する位置に流入口10が設けられるとともに、第二内筒体90Bの上端において、第二外側空間80Bと第一外側空間80Aとが連通している。
筐体30の排出口20付近に設けられたファン58を作動させることによって、筐体30内部に吸引力が発生し、これによって流入口10から第二外側空間80Bに気体が流入する。このとき気体は、第一整流面12にガイドされ、筐体30(筐体本体32)の内壁面の円周方向に流入し、当該内壁面に沿って旋回しつつ、上方に移動する。第二内筒体90Bの上端に達した気体は、下方に折り返して第一外側空間80Aに移動する。
第一外側空間80Aには上述する複数の第二整流面54が設けられており、気体はこれらにガイドされて旋回しながら下方に流動し、第一内筒体90Aの下端に設けられる連通部92から上方に折り返して内側空間82に流入する。本実施形態では、第二内筒体90Bの内側であって、第一内筒体90Aの下方に、流体殺菌装置200と同様に収集部76および受容部70が設けられており、第二外側空間80Bを旋回しながら下降した気体に混雑していた、比較的比重の大きい夾雑物710はここで気体から分離され受容部70の受容空間730に収容され得る。
連通部92を通って、内側空間82に流入した気体は、排出口20に向かって上昇し排出口20から筐体30の外に排出される。
【0056】
上述する流体殺菌装置300は、第一整流面12および第二整流面54の変わりに、後述する邪魔板(第四実施形態における第一邪魔板62、第二邪魔板64参照)を、筐体本体32の内壁面と、第二内筒体90Bの外壁面とに設ける態様および/または第二内筒体90Bの内側面と、第一内筒体90Aの外側面とにもうける態様を採用することで、蛇行機構を備える流体殺菌装置に変更することもできる。
【0057】
<第四実施形態>
以下に、第四実施形態として本発明の流体殺菌装置400について
図7、
図8を用いて説明する。流体殺菌装置400は、蛇行機構を備える実施形態の一例である。
図7は、本発明の第四実施形態である流体殺菌装置400の概略断面図であり、紫外線照射装置42および基板部36のハッチングを省略している。
図8Aは、
図7に示す流体殺菌装置400のVII-VII断面図であり、
図8Bは、
図7に示す流体殺菌装置400のVIII-VIII断面図である。尚、
図7、8では紫外線ランプを保持するランプフォルダ44またはケース48の図示を省略している。
【0058】
流体殺菌装置400は、流入口10と、流入口10から流入した流体を排出するための排出口20とを有する筐体30を備える。筐体30内には、排出口20の近傍にファン58が設けられるとともに、紫外線照射装置42として長尺の紫外線ランプが配置されている。流体殺菌装置400は、上述する第一実施形態の流体殺菌装置100と同様に筐体30の内部全体が紫外線照射領域40となっており、流入口10から流入した気体は、排出口20から排出されるまでの間、紫外線照射を受ける。
【0059】
筐体30の内部には、流路規制機構である蛇行機構を構成するための、複数の邪魔板(第一邪魔板62、第二邪魔板64)が設けられている。
各邪魔板は、紫外線照射装置42として配置された長尺の紫外線ランプの長軸方向に対し交差方向に延在する向きで配置されている。より具体的には、筐体30の内壁面に固定されるとともに紫外線ランプに向けて延在する第一邪魔板62と、紫外線ランプまたは当該紫外線ランプを保持するランプフォルダ等(図示省略)に固定され筐体30の内壁面に向けて延在する第二邪魔板64が、高さ方向に交互に設けられている。
【0060】
第一邪魔板62の紫外線ランプ寄りの外縁(第一邪魔板外縁62e)と当該紫外線ランプとの間には適度な距離が確保されており、この間を気体が流動可能である。同様に、第二邪魔板64の筐体30寄りの外縁(第二邪魔板外縁64e)と、当該筐体30の内壁面との間には適度な距離が確保されており、この間を気体が流動可能である。
また第一邪魔板62および第二邪魔板64は、上面視において互いに一部が重複しており、第一邪魔板外縁62eと第二邪魔板外縁64eとの間を気体が鉛直上方に移動できないよう構成されている。かかる構成により、流入口10から排出口20に向かって気体を蛇行させつつ流動させることができる。
【0061】
邪魔板の形状および寸法は上述のとおり気体を蛇行させることができる形状であればよく、特に限定されないが、たとえば、
図8Aおよび
図8Bに示すとおり、内壁面が円筒の筐体30に用いられる邪魔板は、ドーナツ形状であることが好ましい。具体的には本実施形態では、第一邪魔板62が大径のドーナツ形状であり、第二邪魔板64が小径のドーナツ形状である。大径のドーナツ形状である第一邪魔板62は、その外周が筐体30の内壁にぴったりと沿って固定され、一方、小径のドーナツ形状である第二邪魔板64は、その内周が、紫外線ランプまたは当該紫外線ランプを保持するランプフォルダ等(図示省略)に固定される。
【0062】
尚、本実施形態では、筐体30の内周面の周方向に連続するドーナツ形状の邪魔板が用いられているが、図示省略する他の態様として、当該邪魔板は、周方向において不連続的に設けられた邪魔板であってもよい。
また図示省略するが、蛇行機構が採用される場合、筐体30は断面四辺形の筒状体であってもよい。この場合、たとえば、四辺形の筐体30の内周面にそって上面ロの字状の邪魔板や、単なる四辺形の邪魔板を適宜配置することもできる。
【0063】
上述する邪魔板が設けられた流体殺菌装置400では、
図7に示すとおり、流入口10から流入した気体は、第一邪魔板62および第二邪魔板64の面に沿って紙面左右方向に蛇行しながら排出口20まで流動する。この結果、紫外線照射領域40において、気体は、流入口10から排出口20までの最短距離L(
図1参照)よりも長い距離を移動することになり、紫外線が照射される時間も長くなる。そのため、気体は流体殺菌装置400によって十分に紫外線殺菌されうる。
【0064】
上述において第一実施形態から第四実施形態を用いて、本発明の流体殺菌装置を説明した。しかし本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば第一実施形態から第四実施形態それぞれの構成の一部を他の実施形態に適用することができる。また、流体として気体を例に本発明を説明したが、本発明の殺菌の対象は気体以外の流体を含む。たとえば水などの液体を本発明の流体殺菌装置で殺菌する場合には、電気系統に防水加工を施すとともに、装置の適宜の箇所にガラスコーティングや塗装などの防錆処理を施すとよく、また液体が接触する面は予め樹脂などの錆びにくい部材で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の流体殺菌装置は、気体や液体などの流体を紫外線により殺菌することが可能であり、種々の技術分野に適用することができる。たとえば本発明の流体殺菌装置は、流路規制機構を有し筐体内の流体の移動距離を多く確保し、これによって紫外線照射時間を長く確保することができコンパクト化が可能である。そのため設置スペースに限りのある家庭用の空気清浄機などとして好適である。また掃除機において吸引され排出される空気の流路の一部に本発明の流体殺菌装置を配置することで、掃除をしながら部屋の空気の殺菌を行うこともできる。
また、筐体を大きくして、大量の流体を殺菌処理することも可能であり、工場や病院などの業務用空気清浄機としても有効に利用することができる。
また第二実施形態において、筐体30の内壁面に沿って設けられた鏡面部60の例を示したが、鏡面部はこれに限定されず、たとえば、整流面や邪魔板の面に鏡面部を設ける態様を本発明は包含する。この場合、筐体の内側面に沿って設けられた鏡面部と、整流面等に設けられた鏡面部は、少なくともいずれか一方に設けられることが好ましく、両方にも受けられることがより好ましい。
さらに、本発明の流体殺菌装置は、筐体内部の電気系統の防水を行うことによって、液体の紫外線殺菌も行うことができる。たとえば、温泉などにおいて湯水を循環する循環路の途中に本発明の装置を組み込むことで、当該お湯の殺菌を行うことが可能であり、温泉の衛生管理にも利用しうる。また、水槽の水を順次、本発明の装置に循環させることによって当該水の殺菌を行うこともできる。液体の殺菌に本発明の流体殺菌装置を用いる場合には、たとえば上述する
図1におけるファン58の変わりにいわゆるターボ型ポンプを設置してもよいし、ターボ型ポンプの代替または組み合わせとして、他のポンプを設置してもよい。
【0066】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)外部から流体を取り込むための流入口と、前記流入口から流入した流体を排出するための排出口とを有する筐体を備え、
前記筐体内には、紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置より照射された紫外線が到達可能であるとともに、前記流入口から流入した流体が前記排出口に向かって移動可能な紫外線照射領域とが設けられており、
前記紫外線照射領域において、前記流体が前記排出口に向かう最短距離よりも前記流体の移動距離を長くするために当該流体の流路を規制する流路規制機構を有することを特徴とする流体殺菌装置。
(2)前記流路規制機構が、
前記流入口から流入した流体を、前記紫外線照射領域において旋回させながら流動させる旋回機構または前記紫外線照射領域において蛇行させながら流動させる蛇行機構である上記(1)に記載の流体殺菌装置。
(3)前記旋回機構が、前記流体を旋回方向に誘導する整流面を有するとともに、
前記紫外線照射装置として設けられた長尺の紫外線ランプが、前記紫外線照射領域を旋回しながら移動する前記流体の旋回流の中心と略平行に配置されている上記(2)に記載の流体殺菌装置。
(4)前記流路規制機構が、前記旋回機構であり、
旋回する前記流体にかかる遠心力によって当該流体から分離された夾雑物を受容する受容部を備える上記(2)または(3)に記載の流体殺菌装置。
(5)前記筐体は、少なくとも内壁面が円筒状の筐体本体を有し、
前記筐体本体の内部には、前記筐体本体の内壁面側の空間である外側空間と、軸中心側の空間である内側空間とを仕切る内筒体を有し、
前記内筒体の一端側には、前記外側空間と、前記内側空間とを連通させる連通部が設けられ、
前記流入口から流入した前記流体を、前記外側空間において旋回または蛇行させながら前記連通部に向かって移動させ前記内筒体に流入させ、当該内筒体を介して前記排出口から排出させる上記(2)から(4)のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
(6)前記内筒体が紫外線透過性部材により構成されており、
前記紫外線照射装置が、当該内筒体の内部に配置されている上記(5)に記載の流体殺菌装置。
(7)前記蛇行機構が、前記紫外線照射装置として設けられた長尺の紫外線ランプの長軸方向に対し交差方向に延在する邪魔板を有し、
前記邪魔板が、前記軸方向に対し複数設けられており、
前記流体が、前記邪魔板に沿って前記軸方向に対し交差方向に蛇行する上記(2)に記載の流体殺菌装置。
【符号の説明】
【0067】
10・・・流入口
12・・・第一整流面
20・・・排出口
30・・・筐体
32・・・筐体本体
36・・・基板部
38・・・天井部
40・・・紫外線照射領域
42・・・紫外線照射装置
42a、42b・・・紫外線ランプ
43・・・仕切り壁
44・・・ランプフォルダ
45・・・柱部
46・・・端部取付部
47・・・上端支持部
48・・・ケース
49・・・筒状ケース本体
52、53、54・・・第二整流面
56・・・旋回流
58、59・・・ファン
60・・・鏡面部
62・・・第一邪魔板
62e・・・第一邪魔板外縁
64・・・第二邪魔板
64e・・・第二邪魔板外縁
70・・・受容部
72・・・傘部
74・・・軸部
76・・・収集部
80・・・外側空間
80A・・・第一外側空間
80B・・・第二外側空間
82・・・内側空間
90・・・内筒体
90A・・・第一内筒体
90B・・・第二内筒体
92・・・連通部
100、110、200、300、400・・・流体殺菌装置
710・・・夾雑物
720・・・落下口
730・・・受容空間