(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063608
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B66C 11/16 20060101AFI20220415BHJP
B66C 13/06 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B66C11/16
B66C13/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171951
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504233351
【氏名又は名称】株式会社マルエム商会
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】島 秀太
【テーマコード(参考)】
3F203
【Fターム(参考)】
3F203BA05
3F203EA11
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、移動台車の重量を軽くでき、被搬送物の搬送を効率よく行うことが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】間隔を有して対向配置された第1、第2の支持部11、12に掛け渡されたガイド13と、着脱手段14に保持された被搬送物15を吊り下げた状態で、ガイド13に沿って走行可能な移動台車16とを備える搬送装置10であり、第1の支持部11に設けられた第1、第2の回転ドラム22、23と、第2の支持部12に設けられた第1のプーリ24と、第1の回転ドラム22に巻回され、移動台車16に連結される第1のワイヤ28、及び、第2の回転ドラム23に巻回され、第1のプーリ24を介して移動台車16に連結される第2のワイヤ29とを有し、第1、第2の回転ドラム22、23による第1、第2のワイヤ28、29の巻取り巻解きを同期して行うことにより、移動台車16をガイド13に沿って走行可能にした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を有して対向配置された第1、第2の支持部に掛け渡されたガイドワイヤ又はガイドレールからなるガイドと、着脱手段に保持された被搬送物を吊り下げた状態で、前記ガイドに沿って走行可能な移動台車とを備える搬送装置において、
前記第1の支持部に設けられた第1、第2の回転ドラムと、
前記第2の支持部に設けられた第1のプーリと、
前記第1の回転ドラムに巻回され、前記移動台車に連結される第1のワイヤ、及び、前記第2の回転ドラムに巻回され、前記第1のプーリを介して前記移動台車に連結される第2のワイヤとを有し、
前記第1、第2の回転ドラムによる前記第1、第2のワイヤの巻取り巻解きを同期して行うことにより、前記移動台車を前記ガイドに沿って走行可能にしたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、前記第1の回転ドラムの回転軸Aと前記第2の回転ドラムの回転軸Bは、ベルトによって連結され、前記第1の回転ドラム又は前記第2の回転ドラムを回転させる第1の駆動モータが設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の搬送装置において、前記第1、第2の回転ドラムはそれぞれ、その軸心方向に移動可能に設けられ、前記第1、第2の回転ドラムの外周面にはそれぞれ、該第1、第2の回転ドラムに巻回される前記第1、第2のワイヤの位置決めを行う溝が形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送装置において、更に、前記着脱手段を前記移動台車に対して昇降させる昇降機構が設けられ、該昇降機構は、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部のいずれか一方に設けられた、第2の駆動モータで回転する第3の回転ドラムと、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部のいずれか他方に設けられた第2のプーリと、
前記移動台車に、平面視して前記ガイドの長手方向とは直交する方向に軸心を合わせて設けられた第4の回転ドラムと、
前記第4の回転ドラムに少なくとも1回巻回され、前記第3の回転ドラムと前記第2のプーリに掛け渡された無端状の第3のワイヤと、
前記移動台車に設けられ、前記第4の回転ドラムの回転によって回転する第5の回転ドラムと、
前記第5の回転ドラムに巻回され、前記着脱手段に連結される第4のワイヤとを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記第1、第2のワイヤは、それぞれワイヤ本体、電流線、及び、信号線で構成され、前記第1、第2の回転ドラムにはスリップリングが設けられ、外部に設置された電源から前記移動台車への前記電流線による給電と、外部に設置された制御手段と前記移動台車との前記信号線による信号の送受信が、それぞれ行われることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項4記載の搬送装置において、前記第1、第2のワイヤは、それぞれワイヤ本体、電流線、及び、信号線で構成され、前記第1、第2の回転ドラムにはスリップリングが設けられ、外部に設置された電源から前記移動台車への前記電流線による給電と、外部に設置された制御手段と前記移動台車との前記信号線による信号の送受信が、それぞれ行われ、
前記着脱手段には、その傾きを検知する傾き検知センサが設けられ、
前記第5の回転ドラムは、前記ガイドの長手方向に間隔を有して2台配置され、該各第5の回転ドラムに巻回された前記第4のワイヤが前記着脱手段に連結され、前記着脱手段と一方の前記第4のワイヤとの連結部分に、前記傾き検知センサからの情報に基づいて前記着脱手段の傾きを修正する傾き修正手段が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の搬送装置において、前記移動台車には、前記ガイドの状態を監視する撮像手段が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記着脱手段の床面との距離を検知する第1の距離測定センサ、前記着脱手段と前記移動台車との距離を検知する第2の距離測定センサ、及び、前記移動台車の停止位置を検知する停止位置検知センサのいずれか1又は2以上が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建屋内の上方空間を利用して資材等(被搬送物)の搬送を効率よく行うことが可能な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、建屋内の資材等(被搬送物)の搬送には、建屋内の上方空間を利用した搬送装置が使用されている。
例えば、特許文献1には、間隔を有して平行に配置された2条の走行レールに、ガータを介して設置された横行レール(ガイド)と、この横行レール上を横行するクラブ(移動台車)と、このクラブに設置された巻上機と、この巻上機のワイヤにより吊下げられた被搬送物を吊持するトング(着脱手段)とを有するコイル搬送装置が開示されている。なお、クラブには、横行レール上を横行するための車輪を駆動させる横行モータと、巻上機を駆動させる巻上モータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クラブには横行モータ(更には、巻上モータ)が設けられているため、その重量が重くなり、例えば、横行レールが撓み易くなって、トングによる被搬送物の着脱がしずらくなる。特に、横行レールに発生する撓みは、横行レールの長さが長くなるに伴い大きくなる。
また、例えば、横行レールの代わりにワイヤ(ガイド)を使用する場合、クラブの重量を軽くしなければ、ワイヤに発生する撓みが大きくなる。
更に、クラブに様々なセンサを設ける場合は、これを動作させるための駆動源等も必要になり、クラブの重量が更に重くなる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、移動台車の重量を軽くでき、被搬送物の搬送を効率よく行うことが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る搬送装置は、間隔を有して対向配置された第1、第2の支持部に掛け渡されたガイドワイヤ又はガイドレールからなるガイドと、着脱手段に保持された被搬送物を吊り下げた状態で、前記ガイドに沿って走行可能な移動台車とを備える搬送装置において、
前記第1の支持部に設けられた第1、第2の回転ドラムと、
前記第2の支持部に設けられた第1のプーリと、
前記第1の回転ドラムに巻回され、前記移動台車に連結される第1のワイヤ、及び、前記第2の回転ドラムに巻回され、前記第1のプーリを介して前記移動台車に連結される第2のワイヤとを有し、
前記第1、第2の回転ドラムによる前記第1、第2のワイヤの巻取り巻解きを同期して行うことにより、前記移動台車を前記ガイドに沿って走行可能にした。
【0007】
本発明に係る搬送装置において、前記第1の回転ドラムの回転軸Aと前記第2の回転ドラムの回転軸Bは、ベルトによって連結され、前記第1の回転ドラム又は前記第2の回転ドラムを回転させる第1の駆動モータが設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る搬送装置において、前記第1、第2の回転ドラムはそれぞれ、その軸心方向に移動可能に設けられ、前記第1、第2の回転ドラムの外周面にはそれぞれ、該第1、第2の回転ドラムに巻回される前記第1、第2のワイヤの位置決めを行う溝が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る搬送装置において、更に、前記着脱手段を前記移動台車に対して昇降させる昇降機構が設けられ、該昇降機構は、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部のいずれか一方に設けられた、第2の駆動モータで回転する第3の回転ドラムと、
前記第1の支持部及び前記第2の支持部のいずれか他方に設けられた第2のプーリと、
前記移動台車に、平面視して前記ガイドの長手方向とは直交する方向に軸心を合わせて設けられた第4の回転ドラムと、
前記第4の回転ドラムに少なくとも1回巻回され、前記第3の回転ドラムと前記第2のプーリに掛け渡された無端状の第3のワイヤと、
前記移動台車に設けられ、前記第4の回転ドラムの回転によって回転する第5の回転ドラムと、
前記第5の回転ドラムに巻回され、前記着脱手段に連結される第4のワイヤとを有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る搬送装置において、前記第1、第2のワイヤは、それぞれワイヤ本体、電流線、及び、信号線で構成され、前記第1、第2の回転ドラムにはスリップリングが設けられ、外部に設置された電源から前記移動台車への前記電流線による給電と、外部に設置された制御手段と前記移動台車との前記信号線による信号の送受信が、それぞれ行われることが好ましい。
【0011】
本発明に係る搬送装置において、前記第1、第2のワイヤは、それぞれワイヤ本体、電流線、及び、信号線で構成され、前記第1、第2の回転ドラムにはスリップリングが設けられ、外部に設置された電源から前記移動台車への前記電流線による給電と、外部に設置された制御手段と前記移動台車との前記信号線による信号の送受信が、それぞれ行われ、
前記着脱手段には、その傾きを検知する傾き検知センサが設けられ、
前記第5の回転ドラムは、前記ガイドの長手方向に間隔を有して2台配置され、該各第5の回転ドラムに巻回された前記第4のワイヤが前記着脱手段に連結され、前記着脱手段と一方の前記第4のワイヤとの連結部分に、前記傾き検知センサからの情報に基づいて前記着脱手段の傾きを修正する傾き修正手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
ここで、前記移動台車には、前記ガイドの状態を監視する撮像手段を設けることができる。
また、前記着脱手段の床面との距離を検知する第1の距離測定センサ、前記着脱手段と前記移動台車との距離を検知する第2の距離測定センサ、及び、前記移動台車の停止位置を検知する停止位置検知センサのいずれか1又は2以上を設けることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る搬送装置は、第1の支持部に設けられた第1の回転ドラムに巻回され、移動台車に連結される第1のワイヤと、第1の支持部に設けられた第2の回転ドラムに巻回され、第2の支持部に設けられた第1のプーリを介して移動台車に連結される第2のワイヤとを有しているので、第1、第2の回転ドラムによる第1、第2のワイヤの巻取り巻解きを同期して行うことにより、移動台車をガイドに沿って走行可能にできる。
従って、移動台車を走行させる駆動源を、移動台車に設ける必要がなくなるため、移動台車の重量を軽くでき、被搬送物の搬送を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る搬送装置の使用状態を示す説明図である。
【
図3】同搬送装置の第2の回転ドラムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る搬送装置10は、間隔を有して対向配置された第1、第2の支持部11、12に掛け渡されたガイド13と、荷吊下げ枠(荷吊下げクランプ:着脱手段の一例)14に保持された荷物(被搬送物の一例)15を吊り下げた状態で、ガイド13に沿って走行可能な移動台車(ゴンドラ)16とを備える装置である。
以下、詳しく説明する。
【0016】
第1、第2の支持部11、12は、例えば、荷物15が収容された建屋(図示しない)内に立設された支持台(支柱等)であるが、特に限定されるものではなく、例えば、建屋の内側壁の上部位置に、内側壁に沿って設置された梁等でもよい。
ガイド13は、平行に配置された2本のガイドワイヤ(荷重受けワイヤ)13aで構成されているが、1本又は3本(複数本)等でもよく、また、ガイドワイヤ13aの代わりに1本又は2本(複数本)のガイドレールを使用することもできる。このガイド13の長さ(第1の支持部11と第2の支持部12との間隔に相当)は、例えば、10m~3000m(3km)(好ましくは、下限が100m、上限が2500m(2.5km))程度である。なお、ガイド13を長くする場合は、ガイドワイヤを使用することが好ましい。
【0017】
荷吊下げ枠14は、直方体状の荷物15を、その両側から把持して保持するものであるが、荷物15を保持できれば、その構成は特に限定されるものではなく、荷物15の種類(形状や種類)等に応じて種々変更可能である。
例えば、荷物が磁性を有するものであれば、着脱手段に磁石等を使用することができ、また、荷物が引っ掛け可能な構成を備えていれば、着脱手段にフック(係止部)等を使用することもできる。
なお、着脱手段で保持される荷物は、荷物そのもの(荷物本体)でもよく、また、容器や袋等に収容された荷物でもよい。
【0018】
移動台車16は、内部に空間部を備えた直方体状(立方体状でもよい)の箱体17と、この箱体17の上部四隅に立設された吊持部18を有している。各吊持部18の上端部には、断面凹状のフォーク部19が取付け固定され、このフォーク部19内に軸を介してガイド車輪20が回転可能に設けられている。このフォーク部19内に形成されたガイド車輪20との空間にはガイドワイヤ13aが挿通され、このガイドワイヤ13aがガイド車輪20の外周面に形成された溝21に配置される(ガイドワイヤ13a上にガイド車輪20が位置する)。
このように、移動台車16は、ガイド車輪20によってガイドワイヤ13a(ガイド13)に引っ掛けられ、ガイドワイヤ13aに吊持された状態で走行可能となっている。
【0019】
第1の支持部11の上部には、第1、第2の回転ドラム22、23が設けられ、第2の支持部12の上部には、第1のプーリ24が設けられている。
第1、第2の回転ドラム22、23は近接配置され、その軸心が平行となるように、かつ、平面視して、その軸心がガイド13の長手方向と直交するように、第1の支持部11に取付け台25、26を介してそれぞれ取付け固定され、第1のプーリ24は、その軸心を鉛直方向に向けて、第2の支持部12に取付け台27を介して取付け固定されている。
第1の回転ドラム22には第1のワイヤ28の基側が巻回され、第1のワイヤ28の巻解き方向端部が移動台車16上面の第1の支持部11側に連結され、第2の回転ドラム23には第2のワイヤ29の基側が巻回され、第2のワイヤ29の巻解き方向端部が第1のプーリ24を介して移動台車16上面の第2の支持部12側に連結されている。
【0020】
第1の回転ドラム22の回転軸(回転軸A)30と第2の回転ドラム23の回転軸(回転軸B)31は、つなぎベルト(ベルト)32によって連結され、第2の回転ドラム23に、駆動サーボモータ(第1の駆動モータの一例)33が取付けられている。これにより、駆動サーボモータ33で第2の回転ドラム23を回転させることによって、第1の回転ドラム22と第2の回転ドラム23とを同期させて、同一方向に回転させることができる。
なお、第1のワイヤ28は第1の回転ドラム22の下側から、第2のワイヤ29は第2の回転ドラム23の上側から、それぞれ巻取り巻解き可能に、第1、第2の回転ドラム22、23に巻回されている。このため、第2の回転ドラム23から第2のワイヤ29が巻解かれる場合は、第1の回転ドラム22が第1のワイヤ28を巻取り、第2の回転ドラム23が第2のワイヤ29を巻取る場合は、第1の回転ドラム22から第1のワイヤ28が巻解かれる。
【0021】
このように、第1、第2の回転ドラム22、23による第1、第2のワイヤ28、29の巻取り巻解きを同期して行うことにより、第1の支持部11と第2の支持部12との間で、移動台車16がガイド13に沿って往復走行可能になる。これにより、移動台車16を走行させるための駆動源等を、移動台車16に設ける必要がなくなり、移動台車16の軽量化が図れる。
つなぎベルト32で連結した第1、第2の回転ドラム22、23を用いて、移動台車16を牽引する第1、第2のワイヤ28、29の巻取り巻解きを行うことにより、移動台車16をスムーズに牽引できる。また、第1、第2のワイヤ28、29は第1、第2の回転ドラム22、23にそれぞれ巻回されるため、1つの回転ドラムに巻回するワイヤの長さを短くできる。
【0022】
第2の回転ドラム23は、
図3に示すように、ドラム本体34を有し、その軸心方向一側(
図3では右側)に駆動サーボモータ33が、その軸心方向他側(
図3では左側)に雄ねじ部35が、それぞれ取付けられている。なお、駆動サーボモータ33と雄ねじ部35は、その軸心位置をドラム本体34の軸心に合わせて、取付け台26に取付け固定されている。
駆動サーボモータ33の出力軸36には、外観形状が円柱状で、出力軸36とは反対側に開口する空間部を内部に有する回転体37が軸心を合わせて取付け固定され、この回転体37がドラム本体34の一側に形成された開口部38に嵌挿されている。ここで、ドラム本体34はキー(すべりキー)39により、回転体37に対して周方向への位置決めはなされるが、回転体37の軸心方向には移動可能(スライド可能)になっている。また、ドラム本体34の他側には、雄ねじ部35に螺合する雌ねじ部40が形成され、雌ねじ部40に螺入された雄ねじ部35の先端部は回転体37の空間部に挿入される。
【0023】
また、ドラム本体34の外周面には、ドラム本体34に巻回される第2のワイヤ29の位置決めを行う溝41が形成されている。この溝41は、ドラム本体の軸心方向に複数独立して形成された環状の溝や、ドラム本体の軸心方向に沿って螺旋状に連続して形成された溝でもよい。
これにより、駆動サーボモータ33でドラム本体34を回転させた場合、取付け台26に設けられた雄ねじ部35と、ドラム本体34に形成された雌ねじ部40によって、ドラム本体34は、その軸心方向に移動可能になり、また、溝41によって、ドラム本体34に対する第2のワイヤ29の位置ずれが防止可能になるので、第1のプーリ24に対する第2のワイヤ29の巻取り巻解き位置を略一定(多少のずれがあってもよい)にできる。なお、第1の回転ドラム22も、駆動サーボモータ33が設けられていないこと以外、上記した第2の回転ドラム23と略同様であるため、移動台車16に対する第1のワイヤ28の巻取り巻解き位置を略一定にできる。
【0024】
第2のワイヤ29は、
図2に示すように、ワイヤ本体42、電流線(給電線)43、及び、信号線44で構成されている。ワイヤ本体42は、複数の鋼線45を束ねて構成され、第2のワイヤ29は、ワイヤ本体42と電流線43と信号線44とが束ねられた状態で、例えば、樹脂等で被覆されて一体となっている(第1のワイヤ28も同様)。また、第1、第2の回転ドラム22、23にはスリップリング(図示しない)が設けられている。
ここで、第1の回転ドラム22側を陽極(+極)とし、第2の回転ドラム23側を陰極(-極)として、外部(例えば、第1の支持部11等)に配置された電源46に接続することで、移動台車16への電流線43による給電を行うことができる。また、外部に配置された制御手段(例えば、コンピュータ等)と移動台車12との信号線44による信号の送受信を行うこともできる。なお、制御手段は、駆動サーボモータ33の制御(第2の回転ドラム23の正転、逆転、回転速度調整、停止)や電源46の制御(給電と停止)も行う。
【0025】
移動台車16には、ガイド13(ガイドワイヤ13a)の状態(例えば、損傷等)を監視する監視カメラ(CCDカメラ等:撮像手段の一例)47が設けられている。この監視カメラ47は、移動台車16の上部に、その撮像方向を上方に向けて設けられているが、移動台車16の側部や下部、又は、内部に設けることもでき、また、例えば、監視する対象に応じて、その撮像方向を、移動台車16の側方や下方に向けることもできる。更に、監視カメラは複数設けることもできる。
監視カメラ47には、上記した電流線43と信号線44が接続され、監視カメラ47の作動と、撮像した画像の制御手段への送信が可能となる。これにより、監視カメラ47を作動させるための駆動源等を、移動台車16に設ける必要がなくなる。
【0026】
移動台車16には、
図1、
図2に示すように、荷吊下げ枠14を移動台車16に対して昇降させる昇降機構48が設けられている。
昇降機構48は、第1の支持部11の上部に設けられた第3の回転ドラム49と、第2の支持部12の上部に設けられた第2のプーリ50とを有し、第3の回転ドラム49に第3の回転ドラム49を回転する駆動サーボモータ(第2の駆動モータの一例)51が取付けられている(第1の支持部11に第2のプーリ50を、第2の支持部12に第3の回転ドラム49と駆動サーボモータ51を、それぞれ設けてもよい)。なお、第3の回転ドラム49は、平面視して、その軸心がガイド13の長手方向とは直交するように、第1の支持部11に取付け台52を介して取付け固定され、第2のプーリ50は、その軸心を鉛直方向に向けて、第2の支持部12に取付け台53を介して取付け固定されている。また、駆動サーボモータ51の制御(第3の回転ドラム49の正転、逆転、回転速度調整、停止)は、前記した制御手段により行われる。
【0027】
移動台車16には、昇降機構48を構成する1台のウォーム駆動ドラム(第4の回転ドラムの一例)54と2台の荷巻上下用ドラム(第5の回転ドラムの一例)55が設けられている。
ウォーム駆動ドラム54には、ウォーム駆動ドラム54の軸心と軸心を合わせてウォーム56が設けられ、平面視して、ウォーム56(ウォーム駆動ドラム54)の軸心がガイド13の長手方向とは直交するように、ウォーム駆動ドラム54がウォーム56を介して移動台車16に回転可能に設けられている。なお、ウォーム駆動ドラム54は移動台車16の外部に、ウォーム56は移動台車16の内部に、それぞれ配置されている。
2台の荷巻上げ用ドラム55は、ガイド13の長手方向に間隔を有して配置され、その間に、荷巻上げ用ドラム55の軸心に軸心を合わせてウォーム歯車57が設けられ、平面視して、ウォーム歯車57の軸心がウォーム56の軸心とは直交するように、移動台車16に回転可能に設けられている。このウォーム歯車57は、ウォーム56に噛み合っているため、ウォーム56の回転によってウォーム歯車57が回転し、2台の荷巻上下用ドラム55が同時に回転する。
【0028】
上記した第3の回転ドラム49と第2のプーリ50との間には、無端状(環状)の第3のワイヤ58が掛け渡され、この第3のワイヤ58の途中位置で、第3のワイヤ58がウォーム駆動ドラム54に1回(2回以上でもよい)巻回されている。
また、2台の荷巻上げ用ドラム55にはそれぞれ、荷吊下げ枠14に連結される荷巻上下用ワイヤ(第4のワイヤの一例)59が巻回されている。なお、2台の荷巻上げ用ドラム55に対する各荷巻上下用ワイヤ59の巻取り巻解き位置は、荷巻上げ用ドラム55を軸心方向から視て同じ側であるため、2台の荷巻上げ用ドラム55が同一方向に回転することで、荷吊下げ枠14の水平状態を維持しながら昇降させることができる。
【0029】
使用にあっては、移動台車16の停止中に第3の回転ドラム49を回転させ、第3のワイヤ58を介してウォーム駆動ドラム54を回転させて、ウォーム56とウォーム歯車57を介して荷巻上下用ドラム55を回転させることで、荷吊下げ枠14を昇降できる。
また、移動台車16の移動は、第2の回転ドラム23を回転させて行うため、ガイドワイヤ13aの送り速度と第3のワイヤ58の送り速度とが同じとなるように、回転ドラム49を回転せる。これにより、移動台車16の移動時には、ウォーム駆動ドラム54の外周に巻回された第3のワイヤ58が、ウォーム駆動ドラム54に対して移動しないため(ウォーム駆動ドラム54を回転させないため)、荷吊下げ枠14の昇降を停止できる。
従って、荷吊下げ枠14を昇降させるための駆動源等を、移動台車16に設ける必要がなくなり、移動台車16の軽量化が図れる。
【0030】
前記したように、ガイド13はガイドワイヤ13aで構成されているため、ガイドワイヤ13aは移動台車16等の重量によって撓み易く、移動台車16の走行方向で荷吊下げ枠14に傾きが発生し易くなる。
このため、荷吊下げ枠14に、その傾きを検知する傾き検知センサ(加速度計を用いたジャイロセンサ等:図示しない)を設け、荷吊下げ枠14と一方の荷巻上下用ワイヤ59との連結部分に、傾き検知センサからの情報に基づいて荷吊下げ枠14の傾きを修正する傾き修正手段60を設けている。なお、傾き検知センサと制御手段との信号の送受信は、前記した信号線44から荷吊下げ枠14にかけて設けられられた信号線(例えば、荷巻上下用ワイヤ59内の信号線等)を介して行うことができるが、無線でもよい。
【0031】
傾き修正手段60は、
図4に示すように、荷吊下げ枠14に、その軸心を鉛直方向に向けて取付け固定されたサーボモータ61と、サーボモータ61の出力軸に設けられた雄ねじ部62と、この雄ねじ部62に螺合するナット部63とを有し、このナット部63に、荷巻上下用ワイヤ59の巻解き方向先端部が取付け固定されている。なお、サーボモータ61への給電は、前記した電流線43から荷吊下げ枠14にかけて設けられた電流線(例えば、荷巻上下用ワイヤ59内の電流線等)を介して行うことができる。
これにより、傾き検知センサからの情報で、荷吊下げ枠14が傾いていると検知された場合は、サーボモータ61を作動し雄ねじ部62を回転させて、荷吊下げ枠14と荷巻上下用ワイヤ59の先端位置との距離を調整する。なお、サーボモータ61の制御(正転、逆転、回転速度調整、停止)は、前記した制御手段により行われる。
【0032】
荷吊下げ枠14には、床面との距離を検知する第1の距離測定センサ(超音波式や光学式等の距離センサ)64と、移動台車16との距離を検知する第2の距離測定センサ(超音波式や光学式等の距離センサ)65が、それぞれ設けられている。なお、第1の距離測定センサ64と第2の距離測定センサ65は、荷吊下げ枠14の側方に突出した取付け部66の下面に下方へ突出させた状態で、上面に上方に突出させた状態で、それぞれ取付けられている。
これにより、荷吊下げ枠14の床面に対する距離を測定でき、更には、荷吊下げ枠14の移動台車16に対する距離を測定できるため、荷吊下げ枠14の昇降動作において、その停止位置等の調整を行うことができる。
【0033】
搬送装置10には、
図2に示すように、移動台車16の停止位置を検知する停止位置検知センサ67が設けられている。
停止位置検知センサ67は、床面上に取付け固定されたRFタグ68と、荷吊下げ枠14に設けられ、RFタグ68と無線で通信してその情報を読み出すRFタグリーダ69とを有している。このRFタグ68とは、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ、電子タグ、ICタグ、無線タグとも称されるものである。なお、RFタグ68は、移動台車16の停止位置であって、移動台車16の走行方向に間隔を有して3個設置されているが、1個でもよく、また、2個や4個以上の複数個でもよい。
【0034】
使用にあっては、移動する移動台車16の停止に際し、荷吊下げ枠14に取付けられたRFタグリーダ69で3個のRFタグ68を検知し、停止位置のズレ量(誤差)を検出することで、そのズレ量が修正されるように移動台車16を移動させる。
なお、上記した第1の距離測定センサ64、第2の距離測定センサ65、及び、停止位置検知センサ67(RFタグリーダ69)と制御手段との信号の送受信は、前記した信号線44から荷吊下げ枠14にかけて設けられた信号線(例えば、荷巻上下用ワイヤ59内の信号線等)を介して行うことができるが、無線でもよい。
また、上記した第1の距離測定センサ64、第2の距離測定センサ65、及び、停止位置検知センサ67は、必ずしも全て設ける必要はなく、必要に応じて、いずれか1又は2を設けてもよい。
【0035】
なお、上記したガイド13、第1~第3の回転ドラム22、23、49が設けられた第1の支持部11と、第1、第2のプーリ24、50が設けられた第2の支持部12は、それぞれ横送りサーボモータ70により、平面視してガイド13の長手方向とは直交する方向に移動可能になっているが、移動しなくてもよい。
以上に示した搬送装置10の運転は、予め設定したプログラムが入力された制御手段により、自動で行う(自動運転する)ことができるが、例えば、作業者が制御手段を介して行ってもよい。
【0036】
続いて、本発明の一実施の形態に係る搬送装置10を用いた荷物15の搬送方法について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
まず、移動台車16(荷吊下げ枠14)が荷物15の上方に位置するように、駆動サーボモータ33を駆動し、第2の回転ドラム23を回転させて(第1の回転ドラム22も回転させて)、第2のワイヤ29の巻解きと第1のワイヤ28の巻取り、又は、第2のワイヤ29の巻取りと第1のワイヤ28の巻解きを行う。このとき、第3のワイヤ58の送り速度が、第1、第2のワイヤ28、29の送り速度と同じとなるように、駆動サーボモータ51を駆動し、第3の回転ドラム49を回転させる。なお、移動台車16の停止は、前記した停止位置検知センサ67から得られた情報により行われる。
【0037】
次に、駆動サーボモータ51を駆動し、第3の回転ドラム49を回転させて、荷吊下げ枠14が荷物15を把持できる位置まで降ろす。
このとき、第1、第2の距離測定センサ64、65により、荷吊下げ枠14の床面に対する距離と、荷吊下げ枠14の移動台車16に対する距離を、それぞれ測定して、荷吊下げ枠14の停止位置の調整を行う。また、傾き修正手段60により、荷吊下げ枠14の傾きを修正する。
そして、荷吊下げ枠14で荷物15を把持する。
【0038】
荷吊下げ枠14で荷物15を把持した後は、駆動サーボモータ51を駆動し、第3の回転ドラム49を回転させて、荷吊下げ枠14を予め設定した高さ位置まで上昇させる。
そして、駆動サーボモータ33を駆動し、第2の回転ドラム23を回転させ、第2のワイヤ29の巻解きと第1のワイヤ28の巻取り、又は、第2のワイヤ29の巻取りと第1のワイヤ28の巻解きを行い、荷物15を降ろす位置まで、移動台車16(荷吊下げ枠14)を移動させて、上記した方法と同様の方法により、荷物15を降ろす。
その後は、以上に示した方法を繰返し行うことで、荷物15を搬送できる。
【0039】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の搬送装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、第1、第2の回転ドラムの回転軸A、Bをベルトで連結し、第2の回転ドラムに駆動モータを設けた場合について説明したが、第1の回転ドラムに駆動モータを設けてもよい。また、第1、第2の回転ドラムにそれぞれ駆動モータを設けてもよく、この場合、第1、第2の回転ドラムの回転軸A、Bをベルトで連結する必要はなく、2つの駆動モータの駆動を同期させる。
【0040】
また、前記実施の形態においては、移動台車を吊持部を介してガイドに吊持した状態で走行可能にしたが、例えば、吊持部を設けることなく、移動台車内にガイドが配置された構成(例えば、移動台車内にガイド車輪を設けた構成)にすることもでき、また、ガイドがガイドレールであれば、移動台車をガイドレール上に配置して走行可能にすることもできる。
そして、前記実施の形態においては、着脱手段を、第1の支持部(第3の回転ドラム)に設けられた第2の駆動モータにより、移動台車に対して昇降させた場合について説明したが、移動台車に駆動モータを設けて、着脱手段を昇降させてもよい。
更に、前記実施の形態において、第2の回転ドラムと第1のプーリとの間にテンションプーリを設けて、また、第3の回転ドラムと第2のプーリとの間にテンションプーリを設けて、ワイヤ(第1~第3のワイヤ)の緊張状態を維持させることもできる。
【符号の説明】
【0041】
10:搬送装置、11:第1の支持部、12:第2の支持部、13:ガイド、13a:ガイドワイヤ、14:荷吊下げ枠(着脱手段)、15:荷物(被搬送物)、16:移動台車、17:箱体、18:吊持部、19:フォーク部、20:ガイド車輪、21:溝、22:第1の回転ドラム、23:第2の回転ドラム、24:第1のプーリ、25~27:取付け台、28:第1のワイヤ、29:第2のワイヤ、30:回転軸(回転軸A)、31:回転軸(回転軸B)、32:つなぎベルト、33:駆動サーボモータ(第1の駆動モータ)、34:ドラム本体、35:雄ねじ部、36:出力軸、37:回転体、38:開口部、39:キー、40:雌ねじ部、41:溝、42:ワイヤ本体、43:電流線、44:信号線、45:鋼線、46:電源、47:監視カメラ(撮像手段)、48:昇降機構、49:第3の回転ドラム、50:第2のプーリ、51:駆動サーボモータ(第2の駆動モータ)、52、53:取付け台、54:ウォーム駆動ドラム(第4の回転ドラム)、55:荷巻上下用ドラム(第5の回転ドラム)、56:ウォーム、57:ウォーム歯車、58:第3のワイヤ、59:荷巻上下用ワイヤ(第4のワイヤ)、60:傾き修正手段、61:サーボモータ、62:雄ねじ部、63:ナット部、64:第1の距離測定センサ、65:第2の距離測定センサ、66:取付け部、67:停止位置検知センサ、68:RFタグ、69:RFタグリーダ、70:横送りサーボモータ