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特開2022-63624作業車両の制御システム、作業車両の制御方法、および作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063624
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、作業車両の制御方法、および作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20220415BHJP
   E02F 3/76 20060101ALI20220415BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F3/76 C
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171979
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
(72)【発明者】
【氏名】本村 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 研二
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB04
2D003AB05
2D003AC03
2D003BA02
2D003DA04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】作業車両の作業状態に応じてブレードのピッチ角を自動制御する。
【解決手段】車体と、車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機を有する作業車両の制御システムは、コントローラを備える。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に応じた作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定する。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に基づいて、作業車両が切換え点に到達したか否かを判定する。コントローラは、作業車両が切換え点に到達したと判定した場合に、作業機のピッチを変更させる指令を出力する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機を有する作業車両の制御システムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
作業開始位置からの前記作業車両の移動量に応じた前記作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定し、
前記作業開始位置からの前記作業車両の前記移動量に基づいて、前記作業車両が前記切換え点に到達したか否かを判定し、
前記作業車両が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる指令を出力する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記作業車両が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機が前記車体に対して後方に傾斜するようにピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記目標変位データは、
前記作業車両の移動量が第1距離未満である第1の領域について、ゼロ以上所定値未満の範囲で前記作業車両の移動量の増大に応じて単調増加する目標変位を示し、
前記作業車両の移動量が第1距離以上第2距離未満である第2の領域について、前記所定値と等しい目標変位を示し、
前記作業車両の移動量が第2距離以上第3距離未満である第3の領域について、ゼロ以上前記所定値未満の範囲で前記作業車両の移動量の増大に応じて単調減少する目標変位を示し、
前記切換え点は、前記第2の領域および前記第3の領域の範囲内に位置する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記切換え点は、前記作業開始位置から前記第2距離だけ離れた点である
請求項3に記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
前記切換え点は、前記作業開始位置から前記第1距離だけ離れた点である
請求項3に記載の作業車両の制御システム。
【請求項6】
前記切換え点は、前記作業開始位置から前記第3距離だけ離れた点である
請求項3に記載の作業車両の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記作業機の刃先が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記車体の重心位置が前記切換え点の直上に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得し、
前記目標変位データを参照して前記現況地形から鉛直方向に変位した目標設計面を決定し、
前記目標設計面に沿って前記作業機の高さを変更させる指令を出力する。
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項10】
前記目標設計面は、前記現況地形よりも下方に位置する、
請求項9に記載の作業車両の制御システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記作業機のピッチを変更させる前記指令による前記作業機の刃先高さの変動を相殺するように前記作業機を下げる
請求項1から請求項10の何れか1項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項12】
車体と、前記車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機を有する作業車両の制御方法であって、
作業開始位置からの前記作業車両の移動量に応じた前記作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定し、
前記作業開始位置からの前記作業車両の前記移動量に基づいて、前記作業車両が前記切換え点に到達したか否かを判定し、
前記作業車両が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる指令を出力することを備える、
作業車両の制御方法。
【請求項13】
前記作業車両が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機が前記車体に対して後方に傾斜するようにピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項12に記載の作業車両の制御方法。
【請求項14】
前記作業機の刃先が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項12又は請求項13に記載の作業車両の制御方法。
【請求項15】
前記車体の重心位置が前記切換え点の直上に到達したと判定した場合に、前記作業機のピッチを変更させる前記指令を出力する
請求項12又は請求項13に記載の作業車両の制御方法。
【請求項16】
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得し、
前記目標変位データを参照して前記現況地形から鉛直方向に変位した目標設計面を決定し、
前記目標設計面に沿って前記作業機の高さを変更させる指令を出力する。
請求項12から請求項15の何れか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項17】
前記目標設計面は、前記現況地形よりも下方に位置する、
請求項16に記載の作業車両の制御方法。
【請求項18】
前記作業機のピッチを変更させる前記指令による前記作業機の刃先高さの変動を相殺するように前記作業機を下げる
請求項12から請求項17の何れか1項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項19】
車体と、
前記車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機と、
コントローラと
を備える作業車両であって、
前記コントローラは、
作業開始位置からの前記作業車両の移動量に応じた前記作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定し、
前記作業開始位置からの前記作業車両の前記移動量に基づいて、前記作業車両が前記切換え点に到達したか否かを判定し、
前記作業車両が前記切換え点に到達したと判定した場合に、前記作業機が前記車体に対して後方に傾斜するように前記作業機のピッチを変更させる指令を出力する、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両の制御システム、作業車両の制御方法、および作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレードのピッチ角を切り替えることで、掘削、運土及び排土の効率を向上させるブルドーザに係る技術が開示されている。特許文献1によれば、チルト・ピッチ切り替えスイッチをONにした状態で操作レバーを倒すことで、ブレードのピッチ角を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-252859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、特許文献1に記載の技術のようにブレードのピッチ角を手動で調整する場合、オペレータが操作のタイミングや操作量を誤ると、作業効率が低下する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、作業車両の作業状態に応じてブレードのピッチを自動制御する作業車両の制御装置および作業車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、車体と、車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機を有する作業車両の制御システムであって、コントローラを備える。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に応じた作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定する。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に基づいて、作業車両が切換え点に到達したか否かを判定する。コントローラは、作業車両が切換え点に到達したと判定した場合に、作業機のピッチを変更させる指令を出力する。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、車体と、車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機を有する作業車両の制御方法であって、以下の処理を備える。第1の処理は、作業開始位置からの作業車両の移動量に応じた作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定する。第2の処理は、作業開始位置からの作業車両の移動量に基づいて、作業車両が切換え点に到達したか否かを判定する。第3の処理は、作業車両が切換え点に到達したと判定した場合に、作業機のピッチを変更させる指令を出力する。
【0008】
本発明の第三の態様によれば、作業車両は、車体と、車体に対し高さおよびピッチの変更が可能な作業機と、コントローラとを備える。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に応じた作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定する。コントローラは、作業開始位置からの作業車両の移動量に基づいて、作業車両が切換え点に到達したか否かを判定する。コントローラは、作業車両が切換え点に到達したと判定した場合に、作業機が車体に対して後方に傾斜するように作業機のピッチを変更させる指令を出力する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、制御装置は、作業車両の作業状態に応じてブレードのピッチを自動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】第1の実施形態に係るブレードの姿勢を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る作業車両のコントローラの構成を示す概略ブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る作業機の制御の処理を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る最終設計地形、現況地形、及び目標設計地形の例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る目標変位データの例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る目標変位を決定するための処理を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係るブレードの高さの変動を示す図である。
図10】第1変形例に係る駆動系と制御システムの構成を示すブロック図である。
図11】第2変形例に係る駆動系と制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る作業車両100の側面図である。
第1の実施形態に係る作業車両100は、例えばブルドーザである。作業車両100は、車体110と、走行装置120と、作業機130とを備える。
【0012】
車体110には、運転室140を有する。運転室140は、車体110の上部に設けられる。運転室140には、図示しない運転席が配置されている。走行装置120は、車体110の下部に設けられる。走行装置120は、左右一対の履帯121、スプロケット122およびアイドラ124を有している。なお、図1では、左側の履帯121、スプロケット122およびアイドラ124のみが図示されている。履帯121が回転することによって、作業車両100が走行する。作業車両100の走行は、自律走行、セミ自律走行、オペレータの操作による走行のいずれの形式であってもよい。スプロケット122の回転軸には、回転センサ123が設けられる。回転センサ123は、スプロケット122の回転軸の回転数を計測する。スプロケット122の回転軸の回転数は、走行装置120の速度および車体110の移動量に換算可能である。
【0013】
作業機130は、土砂等の掘削対象の掘削および運搬に用いられる。作業機130は、車体110の前部に設けられる。作業機130は、リフトフレーム131、ブレード132、リフトシリンダ133及びピッチシリンダ134を有する。
【0014】
リフトフレーム131は、車幅方向に伸びるピンを介して、車体110の側面に取り付けられる。リフトフレーム131は、車幅方向に延びる軸線X1を中心として車体110に対して上下方向に回動可能に支持される。リフトフレーム131は、ブレード132を支持している。
【0015】
ブレード132は、リフトフレーム131を介して、車体110の前方に取付けられる。ブレード132は、車幅方向に延びる軸線X2を中心としてリフトフレーム131に対して回動可能に支持される。ブレード132は、リフトフレーム131の上下動に伴って上下に移動する。ブレード132の前面下端部には、刃先132eが設けられる。
【0016】
リフトシリンダ133は、油圧シリンダである。リフトシリンダ133は、車体110とブレード132とに連結されている。リフトシリンダ133が伸縮することによって、リフトフレーム131およびブレード132は、軸線X1を中心として上下方向に回動する。
【0017】
ピッチシリンダ134は、油圧シリンダである。ピッチシリンダ134は、リフトフレーム131とブレード132とに連結されている。ピッチシリンダ134が伸縮することによって、ブレード132は、リフトフレーム131に対して軸線X2を中心に回動する。より詳しくは、ピッチシリンダ134が伸長することで、ブレード132は、リフトフレーム131に対して軸線X2を中心に車体前方へ傾斜(ピッチダンプ)する。ピッチシリンダ134が縮小することで、ブレード132は、リフトフレーム131に対して軸線X2を中心に車体後方へ傾斜(ピッチバック)する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るブレード132の姿勢を示す図である。ブレード132は、後述するコントローラ320によって、掘削姿勢、運土姿勢及び排土姿勢に切り替えられる。掘削姿勢は、ブレード132の刃先の角度を履帯121底面に対して第1角度(例えば、52度)とする姿勢である。運土姿勢は、ブレード132を車体後方へ最大限傾斜させることで、ブレード132の刃先の角度を第2角度とする姿勢である。排土姿勢は、ブレード132を車体前方へ傾斜させることで、ブレード132の刃先の角度を第3角度とする姿勢である。第1角度は第2角度より大きく、第3角度より小さい。
【0019】
図3は、第1の実施形態に係る作業車両100の駆動系200と制御システム300との構成を示すブロック図である。
【0020】
《駆動系200》
駆動系200は、動力源210、PTO(Power Take Off)220、動力伝達装置230、油圧ポンプ240を備える。
【0021】
動力源210は、例えばディーゼルエンジンである。
【0022】
PTO220は、動力源210の駆動力の一部を、油圧ポンプ240に伝達する。つまり、PTO220は、動力源210の駆動力を、動力伝達装置230および油圧ポンプ240に分配する。
【0023】
動力伝達装置230は、動力源210の駆動力を走行装置120に伝達する。動力伝達装置230は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置230は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッション、或いはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、或いは、発電機と駆動用電動モータとを組み合わせた電動式伝達装置であってもよい。
【0024】
油圧ポンプ240は、動力源210によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ240から吐出された作動油は、制御弁330を介してリフトシリンダ133及びピッチシリンダ134に供給される。制御弁330は、油圧ポンプ240から吐出された作動油の流量を制御する。
【0025】
《制御システム300》
制御システム300は、操作装置310と、コントローラ320と、制御弁330とを備える。
【0026】
操作装置310は、作業機130及び走行装置120を操作するための装置である。操作装置310は、運転室140に配置されている。操作装置310は、作業機130及び走行装置120を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置310は、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0027】
操作装置310は、ブレード132のピッチを制御するためのピッチ操作スイッチ312を含む。ピッチ操作スイッチ312は例えば、ピッチダンプ位置とピッチバック位置とに操作可能なモーメンタリスイッチである。ピッチ操作スイッチ312の操作信号は、コントローラ320に出力される。コントローラ320は、ピッチ操作スイッチ312からの操作信号に応答して、ブレード132をリフトフレーム131に対して軸線X2を中心に回動するようにピッチシリンダ134を制御するための指令信号を制御弁330へ出力する。コントローラ320は、ピッチ操作スイッチ312の操作位置がピッチダンプ位置であるときには、ブレード132が車体前方へ傾斜するように、制御弁330を制御する。コントローラ320は、ピッチ操作スイッチ312の操作位置がピッチバック位置であるときには、ブレード132が車体後方へ傾斜するように、制御弁330を制御する。なお、ピッチ操作スイッチ312は、ピッチダンプ操作信号およびピッチバック操作信号をそれぞれ出力する2つの押し釦で構成されてもよい。
【0028】
コントローラ320は、作業車両100を制御する。コントローラ320は、後述するプログラムにより、施工現場の現況地形と、最終設計面と、各種センサの計測値とに基づいて作業機130を自動制御する。
【0029】
制御弁330は、比例制御弁であり、コントローラ320からの指令信号によって制御される。制御弁330は、リフトシリンダ133やピッチシリンダ134などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ240との間に配置される。制御弁330は、油圧ポンプ240からリフトシリンダ133およびピッチシリンダ134へ供給される作動油の流量を制御する。コントローラ320は、上述した操作装置310の操作に応じてブレード132が動作するように、制御弁330への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ133およびピッチシリンダ134が、操作装置310の操作量に応じて制御される。なお、制御弁330は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁330は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0030】
制御システム300は、ストロークセンサ133sを備える。ストロークセンサ133sは、リフトシリンダ133のストローク量を検出する。ストロークセンサ133sが検出するストローク量を用いることで、車体110を基準としたローカル座標系である車体座標系における刃先132eの位置を算出することができる。具体的には、コントローラ320は、リフトシリンダ133のストローク量に基づいて、リフトフレーム131の回転角を算出する。リフトフレーム131およびブレード132の寸法は既知であるため、リフトフレーム131の回転角から、ブレード132の刃先132eの位置を特定することができる。なお、他の実施形態に係る作業車両100は、エンコーダ等の他のセンサで回転角を検出してもよい。
【0031】
図3に示すように、制御システム300は、位置検出装置340を備えている。位置検出装置340は、作業車両100の位置を測定する。位置検出装置340は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ341と、IMU(Inertial Measurement Unit)342とを有する。GNSSレシーバ341は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ341のアンテナは、例えば、運転室140上に取り付けられる。GNSSレシーバ341は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナの位置を演算して車両位置データを生成する。GNSSレシーバ341は、作業車両100の位置データをコントローラ320に出力する。
【0032】
IMU342は、車体傾斜角データと車体加速度データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。車体加速度データは、作業車両100の加速度を含む。IMU342は、車体傾斜角データ及び車体加速度データをコントローラへ出力する。コントローラ320は、車体加速度データにより、作業車両100の進行方向と車速とを得る。
【0033】
図4は、第1の実施形態に係る作業車両100のコントローラ320の構成を示す概略ブロック図である。コントローラ320は、プロセッサ321、メインメモリ322、ストレージ323、インタフェース324を備えるコンピュータである。プロセッサ321は、プログラムを実行することで、作業機130の動作を演算処理する。
【0034】
メインメモリ322は、設計地形データと作業現場地形データとを記憶している。設計地形データは、最終設計地形を示す。最終設計地形は、作業現場の表面の最終的な目標形状である。設計地形データは、例えば、三次元データ形式の土木施工図である。作業現場地形データは、作業現場の現況の地形を示す。作業現場地形データは、例えば、三次元データ形式の現況地形測量図である。作業現場地形データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。
【0035】
ストレージ323は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ323の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ323は、コントローラ320のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース324または通信回線を介してコントローラ320に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ323は、作業車両100を制御するためのプログラムを記憶する。
【0036】
なお、他の実施形態においては、コントローラ320は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ321によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0037】
《作業車両100の動作》
以下、コントローラ320によって実行される、掘削における作業機130の制御について説明する。図5は、第1の実施形態に係る作業機130の制御の処理を示すフローチャートである。作業車両100の作業開始時において、ブレード132の姿勢は掘削姿勢をとる。
【0038】
図5に示すように、ステップS1では、コントローラ320は、位置検出装置340から現在位置データを取得する。
【0039】
ステップS2では、コントローラ320は、施工現場の設計地形データを取得する。図6に示すように、設計地形データは、作業車両100の進行方向において、複数の参照点での最終設計地形60の高さZdesignを含む。複数の参照点は、作業車両100の進行方向に沿う所定間隔ごとの複数地点を示す。複数の参照点は、ブレード132の進行パス上にある。なお、図6では、最終設計地形60は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。設計地形データは、インタフェース324を介して取得されてもよいし、外部記憶装置を介して取得されてもよいし、ネットワークを介して接続される他の装置から取得されてもよい。コントローラ320は、設計地形データをメインメモリ322に記憶させる。
【0040】
ステップS3では、コントローラ320は、施工現場の現況地形データを取得する。コントローラ320は、メインメモリ322より得られる作業現場地形データと、位置検出装置340より得られる車体の位置データ及び進行方向データから演算により、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業車両100の進行方向に位置する地形を示す情報である。図6は、現況地形50の断面を示す。なお、図6において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業車両100の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0041】
ステップS4では、コントローラ320は、作業開始位置を取得する。例えば、コントローラ320は、ストロークセンサ133sの計測値及び位置検出装置340の計測値に基づいて現場座標系におけるブレード132の刃先132eの位置を算出し、刃先132eの位置が現況地形の高さを最初に下回ったときの位置を掘削開始位置として取得する。ただし、コントローラ320は、他の方法によって、掘削開始位置を取得してもよい。例えば、コントローラ320は、作業機操作装置311の操作に基づいて、掘削開始位置を取得してもよい。例えば、コントローラ320は、ボタン、或いは、タッチパネルによる画面操作などの操作に基づいて、掘削開始位置を取得してもよい。
【0042】
ステップS5では、コントローラ320は、作業車両100の移動量を取得する。コントローラ320は、ブレード132の進行パスにおいて掘削開始位置から現在位置まで進んだ距離を、移動量として取得する。作業車両100の移動量は、車体110の移動量であってもよい。或いは、作業車両100の移動量は、刃先132eの移動量であってもよい。
【0043】
ステップS6では、コントローラ320は、目標設計地形データを決定する。目標設計地形データは、図6に破線で記載された目標設計地形70を示す。目標設計地形70は、作業におけるブレード132の刃先132eの望まれる軌跡を示す。目標設計地形70は、掘削作業の結果として望まれる地形プロファイルである。図6に示すように、コントローラ320は、現況地形50から、変位距離ΔZ、下方に変位した目標設計地形70を決定する。変位距離ΔZは、各参照点での鉛直方向における目標変位である。本実施形態において、変位距離ΔZは、各参照点での目標深さであり、現況地形50の下方におけるブレード132の目標位置を示す。ブレード132の目標位置とは、ブレード132の刃先132eの位置を意味する。言い換えれば、変位距離ΔZは、ブレード132によって掘削される単位移動量当たりの土量を示す。従って、目標設計地形データは、複数の参照点と複数の目標土量との関係を示す。なお、コントローラ320は、最終設計地形60を下方に越えないように、目標設計地形70を決定する。従って、コントローラ320は、目標高さを最終設計地形60以上、且つ、現況地形50より下方に位置する目標設計地形70を決定する。
【0044】
詳細には、コントローラ320は、以下の数1式により、目標設計地形70の高さZを決定する。
[数1]
Z = Zm - ΔZ
ΔZ = t1 * t2 * Z_offset
【0045】
Zm(m = 1,・・・,n)は、複数の参照点での現況地形50の高さZ0~Znである。ΔZは変位距離であり、図6では掘削深さを示す。t1は、作業車両が利用可能な牽引力の大きさを示す牽引力データに基づく倍率である。
【0046】
t2は、ブレード仕様データによる倍率である。ブレード仕様データは、選択されたブレードの仕様に応じて決定される。
【0047】
Z_offsetは、作業車両100の移動量に応じて決定される目標変位である。目標変位Z_offsetは、ブレード132への負荷に関係する目標負荷パラメータの一例である。目標変位Z_offsetは、地表からのブレード132の高さ方向(鉛直方向)の変位量を示す。図7は、目標変位データCの一例を示す図である。目標変位データCは、ブレード132の地表から鉛直下方向への掘削深さ(目標変位)Z_offsetを、作業車両100の水平方向の移動量nの従属変数として示す。作業車両100の水平方向の移動量nは、ブレード132の水平方向の移動量と実質的に同じ値である。コントローラ320は、図7に示す目標変位データCを参照して、作業車両100の移動量nから、目標変位Z_offsetを決定する。
【0048】
図7に示すように、目標変位データCは作業車両100の移動量nと、目標変位Z_offsetと、の関係を規定する。目標変位データCは、メインメモリ322に記憶されている。以降は説明を簡単にするため、t1とt2の値を1として変位距離ΔZは目標変位Z_offsetに等しいとする。
【0049】
図7に示すように、目標変位データCは、開始時データc1と、掘削時データc2と、移行時データc3と、運土時データc4とを含む。開始時データc1は、掘削開始領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。掘削開始領域は、掘削開始点Sから定常掘削開始点Dまでの領域である。開始時データc1で示されるように、掘削開始領域では、移動量nの増大に応じて徐々に増大する目標変位Z_offsetが規定される。開始時データc1は、移動量nに対して線的に増加する目標変位Z_offsetを規定する。
【0050】
掘削時データc2は、掘削領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。掘削領域は、定常掘削開始点Dから運土移行開始点Tまでの領域である。掘削時データc2で示されるように、掘削領域では、目標変位Z_offsetは、一定値に規定される。掘削時データc2は、移動量nに対して一定の目標変位Z_offsetを規定する。
【0051】
移行時データc3は、運土移行領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。運土移行領域は、運土移行開始点Tから運土開始点Pまでの領域である。移行時データc3で示されるように、運土移行領域では、移動量nの増大に応じて徐々に減少する目標変位Z_offsetが規定される。移行時データc3は、移動量nに対して線的に減少する目標変位Z_offsetを規定する。
【0052】
運土時データc4は、運土領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。運土領域は、運土開始点Pから開始される領域である。運土時データc4に示されるように、運土領域では、目標変位Z_offsetは一定値に規定される。運土時データc4は、移動量nに対して一定の目標変位Z_offsetを規定する。
【0053】
詳細には、掘削領域は、第1開始値b1から開始され、第1終了値b2で終了する。運土領域は、第2開始値b3から開始される。第1終了値b2は、第2開始値b3よりも小さい。従って、掘削領域は、運土領域よりも、移動量nが小さいときに開始される。掘削領域での目標変位Z_offsetは、第1目標値a1で一定である。運土領域での目標変位Z_offsetは、第2目標値a2で一定である。第1目標値a1は、第2目標値a2よりも大きい。従って、掘削領域では運土領域よりも大きな変位距離ΔZが規定される。
【0054】
掘削開始位置での目標変位Z_offsetは、開始値a0である。開始値a0は、第1目標値a1よりも小さい。図7に示す例では、開始目標値a0は、第2目標値a2よりも小さい。
【0055】
図8は、目標変位Z_offsetの決定処理を示すフローチャートである。説明を簡単にするため、以下に説明する決定処理では、作業車両100の走行は前進のみであるものとする。決定処理は、走行装置120を操作するための操作装置310が前進の位置に移動すると開始される。ステップS201では、コントローラ320は、移動量nが0以上、且つ、第1開始値b1未満であるか判定する。移動量nが0以上、且つ、第1開始値b1未満であるときには、ステップS202において、コントローラ320は、移動量nの増大に応じて、目標変位Z_offsetを開始値a0から徐々に増大させる。
【0056】
開始値a0は、定数であり、メインメモリ322に記憶されている。開始値a0は、掘削開始時にブレード132への負荷が過剰に大きくならない程度に小さな値であることが好ましい。第1開始値b1は、図7に示す掘削開始領域での傾きc1、開始値a0、及び第1目標値a1から演算により求められる。傾きc1は、定数であり、メインメモリ322に記憶されている。傾きc1は、掘削開始から掘削作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード132への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0057】
ステップS203では、コントローラ320は、移動量nが、第1開始値b1以上、且つ、第1終了値b2未満であるか判定する。移動量nが、第1開始値b1以上、且つ、第1終了値b2未満であるときには、ステップS204において、コントローラ320は、目標変位Z_offsetを第1目標値a1に設定する。第1目標値a1は、定数であり、メインメモリ322に記憶されている。第1目標値a1は、効率よく掘削を行うことができると共に、ブレード132への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0058】
ステップS205では、コントローラ320は、移動量nが、第1終了値b2以上、且つ、第2開始値b3未満であるか判定する。移動量nが、第1終了値b2以上、且つ、第2開始値b3未満であるときには、ステップS206において、コントローラ320は、移動量nの増大に応じて、目標変位Z_offsetを第1目標値a1から徐々に低減させる。
【0059】
第1終了値b2は、ブレード132の現在の保有土量が、所定の閾値を越えるときの移動量である。従って、ブレード132の現在の保有土量が、所定の閾値を越えたときに、コントローラ320は、目標変位Z_offsetを第1目標値a1から低減させる。所定の閾値は、例えばブレード132の最大容量に基づいて決定される。例えば、ブレード132の現在の保有土量は、ブレード132への負荷が測定され、当該負荷から演算により決定されてもよい。或いは、ブレード132の画像がカメラによって取得され、当該画像を分析することによって、ブレード132の現在の保有土量が算出されてもよい。或いは、ブレード132の点群データがスキャナによって取得され、当該点群データを分析することによって、ブレード132の現在の保有土量が算出されてもよい。
【0060】
なお、作業開始時には、第1終了値b2として、所定の初期値が設定される。作業開始後には、ブレード132の保有土量が所定の閾値を越えたときの移動量が更新値として記憶され、第1終了値b2は記憶された更新値に基づいて更新される。
【0061】
ステップS207では、コントローラ320は、移動量nが、第2開始値b3以上であるか判定する。移動量nが、第2開始値b3以上であるときには、ステップS208において、コントローラ320は、目標変位Z_offsetを第2目標値a2に設定する。
【0062】
第2目標値a2は、定数であり、メインメモリ322に記憶されている。第2目標値a2は、運土作業に適した値に設定されることが好ましい。例えば、運土領域での目標変位Z_offsetが0となるように、第2目標値a2を設定してもよい。すなわち、第2目標値a2は初期目標値a0以下の値であってよい。第2開始値b3は、図7に示す運土移行領域での傾きc3、第1目標値a1、及び第2目標値a2から演算により求められる。傾きc3は、定数であり、メインメモリ322に記憶されている。傾きc3は、掘削作業から運土作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード132への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0063】
なお、開始値a0、第1目標値a1、及び第2目標値a2は、作業車両100の状況等に応じて変更されてもよい。第1開始値b1、第1終了値b2、及び第2開始値b3は、定数としてメインメモリ322に記憶されてもよい。
【0064】
以上のように、目標変位Z_offsetが決定されることで、目標設計地形70の高さZが決定される。
【0065】
ステップS7では、コントローラ320は、目標設計地形70に向って作業機130を制御する。ここでは、コントローラ320は、ステップS6で作成した目標設計地形70に向ってブレード132の刃先132eの位置が移動するように、作業機130への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁330に入力される。それにより、ブレード132の刃先132eが目標設計地形70に沿って移動する。
【0066】
上述した掘削領域では、現況地形50と目標設計地形70との間の変位距離ΔZが、他の領域と比べて大きい。これにより、掘削領域では、現況地形50の掘削作業が行われる。運土領域では、現況地形50と目標設計地形70との間の変位距離ΔZが他の領域と比べて小さい。これにより、運土領域では、地面の掘削が控えられ、ブレード132に保持されている土砂が運搬される。
【0067】
ステップS8では、コントローラ320は、ステップS5で取得した移動量に基づいて、作業車両100が切換え点に到達した、またはオペレータによってピッチ操作スイッチ312をビッチバック位置に一定時間継続して操作されたかを判定する。切換え点は、掘削開始点から第1距離だけ離れた点、第2距離だけ離れた点、及び掘削開始点から第3距離だけ離れた点のいずれかである。切換え点は、オペレータによって適宜選択できる。図7に示すように、掘削開始点から第1距離だけ離れた点は、定常掘削開始点Dに相当する。また、掘削開始点から第2距離だけ離れた点は、運土移行開始点Tに相当する。また、掘削開始点から第3距離だけ離れた点は、運土開始点Pに相当する。判定基準位置は、車体110の重心位置又は刃先132eの位置である。
【0068】
判定基準位置が切換え点に到達しておらず、かつピッチ操作スイッチ312がビッチバック位置へ一定時間継続して操作されていない場合(ステップS8:NO)、ステップS9において、コントローラ320は、目標設計地形70に向って作業機130を制御する。ここでは、ステップS6で作成した目標設計地形70に向ってブレード132の刃先132eの位置が移動するように、作業機130への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁330に入力される。それにより、作業機130の刃先132eの位置が目標設計地形70に沿って移動する。
【0069】
他方、判定基準位置が切換え点に到達し、またはピッチ操作スイッチ312がビッチバック位置へ一定時間継続して操作された場合(ステップS8:YES)、ステップS10において、コントローラ320は、ブレード132が運土姿勢になるように作業機130への指令信号を生成する。ここでは、ブレード132が運土姿勢となるようにピッチシリンダ134を制御する指令信号を生成する。例えば、運土姿勢はブレード132を車体後方へ最大限傾斜させた姿勢であるため、コントローラ320は、油圧ポンプ240の吐出圧力がピッチシリンダ134のリリーフ圧以上となってから所定時間が経過するまで指令信号を制御弁330へ出力すればよい。
【0070】
ステップS11では、コントローラ320は、目標設計地形70に向かってリフトシリンダ133を制御する。図9は、第1の実施形態に係るブレードの高さの変動を示す図である。状態ST_Aは、ブレード132を掘削姿勢にさせて刃先132eを基準高さH0に合わせた状態を示す。作業車両100は、状態ST_Aにおいて、ブレード132がピッチダンプするようにピッチシリンダ134を伸長させると、軸線X2を中心にブレード132が回動し、刃先132eの高さが基準高さH0よりも低い状態状態ST_Bとなる。
【0071】
作業車両100は、状態ST_Aにおいて、ブレード132がピッチバックするようにピッチシリンダ134を縮小させると、軸線X2を中心にブレード132が回動し、刃先132eの高さが基準高さH0よりも高い状態ST_Cとなる。したがって、ステップS11では、コントローラ320は、ピッチシリンダ134の駆動による刃先高さの変動を相殺しつつ、目標設計地形70に向かってブレード132の刃先132eの位置が移動するように、リフトシリンダ133への制御信号を生成する。なお、ピッチシリンダ134の駆動による刃先高さの変動量は、作業機130の寸法データにより特定することが出来る。
【0072】
ステップS12では、コントローラ320は、作業現場地形データを更新する。コントローラ320は、刃先132eの最新の軌跡を示す位置データを、現況地形データとして取得し、取得した現況地形データによって作業現場地形データを更新する。或いは、コントローラ320は、車体位置データと車体寸法データとから履帯121の底面の位置を算出し、履帯121の底面の軌跡を示す位置データを現況地形データとして取得してもよい。この場合、作業地形データの更新は即時に行うことができる。
【0073】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係るコントローラ320は、作業開始位置からの作業車両の移動量に応じた作業機の高さの目標変位を示す目標変位データを参照して切換え点を決定する。また、作業車両100が切換え点に到達したか否かを判定し、作業車両100が切換え点に到達したと判定した場合に、作業機130を車体後方へ傾斜させる。これによりコントローラ320は掘削作業から運土作業への移行時に自動的にブレード132のピッチ操作を行うため、オペレータの作業負担を軽減することができる。また、コントローラ320は、ブレード132のピッチを制御すると共に、ブレード132の高さも制御することで、掘削作業から運土作業への移行時に土こぼれが生じることを防ぐことができる。また、コントローラ320は、最適なタイミングでブレード132のピッチ角を変化させることで、運土時の土量を最大化し、作業効率を向上させることができる。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、切換え点を、掘削開始点から第1距離だけ離れた点とするか、掘削開始点から第2距離だけ離れた点とするか、掘削開始点から第3距離だけ離れた点とするか、及び判定基準位置をブレード132の刃先132eとするか車体110の重心とするかは、オペレータによって設定される。これにより、オペレータは、ブレード132のピッチ角の制御タイミングが作業対象の土質やオペレータの操作感に適するように、設定することができる。例えば、土質によっては、ブレード132をリフトアップするときにブレード132が掘削姿勢のままであると、ブレード132が作業対象に押し付けられ、掘削が効率よく行われない場合がある。このような場合には、切換え点を掘削開始点から第2距離だけ離れた点とし、判定基準位置をブレード132の刃先132eとすることで、適切なタイミングでブレード132のピッチ角を制御することができる。なお、他の実施形態においては、切換え点が掘削開始点から第1距離だけ離れた点又は掘削開始点から第2距離だけ離れた点又は掘削開始点から第3距離だけ離れた点に予め設定され、かつ判定基準位置がブレード132の刃先132e又は車体110の重心に予め設定されることで、オペレータによる設定を受け付けないものであってもよい。
【0075】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0076】
上述した実施形態に係るコントローラ320は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、コントローラ320の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することでコントローラ320として機能するものであってもよい。例えば、図10に示すように、コントローラ320は、作業車両100の外部に配置されるリモートコントローラ350と、作業車両100に搭載される車載コントローラ360とを含んでもよい。リモートコントローラ350と車載コントローラ360とは通信装置380、390を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ320の機能の一部がリモートコントローラ350によって実行され、残りの機能が車載コントローラ360によって実行されてもよい。例えば、目標設計地形70を決定する処理がリモートコントローラ350によって実行され、作業機130への指令信号を出力する処理が車載コントローラ360によって実行されてもよい。
【0077】
或いは、操作装置310は、作業車両100の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両100から省略されてもよい。或いは、操作装置310が作業車両100から省略されてもよい。操作装置310による操作無しで、コントローラ320による自動制御のみによって作業車両100が操作されてもよい。
【0078】
或いは、図11に示すように、現況地形データは、作業車両100の外部の測量装置400によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから現況地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。外部の測量装置又はカメラの場合、作業現場地形データの更新は、所定周期ごと、あるいは随時に行われてもよい。
【0079】
上述した実施形態に係るコントローラ320は、掘削開始時に目標設計地形を作成し、刃先132eが当該目標設計地形に沿うように制御するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るコントローラ320は、目標設計地形を作成せず、一定タイミング毎に目標変位関数に基づいて走行距離から目標変位を計算し、都度目標高さを計算してもよい。
【0080】
上述した実施形態に係る作業車両100はブルドーザであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業車両100はモータグレーダであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
100…作業車両 110…車体 120…走行装置 121…履帯 122…スプロケット 123…回転センサ 124…アイドラ 130…作業機 131…リフトフレーム 132…ブレード 132e…刃先 133…リフトシリンダ 133s…ストロークセンサ 134…ピッチシリンダ 140…運転室 210…動力源 220…PTO 230…動力伝達装置 240…油圧ポンプ 310…操作装置 311…作業機操作装置 312…ピッチ操作スイッチ 320…コントローラ 321…プロセッサ 322…メインメモリ 323…ストレージ 324…インタフェース 330…制御弁 341…GNSSレシーバ 342…IMU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11