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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063657
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】紙シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/00 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172018
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】390002370
【氏名又は名称】大塚包装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 史彰
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10D
4F100AJ05C
4F100AK15B
4F100AK22B
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AK68B
4F100AK73B
4F100AL01B
4F100AN01B
4F100AN02B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB05B
4F100DG10A
4F100EH66D
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100EJ94
4F100GB16
4F100HB31A
4F100JB08B
4F100JB09B
4F100JD04C
4F100JM01B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】セロハンを用いつつ、紙シートへの貼付を容易に行えるようにした紙シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】紙器に用いる紙シート100の製造方法であって、紙製の基材シート12の少なくとも一面に、水溶系又は溶剤希釈系の粘着材を塗布する工程と、基材シート12の粘着材を塗布した面に、セロハンシート11を貼付してラミネートする工程とを含む。これにより、粘着材をセロハンシート11に塗布することで生じる収縮やカールの発生を抑制して、紙製の基材シート12にセロハンシート11を貼付した紙シート100を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙器に用いる紙シートの製造方法であって、
紙製の基材シートの少なくとも一面に、水溶系又は溶剤希釈系の粘着材を塗布する工程と、
前記基材シートの前記粘着材を塗布した面に、セロハンシートを貼付してラミネートする工程と、
を含む紙シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の紙シートの製造方法であって、
前記粘着材が、水分含有量を40%~75%としてなる紙シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紙シートの製造方法であって、
前記粘着材が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、水性高分子-イソシアネー卜系接着剤、SBR系接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤のいずれかである紙シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の紙シートの製造方法であって、
前記粘着材が、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、CR系溶剤形接着剤、合成ゴム系溶剤形接着剤、天然ゴム系溶剤形接着剤、ポリウレタン樹脂系溶剤形接着剤、アクリル樹脂系溶剤形接着剤、シリコーン樹脂系溶剤形接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤のいずれかである紙シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の紙シートの製造方法であって、
前記積層体を乾燥させる工程が、熱乾燥工程と自然乾燥工程を含む紙シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の紙シートの製造方法であって、
前記セロハンシートが、防湿性セロハンのシートである紙シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の紙シートの製造方法であって、さらに、
アルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成する工程を含む紙シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の紙シートの製造方法であって、
前記紙製の基材シート及び前記セロハンシートが、それぞれ又は一方が予め所定の長さに裁断された状態で接着されるよう構成されてなる紙シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の紙シートの製造方法であって、
前記紙製の基材シートが、ロールに巻かれた状態から、連続的に紙送りされて、ロールに巻かれた状態の前記セロハンシートに対して接着されるよう構成されてなる紙シートの製造方法。
【請求項10】
紙器に用いる紙シートであって、
紙製の基材と、
前記基材の少なくとも一面に、水溶系又は溶剤希釈系の粘着材ラミネートで貼付されたセロハン層と、
を備える紙シート。
【請求項11】
請求項10に記載の紙シートであって、
前記粘着材の水分含有量を、40%~75%としてなる紙シート。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の紙シートであって、
前記粘着材が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、水性高分子-イソシアネー卜系接着剤、SBR系接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤のいずれかである紙シート。
【請求項13】
請求項10に記載の紙シートであって、
前記粘着材が、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、CR系溶剤形接着剤、合成ゴム系溶剤形接着剤、天然ゴム系溶剤形接着剤、ポリウレタン樹脂系溶剤形接着剤、アクリル樹脂系溶剤形接着剤、シリコーン樹脂系溶剤形接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤のいずれかである紙シート。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の紙シートであって、
前記セロハン層が、防湿性セロハンである紙シート。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載の紙シートであって、さらに、
前記基材とセロハン層との間に積層されたアルミニウム層を備える紙シート。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか一項に記載の紙シートであって、
前記基材が、前記セロハン層と積層される面を、印刷面としてなる紙シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、紙製の包装容器などの紙器を構成する紙シートと、このような紙シートの製造方法に関する。
【0003】
化粧函等に用いる美粧性が優れた紙器に用いる紙シートとして、従来、基材シートとなる紙の表面に透明なOPP(Oriented PolyPropylene:2軸延伸ポリプロピレン)フィルムやPETフィルムをラミネートして光沢を持たせた紙シートが用いられている。しかしながら、これらのプラスチックを用いた紙シートは、近年の環境負荷に配慮した脱プラスチックの傾向からは好まれない。そこで、透光性のあるプラスチックフィルムに代えて、紙と同じ木材セルロースが原料のセロハンを用いることが提案されている。例えば特許文献1には、セロハンからなるセロハン層と、紙からなる基材層とがラミネート接着された積層シートが開示される。
【0004】
この積層シートは、セロハン側に接着剤をドライラミネート加工で塗工している。ドライラミネート加工は、図7に示すように、基材原反であるセロハン91に対し、溶剤で希釈した接着剤を塗工した後、乾燥機で乾燥させて貼り合せする。このような方法では、接着剤93を塗工した後、乾燥機95を通す乾燥工程を経て紙92に接着して巻き取るため、セロハンの伸縮が発生し、平坦なラミネートを広い面積で確保し難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案3214336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、セロハンを用いつつ、紙シートへの貼付を容易に行えるようにした紙シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の側面に係る紙シートの製造方法によれば、紙器に用いる紙シートの製造方法であって、紙製の基材シートの少なくとも一面に、水溶系又は溶剤希釈系の粘着材を塗布する工程と、前記基材シートの前記粘着材を塗布した面に、セロハンシートを貼付してラミネートする工程と、を含むことができる。これにより、水溶系の粘着材をセロハンシートに塗布することで生じる収縮やカールの発生を抑制して、紙製の基材シートにセロハンシートを貼付した紙シートを得ることができる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記に加えて、前記粘着材の水分含有量を40%~75%とすることができる。より好ましくは50%以下とする。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記粘着材を、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、水性高分子-イソシアネー卜系接着剤、SBR系接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤のいずれかとすることができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記粘着材を、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、CR系溶剤形接着剤、合成ゴム系溶剤形接着剤、天然ゴム系溶剤形接着剤、ポリウレタン樹脂系溶剤形接着剤、アクリル樹脂系溶剤形接着剤、シリコーン樹脂系溶剤形接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤のいずれかとできる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記積層体を乾燥させる工程が、熱乾燥工程と自然乾燥工程を含むことができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記セロハンシートを、防湿性セロハンのシートとすることができる。これにより、防湿セロハンとして粘着材によるラミネート後の反りの発生を抑制することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、さらに、アルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成する工程を含むことができる。これにより、意匠性を向上できると共に、セロハンシートと紙製基材シートとのラミネート後の反り発生を抑制できる。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記紙製の基材シート及び前記セロハンシートが、それぞれ又は一方が予め所定の長さに裁断された状態で接着されるよう構成できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る紙シートの製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記紙製の基材シートが、ロールに巻かれた状態から、連続的に紙送りされて、ロールに巻かれた状態の前記セロハンシートに対して接着されるように構成できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る紙シートによれば、紙器に用いる紙シートであって、紙製の基材と、前記基材の少なくとも一面に、水溶系又は溶剤希釈系の粘着材ラミネートで貼付されたセロハン層とを備えることができる。上記構成により、粘着材をセロハン層に塗布することで生じる収縮やカールの発生を抑制して、紙製の基材にセロハン層を貼付した紙シートを得ることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る紙シートによれば、上記構成に加えて、前記接着層の水分含有量を、40%~75%とすることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の第12の側面に係る紙シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記粘着材が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、水性高分子-イソシアネー卜系接着剤、SBR系接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤のいずれかを用いることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第13の側面に係る紙シートによれば、上記いずれかの構成に加えて、前記粘着材を、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、CR系溶剤形接着剤、合成ゴム系溶剤形接着剤、天然ゴム系溶剤形接着剤、ポリウレタン樹脂系溶剤形接着剤、アクリル樹脂系溶剤形接着剤、シリコーン樹脂系溶剤形接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤のいずれかとできる。
【0020】
さらにまた、本発明の第14の側面に係る紙シートによれば、上記いずれかに加えて、前記セロハン層を、防湿性セロハンとすることができる。上記構成により、防湿セロハンとして粘着材によるラミネート後の反りの発生を抑制することができる。
【0021】
さらにまた、本発明の第15の側面に係る紙シートによれば、上記いずれかに加えて、さらに、前記基材とセロハン層との間に積層されたアルミニウム層を備えることができる。上記構成により、意匠性を向上できると共に、セロハンシートと紙製基材シートとのラミネート後の反り発生を抑制できる。
【0022】
さらにまた、本発明の第16の側面に係る紙シートによれば、上記いずれかに加えて、前記基材が、前記セロハン層と積層される面を、印刷面とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る紙シートを示す模式断面図である。
図2図1の紙シートの製造方法の一工程を示す模式断面図である。
図3】紙シート製造装置を示す模式図である。
図4】巻取ラミネート法による紙シート製造装置を示す模式図である。
図5】枚葉ラミネート法による紙シート製造装置を示す模式図である。
図6】実施形態2に係る紙シートを示す模式断面図である。
図7】ドライラミネート加工で紙にセロハンを貼付する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0025】
本発明の実施形態に係る紙シートは、紙製の包装容器等の紙器を構成するブランクシートである。典型的には、展開図の形に抜き出して、箱やカートン、トレーなどを構成する。一例として、本発明の実施形態1に係る紙シート100を、図1に示す。この図に示す紙シート100は、基材2と、この基材2の上に積層されたセロハン層1とを備える。基材2とセロハン層1とは、接着層3を介して接合されている。接着層3は、基材2とセロハン層1の接合方法によって材料が異なる。
(基材2)
【0026】
基材2は紙製のシートである。基材2は、強度と耐熱収縮性の点から、ある程度のシート厚みを有することが望ましい。例えば坪量180g/m2~600g/m2の厚紙とすることで、より反りの発生を抑制することが可能となる。が好ましい。
【0027】
紙はセルロースを主成分とするものであれば特に限定されない。必要とされる強度により適宜添加剤を添加してもよい。また、紙の表面に予めカレンダー処理することで表面がより平滑になり、最終的に得られる印刷体の表面に光沢を与えることができる。また基材2は、セロハン層1と積層される面を印刷面とすることが好ましい。
(セロハン層1)
【0028】
この基材2の少なくとも一面に、セロハンシート11を貼付してセロハン層1を形成している。セロハンは融点を持たないセルロース原料であり、セロハンをフィルム状としたセロハンシート11を基材2に貼付してセロハン層1を形成している。またセロハン層1の厚さは、20μm~70μm、好ましくは20μm~30μmとする。
【0029】
セロハン層1は、防湿性セロハンとすることもできる。この構成により、水溶性の粘着材に触れて収縮や反りを生じる事態を抑制できる。
【0030】
またセロハンに柔軟剤を含有させると、セロハンが割れにくくなり、強度が向上する。さらに、剥離性を向上させるために、セロハンに含有させる柔軟剤の含有率を適切に調整すると好ましい。
【0031】
セロハン層1のシート厚みは特に限定されない。セロハン自体の熱収縮性がPETに比べて著しく小さいため、薄手のものであっても利用可能である。中でも坪量20g/m2以上70g/m2以下程度のものが好適に利用でき、さらに20g/m2~30g/m2のものが好ましい。薄すぎると強度面に問題があり、基材とセロハン層とを接着させる際、切断する可能性が高くなる。
【0032】
セロハン層1を基材2に貼付する際は、好ましくは図2に示すように、基材2側に粘着材を塗布して行う。このような基材2へのセロハン層1の貼付は、ラミネートで行う。ラミネートに使用される粘着材としては、例えば脂肪族エステル系接着剤や芳香族エステル系接着剤等が利用できる。これらの接着剤を使用する場合は、乾燥工程を不要とできる。特に脂肪族エステル系接着剤は透明であるため、好ましい。また芳香族エステル系接着剤を使用する場合は、硬化速度が速いという利点が得られる。
【0033】
ここで、ラミネートで基材シート12にセロハンシート11を貼付する紙シート製造装置を、図3の模式図に示す。この図に示すように、紙シート製造装置1000は、基材2の原反である基材シート12をロール状に巻き取った基材原反ロール22と、粘着材を収容する接着液容器23と、この接着液容器23の上方に保持された塗工ロール24と、基材シート12を送り出す基材送り出しロール25、25’と、セロハンの原反であるセロハンシート11を巻き取ったセロハン原反ロール21と、セロハンシート11の原反を送り出すセロハン送り出しロール26と、セロハンシート11を基材シート12の塗布面13に貼付した積層シート14を巻き取る積層ロール27を備える。
【0034】
このラミネート方法では、粘着材に溶剤を用いない。また粘着材の水分含有量は、40%~75%とすることが好ましい。特に粘着材の水分含有量を50%以下とすることで、ラミネートの仕上がり状態が良くなる。このように粘着材に含まれる水分含有量を調整することで、粘着材を塗布した際にセロハンが水分で収縮する事態を抑制できる。
【0035】
この紙シート製造装置1000を用いて、紙シート100を製造するには、まず紙製の基材シート12の表面に、粘着材を塗布する。ここでは接着液容器23に粘着材を充填し、この接着液容器23に下面が浸かるように配置した塗工ロール24を回転させて、図において基材シート12の裏面側に粘着材を塗布する。
【0036】
さらに、基材シート12の粘着材を塗布した塗布面13に、セロハンシート11を貼付する。図3の例では、基材送り出しロール25’とセロハン送り出しロール26とで、基材シート12とセロハンシート11を挟み込んで押圧し、これらのシートの間に介在された粘着材でもって接着し積層シート14とする。そして、積層シート14を自然乾燥させた上で、積層ロール27で巻き取る。このようにして得られた積層ロール27は、使用時に、必要な長さに金属刃等で裁断して用いる。
【0037】
このように、粘着材をセロハンシートでなく基材ソート側に塗布することで、従来問題となっていた収縮やカール、反りなどの問題を回避できる。すなわちセロハンは一般に吸湿し易く、水溶性の粘着材をセロハンシートに塗布すると、反りや収縮、カールが発生して紙シートの品質が低下するという問題があった。セロハンは、木材パルプを原料として製造されたものであるため非常に水分を吸い易く、水分の吸収と消失による伸縮が大きい。このためカールや反り、変形が大きいバイオマスフィルムである。特に、セロハンをラミネート加工して光沢や高級感を持たせた紙器においては、このような反りは品質の低下となって好ましくない。これに対し本実施形態に係る紙シート100によれば、紙製の基材シート12側に粘着材を塗布するという簡単な構成によって、このような問題を低減乃至解消し得る。またラミネート方法によれば、塗布剤を溶剤等で希釈することなく、また乾燥させずに貼り合せできる。またこの方法であれば、粘着材に水性タイプを使用することも可能となる。
【0038】
一方で、非水性タイプの粘着材を用いて接着する場合は、粘着材をセロハンシート側に塗布することも可能となる。
【0039】
使用する接着剤の特性により、耐熱性、耐薬品性、深絞り適性などの特性をラミネートフイルムに付加できる。本実施形態においては、セロハンと紙を接着する粘着材として、溶剤形接着剤(ソルベント型)や水溶系接着材(エマルジョン型)が利用できる。ソルベント型は、有機溶剤を溶媒として使用する。またエマルジョン型は、水を溶媒とする。このようなエマルジョン型の水溶系粘着材は、紙やセロハンに塗工した後、予備乾燥機で水分を若干乾燥させて、粘着性を高めた後に貼り合せる。この予備乾燥工程においてセロハンの伸縮変形を抑えるために、紙製の基材側に粘着材を塗布することが好ましい。
【0040】
水溶系接着材としては、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、水性高分子-イソシアネー卜系接着剤、SBR系接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、天然ゴムラテックス系接着剤等が利用できる。
【0041】
特にアクリル樹脂系の水溶系接着材は、優れた油面接着性を有しており、好ましい。またこのアクリル系エマルション型接着材は、海島構造によりせん断、引張り、はく離、衝撃にも優れた強度を示す。さらに凝集破壊性が高く、接着強度のばらつきも少ない。加えて耐久性に優れており、また配合比の許容範囲も広く、簡易混合でも硬化する。
【0042】
また、溶剤形接着剤としては、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、CR系溶剤形接着剤、合成ゴム系溶剤形接着剤、天然ゴム系溶剤形接着剤、ポリウレタン樹脂系溶剤形接着剤、アクリル樹脂系溶剤形接着剤、シリコーン樹脂系溶剤形接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤等が利用できる。
【0043】
あるいは、セロハンシート側を、上述の通り防湿性セロハンとしてもよい。このような構成とすることでも、水溶性の粘着材を使用しても収縮や反りを抑制することができる。
【0044】
あるいはまた、溶剤で希釈した粘着材を用いてセロハンシートを基材シートに接着してもよい。粘着材として溶剤希釈系のものを用いる場合、ドライラミネートとウェットラミネートの2つのラミネート方法が利用できるところ、本実施形態では、ウェットラミネートを用いる。例えば、図3と同様の紙シート製造装置1000を用いて、接着液容器23に溶剤で所定の濃度に希釈した粘着材を充填する。そしてこの粘着材を、基材シート12の下面側に塗布する。さらに、基材シート12の粘着材を塗布した面に、粘着材がウェットの状態で、セロハンシート11を貼付する。
【0045】
そして、基材シート12にセロハンシート11を貼付し、粘着材が未硬化の積層シート14を乾燥させる。この方法でも、粘着材をセロハン層に塗布することで生じる収縮やカール、反りの発生を抑制して、紙製の基材シート12にセロハンシート11を貼付した紙シート100を得ることができる。
【0046】
また積層体を乾燥させる際には、熱乾燥工程と自然乾燥工程を含めてもよい。熱乾燥は、予備乾燥機などを用いて温度を60℃~120℃、好ましくは75℃~100℃で数秒間乾燥させる。さらに自然乾燥工程は、室温で6時間~18時間保持する。
【0047】
このように溶剤希釈系や水溶系の粘着材を用いてウェットラミネートで紙製の基材シート12にセロハンシート11を貼付した紙シート100を得る場合は、セロハンに熱をかける又は乾燥させることで生じるセロハンの反りや変形を抑制することができる。溶剤希釈系の粘着材を用いる場合は、ウェットで粘着材を塗布後に乾燥させて溶剤を乾燥させることも可能である。
【0048】
さらに以上の方法では、紙製の基材シート12が、ロールに巻かれた状態から、連続的に紙送りされて、同じくロールに巻かれた状態のセロハンシート11に対して接着されるようにしている。ただ本発明は、紙シートの製造方法をこのようなロール対ロールに限定せず、例えば予め所定の寸法に裁断された基材シートに、同じく所定の寸法に裁断されたセロハンシートを貼付するように構成してもよい。
【0049】
また本発明の実施形態に係る紙シートの製造方法は、紙製の基材にセロハンをラミネートする方法を図3に限定するものでなく、他のラミネート方法を適宜利用できる。例えば、紙製の基材シートが、ロールに巻かれた状態から、連続的に紙送りされて、ロールに巻かれた状態のセロハンシートに対して接着されるようにする方法の他、紙製の基材シート及びセロハンシートが、それぞれ予め所定の長さに裁断された状態で接着されるよう構成してもよい。
【0050】
紙製の基材シートとセロハンシートをラミネートするラミネート方法としては、押出しラミネート、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。またウェットラミネート法には、巻取ラミネート法や枚葉ラミネート法が挙げられる。
(巻取ラミネート法)
【0051】
一例として、巻取ラミネート法による紙シート製造装置2000を図4に示す。この図に示す紙シート製造装置2000は、基材2の原反である基材シート12をロール状に巻き取った基材原反ロール22と、基材シート12を送り出す基材送り出しロール25と、粘着材を収容する接着液容器23と、この接着液容器23の上方に保持された塗工ロール24と、基材シート12の塗布面13に塗布された粘着剤を予備的に乾燥させる予備乾燥機35と、セロハンの原反であるセロハンシート11を巻き取ったセロハン原反ロール21と、セロハンシート11の原反を送り出すセロハン送り出しロール26と、セロハンシート11を基材シート12の塗布面13に貼付した積層シート14を巻き取る積層ロール27を備える。この例では、粘着材として水溶系粘着材を用いつつ、紙製の基材シート12側に塗布することで、セロハン側に粘着材を塗布して収縮等が生じる事態を回避している。水溶系粘着材には、アクリル系エマルション型接着材を用いている。
【0052】
また、予備乾燥機35は、一般のドライラミネートで用いられる乾燥機のように粘着材を完全に乾燥させるものでなく、ウェットラミネートにおいて部分的に乾燥させる予備乾燥を行うためのものである。これにより、粘着材に溶剤希釈系のものを用いる場合に、溶剤を部分的に乾燥させて粘着力を高めることができる。
【0053】
なお予備乾燥機は、上述した図3の紙シート製造装置1000に適用することもできる。特に、粘着材が水系の場合に、水分を部分的に蒸発させて粘着性を高めるための予備乾燥工程を付加することができる。
(枚葉ラミネート法)
【0054】
一方、他のラミネート方法である枚葉ラミネート法による紙シート製造装置3000を図5に示す。この図に示す紙シート製造装置3000は、セロハンシート11を巻き取ったセロハン原反ロール21と、セロハンシート11の原反を送り出すセロハン送り出しロール26と、粘着材を収容する接着液容器23と、この接着液容器23の上方に保持された塗工ロール24と、予備乾燥機35と、粘着材を収容する接着液容器23と、この接着液容器23の側面に配置された塗工ロール24と、基材2の原反である基材シートを予め所定の大きさに裁断した基材シート片28を積層した基材原反積層体29と、この基材原反積層体29から一枚の基材シート片28を給紙機で送り出し、セロハンシート11に貼付した後、所定長さの裁断済み積層シート31に裁断する裁断刃30と、裁断済み積層シート31を順次積層した積層シートスタック32とを備える。このように、紙製の基材シートをロールで供給する方法に限らず、裁断された枚葉で供給することでも、紙シートを効率良く製造できる。この例では、紙製の基材シート片28側に粘着材を塗布して、予備乾燥機35で部分的に乾燥させた上で、塗布面13にローラ等でもってセロハンシートを圧着させる。
[実施形態2]
【0055】
また、紙シートの表面にアルミニウム層を設けてもよい。このような例を実施形態2に係る紙シート200として、図6に示す。この図に示す紙シート200は、セロハン層1の上面に、アルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成している。このようにすることで、高級感のある紙シート200が得られる。またセロハンシートと紙製基材シートとのラミネート後の反り発生を抑制できる。またアルミニウム層は、基材の上面に形成してもよい。予め基材の上面にアルミニウム層を蒸着しておくことで、この上面にセロハン層を形成して綺麗な仕上げの紙シートを得ることができる。また仕上がったセロハンラミネート紙に高級感を持たせ、より美粧性の高い印刷物を提供できる。さらに防湿セロハンを用いる場合は、蒸着層を設けることで防湿セロハンに更に高い水蒸気バリア性を持たせて、水分影響によるセロハンの伸縮、変形を抑制する効果も得られる。
【0056】
このようにセロハン層1を紙製の基材2にラミネートすることで、印刷物や無地の紙に光沢を付与することができる。また、紙シートを箱などのパッケージを構成する紙器に利用する場合で、窓を設ける場合には、窓部分をセロハン層で覆うことにより、従来のプラスチックシートよりも環境に配慮した脱プラスチック素材を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る紙シート及びその製造方法によれば、化粧品やゴルフボールなどの製品の包装容器として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0058】
1000、2000、3000…紙シート製造装置
100、200…紙シート
1…セロハン層
2…基材
3…接着層
11…セロハンシート
12…基材シート
13…塗布面
14…積層シート
21…セロハン原反ロール
22…基材原反ロール
23…接着液容器
24…塗工ロール
25、25’…基材送り出しロール
26…セロハン送り出しロール
27…積層ロール
28…基材シート片
29…基材原反積層体
30…裁断刃
31…裁断済み積層シート
32…積層シートスタック
35…予備乾燥機
91…セロハン
92…紙
93…接着剤
95…乾燥機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7