(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006366
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】液体充填ハードカプセル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20220105BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220105BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/205 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/48
A61K47/12
A61K31/205
A61K31/197
A61K31/198
A61K31/685
A61K31/401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108534
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】511291027
【氏名又は名称】カプスゲル・ベルギウム・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Capsugel Belgium NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 順也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 憲一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA55
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC21
4C076CC22
4C076CC40
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4C086NA03
4C086ZA15
4C086ZA16
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4C206AA10
4C206FA41
4C206FA45
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4C206FA58
4C206FA59
4C206HA28
4C206MA05
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA75
4C206ZC21
4C206ZC22
4C206ZC33
(57)【要約】
【課題】カプセル剤に封入する液体充填物が非水系溶媒であるときと比較して有効成分を多く配合でき、かつ、カプセルの安定化剤のような有効成分以外の成分を添加する必要がない液体充填ハードカプセル製剤を提供する。
【解決手段】本発明は、有効成分として第4級アンモニウム化合物および/又はアミノ酸を極性溶媒に溶解した液体をセルロース誘導体で構成される硬カプセルに充填して製剤化したことを特徴とする、安定性の改善された液体充填ハードカプセル製剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として第4級アンモニウム化合物および/又はアミノ酸を極性溶媒に溶解した液体をセルロース誘導体で構成される硬カプセルに充填して製剤化したことを特徴とする、液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項2】
前記セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項3】
前記極性溶媒が水又は有機酸である、請求項1または2に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項4】
さらに、動植物抽出物を含む、請求項3記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項5】
前記有機酸が、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)である、請求項3記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項6】
前記第4級アンモニウム化合物がベタイン、L-カルニチンおよびグリセリルホスホリルコリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【請求項7】
前記アミノ酸が、γ-アミノ酪酸、L-プロリン、L-リジン、L-オルニチン塩酸塩およびL-シトルリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分を送達するための安定性の改善された液体充填ハードカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセル及び液体充填ハードカプセルは、通常、水溶性のカプセル皮膜内に内容液を注入(充填)したものであり、水に接触させるとカプセル皮膜が溶解して内容液を放出することを利用して、上記製品の分野で製剤化されており、胃腸等の消化器官や入浴時の湯、芳香剤中の水等がカプセル皮膜の溶解用の水や水溶液として利用されている。
【0003】
上記したソフトカプセル及び液体充填ハードカプセルは、内容液に水、水溶液を含むと、カプセル皮膜が溶け易く、外部の温度、湿度、包装形態にもよるが、通常の室温保管では、注入後の製造工程、流通段階、保管中に内容液を漏出し、製品として機能しなくなるので、内容液の基剤は大半が油液になっている。
【0004】
特許文献1には、(a)少なくとも1種の多糖または多糖誘導体を含む被膜形成組成物から得られる成形体である容器、(b)極性でもあり吸湿性でもある少なくとも1種の溶媒または各々が極性でもあり吸性でもある溶媒の混合物のマトリックス組成物を含む液体充填物、ならびに(c)活性剤または活性剤の混合物(活性剤は、前記極性であり、吸湿性である溶媒または極性であり、吸湿性である溶媒の混合物に可溶である)を含む送達システムが開示されている。このような送達システムにおいて、容器は、極性であり、吸湿性である溶媒に耐容性があり適合することを示し、さらに、活性剤は、マトリックス組成物および容器中で安定であり、それらに適合するとともに、マトリックス組成物に極めて可溶である。
【0005】
特許文献2には、有効成分を含有する溶液を充填してなる硬カプセル剤であって、充填溶液中に無機塩化物を0.01~0.45g/mL含有し、充填溶液の水分含量(w)が10<w≦80%、水分活性値(a)が0.50≦a≦0.90であり、且つカプセルがセルロース誘導体を含む基剤からなることを特徴とする硬カプセル剤が開示されている。このような硬カプセル剤は、生薬水性エキスや動植物水性エキス等の水分含量が高い有効成分含有溶液を、品質を害することなく長期間安定に保持できる。
【0006】
特許文献3には、乳酸ナトリウムを添加することにより水分活性が0.73以下に調整された水系液体が、HPMC硬質カプセル内に封入されていることを特徴とする液体充填カプセルが開示されている。このような液体充填カプセルは、内浸液中の水分による溶解を抑制し、封入状態を長期間維持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009-507817号公報
【特許文献2】特許第4654128号公報
【特許文献3】特開2017-192330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1では、液体充填物が非水系溶媒であるため、この非水系溶媒に有効成分を溶解する実施が主体となっており、高濃度の活性剤を配合することが困難であった。
【0009】
特許文献2および3はともに、カプセル内に封入する水系有効成分組成物に、添加剤を配合することでカプセル剤の安定性改善を図るものであるが、体内に取り込むカプセル剤にはカプセルを安定化させる添加剤のような活性成分以外の成分の使用は可能な限り避けることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の態様を含む。
(1)有効成分として第4級アンモニウム化合物および/又はアミノ酸を極性溶媒に溶解した液体をセルロース誘導体で構成される硬カプセルに充填して製剤化したことを特徴とする、安定性の改善された液体充填ハードカプセル製剤。
(2)前記セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、(1)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
(3)前記極性溶媒が水又は有機酸である、(1)または(2)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
(4)さらに、動植物抽出物を含む、(3)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
(5)前記有機酸が、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)である、(3)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
(6)前記第4級アンモニウム化合物がベタイン、L-カルニチンおよびグリセリルホスホリルコリンからなる群から選択される少なくとも一種である、(1)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
(7)前記アミノ酸が、γ-アミノ酪酸、L-プロリン、L-リジン、L-オルニチン塩酸塩およびL-シトルリンからなる群から選択される少なくとも一種である、(1)に記載の液体充填ハードカプセル製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カプセル剤に封入する液体充填物が非水系溶媒であるときと比較して有効成分を多く配合でき、かつ、カプセルの安定化剤のような有効成分以外の成分を添加する必要がない液体充填ハードカプセル製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の安定性の改善された液体充填ハードカプセル製剤は、有効成分として第4級アンモニウム化合物および/又はアミノ酸を極性溶媒に溶解した液体をセルロース誘導体で構成される硬カプセルに充填して製剤化したものである。
【0013】
硬カプセルに用いるセルロース誘導体は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセチルフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび上記のうちのいずれかの混合物からなる群から選択されるメンバーを含むがそれらに限定されない、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキル-アルキルセルロースからなる群から選択される。この中でも、食品や医薬品での経口摂取での安全性が広く知られているものが好ましく用いられるが、定型的にはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が特に好ましい。
【0014】
硬カプセルに充填する有効成分としては、カプセルの安定化に機能し、経口摂取して生理学的に効用が期待される成分であり、具体的には第4級アンモニウム化合物および/又はアミノ酸が挙げられ、第4級アンモニウム化合物はベタイン、L-カルニチンおよびグリセリルホスホリルコリンからなる群から選択される少なくとも一種であり、アミノ酸はγ-アミノ酪酸、L-プロリン、L-リジン、L-オルニチン塩酸塩およびL-シトルリンからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
ここで、ベタインは生体内では主にコリンの代謝産物として存在しており、ホモシステインからメチオニンへの変換に関わることから、ホモシステインが原因で引き起こされる動脈硬化に効果があるといわれ、脂肪肝や肝硬変の改善効果が示唆されている。本発明においては、食品添加物や化粧品で広く使用されているトリメチルグリシンが好適である。
カルニチン類は生体の脂質代謝に関与するビタミン様物質で、食欲の増進、胃腸運動の亢進及び膵臓の分泌亢進等の作用を有し、さらに脂肪分解、エネルギー産生、抗疲労作用等、エネルギー代謝に関連することが知られている。本発明においては、L-カルニチン、L-カルニチン酒石酸塩又はL-カルニチンフマル酸塩が好適であり、これらを組み合わせて使用してもよい。
グリセリルホスホリルコリンは、天然に存在するコリン誘導体の一種で、脳や乳に含まれる。副交感神経に作用するアセチルコリンの前駆体であり、アルツハイマー型認知症を治療するための脳機能改善薬として可能性があるとされる。高純度の大豆レシチンから精製されたグリセリルホスホリルコリンが医薬品や食品の原料として使用されている。
【0016】
また、γ-アミノ酪酸は、生体内において抑制性の神経伝達物質として機能している物質であり、血圧降下やストレス緩和及び睡眠の質を向上させる成分として、食品原料として広く使用されている。
L-プロリンは、たんぱく質などを構成する非必須アミノ酸の一種で、コラーゲンの主要な構成成分であり、表皮細胞増殖促進活性、コラーゲン合成促進活性、角質層保湿作用などの生理活性を示す。関節痛を改善する効果や美肌効果、脂肪を燃焼させる効果が期待されるため、食品原料として使用されている。
L-リジンは、必須アミノ酸であり、クエン酸回路に取り込まれてエネルギーを生み出すケト原性アミノ酸として知られる。ブドウ糖の代謝改善による集中力向上、カルシウム吸収促進、肝臓機能の強化などの効果が確認されているおり、食品原料として広く使用されている。
L-オルニチンは様々な食品に幅広く存在し、しじみに比較的多く含まれていることが知られているアミノ酸であり、タンパク質を構成しない遊離アミノ酸として体内を循環し、主に尿素サイクルに関与するアミノ酸である。肝機能改善、疲労回復、ストレス改善などの有効性が知られることから食品原料として使用されている。本発明においては、食品原料として流通しているL-オルニチン塩酸塩が好適である。
L-シトルリンは、はスイカから発見された非必須のアミノ酸であり、医薬品として、肝機能改善薬の成分としてや特殊な先天性代謝異常児の栄養剤などに利用されている。また、強い抗酸化力作用が確認され、新規の抗酸化食品や化粧品の原料としても広く使用されている。
【0017】
さらに、硬カプセルに充填する極性溶媒は有効成分として、経口摂取をより有益にするような動植物抽出物が含まれる水系有効成分組成物であることが望ましい。
このような動植物抽出物が水に溶解した水系有効成分組成物としては、プラセンタ抽出液、ローズウォーター、プロテオグリカン液、ローヤルゼリー、ニンニク抽出液、乳酸菌発酵生成物などが挙げられる。これらは有効性を有する食品原料として配合される。
なお、動植物抽出物を水系有効成分に添加する場合、硬カプセルを溶解させてしまうことがあるが、このような場合、有効成分としてのアミノ酸を添加することでカプセルの溶解を抑えることができる。
【0018】
硬カプセル内に充填する有効成分を溶解させる極性溶媒は、典型的には、水が挙げられる。
また、硬カプセル内に封入する水以外の極性溶媒のとしては、溶媒それ自体が有効成分となりうる有機酸であることが好ましく、有機酸としては室温下で液体であり固体状の有効成分を溶解できるものであれば、特に限定されることはないが、一般に食品に安全に使用され、経口摂取による有効性が知られている乳酸、環状重合乳酸およびβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)であることが好ましい。
【0019】
有効成分は、極性溶媒に対して30重量パーセント以上含めることが好ましく、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、および好ましくは85%以下、さらに好ましくは75%以下であり、このような濃度にて硬カプセル内に充填することにより、硬カプセルを一か月以上の長期間にわたって維持することができる。
【0020】
その他、有効成分を高濃度で溶解させることができ、かつ、カプセルの安定性に影響を及ぼさない範囲で、上記以外の成分を硬カプセル内に封入してもよい。
このような成分としては、香料、色素、酸味料、調味料、pH調整剤、増粘剤、乳化剤などの食品や医薬品に一般に使用される添加剤が挙げられる。
【0021】
液体充填ハードカプセル製剤は、常法により製造できる。例えば、ハードカプセル剤の場合には成型した空カプセルに内容液を充填して封止することで製造できる。
この封止は、バンディングまたは液体シーリング技術などの当技術分野において知られている手段を用いて行うことができる。このような適当なシーリング技法の例は、WO01/08631、米国特許第2,962,851号、およびFridrun PodczeckおよびBrian E Jones他による「Pharmaceutical capsules」第2版、182~184ページに記載されている技法である。
【実施例0022】
以下に述べる実施例および比較例により、さらに詳細に本願実施形態について説明してゆく。
【0023】
(実施例1)
イオン交換水に種々のアミノ酸および第4級アンモニウム化合物を10重量パーセント溶解した内容液を、ボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、ビーカー上部に設置したテープ粘着部にボディ部の上側の開口部を貼付して、カプセルを固定した状態でカプセルが溶解して内容液が漏出するまでの時間を測定したところ、未添加と比較して、顕著な延長効果が見られた。
【0024】
【0025】
(比較例1)
イオン交換水に種々の有効成分を10重量パーセント溶解した内容液を、ボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、ビーカー上部に設置したテープ粘着部にボディ部の上側の開口部を貼付して、カプセルを固定した状態でカプセルが溶解して内容液が漏出するまでの時間を測定したところ、未添加と比較して、顕著な延長効果が見られたのは添加剤目的で使用される乳酸ナトリウムのみであり、有効成分として使用される種々の食品素材には延長効果はほとんど見られなかった。
【0026】
【0027】
(実施例2)
室温で液状の遊離脂肪酸であるβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)に種々のアミノ酸および第4級アンモニウム化合物を5重量パーセント溶解した内容液を、ボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、ビーカー側面に設置したテープ粘着部にボディ部の側面を貼付して、カプセルを固定した状態で湿度約60%のデシケーター内に保管し、24時間後の外観を比較したところ、未添加と比較して、カプセルの変形や内容液の漏出を顕著に抑制した。
【0028】
【0029】
(比較例2)
室温で液状の遊離脂肪酸であるβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)に種々の有効成分を5重量パーセント溶解した内容液を、ボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロース製カプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、ビーカー側面に設置したテープ粘着部にボディ部の側面を貼付して、カプセルを固定した状態で湿度約60%のデシケーター内に保管し、24時間後の外観を比較したところ、未添加に対して顕著な改善効果は確認されず、添加時の改善効果は実施例に記載した群より劣るものであった。
【0030】
【0031】
(実施例3)
イオン交換水に有効成分として、水に高い溶解度を持つ第4級アンモニウム化合物またはアミノ酸を溶解したカプセル内容液を種々の配合率で調製したのち,カプセル内容液をボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、キャップを被せた後にカプセル嵌合部にエタノール水溶液をシリンジで注入し、立てた状態で2時間放置することで、液体充填ハードカプセルを得た。液体充填ハードカプセルをバイアル内で室温保管し、1ヶ月間カプセルの溶解、変形、液モレなどの外観変化を観察したところ、概ね33%以上の有効成分を溶解した水溶液をカプセルに外観変化なく封入することが可能であった。
【0032】
【0033】
(比較例3)
イオン交換水に、添加物の例として乳酸ナトリウム、有効成分の例としてキシロオリゴ糖またはポリデキストロースを溶解したカプセル内容液を種々の配合率で調製したのち,カプセル内容液をボディ部とキャップ部を分離したヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルのボディ部に8分目程度の容量まで充填し、キャップを被せた後にカプセル嵌合部にエタノール水溶液をシリンジで注入し、立てた状態で2時間放置することで、液体充填ハードカプセルを得た。液体充填ハードカプセルをバイアル内で室温保管し、1ヶ月間カプセルの溶解、変形、液モレなどの外観変化を観察したところ、乳酸ナトリウムには顕著の安定化効果が見られたが、キシロオリゴ糖およびポリデキストロースでは外観変化が確認された。
【0034】
【0035】
実施例3および比較例3を踏まえると、特許文献3に記載されたような従来から硬カプセルに充填する液体組成物にカプセルを安定化するための添加剤である乳酸ナトリウムを用いたときと同等の効果を、特定の有効成分を硬カプセルに充填することにより達成することができることが分かる。さらに、有効成分を一定範囲にて含めるようにすることで、より長期間にわたって硬カプセルを安定的に維持することができることが分かる。