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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063669
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】建屋の据付機構、及び建屋の据付方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 5/02 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
E04H5/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172035
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 博道
(72)【発明者】
【氏名】畠山 大
(72)【発明者】
【氏名】西 昌美
(72)【発明者】
【氏名】デモクラトゥス ニコラス
(57)【要約】
【課題】プラントに配置される建屋を据え付ける技術を提供する。
【解決手段】プラントに配置される建屋の据付機構において、側面ストッパー部41、41aは、建屋を支持する支柱131の下端部に設けられたベースプレート132の側面に対して隙間を介して対向するように配置され、前記隙間には支柱131の移動を抑えるためのスペーサープレート42が挿入される。また上面ストッパー部32は、サポート部31によって前記ベースプレート132の上面に対して隙間を介して対向する高さ位置に支持され、前記ベースプレート132が予め設定された高さ以上に浮き上がらないように押さえる役割を果たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに配置される建屋の据付機構であって、
前記建屋を支持する支柱の下端部に設けられたベースプレートと、
前記建屋が据え付けられる据付面に設定された領域であって、前記ベースプレートが載置される領域である載置領域と隣り合う位置に設けられ、前記ベースプレートの側面に対して隙間を介して対向する側面ストッパー部と、
前記ベースプレートの側面と、当該側面と対向する前記側面ストッパー部との間の前記隙間に挿入され、前記据付面に沿った方向への前記支柱の移動を抑えるためのスペーサープレートと、
前記支柱を挟んで設定された前記ベースプレートの上面の2つの領域に対し、各々隙間を介して対向する高さ位置に設けられ、前記ベースプレートが予め設定された高さ以上に浮き上がらないように押さえるための2つの上面ストッパー部と、
前記上面ストッパー部を各々前記高さ位置にて支持するため、前記据付面に設けられたサポート部と、を備えたことを特徴とする建屋の据付機構。
【請求項2】
前記側面ストッパー部は、前記据付面に沿った互いに異なる方向への前記支柱の移動を抑えるため、前記ベースプレートを囲む複数の位置に設けられ、これら側面ストッパー部と、前記ベースプレートの側面との隙間に、各々、前記スペーサープレートが挿入されることを特徴とする請求項1に記載の建屋の据付機構。
【請求項3】
前記据付面は、輸送可能な構造物に設けられていることと、
前記構造物の輸送期間中に、前記ベースプレートの上面と、当該上面と対向する前記上面ストッパーとの間の前記隙間に挿入され、輸送後は取り外されるクッションプレートを備えたことと、を特徴とする請求項1に記載の建屋の据付機構。
【請求項4】
前記2つの上面ストッパー部は、前記ベースプレートの上面に沿って延在するように設けられ、前記サポート部は、前記各上面ストッパー部の両端を支持する位置に、各々、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建屋の据付機構。
【請求項5】
前記の上面ストッパー部の一端側を支持する前記サポート部と、他端側を支持する前記サポート部とが、前記2つの上面ストッパー部の間で、各々、共通化されていることを特徴とする請求項4に記載の建屋の据付機構。
【請求項6】
プラントに配置される建屋の据付方法であって、
前記建屋が据え付けられる据付面に設定された載置領域に、前記建屋を支持する支柱の下端部に設けられたベースプレートを載置し、前記載置領域に載置されたベースプレートの側面に対し、隙間を介して、前記載置領域と隣り合う位置に設けられた側面ストッパー部を対向させる工程と、
前記ベースプレートの側面と、当該側面と対向する前記側面ストッパー部との間の前記隙間に、前記据付面に沿った方向への前記支柱の移動を抑えるためのスペーサープレートを挿入する工程と、
前記支柱を挟んで設定された前記ベースプレートの上面の2つの領域に対し、各々隙間を介して対向する高さ位置に、前記据付面に設けられたサポート部を用いて支持することにより、前記ベースプレートが予め設定された高さ以上に浮き上がらないように押さえるための2つの上面ストッパー部を設ける工程と、を含むことを特徴とする建屋の据付方法。
【請求項7】
前記側面ストッパー部は、前記据付面に沿った互いに異なる方向への前記支柱の移動を抑えるため、前記ベースプレートを囲む複数の位置に設けられ、前記スペーサーを挿入する工程では、これら側面ストッパー部と、前記ベースプレートの側面との隙間に、各々、前記スペーサープレートを挿入することを特徴とする請求項6に記載の建屋の据付方法。
【請求項8】
前記据付面は、輸送可能な構造物に設けられ、前記構造物を輸送する前に、前記ベースプレートの上面と、当該上面と対向する前記上面ストッパーとの間の前記隙間にクッションプレートを挿入する工程と、
前記構造物の輸送後に、前記クッションプレートを取り外す工程と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の建屋の据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントに配置される建屋を据え付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器を用いて処理対象物の処理を行うプラントには、天然ガスの液化や天然ガス液の分離、回収などを行う天然ガスプラント、原油や各種中間留分の蒸留や脱硫などを行う石油精製プラント、石油化学製品や中間化学品、ポリマーなどの生産を行う化学プラント、医薬品の製造を行う医薬品プラント、低レベル放射性廃棄物の廃棄物処理プラント、野菜などの植物の生産を行う植物工場などがある。これらのプラントは、多数の機器を組み合わせて構成されている。
【0003】
一般に、プラントを構成する多数の機器には、処理対象物の処理を実行する機器の他、電力関連機器や制御関連機器などが併設される。
これらの電力関連機器や制御関連機器は、プラント建設工期の短縮や、建設後の保守管理などの観点から、各々、プラントの本体機器の配置領域とは独立した建屋内にまとめて配置される場合がある(例えば特許文献1)。これらの建屋は、当該建屋を支持する支柱を介して、プラントが建設される敷地の地盤に設けられた基礎や、当該基礎に設けられた架構上に据え付けられる。
【0004】
建屋を据え付けるにあたっては、強い風から受ける風圧や、地震の発生などに伴って発生する建屋の揺れに耐えられるように、基礎や架構の強度設計が行われる。また、遠隔地の工場にて、架構上に建屋が据え付けられた状態のモジュールを建造した後、当該モジュールをプラントの建設敷地へ輸送、配置する建設手法が採用される場合もある。この場合には、輸送に伴って発生する建屋の揺れも考慮して架構の強度設計を行う必要がある。
【0005】
これらの強度設計を行うにあたり、基礎や架構に対して、剛接合により建屋を接続する構造を採用すると、揺れに伴い架構や基礎にモーメントが加わることを前提とした強度設計を行わなければならない。この結果、基礎が大型化したり、より大型の鋼材を用いて架構を構成したりする必要が生じ、プラントの建設コストの増大要因となる。
一方で、ボルトによるピン接合は、架構や基礎に加わるモーメントを小さく抑えることができるが、海上輸送時の揺れに対する疲労強度が低いので、多くのボルトを必要とすることになり、巨大なベースプレートを要してしまう。また基礎や架構との取り合い箇所のボルト穴とベースプレートの穴が合うように建屋を設置する必要があり据え付けの難易度が高い。この手法においてもプラントの建設コストが増大してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/008725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、プラントに配置される建屋を据え付ける技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、プラントに配置される建屋の据付機構であって、
前記建屋を支持する支柱の下端部に設けられたベースプレートと、
前記建屋が据え付けられる据付面に設定された領域であって、前記ベースプレートが載置される領域である載置領域と隣り合う位置に設けられ、前記ベースプレートの側面に対して隙間を介して対向する側面ストッパー部と、
前記ベースプレートの側面と、当該側面と対向する前記側面ストッパー部との間の前記隙間に挿入され、前記据付面に沿った方向への前記支柱の移動を抑えるためのスペーサープレートと、
前記支柱を挟んで設定された前記ベースプレートの上面の2つの領域に対し、各々隙間を介して対向する高さ位置に設けられ、前記ベースプレートが予め設定された高さ以上に浮き上がらないように押さえるための2つの上面ストッパー部と、
前記上面ストッパー部を各々前記高さ位置にて支持するため、前記据付面に設けられたサポート部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記建屋の据付機構は以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記側面ストッパー部は、前記据付面に沿った互いに異なる方向への前記支柱の移動を抑えるため、前記ベースプレートを囲む複数の位置に設けられ、これら側面ストッパー部と、前記ベースプレートの側面との隙間に、各々、前記スペーサープレートが挿入されること。
(b)前記据付面は、輸送可能な構造物に設けられていることと、前記構造物の輸送期間中に、前記ベースプレートの上面と、当該上面と対向する前記上面ストッパーとの間の前記隙間に挿入され、輸送後は取り外されるクッションプレートを備えたこと。
(c)前記2つの上面ストッパー部は、前記ベースプレートの上面に沿って延在するように設けられ、前記サポート部は、前記各上面ストッパー部の両端を支持する位置に、各々、設けられていること。このとき、前記の上面ストッパー部の一端側を支持する前記サポート部と、他端側を支持する前記サポート部とが、前記2つの上面ストッパー部の間で、各々、共通化されていること。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、プラントに設けられる建屋を支持する支柱を、当該建屋の据付面に対して直接接合せず、当該支柱の下端部に設けられたベースプレートの移動を側面側及び上面側から抑える側面ストッパー部と上面ストッパー部とを利用して据え付ける。この構成により、建屋の揺れの発生によって据付面側に加わるモーメントの大きさを抑制し、プラントを構成する基礎や架構の大型化を抑え、プラントの建設コストの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る据付機構を用いて建屋の据付が行われるLNGプラントの模式図である。
図2】前記据付機構の外観斜視図である。
図3】前記据付機構の第1の分解斜視図である。
図4】前記据付機構の第2の分解斜視図である。
図5】前記据付機構の第3の分解斜視図である。
図6】変形例に係る据付機構の外観斜視図である。
図7】水上輸送されるLNGプラントの模式図である。
図8】水上輸送に用いられる据付機構の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、プラントの一例として、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)の生産を行うLNGプラント1に対し、本開示の据付機構(据付方法)を用いて建屋を据え付ける実施の形態について説明する。
図1は、LNGプラント1の一部を模式的に示した側面図である。LNGプラント1は、気体状の天然ガス(NG:Natural Gas)に含まれる液体を分離し、水銀や水分、重質分などの不純物を除去した後、NGを冷却、液化してLNGを生産する各種の処理を行うための多数の機器を備えている。
【0013】
また、LNGプラント1には、各処理にて実施される種々の加熱操作に用いられる熱媒(例えばホットオイルや蒸気など)の加熱を行うオイルヒーターやボイラー、LNGプラント1内で消費される電力を供給するガスタービン発電機やガスエンジン発電機などの付帯設備も設置される。これらの付帯設備にも多数の機器が設けられる。
【0014】
LNGプラント1を構成する多数の機器は、例えば処理や付帯設備の種類ごとにグループ分けされ、複数の架構100内に分けて設けられる。本例の架構100は、これらの機器を上下方向に多層に配置することが可能な鉄骨製の骨組み構造物として構成される。
例えば図1の中央には、LNGを生産する処理の一つを実施する処理部11が配置される。処理部11には、塔槽や熱交換器など、動力機を備えない静機器101、ポンプなどの動力機を備えた動機器102、各静機器101、動機器102間や後述するパイプラック12側の動機器102との間を接続する接続配管(不図示)などが設けられる。
【0015】
また図1において、処理部11の右手にはパイプラック12が配置される。パイプラック12は、架構100に対し、各処理部11間で受け渡される流体が流れる多数の配管103を配置した構成である。
また図1に示すパイプラック12の上面には、所定の処理部11で取り扱われる流体の冷却を行うための多数台の空冷式熱交換器(ACHE:Air-Cooled Heat Exchanger)104が整列配置される。
【0016】
LNGプラント1に設けられた機器のうち、動機器102のように、動力機などにて電力を消費する電力消費機器に対しては、各電力消費機器の定格電圧に応じて変圧された電力が供給される。
そこで、これらの電力消費機器には、電圧変換を行う変電器や、各電力消費機器への給電制御を行う給電制御設備、遮断機や断路器などの電力供給機器が設けられる。これらの電力供給機器は、周囲から区画された外郭構造物からなる建屋13内に収容される。この建屋13は、変電室と呼ばれ、電力消費機器が収容された架構100に併設される。
【0017】
また、LNGプラント1に設けられた機器には、流体の流量を調整する流量調整弁や塔槽内の圧力を調整する圧力調整弁、温度調整の対象となる流体の熱交換器出口温度を調整するために、熱媒や冷媒の流量を増減する流量調整弁などのコントロール弁や、塔槽内の液位などに応じて、開閉動作が実行される開閉弁などの各種の被制御機器が含まれる。
これらの被制御機器にはコントローラが併設され、流体の流量、圧力、温度や液位などを検出部にて検出した結果に基づいて、コントローラから被制御機器に制御信号を出力し、各被制御機器の動作制御を行う制御ループが構築される。
【0018】
このとき、FCS(Field Control Station)などと呼ばれる制御情報出力機器が設けられる。制御情報出力機器は、LNGプラント1全体の統括制御を行う中央制御室にて、オペレータまたは自動制御装置から受け付けた流量設定値や圧力設定値、温度設定値など、被制御機器の動作制御に係る情報を、被制御機器の動作制御を行うコントローラに対して出力したり、検出部にて検出された流体の流量、圧力、温度や液位などの情報を中央制御室に向けて出力したりする。この制御情報出力機器についても、周囲から区画された外郭構造物からなる建屋13内に収容される。この建屋13は機器制御室と呼ばれ、既述の変電室とは独立して、被制御機器が収容された架構100に併設される。
【0019】
図1に示す例において、処理部11、パイプラック12の架構100、変電室や機器制御室である建屋13は、LNGプラント1が建設される敷地に予め設けられた不図示のコンクリート基礎上に設けられる。
この場合において建屋13は、当該建屋13を構成する外郭構造物の下面から下方側へ向けて伸びるように設けられた複数の支柱131を介し、既述のコンクリート基礎の据付面2上に据え付けられる。
【0020】
この建屋13を据え付けるにあたり、本例のLNGプラント1は、剛接合を用いずに、据付面2に対して支柱131を据え付ける据付機構を採用する。以下、図2図5を参照しながら、当該据付機構の詳細な構成について説明する。
【0021】
図2は、本例の据付機構を用い、建屋13の支柱131の下端部を、据付面2に対して据え付けた状態を示す一部破断斜視図である。また、図3図5は、この据付機構を用い、据付面2に対して支柱131を据え付ける手順を示す分解斜視図である。
【0022】
図3に示すように、支柱131の下端部には、例えば下面が平坦な平面視矩形状の鉄鋼材から成るベースプレート132が設けられる。支柱131に対し、ベースプレート132は例えば溶接により接合される。ベースプレート132は本例の据付機構の一部を構成する。
【0023】
一方、据付面2の上面には、例えば平坦な載置領域20が設定されており、この載置領域20に対してベースプレート132を載置した後、据付機構を用いて建屋13を据え付ける。このとき、ベースプレート132は、溶接やボルトによる据付面2に対する固定は行われない。
【0024】
図2に示すように、さらに据付機構は、据付面2の載置領域20に載置されたベースプレート132の側面に対して隙間を介して対向する位置に設けられた側面ストッパー部41、41aと、ベースプレート132の上面に対して隙間を介して対向する高さ位置に設けられた上面ストッパー部であるヨーク32とを備える。
【0025】
図3に示すように、側面ストッパー部41、41aは、ベースプレート132が配置される載置領域20を囲むように、ベースプレート132の4つの側面に各々対応して配置された部材である。各側面ストッパー部41、41aは、例えば鉄鋼材により構成される。図2に示す据付機構の例において、ヨーク32に沿って配置される2つの側面ストッパー部41は、厚板状の部材により構成されている。一方、後述のサポート部31とベースプレート132との間に配置されるストッパー部41aは、ベースプレート132の側面と交差する方向に沿った寸法が短い棒板状の部材により構成されている(図2中にサポート部31の一部を切り欠いて示した領域参照)。
なお、図2に示す例に替えて、ベースプレート132の4つの側面の全てに対応して共通の厚板状の側面ストッパー部41を設けてもよい。この場合には、サポート部31aの下端部に切り欠きを設け、側面ストッパー部41との干渉を避ける構成を例示できる。
【0026】
各側面ストッパー部41、41aの配置位置は、載置領域20にベースプレート132を載置したとき、各側面に対して、数mm~数cm程度の隙間を介して対向する位置に設定される。
この状態で、載置領域20にベースプレート132を載置することにより、ベースプレート132の側面に対し、隙間を介して側面ストッパー部41、41aを対向させることができる(側面ストッパー部41、41aを対向させる工程)。
【0027】
各側面ストッパー部41、41aは、載置領域20の周囲の据付面2に対して固定される。側面ストッパー部41、41aの固定の手法に特段の限定はなく、据付面2を構成する部材に適した固定法を採用してよい。例えば据付面2がコンクリート材により構成される場合は、ボルト穴を設けた据付面2と側面ストッパー部41、41aとをボルトにより締結してもよい。また、据付面2が鉄鋼材である場合は、据付面2に対してピン接合により側面ストッパー部41、41aを接合してもよい。
【0028】
図4に示すように、互いに対向するベースプレート132と各側面ストッパー部41、41aとの隙間には、当該隙間を埋めるように細長い薄板状のスペーサープレート42が挿入される(スペーサープレート42を挿入する工程)。スペーサープレート42は、据付面2に沿った方向への支柱131(建屋13)のずれを抑える役割を果たす。スペーサープレート42は、金属材や硬質ゴム材などにより構成され、ボルト421を用いてベースプレート132の側壁面に締結される。
【0029】
また図2図3に示すように、棒板状の各側面ストッパー部41aと対向する位置には、ヨーク32を支持するサポート部31が設けられる。例えばサポート部31は、矩形状のベースプレート132の辺に並行して伸びる側壁面を有する板状の部材により構成される。これらのサポート部31が1組となって、支柱131を挟んで配置される2枚のヨーク32の左右両端を支持する。各サポート部31は、例えば鉄鋼材により構成される。
【0030】
本例の据付機構においては、支柱131を挟んで設定されたベースプレート132の上面の2つの領域に対し、各々隙間を介して対向するように2つのヨーク32が設けられる。これらのヨーク32の配置に対応して、前記2つの領域を各々挟むように、1組のサポート部31が配置され、ベースプレート132の上面に沿って延在した状態となるようにヨーク32を支持する(ヨーク32を設ける工程)。
【0031】
これらのサポート部31は、側面ストッパー部41、41aと同様に据付面2に対して固定される。例えば据付面2がコンクリート材により構成される場合は、サポート部31の下端部に固定用のベースプレートを設け、ボルトを用いてこのベースプレートを据付面2に締結してもよい。また、据付面2が鉄鋼材である場合は、据付面2に対してピン接合によりサポート部31を接合してもよい。
【0032】
図中、符号311は、据付面2に対するサポート部31の固定を補強する補強部を指す。補強部311を設ける場合には、その形状や設置数に特段の限定はない。例えば、図2図3などに示すように、ヨーク32を支持する支持面とは反対側の面に、サポート部31の高さ方向に沿って、サポート部31及び補強部311全体の横断面がπ字状となるように、互いに間隔を空けて2枚の板状の補強部311を設けてもよい。さらに、3枚以上の補強部311を設けてもよい。
この他、間隔を空けて並行に配置した2枚の板材の間に複数の補強部311を設けた構造体を用い、当該構造体の一方側の板材をサポート部31としてヨーク32を支持する構成を採用してもよい。
【0033】
図5に示すように、ヨーク32は、ベースプレート132を挟んで互いに対向して配置された各組のサポート部31の支持面の間に架け渡される厚板状の部材である。ヨーク32は、例えば鉄鋼材により構成される。各ヨーク32は、ベースプレート132の上面に対して数mm~数cm程度の隙間を介して対向する高さ位置に設けられる。各ヨーク32は、例えば溶接によりサポート部31の支持面に接合される。
なお、既述のスペーサープレート42が挿入される、ベースプレート132と側面ストッパー部41、41aとの側面間の隙間と異なり、ベースプレート132の上面とヨーク32との隙間は、他の部材が挿入された状態とはなっていない。
【0034】
以上、図3図5を用いて説明した手順により、載置領域20に載置された支柱131が、据付機構によって据付面2に据え付けられた状態となる(図2)。そして、建屋13に設けられた複数の支柱131は、各々、上述の据付機構を用いて、据付面2の予め設定された載置領域20に据え付けられる。これらの据付作業により、建屋13が、LNGプラント1の所定の敷地に配置された状態となる。
【0035】
本例の据付機構を用いて据え付けられた建屋13において、強い風や地震などに伴って揺れが発生したとする。このとき本例の据付機構には、建屋13を下面側から支持する複数の支柱131の下端部において、載置領域20に載置されたベースプレート132の各側面に対向するように側面ストッパー部41、41aが配置されている。そして、これらベースプレート132と各側面ストッパー部41、41aとの隙間には、スペーサープレート42が挿入されている。この構成により、前記揺れの横方向の成分の力が、建屋13の自重の影響を上回った場合であっても、建屋13(各支柱131)は、据付面2に沿った方向へのずれが抑えられる。
【0036】
また、前記揺れの縦方向の成分の力が、建屋13の自重を上回った場合には、ベースプレート132は据付面2から浮き上がることとなる。このとき、本例の据付機構には、支柱131を挟んで設定されたベースプレート132の上面の2つの領域に対し、各々隙間を介して対向するようにヨーク32が設けられている。この構成により、ベースプレート132は、ヨーク32との隙間によって規定される予め設定された高さ以上に浮き上がらないように押さえるこができる。この隙間の高さを数mm~数cm程度に抑えることにより、ベースプレート132が浮き上がってから落下することに伴う衝撃の大きさを予め設定された範囲内に抑え、ベースプレート132の本体やその内部に収容される機器の破損を抑えることができる。
【0037】
一方で、ベースプレート132は据付面2(載置領域20)に対して載置されているにすぎず、当該据付面2に対して直接接合されていない。このため、据付面2に対して、剛接合により支柱131を接続する場合と比較して、建屋13にて揺れが発生した場合に、据付面2に対して殆どモーメントが加わらない。この結果、基礎の大型化を抑え、LNGプラント1の建設コストの増大を抑えることができる。
【0038】
図6は、図2に示す据付機構の変形例である。この例は、ヨーク32の一端側を支持するサポート部31aと、他端側を支持するサポート部31aとが、2つのヨーク32の間で、各々、分離された構成である。
この場合は、図2に記載の側面ストッパー部41aと比較して、サポート部31aとの干渉が発生しないので、ヨーク32に沿って設けられているものと同様の厚板状の側面ストッパー部41を採用することもできる。
【0039】
次いで、輸送可能な構造物である、LNGプラント1のモジュール1aに建屋13が設けられる場合の実施の形態について図7図8を参照しながら説明する。
近年、LNGプラント1の建設にあたって、LNGプラント1を複数のモジュール1aに分割し、建設敷地から離れた工場にて、架構100に対して静機器101や動機器102が配置された状態のモジュール1aを建造する手法が採用される場合がある。建造されたモジュール1aは、各々、建設敷地へ輸送、配置された後、互いに接続されてLNGプラント1が構成される。
【0040】
上述の例において、モジュール1aに対して予め建屋13が据え付けられる場合がある。この場合には、モジュール1aの架構100が建屋13の据付面2を構成することになる。この場合には、建屋13の据え付け機構は、架構100を構成する鉄骨製の骨組み構造物に設けられる。
【0041】
ここで、数百~数千トンにもなるモジュール1aの輸送にあたっては、輸送船5を用いた水上輸送が採用される。一方で、モジュール1aの水上輸送に当たっては、波浪の影響を受けて輸送船5が上下に揺れるため、モジュール1aに対しても常時、上下に揺れる力が加わることになる。このとき、図2を用いて説明した据付機構のように、ベースプレート132の上面とヨーク32との間に隙間が形成されたままの状態とすると、大きな揺れが発生する度にベースプレート132が浮き上がり、ヨーク32と繰り返し衝突することにより、ヨーク32を損傷してしまうおそれもある。
【0042】
そこでモジュール1aの輸送期間中は、図8に示すように、ベースプレート132の上面とヨーク32との隙間にクッションプレート43を挿入する(クッションプレート43を挿入する工程)。クッションプレート43は、例えば木材や硬質ゴム材などにより構成される。ヨーク32とベースプレート132との間にクッションプレート43を配置することにより、モジュール1aの揺れに伴ってヨーク32に対して繰り返し加わる力が低減され、ヨーク32の損傷を抑えることができる。
【0043】
水上輸送が完了し、その後の陸上輸送を経てLNGプラント1の建設敷地にモジュール1aが配置された後は、クッションプレート43を取り外し、ベースプレート132とヨーク32との隙間を開放する(クッションプレート43を取り外す工程)。モジュール1aの配置を終えた後は、水上輸送期間中と比較して建屋13にて定常的に大きな揺れが生じるおそれは小さい。そこで、クッションプレート43を用いて塞いでいた隙間を開放することにより、ベースプレート132が浮き上がるような大きな揺れが生じない限り、ベースプレート132からヨーク32対して力が加わらない状態とすることができる。
【0044】
ここで図8中の符号431は、クッションプレート43がベースプレート132とヨーク32との隙間から抜け落ちることを防止するためのストッパーを指す。例えばストッパー431は、木材や硬質ゴム材などにより構成され、ボルトによりクッションプレート43に対して締結される。ストッパー431を利用することにより、ベースプレート132に対してボルトによりクッションプレート43を締結しなくてもクッションプレート43の脱落を防止することができる。このため、ベースプレート132の本体にボルト穴を設ける必要がない。
【0045】
ベースプレート132にボルト穴を設けてしまうと、クッションプレート43を取り外した後、当該ボルト穴に水が溜まり、腐食が進行してしまうおそれもある。そこでストッパー431を用い、ボルトを利用せずにクッションプレート43の脱落防止を図ることにより、ボルト穴の形成に起因するベースプレート132の腐食発生を防止することができる。
【0046】
以上、本開示の据付機構をLNGプラント1に併設される建屋13に適用した実施の形態について説明したが、当該据付機構を適用可能なプラントは、LNGプラント1に限定されない。例えば、天然ガス中に含まれる天然ガス液の分離、回収を行う天然ガスプラント、原油や各種中間留分の蒸留や脱硫などを行う石油精製プラント、石油化学製品や中間化学品、ポリマーなどの生産を行う化学プラント、医薬品やその中間製品の製造を行う医薬品プラント、低レベル放射性廃棄物の処理を行う廃棄物処理プラント、野菜などの植物の生産を行う植物工場など、各種の処理対象物を処理するプラント(但し、自動車、機械、電子機器、半導体装置などの機器製造工場を除く)に併設される建屋13に対しても、本開示の据付機構を適用することができる。
【0047】
このとき、プラントに設けられる処理対象物を処理する機器や、付帯設備に設けられる機器は、図1に例示したLNGプラント1のように、骨組み構造物である架構100に配置される場合に限定されない。例えば外郭構造物である本体建屋にこれらの機器を収容し、当該本体建屋に併設される、本体建屋よりも小型の建屋13について、本例の据付機構を利用して据え付けてもよい。
【0048】
また、本例の据付機構を利用して据え付けられる建屋13において、当該建屋13に収容される機器の種類は、既述の電力供給機器や制御情報出力機器に限定されない。例えば処理対象物の処理に係る機器や、熱媒、電気の供給などに係る付帯設備の機器の一部を収容した建屋13についても、本例の据付機構を利用して据え付けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 LNGプラント
1a モジュール
100 架構
13 建屋
131 支柱
132 ベースプレート
2 据付面
20 載置領域
31、31a
サポート部
32 ヨーク
41、41a
側面ストッパー部
42 スペーサープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8