(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063672
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】振動子及び振動装置
(51)【国際特許分類】
H01L 41/047 20060101AFI20220415BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20220415BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20220415BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
H01L41/047
B06B1/06 Z
H01L41/04
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172041
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 正也
(72)【発明者】
【氏名】木村 碩志
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA03
5D107CC01
(57)【要約】
【課題】より振動効率の高い振動子に関する技術を提供する。
【解決手段】振動子は、板状の圧電部材と、圧電部材の第一面に密着して設けられた第一電極と、圧電部材の第一面に対向する第二面に密着して設けられた第二電極とを備える。第一電極は、第一面の面方向に周期パターンを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の圧電部材と、
前記圧電部材の第一面に密着して設けられた第一電極と、
前記圧電部材の前記第一面に対向する第二面に密着して設けられた第二電極と
を備え、
前記第一電極は、前記第一面の面方向に周期パターンを有する、振動子。
【請求項2】
前記周期パターンは、格子状である、請求項1に記載の振動子。
【請求項3】
格子状である前記周期パターンは、第一軸方向のピッチと、前記第一軸に直交する第二軸方向のピッチが等しく、格子点に円形ランドを有し、
前記円形ランドの直径は、前記ピッチの1/√2以下である、請求項2に記載の振動子。
【請求項4】
前記周期パターンは、等間隔に電極指が延在する櫛状パターンである、請求項1に記載の振動子。
【請求項5】
前記第一電極は、第一櫛状電極と、第二櫛状電極とを有し、
前記第一櫛状電極と、前記第二櫛状電極は、それぞれの電極指が前記第一面上に交互に配置されるように設けられている、請求項4に記載の振動子。
【請求項6】
前記第二電極は、板形状である、請求項1から5のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項7】
前記第二電極は、前記第二面の面方向に周期パターンを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項8】
前記第一電極の周期パターンと前記第二電極の周期パターンが互いに同位相となるように、前記圧電部材に対して前記第一電極と前記第二電極が設けられている、請求項7に記載の振動子。
【請求項9】
板状の圧電部材と、
前記圧電部材の第一面に密着して設けられた第一電極と、
前記圧電部材の前記第一面に対向する第二面に密着して設けられた第二電極と
前記第一電極と前記第二電極に電圧を印加する制御部と
を備え、
前記第一電極は、前記第一面の面方向に周期パターンを有する、振動装置。
【請求項10】
前記周期パターンは、等間隔に電極指が延在する櫛状パターンであり、
前記第一電極は、第一櫛状電極と、第二櫛状電極とを有し、
前記第一櫛状電極と、前記第二櫛状電極は、それぞれの電極指が前記第一面上に交互に配置されるように設けられ、
前記制御部は、前記第一櫛状電極に印加される電圧と、前記第二櫛状電極に印加される電圧とが逆位相になるように制御する、請求項9に記載の振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子及び振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子を振動させる振動子が知られている。特許文献1には、振動子の振動の振幅を制御部により制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動子の振動効率は、振動子の構成等によって異なる。より振動効率の高い振動子が求められている。
【0005】
本発明は、より振動効率の高い振動子に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る振動子は、板状の圧電部材と、前記圧電部材の第一面に密着して設けられた第一電極と、前記圧電部材の前記第一面に対向する第二面に密着して設けられた第二電極とを備え、前記第一電極は、前記第一面の面方向に周期パターンを有する。
【0007】
本発明の一態様に係る振動装置は、板状の圧電部材と、前記圧電部材の第一面に密着して設けられた第一電極と、前記圧電部材の前記第一面に対向する第二面に密着して設けられた第二電極と前記第一電極と前記第二電極に電圧を印加する制御部とを備え、前記第一電極は、前記第一面の面方向に周期パターンを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より振動効率の高い振動子に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る振動装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る振動子の構成の一例を示す図である。
【
図3】一実施形態において電圧印加された圧電材料の外観の一例を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電極の形状の一例を概略的に示す図である。
【
図5】実施例1に係る振動子の外観を概略的に示す図である。
【
図6】実施例1に係る振動子の断面を概略的に示す図である。
【
図7】実施例1に係る振動子の電気的特性を示す図である。
【
図8】比較例1に係る振動子の断面を概略的に示す図である。
【
図9】比較例1に係る振動子の電気的特性を示す図である。
【
図10】実施例2に係る振動装置を概念的に説明するための図である。
【
図11】実施例2に係る電極の形状の一例を概略的に示す図である。
【
図12】実施例2に係る電極の形状の他の例を概略的に示す図である。
【
図13】実施例3に係る電極の形状の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る一実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0011】
図1を参照して、本実施形態に係る振動装置の構成の一例を説明する。
図1に示すように、振動装置100は、振動子10、電源20、及び制御回路30を備える。振動子10は、圧電素子等により構成され、電圧の印加により振動する部材である。電源20は、振動子10に電気的に接続され、振動子10に電圧を印加するための交流電源である。制御回路30は、電源20から振動子10への電圧印加を制御する回路である。
【0012】
図2を参照して、振動子10の構成の一例を説明する。
図2に示すように、振動子10は、圧電材料11、電極12、及び電極13を備える。圧電材料11は、板状に形成されている。圧電材料11の一方の面(第一面)には、電極12の面が密着するように、電極12が設けられている。また、圧電材料11の第一面に対向する面(第二面)には、電極13の面が密着しするように、電極13が設けられている。すなわち、電極12上に、圧電材料11と電極13とが順に積層される。電極12と電極13とを介して、圧電材料11の第一面及び第二面に対して電圧が印加される。
【0013】
圧電材料11は、板状に形成された圧電部材である。また、圧電材料11は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate)などの圧電セラミックスを含んで構成される。圧電材料11は、これに限定されず、例えば、水晶振動子、又はLiNbO3を含んで構成されてもよい。電極12及び電極13を介して所定の電圧が圧電材料11に対して印加されることにより、圧電材料11の面は、定常波を形成して振動する。すなわち、電極12及び電極13は、励振電極である。
【0014】
図3は、圧電材料11に対する電圧印加により形成される定常波の一例を概念的に示す図である。
図3に示すように、圧電材料11の面には、定常波振動により複数の山部と谷部が形成される。例えば、領域a1には山が形成されている。領域a1に面方向に隣接する領域a2には谷が形成されている。また、
図3に示された状態から所定時間後には、領域a1に谷が形成され、領域a2に山が形成される。領域a1、領域a2及び圧電材料11の面の他の領域は、圧電材料11に印加される交流電圧の周波数に応じた周期で、山の形成と谷の形成とを交互に繰り返す。
【0015】
図4は、電極12の形状の一例を概略的に示す図である。電極12は、圧電材料11の面方向に周期パターンを有する形状である。詳細には、電極12は、圧電材料11の第一面において、電圧が印加される領域と、印加されない領域とを周期的パターンで規定可能な形状で形成されている。
図4に示す電極12は、周期パターンとして格子状の形状を有する。電極12が有する周期パターンは、格子状以外のパターンが採用されてもよく、その例は後述する。
【0016】
電極13の形状は、例えば、
図2に示すように、圧電材料11の第二面のうち振動領域の全体を覆う板状である。電極13の形状は、電極12と同様に、圧電材料11の面方向に周期パターンであってもよい。すなわち、圧電材料11のそれぞれの面に張り付けられた電極の一方又は双方は、周期パターンを有する。
【0017】
電極13の形状が周期パターンである場合、電極12の周期パターンと、電極13の周期パターンが互いに同位相となるように、圧電材料11に対して電極12と電極13が設けられてもよい。この場合、例えば、周期パターンが格子状であるとき、電極12の格子点の位置の圧電材料11を挟んで対向する位置に、電極13の格子点が配置される。
【0018】
以上のように本実施形態によれば、振動子10は、板状の圧電材料11と、電極12と、電極13とを備える。電極12は、圧電材料11の第一面に密着して設けられている。電極13は、圧電材料11の第一面に対向する第二面に密着して設けられている。電極12は、圧電材料11の第一面の面方向に周期パターンを有する。詳細には、電極12は、圧電材料11の第一面において、電極12を介して電圧が印加される領域と、印加されない領域とを周期的パターンで規定する。
【0019】
圧電材料11の面には、電圧印加による逆圧電効果に起因する変位(以下、「第一変位」とも称する。)と、振動モードに起因する変位(以下、「第二変位」とも称する。)とが生じる。第一変位の向きが第二変位の向きと異なる場合、変位を打ち消し合う。例えば、圧電材料11の面のある領域における第一変位が圧電材料11の厚み方向に膨らむ変位であり、第二変位が圧電材料11の厚み方向に縮む変位である場合、二つの変位は互いに打ち消し合う。
【0020】
本実施形態によれば、電極12は、圧電材料11の第一面において、電圧が印加される領域と、印加されない領域とを周期的パターンで規定可能な形状であるため、電圧印加されない領域における第一変位を低減する。その結果、上述した変位の打ち消し合いを低減することができ、より振動効率の高い振動子を実現することができる。
【0021】
以下、実施例及び比較例を示し、本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0022】
<実施例1>
実施例1では、振動子10の圧電材料11として、富士セラミックス社製のプレート型PZT「C-213」を使用した。圧電材料11の縦幅及び横幅はそれぞれ50mmである。
【0023】
図5は、振動子10を電極12の上方から見た外観を示す図である。
図5に示すように、電極12の形状は、格子状の周期パターンを有する。当該周期パターンは、縦軸方向(第一軸方向)のピッチL1と、縦軸に直行する横軸方向(第二軸方向)のピッチL2が等しい。なお、ピッチL1は、所定の範囲内でピッチL2と差(例えば、5%以内の差)があってもよい。
【0024】
また、電極12の格子点は、略円形の形状(円形ランド)を有する。実施例1において、ピッチL1=2.70mm、円形ランドの直径L3=1.35mmである。円形ランドの直径L3は、ピッチL1より短く、好ましくは、ピッチL1の1/√2以下である。また、ピッチL1は、ピッチL1/(圧電材料11の厚み)=1.35~1.43、又は、ピッチL1/(圧電材料11の厚み)=1.25~1.50となるように設定されてもよい。
【0025】
図5に示すように、振動子10の電極12が設けられた側の面において、電極12を有さない領域(すなわち、電極が除去された領域、以下、「電極除去領域」とも称する。)には、圧電材料11の面が露出している。また、電極12の面において電極除去領域が、縦方向に19列、横方向に19列で周期的に並ぶように、電極12は形成されている。
【0026】
図6を参照して、振動子10に対する電圧印加により形成される定常波の時系列の形状変化を説明する。
図6は、時間t1(位相0のとき)と、時間t1から半周期経過後の時間t2(位相πのとき)における振動子10の断面I-Iを示している。振動子10の断面I-Iは、
図3のI-Iにおける圧電材料11の断面に対してさらに電極12,13の断面を示したものである。
図6に示すように、電極12は、圧電材料11の面の一部を覆い、他の部分を露出するように、圧電材料11の面に密着して設けられている。
【0027】
時間t1において、振動子10の圧電材料11は、印加電圧に共振し、厚み方向に膨らむことで面に山を形成する領域と、厚み方向に縮むことで面に谷を形成する領域とを有する。当該山領域と、谷領域は、圧電材料11の面方向に交互に並んで出現する。時間t1において山領域であった領域は、時間t2において谷領域となり、時間t1において谷領域であった領域は、時間t2において山領域となる。このように、圧電材料11の面は、山領域の形成と、谷領域の形成を周期的に繰り返す。
【0028】
図7は、振動子10の電気的特性として、周波数に対するコンダクタンス及びサセプタンスの変化を示すグラフである。グラフの横軸は周波数を示す。左縦軸はコンダクタンスを示し、右縦軸はサセプタンスを示す。
図7に示すように、共振周波数909.8kHzにおいて、コンダクタンスは約0.47S、サセプタンスは約0.05Sである。
【0029】
また、測定の結果、力率=99%、Q値=1870であった。
【0030】
実施例1では、制御回路30の制御下で、共振周波数909.8kHzで圧電材料11に電圧印加する。このとき、圧電材料11は、定常波の37次振動モードで振動する。すなわち、圧電材料11の面には、例えば、時間t1において、定常波により縦方向及び横方向のそれぞれに19列の谷領域と、18列の山領域とを形成する。
図5を参照して説明した電極12が圧電材料11の面に密着するように設けられていることにより、時間t1において、圧電材料11の面における電極12の格子点の位置に山部が形成され、電極12の電極除去領域の位置に谷部が形成される。また、時間t2において、圧電材料11の面における電極12の格子点の位置に谷部が形成され、電極12の電極除去領域の位置に山部が形成される。すなわち、制御回路30の制御下、電極12及び電極13に電圧を印加し、周期パターンを有する電極12の形状に応じた振動モードの定常波で圧電材料11を励振する。
【0031】
なお、電極12の製造の際の周期パターンのピッチの決定は、シミレーションに基づいて行う。詳細には、圧電材料11に共振周波数で電圧を印加したときの振動モードの次数をシミュレーションにより特定する。特定された次数で圧電材料11に定常波が形成されたときに、振動の山部と谷部の位置が対応するように、電極12の周期パターンを決定する。例えば、シミュレーションにより特定された振動モードの次数が37次である場合、電極除去領域が、縦方向に19列、横方向に19列で周期的に並ぶように電極12を形成してもよい。その後、圧電材料11に電極12及び電極13を張り付けた振動子10に対して共振周波数で電圧を印加し、周波数を調整しながら振動の振幅などを計測し、最も振動の振幅の大きい(又は振動の質の良い)周波数を特定する。このように特定された周波数を振動子10の駆動のための電圧の周波数として決定する。
【0032】
実施例1によれば、電極12は、圧電材料11の面に形成される定常波の周期パターンに応じた形状の周期パターンを有する。そのため、電圧印加による逆圧電効果に起因する変位の向きと、振動モードに起因する変位の向きとが異なる場合に生じる変位の打ち消し合いを低減することができる。
【0033】
<比較例1>
次に、実施例1の振動子10と振動効率を比較するための比較例1の振動子60を説明する。実施例1では、圧電材料の第一面には周期パターンを有する電極が、圧電材料の第一面に対向する第二面には板状の電極が設けられていた。比較例1の振動子60では、圧電材料の第一面及び第二面のそれぞれに板状の電極が設けられている。比較例1の振動子60において、圧電材料の第一面及び第二面のそれぞれに、板状の電極の面が密着して貼り付けられている。また、振動子60の圧電材料は、実施例1における圧電材料11と同じ材料が使用される。
【0034】
図8は、時間t11(位相0のとき)と、時間t11から半周期経過後の時間t12(位相πのとき)における振動子60の断面を示している。
図8に示すように、振動子60において、電極62は、圧電材料61の第一面の全体を覆い、電極63は、圧電材料61の第一面に対向する第二面の全体を覆う。その結果、比較例1では、実施例1とは異なり、電圧印加による逆圧電効果に起因する変位の向きと、振動モードに起因する変位の向きとが異なる場合に生じる変位の打ち消し合いを低減することができない。
【0035】
図9は、振動子60の電気的特性として、周波数に対するコンダクタンス及びサセプタンスの変化を示すグラフである。グラフの横軸は周波数を示す。左縦軸はコンダクタンスを示し、右縦軸はサセプタンスを示す。
図9に示すように、共振周波数において、コンダクタンスの最大値は約0.04S程度である。すなわち、比較例1において、共振周波数におけるコンダクタンスの値は、
図7を参照して説明した実施例1における共振周波数におけるコンダクタンスの1/10程度である。従って、振動子60は、振動子10と比較して振動効率が低いことが把握できる。
【0036】
また、測定の結果、力率=35%、Q値=730であった。これらの値は、上記で説明した実施例1における値の35%~40%程度の値である。
【0037】
<実施例2>
実施例2は、振動装置100を皮膚感覚提示装置として構成する実施例である。物体の表面の摩擦係数を変えると、ざらざらした皮膚感覚を疑似的に作ることができる。このような性質を利用して、振動装置100は、制御回路30の制御により電極12及び電極13に電圧を印加して圧電材料11を励振して振動子10の面の摩擦係数を変化させる。振動装置100は、これにより、振動子10の面(すなわち、電極12及び電極13の面)に擬似的な皮膚感覚を提示する。
【0038】
図10を参照して、皮膚感覚提示装置として機能する振動装置100により提示される擬似的な皮膚感覚を説明する。
図10の上部には、振動装置100の振動子10と、振動子10の上面に触れたユーザの指が示されている。
図10の下部のグラフには、振動子10に生じる超音波振動の経時変化が示されている。制御回路30の制御により振動子10に超音波振動が発生したタイミングで、ユーザは、ざらざらとした擬似的な皮膚感覚を得る。また、ユーザの指による振動子10の上面のなぞり動作を検出したことに応じて、振動子10に振動を発生させるように制御回路30により制御してもよい。なぞり動作の検出のために、例えば、振動子10の圧電材料11の面に密着するようにさらに検出電極を設けてもよい。
【0039】
図11を参照して、上記で説明した電極12の代わりに圧電材料11の第一面に密着して設けられた電極121について説明する。電極121は、電極121a及び電極121bを有する。電極121aは、制御回路30の制御に基づいて電圧が印加されることにより圧電材料11を励振する励振電極である。電極121bは、検出電極である。(例えば、ユーザのなぞり動作による)圧電材料11の振動の変化により、電極121bから出力される電圧に変化が生じる。当該電圧の変化により、振動子10に対するユーザのなぞり動作(又は、ユーザが振動子10に接触したこと)が検知される。
【0040】
電極121a及び電極121bの形状はそれぞれ周期パターンを有する。
図11に示すように、電極121a及び電極121bの周期パターンは、等間隔に電極指が延在する櫛状パターンである。電極121aと、電極121bは、それぞれの電極指が圧電材料11の第一面上に交互に配置されるように設けられている。電極121a及び電極121bのそれぞれの電極指上には、等間隔に略円形状(円形ランド)が形成されている。また、電極121a及び電極121bの電極指は、圧電材料11の縦軸方向に延在する。電極指が延在する方向は、縦軸方向以外であってもよく、例えば、圧電材料11の横軸方向、又は対角線方向であってもよい。また、同じ電極指上に形成された円形ランドの中心間の距離をピッチL4とすると、円形ランドの直径は、例えば、ピッチL4の1/√2以下である。電極121a及び電極121bは、電極121a及び電極121bの円形ランドが、圧電材料11の面上において
図5に示した電極12の円形ランドと同じ位置に配置されるように、配置される。
【0041】
図12は、圧電材料11の対角線方向に電極指が延在する電極の例を示している。
図12に示すように、電極122は、電極122a及び電極122bを有する。電極122a及び電極122bは、等間隔に電極指が圧電材料11の対角線方向に延在する周期的な櫛状パターンである。
【0042】
<実施例3>
実施例3は、振動装置100の振動子10の圧電材料11の一つの面に、2つの励振電極を設ける実施例である。
【0043】
図13を参照して、実施例3において、上記で説明した電極12の代わりに圧電材料11の第一面に密着して設けられた電極123について説明する。電極123は、電極123a及び電極123bを有する。電極123a及び電極123bは、制御回路30の制御に基づいて電圧が印加されることにより、圧電材料11を励振する励振電極である。
【0044】
電極123a及び電極123bの形状はそれぞれ周期パターンを有する。
図13に示すように、電極123a及び電極123bの周期パターンは、等間隔に電極指が延在する櫛状パターンである。電極123aと、電極123bは、それぞれの電極指が圧電材料11の第一面上に交互に配置されるように設けられている。電極123a及び電極123bのそれぞれの電極指上には、等間隔に円形ランドが形成されている。また、電極123a及び電極123bの電極指は、圧電材料11の縦軸方向に延在する。電極指が延在する方向は、縦軸方向以外であってもよく、例えば、圧電材料11の横軸方向、又は対角線方向であってもよい。
【0045】
電極123aは、電極123aの円形ランドが、圧電材料11の第一面上において
図5に示した電極12の円形ランドと同じ位置に配置されるように、配置される。すなわち、電極123aは、電極123aの円形ランドが、
図3に示した圧電材料11の面上に形成された山部に位置するように、配置される。また、電極123bは、電極123bの円形ランドが、
図3に示した圧電材料11の面上に形成された谷部に位置するように、配置される。
【0046】
すなわち、圧電材料11の第一面上において、電極123aの円形ランドの位置に形成される振動の波と、電極123bの円形ランドの位置に形成される振動の波とが互いに逆位相となるように、電極123a及び電極123bは、圧電材料11の第一面上に密着して設けられる。
【0047】
また、制御回路30は、電極123aに印加される電圧と、電極123bに印加される電圧とが互いに逆位相となるように制御する。実施例3において、振動装置100(振動子10)が上記のように構成されていることにより、上記で説明した電圧印加による逆圧電効果に起因する変位(第一変位)の向きが振動モードに起因する変位(第二変位)の向きと異なる場合に生じる変位の打ち消し合いをさらに抑制することができる。
【0048】
すなわち、実施例3において、電極123aの電極指と、電極123bの電極指とが交互に配置され、電極123aに印加される電圧と、電極123bに印加される電圧とが互いに逆位相である。そのため、隣接する電極指間において、逆圧電効果に起因する変位が互いに逆位相である。このように電極123に対する電圧印加により生じる逆圧電効果に起因する変位の方向は、振動モードに起因する変位の方向と一致することにより、二つの変位の打ち消し合いは低減される。その結果、さらに振動効率の高い振動子を実現することができる。
【0049】
実施例3において、圧電材料11の第二面に設けられる電極13は板状である。変形例として、電極13に替えて、電極123の周期パターンと同位相の周期パターンを有する電極を圧電材料11の第二面に設けてもよい。この場合において、電極123への電圧印加により生じる逆圧電効果に起因する変位(圧電材料11の膨らみ又は縮み)の位相が、圧電材料11の第二面に設けられた電極への電圧印加により生じる逆圧電効果に起因する変位と同位相となるように、電圧の印加が行われる。その結果、実施例3の振動効率をさらに高めた振動子を実現できる。
【0050】
実施形態を図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本実施形態に基づき種々の変形や修正を行うことが可能であり、これらの変形や修正は本実施形態に含まれる。各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、各実施形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 振動子
11 圧電材料
12,13,62,63,121,122,123 電極
30 制御回路
60 振動子
61 圧電材料
100 振動装置