(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063690
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】咀嚼トレーニング用ガムおよびそれを用いた咀嚼トレーニング
(51)【国際特許分類】
A23G 4/06 20060101AFI20220415BHJP
A23G 4/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A23G4/06
A23G4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172065
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小巻 翔
(72)【発明者】
【氏名】田中 華奈子
(72)【発明者】
【氏名】海老原 京太
(72)【発明者】
【氏名】永安 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】杉本 沙紀
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GK05
4B014GK12
4B014GL01
4B014GL08
4B014GL10
4B014GP01
4B014GQ01
4B014GQ17
(57)【要約】
【課題】チューインガムを用いた咀嚼トレーニングの終点を衛生的かつ簡便に判定することができる咀嚼トレーニング用ガムを提供する。
【解決手段】ガム生地と、食感付与剤と、を含有する咀嚼トレーニング用ガムであって、該ガム生地と、該食感付与剤とは、異なる硬さを有し、該ガム生地と、該食感付与剤との硬さの違いは、該咀嚼トレーニング用ガムを咀嚼する者が咀嚼の際に認知することができるものである、咀嚼トレーニング用ガム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガム生地と、食感付与剤と、を含有する咀嚼トレーニング用ガムであって、
該ガム生地と、該食感付与剤とは、異なる硬さを有し、
該ガム生地と、該食感付与剤との硬さの違いは、該咀嚼トレーニング用ガムを咀嚼する者が咀嚼の際に認知することができるものである、咀嚼トレーニング用ガム。
【請求項2】
前記ガム生地と、前記食感付与剤との硬さの差が0.21kgf以上である、請求項1に記載の咀嚼トレーニング用ガム。
【請求項3】
前記食感付与剤の最大長さが、50μm以上8.0mm以下である、請求項1または2に記載の咀嚼トレーニング用ガム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の咀嚼トレーニング用ガムを用いた咀嚼トレーニング。
【請求項5】
前記ガム生地と前記食感付与剤との硬さの違いが認識できなくなったことを基準に、咀嚼トレーニングの終了を判定する、請求項4に記載の咀嚼トレーニング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼トレーニング用ガムおよびそれを用いた咀嚼トレーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
人は物を食べて生活しているが、食物を咀嚼するためには、歯や舌および周囲の筋肉等が適切に働く必要があり、この咀嚼に関する問題として、口腔機能低下がある。口腔機能低下とは、口腔周囲筋の不調和により、咀嚼、飲み込み、発音等の口腔の持つ基本的機能が低下することをいう。このような口腔機能の低下を改善するために、チューインガムを咀嚼訓練に用いて側頭筋や咬筋等の口腔周囲筋を鍛える方法がある。
【0003】
特許文献1には、特定の条件下で咀嚼を行ったとき、咬筋の平均筋活動値、口輪筋の平均筋活動値および咀嚼回数について一定以上の値が得られる咀嚼訓練用チューインガムおよびそれを用いた咀嚼訓練が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、咀嚼に応じて色が変化するガムを用いて、咀嚼後のガムの呈する色から健常有歯顎者における咀嚼回数を判定するためのカラースケールを作成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-62114号公報
【特許文献2】特開2011-72559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、咬筋および口輪筋の筋活動を表面筋電計により測定する必要があり、トレーニングの簡便さにおいて改善の余地があった。また、特許文献2に記載の方法では、色の変化をカラースケールにより確認するために、咀嚼トレーニング用ガムを完全に口から出す必要がある。そのため、トレーニングの衛生面および簡便さにおいて改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、チューインガムを用いた咀嚼トレーニングの終点を衛生的かつ簡便に判定することができる咀嚼トレーニング用ガム、および上記咀嚼トレーニング用ガムを用いた咀嚼トレーニングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の実施形態は、ガム生地と、食感付与剤と、を含有する咀嚼トレーニング用ガムであって、該ガム生地と、該食感付与剤とは、異なる硬さを有し、該ガム生地と、該食感付与剤との硬さの違いは、該咀嚼トレーニング用ガムを咀嚼する者が咀嚼の際に認知することができるものである、咀嚼トレーニング用ガムを提供するものである。
【0009】
また、本発明の別の実施形態は、上記の咀嚼トレーニング用ガムを用いた咀嚼トレーニングを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チューインガムを用いた咀嚼トレーニングの終点を衛生的かつ簡便に判定することができる咀嚼トレーニング用ガムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一の実施形態は、ガム生地と、食感付与剤と、を含有する咀嚼トレーニング用ガムであって、該ガム生地と、該食感付与剤とは、異なる硬さを有し、該ガム生地と、該食感付与剤との硬さの違いは、該咀嚼トレーニング用ガムを咀嚼する者が咀嚼の際に認知することができるものである、咀嚼トレーニング用ガムに関する。
【0012】
本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムを咀嚼する者(以下、咀嚼者ともいう)は、初め、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いを認識することができる。その後、咀嚼者による咀嚼の進行に伴い、ガム生地と食感付与剤とが互いに混ざり合う。さらに、咀嚼者が一定の咀嚼仕事量を行った後には、ガム生地と食感付与剤とが十分に混合され、ガムの噛み初めに認識できていたガム生地と食感付与剤との硬さの違いが、咀嚼者によって認識できなくなる。つまり、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いが認識できなくなったことを基準に、一定の咀嚼仕事量が行われたと判定することができる。
【0013】
ガム生地と食感付与剤との硬さの違いは、咀嚼者が生来有する感覚により認識することができ、本発明においては、その認識を利用して一定の咀嚼仕事量がなされたことを判定するため、表面筋電計のような特定の測定装置を用意する必要が無い。
また、本発明においては、当然ながら口の中で咀嚼した状態で、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いが認識できなくなったことを判断するため、咀嚼トレーニング用ガムを口から出す必要がなく、衛生的である。
【0014】
以下、本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムの構成要素についてさらに説明する。
(ガム生地)
ガム生地は、ガムベースを含む。ガムベースは、天然ゴムおよび合成ゴム等のゴム成分を含み、さらに、その他の成分を含んでもよい。また、ガム生地は、さらに甘味料および酸味料等の呈味成分、香料、および色素等を含んでもよい。
【0015】
天然ゴムとは、アカテツ科、キョウチクトウ科、クワ科、トウダイグサ科等に属する樹木から採取される樹液に含まれるゴム成分である。天然ゴムとしては、例えば、チクルやジェルトン等が挙げられる。チクルは、アカテツ科の樹木であるサポディラの樹液から得られ、ポリイソプレンを主成分とする。また、ジェルトンは、キョウチクトウ科の樹木であるジェルトンの樹液から得られ、イソプレンとトリテルペンの重合体を主成分とする。
【0016】
また、合成ゴムとしては、例えば、ポリイソブチレン、ポリイソプロピレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0017】
これらのゴム成分は、1種単独で用いることも2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0018】
ガムベースが含んでもよいその他の成分としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エステルガム、ワックス、油脂、乳化剤、充填剤等が挙げられる。ポリ酢酸ビニルは噛み心地を調整する目的で用いられる。また、エステルガムはふくよかさの付与の目的で用いられる。ワックスおよび油脂はガム生地の硬さを調整する可塑剤として用いられる。乳化剤はガム生地原料の分散性の向上並びにガムの軟化および歯付き防止の目的で用いられる。充填剤はガムの弾力性や噛み心地を調整する目的で用いられる。
これら成分は、1種単独で用いることも2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0019】
エステルガムとしては、例えばロジン(松脂)のグリセロールエステル、水素添加ロジンのグリセロールエステル、部分的に二量体化されたロジンのグリセロールエステル、重合されたロジンのグリセロールエステル等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
油脂としては、例えば、大豆硬化油、ナタネ硬化油等の硬化植物油が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、ジアセトグリセリンモノラウレート、グリセリルモノステアレート、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、シュガーエステル等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0020】
甘味料としては、例えば、高甘味度甘味料として、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、アリテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア粉末、タウマチン(ソーマチン)、テンリョウチャ抽出物、ナイゼリアベリー抽出物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ブラジルカンゾウ抽出物、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、アドバンテーム等が挙げられる。
【0021】
また、高甘味度甘味料の他の甘味料として、例えば、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、フコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、異性化液糖、N-アセチルグルコサミン等の単糖類;イソトレハロース、スクロース、トレハルロース、トレハロース、ネオトレハロース、パラチノース(イソマルツロース)、マルトース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトース等の二糖類;α-サイクロデキストリン、β-サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル(β1-3)ガラクトピラノシル(β1-4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1-3)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1-6)ガラクトピラノシル(β1-4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1-6)グルコピラノース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、スタキオース、テアンデオリゴ、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシル-β-サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、ラフィノース、砂糖結合水あめ(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水あめ等のオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水あめ、還元水あめ等の糖アルコール;その他蜂蜜、果汁、果汁濃縮物等が挙げられる。
【0022】
これらの甘味料は、1種単独で用いることも2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。これらの甘味料は、高甘味度甘味料については0.1重量%以上5.0重量%以下を、その他の甘味料については30.0重量%以上72.0重量%以下を咀嚼トレーニング用ガムに配合するのが好適である。
【0023】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、アジピン酸、イタコン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、フィチン酸、およびリン酸等が挙げられるが、これらの例示物質に限定されるものではない。酸味料については、0.5重量%以上5.0重量%以下を咀嚼トレーニング用ガムに配合するのが好適であるが、この範囲に限定されることはない。
【0024】
香料としては、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、タンジェリン油、マンダリン油等の柑橘精油類;ペパーミント油、スペアミント油、のようなミント精油類;オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリー、クローブ、シナモン、クミン、ディル、ガーリック、パセリ、メース、マスタード、オニオン、パプリカ、ローズマリー、ペッパーのような公知のスパイス精油類;オレオレジン類、リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、L-メントール、オイゲノール、シンナミックアルデハイド、アネトール、ペリラアルデハイド、バニリン、γ-ウンデカラクトン、カプロン酸アリル、L-カルボン、マルトール等のような公知の単離、または合成香料;ならびに、これら柑橘精油類、ミント精油類、スパイス精油類または単離・合成香料を目的に沿った割合で混合してシトラス系香料、ミックスミント、および各種フルーツ等を表現させた調合香料等が挙げられる。
香料については、0.1重量%以上12.0重量%以下を咀嚼トレーニング用ガムに配合するのが好適である。
【0025】
色素としては、食品に用いることのできる色素であれば如何なる色素をも用いることができる。また、色素として、水溶性色素および油溶性色素のいずれも用いることができる。色素は、食感付与剤に配合された状態で咀嚼トレーニング用ガムに含まれていてもよい。
【0026】
水溶性色素としては、例えば、アナト-色素、トウガラシ色素、アカネ色素、クチナシ色素、エリスロシン、タートラジン、タマネギ色素、トマト色素、カラメル色素、ブドウ果皮色素、ベニバナ色素、ウコン色素、アカキャベツ色素、スピルリナ色素、リボフラビン、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム等が挙げられる。また、水溶性色素として、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色106号、食用青色1号、食用青色2号等の合成着色料を用いてもよい。
油溶性色素としては、例えば、βカロチン、カロチノイド色素、オレンジ色素、カカオ色素、クロロフィル、シコン色素、マリーゴールド色素、ルテイン、銅クロロフィル等が挙げられる。
【0027】
ガム生地中の色素の量は、例えば、0.001重量%~1重量%であり、好ましくは0.01重量%~0.5重量%である。
【0028】
(食感付与剤)
食感付与剤は、ガム生地と異なる硬さを有する。ガム生地と、食感付与剤との硬さの差は、0.21kgf以上であることが好ましい。これによりガム生地と食感付与剤との硬さの差を明確に認識することができる。ガム生地と、食感付与剤との硬さの差は、0.87kgf以上であることがより好ましく、1.12kgf以上であることがさらに好ましい。
また、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いを認識することが容易であるという観点から、食感付与剤は、ガム生地よりも硬いことが好ましい。
【0029】
本発明において、ガム生地および食感付与剤が有する硬さとは、直径3mmの円柱状を有するステンレス製の棒型プランジャーを、温度25℃の環境下で、0.1mm/secの速度で押し当てた時に測定される荷重の最大値である。ガム生地および食感付与剤が有する硬さの測定には、例えば、インストロン社製の万能試験機5542を使用することができる。
【0030】
食感付与剤は、例えば、中実の固体または中空の固体(カプセル)である。食感付与剤の製造の容易さの観点から、食感付与剤は粒状であることが好ましい。
食感付与剤の材料としては、ガム生地と異なる硬さを有する限り、食品に用いることができるいかなる材料を用いてもよい。例えば、食感付与剤の材料としては、ガムベースの原料として用いることができる材料が挙げられる。そのような材料としては、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂、ワックス、タルク、炭酸カルシウム、およびケイ酸マグネシウム等が挙げられる。天然樹脂としては、例えば、ロジン等を挙げることができる。また、例えば、食感付与剤の材料として糖類を用いてもよい。食感付与剤の材料として用いることができる糖類としては、例えば、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、および還元パラチノース等が挙げられる。また、食感付与剤に用いることができるその他の材料としては、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ゲランガム、デンプン、およびセルロース等が挙げられる。
【0031】
食感付与剤は、破壊点を有することが好ましい。これにより、食感付与剤の咀嚼に伴う不可逆的な構造変化を、弾力を有するガム生地の構造変化と区別して認識することが容易になり、咀嚼トレーニングの終了のタイミングをより明確に判断することができる。
破壊点を有する食感付与剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂のチップの粉砕物、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ゲランガム、デンプン、セルロース等を成型して得られるカプセル、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、および還元パラチノース等の糖からなる粒子、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の無機粒子が挙げられる。
【0032】
食感付与剤の最大長さは、50μm以上8.0mm以下であることが好ましい。食感付与剤の最大長さが50μm以上であることで、咀嚼に伴って食感付与剤の構造を確実に変化させることができ、ガム生地と食感付与剤との硬さの差を認識することが容易になる。また、食感付与剤の最大長さが8.0mm以下であることで、咀嚼トレーニング用ガムを支障なく成型することができる。食感付与剤の最大長さは、50μm以上5.0mm以下であることがより好ましく、80μm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
咀嚼トレーニング用ガムにおける食感付与剤の含有割合は、ガム生地に対して1.0wt%以上20wt%以下であることが好ましい。これにより咀嚼トレーニング用ガム1つ当たりの咀嚼仕事量を適切な範囲に設定することができる。
【0034】
本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムにおいては、食感付与剤について、材料、大きさ、硬さ、および含有割合を、また、ガム生地について硬さを変えることで、トレーニングの強度や咀嚼仕事量を調整することが可能である。
【0035】
(咀嚼トレーニング用ガムの製造方法)
本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムは、通常のチューインガムの製造方法、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0036】
まず、ゴム成分等のガムベースの原料をミキサー等で混練し、ガムベースを製造する。混練温度および時間は、各成分が十分に混ざり合う温度および時間であれば特に限定されるものではないが、例えば60~130℃で10~180分である。
【0037】
上記で製造したガムベースに、色素、甘味料、および酸味料等のガムベース以外のガム生地の原料を加え、ミキサー等を用いて混練し、ガム生地を得ることができる。
混練方法としては、例えば、混練したガムベースと色素、甘味料、酸味料等を一度にミキサーで混練する方法が挙げられる。また、混練したガムベースにその他の成分、甘味料、酸味料等の一または二以上の成分を混練し、その後残りの成分を追加し、さらに混練する方法も挙げられる。この他にも、ガムベースを混練しながら、その他の成分、甘味料、酸味料等の各成分を順次加えながら混練する方法も挙げられる。混練の条件は、各成分が十分に混ざり合えば特に限定されないが、例えば約60℃で5~30分の条件が挙げられる。
なお、ガム生地としては、市販のガム生地を用いてもよい。
【0038】
また、食感付与剤は、以下のようにして製造することができる。
食感付与剤の材料として、ガムベースのゴム成分として用いることができる材料を用いる場合、上記のガムベースの製造方法と同様の方法で食感付与剤を製造し、適当な大きさに成形することで、食感付与剤が得られる。
【0039】
食感付与剤の材料として、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂のチップを用いる場合、熱可塑性樹脂のチップを粉砕後、目的の粒径を有するように篩い分けを行うことで、食感付与剤を得ることができる。
食感付与剤の材料として、ワックスを用いる場合、加熱により溶融させたワックスを冷水中に滴下することで、ワックス顆粒をえることができ、これを食感付与剤として用いることができる。また、ワックスの塊を粉砕後、目的の粒径を有するように篩い分けを行うことで、食感付与剤を得てもよい。
【0040】
食感付与剤の材料として、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ゲランガム、デンプン、セルロース等を用いる場合、これらを成型してカプセルとしてもよい。これらを材料としたカプセルは、以下の方法で製造することができる。
まず、常法により、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、ゲランガム、デンプン、セルロース等と色素を含む油液・被膜溶液を調製する。この、油液・被膜溶液を多重ノズルを用いて凝固液中に滴下することにより、カプセルとすることができる。滴下の際に、内ノズルより内容物を同時に吐出することにより、カプセル中に内容物を含ませてもよく、また内容物を含まないカプセルとして製造してもよい。得られたカプセルを乾燥後、目的のメッシュとなるように篩い分けを行い、食感付与剤を得ることができる。
【0041】
食感付与剤の材料として、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、および還元パラチノース等の糖の粒子、あるいは、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の無機原料を用いる場合、これらの原料を押し出し造粒することにより適当な大きさに成型することができる。また、これらの原料の結晶塊を粉砕後、目的の粒径を有するように篩い分けを行うことで、適当な大きさの粒子としてもよい。
【0042】
続いて、食感付与剤をガム生地に加え、混練、成形、熟成することで、本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムを得ることができる。
混練方法としては、食感付与剤が、融解、溶解、崩壊しない条件であれば、いかなる条件で混練してもよいが、例えば、ガム生地の温度が約30~60℃となるように、ミキサー混練する方法が挙げられる。
成形方法としては、エキストルーダー(押し出し機)、充填機、カッター(裁断機)、モールド等の成形装置を用いることにより成形し、板状、粒状、球状等のガムを得ることができる。その後、15~25℃で12~336時間熟成し、本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムを得ることができる。
【0043】
本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムは糖衣で覆われていてもよい。糖衣による被覆は通常の方法で行うことができる。
【0044】
(咀嚼トレーニング)
本発明の咀嚼トレーニング用ガムを用いた咀嚼トレーニングは、以下のように行うことができる。
【0045】
被験者に、本発明に係る咀嚼トレーニング用ガムを噛む強度や速度等を指定しない自由咀嚼で咀嚼させることで咀嚼トレーニングを行う。咀嚼トレーニングの終了のタイミングは、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いが認識できなくなったことを基準にして判定する。本発明に係る咀嚼トレーニングによれば、表面筋電計のような特定の測定装置を用意する必要がなく、また口腔中からガムを完全に出すことなく、咀嚼トレーニングの終了を判定することができる。
【0046】
本発明の咀嚼トレーニング用ガムによれば、各被験者の咀嚼力や咀嚼スピードが異なっても、同じガムを用いれば同じ咀嚼仕事量のトレーニングを行うことが可能である。
【実施例0047】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(ガム1の製造)
ガムベース1、マルチトール、軟化剤、および香料を表1に記載の含有割合(重量%)でミキサーに投入し、各成分が十分に混ざり合うように混練してガム生地1を得た。得られたガム生地1に粒径(モード径)0.7mmのゼラチンカプセルを食感付与剤1として表1に記載の配合に従って加え、ミキサーで十分に混練した。得られた混練物を圧延後、カッターで切断することで成形した。その後、常温下(15℃~25℃)で熟成し、1粒当たり3gのガム1を得た。なお、ガム生地1の硬さは0.47kgf、食感付与剤1の硬さは1.76kgfであった。
【0049】
(ガム2~4の製造)
ガム1の製造において、各原料の配合割合を表1に示すように変更し、ガム生地1と同様の条件で混錬してガム生地2~4を得た。また、得られたガム生地2~4と、食感付与剤1とを表1に示す割合で混合した。それ以外はガム1と同様の方法で、ガム2~4を製造した。
【0050】
(ガム5の製造)
ガム3の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤2に変更した。食感付与剤2は、硬さ1.59kgfを有する粒径(モード径)0.7mmのゼラチンカプセルである。それ以外はガム3と同様の方法で、ガム5を製造した。
【0051】
(ガム6の製造)
ガム3の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤3に変更した。食感付与剤3は、硬さ0.68kgfを有する粒径(モード径)0.7mmのゼラチンカプセルである。それ以外はガム3と同様の方法で、ガム6を製造した。
【0052】
(ガム7の製造)
ガム3の製造において、ガムベースの種類をガムベース2に変更し、これらにより得られたガム生地7を、ガム生地3の代わりに用いた以外はガム3と同様の方法で、ガム7を製造した。なお、ガム生地7の硬さは0.68kgfであった。
【0053】
(ガム8の製造)
ガム7の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤2に変更した以外はガム7と同様の方法で、ガム8を製造した。
【0054】
(ガム9の製造)
ガム1の製造において、各原料の配合割合を表1に示すように変更し、ガム生地1と同様の条件で混錬してガム生地9を得た。また、得られたガム生地9と、食感付与剤5とを表1に示す割合で混合した。食感付与剤5は、還元パラチノースからなる粒径(モード径)0.95mmの粒子であり、硬さ1.55kgfを有する。それ以外はガム1と同様の方法で、ガム9を製造した。
【0055】
(ガム10の製造)
ガム1の製造において、各原料の配合割合を表1に示すように変更し、ガム生地1と同様の条件で混錬してガム生地10を得た。また、得られたガム生地10と、食感付与剤5とを表1に示す割合で混合した。それ以外はガム1と同様の方法で、ガム10を製造した。
【0056】
(ガム11の製造)
ガム9の製造において、ガムベースの種類をガムベース2に変更し、これらにより得られたガム生地11を、ガム生地9の代わりに用いた以外はガム9と同様の方法で、ガム11を製造した。
【0057】
(ガム12の製造)
ガム10の製造において、ガムベースの種類をガムベース2に変更し、これらにより得られたガム生地12を、ガム生地10の代わりに用いた以外はガム10と同様の方法で、ガム12を製造した。
【0058】
(比較ガム1の製造)
ガム3の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤4に変更した。食感付与剤4は、硬さ0.48kgfを有する粒径(モード径)0.7mmのゼラチンカプセルである。それ以外はガム3と同様の方法で、比較ガム1を製造した。
【0059】
(比較ガム2の製造)
ガム7の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤3に変更した以外はガム7と同様の方法で、比較ガム2を製造した。
【0060】
(比較ガム3の製造)
ガム7の製造において、食感付与剤の種類を食感付与剤4に変更した以外はガム7と同様の方法で、比較ガム3を製造した。
【0061】
【0062】
(実施例1)
咀嚼力に問題のない3名を被験者(被験者1~3)とし、各被験者に1粒(3g)のガム1を咀嚼させることで咀嚼トレーニングを行った。咀嚼トレーニングにおいては、ガム生地と食感付与剤との硬さの違いが認識できなくなったことを基準にして、咀嚼トレーニングの終了のタイミングを各被験者に判断させた。その後、以下に示す基準により、ガム1に対する評価点を各被験者に付けさせた。
評価点4:食感付与剤に歯が当たる感覚、またそれを押しつぶす感覚を非常に強く感じることができ、トレーニングの終点を明確に判定することができる。
評価点3:食感付与剤に歯が当たる感覚、またそれを押しつぶす感覚を強く感じることができ、トレーニングの終点を判定することができる。
評価点2:食感付与剤に歯が当たる感覚、またそれを押しつぶす感覚を感じることができるが、トレーニングの終点を判断しにくい。
評価点1:食感付与剤に歯が当たる感覚、またそれを押しつぶす感覚を認知できず、トレーニングの終点を判断できない。
続いて、3名の被験者から得られた評価点の合計点数を基に、以下の基準によりガム1を総合評価した。
A:評価点の合計が11以上。
B:評価点の合計が8以上10以下。
C:評価点の合計が5以上7以下。
D:評価点の合計が4以下。
結果を表2に示す。
【0063】
(実施例2~12、比較例1~3)
咀嚼トレーニングに用いたガムの種類を、それぞれガム2~12、比較ガム1~3に代えた以外は実施例1と同様の方法で、実施例2~12、比較例1~3を行った。
結果を表2に示す。
【0064】