(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063695
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】ポリフルオロアルキル基含有化合物、その製造方法、および、樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 323/52 20060101AFI20220415BHJP
C07C 319/18 20060101ALI20220415BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220415BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20220415BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220415BHJP
【FI】
C07C323/52 CSP
C07C319/18
C08L101/00
C08K5/372
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172073
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平林 涼
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AC63
4H006BA51
4H006TA04
4H006TB35
4H006TB38
4H006TB53
4H006TB55
4H006TB56
4H039CA99
4H039CF10
4J002CD001
4J002CF001
4J002CG011
4J002CK021
4J002EV056
4J002EV066
4J002FD206
(57)【要約】
【課題】新規な、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基を2個有するポリフルオロアルキル基含有化合物、上記のポリフルオロアルキル基含有化合物を簡単に製造できる製造方法、上記のポリフルオロアルキル基含有化合物を使用して得られる反応物を含有する樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物[式中、Rfはポリフルオロアルキル基であり、Qは2価の有機基であり、Xは-NH-または-O-であり、Rは-Hまたは-CH
3であり、Yはそれぞれ独立にヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、Aは、3価の有機基である。]、その製造方法、上記ポリフルオロアルキル基含有化合物とヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物を含有する、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物。
【化1】
式(1)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Xは、-NH-または-O-であり、
Rは、-Hまたは-CH
3であり、
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、
Aは、3価の有機基である。
【請求項2】
下記式(2)または式(3)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物。
【化2】
式(2)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【化3】
式(3)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【請求項3】
下記式(4)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物とを反応させることによって、請求項1に記載のポリフルオロアルキル基含有化合物を製造する、ポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【化4】
式(4)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Xは、-NH-または-O-であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【化5】
式(5)中、
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、
Aは、3価の有機基である。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリフルオロアルキル基含有化合物と、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物を含有する、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフルオロアルキル基含有化合物、その製造方法、および、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を2個およびパーフルオロアルキル基を有する、下記式(I)、(II)で表される化合物等が知られている。式(I)で表される化合物のCAS登録番号は52978-21-9である。式(II)で表される化合物のCAS登録番号は53051-36-8である。
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような化合物の製造はその工程が複雑であり、製造しにくいと考えられた。
そこで、本発明は、新規な、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基を2個有するポリフルオロアルキル基含有化合物、上記のポリフルオロアルキル基含有化合物を簡単に製造できる製造方法、上記のポリフルオロアルキル基含有化合物を使用して得られる反応物を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物によって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0005】
[1] 後述の式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物。
[2] 後述の、式(2)または式(3)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物。
[3] 後述の式(4)で表される化合物と後述の式(5)で表される化合物とを反応させることによって、[1]に記載のポリフルオロアルキル基含有化合物を製造する、ポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[4] [1]または[2]に記載のポリフルオロアルキル基含有化合物と、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物を含有する、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物は、新規な化合物である。
本発明の製造方法によれば、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を簡単に製造することができる。
また、本発明は、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を使用して得られる反応物を含有する樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)の
1H-NMRのチャートである。
【
図2】
図2は、実施例1で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)の
19F-NMRのチャートである。
【
図3】
図3は、実施例2で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)の
1H-NMRのチャートである。
【
図4】
図4は、実施例2で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)の
19F-NMRのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。また、各成分として市販品を使用することができる。
本明細書において、量に関する単位「部」は「質量部」を意味する。
【0009】
[式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物]
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物は、下記式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物である。
なお、本明細書において、式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物を「本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物」と称する場合がある。
【化2】
式(1)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Xは、-NH-または-O-であり、
Rは、-Hまたは-CH
3であり、
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、
Aは、3価の有機基である。
【0010】
式(1)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物は、Yを2個有する。
式(1)中の「S」は硫黄原子を表す。式(2)、(3)についても同様である。
式(1)に示すとおり、上記硫黄原子のα位に結合する炭素原子(詳細には、上記硫黄原子に対して、Rfの方向に向かって(Aとは反対側の)α位に結合する炭素原子)は、メチレン基(-CH2-)を形成する。
【0011】
(Rf)
式(1)中、Rfは、ポリフルオロアルキル基である。
ポリフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個ないし全部がフッ素原子に置換された、部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。ポリフルオロアルキル基は、直鎖構造および分岐構造のいずれであってもよい。なお、ポリフルオロアルキル基の炭素数は、例えば、1~10とできる。ポリフルオロアルキル基が分岐構造の場合は分岐構造も含めた数である。
ポリフルオロアルキル基を構成するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基のような直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、3-メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基のような分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0012】
ポリフルオロアルキル基の炭素数は、フッ素原子が結合している炭素原子を全て含み、かつ該基に含まれる炭素数が最小になるように決めるものとする。
例えば、式(1)において、「-Q-Rf」が「-C2H4-C6F13」で表される基の場合、Qが「C2H4」であり、Rfが「C6F13」である。同様に、「-Q-Rf」が「-CH2-CHF-CH2-CF2H」で表される基の場合、Qが「CH2」であり、Rfが「CHF-CH2-CF2H」である。
【0013】
上記ポリフルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基(アルキル基の水素原子の全部がフッ素原子に置換されたアルキル基)が好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記ポリフルオロアルキル基は、-(CF2)mFが好ましい。-(CF2)mF中に示すmは、撥液性(具体的には液体を弾く性質等)に優れることと、環境に影響の観点から、1~6が好ましく、4~6がより好ましい。
【0014】
(Q)
式(1)中、Qは、2価の有機基である。
【0015】
2価の有機基としては、直鎖状または分岐状の、アルキレン基、アルケニレン基、オキシアルキレン基;6員環芳香族基、4~6員環の飽和の脂肪族基、4~6員環の不飽和の脂肪族基、5~6員環の複素環基、または、下記式(q)で表される2価の連結基が挙げられる。上記環基は縮合してもよい。
上記2価の有機基として例示されたこれらの基は組み合わされてもよく、全体として2価の有機基を形成すればよい。これらの基の組み合せは特に制限されない。例えば、オキシアルキレン基が2個以上連結してポリオキシアルキレン基を形成してもよい。
【0016】
上記アルキレン基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい(以下同様)。アルケニレン基、オキシアルキレン基も同様である(以下同様)。
【0017】
-Y-Z- (q)
式中の記号は以下の意味を示す。
Y(2価):直鎖状または分岐状のアルキレン基、6員環芳香族基、4~6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5~6員環の複素環基、またはこれらの縮合した環基。
Z(2価):-O-、-S-、-CO-、-COO-、-COS-、-N(R)-、-SO2-、-PO2-、-N(R)-COO-、-N(R)-CO-、-N(R)-SO2-、-N(R)-PO2-。
R:水素原子、炭素数1~3のアルキル基。
【0018】
2価の有機基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基など)、アリーロキシ基(フェノキシ基など)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基など)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基など)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基など)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、カルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基など)、アリール基(フェニル基、トルイル基など)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基など)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニル基など)、アルコキシアシルオキシ基(アセチルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、および重合性基(ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基、桂皮酸残基など)などが挙げられる。
【0019】
上記Qは、直鎖状または分岐状のアルキレン基が好ましく、直鎖状の炭素数1~5のアルキレン基がより好ましい。
上記Qは、フッ素原子を有さない2価の有機基とできる。
なお、Qがアルキレン基であり、フッ素原子が置換した構造である場合は、上記のRfの炭素数の決定の定義に基づき、Qの構造も決定される。
【0020】
(X)
式(1)中、Xは、-NH-または-O(酸素原子)-である。
【0021】
(R)
式(1)中、Rは、-H(水素原子)または-CH3(メチル基)である。
【0022】
(Y)
式(1)中、Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基(-OH)またはカルボキシ基(-COOH)である。
2つのYの組合せとしては、2つのYが同時にヒドロキシ基である場合、2つのYが同時にカルボキシ基である場合、1つのYがヒドロキシ基であり、もう1つのYがカルボキシ基である場合が挙げられる。
なお、本明細書において、式(1)中の2つのYが同時にヒドロキシ基である場合の化合物を、ポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物と称する場合がある。
また、式(1)中の2つのYが同時にカルボキシ基である場合の化合物を、ポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物と称する場合がある。
【0023】
式(1)中、YがAに結合する位置は特に制限されない。
2つのYが、Aにおける異なる炭素原子にそれぞれ結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、2つのYがそれぞれ結合する2つの炭素原子が、互いに隣接することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0024】
(A)
式(1)中、Aは、3価の有機基である。
3価の有機基としては、例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素(飽和または不飽和を含む)、6員環芳香族基、4~6員環の飽和の脂肪族基、4~6員環の不飽和の脂肪族基、5~6員環の複素環基からそれぞれ3個の水素原子を除いた基が挙げられる。上記環基は縮合してもよい。
上記3価の有機基として例示されたこれらの基は組み合わされてもよく、全体として3価の有機基を形成すればよい。これらの基の組み合せは特に制限されない。
【0025】
上記Aは、直鎖状または分岐状の3価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
上記の直鎖状の3価の飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、2~4が好ましい。上記の分岐状の3価の飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、3~4が好ましい。
【0026】
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物としては、例えば、後述する、式(2)または式(3)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物が挙げられる。
【0027】
[式(2)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物]
本発明において、式(2)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物(式(2)で表される化合物)は以下のとおりである。
【化3】
式(2)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【0028】
式(2)中のRf、Q、Rは、式(1)中のRf、Q、Rとそれぞれ同様である。
【0029】
上記式(2)で表される化合物は、上述の式(1)で表される化合物において、Xが-O-であり、2つのYが同時にヒドロキシ基であり、式(1)中の-AY
2が下記構造(*は結合位置を表す。以下同様)を有する場合に相当する。
【化4】
【0030】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、下記式(2-1)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0031】
[式(3)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物]
本発明において、式(3)で表されるポリフルオロアルキル基含有化合物(式(3)で表される化合物)は以下のとおりである。
【化6】
式(3)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【0032】
式(3)中のRf、Q、Rは、式(1)中のRf、Q、Rとそれぞれ同様である。
【0033】
上記式(3)で表される化合物は、上述の式(1)で表される化合物において、Xが-O-であり、2つのYが同時にカルボキシ基であり、式(1)中の-AY
2が下記構造を有する場合に相当する。
【化7】
【0034】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、下記式(3-1)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【0036】
(製造方法)
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物[つまり式(1)で表される化合物。なお、式(1)で表される化合物は、上記式(2)または(3)で表される化合物を含む。以下同様]は、例えば、後述する、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法で製造することができる。
【0037】
(用途)
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を、例えば、樹脂を形成するための中間体として使用することができる。上記樹脂としては、例えば、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物と、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物が挙げられる。上記のヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物は、後述する本発明の樹脂組成物における、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物と同様である。
【0038】
また、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を、例えば、界面活性剤として使用することができる。
【0039】
[ポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法]
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法は、
下記式(4)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物とを反応させることによって、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を製造する、ポリフルオロアルキル基含有化合物の製造方法である。
【0040】
式(4)で表される化合物は以下のとおりである。
【化9】
式(4)中、
Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、
Qは、2価の有機基であり、
Xは、-NH-または-O-であり、
Rは、-Hまたは-CH
3である。
【0041】
式(4)中のRf、Q、X、Rは、それぞれ、上記式(1)のRf、Q、X、Rに対応する。
【0042】
式(4)で表される化合物としては、例えば、下記式(4-1)で表される化合物が挙げられる。本明細書において式(4-1)で表される化合物を「C6FA」と称する場合がある。
【化10】
【0043】
式(5)で表される化合物は以下のとおりである。
【化11】
式(5)中、
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、
Aは、3価の有機基である。
【0044】
式(5)中のY、Aは、それぞれ、上記式(1)のY、Aに対応する。
【0045】
式(5)で表される化合物としては、例えば、下記式(5-1)で表されるα-チオグリセロール、式(5-2)で表されるチオリンゴ酸が挙げられる。
【化12】
【0046】
式(2)で表される化合物を製造する場合、例えば、式(4)で表される化合物(ただし、Xは-O-である。)と下記式(5-1)で表されるα-チオグリセロールとを組合わせて使用することができ、より具体的には例えば、式(4-1)で表される化合物と下記式(5-1)で表されるα-チオグリセロールとを組合わせて使用することができる。
式(3)で表される化合物を製造する場合、例えば、式(4)で表される化合物(ただし、Xは-O-である。)と下記式(5-2)で表されるチオリンゴ酸とを組合わせて使用することができ、より具体的には例えば、例えば、式(4-1)で表される化合物と下記式(5-2)で表されるチオリンゴ酸とを組合わせて使用することができる。
【0047】
(式(4)、式(5)で表される化合物の使用量)
本発明の製造方法において、式(4)、式(5)で表される化合物の使用量については、式(4)で表される化合物が有する-CR=CH2に対する式(5)で表される化合物が有する-SH(メルカプト基)のモル比(-SH/-CR=CH2)が、0.05~3であることが好ましく、0.9~1.1がより好ましい。
【0048】
(触媒)
本発明の製造方法において、上記反応は、反応効率の観点から触媒の存在下において行うことが好ましい。
上記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンのようなアミン触媒;オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレートのような金属触媒が挙げられる。
上記触媒は、アミン触媒が好ましい。
上記触媒の使用量は、式(4)で表される化合物1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、より好ましくは0.5~1モルである。
【0049】
(有機溶媒)
本発明の製造方法において、上記反応は、無溶剤でも行うことができるが、有機溶媒中で行うこともできる。上記有機溶媒は、上記反応を阻害しないものであれば特に制限されない。例えば、シクロヘキサンのような炭化水素化合物;エーテル系化合物;アセトンのようなケトン類が挙げられる。
上記有機溶媒の使用量は、式(4)で表される化合物100質量部に対して、0~300質量部が好ましい。
【0050】
・重合禁止剤
本発明の製造方法において、例えば、重合禁止剤を使用してもよい。上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、4-メトキシフェノールのようなハイドロキノン化合物が挙げられる。
【0051】
本発明の製造方法は、上記式(4)で表される化合物と上記式(5)で表される化合物とを反応させるものであれば特に制限されないが、より具体的には例えば、式(5)で表される化合物と有機溶媒との混合物を撹拌しながら、上記混合物に式(4)で表される化合物と触媒との混合物を滴下し、5~60℃の条件下で式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物とを反応させることによって、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を製造することができる。
反応後、例えば、反応混合物から有機溶媒等を留去する、反応混合物を洗浄する等によって反応生成物を精製することができる。
【0052】
本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂もしくはポリメタクリル酸エステル樹脂のような樹脂を構成しうる原料(モノマー)、または、樹脂改質剤として使用することができる。
【0053】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物と、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物を含有する、樹脂組成物である。
上記反応物は、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物と、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物中のヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物との反応物であれば、特に制限されない。
上記反応物としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0054】
<ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物>
本発明の樹脂組成物において、上記ポリフルオロアルキル基含有化合物と反応させて上記反応物を形成するために使用される、もう一方の化合物(ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物)は、ヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する。
【0055】
上記もう一方の化合物において、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物中のヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基としては、例えば、以下の官能基が挙げられる。
ヒドロキシ基と反応可能な官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基が挙げられる。
カルボキシル基と反応可能な官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基が挙げられる。
【0056】
(連結基)
上記もう一方の化合物において、上記官能基は、連結基に結合することができる。上記連結基としては、例えば、有機基;ポリシロキサン等のような、主骨格が有機基以外の基が挙げられる。
【0057】
有機基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基(飽和または不飽和を含む)、6員環芳香族基、4~6員環の飽和の脂肪族基、4~6員環の不飽和の脂肪族基、5~6員環の複素環基が挙げられる。上記環基は縮合してもよい。これら基は組み合わされてもよい。
上記有機基は、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。上記ヘテロ原子は、例えば、エーテル結合、-NR-(上記Rは炭化水素基または水素原子)、-S-、-CO-、-SO2-、-OH、または、これらの組合せ(例えばエステル結合)のような、ヘテロ原子による基を形成してもよい。
有機基としては、例えば、無置換の炭化水素基;上記ヘテロ原子による基を1個有する炭化水素基;上記ヘテロ原子による基を2個以上有する炭化水素基が挙げられる。有機基がその主鎖において上記ヘテロ原子による基を2個以上有する場合、上記主鎖としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
【0058】
有機基としては、炭化水素基が好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記もう一方の化合物において、上記連結基の価数は、上記もう一方の化合物が有する上記官能基の数に対応した価数とできる。
【0059】
上記ポリフルオロアルキル基含有化合物と、上記のヒドロキシ基またはカルボキシ基と反応可能な官能基を複数有する化合物(もう一方の化合物)との反応は、上記ポリフルオロアルキル基含有化合物と、上記のもう一方の化合物とを使用するものであれば、反応条件等は特に制限されない。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、更に、添加剤を含有することができる。上記添加剤としては、例えば、触媒、溶剤、カップリング剤、pH調整剤、酸化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、更に、樹脂改質剤として、本発明のポリフルオロアルキル基含有化合物を含有してもよい。
【実施例0061】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0062】
本発明において使用した、ガスクロマトグラフィーおよびNMRの分析条件を下記に示す。
【0063】
(ガスクロマトグラフィーの分析条件)
測定機種: GC-2014(島津製作所製)
検出器: FID(水素炎イオン化検出器)
カラム: キャピラリーカラム DB-1
インジェクション(INJ)温度: 200℃
ディテクタ(DET)温度: 250℃
カラム温度: 50℃で5分保持後、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、250℃で10分保持。
キャリアガス: ヘリウム
打ち込み量: 1μL
【0064】
(NMRの分析条件)
装置:400MHz イヤーホールド マグネット 400JJYH(日本電子株式会社製)
1H-NMR: 積算回数32、溶剤CDCl3
19H-NMR: 積算回数256、溶剤CDCl3
【0065】
[実施例1](ポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)の合成)
フラスコに、チオリンゴ酸(下記式(5-2)で表される化合物。市販品。10部。分子量150)、アセトン(39部)を加え、室温でよく攪拌しながら、C6FA(下記式(4-1)で表される化合物。市販品。29.3部。分子量418。以下同様。)とトリエチルアミン(6.7部)の混合溶液をゆっくり滴下した。室温で1晩反応させた後、ガスクロマトグラフィーで、目的物であるポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)(下記式(3-1)で表される化合物。以下同様)の反応率を確認したところ、上記反応率は83%だった。上記反応率は、ガスクロマトグラフィーのエリア比を用いて、次式より算出した。ガスクロマトグラフィーの分析条件は上述のとおりである。
反応率(%)=[化合物(3-1)のエリア比/(C6FAのエリア比+化合物(3-1)のエリア比)]×100
【0066】
【0067】
【0068】
上記のとおりC6FAの反応および化合物(3-1)の生成を確認した後、減圧下で、バス温度40℃で、反応混合物からトリエチルアミンとアセトンを留去して、ポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)(下記式(3-1)で表される化合物。35.7部)を得た。
【0069】
得られた化合物(3-1)は、ヘキサンを用いて洗浄後、乾燥させたのちに、核磁気共鳴スペクトル測定(
1H-NMRおよび
19F-NMR)にて、その構造を同定した。NMRの分析条件は上述のとおりである。
図1は、実施例1で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)の
1H-NMRのチャートである。
図2は、実施例1で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジカルボン酸化合物(3-1)の
19F-NMRのチャートである。
図2において、チャート全体中、-110.0~-130.0ppmの領域の化学シフト(四角で囲まれている)を、
図2の左側に拡大して示す。後述する
図4も同様である。
【0070】
【0071】
[実施例2](ポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)の合成)
フラスコに、α-チオグリセロール(下記式(5-1)で表される化合物。市販品。20.3部。分子量108)、アセトン(40.7部)を加え、室温でよく攪拌しながら、C6FA(78.7部)とトリエチルアミン(9.5部)の混合溶液をゆっくり滴下した。室温で1晩反応させた後、ガスクロマトグラフィーで、目的物であるポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)(下記式(2-1)で表される化合物。以下同様)の反応率を確認したところ、上記反応率は81%だった。上記反応率は、ガスクロマトグラフィーのエリア比を用いて、次式より算出した。ガスクロマトグラフィーの分析条件は上述のとおりである。
反応率(%)=[化合物(2-1)のエリア比/(C6FAのエリア比+化合物(2-1)のエリア比)]×100
【0072】
【0073】
上記のとおりC6FAの反応および化合物(2-1)の生成を確認した後、減圧下で、バス温度40℃で、反応混合物からトリエチルアミンとアセトンを留去して、ポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)(下記式(2-1)で表される化合物。85.7部)を得た。
【0074】
得られた化合物(2-1)は、イオン交換水で洗浄後、さらにヘキサンで洗浄し、その後乾燥させたのちに、核磁気共鳴スペクトル測定(
1H-NMRおよび
19F-NMR)にて、その構造を同定した。NMRの分析条件は上述のとおりである。
図3は、実施例2で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)の
1H-NMRのチャートである。
図4は、実施例2で合成されたポリフルオロアルキル基含有ジオール化合物(2-1)の
19F-NMRのチャートである。
【0075】