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特開2022-63712医用画像診断支援システム、医用画像処理装置、および、医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063712
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】医用画像診断支援システム、医用画像処理装置、および、医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220415BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B6/03 360D
A61B6/03 360G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172095
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲山 貴行
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA16
4C093EA07
4C093FF09
4C093FF17
4C093FF28
4C093FF32
4C093FF42
4C093FF45
4C093FH06
4C093FH08
4C096AA03
4C096AA04
4C096AA05
4C096AB38
4C096AC01
4C096AD06
4C096AD13
4C096AD14
4C096BA06
4C096BA18
4C096BA19
4C096BA37
4C096DB07
4C096DC20
4C096DC28
4C096DC35
4C096DE07
(57)【要約】
【課題】読影医が病変候補の領域を、複数種類の断層画像によって短時間で確認できるようする。
【解決手段】被検者の同一の撮像対象部位についての、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを外部装置から複数種類受け取り、複数種類の断層画像シリーズのうち、一つの種類の断層画像シリーズについて病変可能性領域を検出する。一つの種類の断層画像シリーズから病変可能性領域が含まれる断層画像を抽出して抽出画像群を生成し、抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の断層画像シリーズから抽出して抽出画像群に追加する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の同一の撮像対象部位について、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを複数種類撮影または生成する医用画像撮像装置と、複数種類の前記断層画像シリーズを処理する医用画像処理装置とを備え、
前記医用画像処理装置は、病変候補検出部と抽出画像群生成部とを含み、
前記病変候補検出部は、前記複数種類の断層画像シリーズのうち、一つの種類の前記断層画像シリーズについて病変可能性領域を検出し、
前記抽出画像群生成部は、前記一つの種類の断層画像シリーズから前記病変候補検出部が検出した前記病変可能性領域が含まれる断層画像を抽出し、抽出画像群を生成するとともに、前記抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の前記断層画像シリーズから抽出して前記抽出画像群に追加することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、前記抽出画像群生成部は、前記病変可能性領域が含まれる断層画像のスライスに対応するスライスが、前記他の種類の前記断層画像シリーズに含まれていない場合、前記他の種類の断層画像シリーズに含まれている断層画像を用いて、前記対応するスライスの前記断層画像を生成することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、前記抽出画像群生成部は、前記病変可能性領域の座標を取得し、前記他の種類の断層画像シリーズから前記座標が含まれるスライスの断層画像を抽出することにより、前記対応するスライスの断層画像を抽出することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、前記医用画像撮像装置は、所定の撮像方法により複数スライスの断層画像を複数種類撮影し、
前記医用画像処理装置は、複数種類の前記断層画像を用いて演算を行うことにより、所定の定量値を画素とする定量画像または所定のパラメータを強調した強調画像を複数のスライスについて生成する定量・強調画像生成部をさらに含み、
前記病変候補検出部は、前記定量・強調画像生成部が生成した複数のスライスの前記定量画像または前記強調画像について前記病変可能性領域の検出を行い、
前記抽出画像群生成部は、前記病変可能性領域が含まれる前記定量画像または前記強調画像を抽出して、前記抽出画像群を生成するとともに、前記抽出した定量画像または強調画像のスライスに対応するスライスの別の種類の定量画像または強調画像を、前記定量・強調画像生成部に生成させ、生成された前記別の種類の定量画像または強調画像を前記抽出画像群に追加することを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の医用画像診断支援システムであって、前記医用画像処理装置は、三次元画像作成部をさらに含み、
前記三次元画像作成部は、前記複数種類の断層画像シリーズの1種以上について三次元画像を作成し、前記三次元画像の回転中心軸を前記病変可能性領域の中心または前記中心から所定の距離離れた位置に設定し、前記三次元画像または前記三次元画像を投影した画像を抽出画像群に追加する三次元画像作成部をさらに含むことを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項6】
被検者の同一の撮像対象部位についての、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを、接続されている外部装置から複数種類受け取って、複数種類の前記断層画像シリーズのうち、一つの種類の前記断層画像シリーズについて病変可能性領域を検出する病変候補検出部と、
前記一つの種類の断層画像シリーズから前記病変可能性領域が含まれる断層画像を抽出し、抽出画像群を生成するとともに、前記抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の前記断層画像シリーズから抽出して前記抽出画像群に追加する抽出画像群シリーズ生成部とを含むことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
被検者の同一の撮像対象部位についての、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを外部装置から複数種類受け取り、
複数種類の前記断層画像シリーズのうち、一つの種類の前記断層画像シリーズについて病変可能性領域を検出し、
前記一つの種類の断層画像シリーズから前記病変可能性領域が含まれる断層画像を抽出して抽出画像群を生成し、
前記抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の前記断層画像シリーズから抽出して前記抽出画像群に追加する
ことを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像を撮像した後、処理することにより診断を支援する医用画像診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(磁気共鳴イメージング)装置に代表される医用画像撮像装置の高性能化にともない、大量の医用画像が取得されるようになり、画像を診断する読影医の負担が増大している。
【0003】
特許文献1には、読影医の負担軽減のため、コンピュータによって医用画像から病変候補領域を検出し、医用画像を後処理した画像と重ねて表示することにより、病変候補領域とその周辺領域とを区別可能な形態で表示する画像診断支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-166047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、CAD( Computer Assisted Diagnosis:コンピュータによる読影支援診断システム)によって検出された病変候補を医用画像上に表示することができる。しかしながら、実際に読影医が診断を行う場合には、病変候補が表示された画像のみに基づいて、病変候補が病変であるかどうかを判断するのではなく、病変候補の検出の基となった画像や他のコントラスト画像と病変候補画像との対比を行ったり、別の情報を得るために再度画像処理を行ったりする。これにより、他のコントラスト画像等において、病変候補に対応する領域に着目し、詳細な観察を実施する。そのため、読影医は、診断確定に長時間を要する場合がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、読影医が病変候補の領域を、複数種類の断層画像によって短時間で確認できるようすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の医用画像診断支援システムは、被検者の同一の撮像対象部位について、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを複数種類撮影または生成する医用画像撮像装置と、複数種類の断層画像シリーズを処理する医用画像処理装置とを備えている。医用画像処理装置は、病変候補検出部と抽出画像群生成部とを含む。病変候補検出部は、複数種類の前記断層画像シリーズのうち、一つの種類の断層画像シリーズについて病変可能性領域を検出する。抽出画像群生成部は、一つの種類の断層画像シリーズから病変候補検出部が検出した病変可能性領域が含まれる断層画像を抽出し、抽出画像群を生成するとともに、抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の断層画像シリーズから抽出して抽出画像群に追加する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抽出画像群には、病変可能性領域が含まれる断層画像のみならず、対応するスライスの他の種類の断層画像も含まれるため、読影医が病変候補の領域を、複数種類の断層画像によって短時間で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1の医用画像診断支援システムの全体構成を説明するブロック図である。
図2】実施形態1の医用画像診断支援システムの医用画像処理装置100の機能ブロック図である。
図3】実施形態1の医用画像処理装置100の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図4】実施形態1の医用画像処理装置100の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5】実施形態1の医用画像処理装置100が受け取る断層画像シリーズを説明するための図である。
図6】実施形態1の医用画像処理装置100が断層画像から検出した病変候補203を説明するための図である。
図7】実施形態1の医用画像処理装置100が生成した抽出画像群シリーズ204の構成を説明するための図である。
図8】実施形態2の医用画像診断支援システムの医用画像処理装置100の機能ブロック図である。
図9】実施形態2の医用画像処理装置100の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図10】実施形態3の医用画像診断支援システムの医用画像処理装置100の機能ブロック図である。
図11】実施形態3の医用画像処理装置100の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図12】実施形態3の医用画像処理装置100の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像診断支援システム及び医用画像処理装置、医用画像処理方法の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<<実施形態1>>
実施形態1の医用画像診断支援システム1について説明する。
【0012】
図1は、医用画像診断支援システム1のハードウェア構成を示す図であり、図2は、医用画像処理装置の機能ブロック図である。
【0013】
図1のように、医用画像診断支援システム1は、医用画像処理装置100、医用画像撮像装置109、医用画像データベース110および読影装置111を含み、これらはネットワーク108を介して信号送受可能に接続されている。
【0014】
医用画像撮像装置109は、被検者の同一の撮像対象部位について、複数スライスの断層画像からなる断層画像シリーズを複数種類撮影または生成する装置であり、例えばMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やX線CT(computed tomography)装置や超音波CT装置等である。
【0015】
ここでいう断層画像シリーズとは、複数スライスの断層画像の集合であり、複数スライスは連続する(隣接する)スライスであることが望ましい。複数種類の断層画像シリーズとは、同じ被検者の撮像対象部位でありながら、異なる見え方をするように撮像または生成された断層画像シリーズである。例えば、撮影方法を異ならせてそれぞれ一連の断層画像を撮像した断層画像シリーズや、撮像後の断層画像に画像処理を施すことにより組織の所望の特徴が強調されるように生成した断層画像シリーズが含まれる。具体的には、被検者の組織の所定のパラメータが強調された断層画像シリーズや、組織の所定の定量値を画素値とする断層画像シリーズ等である。
【0016】
さらに具体的には、医用画像撮像装置109がMRI装置の場合、複数種類の断層画像シリーズの例としては、複数スライスについてそれぞれ得た、T1(縦緩和)強調画像のシリーズ、T2(横緩和)強調画像、TOF (Time-of-Flight)画像、PD(プロトン密度)画像、FLAIR(fluid-attenuated inversion-recovery)画像等が挙げられる。X線CT装置の場合、照射するX線のエネルギーを変えて撮影したDual Energy Imaging画像が挙げられる。超音波CT装置の場合、照射する超音波の周波数を変えて撮像した画像や、画像再構成方法を変えて再構成した画像が挙げられる。
【0017】
複数種類の断層画像シリーズは、互いにスライスの位置が一致していることが好ましいが、必ずしも一致していなくてもよい。後述するようにスライスの位置が一致していない場合には、補間演算等の演算によりスライスの位置が一致している断層画像を生成する。
【0018】
また、複数種類の断層画像シリーズは、同じ種類の撮像装置で得た画像に限定されるものではなく、MRI装置で得た断層画像シリーズと、X線CT装置で得た断層画像シリーズとの組み合わせであってもよい。
【0019】
医用画像データベース110は、医用画像撮像装置109によって取得された断層画像等の医用画像を保管するデータベースシステムである。医用画像は、医用画像の撮像条件等が含まれるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)タグとともに医用画像データベース110に保管される。
【0020】
一方、医用画像処理装置100は、図2に示すように、病変候補検出部31と、描出画像群シリーズ生成部32とを備えている。
【0021】
病変候補検出部31は、一つの種類の断層画像シリーズについて、その断層画像に病変である可能性が高い領域を含まれる場合にはその病変可能性領域(以下、病変候補と呼ぶ)を検出する。
【0022】
描出画像群生成部32は、一つの種類の断層画像シリーズから病変候補が含まれる断層画像を抽出して抽出画像群を生成するとともに、抽出した断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の断層画像シリーズから抽出して抽出画像群に追加する。これにより、病変候補が含まれる断層画像と、その断層画像と同じスライスについて、別の撮像方法で撮像した断層画像や、所定の組織パラメータを強調した断層画像や、所定の定量値を画素値とする断層画像等の他の種類の断層画像とをセットにした抽出画像群を生成することができる。これにより読影医は、病変候補の断層画像と、同じスライスについての他の種類の断層画像とを対比することができるため、病変候補が病変候補であるかどうか確定する際の支援を行うことができる。
【0023】
上記病変候補検出部31と、描出画像群シリーズ生成部32の機能を実現するため、医用画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、記憶部103、ネットワークアダプタ104および表示部107を含み、これら各要素はバス105によって信号送受可能に接続されて構成される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的または光学的に、有線と無線を問わず、相互にあるいは一方から他方へ信号を受け渡しできる状態である。
【0024】
CPU101は、記憶部103に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ102にロードして実行することにより、病変候補検出部31と、抽出画像群生成部32の機能をソフトウエアにより実現する。
【0025】
病変候補検出部31は、例えば、AI(Artificial Intelligence)によって実現する。具体的に、ニューラルネットワーク等の学習モデルを、医用画像を入力データとし、病変画像を正解データとする学習データにより予め機械学習させたものを病変候補検出部31として用いる。病変候補の検出機能は、公知の技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
抽出画像群生成部32の処理内容については、フローチャートを用いて後で説明する。
【0027】
医用画像処理装置100は、検出された病変候補の悪性度を検出する機能や、医用画像に含まれる臓器を識別する機能をさらに備えていてもよい。
【0028】
記憶部103は、CPU101が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータが予め格納されている。例えば、記憶部103としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置や、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に読み書きする装置を用いる。
【0029】
メモリ102には、CPU101が実行するプログラムや演算処理の途中経過等が記憶される。
【0030】
なお、CPU101は、処理の対象である複数種類の断層画像シリーズや、プログラム実行に必要なデータの一部を、ネットワーク108を介して、医用画像撮像装置109、医用画像データベース110および読影装置111から受信する。
【0031】
表示部107は、プログラム実行の結果等が表示される装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。
【0032】
入力部106は、操作者が医用画像処理装置100に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス等である。マウスはトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。また表示部107がタッチパネルである場合には、タッチパネルが入力部106としても機能する。
【0033】
ネットワークアダプタ104は、医用画像処理装置100をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク108に接続するためのものである。
【0034】
読影装置111は、医用画像を読影するためのビューワ機能と、読影医からの指示を受け付ける入力手段としての機能を備える装置であり、CPUと、記憶部と、表示部と、入力部とを備えている。読影装置111のCPUは、記憶部内のプログラムを読み込んで実行することにより、医用画像処理装置100が生成した抽出画像群を受け取って、表示部に表示させ、受け取った画像を必要に応じて記憶部内に格納する。
【0035】
また、読影装置111は、医用画像撮像装置109ならびに医用画像データベース110から画像を受け取って表示することも可能である。
【0036】
また、読影装置111は、入力部を介して読影医から、医用画像処理装置100が処理対象とする複数種類の断層画像シリーズのデータの指定を受け付けることも可能である。
【0037】
なお、読影装置111は、医用画像処理装置100と一体であっても良い。
【0038】
次に、画像処理装置100の処理について図3および図4のフローチャートと、図5図6の断層画像等の例を用いて説明する。ここでは、一例として、断層画像の撮像対象部位が頭部である場合について説明するが、撮像対象部位は頭部に限定されるものではない。
【0039】
まず図3のステップS1では、医用画像処理装置100は、医用画像撮像装置109または医用画像データベース110から、被検者の同一の撮像対象部位の複数スライスを撮像した複数種類の断層画像シリーズ(以下、スタディとも呼ぶ)201,202-A,202-Bをネットワーク108を介して取得する(図5参照)。スタディ200は、病変候補検出を行う断層画像シリーズ201と、それ以外の断層画像シリーズ202-A,202-Bを含む。これらは、操作者や読影医が、選択した種類の断層画像であってもよいし、予め定めた種類の断層画像であってもよい。いずれも同一の被検者の同一の撮像対象部位の複数スライスについて、医用画像撮像装置109によって撮影された断層画像、または、撮影された断層画像から生成された断層画像である。ここでは、一例として、病変候補検出を行う断層画像シリーズ201は、T1強調画像シリーズであり、それ以外の断層画像シリーズ202-Aおよび202-Bは、T2強調画像シリーズおよびTOF画像シリーズである。
【0040】
次にステップS2では、医用画像処理装置100の病変候補検出部31は、このスタディ200内の病変候補検出用の断層画像シリーズ201の各断層画像に対して、病変候補(病変可能性領域)203を検出する。図6に、断層画像に病変候補203を示した画像例を示す。
【0041】
次にステップS3では、抽出画像群生成部32は、病変候補203の中心座標(x,y,z)を取得する。さらに、病変候補203の断層画像の面内方向のサイズと、病変候補203が隣接する複数のスライスに及んでいる場合には、スライス厚さからその病変候補203がスライス厚さ方向のサイズとを演算により求める。
【0042】
次にステップS4では、抽出画像群生成部32は、ステップS3で得られた各病変候補203が含まれる断層画像と、この断層画像のスライスに対応するスライスの断層画像を他の種類の断層画像シリーズ202-A,202-Bから抽出して抽出画像群を生成する。
【0043】
ステップS4を図4のフローを用いて詳細に説明する。
【0044】
まずステップS41において、抽出画像群生成部32は、ステップS2で取得した1以上の病変候補203に番号(D1、D2、D3・・・)を振り、最初の病変候補203-D1が含まれる断層画像201-SD1を断層画像シリーズ201から抽出し、抽出画像群シリーズ204として、例えば記憶部103の所定の記憶領域に格納する。
【0045】
次に、ステップS42において、抽出画像群生成部32は、他の断層画像シリーズ202-A、202-Bのうちの第1のシリーズ202-Aについて、ステップS3で得られた病変候補203-D1の中心座標(x,y,z)を含むスライスSD1の断層画像202-Aが存在するかを判定する。
【0046】
病変候補203-D1の座標(x,y,z)を含む画像断層画像202-A-SD1が存在する場合は、ステップS43において、抽出画像群生成部32は、この断層画像202-A-SD1を抽出する。
【0047】
上記ステップS42において、病変候補203-D1の中心座標(x,y,z)を含むスライスSD1の断層画像202-Aが存在しない場合は、ステップS44に進み、抽出画像群生成部32は、当該断層画像シリーズ202-Aに対してMPR(Multi Planer Reconstruction)処理等の公知の処理を施し、同一スライスに相当する画像を他のスライスの断層画像から作成する。
【0048】
そして、ステップS45において、ステップS43またはステップS44で抽出もしくは作成した断層画像202-A-SD1を抽出画像群シリーズ204に追加する(図7参照)。
【0049】
ステップS46において、病変候補203-D1についての上記ステップS42~S45を次の断層画像シリーズ202-Bについて繰り返す。これにより、断層画像シリーズ202-Bから病変候補203-D1が含まれるスライスに対応するスライスの断層画像202-B-SD1が抽出画像群シリーズ204に追加される(図7参照)。
【0050】
すべて断層画像シリーズ202-A,202-Bについて、病変候補203-D1が含まれるスライスおよび対応するスライスの断層画像が抽出され、抽出画像群シリーズ204に追加されたならば、抽出画像群生成部32は、ステップS47に進む。
【0051】
ステップS47において、抽出画像群生成部32は、次の病変候補203-D2について、ステップS41~S46を繰り返す。これにより、病変候補203-D2が含まれるスライスの断層画像201-D2および対応するスライスの断層画像202-A-SD2、202-B-SD2が抽出され、抽出画像群シリーズ204に追加される(図7参照)。
【0052】
すべての病変候補203について、抽出画像群生成部32は、ステップS41~ステップS46を繰り返し、最終的にスタディ200についての抽出画像群シリーズ204を生成することできる(図7参照)。
【0053】
次にステップS5では、医用画像処理装置100は、生成した抽出画像群シリーズ204をネットワーク108を経由して読影装置111に送信する。
【0054】
読影装置111は、受信した抽出画像群シリーズ201を例えば図7のように表示装置の画面に並べて表示する。
【0055】
読影医は、図7のように表示された抽出画像群シリーズ201を見ることにより、画面上で、病変候補203-D1、203-D2を含む断層画像(T1強調画像)201-SD1、201-SD2と、同じスライスについての他の種類の断層画像(T2強調画像)202-A-SD1、202-A-SD2および断層画像(TOF画像)202-B-SD1、202-B-SD2とを対比することができる。よって、特別な表示装置を用意したり、対応するスライスの画像医用画像データベース110から読み出す等の追加的な操作をすることなく、病変候補203が含まれる断層画像と他の種類の断層画像を相互に容易に確認することができ、読影者の読影精度の向上が期待できる。したがって、病変候補が病変候補であるかどうか読影医が確定する際の支援を行うことができる。
【0056】
なお、本実施形態では抽出画像群生成部32が、病変候補203の中心座標に一致する座標を含むスライスの断層画像のみを抽出したが、病変候補の座標を中心とした複数枚の断層画像も抽出してもよい。
【0057】
また、抽出画像群生成部32は、病変候補のスライス厚さ方向のサイズ等に基づいて、任意のサイズのFOVを設定し、FOVに含まれる断層画像を抽出してもよい。
【0058】
<<実施形態2>>
次に、実施形態2の医用画像診断支援システムについて図8の機能ブロック図と図9のフローチャートを用いて説明する。
【0059】
実施形態2の医用画像診断支援システムの医用画像処理装置100は、図8のように、病変候補検出部31および抽出画像群生成部32に加えて、定量・強調画像生成部33をさらに備えている。定量・強調画像生成部33は、複数種類の断層画像を用いて演算を行うことにより、所定の定量値を画素とする定量画像または所定のパラメータを強調した強調画像を複数のスライスについて生成する。
【0060】
実施形態2の医用画像診断支援システムの処理は、図9に示すように、実施形態1の複数種類の断層画像シリーズ(スタディ)200を取得するステップS1の代わりにステップS11およびステップS12を行う。また、抽出画像群シリーズ204を生成するステップS4の代わりにステップS13およびステップS14を行う。ステップS2,S3,S5は実施形態1と同様である。
【0061】
具体的には、ステップS11では、医用画像処理装置100は、医用画像撮像装置109がエコータイム(TE)、繰り返し時間(TR)、フリップ角(FA)、RF位相増分値(θ)等のパラメータを変更しながら所定の3Dグラジエントエコー撮像シーケンスを実行して取得した複数の断層画像を、スタディとして取得する。
【0062】
次に、ステップS12において、定量・強調画像生成部33は、公知のQuantitative Parametric Mapping(QPM)解析を行い、定量値T1、T2*、PDおよびB1のうちいずれかの定量値を画素とする断層画像(定量値マップ)を複数スライスについて算出する。これを病変候補検出を行う断層画像シリーズ201とする。もしくは、2種類以上の定量値マップを算出し、それらを演算処理することにより、所定の強調画像(例えばT2強調画像)を生成してもよい。なお、算出する定量値マップの種類は、実施形態1と同様に、予め定めたものであってもよいし、操作者や読影医から指定されたものでもよい。
【0063】
ステップS2において、病変候補検出部31は、断層画像シリーズ201の断層画像の病変候補203を検出する。
【0064】
ステップS3において、抽出画像群生成部32は、病変候補203の中心座標(x,y,z)を取得する。
【0065】
ステップS13において、抽出画像群生成部32は、ステップS12で生成した断層画像シリーズ201のうち、病変候補203が含まれる断層画像を抽出し、抽出画像群シリーズ204として、例えば記憶部103の所定の記憶領域に格納する。
【0066】
ステップS14において、定量・強調画像生成部33は、ステップS13において抽出した断層画像に対応するスライスのみについて、別の種類の定量値マップまたは別の種類の強調画像を、ステップS11で取得したスタディからQPM解析により作成する。作成した別の種類の定量値マップまたは別の種類の強調画像を抽出画像群シリーズ204に追加する。これを予め定めたすべての種類の定量値マップまたは強調画像が生成され、描出画像群シリーズ204に追加されるまで繰り返す。
【0067】
次にステップS5では、医用画像処理装置100は、生成した抽出画像群シリーズ204をネットワーク108を経由して読影装置111に送信する。
【0068】
このように実施形態2によれば、QPM解析により、所望の定量値マップや強調画像を生成することができるため、操作者や読影医は、所望の種類の画像を、病変候補検出を行う断層画像シリーズ201と、別の種類の断層画像シリーズ202として指定することができる。よって、操作者や読影医が所望する種類の断層画像で構成された抽出画像群シリーズを生成でき、検査の効率化が期待できる。
【0069】
また、病変候補を抽出した断層画像に対応するスライスのみについて、別の種類の定量値マップまたは別の種類の強調画像をQPM解析により生成することにより、QPM解析により断層画像を生成するのに要する時間を短縮することができる。
【0070】
なお、QPMの撮像シーケンスとして、上述の説明ではグラジエントエコー撮像シーケンスを用いた場合について説明したが、スピンエコーやプリパルスを用いる他の撮像シーケンスを用いても良い。
【0071】
なお、実施形態2の医用画像診断支援システムのハードウエア構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0072】
<<実施形態3>>
次に、実施形態3の医用画像診断支援システムについて、図10の機能ブロック図と図11および図12のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
実施形態3の医用画像診断支援システムの医用画像処理装置100は、図10のように、実施形態1で説明した病変候補検出部31および抽出画像群生成部32に加えて、三次元画像生成部34をさらに備えている。三次元画像生成部34は、断層画像シリーズ201,202-A,202-Bのうちの1種以上について三次元画像を生成し、病変候補203が観察しやすいように、その回転中心軸を病変候補203の中心または病変候補203の中心から所定の距離離れた位置に設定する。作成した三次元画像を、抽出画像群シリーズ204に追加する。
【0074】
図11および図12のフローチャートを用いて、医用画像処理装置100の処理を、用いて説明する。実施形態3では、実施形態1の図3のフローと同様の処理を行うが、ステップS4の処理の詳細が異なり、実施形態3では、図11のフローのようにステップS4を処理する。図11のフローは、実施形態1の図4のフローのステップS45とS46との間に、ステップS50を行う(図11)。このステップS50において、複数種類の断層画像シリーズ201、202-A、202-Bについてそれぞれ三次元画像を作成する。
【0075】
具体的には、ステップS41~ステップS45は、実施形態1と同様に行い、ステップS45の処理の後、ステップS50にて三次元画像を作成する。
【0076】
ステップS50の詳細を図12のフローを用いて説明する。
【0077】
ステップS441において、三次元画像生成部34は、三次元画像を回転させるための回転中心座標を算出する。これは、病変候補203の中心座標と同一でも良いし、病変候補の観察しやすさを考慮し、予め定めた距離分ずらした位置に設定しても良い。
【0078】
次に、ステップS442において、三次元画像生成部34は、回転軸方向を算出する。これは、例えば、スライス(断層画像)に対して垂直方向に設定する。
【0079】
次に、ステップS443において、三次元画像生成部34は、三次元画像のField Of View(FOV)を算出する。FOVは、実施形態1のステップS3で求めた病変候補203のサイズと同一でも良いし、観察のしやすさを考慮し病変候補のサイズを2倍した範囲をFOVとしても良い。
【0080】
そして、ステップS444において、三次元画像生成部34は、断層画像シリーズ201の各スライス断層画像データにスライス位置情報を加味して合体させることによりボリュームデータを生成する。同様に、断層画像シリーズ202-A、202-Bについてもボリュームデータを生成する。
【0081】
ステップS445において、各ボリュームデータに対して、ステップS441~S443で算出した、回転中心座標、回転中心軸およびFOVを設定し、三次元処理画像を作成する。三次元処理画像としては、最大値投影等の所定の投影画像や、ボリュームレンダリング画像を生成する。生成した画像は、抽出画像群シリーズ204に追加する。
【0082】
この実施形態3により、読影医は、多角的に病変候補を観察することが可能となるため、読影精度の向上に繋がる。
【0083】
なお、ここでは、ステップS445において、投影画像等の三次元処理画像を抽出画像群シリーズ204に追加したが、回転中心座標、回転中心軸およびFOVが設定されたボリュームデータを抽出画像群シリーズ204に追加し、読影医が回転や投影の操作をする構成としてもよい。
【0084】
なお、実施形態3では、すべての断層画像シリーズ201,202-A、202-Bについて3次元処理画像を作成したが、1つまたは2つ以上の断層画像シリーズについてのみ3次元処理画像を作成してもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
上述の各実施形態では、医用画像処理装置100の各機能部31~34をソフトウエアにより実現する構成について説明したが、医用画像処理装置100の各機能部31~34の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて医用画像処理装置100を構成し、各機能部31~34を実現するように回路設計を行えばよい。
【符号の説明】
【0087】
1…医用画像診断支援システム、31…病変候補検出部、32…描出画像群生成部、33…定量・強調画像生成部、34…三次元画像生成部、100…医用画像処理装置、101…CPU、102…メモリ、103…記憶部、104…ネットワークアダプタ、105…バス、106…入力部、107…表示部、108…ネットワーク、109…医用画像撮像装置、110…医用画像データベース、111…読影装置、200…スタディ、201…病変候補検出用の断層画像シリーズ、201-SD1,201-SD2…病変候補を含む断層画像、202-A,202-B…断層画像シリーズ、202-A-SD1,202-A-SD2…病変候補を含む断層画像に対応するスライスの別の種類の断層画像、202-B-SD1,202-B-SD2…病変候補を含む断層画像に対応するスライスの別の種類の断層画像、204…抽出画像群シリーズ
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