(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063713
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】工作機械におけるドレス原点計測方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/18 20060101AFI20220415BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20220415BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B53/00 A
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172096
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 右裕
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034BB93
3C034CA14
3C034CB12
3C034DD12
3C047AA06
3C047AA09
3C047AA16
(57)【要約】
【課題】研削加工するための工作機械において研削工具をドレッシングする際に必要なドレス原点をきわめて容易に、かつ、正確に計測することが可能なドレス原点計測方法を提供する
【解決手段】ドレス原点を計測する際には、主軸の先端に計測工具31を装着した状態で、ドレッサ12をドレス姿勢に割り出し、その状態で、ドレッサ12の先端を計測工具31のレーザーユニットの中心とを位置合わせする。さらに、主軸の割出角度0°においてドレッサ12の先端のY-Z座標を計測し、しかる後、主軸の割出角度90°においてドレッサ12の先端のX-Z座標を計測する。そして、計測されたドレッサ12の先端のY-Z座標のデータおよびX-Z座標のデータに基づいて、ドレス原点(X,Y,Z)を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を装着可能な回転主軸と傾斜角度を調整可能なドレッサとを有しており、回転主軸とドレッサとの間で相対移動を行わせることでドレッサにより研削工具をドレッシングする工作機械において、ドレッシングの際に用いられるドレス原点を計測する方法であって、
ドレッシングする姿勢にしたドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置を、前記主軸に装着した計測工具によって計測し、それらのX,Y,Z座標系における位置をドレス原点として設定することを特徴とするドレス原点計測方法。
【請求項2】
前記計測工具が、互いにレーザー光の発信・受信を行う発光手段と受光手段とを有しており、発光手段から発信されたレーザー光がドレッサによって遮断されて受光手段により受信できなくなることを利用してドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置を計測するものであることを特徴とする請求項1に記載のドレス原点計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク(被加工物)を研削加工するための工作機械において、研削工具をドレッサによりドレッシングする際の作動制御に用いられるドレスの先端の位置(ドレス原点)を計測(算出)するための計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワーク(被加工物)を研削加工するための工作機械として、マシニングセンタベースの5軸複合加工機等が知られているが、そのような工作機械においては、その構造上、加工の途中でワークを直接的に定寸することができない。そのため、ワークの研削寸法を高精度に管理したい場合には、研削工具をドレッシングする(研ぐ)ためのドレッサ(ダイヤ)の先端の位置(すなわち、ドレス原点)を正確に取得(計測)し、研削工具のドレッシングを行う必要がある。
【0003】
通常の5軸複合加工機は、主軸に対して傾斜した傾斜軸が設けられており、その傾斜軸によってドレッサの角度を変更・調整できるようになっている。そして、従来の5軸複合加工機においては、以下の方法でドレス原点の計測が行われていた。
(1)傾斜軸にてドレッサの姿勢を垂直にする
(2)振り回しゲージ等を使用しドレッサの中心と主軸の中心を一致させる(X・Y軸設定)
(3)研削砥石を手回ししながら刃先(Z軸方向)をパルスハンドルにてドレッサにゆっくり当てる(Z軸設定)
(4)上記(2),(3)にて設定した原点から、傾斜軸をドレス時の姿勢における原点位置を計算(あるいは機能)により算出する
【0004】
また、ドレス原点やドレッサの寸法を計測するための方法として、特許文献1の如く、タッチプローブ等の接触式のセンサからなる砥石計測手段を送り手段に設けて、その砥石計測手段を送り手段によりドレッサに接触させるように相対移動させることによってドレス原点やドレッサの寸法を計測する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の5軸複合加工機におけるドレス原点の計測においては、計算によってドレス原点を算出するため、その計算において用いられる旋回中心や幾何誤差補正の値が正確であることが必要であるが、ドレッシングする姿勢と原点を設定する姿勢とが一致していないため、旋回中心や幾何誤差補正の値を正確に見積もることができない。それゆえ、ドレス原点を正確に算出することができない、という不具合がある。
【0007】
一方、特許文献1の如く、タッチプローブによってドレス原点を計測する方法では、ドレス中心を求めるためにドレス軸の外周を複数箇所で測定し、その測定結果よって中心を算出する必要があるが、測定位置によってはタッチプローブが他の構造物と干渉してしまい、ドレス軸の外周に近接させることができない、という事態が起こり得る。さらに、特許文献1の如き タッチプローブによってドレス原点を計測する方法では、ドレッサの先端のダイヤが正確に中央に取り付けられていない場合や偏摩耗によって先端が中心からずれているような場合には、測定誤差が生じてしまう。加えて、タッチプローブの測定子は球状であることが多く、そのような球状の測定子ではドレス先端の高さを測る際に頂点を捉えることが困難である。
【0008】
本発明の目的は、マシニングセンタ等の工作機械における上記従来のドレス原点の計測方法が有する問題点を解消し、ドレス原点をきわめて容易に、かつ、正確に計測することが可能なドレス原点計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工具を装着可能な回転主軸と傾斜角度を調整可能なドレッサとを有しており、回転主軸とドレッサとの間で相対移動を行わせることでドレッサにより研削工具をドレッシングする工作機械において、ドレッシングの際に用いられるドレス原点を計測する方法であって、ドレッシングする姿勢にしたドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置を、前記主軸に装着した計測工具によって計測し、それらのX,Y,Z座標系における位置をドレス原点として設定することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記計測工具が、互いにレーザー光の発信・受信を行う発光手段と受光手段とを有しており、発光手段から発信されたレーザー光がドレッサによって遮断されて受光手段により受信できなくなることを利用してドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置を計測するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るドレス原点の計測方法によれば、ドレッシングする姿勢にしたドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置が計測手段によって計測されてドレス原点として設定されるため、ドレス原点をきわめて正確に計測することができる。したがって、請求項1に係るドレス原点の計測方法によれば、その正確に計測されたドレス原点に基づいて研削工具をドレッシングすることが可能となるため、工作機械による研削加工の加工精度を効率的に向上させることができる。
【0012】
請求項2に係るドレス原点の計測方法によれは、ドレス原点であるドレッサの先端のX,Y,Z座標系における位置をより正確に計測することが可能となるため、工作機械による研削加工の加工精度をより効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ドレッサの原点位置を測定するための計測装置を示す説明図(正面図)である。
【
図3】ドレッサの原点位置を設定する際の作動内容を示すフローチャートである。
【
図4】計測装置によってドレッサの原点位置を測定する様子を示す説明図(斜視図)である(aは主軸割出0°の様子を示したものであり、bは主軸割出90°の様子を示したものである)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るドレス原点の計測方法の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
<工作機械の構成>
図1は、ドレッサにより研削工具をドレッシング可能な工作機械を示したものであり、 工作機械(マシニングセンタ)Mは、基台として機能するベッド1が直方体状に設けられており、そのベッド1の奥側には、縦長な直方体状のコラム2が連設されている。さらに、そのコラム2の前方には、正面視略U字状のトラニオンユニット3が、駆動装置(サーボモータ)6によって左右方向であるY軸方向に沿って移動可能に設けられており、当該トラニオンユニット3に、クレードル4が、Y軸方向に沿った回転軸を中心として回転可能に設けられている。そして、そのクレードル4の上面に、扁平な直方体状のテーブル5が取り付けられており、把持機構(図示せず)によって被加工品であるワークWを着脱することができるようになっている。
【0016】
また、コラム2には、扁平な直方体状のサドル(図示せず)が、駆動装置(サーボモータ)7によって前後方向(
図1における紙面に垂直な方向)であるX軸方向に沿って移動可能に設けられている。さらに、当該サドルの前端には、縦長な柱状の主軸頭11が、駆動装置(サーボモータ)9によって上下方向であるZ軸に沿って移動可能に取り付けられており、その主軸頭11の下端には、研削工具(砥石等)Tを取り付け可能な主軸8が、駆動装置(サーボモータ)10によってZ軸を中心に回転可能に設けられている。加えて、サドルの下方には、グリッパ式の工具マガジンを有する工具交換装置(図示せず)が設けられており、研削工具を含めた複数の工具を水平な円周状に装着した状態になっている。そして、当該工具交換装置は、主軸8の先端に装着する工具を、自動的に交換することができるようになっている。
【0017】
さらに、テーブル5と主軸頭11との中間の高さ位置には、ドレッサ取付台3が、駆動装置(サーボモータ)15によってY軸に沿って移動可能に設置されている。そして、そのドレッサ取付台3の支持台9には、ドレッサ(シングルポイントドレッサ)12が、駆動装置(サーボモータ)16によってX軸に沿った旋回軸を中心として回転可能に設けられている。
【0018】
また、トラニオンユニット3をY軸方向に並進させるための駆動装置6、主軸頭11を設置したサドルをX軸方向に並進させるための駆動装置7、主軸頭11をZ軸方向に並進させるための駆動装置9、主軸8をZ軸回りに回転させるための駆動装置10、ドレッサ取付台13をY軸方向に並進させるための駆動装置15、および、ドレッサ12をX軸に沿った旋回軸の回りに回転させるための駆動装置16等は、NC制御装置21に接続されており、当該NC制御装置21によって駆動制御されるようになっている。
【0019】
上記の如く構成された工作機械Mにおいては、テーブル5に固着されたワークWに対して、回転させた主軸8の先端の研削工具TをアプローチさせることによってワークWを研削加工することができるようになっている。また、主軸8と離反させた研削工具Tに対して、ドレッサ取付け台13をアプローチさせて、ドレッサ12によって研削工具Tをドレッシングすることができるようになっている。また、そのようにドレッサ12によって研削工具Tをドレッシングする際には、ドレッシングの作業前に、ドレッサ12の先端位置が計測され、その先端位置を原点(ドレス原点)とする座標軸に基づいて、ドレッシング動作が制御されるようになっている。
【0020】
<ドレス原点計測工具の構成>
図2は、ドレッサ12の先端位置(ドレス原点)を計測するための計測工具を示したものであり、計測工具31は、主軸8の先端に装着するための装着部32、および、ドレッサ12の先端位置を計測するための計測部33とを有している。装着部32は略円筒状に形成されており、基端(
図2における上端)に、主軸8の先端に噛み合わせるための切り込み34,34およびフランジ35が設けられている。また、計測部33は、矩形の平板状のベース36の両端縁から2枚の矩形の計測板37a,37bを平行に外向きに突出させた形状を有している。そして、片方の計測板37a内には、赤外線レーザーを発光させるための発光手段38が内蔵されており、他方の計測板37b内には、発光手段38から発光された赤外線レーザーを受光するための受光手段39が内蔵されている(すなわち、計測部33には、発光手段38および受光手段39からなるレーザーユニットが内蔵されている)。そして、当該計測工具31は、基端に設けられた切り込み34,34およびフランジ35を利用して、主軸8の先端に固定できるようになっている。
【0021】
<ドレス原点の計測方法>
上記した工作機械Mにおいては、ドレッサ12によって研削工具Tをドレッシングする際に、上記した計測工具31を用いてドレッサ12のドレス原点(X,Y,Z)が求められ(計測され)、そのドレス原点のデータに基づいて、ドレッシングするためのドレッサ取付台3のX軸方向の並進、サドルのY軸方向の並進、ドレッサのY軸回りの回転、主軸8のZ軸回りの回転等が数値制御される。
【0022】
図3は、計測工具31を用いてドレッサ12の原点(ドレス原点)を計測する際の作動内容を示すフローチャートである。ドレッサ12の原点を計測する際には、先ず、主軸8の先端に(ワークWの代わりに)計測工具31を装着する。そして、S(ステップ)1で、ドレッサ12をドレス姿勢に割り出し、続くS2で、ドレッサ12の先端を計測工具31のレーザーユニットの中心(発光手段38から受光手段39への赤外線レーザーの光線上)にアプローチさせることによって、ドレッサ12の先端とレーザーユニットの中心とを大まかに位置合わせする。
【0023】
そのように、ドレッサ12の先端とレーザーユニットの中心との位置合わせを実施した後には、S3で、
図4(a)の如く、主軸8の割出角度0°においてドレッサ12の先端のY-Z座標を計測し、計測したデータをNC制御装置21へ送信する。しかる後、S4で計測工具31を装着した主軸8を90回転させてドレッサ12にアプローチさせ(
図4(b)参照)、主軸8の割出角度90°においてドレッサ12の先端のX-Z座標を計測し、計測したデータをNC制御装置21へ送信する。
【0024】
NC制御装置21は、送信されたドレッサ12の先端のY-Z座標のデータ、および、ドレッサ12の先端のX-Z座標のデータに基づいて、ドレッサ12の先端の原点(ドレス原点=X,Y,Z)を算出し、そのデータを記憶する。そして、ドレッサ12によって研削工具Tをドレッシングする際には、そのドレス原点(X,Y,Z)のデータに基づいて、ドレッサ取付台3のY軸方向の並進、サドルのX軸方向の並進、ドレッサのX軸回りの回転、主軸8のZ軸回りの回転等が数値制御される。
【0025】
<ドレス原点の計測方法の効果>
工作機械Mにおけるドレス原点の計測方法は、上記の如く、ドレッシングする姿勢にしたドレッサ12の先端のX,Y,Z位置を、主軸8に装着した計測工具31によって計測し、それらのX,Y,Z位置をドレス原点として設定するものであるため、ドレス原点をきわめて正確に計測することができる。したがって、工作機械Mにおけるドレス原点の計測方法によれば、その正確に計測されたドレス原点に基づいて研削工具Tをドレッシングすることが可能となるため、工作機械Mによる研削加工の加工精度を効率的に向上させることができる。
【0026】
また、工作機械Mにおけるドレス原点の計測方法は、計測工具31が、互いにレーザー光の発信・受信を行う発光手段38と受光手段39とを有しており、発光手段38から発信されたレーザー光がドレッサ12によって遮断されて受光手段39により受信できなくなることを利用してドレッサ12の先端のX,Y,Z位置を計測するものであるため、ドレス原点であるドレッサ12の先端のX,Y,Z位置をより正確に計測することができるので、工作機械Mによる研削加工の加工精度を非常に効率的に向上させることが可能である。
【0027】
<ドレス原点の計測方法の変更例>
本発明に係るドレス原点の計測方法は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、計測装置の形状・構造、計測の手順等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。また、本発明に係るドレス原点の計測方法が適用される工作機械の種類も、上記実施形態の態様に何ら限定されず、研削加工が可能な各種の工作機械に、本発明に係るドレス原点の計測方法を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
7・・駆動装置
8・・主軸
12・・ドレッサ
31・・計測工具
38・・発光手段
39・・受光手段
M・・工作機械
T・・研削工具